特許第6691719号(P6691719)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノンファインテック株式会社の特許一覧

特許6691719シート綴じ装置並びにこれを備えたシート処理装置及び画像形成装置
<>
  • 特許6691719-シート綴じ装置並びにこれを備えたシート処理装置及び画像形成装置 図000002
  • 特許6691719-シート綴じ装置並びにこれを備えたシート処理装置及び画像形成装置 図000003
  • 特許6691719-シート綴じ装置並びにこれを備えたシート処理装置及び画像形成装置 図000004
  • 特許6691719-シート綴じ装置並びにこれを備えたシート処理装置及び画像形成装置 図000005
  • 特許6691719-シート綴じ装置並びにこれを備えたシート処理装置及び画像形成装置 図000006
  • 特許6691719-シート綴じ装置並びにこれを備えたシート処理装置及び画像形成装置 図000007
  • 特許6691719-シート綴じ装置並びにこれを備えたシート処理装置及び画像形成装置 図000008
  • 特許6691719-シート綴じ装置並びにこれを備えたシート処理装置及び画像形成装置 図000009
  • 特許6691719-シート綴じ装置並びにこれを備えたシート処理装置及び画像形成装置 図000010
  • 特許6691719-シート綴じ装置並びにこれを備えたシート処理装置及び画像形成装置 図000011
  • 特許6691719-シート綴じ装置並びにこれを備えたシート処理装置及び画像形成装置 図000012
  • 特許6691719-シート綴じ装置並びにこれを備えたシート処理装置及び画像形成装置 図000013
  • 特許6691719-シート綴じ装置並びにこれを備えたシート処理装置及び画像形成装置 図000014
  • 特許6691719-シート綴じ装置並びにこれを備えたシート処理装置及び画像形成装置 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6691719
(24)【登録日】2020年4月15日
(45)【発行日】2020年5月13日
(54)【発明の名称】シート綴じ装置並びにこれを備えたシート処理装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 37/04 20060101AFI20200427BHJP
   B42B 5/00 20060101ALI20200427BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20200427BHJP
【FI】
   B65H37/04 Z
   B42B5/00
   G03G15/00 432
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-87415(P2018-87415)
(22)【出願日】2018年4月27日
(62)【分割の表示】特願2014-41254(P2014-41254)の分割
【原出願日】2014年3月4日
(65)【公開番号】特開2018-123007(P2018-123007A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2018年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208743
【氏名又は名称】キヤノンファインテックニスカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】特許業務法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠▲崎▼ 保秀
【審査官】 冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3481300(JP,B2)
【文献】 特開2015−127116(JP,A)
【文献】 特開2012−16871(JP,A)
【文献】 特開昭58−98294(JP,A)
【文献】 特開2013−170067(JP,A)
【文献】 特開2014−201432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H37/00−37/06
B31F5/00−5/08
B42B5/00−5/12
B42C5/00−5/06
G03G15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のシートを積層してシート束を形成するシート束形成手段と、
前記シート束形成手段により形成されたシート束を、綴じ針を用いることなく、綴じ処理する綴じ手段と、
前記綴じ処理を行う前に、前記シート束の前記綴じ処理されるべき綴じ込み位置に水を塗布する水分塗布手段と、
前記綴じ手段と前記水分塗布手段とを制御する制御手段であって、前記シート束のシート数が所定枚数以下のときには、前記シート束の形成が完了する前にはシートに水を塗布せずに前記シート束の形成が完了した後に前記シート束に水を塗布してから前記綴じ処理を行い、前記シート束のシート数が前記所定枚数を超えるときには、前記シート束の形成が完了した後に前記シート束に水を塗布してから前記シート束の前記綴じ処理を行うとともに、前記シート束の形成が完了する前において前記綴じ込み位置に位置した前記所定枚数以下のシートに対して、次のシートが前記綴じ込み位置に搬送される前に水を塗布し、その後、水の塗布の間隔を、前記間隔において前記綴じ込み位置に搬送されるシートの枚数が前記所定枚数以下となるように制御する制御手段と、
を有することを特徴とするシート綴じ装置。
【請求項2】
前記綴じ手段は、押圧部材によってシート束を圧着して綴じ処理するものであって、前記押圧部材の前記シート束との接触面に凹凸が設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載のシート綴じ装置。
【請求項3】
前記水分塗布手段は、前記シート束の厚さ方向に向けて水の塗布を行う、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のシート綴じ装置。
【請求項4】
前記水分塗布手段は、シート束の隙間を開けることなく前記水の塗布を行う、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のシート綴じ装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のシート綴じ装置と、
前記シート綴じ装置にシートを搬送するシート搬送装置と、を備える、
ことを特徴とするシート処理装置。
【請求項6】
シートに対して画像を形成する画像形成手段と、
前記画像形成手段から搬送されるシートを処理可能なシート処理装置と、を備える画像形成装置であって、
前記シート処理装置は、請求項5に記載のシート処理装置である
ことを特徴とする画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のシートからなるシート束を、綴じ針を使用しないで綴じるシート綴じ装置並びにこれを備えたシート処理装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙の綴じ込みは金属製の綴じ針を使って行われてきたが、不要となった紙の廃棄を行う際に、該綴じ針を取り外す作業が面倒であった。そのため、紙の綴じ込みを行う際に、綴じ針を使うことなく、綴じ込み位置に水を浸透させた上で、複数の紙を加圧部材でプレスすることで紙を綴じ込む綴じ込み装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3481300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1記載のものは、複数の紙に水を浸透させることで紙の繊維をほぐし、その上で複数の紙をまとめてプレスすることで紙の繊維同士が機械的に絡み合い、複数の紙同士が圧着される。しかしながら、該特許文献1記載のものは、例えば綴じる紙束の枚数や紙種といった条件が変化する場合に、浸透させる水の量を調整することができない。
【0005】
そして、このように複数の紙に水を浸透させる場合、水の量が多すぎるとプレスする際に繊維がほぐれすぎて、加圧部材に紙くずとして張り付いてしまい、次の紙束を綴じる際に該紙くずが邪魔になって良好な綴じ力が得られない。また、水の量が少なくても紙の繊維が十分にほぐれず、良好な綴じ力が得られないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、良好にシート束を綴じることが可能なシート綴じ装置並びにこれを備えたシート処理装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のシート綴じ装置は、複数のシートを積層してシート束を形成するシート束形成手段と、前記シート束形成手段により形成されたシート束を、綴じ針を用いることなく、綴じ処理する綴じ手段と、前記綴じ処理を行う前に、前記シート束の前記綴じ処理されるべき綴じ込み位置に水を塗布する水分塗布手段と、前記綴じ手段と前記水分塗布手段とを制御する制御手段であって、前記シート束のシート数が所定枚数以下のときには、前記シート束の形成が完了する前にはシートに水を塗布せずに前記シート束の形成が完了した後に前記シート束に水を塗布してから前記綴じ処理を行い、前記シート束のシート数が前記所定枚数を超えるときには、前記シート束の形成が完了した後に前記シート束に水を塗布してから前記シート束の前記綴じ処理を行うとともに、前記シート束の形成が完了する前において前記綴じ込み位置に位置した前記所定枚数以下のシートに対して、次のシートが前記綴じ込み位置に搬送される前に水を塗布し、その後、水の塗布の間隔を、前記間隔において前記綴じ込み位置に搬送されるシートの枚数が前記所定枚数以下となるように制御する制御手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、シート束に対して適正な量の水を塗布し、良好にシート束を綴じることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置を示す全体断面図。
図2】本発明の実施の形態に係る押圧手段を示す正面図。
図3】本発明の実施の形態に係るシート綴じ装置を示す図2のX矢視方向から視た図。
図4】本発明の実施の形態に係るカバーフレームが取り外された状態の押圧手段を示す正面図。
図5】本発明の実施の形態に係る下支持台及び上支持台を示す斜視図。
図6】本発明の実施の形態に係る下歯型部材41aと上歯型部材50aが噛合した状態を示す図。
図7】本発明の実施の形態に係る制御ブロック図。
図8】本発明の実施の形態に係る押圧手段のホームポジションを示す正面図。
図9】本発明の実施の形態に係るシート綴じ装置の動作を示すフローチャート。
図10】本発明の実施の形態に係る押圧手段にシート束が進入した状態を示す正面図。
図11】本発明の実施の形態に係る押圧位置のシート綴じ装置にシート束が進入した状態を示す左側面図。
図12】本発明の実施の形態に係る押圧位置のシート綴じ装置にシート束が進入した状態を示す左側面図。
図13】本発明の実施の形態に係る押圧手段がシート束を押圧している状態を示す正面図。
図14】本発明の実施の形態に係る押圧手段がシート束を解放した状態を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に沿って、本発明の実施の形態について説明する。画像形成装置としてのレーザービームプリンタ1は、図1に示すように、該レーザービームプリンタ1の下側から順に、シート搬送部2と、画像形成部3と、シート後処理部4と、画像読取部5と、自動原稿搬送部6と、を備えている。
【0011】
シート搬送部2は、サイズの異なるシートPを収納した複数の給紙カセット10と、給紙カセット10内のシートPを1枚ずつ給送するピックアップローラ11と、シートPを画像形成部3に向けて搬送する搬送ローラ12と、等を有する。
【0012】
画像形成部3は、感光ドラム13と、帯電ローラ14と、露光ユニット15と、現像装置16と、転写ローラ17と、定着装置18と、等を有する。感光ドラム13は、図中の矢印方向に回転し、帯電ローラ14によって表面が均一に帯電される。帯電後の感光ドラム13は、画像情報に基づいてオン・オフ制御される露光ユニット15のレーザビームによって露光され、露光部分の電荷が除去されて静電潜像が形成される。該静電潜像は、現像装置16によってトナーが付着されてトナー像となり、シート搬送部2から搬送されてきたシートPに、転写ローラ17によって該トナー像が転写される。トナー像が転写されたシートPは、定着装置18によって加熱・加圧されて表面にトナー像が定着され、シート後処理部4に搬送される。
【0013】
シート後処理部4は、後述するシート綴じ装置30を有している。画像形成部3からシート後処理部4に搬送されたシートPは、シート綴じ装置30にて積層された後に綴じ処理され、又は該シート綴じ装置30で処理されることなく、排出トレイ19に排出される。
【0014】
画像読取部5は、プラテンガラス20と、ランプ21と、複数のミラー22と、レンズ23と、イメージセンサ24と、等を有している。自動原稿搬送部6から送られてくる原稿Dは、プラテンガラス20上の画像読取位置Rを通過する際に画像情報が読み取られる。すなわち、ランプ21が照射した光がプラテンガラス20を透過して原稿面で反射し、複数のミラー22、レンズ23を介してイメージセンサ24に導かれ、該イメージセンサ24で原稿Dの画像が画像情報として読み取られる。この画像情報は、所定の画像処理が施されて、画像形成部3の露光ユニット15に送信される。
【0015】
自動原稿搬送部6は、原稿トレイ25と、排紙トレイ26と、綴じ枚数検知手段72(図7参照)と、を有している。原稿トレイ25に載置された原稿Dは、不図示の搬送ローラによって1枚ずつ搬送されて画像読取部5の画像読取位置Rを通過し、排紙トレイ26に排出される。綴じ枚数検知手段72は、一度の原稿読み取り操作で搬送される原稿トレイ25上の原稿Dの枚数をカウントする。この原稿Dの枚数は、後述する綴じ処理において綴じられるシート束PBのシートPの枚数と同数である。すなわち、綴じ枚数検知手段72は、綴じられるシート束PBのシートPの枚数を検知することになる。
【0016】
次に、シート綴じ装置30について詳述する。なお、以下においては、説明の便宜上、図2中の矢印で示す上下左右の方向が、シート綴じ装置30及びこれを構成する各部材等の上下左右に対応するものとする。さらに、これら上下左右方向に直交する方向(図3で示すZY方向)を前後方向とする。ただし、便宜上定義したこれら前後左右上下方向は、シート綴じ装置30等の構成や作用を限定するものではない。
【0017】
シート綴じ装置30は、図2及び図3に示すように、複数のシートPが積層されたシート束PBをその積層方向に挟持して押圧する綴じ手段としての押圧手段40と、シート束PBの綴じ込み位置に水分を塗布する水分塗布手段60と、を有する。これら押圧手段40及び水分塗布手段60は、ユニット支持台31及びユニット積載プレート32(図11参照)に固定されており、該ユニット支持台31には、ピニオンギヤ33を駆動させるユニット移動モータ34が固定されている(図11参照)。また、レーザービームプリンタ1に固定されたガイドプレート35には、ピニオンギヤ33に噛合するラックギヤ36が固定されている。そして、ユニット移動モータ34を駆動させることで、ユニット積載プレート32に固定された押圧手段40及び水分塗布手段60を、ガイドプレート35に対してYZ方向に移動可能となっている。ユニット積載プレート32に固定されたシート綴じ装置30は、ガイド軸37によって案内されて、シート束PBに水を塗布する所定の水塗布位置と、押圧手段40がシート束PBを押圧する押圧位置と、に移動保持可能となっている。
【0018】
水分塗布手段60は、水を貯留するタンクカートリッジ61と、水を噴射する噴射部62a,62bを有する水塗布装置62と、タンクカートリッジ61の水を噴射部62a,62bに送り出すポンプ63と、を有している。水塗布装置62は、ポンプ63によってタンクカートリッジ61から水を供給し、水塗布空間62cの上下方向にある噴射部62a,62bから所定量の水を霧状に噴射できるようになっている。
【0019】
押圧手段40は、ユニット支持台31の盛り上がり部31aに固定された下支持台41と、該下支持台41に固定されたカバーフレーム42と、を有している(図11参照)。該カバーフレーム42は、前壁部42aと、後壁部42bと、これら前壁部42aと後壁部42bの上端を連結する天部42cと、を有しており、X矢視方向において開口部を下向きにしてコ字形状に形成されている。前壁部42a及び後壁部42bは、それぞれ左端側の下部に、外側に向けてピン42dが突設され、かつ該ピン42dの上側に、長孔42eが斜めに穿設されている。これら長孔42e,42eには、後述するカム駆動軸43の前端及び後端が貫通されている。長孔42e,42eは、カム駆動軸43を長孔42e,42eの長手方向に沿って移動可能かつ回転自在に支持している。
【0020】
ピン42dと長孔42eから突出したカム駆動軸43の先端との間には、カバーフレーム42の前後側でそれぞれ引張りバネ44,44が張設されている。前壁部42aの右端側には、後述するカム駆動モータ55に対応する位置に、長孔42fが穿設されている。カバーフレーム42は、上述した長孔42e,42eによって後述するカム46の反力を受け止めている。
【0021】
また、押圧手段40は、図4に示すように、右端側が下支持台41の上面に固定され、かつ左端側の下端47aが間隙Gを介して下支持台41に対向する固定フレーム47を有している。該固定フレーム47は、X矢視方向の形状が、上述のカバーフレーム42と同様のコ字形状からなっており、右端側が上記カバーフレーム42に覆われるように配置されている。固定フレーム47には、左から順に、3本の軸S1,S2,S3が貫通されている。
【0022】
固定フレーム47の上方には、揺動フレーム48が配置されており、該揺動フレーム48は、X矢視方向の形状が、上述のカバーフレーム42と同様のコ字形状からなると共に、その左端側の下部分48aが固定フレーム47を覆うように形成されている。該下部分48aには、軸S1,S2が貫通している。そして、揺動フレーム48は、左端側の軸S1を支点にして、その右端側が固定フレーム47に対してほぼ上下方向に揺動可能になっている。揺動フレーム48の上面における右端側の部分は、カム46のカム面46aが当接する当接面48bとなっている。
【0023】
固定フレーム47の内方には、押圧フレーム49が配置されており、該押圧フレーム49は、X矢視方向の形状が、上向きに開口するコ字形状からなっている。押圧フレーム49は、左端側に軸S2、右端側に軸S3が貫通しており、軸S3を支点として、左端側が下支持台41に対してほぼ上下方向に揺動可能になっている。
【0024】
押圧フレーム49の左端側の下面には、上支持台50が固定されている。該上支持台50の下面には、X矢視の形状が図5及び図6に示すような波型の凹凸を有する上歯型部材(押圧部材)50aが固定されており、該上歯型部材50aは、押圧フレーム49が下降した際に、下支持台41に固定された下歯型部材(押圧部材)41aに噛合するようになっている。
【0025】
軸S2は、押圧フレーム49の左端側に該押圧フレーム49を貫通するように固定されていると共に、その前端及び後端が固定フレーム47を前後方向に貫通して、揺動フレーム48に形成された透孔48c,48cに係合している。なお、固定フレーム47における軸S2が貫通する部分は、軸S2が軸S3を中心に揺動し、かつ透孔48c,48cが軸S1を中心に揺動することを考慮して、適当な余裕をもって形成されている。
【0026】
固定フレーム47と揺動フレーム48との間には、圧縮バネ52が縮設されている。揺動フレーム48は、この圧縮バネ52によってほぼ上方に付勢され、当接面48bをカム46のカム面46aにおける最小半径部分に当接させている。この状態がカム46のホームポジションとなり、下歯型部材41aと上歯型部材50aとの間隙H(図8参照)が最大となる。
【0027】
なお、カム駆動軸43は、引張りバネ44,44によってほぼ下方に付勢されているが、この引張りバネ44,44の付勢力が、圧縮バネ52の付勢力よりも弱く設定されている。このため、揺動フレーム48は、圧縮バネ52によってほぼ上方に付勢されてその当接面48bをカム46に当接させ、かつ当接面48bに、引張りバネ44,44によってほぼ下方に付勢されたカム46が当接されることになる。
【0028】
揺動フレーム48を揺動させる駆動手段53は、モータギヤ54を駆動するカム駆動モータ55と、モータギヤ54に噛合する駆動伝達ギヤ56と、該駆動伝達ギヤ56に噛合してカム駆動軸43と一体の固定ギヤ(不図示)と、カム46と、を有している。カム駆動モータ55としては、CPU70(図7参照)によって、回転角を精度よく制御することができるステッピングモータを使用している。カム46のカム面46aは、最小半径部分を基準として、時計回り及び反時計回りに半径が漸増するように形成されている。カム駆動モータ55の回転は、モータギヤ54、駆動伝達ギヤ56、固定ギヤ及びカム駆動軸43を介して、カム46に伝達されるようになっている。
【0029】
図7は、本実施の形態におけるレーザービームプリンタ1の制御ブロック図を示しており、レーザービームプリンタ1は、制御手段としてのCPU70及び不図示のROM,RAM等を有している。該CPU70の入力側には、例えばタッチセンサを有する液晶モニタからなるシート情報入力部71と、上記綴じ枚数検知手段72と、が接続されている。シート情報入力部71では、複数の給紙カセット10に収納したシートPの紙種を、給紙カセット毎に設定することができる。紙種とは、例えば普通紙、再生紙、厚紙といったシートPの用紙種類のことを言う。CPU70の出力側には、ポンプコントローラ73を介して、上記ポンプ63が接続されている。また、CPU70の出力側には、モータコントローラ74を介して、上記ユニット移動モータ34及びカム駆動モータ55が接続されている。
【0030】
次に、上述構成のシート綴じ装置30の動作について、図8ないし図14を参照して説明する。シート綴じ装置30は、図11に示す水塗布位置にて待機し、この際、押圧手段40は、図8に示すホームポジション位置となっている。このとき下歯型部材41aと上歯型部材50aとの間隙Hは最大幅となっている。該間隙Hは、水塗布装置62の水塗布空間62cの高さ内となるように配置されている。
【0031】
そして、シート綴じ装置30は、図9に示すフローチャートのように動作する。すなわち、CPU70は、綴じるべきシート束PBが、一度に水を浸透させることができる条件か判断する(ステップS1)。この条件は、例えばシート束PBの枚数や紙種等のシート束に関する情報である。ステップS1にて一度に水を浸透させることができる条件を満たすと判断されると、画像形成部3で画像形成された複数枚のシートPは、図10及び図11に示すように、積層及び整合されてシート束PBとなって、左方から間隙Gに進入する。間隙Gに進入したシート束PBは、不図示のストッパにより、図9及び図10に示す所定位置に配置される(ステップS2)。該所定位置にあっては、シート束PBは、一部が水塗布空間62c内かつ下歯型部材41aと上歯型部材50aとの間に配置される。
【0032】
次に、CPU70は、綴じ枚数検知手段72によって検知したシート束PBの枚数とシート情報入力部71にて入力された紙種情報に基づいて、シート束PBに塗布する水の量を計算し、ポンプ63に指令を送信する(ステップS3)。このシート束PBに塗布する水の量は、あらかじめ綴じるシート束のシート枚数、紙種における情報から最適な塗布量を実験によって求め、それをテーブル化することで決定されている。そしてポンプ63は、タンクカートリッジ61から水塗布装置62の噴射部62a,62bに所定量の水を供給し、噴射部62a,62bは、シート束PBの綴じ込み位置にステップS3にて計算された量の水を塗布する(ステップS4)。該綴じ込み位置は、通常、シート束PBの周縁部近傍のいずれかの場所である。噴射部62a,62bが塗布する水の量は、噴射時間又は単位時間当たりの水の噴射量を変更することで調節される。
【0033】
ステップS1にて、CPU70が一度に水を浸透させることができる条件を満たさないと判断した場合には、シート束PBを所定の枚数毎(複数枚毎)に分けて、段階的に水を塗布する。例えばシート束PBが10枚のシートPからなり、一度に水を浸透させることができない場合、一度に水を浸透させることができる5枚毎に水を塗布する。すなわち、間隙Gの所定位置に、まずシートPが5枚積層されたシート束(このシート束を便宜的にシート束PB1とする)を搬送する(ステップS5)。そして、上述したステップS3,S4のように、該シート束に水を塗布する。
【0034】
次に、CPU70は、綴じるべきシート束PBのシートPが全て搬送されたか否かを判断し(ステップS6)、綴じるべきシート束PBが全て搬送されていない場合には、ステップS5に戻り、ステップS5,S3,S4,S6を繰り返す。上述した例でいうと、シート束PB1に水を塗布した後、既に水が塗布された該シート束PB1の上に、新たに5枚のシート束(このシート束を便宜的にシート束PB2とする)が搬送される。そして、このシート束PB2に水が塗布されるが、下方には既に水が塗布されたシート束PB1があるために、上方の噴射部62aからのみ水が塗布される。シート束PB2は、下部からは既に水が塗布されたシート束PB1の水を吸収し、綴じ込み位置において十分に水を塗布される。なお、複数回に分けてシート束PBに水を塗布する場合、シート束PBの分け方は、一度に水を塗布することが可能な枚数以下であれば自由に設定してよい。例えば上述の10枚のシート束PBの場合にあっても、シート束PB1を6枚のシートP、シート束PB2を4枚のシートPから構成するようにしてもよい。
【0035】
ステップS6にて、綴じるべきシート束PBを構成するシートPが全て水塗布位置に搬送され、水が塗布された場合には、ユニット移動モータ34を所定量正回転させる(ステップS7)。これにより、ピニオンギヤ33及びラックギヤ36の噛合によって、シート綴じ装置30は、図11に示す水塗布位置からY方向に移動して、図12に示す押圧位置にて停止する(ステップS8)。該押圧位置では、水を塗布したシート束PBの綴じ込み位置は、下歯型部材41aと上歯型部材50aとの間に配置される。
【0036】
次に、カム駆動モータ55を所定量正回転させて、図13に示すように、カム46をR1方向に回転させる(ステップS9)。そして、カム46が所定量、揺動フレーム48の当接面48bに当接したところで、カム46の回転を停止させる(ステップS10)。これにより、揺動フレーム48が軸S1を中心にK1方向に回転し、上支持台50が固定された押圧フレーム49が軸S3を中心にM1方向に回転する。そして、下歯型部材41aと上歯型部材50aとの間に配置されたシート束PBは、水が塗布された綴じ込み位置にてこれら下歯型部材41a及び上歯型部材50aによって積層方向に挟持されて、押圧力が付与される(ステップS11)。このようにして、シート束PBの綴じ込み位置に凹凸が形成されると共に、複数のシートPの繊維が互いに絡み合って綴じられる。なお、シート束PBを綴じるために必要な押圧力は、カム駆動モータ55の回転をカム46に伝達するまでに十分に減速することで得ることができる。
【0037】
シート束PBの綴じ処理が終わると、図14に示すように、カム駆動モータ55を逆転回転させて、カム46をR2方向に回転させる(ステップS12)。これにより、揺動フレーム48が軸S1を中心にK2方向に回転し、上支持台50が固定された押圧フレーム49が軸S3を中心にM2方向に回転する。そして、シート束PBから上歯型部材50aが離間し、シート束PBは、挟持状態から解放されて(ステップS13)、不図示のシート搬送手段によって排出トレイ19に排出される(ステップS14)。
【0038】
以上のように、本実施の形態のシート綴じ装置30は、綴じるシートPの枚数、紙種に応じて適正な量の水を塗布することができるので、異なる枚数、紙種のシート束に対応して良好にシート束を綴じることができる。また、一度の水の塗布で綴じるべきシート束に水を浸透させることができない場合には、複数回に分けて段階的に水を塗布するので、押圧力を付与する際のシート束の表面状態を良好に保ち、下歯型部材41a及び上歯型部材50aに紙くずが張り付きにくい。
【0039】
なお、上述した実施形態では、一対の歯型部材の内、下歯型部材41aを固定し、上歯型部材50aを移動するように構成したが、これに限定されるものではない。例えば、下歯型部材41aを移動し、上歯型部材50aを固定するように構成してもよく、下歯型部材41aと上歯型部材50aの双方が移動するように構成してもよい。
【0040】
また、画像形成装置として電子写真方式のレーザープリンタを用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、複写機、ファクシミリ装置等の画像形成装置や、これらの機能を組み合わせた複合機等の他の画像形成装置であってもよい。また、自動原稿搬送部6が配設されない画像形成装置にあっては、シート情報入力部71にて手動で綴じ枚数が設定できるようにしてもよい。
【0041】
また、上述した実施形態では、綴じ枚数又は紙種に応じて、シート束に一度に水を浸透させることができる条件や塗布する水の量を決定したが、坪量や表面性等の他のシート束に関する情報に基づいて、これらを決定してもよい。また、シート情報入力部71は、これらのシート情報をそれぞれ手動入力可能に構成してもよい。
【符号の説明】
【0042】
30:シート綴じ装置、40:押圧手段、60:水分塗布手段、70:CPU(制御手段)、P:シート、PB:シート束

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14