(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る成分測定装置、この装置の測定モード設定方法及びプログラムについて、好適な実施形態(第1〜第4実施形態)をあげ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0029】
〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態に係る成分測定装置10は、
図1に示すように、血液(液体)中のグルコース成分を検出し、その検出値に基づき血糖値(グルコース成分の成分量)を測定する血糖計10として構成されている(以下、血糖計10ともいう)。また、血糖計10は、主に医療施設内で医師や看護士等の医療従事者(ユーザ)が使用するPOCT用の装置として構成されており、医療従事者や患者を識別する機能や患者毎の血糖値データの記録や呼び出しを行う機能を有している。さらに、血糖計10は、これらの記録データを自動転送や病院内サーバに接続して転送し、電子カルテ等のツールと連動して測定者、日時、治療行為、精度確認記録と関連付けてデータを管理する機能を持っていてもよい。なお、血糖計10は、患者自身が自己の血糖値を測定するSMBG器として使用されてもよい。
【0030】
血糖計10は、血液を取り込むチップ12と、チップ12を着脱自在に装着して光学的な測定により血糖値を得る装置本体14とを含む。チップ12は、1回の測定毎に廃棄するディスポーザブルタイプに構成される一方で、装置本体14は、ユーザが血糖値の測定を繰り返すことができるように、携帯可能且つ頑強な機器に構成される。また、落下防止による破損防止のためにストラップ等の保持具が脱着可能に装着されていてもよい。
【0031】
チップ12は、
図1及び
図2に示すように、装置本体14内に挿入固定がなされる円筒状の取付部16と、取付部16から先端に突出するノズル18とを含む。ノズル18の中心には、先端部から取付部16内に向かって直線状に延びる血液導入路18aが設けられ、取付部16内には試験紙20が収容されている。取付部16、ノズル18を含むチップ本体19は所定の剛性を有する剛性材料で構成されている。このような剛性材料としては、例えば、アクリル系樹脂等の親水性の高い材料又は親水化処理された各種樹脂材料が好ましく、外乱光を通過させない処理がされていることがより好ましい。
【0032】
試験紙20は、血液(検体)を吸収可能な担体に、試薬(発色試薬)を担持(含浸)させたものである。この担体は、好ましくは多孔性膜(シート状多孔質基材)で構成されている。この場合、多孔性膜は、血液中の赤血球を濾過できる程度の孔径を有するものが好ましい。試験紙20の担体としては、多孔性膜の他に、例えば、不織布、織布、延伸処理したシート等のシート状多孔質基材があげられる。
【0033】
多孔性膜等の担体の構成材料としては、ポリエステル類、ポリアミド類、ポリオレフィン類、ポリスルホン類又はセルロース類等があげられるが、試薬を溶解した水溶液を含浸させたり、血液の採取時には血液の吸収・展開を迅速に行うため、親水性を有する材料又は、親水化処理されたものが好ましい。
【0034】
担体(多孔性膜)に含浸する試薬としては、血糖値測定用の場合、例えば、グルコースオキシダーゼ(GOD)、ペルオキシダーゼ(POD)等の酵素試薬と、例えば4−アミノアンチピリン、N−エチルN−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−m−トルイジンのような発色試薬とがあげられ、その他、測定成分に応じて、適宜選択される。
【0035】
チップ12は、試験紙20内部に担持された試薬の経時変化を低減すべく、専用の容器内に封入した状態で保管される。
【0036】
血糖計10により血糖値を測定する際には、ユーザが装置本体14にチップ12を装着した後、ノズル18の先端部に患者の血液を点着する。点着された血液は、毛細管現象に基づき血液導入路18aを介して試験紙20に導かれ、試験紙20内部で展開した後、試験紙20内に担持された試薬と反応することで呈色する。呈色反応は、血液内に含まれたグルコース量に応じて色濃度が変化するため、色濃度の変化量を検知し、血糖値として算出する。この時、計算誤差となりうる要因は補正計算が追加され、血漿中グルコース濃度値に近い計算値となるよう補正工程が設けられる。補正される要因としては、血液濃度(ヘマトクリット値)、測定温度、試験紙ロット、患者の服用薬等があげられる。
【0037】
そして、血糖計10は、複数種類のチップ12を装置本体14に装着して、血糖値を測定することが可能となっている。チップ12の種類としては、例えば仕様変更される場合、製造原料や構成が違う等により試験紙20が異なる場合、チップ12の形状(例えば、軸方向長さ)、試験紙構造、試薬種類が異なる場合等があげられる。
【0038】
図1に示すように、装置本体14は、外観を構成する筐体22を有する。筐体22は、ユーザが片手で把持し易いようにやや細長く、その先端部が先端方向に向かって細くなりつつ下側に若干屈曲することで、血液の点着操作が容易な形状に形成されている。この筐体22の先端側には、チップ12が取り付けられる被装着部24と、被装着部24に装着されたチップ12を取り外すイジェクタ26とが設けられている。また、筐体22の上面には、モニタ28及び操作ボタン群30が設けられ、筐体22の基端面にはバーコードリーダ32が設けられている。筐体22は、血液が付着した際の洗浄用に、水や薬品の浸水時耐水性があってもよく、表面加工や隙間をできるだけ排除する等、拭き取り易い構造とされてもよい。
【0039】
被装着部24は、血糖計10の先端部に形成され、上述したチップ12を装着可能な円筒型に形成されている。被装着部24には、携帯時に先端部を保護し、測定時に脱着可能なキャップ24aが落下防止持具24bと共に装着されていてもよい。被装着部24の内部には、複数種類のチップ12を取り付ける取付手段が設けられている。取付手段は、特に限定されるものではないが、例えば、チップ本体19が外圧によって割れにくい素材で成形され、被装着部24に向かって押圧した際に筐体22との隙間に外周部が押し込まれて装着される方法や、被装着部24の形状が先端から徐々に径が大きくなるテーパー形状で、滑りのよい部材とすることで、チップ12が被装着部24に向かって押圧された際に、被装着部24が自然に拡大して装着され、密着保持するように設計される方法等があげられる。本実施形態に係る血糖計10は、被装着部24内で突出する後記のブロック体42の先端部を所定の厚みを有する弾性部材43で構成している。これにより、チップ12は、種類に応じて、軸方向長さが異なる又は取付部16の形状が多少異なったとしても、被装着部24内への取付部16の挿入にともない、弾性部材43を弾性変形させて密着することが可能となる。
【0040】
イジェクタ26は、筐体22内でイジェクトピン26aに連結しており、ユーザによる前方への押圧動作に応じて、被装着部24に装着されたチップ12を前方に押し出して離脱させる。これによりユーザは、密着するように装着したチップ12を容易に取り外すことができ、さらに血糖値の測定後に血液の付着したチップ12に触れることなくチップ12の廃棄が可能となる。よって、ユーザの作業効率が向上されると同時に、病院内で発生する汚染血液による感染リスクを低減させ得る。
【0041】
また、装置本体14に設けられるモニタ28は、液晶や有機EL等により構成され、血糖値、日時又はその他の情報(例えば、エラーや測定手順)等、血糖値の測定においてユーザに提供する情報を表示する。
【0042】
操作ボタン群30は、
図1に示すように、電源ボタン30a、移動ボタン30b、選択ボタン30c、LED表示部30d及びデータ読取ボタン30eを含む。移動ボタン30bは、モニタ28に表示される項目に対し選択枠を移動させる、或いは操作に伴い画面をスクロールさせる機能を有する。選択ボタン30cは、ユーザの押圧操作に伴い、モニタ28上において選択枠が位置する項目の機能を選択する、又は選択を解除して選択前の画面に戻る等の機能を有する。LED表示部30dは、LEDにより種々の色で点灯又は点滅して、血糖計10の状態を報知する。データ読取ボタン30eは、モニタ28と被装着部24との間に設けられ、バーコードリーダ32の読み取りを操作する。なお、電源投入においては電源ボタン30aの押圧時に限定されず、チップ12の装着、キャップ24aの取り外し等を感知して電源の入った状態へ変化する設定になり得、電源切断についても電源ボタン30aの押圧時に限定されず、シグナル通信の中断やチップ12の除去によって状態が変化することを含む。
【0043】
バーコードリーダ32は、図示しないバーコードをレーザスキャンによって読み取る機能を有している。読み取られるバーコードは、例えば、患者、医療従事者等に予め装着又は貼付されている。血糖計10は、それぞれのバーコードを読み取ることで、患者識別データ、計測者識別データを取得して、血糖測定値データや治療行為、他の測定値と関連付けて、所定のデータベース(図示せず)に保存する。
【0044】
また、装置本体14は、
図2に示すように、検出部34、A/D変換器36及び制御回路40を筐体22の内部に備える。検出部34は、チップ12に採取した血液に対し光学的な検出を行う構造部である。この検出部34は、ブロック体42、レンズ44、基板46、発光部48及び受光部50を備えている。
【0045】
検出部34のブロック体42は、筐体22の先端側内部に固定され、その先端側においてレンズ44を保持すると共に、基端側において基板46を保持している。ブロック体42の基端側内部には、基板46に実装された発光部48及び受光部50が挿入配置される。また、ブロック体42内には、発光部48が投光した測定光をレンズ44まで導く測定光用光路42aと、レンズ44から試験紙20までの空間部42bと、試験紙20から反射した反射光をレンズ44から受光部50まで導く反射光用光路42cとが設けられる。
【0046】
発光部48は、照射手段として試験紙20上に光を照射する光源である。発光面が試験紙20を向くように調整して筐体22に取り付けられ、レンズ44によって集光、照射される。測定に用いる波長領域は、測定試薬の波長特性に応じて選択され、阻害要因の波長領域の影響を受けない範囲で設定されるため、例えば500〜720nm程度の波長範囲で設定される。本実施形態では異なる波長の光を出射するため、3つの発光素子(第1発光素子48a、第2発光素子48b、第3発光素子48c)によって構成される。第1発光素子48aは、グルコース成分の成分量に応じた試薬の呈色濃度を検出する波長(例えば、620〜640nm)で第1測定光L1を出射する。第2発光素子48bは、血液中の赤血球濃度を検出する波長(例えば、510〜540nm)で第2測定光L2を出射する。第3発光素子48cは、チップ12内の試験紙20の種類を判別するための素子であり、第1及び第2測定光L1、L2の検出用波長範囲からずれる波長(例えば、400〜500nmや800〜900nm)で第3測定光L3を出射する。第1〜第3発光素子48a、48b、48cとしては、例えば、LED素子、有機EL素子、無機EL素子、LD素子等を用いることができる。
【0047】
受光部50は、試験紙20により反射された反射光を受光し、この反射光に関わる(反射光強度に応じた)電流を出力する1又は複数の受光素子50aによって構成される。受光素子50aとしては、例えば、PD素子、CCD素子、CMOS素子等を用いることができる。
【0048】
また、A/D変換器36は、検出部34の基板46に電気的に接続され、受光部50が出力する電流信号(アナログ信号)を、適宜増幅すると共に電圧信号(デジタル信号)に変換し、検出値d(電流の情報)として出力する。
【0049】
制御回路40は、入出力I/F52、プロセッサ54、メモリ56等を有するコンピュータ(制御部)として構成されており、血糖計10全体の動作を制御する機能を有している。例えば、制御回路40は、検出部34の駆動を制御すると共に、検出部34が検出してA/D変換器36により変換された検出値dを受信して血糖値を測定する。また、制御回路40は、測定した血糖値を患者識別データに紐付けてデータベースに記憶すると共に、モニタ28に表示させる。
【0050】
制御回路40は、メモリ56に記憶されている成分測定プログラム56aをプロセッサ54が読み出して実行することで、
図3に示すように血糖値を測定する測定処理部58を構築する。測定処理部58は、検出部駆動部60、検出値取得部62、血糖値算出部64及び測定モード設定部66を含んで構成される。
【0051】
検出部駆動部60は、制御回路40からの信号により作動し、所定の時間間隔でパルス光を発する。このパルス光は、周期が0.5〜3.0msec程度、1パルスの照射時間が0.05〜0.3msec程度とされる。本実施形態では、3つの異なる波長を用いて、グルコース濃度の測定、補正用のヘマトクリット値の測定、チップ12の種類判別を実施するため、電源の投入後、3種の異なる波長を順番に切り替える連続照射を開始する。
【0052】
検出値取得部62は、検出部34からA/D変換器36を介して送信される検出値dを受信して、メモリ56に一時的に記憶させる。検出値取得部62は電源投入もしくは測定モード切替の直後に起動し、試験紙20の表面からの反射光量値を照射波長毎に自動的に記録する。この記録時間はメモリ56の記憶可能なデータ量を考慮して決定されるが、1秒間に複数回行われることが望ましい。また、測定した反射光量の変化量に応じて回数を変動してもよく、変化量が多いほど単位時間あたりの測定点を多くして計算精度を確保しつつ、使用メモリ数を節約することができる。
【0053】
血糖値算出部64は、検出値取得部62が取得した検出値d(電流値)に基づき、血糖値を算出してモニタ28に表示させる機能部である。血糖値算出部64は、まず検出値dから吸光度を算出し、次に吸光度から仮血糖値を算出し、さらに仮血糖値に対してヘマトクリット補正を行うことで、測定結果としての血糖値を得ている。また、血糖値算出部64は、算出した測定情報である血糖値を表示情報に生成してモニタ28に送信し、患者の血糖値を適切な表示形態で表示させる。さらに、血糖値算出部64は、血糖値を患者識別データ及び計測者識別データと紐付けてメモリ56に記憶する。これにより、血糖計10は、患者毎の過去の血糖値を読み出して表示することができる。或いは、血糖計10は、病院内で電子カルテを有しているサーバに自動的に(又はユーザの操作に応じて)、これらのデータを送信する。
【0054】
一方、測定モード設定部66は、チップ12の種類に応じて血糖値を測定する際の測定モードを設定する機能を有している。上述したように血糖計10は、複数種類のチップ12を装着することが可能であり、この場合、チップ12の種類が異なっても同様の血糖値を測定するために、チップ12の種類に応じて測定モードを変更する必要が生じる。例えば、測定モードには、発光部48から投光する測定光の光量、受光部50が反射光を受光して出力する電流(検出値d)の増幅量、血糖値算出部64での検出値dや算出値に対する補正量等を調整することがあげられる。測定モードにおける上記の各量は、単独で調整されてもよく、複数組み合わせて調整されてもよい。
【0055】
測定モード設定部66は、装置本体14へのチップ12の装着後で血糖値を測定する前に、測定モードを設定する処理である測定モード設定方法を行う。この際、測定モード設定部66は、検出部駆動部60を駆動させて、血液を採取する前(ブランク)の試験紙20に、事前光として第3測定光L3を照射させる。そして、測定モード設定部66は、試験紙20が反射した第3測定光L3の反射光に基づく検出値(以下、血糖値の測定時の検出値dと区別するため事前検出値pdという)を、受光部50からA/D変換器36、検出値取得部62を介して取得する。なお、特徴量算出用の第3測定光L3の照射は、血糖測定用の第1及び第2測定光L1、L2のブランク測定と同時もしくは数秒以内の間隔で実施されてもよい。
【0056】
また、測定モード設定部66は、測定モードの設定を行う機能部として、特徴量算出部68、特定部70及びモード選択部72を内部に構築する。
【0057】
特徴量算出部68は、検出値取得部62が取得した事前検出値pdに基づき、チップ12内に収容されている試験紙20の特徴量を算出する。試験紙20の特徴量は、特に限定されず、第1実施形態では、所定の波長の第3測定光L3を反射した際の光量を利用している。
【0058】
特定部70は、特徴量算出部68が算出した特徴量に基づき、試験紙20の種類を判別する。例えば、特定部70は、複数種類のチップ12に応じた判別用閾値を1以上有しており、受け取った特徴量と判別用閾値とを比較することで、試験紙20の種類を特定する。
【0059】
以下、第1実施形態に係る試験紙20の特徴量の算出の原理、及びこの特徴量に基づく試験紙20の種類の判別方法について、
図4〜
図5Cを参照してより具体的に説明していく。
【0060】
試験紙20(チップ12)は、血糖値の測定において、第1発光素子48aから第1測定光L1が照射されることにより、
図4に示すような反射光スペクトルを有する反射光を反射する。なお、
図4中の実線で示す波形は、ブランクの試験紙20が反射する反射光である。一方、
図4中の1点鎖線で示す波形は、血液を採取して、ある成分量(例えば、血糖値が100[mg/dL])のグルコース成分により呈色した試験紙20が反射する反射光である。
【0061】
すなわち、試験紙20は、620〜640nmの第1測定光L1が投光されるため、ブランク時及び血糖値の測定時に、620〜640nmにピークを有する反射光を反射する。血糖計10は、この反射光において大きな変化を示すピーク周辺の反射光の光量の減少率(吸光度)に基づき血糖値を算出する構成と言うことができる。なお、血液中のヘマトクリット値は、510〜540nmの第2測定光L2を試験紙20に投光して、その反射光を検出することで算出される。
【0062】
このことから、第1又は第2測定光L1、L2を反射した際の試験紙20の反射光は、500nm以下及び800nm以上の波長では、ブランク時と、血糖値の測定時とを比較しても概ね変動していない。つまり、反射光の波長が400〜500nm又は800〜900nmの範囲では、概ね同じ光量が検出される。そこで、第1実施形態に係る血糖計10は、この血糖値の測定に大きく関与しない反射光の波長である400〜500nm又は800〜900nmの範囲を利用して試験紙20の種類を判別する構成となっている。
【0063】
詳細には、
図5Aに示すように、所定波長の(例えば、450nmにピークを有する)第3測定光L3を、第3発光素子48cからブランクの試験紙20に投光してその反射光を検出する。この反射光は、
図5Cに示すように、450nmにピークを有する山形の波形となり、チップ12(試験紙20)の種類が異なる場合には、異なるピーク値(光量)で検出されることになる。例えば、試験紙20自体における材質、着色、表面加工構造による反射光量調節、試験紙20に含有されている試薬の種類や試薬の組成比率、試験紙20の厚さ方向に対する試薬の層状塗布、試験紙20の表面上での試薬の偏重塗布等、試験紙20をチップ本体19へ取り付けた後の加圧操作による表面加工、或いは試験紙20の経時的な変化によって反射光の光量が変動する。
【0064】
一例として、
図5Aに示すチップ12
X1の試験紙20
X1と、
図5Bに示すチップ12
Y1の試験紙20
Y1とは、第3発光素子48cから同じ光量の第3測定光L3が投光されても、
図5Cに示すように異なるピークで反射光を反射する。なお、
図5C中において、実線で示す波形が試験紙20
X1の反射光であり、2点鎖線で示す波形が試験紙20
Y1の反射光である。
【0065】
そのため、測定モード設定部66の特徴量算出部68は、第3測定光L3の反射光に基づく事前検出値pdを検出値取得部62が取得すると、この事前検出値pdに積分等の演算を行うことで、反射光の光量(吸光度)を算出する。これにより、装置本体14に、試験紙20
X1が装着されている場合は
図5C中の実線で示す光量が算出され、試験紙20
Y1が装着されている場合は
図5C中の2点鎖線で示す光量が算出される。
【0066】
特定部70は、特徴量算出部68が算出した光量に基づき、試験紙20の種類(試験紙20
X1、試験紙20
Y1)、換言すればチップ12の種類(チップ12
X1、チップ12
Y1)を特定する。特定部70は、特徴量算出部68が算出する光量に対応した判別用閾値を有し、この判別用閾値より大きい場合には試験紙20
X1を特定し、判別用閾値以下の場合には試験紙20
Y1を特定する。
【0067】
図3に戻り、モード選択部72は、特定部70が特定した試験紙20の種類(試験紙20
X1、試験紙20
Y1)に基づき測定モードを設定する。例えば、メモリ56内には、試験紙20の種類に対応する測定モードデータMDが予め記憶されている。モード選択部72は試験紙20
X1が特定された場合に、メモリ56から測定モードデータMD1を選択して測定モードを設定する。一方で、試験紙20
Y1が特定された場合には、メモリ56から測定モードデータMD2を選択して測定モードを設定する。なお、測定モード設定部66は、基準の測定モードデータMDを予め保有しており、判別された試験紙20の特徴量に応じて、基準の測定モードの制御量を補正することで、試験紙20の種類に応じた測定モードを設定してもよい。
【0068】
そして、測定処理部58は、モード選択部72で読み出した測定モードデータMDを設定することで、以降の血糖値の測定時には、測定モードデータMDに応じた動作を検出部34、A/D変換器36又は制御回路40等に実施させる。
【0069】
第1実施形態に係る血糖計10は、基本的には、以上のように構成されるものであり、以下、血糖計10が実施する測定モード設定方法(処理フロー)及びその作用効果について説明する。なお、以下では、血糖値を測定する際に、種類の異なるチップ12
X1、12
Y1(まとめてチップ12という)のいずれかを、ユーザが装置本体14に装着する場合について述べていく。
【0070】
装置本体14の制御回路40は、ユーザによる電源ボタンのON操作に基づき駆動を開始し、
図3に示す機能部を構築し、また被装着部24に対しチップ12が装着された否かを検出する(ステップS1)。チップ12の装着は、ユーザの選択ボタン30cの操作や受光部50の検出値(例えば、チップ12が装着されて遮光されることで検出値が所定値以下となっているか否か)等により検出される。
【0071】
電源投入と同時もしくは、チップ12の装着の検出後(ステップS1:YES)に、測定処理部58の検出部駆動部60は、第3発光素子48cから事前光として第3測定光L3を投光させる(ステップS2)。検出部34は、チップ12内の試験紙20への第3測定光L3の投光に伴い、その反射光を受光部50により受光して事前検出値pdを出力する。
【0072】
検出値取得部62は、受光部50からA/D変換器36を介して事前検出値pdを取得し(ステップS3)、この事前検出値pdをメモリ56に一旦記憶すると共に、測定モード設定部66に提供する。測定モード設定部66の特徴量算出部68は、提供された事前検出値pdに基づき、第3測定光L3の反射光の光量を算出する(ステップS4)。特徴量算出部68により算出された光量は、特定部70に提供される。
【0073】
次に、特定部70は、提供された光量と判別用閾値を比較する(ステップS5)。そして、光量が判別用閾値よりも大きい場合(ステップS5:YES)には、装置本体14に装着されたチップ12の試験紙20が試験紙20
X1であることを識別し、ステップS6に進む。一方、光量が判別用閾値よりも小さい場合(ステップS5:NO)には、装置本体14に装着されたチップ12の試験紙20が試験紙20
Y1であることを識別し、ステップS7に進む。
【0074】
モード選択部72は、試験紙20
X1の特定に基づき、ステップS6において、メモリ56から測定モードデータMD1を選択する。これにより測定モード設定部66は、血糖値の測定モードとして測定モードデータMD1を設定する。一方、ステップS7において、モード選択部72は、試験紙20
Y1の特定に基づき、メモリ56から測定モードデータMD2を選択する。これにより測定モード設定部66は、血糖値の測定モードとして測定モードデータMD2を設定する。
【0075】
そして、測定モード設定部66が測定モードを設定した後は、測定処理部58は、測定モード設定方法を終了し、血糖値の測定を開始する。血糖値の測定においては、例えば、測定モード設定部66が設定した測定モードの光量となるように検出部駆動部60が第1及び第2発光素子48a、48bの第1及び第2測定光L1、L2の光量を制御する。そして、試験紙20により第1及び第2測定光L1、L2が反射した反射光を受光部50が検出し、測定モード設定部66が設定した測定モードに応じて、検出値dを適宜補正及び算出処理することにより血糖値を算出する。一方、チップ12の装着不良によって、反射光量が減少するため、受光量の多い設定モード時のチップ12の装着不良が、受光量の少ない設定で測定可能となるモードとして誤認される危険性があげられる。この対策として、チップ12判別用の第3発光素子48cでの判断と合わせて、検出用の第1及び第2発光素子48a、48bの波長における反射光量による判断を実施する設定とすることで、モードの誤認識による測定不良を防止することができる。
【0076】
以上のように、第1実施形態に係る血糖計10(成分測定プログラム56a)、及び測定モード設定方法は、チップ12(試験紙20)の種類を特定し、その種類に応じた測定モードを設定するので、血糖値を精度よく測定することができる。すなわち、通常は、チップ12の種類が異なるにもかかわらず、同じ測定モードで成分量を測定するため、測定精度の低下を招くことになる。これに対し、血糖計10は、チップ12の種類が異なっても、その種類を特定して血糖値を測定するので、測定精度が向上する。またユーザは、設定の手間が軽減されるので、結果的に迅速な測定を行うことができ、煩わしさも低減される。さらに血糖計10は、試験紙20やチップ12が仕様変更等された後に、市場に類似の商品が混在するとしても、旧仕様と改善品の混同による事故が防止できる。よって、旧仕様の機器も消耗品を使用できる限りは継続的な使用が可能であり、汎用的で、ユーザの利便性に応えたものとなる。
【0077】
この場合、血糖計10の測定モード設定部66は、特徴量算出部68(特徴量抽出部)及び特定部70を有することで、抽出した第3測定光L3の反射光の光量(特徴量)により、識別性を大幅に向上させて試験紙20の種類を特定することができる。さらに、特徴量算出部68が抽出する特徴量が、血糖値の検出を行う前の第3測定光L3の事前検出値pdから算出した光量であることで、この光量に対応する試験紙20の種類を良好に特定することが可能となる。これに加えて、第3発光素子48cから第3測定光L3を投光し、特徴量算出部68がその反射光の光量を算出するため、第1及び第2測定光L1、L2の波長に依存しない波長範囲で試験紙20の特徴量を抽出することができる。よって例えば、新たな仕様のチップ12を提供する際に、第3測定光L3を充分に反射可能な試験紙20を採用することで、血糖計10は、その試験紙20に応じた測定モードを簡単に実施することができる。
【0078】
なお、上記の第1実施形態では、2種類の試験紙20
X1、20
Y1を特定する場合について説明したが、血糖計10は3種類以上の試験紙20を特定し得ることは勿論である。例えば、事前検出値pdから算出される第3測定光L3の反射光の光量を、3段階以上に分けることで3種類以上の試験紙20を特定することが可能となる。また、第3発光素子48cが投光する第3測定光L3の波長は、上記に限定されず、例えば、800〜900nmの範囲、400nm以下、或いは900nm以上の波長にピークを有するものでもよい。また、上記の実施形態では、第3発光素子48cによる特徴量照射部位は、血糖測定に用いる試薬反応部位とほぼ同範囲である場合について述べたが、特徴量判別用に照射部位をずらしてもよい。この場合、特徴量判別用の照射部位のみに試験紙の色を変える、構造を変化させる等、局所的な変化を持たせることができ、より確実な試験紙20の特定が可能となる。
【0079】
さらに、血糖計10は、第3測定光L3の反射光の光量(特徴量)に基づき、測定モードの制御量(発光部48が投光する光量、検出値の増幅量、又は血糖値算出部64における算出値の補正量)を詳細に調整してもよい。これにより、血糖値の測定をより一層高精度に行うことができる。
【0080】
なお、本発明に係る血糖計10(成分測定装置10)は、上記の実施形態に限定されないことは勿論であり、以下、いくつかの実施形態について説明する。以降の説明において、第1実施形態と同一の構成又は同一の機能を有する構成には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0081】
〔第2実施形態〕
第2実施形態に係る血糖計10Aは、チップ12の種類として発光部48(又は受光部50)と試験紙20との間の距離が異なることを特定して測定モードを設定する点で、第1実施形態に係る血糖計10と異なる。血糖計10Aの測定処理部58A以外の構造は、基本的に、血糖計10と同様の構成をとり得るが(
図2及び
図3参照)、発光部48の第3発光素子48cは具備していなくてもよい。
【0082】
例えば、血糖計10Aは、仕様変更等により、
図7A及び
図7Bに示すようにチップ12の軸方向の長さが変わることで、装置本体14への装着状態で、発光部48と試験紙20の間の距離が異なる場合がある。
図7Aは、発光部48と試験紙20
X2の距離Aが基準であるチップ12
X2を示しており、
図7Bは、発光部48と試験紙20
Y2の距離Bが距離Aよりも長いチップ12
Y2を示している。
【0083】
このように、発光部48と試験紙20の間の距離A、Bが異なると、
図7Cに示すように、試験紙20から反射される反射光の光量が変動する。なお、
図7C中において、実線で示す光量の変化率は、第1測定光L1を反射した場合であり、1点鎖線で示す光量の変化率は、第2測定光L2を反射した場合である。図中に示されるように第1測定光L1のほうが距離に応じた変化率が大きいため、以下では、事前光として第1測定光L1を投光した場合について説明する。
【0084】
詳細には、
図7Aに示す距離Aのチップ12
X2の場合は、予め規定される基準の光量に近い光量を反射する。その一方で、血糖計10Aは、試験紙20が基準から遠くなるに連れて、基準の光量に対して光量を減らすことになり、例えば、試験紙20と発光部48との間の距離が0.3mm遠くなるだけでも、光量は約10%の変化率で低下する。
図7Bに示す距離Bのチップ12
Y2の場合は、基準の光量に対して10〜20%減少した光量で反射光を反射する。
【0085】
このため、血糖計10Aの測定処理部58Aは、第1発光素子48aから試験紙20に所定の光量の第1測定光L1を投光させ、試験紙20が反射した第1測定光L1の反射光を受光部50により受光して事前検出値pdを取得する。また、測定処理部58Aは、
図3に示すように、特徴量算出部68A、特定部70A及びモード選択部72を有する測定モード設定部66Aを構築する。
【0086】
特徴量算出部68Aは、測定モード設定方法に使用するための基準の光量のデータを有する。そして、特徴量算出部68Aは、検出値取得部62が取得した事前検出値pdから反射光の光量を算出すると、さらに基準の光量に対する事前光の反射光の光量の変化率Cを算出し、この変化率Cをチップ12(試験紙20)の特徴量として特定部70Aに出力する。
【0087】
特定部70Aは、変化率Cに応じて複数種類のチップ12を特定するためのマップ(例えば
図7Cに示すようなグラフ)を予め有している。そして、特徴量算出部68Aが算出した変化率Cを受けると、マップを参照して、チップ12の種類を特定する。例えば、
図7Cに示すように変化率Cが0〜−10%の範囲では、
図7Aに示すチップ12
X2(試験紙20
X2)を特定する。また例えば、
図7Cに示すように変化率Cが−10〜−20%の範囲では、
図7Bに示すチップ12
Y2(試験紙20Y
2)を特定する。
【0088】
モード選択部72は、特定部70Aが特定したチップ12の種類に基づき、メモリ56に記憶されている複数の測定モードデータMDの中から、チップ12の種類に対応する測定モードデータMDを選択する。そして、測定モード設定部66Aは、モード選択部72が選択した測定モードデータMDを設定して、その測定モードに応じた血糖値の測定を実施させる。
【0089】
以上のように第2実施形態に係る血糖計10Aも、血糖計10と同様に、異なる種類のチップ12(試験紙20)に応じて血糖値の測定モードを設定することができる。よって、血糖値を精度よく測定することが可能となる。また、血糖計10Aは、特徴量算出部68Aが基準の光量に対する反射光の光量の変化率Cを抽出することで、発光部48(又は受光部50)と試験紙20の間の距離を推定することができ、試験紙20の配置位置が異なるチップ12を簡単に特定できる。
【0090】
なお、血糖計10Aは、事前光として第2測定光L2を投光してその反射光から事前検出値pdを取得し、反射光の光量の変化率Cを抽出し、チップ12の種類を特定する構成でもよい。この場合、血糖計10Aは、第1測定光L1と第2測定光L2を交互に投光し、それぞれの事前検出値pdに基づきチップ12の種類を特定することで、チップ12の種類の識別精度をさらに向上することができる。また、発光部48は、第1及び第2発光素子48a、48bとは異なる発光素子を備え、その発光素子が投光した反射光の変化率Cを抽出し、チップ12の種類を特定する構成でもよい。このとき、チップ12の装着不良を区別するために、電極等の認識プローブをチップ本体19に設置することで、認識性能を向上させる手段を追加することができる。
【0091】
さらに、血糖計10、10Aは、事前光として第1又は第2測定光L1、L2を投光しその反射光の光量の変化率に基づき試験紙20の距離を特定し、さらに第3測定光L3を投光しその反射光の光量に基づき試験紙20の種類を特定する構成であってもよい。
【0092】
〔第3実施形態〕
第3実施形態に係る血糖計10Bは、第1及び第2実施形態に係る血糖計10、10Aと異なり、
図8に示すように、酵素電極法を実施する装置に構成されている。そのため、装置本体14の検出部80は、チップ12の装着状態で、試験紙20に接触する一対の電極80a、80bを有し、試験紙20に採取された血液中のグルコース成分と試薬が反応することで生じる電子(電流)を得ている。
【0093】
一対の電極80a、80bは、バッテリ82及び電流計84に接続されており、バッテリ82の供給電力をバイアスとして、グルコース成分の成分量に比例した検出値dを出力する。一方、
図9A及び
図9Bに示すように、チップ12の試験紙20には、一対の電極80a、80bが電気的に接触するための一対の端子21が設けられている。このとき、円柱形状のチップ12に関しては、取付方向を特定するガイドや目印が付けられているか、端子21が円周状に設定されているとよい。なお、
図9A及び
図9B中では、試験紙20が平面視で円形状に形成されているが、試験紙20の形状は特に限定されず、例えばチップ12が長方形状であれば、それに合わせて長方形状の試験紙20を用いてよい。
【0094】
図8に戻り、血糖計10Bは、検出された電流を電流計84で計測して、その値(検出値)を制御回路40に出力する。これにより、
図3に示す検出値取得部62が検出値dを取得し、測定処理部58Bの血糖値算出部64は、取得した検出値dに適宜の処理(酵素電極法の算出過程)を実施することで、血糖値を算出しモニタ28に表示する。
【0095】
そして、第3実施形態に係る測定処理部58Bも、チップ12(試験紙20)の種類を特定して測定モードを設定する測定モード設定部66Bを備える。すなわち、酵素電極法を行う場合でも、試験紙20又はチップ12の種類が異なると、測定モードを変更する必要が生じるため、血糖計10Bは測定モード設定方法を行うように構成されている。
【0096】
具体的には、
図9A及び
図9Bに示すように、仕様変更等により試験紙20の種類(試薬の変更を含む)が変わる可能性がある。この場合、試験紙20の特徴量として試験紙20自体の内部抵抗Rが変化する。例えば、
図9Aは、小さな内部抵抗R1を有する試験紙20
X3(チップ12
X3)を示しており、
図9Bは、大きな内部抵抗R2を有する試験紙20
Y3(チップ12
Y3)を示している。このように試験紙20の内部抵抗Rが変わると、血糖値の検出時に試験紙20の電流量が変動する。
【0097】
そのため、測定モード設定部66Bは、血糖値の測定前に、検出部駆動部60を駆動してバッテリ82から試験紙20に所定の電力(電流及び電圧)を供給させる。これにより試験紙20は、その内部抵抗Rに応じた電流を流動させることになり、検出値取得部62は試験紙20からの事前検出値pd(事前電流値)を取得する。
【0098】
また、血糖計10Bの測定モード設定部66Bは、
図3に示すように、特徴量算出部68B、特定部70B及びモード選択部72を有している。特徴量算出部68Bは、取得した事前検出値pdから試験紙20の特徴量として内部抵抗Rの抵抗値を算出する。特定部70Bは、内部抵抗Rに対応する判別用閾値、又は抵抗値と試験紙20の種類を対応させたマップ等を有しており、特徴量算出部68Bが算出した特徴量に基づき、試験紙20の種類を特定する。また、モード選択部72は、第1及び第2実施形態と同様に、特定した種類の試験紙20に対応する測定モードデータMDを選択する。
【0099】
これにより、測定モード設定部66Bは、モード選択部72が選択した測定モードデータMDを設定し、血糖値の測定時に、その測定モードに従って測定を実施させる。例えば、血糖計10Bは、血糖値の測定時に、測定モードに応じて、バッテリ82から試験紙20に供給する電力を調整する、検出部80が検出した際の電流の増幅量を調整する、血糖値の算出過程での補正量を調整する等の処理を行う。
【0100】
以上のように第3実施形態に係る血糖計10Bも、血糖計10、10Aと同様に、異なる種類のチップ12(試験紙20)に応じて血糖値の測定モードを設定することができる。よって、血糖値を精度よく測定することが可能となる。また、特徴量算出部68Bが抽出する事前検出値pdは、試験紙20が有する内部抵抗Rによって変動するので、特定部70Bは、内部抵抗Rに対応する試験紙20の種類を良好に特定することができる。
【0101】
〔第4実施形態〕
第4実施形態に係る血糖計10Cは、血糖計10Bと同様に酵素電極法を実施するが、
図10Aに示すように、装置本体14の検出部90が血糖値を検出するための一対の電極90a、90bとは別の種類特定用電極92a、92bを有する点で、血糖計10Bと異なる。すなわち、種類特定用電極92a、92bは、試験紙20(チップ12)の種類を特定するための構成として設けられたものである。
【0102】
また、血糖計10Cの装置本体14は、一対の電極90a、90bから試験紙20に電力を供給するバッテリ94を有すると共に、一対の電極90a、90bを流動する電流を検出する電流計96を有する。そして、一対の種類特定用電極92a、92bにも電流を検出する電流計98を有する。一方、異なる種類のチップ12として、端子21の他に、
図10B及び
図10Cに示すように種類特定用電極92a、92bに接触可能な特定用端子93a、93bを有するチップ12
X4と、この特定用端子93a、93bを備えないチップ12
Y4とが存在する。
【0103】
制御回路40の測定処理部58C(
図3参照)は、電極90a、90bから出力される電流値を検出値dとして検出すると共に、種類特定用電極92a、92bと特定用端子93a、93bの通電の可否に基づきチップ12の種類を判別する。例えば、測定モード設定部66Cは、電流計98が出力する事前検出値pdが所定以上であれば、
図10Bに示す電流を導通する試験紙20
X4(チップ12
X4)であることを特定する。つまり、種類特定用電極92a、92bと特定用端子93a、93bが通電していることを判別する。その一方で、測定モード設定部66Cは、事前検出値pdが0又は0付近であれば、
図10Cに示すように非通電であると判別し、試験紙20
Y4(チップ12
Y4)であることを特定する。
【0104】
以上のように、血糖計10Cは、試験紙20の通電の可否を判別するだけでも、試験紙20の種類を特定することができる。従って、血糖計10Cも、血糖計10、10A、10Bと同様に、異なる種類のチップ12(試験紙20)に応じて血糖値の測定モードを設定して、血糖値を精度よく測定することが可能となる。特に、血糖計10Cは、試験紙20の種類を専用に特定するための構造物である種類特定用電極92a、92bを有することで、種類の特定に特化した機能を持たせることが可能となる。
【0105】
なお、チップ12又は試験紙20の種類を特定するための構造物は、上記に限定されるものではない。例えば血糖計10、10A〜10Cは、所定の構造物を有するチップと、所定の構造物を有さないチップとを装置本体14に装着可能に構成され、装置本体14の制御回路40は、所定の構造部の有無を検知することで、チップ12の種類を特定することができる。
【0106】
本発明は、POCT器、特に血液中のグルコース濃度を測定する機器を中心に記述したが、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。医療現場で対象となる試料液としては、血液、尿、間質液、唾液等、実質的に生体から得られるサンプルの溶液が適応され、これは原液であっても化学処理等を行った実験生成物であってもよい。測定対象物としては、糖類、乳酸、各種コレステロール、核酸、抗体、抗原、蛋白質、ホルモン、菌、酵素、薬物、構成物質、医療生成物、組織マーカー、代謝物、化学物質等、サンプル中の発現、定量へ適応可能である。成分測定装置10は、測定対象が1種限定のPOCT器に限らず、他項目同時測定を実施可能なPOCT器、及び大型検査装置、或いは、排水や工業用試料等の成分測定を行う成分測定装置に適用することもできる。さらに、簡易型測定装置としては、血液中のグルコース成分の成分量を測定する自己血糖測定用のSMBG器だけでなく、液体中の所定成分の成分量を測定する種々の装置に適用することができる。例えば、尿の成分(ケトン体等)の測定する成分測定装置に適用してもよい。