特許第6691804号(P6691804)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6691804
(24)【登録日】2020年4月15日
(45)【発行日】2020年5月13日
(54)【発明の名称】螺子キャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 41/34 20060101AFI20200427BHJP
【FI】
   B65D41/34 100
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-70759(P2016-70759)
(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-178399(P2017-178399A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年2月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000228442
【氏名又は名称】日本クロージャー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100186897
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 さやか
(74)【代理人】
【識別番号】100194629
【弁理士】
【氏名又は名称】小嶋 俊之
(72)【発明者】
【氏名】島田 知
(72)【発明者】
【氏名】杉山 尚
(72)【発明者】
【氏名】大田 剛
【審査官】 蓮井 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−217966(JP,A)
【文献】 特開2002−37288(JP,A)
【文献】 特開平6−135452(JP,A)
【文献】 特開2009−234607(JP,A)
【文献】 特開2012−214230(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0132941(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 41/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺子係合により容器口部に固定されるキャップ本体と、筒状形状を有しており且つ該キャップ本体のスカート部下端に非破断連結片により連結されている開封履歴明示バンドとからなり、該バンドは上下方向に延びている少なくとも1個の分断面により、周方向に分割されており、この分断面がキャップの開栓に際して破断可能な破断ブリッジによって連結されている螺子キャップにおいて、
前記分断面を有する開封履歴明示バンドの内面には、キャップ開栓方向への回転は阻止するが閉栓方向への回転は許容するように、容器口部の外面に形成されている係合突起と係合可能なラチェットが複数設けられていると共に、
前記バンドの内面には、前記分断面に対して開栓方向側に位置する部分に、開閉栓に際して前記係合突起を乗り越え可能な少なくとも1個の凸部が設けられており、前記複数のラチェットは、全て該凸部に対して開栓方向側に形成されていることを特徴とする螺子キャップ。
【請求項2】
前記凸部が、前記分断面から開栓方向側45度以内の角度範囲に設けられている請求項1に記載の螺子キャップ。
【請求項3】
前記凸部が、前記ラチェットよりも前記バンドの内面からの突出高さが低い請求項1又は2に記載の螺子キャップ。
【請求項4】
前記分断面が複数形成されており、該分断面によって前記バンドが多分割され、該分断面により分割されている前記バンドの分割部のそれぞれについて、前記凸部及び複数のラチェットが形成されている請求項1から3の何れかに記載の螺子キャップ。
【請求項5】
前記TEバンドの内面には、該バンドの分割部当り、前記凸部と前記ラチェットとが合算で4つ以上設けられている請求項4に記載の螺子キャップ。
【請求項6】
前記非破断連結片が、折り返し部を有するストリップである請求項1〜5の何れかに記載の螺子キャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開封履歴明示バンド(TEバンド)を備えた螺子キャップに関するものであり、より詳細には、キャップの開封に際して、TEバンドが分断するタイプの螺子キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
容器内容物の品質保証やいたずら防止などのために、開封履歴を明示するTEバンドを備えた螺子キャップが広く使用されている。即ち、この種のキャップでは、キャップを旋回して開栓したときには、キャップ本体とTEバンドを連結しているブリッジが破断し、これにより、キャップが開封された事実を明示するようになっている。
【0003】
このようなTEバンドを備えた螺子キャップにおいては、キャップの開封に際して、TEバンド自体が分断するタイプのものが知られている(例えば特許文献1〜4)。このタイプのキャップでは、TEバンドが、キャップの開栓に際して破断する連結部とキャップの開栓に際して破断しない非破断連結部とによってキャップ本体とに連結されており、キャップを開栓するとTEバンドの分断面に設けられた破断ブリッジが破断し、分断して開いた状態となり、この状態でキャップ本体と共に容器口部から取り除かれることとなる。即ち、TEバンドが分断した状態をみて、一般の消費者は、キャップが開封された事実を認識できるのである。
このような分断型TEバンドを備えたキャップは、開封したときに、TEバンドが容器側に残らず、キャップに連結した状態で容器口部から取り除かれるため、容器内容物が飲料であるときには、容器側に残ったTEバンドにより飲料の喫飲などが阻害されず、また、キャップの廃棄に際しては、TEバンドが繋がったままの状態でキャップを廃棄することができるので、ゴミの数を増やさず、廃棄が容易であるという利点もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−149156号
【特許文献2】特開2006−282181号
【特許文献3】特開2013−103721号
【特許文献4】特開2015−217966号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した分断型のTEバンドの内面には、容器口部外面に形成されている係合突起と係合するラチェットが設けられており、このラチェットと係合突起との係合によりTEバンドの開栓方向への回転が阻止され、これにより、分断面の破断ブリッジが破断し、TEバンドが分断され、この状態でキャップ本体と共に容器口部から取り除かれる構造となっている。
このような構造のTEバンドは、ラチェットが形成されていない部分を強くつかむと変形し、そのまま開栓させていくと、ラチェットと係合突起とが係合せず、分断面の破断ブリッジが分断されずに、キャップ本体ごと容器口部から取り外されてしまうというおそれがあった。
【0006】
上記のような不都合を防止するためには、TEバンドの内面に設けられているラチェットの数を多くすればよいのであるが、ラチェットの数を多くすると、破断可能なブリッジによって連結されている分断面に対して、開栓方向側に最も近い位置に形成されているラチェットが容器口部外面の係合突起と係合したとき、分断面に加わる応力が小さくなり、分断面を連結している破断可能なブリッジが破断せず、TEバンドを連結している非破断連結片に応力が集中してしまい、この非破断連結片が破断してしまい、この結果、TEバンドが容器口部に残った状態でキャップ本体が容器口部から取り除かれてしまうという不都合を生じ易くなってしまう。このような傾向は、一旦容器口部から取り除かれ、分断されたTEバンドを元の形状に近い形状に復帰させることを防止するために、非破断連結片を長くした場合に、より顕著に生じるようになる。
【0007】
従って、本発明の目的は、キャップの開栓に際して分断するタイプの開封履歴明示バンド(TEバンド)を備えた螺子キャップにおいて、該バンドを分断することなくキャップを容器口部から取り外すという不正操作を有効に防止することができ、しかも、キャップの開栓に際して、TEバンドをキャップ本体に連結している非破断連結片が誤って破断されてTEバンドが容器口部に残った状態でキャップが容器口部から取り除かれてしまうという不都合が有効に防止されたTEバンド付螺子キャップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、螺子係合により容器口部に固定されるキャップ本体と、筒状形状を有しており且つ該キャップ本体のスカート部下端に非破断連結片により連結されている開封履歴明示バンドとからなり、該バンドは上下方向に延びている少なくとも1個の分断面により、周方向に分割されており、この分断面がキャップの開栓に際して破断可能な破断ブリッジによって連結されている螺子キャップにおいて、
前記分断面を有する開封履歴明示バンドの内面には、キャップ開栓方向への回転は阻止するが閉栓方向への回転は許容するように、容器口部の外面に形成されている係合突起と係合可能なラチェットが複数設けられていると共に、
前記バンドの内面には、前記分断面に対して開栓方向側に位置する部分に、開閉栓に際して前記係合突起を乗り越え可能な少なくとも1個の凸部が設けられており、前記複数のラチェットは、全て該凸部に対して開栓方向側に形成されていることを特徴とする螺子キャップが提供される。
【0009】
本発明の螺子キャップにおいては、
(1)前記凸部が、前記分断面から開栓方向側45度以内の角度範囲に設けられていること、
(2)前記凸部が、前記ラチェットよりも前記バンドの内面からの突出高さが低いこと、
(3)前記分断面が複数形成されており、該分断面によって前記バンドが多分割され、該分断面により分割されている前記バンドの分割部のそれぞれについて、前記凸部及び複数のラチェットが形成されていること、
(4)前記TEバンドの内面には、該バンドの分割部当り、前記凸部と前記ラチェットとが合算で4つ以上設けられていること、
(5)前記非破断連結片が、折り返し部を有するストリップであること、
が好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の螺子キャップに設けられているTEバンドは分断型であり、キャップの開栓に際して、このTEバンドはキャップ本体のスカート部に連なっているものの、分断して開いた状態となり、このようなTEバンドの分断状態により、キャップの開封履歴が明示されるのであるが、本発明においては、TEバンドの内面における分断面の開栓方向側近傍にラチェット機能を有さない凸部(以下、ダミーラチェットと呼ぶことがある)を設けた点に、顕著な特徴を有している。
【0011】
即ち、このダミーラチェットは、キャップを開閉栓方向に回転させたとき、容器口部の外面に形成されている係合突起を乗り越え得るような大きさ或いは形状に形成されているものであり、該係合突起とがっちり係合してTEバンドの開栓方向への回転を阻止するラチェット機能を有するものではないが、通常のラチェット(以下、ノーマルラチェットと呼ぶことがある)と同様、外部からの押圧力に対してTEバンドの変形を抑制する変形防止機能を有している。本発明では、このようなダミーラチェットを、複数のノーマルラチェットと共に設けられているため、TEバンドの変形防止機能が強化され、TEバンドを強く握ったときのTEバンドの変形を有効に抑制し、TEバンドを変形させてバンドを分断させることなく、TEバンドごとキャップを容器口部から取り除くという不正操作を有効に防止することが可能となっている。
【0012】
さらに、上記のダミーラチェットは、TEバンドの内面における分断面の開栓方向側近傍に設けられるものであるが、複数のノーマルラチェットは、このダミーラチェットよりもさらに開栓方向側に設けられている。換言すると、このダミーラチェットの形成により、ノーマルラチェットは、分断面からより開栓方向側に離れた位置に設けられることとなる。このため、分断面に対して、最も開栓方向側に近い部分に位置するノーマルラチェットがキャップの開栓に際して容器口部外面の係合突起と係合した場合においても、このノーマルラチェットは分断面から離れた位置に存在しているため、分断面に対して大きな応力が加わり、分断面を連結している破断ブリッジを速やかに破断することができる。従って、TEバンドをキャップ本体に連結している非破断連結片の破断を有効に防止し、非破断連結片の破断によって、TEバンドが容器口部に残った状態でキャップ本体が容器口部から取り除かれてしまうという不都合を有効に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の螺子キャップの側面図。
図2図1の螺子キャップの側断面図。
図3図1の螺子キャップの底面図。
図4図1の螺子キャップにおけるラチェットと容器口部の突起部との関係を示す図。
図5図1の螺子キャップと容器口部との嵌合断面を示す半断面図。
図6図1の螺子キャップを開栓していくプロセスを示す図。
図7図1の螺子キャップに設けられているTEバンドの内面に形成されているダミーラチェットの機能を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1乃至図5を参照して、本発明の螺子キャップは、大まかに言って、キャップ本体1と、筒状形状の開封履歴明示バンド(TEバンド)2とから成っており、キャップ本体1は、頂板部5と、頂板部5の周縁部から垂下しているスカート部6とから形成されている。
【0015】
頂板部5の内面には、スカート部6とは間隔を置いて下方に延びているインナーリング7が形成されており、且つインナーリング7とスカート部6との間の部分に小突起9、9が形成されている。また、スカート部6の内面には、雌螺条10が形成されている。
【0016】
このような螺子キャップが装着される容器口部は、図4及び図5において、全体として50で示されている。
かかる容器口部50は、螺子キャップの使用形態に応じて、例えばボトルの口部であってもよいし、また、袋状容器に溶着されているスパウトと呼ばれる筒状形状の注出具であってもよい。
いずれの形態にしろ、この容器口部50は、図5の半断面図からも理解されるように、全体として、細長い中空の筒状体であって、その外面には、雄螺条51が形成されており、この雄螺条51の下方には、TEバンド2の回転を制御するための係合突起53が形成されている。
【0017】
かかる容器口部50において、容器口部50の外面に形成されている雄螺条51は、スカート部6の内面に形成されている雌螺条10と係合するものであり、これにより、キャップ本体1は容器口部50に装着される。この状態において、容器口部50の上端は、インナーリング7とスカート部6との間の空間内に侵入し、且つその上端面が頂板部5の内面に形成されている小突起9、9に圧接されることにより、良好なシールが確保されるようになっている。
【0018】
また、図2に示されているように、スカート部6の内面の上方部分には、適当な間隔で軸方向に延びている縦リブ12が設けられている。この縦リブ12は、容器口部50にキャップ本体1を装着する際のセンタリングとして作用し、キャップ本体1の斜め被りを防止するためのものである。
さらに、スカート部6の外面には、滑り止め用のローレット15が形成されており、キャップ本体1の閉栓方向及び開栓方向への旋回をスムーズに行い得るようになっている。
【0019】
また、TEバンド2の内面には、通常のラチェット(以下、ノーマルラチェットと呼ぶ)17が複数形成されている。これらのノーマルラチェット17は、図3及び図4に示されているように、閉栓方向Yへの回転は許容するが、容器口部50の外面に形成されている係合突起53との当接によってTEバンド2の開栓方向Xへの回転を制限するような形状を有している。
【0020】
尚、図2図3及び図4から理解されるように、TEバンド2の上端には、水平方向内方に突出した内方フランジ2aが形成されている。即ち、この内方フランジ2aの上面がスカート部6の下端の間隔調整用のリブ25(後述する)に対面している。また、TEバンド2の内周面から内方フランジ2aの下面と一体に連なるようにノーマルラチェット17が形成されており、このノーマルラチェット17は、スカート部6の内面から径方向内方且つ開栓方向X側に指向している(図3参照)。このようなノーマルラチェット17の回転制御により、TEバンド2が開封履歴明示機能を発揮することとなる。
上記のノーマルラチェット17の機能については後述する。
【0021】
さらに、上記のTEバンド2は、折り返し部21aを有する細長い紐状のストリップ21によって、スカート部6の下端に連結されている。このストリップ21は、開栓に際して破断しない非破断型連結片として機能するものであり、このキャップ本体1を容器口部50から取り外したとき、TEバンド2が容器口部50側に残らずにキャップ本体1と共に容器口部50から取り外されるようにするための部材である。
【0022】
TEバンド2の上端とスカート部6の下端とは小幅のブリッジ23により連結される。この小幅のブリッジ23は、キャップの開栓に際して破断する破断型連結片として機能するものであり、キャップの供給時、或いはキャップ本体1を容器口部50に装着した際(キャッピング)、TEバンド2が変形せずに、安定にキャップ本体1と共に容器口部50に装着されるようにするために設けられるものである。
【0023】
さらに、スカート部6の下端面には、上記のストリップ21が位置している部分を除き、TEバンド2との間隔調整用のリブ25が弧状に形成されている。即ち、このようなリブ25が形成されていることにより、TEバンド2の上端の内方フランジ2aと対面状態となり、TEバンド2とスカート部6との間の隙間を狭くし、このキャップに軸方向荷重が加わったときの応力を緩和し、前述した小幅のブリッジ23やストリップ21の破損等を回避することができる。
【0024】
ところで、TEバンド2は、上下方向に延びている上下方向スリット30によって、分断されており、互いに対面する分断面30a,30bが形成されている。即ち、図3及び図4を参照して、このキャップは、開栓に際してはXで示される方向に旋回され、閉栓に際してはYで示される方向に旋回されるが、上記の上下方向スリット30により、TEバンド2は、開栓方向X側に位置する開栓側部αと、閉栓方向Y側に位置する閉栓側部βとに分断されている。また、上記のストリップ21は、TEバンド2の開栓側部αに連結されている。
【0025】
尚、図3及び図4に示されているように、この例では、スリット30は、対称位置に2箇所形成されており、TEバンド2は、各スリット30により開栓側部αと閉栓側部βとに区画された構造となっており、該スリット30によって分割されたTEバンド2のそれぞれに、複数のノーマルラチェット17とダミーラチェット60が形成されている。
このような分断面30a,30bを有しており且つ内面にノーマルラチェット17を有するTEバンド2において、本発明では、分断面30a,30b(スリット30)に対して、開栓方向X側の近傍に、ダミーラチェット60が設けられている。このダミーラチェット60は、ノーマルラチェット17と同様、TEバンド2の内周面から内方フランジ2aの下面と一体に連なるように軸方向に延びている凸部であるが、その高さはノーマルラチェット17よりも低く且つ山型の平断面形状を有しており、キャップの開閉栓に際して、容器口部の外面に設けられている係合突起53を乗り越え得るような形態に形成されている。図3図4及び図7でのダミーラチェット60の分割部当りの数は1つとなっており、周方向に延在するダミーラチェット60の形成角度範囲(θ)は20度、また分断面30a,30bからダミーラチェット17が最も突出する点までの開栓方向X側の角度(θ)は25度となるような位置に配設されている。
このダミーラチェット60の機能については、後述する。
【0026】
さらに、上記のスリット30により形成されている分断面30a,30bとは、開栓に際して破断するブリッジ31(31a,31b)によって互いに連結されている。
【0027】
上記の構造のキャップにおいて、容器口部50に装着されているキャップ本体1(スカート部6)を開栓方向X側に回転させてキャップを開栓すると、TEバンド2の一方の分割部の開栓側部αは、ストリップ21により引っ張られ、開栓方向X側に移動するが、上記スリット30で区画された他方の分割部の閉栓側部βでは前述したラチェット17による回転制御によって開栓方向X側への移動が制限され、この結果、上記ブリッジ31a,31bが破断し、TEバンド2が開栓側部αと閉栓側部βとに分断され、これによりTE性が発現する。
【0028】
尚、上記のストリップ21は、折り返し部21aが形成されるように長く設けることが好ましい。即ち、図1に示されているように、ストリップ21とスカート部6との接合部及びストリップ21とTEバンド2との接合部は、TEバンド2を分断するスリット30の近傍に位置せしめると同時に、ストリップ21の全長を、スカート部6の下端とTEバンド2の上面との間隔に比して非常に長く設定して、このストリップ21に折り返し部21aを形成するのがよい。ストリップ21に、このような折り返し部21aを形成することにより、一旦、開栓され、TEバンド2が完全に分断されると、このTEバンド2を分断前の形態に近い状態に戻すことができなくなり、この結果、リシール時において優れたTE性を発揮することができるからである。
【0029】
この螺子キャップを開栓していくプロセスを示す図6を参照して、キャップ本体1を容器口部50に装着された状態のキャップを、開栓方向に回転せしめると、キャップ本体1は上昇するが、図4に示されているように、複数のノーマルラチェット17の何れかが容器口部50の係合突起53とが係合し、TEバンド2の回転は抑制される。この場合、前述したダミーラチェット60は、係合突起53を乗り越えるため、TEバンド2の回転を抑制する機能は有していない。
ノーマルラチェット17の何れかが係合突起53に係合し、この回転を阻止するように働くと、スカート部6とTEバンド2との間隔は次第に上昇し、これに伴って、ストリップ21の折り返し部21aが徐々に伸びていき、前述した小幅のブリッジ23は破断する(図6(a))。
【0030】
さらに、キャップ本体1を開栓方向に回転させていくと、ストリップ21が伸びきった状態となり、これにより、TEバンド2の一方の分割部の開栓側部αは、ストリップ21により開栓方向X側に引っ張られることになる(図6(b))。
【0031】
引き続き、キャップ本体1を開栓方向に回転させていくと、キャップ本体1はさらに上昇し、TEバンド2の一方の分割部の開栓側部αは、ストリップ21により開栓方向X側に引っ張られて上昇するが、TEバンド2の他方の分割部の閉栓部側βは、前述したノーマルラチェット17との係合により、その旋回が制限されているため、分断面30a,30bを連結しているブリッジ31a,31bに応力が集中し、これらブリッジ31a,31bが破断し、TEバンド2は、分断されることとなる(図6(c))。即ち、分断されたTEバンド2が、垂れ下がったストリップ21により連結された状態となり、消費者が明確に一度開栓されたことを認識することができる。
【0032】
上記の開栓プロセスから理解されるように、上記のストリップ21の長さが非常に長く、開栓後では、非常に長く垂れ下がったストリップ21に、分断されたTEバンド2が垂れ下がった状態にある。従って、これを元の形状に復帰させることが非常に困難であり、リシールに使用したときには、ストリップ21がかなり歪んだ形態となってしまい、従って、一般の需要者は、一旦開封されたキャップであるという事実を容易に認識することができる。特に、キャップが小さいときには、TEバンド2の径がかなり小さくなるため、TEバンド2の分断を看過してしまう傾向が極めて大きいが、ストリップ21の長さを長く設定することにより、リシールに際しては、その歪みが非常に大きく、図6(a)の開栓前の状態に戻らないため、一般需要者にも容易に認識でき、優れたTE性を確保することができる。
【0033】
尚、図1図6に示されているように、上述した構造の螺子キャップにおいては、キャップ本体1のスカート部6の下端及びTEバンド2の上端部(内方フランジ2aの上面)に、それぞれ、開栓或いは閉栓に際して互いに係合する案内突起35a,35bを設けておくことが好適である。即ち、これらの突起35a,35bは、それぞれ、直立面と傾斜面とを有しており、キャップを容器口部に装着する際の閉栓時には、直立面同士が当接係合し、キャップ本体1(スカート部6)の閉栓方向への回転がTEバンド2に伝達され、キャップ開栓時の初期には、傾斜面同士が当接係合し、キャップ本体1の回転に伴い、TEバンド2が下方に押し下げられることとなる。これにより、ストリップ21に過度の負荷がかからないようにして、閉栓及び開栓を行うことができる。
【0034】
さらに、上述した螺子キャップでは、図1に示されているように、スリット30で分断された閉栓側部βの上面には、ストリップ21の折り返し部21aを許容し得るような切り欠き37を設けることが好ましい。これにより、長いストリップ21の形成により、スカート部6とTEバンド2との間隔を大きくしなければならないという不都合は有効に回避することができる。
【0035】
ところで、上記のような分断型のTEバンド2を備えた構造の螺子キャップにおいては、キャップの開栓に際しては、折り返し部21aを有しているため、ストリップ21にテンションが一気に加わることはなく、ストリップ21は、その折り返し部21aが徐々に伸ばされていき、徐々にテンションが加わっていく。即ち、折り返し部21aが遊びとなってテンションを緩和しているわけである。従って、かかる構造の螺子キャップでは、キャップの開栓に際して、ストリップ21が破断するという不都合、即ちTEバンド2が容器側に残ってしまうという不都合は有効に防止されるというのが理想的である。
【0036】
しかしながら一般的にいえば、TEバンド2の内面に設けられているノーマルラチェット17と容器口部外面の係合突起53との係合によりTEバンド2の開栓方向への回転を阻止する場合、ノーマルラチェット17の数を多くする必要がある。
即ち、このタイプのTEバンド2では、ノーマルラチェット17が形成されていない部分では、TEバンド2の内面と容器口部50の外面との間の間隔がノーマルラチェット17の高さ分だけ大きくなってしまうため、この間隙部分が外圧によって変形し易くなっている。この結果、ノーマルラチェット17の数が少なく、隣り合うノーマルラチェット17の間隔が大きいと、ノーマルラチェット17による変形防止機能が十分に発揮されず、TEバンド2を強く握ったとき、TEバンド2が大きく変形してしまい、そのまま、TEバンド2を開栓方向に旋回していくと、TEバンドが分断されず、キャップ本体1とTEバンド2が連結されたままの状態でキャップ本体1を容器口部50から取り外されてしまい(要するにTEバンド2のすっぽ抜けが生じてしまう)、さらには、再び、容器口部50に装着することが可能となってしまい、TEバンド2が本来有する開封履歴証明機能が大きく損なわれてしまうこととなる。
従って、通常このような分断型のTEバンド2では、ノーマルラチェット17の数をできるだけ多く設け、ノーマルラチェット17間の間隔を小さくし、ノーマルラチェット17による変形防止機能を十分に発揮させることが望まれるわけである。
【0037】
しかるに、ノーマルラチェット17の数を多くするほど、前述した分断面30a,30b(スリット30)の開栓方向X側に近い位置にノーマルラチェット17が形成されることとなる。このような分断面30a,30bの開栓方向X側に近い位置に形成されているノーマルラチェット17(図3及び4では、17aで示されている)が係合突起53と係合した場合、このノーマルラチェット17aと分断面30a,30bとの間隔が短いため、この分断面30a,30bを連結している破断ブリッジ31(31a,31b)に加わる応力が小さくなってしまい、この結果、破断ブリッジ31が破断せず、開栓にしたがってストリップ21が伸びていき、結局、ストリップ21の破断が生じてしまうこととなる。
【0038】
本発明では、このような不都合は、分断面30a,30bと、ノーマルラチェット17aとの間にダミーラチェット60を設けることにより有効に防止されている。
即ち、ダミーラチェット60の機能を示す図7を参照して、このダミーラチェット60は、開栓に際して、容器口部外面の係合突起53と当接した場合、この係合突起53を乗り越えていくものであり、このダミーラチェット60によりTEバンド2の開栓方向Xへの回転が阻止されるものではなく、これが、ノーマルラチェット17との大きな相違である。このことから理解されるように、ダミーラチェット60が、分断面30a,30bに対して開栓方向X側の近い位置に形成されているものの、このダミーラチェット60により、破断ブリッジ31の破断が阻害されることはない。
【0039】
また、このようなダミーラチェット60を設けることは、このダミーラチェット60に対して開栓方向X側に複数のノーマルラチェット17が設けられることを意味する。即ち、分断面30a,30bの開栓方向X側に最も近い位置に存在するノーマルラチェット17aであっても、該ノーマルラチェット17aと分断面30aと30bとの間には、ダミーラチェット60が形成されているため、これにより、ノーマルラチェット17の数を増やしたとしても、最も分断面30a,30bに近いノーマルラチェット17aと分断面30a,30bとの間に適度な間隔が保持され、ノーマルラチェット17aが係合突起53と当接する場合においても、破断ブリッジ31に有効に応力が加わり、破断ブリッジ31を破断せしめ、ストリップ21の破断を生じることなく、キャップ本体1をTEバンド2と共に取り外すことができる。
【0040】
また、最も分断面30a,30bに近いノーマルラチェット17aと分断面30a,30bとの間に適度な間隔が保持されるため、この部分での外圧に対する耐変形性の低下が懸念されるが、この部分には、ダミーラチェット60が存在しているため、耐変形性の低下は有効に防止されている。
【0041】
従って、本発明では、ノーマルラチェット17の数を増大することによって、TEバンド2を強く握って変形させてのTEバンド2のすっぽ抜けを有効に防止することができ、ノーマルラチェット17の数を増大することによる開栓時でのストリップ21の破断も有効に防止することができる。
【0042】
本発明において、ノーマルラチェット17の数は、キャップの径(TEバンド2の径)などに応じて、上述したTEバンド2のすっぽ抜けを有効に防止し得る程度の数とすればよく、通常、TEバンド2の分割部当りのノーマルラチェット17の数を3つ以上、特に4つ以上とすることが好ましい。例えば、図3図4及び図7でのノーマルラチェット17の分割部当りの数は4つとなっている。
また、周方向に延在する1つのノーマルラチェット17の形成角度(θ)の範囲は、そのトータル数やキャップの径によっても異なり、一概に規定することはできないが、1つのノーマルラチェットの機能が十分に発揮し得るように、スパウトのような注出具に適用される小径のキャップにおいて、特に制限されるものではないが、通常、該角度(θ)は、10〜30度程度が好ましく、同様の観点から、隣り合うノーマルラチェット17同士の間隔(角度範囲θ)は、15〜35度程度が好ましい。因みに、図3図4及び図7において、角度θは20度、角度θは25度となっている。
【0043】
TEバンド2の分割部当りのダミーラチェット60とノーマルラチェット17の合算数を4つ以上とすることが好ましい。図3図4及び図7での分割部当りの数はダミーラチェット60が1つ、ノーマルラチェット17が4つ、その合算が5つとなっている。
また、ダミーラチェット60は、開栓に際しては、係合突起53を乗り越えるものであるため、最も分断面30a,30bに近いノーマルラチェット17aと分断面30a,30bとの間に設けられている限りにおいて、他の部分にも設けることができる。例えば、隣り合うノーマルラチェット17の間に設けることもできるし、さらには、分断面30a,30bに対して閉栓方向Y側に位置しているノーマルラチェット17と分断面30a,30bとの間にダミーラチェット60を設けることも可能である。
尚、ダミーラチェット17の機能を十分に発揮させるためには、ダミーラチェット60の形成角度範囲(θ)は10〜30度程度とするのがよく、このようなダミーラチェット17を、分断面30a,30bからダミーラチェット17が最も突出する点までの開栓方向X側の角度(θ)が45度以内、特に35度以内とすることが好適である。因みに、図3図4及び図7の例では、先にも述べたように、角度θは20度、角度θは25度となっている。
【0044】
さらに、本発明において、図の例では、上下方向スリット30は2個設けられており、TEバンド2には、2組の分断面30a,30bが形成され、2分割されているが、このようなスリット30は3個或いは4個設け、それぞれにおいて、開栓側部αと閉栓側部βとに区画することも可能であるが、スリット30の数は、2個に限定されるものではなく、1個或いは2個よりも多くすることもでき、これら複数のスリット30によって分割されたTEバンド2のそれぞれに、前述したノーマルラチェット17及びダミーラチェット60が設けられ、さらに、各スリット30に対応してストリップ21が設けられることとなる。
【0045】
また、上述した例では、TEバンド2とキャップ本体1とを繋ぐ非破断連結片として、折り返し部を有するストリップ21が使用されているが、勿論、このような折り返し部を有していないものを非破断連結片として使用することも可能である。ただ、折り返し部を有するものを非破断連結片として用いた場合、かかる連結片が最もノーマルラチェット17を用いたときの数を増やしたときの破断を生じ易いため、このような破断を防止できる本発明は、折り返し部を有するストリップ21を非破断連結片として用いた態様に最も効果的である。
【0046】
また、本発明においては、図1等に示されているように、スリット30を直線ではなく、曲線を含む形状とし、一方の分断面30aに、軸方向線Zを基準として凹んだ形状の湾曲部(湾曲凹部)とし、他方の分断面30bに軸方向線Zを基準として突出した湾曲凸部とすることが望ましい。このような形態については、特許文献4に詳細に説明されている。即ち、このような形態の分断面30a,30bを破断ブリッジ31a,31bで連結し、このブリッジ31a,31bが破断したときの残渣が、湾曲凹部となっている分断面30a側に残るように、ブリッジ31a,31bの形態を設定しておくこと、具体的には、ブリッジ31a,31bの分断面30a側を細くしておくことが好適である。これにより、ブリッジ31a,31bが破断したときの破断残渣による手切れなどを有効に防止することができる。
勿論、このような破断ブリッジ31a,31bの数は2つに限定されず、ブリッジ破断が効果的に行われる限り、1つでもよいし、3つ以上の数であってもよい。
【0047】
上述した本発明の螺子キャップは、袋状容器(パウチ)に口部として設けられているスパウトのような小径の容器口部にラチェット式の螺子キャップを装着する場合に最適であるが、このようなスパウト用のキャップに限定されるものではなく、ボトル等の容器の口部に用いるキャップとしても好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1:キャップ本体
2:TEバンド
17:ノーマルラチェット(通常のラチェット)
21:非破断型連結片(ストリップ)
23:破断型連結片
30:上下方向スリット
30a,30b:分断面
31a,31b:破断ブリッジ
50:容器口部
53:突部
60:ダミーラチェット(凸部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7