(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。
【0011】
以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0012】
図1は、本発明の実施の形態に係るインクジェット印刷装置の概略構成図である。
図1に示すように、本実施の形態に係るインクジェット印刷装置1は、印刷部2と、圧力生成部3と、インク補給部4と、制御部5とを備える。
【0013】
印刷部2は、用紙(図示せず)にインクを吐出して画像を印刷する。印刷部2は、インクジェットヘッド11と、インクタンク12A〜12Dと、液面センサ13A〜13Dと、インク流出経路14と、インク流出弁15A〜15Dと、インク流入経路16と、インク流入弁17A〜17Dとを備える。なお、インク流出経路14およびインク流入経路16が、請求項のインク流路に相当する。また、インクタンク12A〜12D等の符号におけるアルファベットの添え字を省略して総括的に表記することがある。
【0014】
インクジェットヘッド11は、複数のノズル(図示せず)を有し、ノズルからインクを吐出する。
【0015】
インクタンク12A〜12Dは、インクを貯留する。インクタンク12A〜12D内には、インクの液面上に空気層18A〜18Dが形成されている。インクタンク12A〜12Dは、インク送液のための2組のインクタンク対20A,20Bを構成している。インクタンク対20Aは、インクタンク12Aとインクタンク12Cとからなる。インクタンク対20Bは、インクタンク12Bとインクタンク12Dとからなる。
【0016】
液面センサ13A〜13Dは、それぞれインクタンク12A〜12D内のインクの液面が基準高さに達しているか否かを検出する。ここで、液面センサ13A〜13Dは、反応の仕方にヒステリシスを有する。このため、液面センサ13A〜13Dがオフからオンになる液面高さと、オンからオフになる液面高さとが異なる。具体的には、液面センサ13A〜13Dは、液面の上昇時には、液面が第1基準高さに達するとオフからオンに変化し、液面の下降時には、液面が第1基準高さより低い位置の第2基準高さにまで下降するとオンからオフに変化する。
【0017】
インク流出経路14は、インクタンク12A〜12Dから流出してインクジェットヘッド11へ向かうインクの流路である。インク流出経路14は、主流出管21と、分岐流出管22〜24とを備える。
【0018】
主流出管21は、インクタンク12Dから流出してインクジェットヘッド11へ向かうインクの流路を形成する。また、主流出管21は、インクタンク12A〜12Cから流出してインクジェットヘッド11へ向かうインクの流路の一部を形成する。主流出管21の一端はインクジェットヘッド11に接続され、他端はインクタンク12Dに接続されている。
【0019】
分岐流出管22〜24は、それぞれインクタンク12A〜12Cから流出したインクの主流出管21までの流路を形成する。分岐流出管22の一端は主流出管21に接続され、他端はインクタンク12Aに接続されている。分岐流出管23の一端は主流出管21に接続され、他端はインクタンク12Bに接続されている。分岐流出管24の一端は主流出管21に接続され、他端はインクタンク12Cに接続されている。
【0020】
インク流出弁15A〜15Dは、それぞれインクタンク12A〜12Dからのインクの流出を許容および遮断する。インク流出弁15A〜15Cは、それぞれ分岐流出管22〜24に配置されている。インク流出弁15Dは、主流出管21の分岐流出管24が接続された地点とインクタンク12Dとの間に配置されている。
【0021】
インク流入経路16は、インクジェットヘッド11で消費されずにインクタンク12A〜12Dへ流入するインクの経路である。インク流入経路16は、主流入管26と、分岐流入管27〜29とを備える。
【0022】
主流入管26は、インクジェットヘッド11からインクタンク12Dへのインクの流路を形成する。また、主流入管26は、インクジェットヘッド11からインクタンク12A〜12Cへのインクの流路の一部を形成する。主流入管26の一端はインクジェットヘッド11に接続され、他端はインクタンク12Dに接続されている。
【0023】
分岐流入管27〜29は、それぞれインクタンク12A〜12Cへ流入するインクの主流入管26からの流路を形成する。分岐流入管27の一端は主流入管26に接続され、他端はインクタンク12Aに接続されている。分岐流入管28の一端は主流入管26に接続され、他端はインクタンク12Bに接続されている。分岐流入管29の一端は主流入管26に接続され、他端はインクタンク12Cに接続されている。
【0024】
インク流入弁17A〜17Dは、それぞれインクタンク12A〜12Dへのインクジェットヘッド11からのインクの流入を許容および遮断する。インク流入弁17A〜17Cは、それぞれ分岐流入管27〜29に配置されている。インク流入弁17Dは、主流入管26の分岐流入管29が接続された地点とインクタンク12Dとの間に配置されている。
【0025】
圧力生成部3は、各インクタンク12A〜12Dに正圧および負圧を選択的に生成する。圧力生成部3は、エアポンプ31と、圧力生成管32と、圧力生成・調整管33,34と、接続管35,36と、圧力弁37A〜37Dと、圧力調整弁38,39と、大気開放管40A〜40Dと、大気開放弁41A〜41Dと、圧力センサ42,43とを備える。
【0026】
エアポンプ31は、インクタンク対20における一方のインクタンク12と他方のインクタンク12との間で空気を移動させる。エアポンプ31は、圧力生成管32の接続管35が接続された地点と接続管36が接続された地点との間に配置されている。
【0027】
圧力生成管32は、インクタンク12A〜12Dにインク送液のための圧力を生成するための空気の流路の少なくとも一部を形成する。圧力生成管32の一端はインクタンク12Aの空気層18Aに接続され、他端はインクタンク12Cの空気層18Cに接続されている。
【0028】
圧力生成・調整管33,34は、それぞれインクタンク12B,12Dにインク送液のための圧力を生成するための空気の流路の一部を形成する。また、圧力生成・調整管33,34は、インクタンク12A〜12Dの圧力調整のための空気の流路を形成する。圧力生成・調整管33の一端はインクタンク12Bの空気層18Bに接続され、他端(大気連通端)は大気に通じている。圧力生成・調整管34の一端はインクタンク12Dの空気層18Dに接続され、他端(大気連通端)は大気に通じている。
【0029】
接続管35,36は、それぞれ圧力生成・調整管33,34と圧力生成管32とを接続する。接続管35,36は、それぞれインクタンク12B,12Dにインク送液のための圧力を生成するための空気の流路の一部を形成する。
【0030】
圧力弁37A,37Cは、それぞれインクタンク12A,12Cへの圧力生成管32からの空気の流入を許容および遮断するとともに、インクタンク12A,12Cから圧力生成管32への空気の流出を許容および遮断する。圧力弁37Aは、圧力生成管32の接続管35が接続された地点とインクタンク12Aとの間に配置されている。圧力弁37Cは、圧力生成管32の接続管36が接続された地点とインクタンク12Cとの間に配置されている。
【0031】
圧力弁37B,37Dは、それぞれインクタンク12B,12Dへの圧力生成・調整管33,34からの空気の流入を許容および遮断するとともに、インクタンク12B,12Dから圧力生成・調整管33,34への空気の流出を許容および遮断する。圧力弁37Bは、圧力生成・調整管33の接続管35が接続された地点とインクタンク12Bとの間に配置されている。圧力弁37Dは、圧力生成・調整管34の接続管36が接続された地点とインクタンク12Dとの間に配置されている。
【0032】
圧力調整弁38は、インクタンク12A,12Bの圧力調整のために、圧力生成・調整管33内の空気の流路を開閉する。圧力調整弁38は、圧力生成・調整管33の接続管35が接続された地点と大気連通端との間に配置されている。
【0033】
圧力調整弁39は、インクタンク12C,12Dの圧力調整のために、圧力生成・調整管34内の空気の流路を開閉する。圧力調整弁39は、圧力生成・調整管34の接続管36が接続された地点と大気連通端との間に配置されている。
【0034】
大気開放管40A〜40Dは、それぞれインクタンク12A〜12Dを大気開放するための空気の流路を形成する。大気開放管40A〜40Dは、それぞれ一端がインクタンク12A〜12Dの空気層18A〜18Dに接続され、他端が大気に通じている。
【0035】
大気開放弁41A〜41Dは、それぞれインクタンク12A〜12Dを密閉状態と大気開放状態との間で切り替えるために、大気開放管40A〜40D内の空気の流路を開閉する。
【0036】
圧力センサ42は、インクタンク12A,12Bの圧力を検出する。圧力センサ42は、接続管35に接続されている。圧力センサ43は、インクタンク12C,12Dの圧力を検出する。圧力センサ43は、接続管36に接続されている。
【0037】
インク補給部4は、インクタンク12A〜12Dにインクを補給する。インク補給部4は、インクカートリッジ46と、インク補給経路47と、インク補給弁48A〜48Dとを備える。
【0038】
インクカートリッジ46は、インクジェットヘッド11による印刷に用いるインクを収容している。
【0039】
インク補給経路47は、インクカートリッジ46からインクタンク12A〜12Dへ補給されるインクの経路である。インク補給経路47は、共通補給管51と、分岐補給管52〜55とを備える。
【0040】
共通補給管51は、インクタンク12A〜12Dへ補給されるインクの流路の共通部分を形成する。共通補給管51の一端(上流端)はインクカートリッジ46に接続され、他端(下流端)は分岐補給管52,55に接続されている。
【0041】
分岐補給管52は、共通補給管51の下流端からインクタンク12Aへのインクの流路を形成する。また、分岐補給管52は、共通補給管51の下流端からインクタンク12B,12Cへのインクの流路の一部を形成する。分岐補給管52の一端は共通補給管51の下流端に接続され、他端はインクタンク12Aに接続されている。
【0042】
分岐補給管53,54は、インクタンク12B,12Cへ補給されるインクの分岐補給管52からの流路を形成する。分岐補給管53の一端は分岐補給管52に接続され、他端はインクタンク12Bに接続されている。分岐補給管54の一端は分岐補給管52に接続され、他端はインクタンク12Cに接続されている。
【0043】
分岐補給管55は、共通補給管51の下流端からインクタンク12Dへのインクの流路を形成する。分岐補給管55の一端は共通補給管51の下流端に接続され、他端はインクタンク12Dに接続されている。
【0044】
インク補給弁48A〜48Dは、それぞれインクタンク12A〜12Dへのインクカートリッジ46からのインクの流入を許容および遮断する。インク補給弁48Aは、分岐補給管52の分岐補給管53が接続された地点とインクタンク12Aとの間に配置されている。インク補給弁48B〜48Dは、それぞれ分岐補給管53〜55に配置されている。
【0045】
制御部5は、インクジェット印刷装置1の各部の動作を制御する。制御部5は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク等を備えて構成される。
【0046】
制御部5は、印刷を行う際、圧力生成部3により、インク送液のための正圧、負圧をインクタンク対20の一方のインクタンク12、他方のインクタンク12にそれぞれ生成するよう制御する。これにより、制御部5は、インク流出経路14、インクジェットヘッド11、インク流入経路16を介して、一方のインクタンク12から他方のインクタンク12へインクを送液させる。それとともに、制御部5は、インクジェットヘッド11からインクを吐出して印刷するよう制御する。
【0047】
制御部5は、印刷時において、インク送液を行うインクタンク対20を交互に切り替える。そのために、制御部5は、一方のインクタンク対20におけるインク送液中に、他方のインクタンク対20において、後述する準備処理を行う。そして、制御部5は、インク送液を行うインクタンク対20を、準備済みのインクタンク対20へ切り替える。制御部5は、これを繰り返しつつ、インクジェットヘッド11からインクを吐出して印刷を行うよう制御する。
【0048】
次に、インクジェット印刷装置1におけるインク送液のための準備処理について説明する。準備処理は、インクタンク対20における圧力生成およびインク補給を行う処理である。具体的には、準備処理は、インクタンク対20に対して、圧力生成部3により正圧、負圧を一方のインクタンク12、他方のインクタンク12にそれぞれ生成するとともに、インク残量に応じてインク補給部4によりインク補給を行う処理である。
【0049】
図2は、準備処理のフローチャートである。
図3は、準備処理時の動作説明図である。ここでは、インクタンク対20Aにおいてインクタンク12Aに負圧、インクタンク12Cに正圧を生成する準備処理を例に説明する。すなわち、ここでは、インクタンク12Aが負圧タンク設定、インクタンク12Cが加圧タンク設定となる。
【0050】
図2のステップS1において、制御部5は、圧力弁37A,37Cを開放する。ここで、準備処理の開始前において、圧力弁37A,37Cは閉鎖されている。また、圧力調整弁38,39、大気開放弁41A,41C、インク補給弁48A,48C、インク流出弁15A,15C、およびインク流入弁17A,17Cも閉鎖されている。
【0051】
次いで、ステップS2において、制御部5は、エアポンプ31を起動させる。これにより、
図3に示すように、圧力生成管32を介してインクタンク12Aからインクタンク12Cへ向かって空気が流れ始める。これにより、インクタンク12Aの減圧およびインクタンク12Cの加圧が開始される。
【0052】
図2に戻り、ステップS2に続いて、ステップS3において、制御部5は、加圧タンク設定のインクタンク12Cの液面センサ13Cがオフであるか否かを判断する。液面センサ13Cがオンであると判断した場合(ステップS3:NO)、制御部5は、ステップS7へ進む。
【0053】
液面センサ13Cがオフであると判断した場合(ステップS3:YES)、ステップS4において、制御部5は、インクタンク12Cに対応するインク補給弁48Cを開放する。これにより、
図3に示すように、インクカートリッジ46から共通補給管51および分岐補給管52,54を介してインクタンク12Cへインクが補給され始める。
【0054】
図2に戻り、ステップS4に続いて、ステップS5において、制御部5は、液面センサ13Cがオンになったか否かを判断する。液面センサ13Cがオンになっていないと判断した場合(ステップS5:NO)、制御部5は、ステップS5を繰り返す。
【0055】
液面センサ13Cがオンになったと判断した場合(ステップS5:YES)、ステップS6において、制御部5は、インク補給弁48Cを閉鎖する。これにより、インクタンク12Cへのインク補給が終了する。この後、制御部5は、ステップS7へ進む。
【0056】
ステップS7では、制御部5は、圧力センサ42,43の検出値に基づき、インクタンク12Aの圧力(負圧の絶対値)およびインクタンク12Cの圧力(正圧)が、それぞれの設定圧以上になっているか否かを判断する。インクタンク12Aの圧力およびインクタンク12Cの圧力の少なくともいずれか一方がそれぞれの設定圧未満であると判断した場合(ステップS7:NO)、制御部5は、ステップS7を繰り返す。
【0057】
インクタンク12Aの圧力およびインクタンク12Cの圧力がそれぞれの設定圧以上になっていると判断した場合(ステップS7:YES)、ステップS8において、制御部5は、エアポンプ31を停止させる。これにより、エアポンプ31によるインクタンク12Aの減圧およびインクタンク12Cの加圧が終了する。
【0058】
次いで、ステップS9において、制御部5は、圧力調整弁38,39を制御して、インクタンク12A,12Cの圧力がそれぞれの設定圧となるよう調整する。インクタンク12A,12Cの圧力がそれぞれの設定圧になると、制御部5は、圧力弁37A,37Cおよび圧力調整弁38,39を閉鎖する。
【0059】
これにより、準備処理が終了となる。準備処理が終了すると、インクタンク12A,12Cにインク送液のための負圧、正圧がそれぞれ生成され、加圧タンク設定のインクタンク12Cにインクが補給された状態となる。
【0060】
次に、インクジェット印刷装置1の印刷時の動作を説明する。
【0061】
図4は、インクジェット印刷装置1の印刷時の動作を説明するためのフローチャートである。
図5〜
図8は、印刷時の動作説明図である。
【0062】
図4のフローチャートの処理は、インクジェット印刷装置1に印刷ジョブが入力されることにより開始となる。
【0063】
図4のステップS11において、制御部5は、大気開放弁41A〜41Dを閉鎖する。
【0064】
ここで、印刷ジョブが入力される前の待機状態のインクジェット印刷装置1では、大気開放弁41A〜41Dは開放され、インクタンク12A〜12Dが大気開放状態になっている。また、前回の印刷終了時にインク送液を行っていたインクタンク対20におけるそのときの加圧タンク設定のインクタンク12に対応するインク流出弁15および負圧タンク設定のインクタンク12に対応するインク流入弁17は開放されている。その他のインク流出弁15およびインク開放弁17、圧力弁37A〜37D、圧力調整弁38,39、およびインク補給弁48A〜48Dは閉鎖されている。
【0065】
次いで、ステップS12において、制御部5は、一方のインクタンク対20で前述の準備処理を実行する。具体的には、制御部5は、前回の印刷終了時にインク送液を行っていたインクタンク対20とは異なるインクタンク対20で準備処理を実行する。
【0066】
次いで、ステップS13において、制御部5は、ステップS12で準備処理を行ったインクタンク対20におけるインク送液を開始させる。具体的には、制御部5は、ステップS12で準備処理を行ったインクタンク対20における加圧タンク設定のインクタンク12に対応するインク流出弁15および負圧タンク設定のインクタンク12に対応するインク流入弁17を開放する。それとともに、制御部5は、前回の印刷終了時にインク送液を行っていたインクタンク対20におけるそのときの加圧タンク設定のインクタンク12に対応するインク流出弁15および負圧タンク設定のインクタンク12に対応するインク流入弁17を閉鎖する。
【0067】
例えば、前回の印刷終了時にインクタンク対20Bがインク送液を行っており、そのときインクタンク12Bが加圧タンク設定、インクタンク12Dが負圧タンク設定であったとする。そして、
図4のステップS12において、前述のように
図3を用いて説明したインクタンク対20Aにおける準備処理が行われたとする。
【0068】
この場合、インクタンク対20Aでインク送液を開始させるために、制御部5は、インクタンク対20Aのインクタンク12Aに対応するインク流入弁17Aおよびインクタンク12Cに対応するインク流出弁15Cを開放する。それとともに、制御部5は、インクタンク対20Bのインクタンク12Bに対応するインク流出弁15Bおよびインクタンク12Dに対応するインク流入弁17Dを閉鎖する。
【0069】
これにより、
図5に示すように、インクタンク12Cからインクが流出し、分岐流出管24、主流出管21、インクジェットヘッド11、主流入管26、分岐流入管27を介して、インクタンク12Aにインクが流入する。
【0070】
図4に戻り、ステップS13に続いて、ステップS14において、制御部5は、インクジェットヘッド11を制御して印刷ジョブに基づく印刷を開始させる。これにより、インク送液中のインクタンク対20における加圧タンク設定のインクタンク12からインクジェットヘッド11へ供給されるインクの一部が吐出され、残りのインクが負圧タンク設定のインクタンク12へ流れる。例えば、
図5のようにインク送液中の場合、インクタンク12Cからインクジェットヘッド11へ供給されるインクの一部が吐出され、残りのインクがインクタンク12Aへ流れる。
【0071】
次いで、ステップS15において、制御部5は、インク送液中ではないインクタンク対20で準備処理を実行する。例えば、
図5のように、インクタンク対20Aでインク送液中の場合において、制御部5は、インクタンク対20Bにおける準備処理を実行する。これにより、インクタンク12B,12Dにインク送液のための負圧、正圧がそれぞれ生成され、加圧タンク設定のインクタンク12Dにインクが補給された状態となる。ここで、
図5に示すように、インクタンク対20Bにおける準備処理では、エアポンプ31の駆動により、圧力生成・調整管33、接続管35、圧力生成管32、接続管36、および圧力生成・調整管34を介して、インクタンク12B,12D間で空気が流れる。
【0072】
次いで、ステップS16において、制御部5は、インク送液中のインクタンク対20の加圧タンク設定のインクタンク12の液面センサ13がオフになったか否かを判断する。
【0073】
ここで、インク送液中のインクタンク対20に対する準備処理が終了した時点では、加圧タンク設定のインクタンク12の液面センサ13はオンになっている。インク送液により加圧タンク設定のインクタンク12からインクが流出することで、液面高さが前述の第2基準高さにまで下降すると、液面センサ13がオンからオフに変化する。
【0074】
インク送液中のインクタンク対20の加圧タンク設定のインクタンク12の液面センサ13がオンであると判断した場合(ステップS16:NO)、ステップS17において、制御部5は、印刷ジョブに基づく印刷が終了したか否かを判断する。印刷が終了していないと判断した場合(ステップS17:NO)、制御部5は、ステップS16へ戻る。
【0075】
ステップS16において、インク送液中のインクタンク対20の加圧タンク設定のインクタンク12の液面センサ13がオフになったと判断した場合(ステップS16:YES)、ステップS18において、制御部5は、インクタンク対20の切替処理を行う。インクタンク対20の切替処理は、インク送液を行うインクタンク対20を切り替えるための処理である。
【0076】
具体的には、制御部5は、インク送液中のインクタンク対20における加圧タンク設定のインクタンク12に対応するインク流出弁15および負圧タンク設定のインクタンク12に対応するインク流入弁17を閉鎖する。それとともに、制御部5は、ステップS15で準備処理を行ったインクタンク対20における加圧タンク設定のインクタンク12に対応するインク流出弁15および負圧タンク設定のインクタンク12に対応するインク流入弁17を開放する。これにより、インク送液を行うインクタンク対20が切り替わる。この後、制御部5は、ステップS15に戻り、準備処理を行う。この際、制御部5は、前回のインク送液時とは各インクタンク12の加圧タンク設定と負圧タンク設定とを入れ替えるように準備処理を行う。
【0077】
例えば、
図5のようなインクタンク対20Aにおけるインク送液中において、インクタンク12Cの液面センサ13Cがオフになると、制御部5は、インク流出弁15Cおよびインク流入弁17Aを閉鎖する。それとともに、制御部5は、準備済みのインクタンク対20Bのインクタンク12Dのインク流出弁15Dおよびインクタンク12Bのインク流入弁17Bを開放する。これにより、
図6に示すように、インクタンク対20Bにおけるインク送液が開始される。また、制御部5は、インクタンク12Aを加圧タンク設定、インクタンク12Cを負圧タンク設定として、インクタンク対20Aにおける準備処理を行う。
【0078】
ステップS15〜S18は、印刷終了まで繰り返される。これにより、インク送液を行うインクタンク対20が切り替わりつつ、インクジェットヘッド11による印刷が行われる。
【0079】
例えば、
図6のようなインクタンク対20Bにおけるインク送液中において、インクタンク12Dの液面センサ13Dがオフになると、
図7のようなインクタンク対20Aにおけるインク送液に切り替わる。
図7のようなインクタンク対20Aにおけるインク送液中において、インクタンク12Aの液面センサ13Aがオフになると、
図8のようなインクタンク対20Bにおけるインク送液に切り替わる。
図8のようなインクタンク対20Bにおけるインク送液中において、インクタンク12Bの液面センサ13Bがオフになると、
図5のようなインクタンク対20Aにおけるインク送液に切り替わる。このように、
図5→
図6→
図7→
図8→
図5→…のようにインク送液を行うインクタンク対20が切り替わりつつ、インクジェットヘッド11による印刷が行われる。
【0080】
ステップS17において、印刷が終了したと判断した場合(ステップS17:YES)、ステップS19において、制御部5は、大気開放弁41A〜41Dを開放する。これにより、インクタンク12A〜12Dが大気開放され、インク送液中のインクタンク対20におけるインク送液が終了する。これにより、一連の動作が終了となる。
【0081】
以上説明したように、インクジェット印刷装置1は、2組のインクタンク対20A,20Bを備える。制御部5は、一方のインクタンク対20におけるインク送液中に、他方のインクタンク対20において準備処理を行う。そして、制御部5は、インク送液を行うインクタンク対20を、準備済みのインクタンク対20へ切り替える。制御部5は、これを繰り返しつつ、インクジェットヘッド11からインクを吐出して印刷を行うよう制御する。
【0082】
これにより、インクジェット印刷装置1では、インクタンク間でインクを送液するためのインクポンプを使用しない構成で、継続的にインクジェットヘッド11にインクを送液しつつ、印刷を行うことができる。このため、例えば、顔料を含むインクを使用した場合でも、インクがインクポンプの部品を磨耗させて故障させるような不都合を回避できる。したがって、インクジェット印刷装置1によれば、使用可能なインクの種類の制限を緩和できる。
【0083】
また、インクジェット印刷装置1では、インクポンプを使用しないので、インクポンプの脈動によるノズル圧変動をなくすことができる。これにより、ノズル圧変動によりインク吐出量がばらつくことによる印刷画質の低下を軽減できる。
【0084】
また、インクジェット印刷装置1では、インク送液中のインクタンク対20ではインク補給および圧力生成を行わない。このため、印刷中において、インク補給時のインクタンク12の液面変動によるノズル圧変動、および圧力生成時のインクタンク12の圧力変動によるノズル圧変動は生じない。これにより、ノズル圧変動によりインク吐出量がばらつくことによる印刷画質の低下を軽減できる。
【0085】
なお、インクタンクが十分に大きい容量を有する場合、圧力変動を吸収できるため、インク送液中のインクタンク対でもインク補給および圧力生成の少なくともいずれか一方を行うようにすることも可能である。
【0086】
また、上述の実施の形態では、2組のインクタンク対を備える構成を示したが、3組以上のインクタンク対を備える構成でも本発明は適用可能である。インクタンク対が3組以上の場合、インク送液中のインクタンク対以外では準備処理を行っておき、インク送液を行うインクタンク対を準備済みのインクタンク対に順次切り替えるように制御すればよい。
【0087】
本発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。