(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ランプボディに対して回動可能に支持されたメインブラケットと、このメインブラケットに支持された複数の光学ユニットとを備え、上記複数の光学ユニットからの出射光により所要の配光パターンを形成するように構成された車両用灯具において、
上記メインブラケットに対して回動可能に支持されたサブブラケットを備えており、
上記複数の光学ユニットとして、第1光学ユニットと複数の第2光学ユニットとを備えており、
上記第1光学ユニットおよび上記複数の第2光学ユニットのうち、一方は上記メインブラケットに直接支持されており、他方は上記サブブラケットを介して上記メインブラケットに支持されており、
上記複数の第2光学ユニットは、上記サブブラケットに支持されており、
上記各第2光学ユニットの前方に、該第2光学ユニットからの出射光を入射させる投影レンズが、上記メインブラケットに支持された状態で配置されている、ことを特徴とする車両用灯具。
上記複数の第2光学ユニットは、少なくとも1つの第2光学ユニットが他の第2光学ユニットとは異なる方向に光を照射するように配置されている、ことを特徴とする請求項1記載の車両用灯具。
上記第1光学ユニットからの出射光により、上記所要の配光パターンの中心領域を形成するように構成されている、ことを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の車両用灯具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記「特許文献1」に記載された車両用灯具においては、ランプボディに対してメインブラケットを回動させることにより、複数の光学ユニットに対する光軸調整を一括して行うことが可能であり、また、メインブラケットに対して各光学ユニットを回動させることにより、光学ユニット相互間の光軸ズレを補正することが可能である。したがって、複数の光学ユニットに対する光軸調整を精度良く行うことが可能となる。
【0007】
しかしながら、このような構成を採用した場合には、各光学ユニットを回動させるためのスペースを光学ユニット相互間に確保する必要があるので、車両用灯具をコンパクトに構成することが困難である。
【0008】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、複数の光学ユニットを備えた車両用灯具において、コンパクトな構成で複数の光学ユニットに対する光軸調整を精度良く行うことができる車両用灯具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は、所定のサブブラケットを備えた構成を採用することにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0010】
すなわち、本願発明に係る車両用灯具は、
ランプボディに対して回動可能に支持されたメインブラケットと、このメインブラケットに支持された複数の光学ユニットとを備え、上記複数の光学ユニットからの出射光により所要の配光パターンを形成するように構成された車両用灯具において、
上記メインブラケットに対して回動可能に支持されたサブブラケットを備えており、
上記複数の光学ユニットとして、第1光学ユニットと複数の第2光学ユニットとを備えており、
上記第1光学ユニットおよび上記複数の第2光学ユニットのうち、一方は上記メインブラケットに直接支持されており、他方は上記サブブラケットを介して上記メインブラケットに支持されて
おり、
上記複数の第2光学ユニットは、上記サブブラケットに支持されており、
上記各第2光学ユニットの前方に、該第2光学ユニットからの出射光を入射させる投影レンズが、上記メインブラケットに支持された状態で配置されている、ことを特徴とするものである。
【0011】
上記「所要の配光パターン」の種類は特に限定されるものではなく、例えば、ロービーム用配光パターンやその一部を形成するための配光パターン、ハイビーム用配光パターンやその一部を形成するための配光パターン、デイタイムランニングランプ用の配光パターン、フォグランプ用の配光パターン等が採用可能である。
【0012】
上記各「光学ユニット」の具体的な構成は特に限定されるものではなく、例えば、光源からの出射光をそのまま照射するように構成されたものであってもよいし、光源からの出射光をリフレクタやレンズ等によって制御するように構成されたものであってもよい。
【0013】
上記「メインブラケット」は、ランプボディに対して回動可能に支持された部材であればその具体的な構成は特に限定されるものではなく、その際の具体的な回動方向についても特に限定されるものではない。
【0014】
上記「サブブラケット」は、メインブラケットに対して回動可能に支持された部材であればその具体的な構成は特に限定されるものではなく、その際の具体的な回動方向についても特に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0015】
本願発明に係る車両用灯具は、ランプボディに対して回動可能に支持されたメインブラケットに複数の光学ユニットが支持された構成となっているので、メインブラケットを回動させることにより複数の光学ユニットに対する光軸調整を一括して行うことができる。
【0016】
その上で、本願発明に係る車両用灯具は、メインブラケットに対して回動可能に支持されたサブブラケットを備えた構成となっており、複数の光学ユニットを構成する第1光学ユニットおよび複数の第2光学ユニットのうち、一方がメインブラケットに直接支持されるとともに他方がサブブラケットを介してメインブラケットに支持された構成となっているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0017】
すなわち、サブブラケットを回動させることにより、第1光学ユニットと複数の第2光学ユニットとの間の光軸ズレを補正することができる。そしてこれにより、複数の光学ユニットに対する光軸調整が精度良く行われた状態で、メインブラケットをランプボディに組み付けることができる。
【0018】
その際、複数の第2光学ユニットに関しては一括して光軸調整が行われることとなるが、第1光学ユニットからの出射光により上記所要の配光パターンの主要部分を形成するようにしておけば、第2光学ユニット相互間に光軸ズレが生じていても上記所要の配光パターンを実用上適正な配光パターンとして形成することができる。
【0019】
また、このように複数の第2光学ユニットの光軸調整が一括して行われる構成とすることにより、各第2光学ユニットを回動させるためのスペースを第2光学ユニット相互間に確保する必要をなくすことができる。したがって、第2光学ユニット相互間の間隔を狭くすることができ、これにより車両用灯具のコンパクト化を図ることができる。
【0020】
このように本願発明によれば、複数の光学ユニットを備えた車両用灯具において、コンパクトな構成で複数の光学ユニットに対する光軸調整を精度良く行うことができる。
【0021】
上記構成において、複数の第2光学ユニットとして、少なくとも1つの第2光学ユニットが他の第2光学ユニットとは異なる方向に光を照射するように配置された構成とすれば、複数の第2光学ユニットからの光照射によって形成される配光パターンに拡がりを持たせることができ、これにより上記所要の配光パターンを形成することが容易に可能となる。
【0022】
その際、複数の第2光学ユニットがサブブラケットに支持されるとともに、各第2光学ユニットの前方に投影レンズがメインブラケットに支持された状態で配置されている場合には、サブブラケットの回動状態にかかわらず、各第2光学ユニットからの出射光の各投影レンズへの入射位置をできるだけ一定の位置に維持することが、各第2光学ユニットからの光照射によって形成される配光パターンを略一定形状に維持する上で望まれる。
【0023】
そこでこのような場合には、サブブラケットがメインブラケットに対して、複数の第2光学ユニットからの複数の光照射方向の中間に位置する方向と直交する方向に延びる軸線を中心にして回動する構成とすれば、各第2光学ユニットからの出射光の各投影レンズへの入射位置を略一定の位置に維持することが可能となる。
【0024】
上記「複数の第2光学ユニットからの複数の光照射方向の中間に位置する方向」は、光照射方向が互いに最も離れた方向に設定された2つの第2光学ユニットからの光照射方向の間に位置する方向であれば、その具体的な方向は特に限定されるものではない。
【0025】
上記構成において、第1光学ユニットからの出射光により上記所要の配光パターンの中心領域を形成する構成とすれば、第2光学ユニット相互間に光軸ズレが生じていても、上記所要の配光パターンを実用上適正な配光パターンとして形成することが容易に可能となる。
【0026】
特に、上記所要の配光パターンとしてロービーム用配光パターンを形成するようにした場合には、第1光学ユニットからの出射光によりその中心領域を形成する構成とすることにより、対向車ドライバ等にグレアを与えてしまわないようにした上で、ロービーム用配光パターンを実用上適正な配光パターンとして形成することが容易に可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0029】
図1は、本願発明の一実施形態に係る車両用灯具10を示す正面図である。また、
図2は、
図1のII−II線断面図である。
【0030】
これらの図に示すように、本実施形態に係る車両用灯具10は、車両の左前端部に配置されるヘッドランプであって、ロービーム用配光パターンを形成し得る構成となっている。
【0031】
なお、車両用灯具10としては、
図2において、Xで示す方向が「前方」(車両としても「前方」)であり、Yで示す方向が「前方」と直交する「左方向」(車両としても「左方向」であるが灯具正面視では「右方向」)である。
【0032】
この車両用灯具10は、ランプボディ12とその前端開口部に取り付けられた素通し状の透光カバー14とで形成される灯室内に、第1灯具ユニット20Aと3つの第2灯具ユニット20B、20C、20Dとが、車幅方向に並んで収容された構成となっている。その際、3つの第2灯具ユニット20B、20C、20Dは、第1灯具ユニット20Aよりも車幅方向外側において、この順序で後方側へ徐々に変位するようにして配置されている。
【0033】
透光カバー14は、車幅方向外側へ向けて斜め後方へ延びるように形成されている。
【0034】
上記灯室内には、ランプボディ12に対して回動可能に支持されたメインブラケット50と、このメインブラケット50に対して回動可能に支持されたサブブラケット60とが配置されている。
【0035】
第1灯具ユニット20Aは、第1投影レンズ32Aと、その後方に配置された第1光学ユニット40Aとを備えた構成となっている。また、各第2灯具ユニット20B、20C、20Dは、第2投影レンズ32B、32C、32Dと、その後方に配置された第2光学ユニット40B、40C、40Dとを備えた構成となっている。
【0036】
第1投影レンズ32Aおよび3つの第2投影レンズ32B、32C、32Dは、単一の透明部材30として構成されている。
【0037】
この透明部材30は、水平面に沿って延びるように配置されており、灯具正面視において横長矩形状の外形形状を有している。
【0038】
この透明部材30は、その外周縁部においてレンズホルダ16に支持されている。このレンズホルダ16は、その左右両端部においてメインブラケット50に支持されている。
【0039】
このレンズホルダ16の外周側には、該レンズホルダ16を覆うエクステンション部材18が配置されている。このエクステンション部材18は、灯具正面視において透明部材30と略一定の間隔をおいて該透明部材30を囲む前端開口部18aを有している。そして、このエクステンション部材18は、その後端部においてメインブラケット50に支持されている。
【0040】
メインブラケット50は、ランプボディ12に対して、右上(灯具正面視では左上)に位置するピボット52と左上および右下に位置する2つのエイミングスクリュウ54とによって上下方向および左右方向に回動可能に支持されている。
【0041】
なお、ピボット52は、その基端部がランプボディ12に固定されており、その先端部がメインブラケット50に装着されたスフェリカルステップベアリング56と係合している。また、エイミングスクリュウ54は、その基端部がランプボディ12に回転可能に支持されており、その先端部がメインブラケット50に装着されたエイミングナット58と螺合している。
【0042】
次に、第1灯具ユニット20Aの詳細構造について説明する。
【0043】
図3は、
図2のIII−III線断面図である。
【0044】
同図にも示すように、この第1灯具ユニット20Aの第1投影レンズ32Aは、車両前後方向に延びる光軸Axaを有している。
【0045】
第1光学ユニット40Aは、第1投影レンズ32Aの後側焦点F1よりも後方側に配置された光源42Aと、この光源42Aからの出射光を第1投影レンズ32Aへ向けて反射させるリフレクタ44Aと、このリフレクタ44Aからの反射光の一部を遮光するシェード46Aと、これらを支持するベース部材48Aとを備えている。
【0046】
光源42Aは、矩形状の発光面を有する白色発光ダイオードであって、その発光面を上向きにした状態でベース部材48Aに支持されている。リフレクタ44Aは、光源42Aを上方側から覆うようにして配置されている。シェード46Aは、リフレクタ44Aからの反射光の一部を上向きに反射させて第1投影レンズ32Aに入射させるための上向き反射面46Aaを有している。この上向き反射面46Aaの前端縁は、後側焦点F1から左右両側へ向けて延びるように形成されている。
【0047】
そして、この第1光学ユニット40Aは、そのベース部材48Aにおいてメインブラケット50に複数のスクリュウ22によってネジ締め固定されている。このベース部材48Aは、ヒートシンクとしても機能するように構成されている。
【0048】
次に、各第2灯具ユニット20B、20C、20Dの詳細構造について説明する。
【0049】
図2に示すように、3つの第2灯具ユニット20B、20C、20Dのうち、最も車幅方向外側に位置する第2灯具ユニット20Dは、その第2投影レンズ32Dの光軸Axdが車両前後方向に延びている。この第2灯具ユニット20Dの車幅方向内側に隣接する第2灯具ユニット20Cは、その第2投影レンズ32Cの光軸Axcが車両前後方向に対して車両前方へ向けて車幅方向外側に傾斜した方向(例えば車両前後方向に対して5°程度傾斜した方向)に延びている。この第2灯具ユニット20Cの車幅方向内側に隣接する第2灯具ユニット20Bは、その第2投影レンズ32Bの光軸Axbが車両前後方向に対して車両前方へ向けてさらに車幅方向外側に傾斜した方向(例えば車両前後方向に対して10°程度傾斜した方向)に延びている。
【0050】
これら各第2灯具ユニット20B、20C、20Dにおいて、その第2光学ユニット40B、40C、40Dの構成はいずれも同様である。
【0051】
そこで、以下においては、第2灯具ユニット20Cを例にとって、その第2光学ユニット40Cの構成について説明する。
【0052】
図4は、
図2のIV−IV線断面図である。
【0053】
同図にも示すように、この第2光学ユニット40Cは、投影レンズ32Cの後側焦点F2よりも後方側に配置された光源42Cと、この光源42Cからの出射光を投影レンズ32Cへ向けて反射させるリフレクタ44Cと、このリフレクタ44Cからの反射光の一部を遮光するシェード46Cと、これらを支持するベース部材48Cとを備えている。
【0054】
光源42Cは、矩形状の発光面を有する白色発光ダイオードであって、その発光面を上向きにした状態でベース部材48Cに支持されている。リフレクタ44Cは、光源42Cを上方側から覆うようにして配置されている。このリフレクタ44Cは、該リフレクタ44Cで反射した光源42Cからの光の収束度合いが、第1灯具ユニット20Aのリフレクタ44Aで反射した光源42Aからの光の収束度合いよりも小さくなるように、その反射面形状が設定されている。シェード46Cは、リフレクタ44Cからの反射光の一部を上向きに反射させて投影レンズ42Cに入射させるための上向き反射面46Caを有している。この上向き反射面46Caの前端縁は、後側焦点F2から左右両側へ向けて延びるように形成されている。
【0055】
そして、この第2光学ユニット40Cは、そのベース部材48Cにおいてサブブラケット60に複数のスクリュウ24によってネジ締め固定されている。このベース部材48Cは、ヒートシンクとしても機能するように構成されている。
【0057】
同図にも示すように、サブブラケット60は、メインブラケット50に対して、水平方向に延びる回動軸線Ax1を中心にして上下方向に回動可能に支持されている。この回動軸線Ax1は、第2投影レンズ32Cの光軸Axcと直交する方向(すなわち、車幅方向外側へ向けて車両後方側に傾斜した方向)に延びている。
【0058】
そして、サブブラケット60は、3つの光軸Axb、Axc、Axdよりも上方でかつ回動軸線Ax1が延びる方向の2箇所(その位置を
図1において点A、Bで示す)において、メインブラケット50にネジ締めによって締結されている。
【0059】
このネジ締めに使用されるスクリュウ62には、そのネジ締め方向に弾性変形可能なウェーブワッシャ64が装着されている。
【0060】
メインブラケット50には、回動軸線Ax1が延びる方向の2箇所にスリーブ50aが形成されている。このスリーブ50aは、メインブラケット50から後方側へ突出するようにして形成されており、その内周面がスクリュウ62を挿通させるための挿通孔を構成している。
【0061】
また、メインブラケット50には、回動軸線Ax1が延びる方向の4箇所に、サブブラケット60との当接によってサブブラケット60が上下方向に回動するのを許容する突起部50bが形成されている。これら4つの突起部50bは、各挿通孔に対して回動軸線Ax1が延びる方向の両側近傍に1対ずつ形成されている。これら各突起部50bは、略半球状の突起部として同一サイズで形成されている。
【0062】
サブブラケット60には、回動軸線Ax1が延びる方向の2箇所に、スクリュウ62のネジ部と螺合してスクリュウ62を固定するためのボス部60aが形成されている。
【0063】
一方、3つの光軸Axb、Axc、Axdよりも下方の位置には、サブブラケット60をメインブラケット50に対して回動軸線Ax1を中心にして上下方向に回動させるためのアジャスティングスクリュウ66が配置されている(このアジャスティングスクリュウ66の位置を
図1において点Cで示す)。
【0064】
このアジャスティングスクリュウ66は、その基端部がメインブラケット50に回転可能に支持されており、その先端部がサブブラケット60に装着されたアジャスティングナット68と螺合している。
【0065】
そして、このアジャスティングスクリュウ66を操作してサブブラケット60を回動させることにより、第1光学ユニット40Aと3つの第2光学ユニット40B、40C、40Dとの間の上下方向の光軸ズレを補正することができるようになっている。この操作は、メインブラケット50をランプボディ12に組み付ける前の段階で行うことが可能である。
【0066】
なお、メインブラケット50は、アジャスティングスクリュウ66の基端部を支持している部分が、スリーブ50aが形成されている部分よりも後方側に変位するようにして形成されている。
【0067】
次に、透明部材30の構成について説明する。
【0068】
図6は、透明部材30を単品で示す斜視図である。
【0069】
同図にも示すように、この透明部材30の前面は、第2投影レンズ32B、32C、32Dの前面32Ba、32Ca、32Daを構成している部分が、車幅方向外側へ向けて斜め後方へ延びる単一の凸シリンドリカル面で構成されており、第1投影レンズ32Aの前面32Aaを構成している部分が、上記凸シリンドリカル面と連続して車幅方向内側へ向けて後方側に回り込むように形成された凸曲面で構成されている。
【0070】
また、この透明部材30の後面は、第2投影レンズ32B、32C、32Dの後面32Bb、32Cb、32Dbを構成している部分が、それぞれ上下方向に延びる凸シリンドリカル面で構成されており、第1投影レンズ32Aの後面32Abを構成している部分が光軸Axaと直交する平面で構成されている。
【0071】
その際、各第2投影レンズ32B、32C、32Dの後面32Bb、32Cb、32Dbを構成している凸シリンドリカル面は、各第2投影レンズ32B、32C、32Dの光軸Axb、Axc、Axdの向きに応じた曲率でそれぞれ形成されている。
【0072】
なお、透明部材30には、第1投影レンズ32Aと第2投影レンズ32Bとの間に連結部30aが形成されるとともに、第2投影レンズ32Dよりも車幅方向外側には延長部30bが形成されている。これら連結部30aおよび延長部30bの前面は、第2投影レンズ32B、32C、32Dの前面32Ba、32Ca、32Daと同一の凸シリンドリカル面で構成されており、その後面は車幅方向外側へ向けて斜め後方へ延びる鉛直面で構成されている。
【0073】
図7は、車両用灯具10からの照射光によって車両前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成されるロービーム用配光パターンPLを透視的に示す図である。
【0074】
このロービーム用配光パターンPLは、左配光のロービーム用配光パターンであって、その上端縁に左右段違いのカットオフラインCL1、CL2を有している。このカットオフラインCL1、CL2は、灯具正面方向の消点であるH−Vを鉛直方向に通るV−V線を境にして左右段違いで水平方向に延びており、V−V線よりも右側の対向車線側部分が下段カットオフラインCL1として形成されるとともに、V−V線よりも左側の自車線側部分が、この下段カットオフラインCL1から傾斜部を介して段上がりになった上段カットオフラインCL2として形成されている。
【0075】
このロービーム用配光パターンPLにおいて、下段カットオフラインCL1とV−V線との交点であるエルボ点Eは、H−Vの0.5〜0.6°程度下方に位置している。
【0076】
このロービーム用配光パターンPLは、4つの配光パターンPaL、PbL、PcL、PdLを重畳させた合成配光パターンとして形成されるようになっている。
【0077】
配光パターンPaLは、第1灯具ユニット20Aからの照射光によって形成される配光パターンであり、残り3つの配光パターンPbL、PcL、PdLは、3つの第2灯具ユニット20B、20C、20Dからの照射光によって形成される配光パターンである。
【0078】
配光パターンPaLは、第1灯具ユニット20Aのリフレクタ44Aで反射した光源42Aからの光によって第1投影レンズ32Aの後側焦点面上に形成された光源42Aの像を、第1投影レンズ32Aにより上記仮想鉛直スクリーン上に反転投影像として投影することにより形成され、そのカットオフラインCL1、CL2は、シェード46Aの上向き反射面46Aaの前端縁の反転投影像として形成されるようになっている。この点、残り3つの配光パターンPbL、PcL、PdLについても同様である。
【0079】
配光パターンPaLは、小さくて明るい横長の配光パターンとして形成されている。この配光パターンPaLは、灯具正面方向の消点であるH−Vを上下方向に通るV−V線に対して左右均等に拡がる配光パターンとして形成されている。これは第1灯具ユニット20Aの光軸Axaが車両前後方向に延びていることによるものである。
【0080】
残り3つの配光パターンPbL、PcL、PdLは、いずれも配光パターンPaLほど明るくはないが配光パターンPaLよりも大きい横長の配光パターンとして形成されている。これは、第2灯具ユニット20C(および20B、20D)のリフレクタ44Cからの反射光の収束度合いが、第1灯具ユニット20Aのリフレクタ44Aからの反射光の収束度合いよりも小さいことによるものである。
【0081】
これら3つの配光パターンPbL、PcL、PdLは、略同一の配光パターンとして形成されているが、その形成位置が水平方向にずれている。
【0082】
すなわち、配光パターンPdLは、V−V線に対して左右均等に拡がる配光パターンとして形成されている。これは第2灯具ユニット20Dの光軸Axdが車両前後方向に延びていることによるものである。
【0083】
これに対し、配光パターンPcLは、配光パターンPdLに対して左側にずれた位置に形成されている。これは第2灯具ユニット20Cの光軸Axcが第2灯具ユニット20Dの光軸Axdに対して左側に傾斜していることによるものである。
【0084】
また、配光パターンPbLは、配光パターンPcLに対してさらに左側にずれた位置に形成されている。これは第2灯具ユニット20Bの光軸Axbが第2灯具ユニット20Cの光軸Axcに対してさらに左側に傾斜していることによるものである。
【0085】
このように、ロービーム用配光パターンPLは、V−V線に対して左右均等に拡がる小さくて明るい配光パターンPaLと、V−V線に対して左右均等に拡がる大きい配光パターンPdLと、この配光パターンPdLに対して左側にずれた配光パターンPcLと、この配光パターンPcLに対してさらに左側にずれた配光パターンPbLとで構成されているので、灯具正面方向に高光度領域HZを有する配光ムラの少ない配光パターンとして形成される。
【0086】
なお、車両単位で形成されるロービーム用配光パターンとしては、車両用灯具10と対をなすべき車両用灯具(すなわち車両の右前端部に配置されるヘッドランプ)からの照射光によって形成されるロービーム用配光パターンとロービーム用配光パターンPLとの合成配光パターンとして形成されることとなる。その際、配光パターンPaL、PdLと略同一の配光パターンがこれらと略同一の位置に形成されるとともに、V−V線に関して配光パターンPbL、PcLと略左右対称の位置関係で配光パターンPbR、PcR(
図7において2点鎖線で示す)が形成されるので、車両前方走行路が左右均等に幅広く照射されることとなる。
【0087】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0088】
本実施形態に係る車両用灯具10は、ランプボディ12に対して上下方向および左右方向に回動可能に支持されたメインブラケット50に、第1光学ユニット40Aおよび3つの第2光学ユニット40B、40C、40Dが支持された構成となっているので、メインブラケット50を回動させることにより第1光学ユニット40Aおよび3つの第2光学ユニット40B、40C、40Dに対する光軸調整を一括して行うことができる。
【0089】
その上で、本実施形態に係る車両用灯具10は、メインブラケット50に対して上下方向に回動可能に支持されたサブブラケット60を備えた構成となっており、第1光学ユニット40Aがメインブラケット50に直接支持されるとともに3つの第2光学ユニット40B、40C、40Dがサブブラケット60を介してメインブラケット50に支持された構成となっているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0090】
すなわち、サブブラケット60を回動させることにより、第1光学ユニット40Aと3つの第2光学ユニット40B、40C、40Dとの間の上下方向の光軸ズレを補正することができる。そしてこれにより、第1光学ユニット40Aおよび3つの第2光学ユニット40B、40C、40Dに対する光軸調整が精度良く行われた状態で、メインブラケット50をランプボディ12に組み付けることができる。
【0091】
その際、3つの第2光学ユニット40B、40C、40Dに関しては一括して光軸調整が行われることとなるが、第1光学ユニット40Aからの出射光によりロービーム用配光パターンPLの高光度領域HZを形成するようになっているので、第2光学ユニット40B、40C、40D相互間に光軸ズレが生じていてもロービーム用配光パターンPLを実用上適正な配光パターンとして形成することができる。
【0092】
また、このように3つの第2光学ユニット40B、40C、40Dの光軸調整が一括して行われる構成とすることにより、各第2光学ユニット40B、40C、40Dを回動させるためのスペースを第2光学ユニット40B、40C、40D相互間に確保する必要をなくすことができる。したがって、第2光学ユニット40B、40C、40D相互間の間隔を狭くすることができ、これにより車両用灯具10のコンパクト化を図ることができる。
【0093】
このように本実施形態によれば、複数の光学ユニットを備えた車両用灯具10において、コンパクトな構成で複数の光学ユニットに対する光軸調整を精度良く行うことができる。
【0094】
本実施形態においては、3つの第2光学ユニット40B、40C、40Dが、それぞれ水平方向に互いにずれた方向に光を照射するように配置されているので、3つの第2光学ユニット40B、40C、40Dからの光照射によって形成される配光パターンPbL、PcL、PdLに水平方向の拡がりを持たせることができ、これにより前方視認性に優れたロービーム用配光パターンPLを形成することが容易に可能となる。
【0095】
その際、本実施形態に係る車両用灯具10は、各第2光学ユニット40B、40C、40Dの前方に第2投影レンズ32B、32C、32Dがメインブラケット50に支持された状態で配置された構成となっているので、サブブラケット60の回動状態にかかわらず、各第2光学ユニット40B、40C、40Dからの出射光の各第2投影レンズ32B、32C、32Dへの入射位置をできるだけ一定の位置に維持することが、各配光パターンPbL、PcL、PdLを略一定形状に維持する上で望まれる。
【0096】
その点、本実施形態においては、サブブラケット60がメインブラケット50に対して、3つの第2光学ユニット40B、40C、40Dからの3つの光照射方向の中間に位置する方向(具体的には第2投影レンズ32Cの光軸Axcが延びる方向)と直交して水平方向に延びる軸線を回動軸線Ax1として回動する構成となっているので、各第2光学ユニット40B、40C、40Dからの出射光の各第2投影レンズ32B、32C、32Dへの入射位置を略一定の位置に維持することが可能となる。
【0097】
また上述したとおり、本実施形態においては、第1光学ユニット40Aからの出射光によりロービーム用配光パターンPLの中心領域である高光度領域HZを形成するようになっているので、第2光学ユニット40B、40C、40D相互間に光軸ズレが生じていても、対向車ドライバ等にグレアを与えてしまわないようにした上で、ロービーム用配光パターンPLを実用上適正な配光パターンとして形成することが容易に可能となる。
【0098】
上記実施形態においては、第2灯具ユニット20D、20C、20Bの順で(すなわち第2光学ユニット40D、40C、40Bの順で)、その光照射方向の灯具正面方向からの左側傾斜角度が徐々に大きくなるように配置されているものとして説明したが、その配置を適宜入れ替えた構成とすることも可能である。
【0099】
上記実施形態においては、車両用灯具10が3つの第2灯具ユニット20B、20C、20Dを備えているものとして説明したが、2つあるいは4つ以上の第2灯具ユニットを備えた構成とすることも可能である。
【0100】
上記実施形態においては、第1灯具ユニット20Aおよび各第2灯具ユニット20B、20C、20Dが、リフレクタ44A、44C等を備えたプロジェクタ型の灯具ユニットであるものとして説明したが、リフレクタ44A、44C等を備えていないプロジェクタ型の灯具ユニット(この場合には光源自体が第1光学ユニットや各第2光学ユニットを構成する)やパラボラ型の灯具ユニット(この場合には灯具ユニットが第1光学ユニットや各第2光学ユニットを構成する)等を採用することも可能である。
【0101】
上記実施形態においては、ロービーム用配光パターンPLを形成するための車両用灯具10について説明したが、ハイビーム用配光パターン等を形成するための車両用灯具においても上記実施形態と略同様の作用効果を得ることが可能である。
【0102】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0103】
図8は、本変形例に係る車両用灯具110を示す、
図2と同様の図である。
【0104】
同図に示すように、この車両用灯具110の基本的な構成は上記実施形態に係る車両用灯具10と同様であるが、メインブラケット150およびサブブラケット160の構成が上記実施形態の場合と異なっている。
【0105】
すなわち、本変形例においても、メインブラケット150はランプボディ12に対して回動可能に支持されており、このメインブラケット150に対してサブブラケット160が回動可能に支持されているが、3つの第2光学ユニット40B、40C、40Dはメインブラケット150に直接支持されており、第1光学ユニット40Aはサブブラケット160を介してメインブラケット150に支持された構成となっている。
【0106】
本変形例においても、サブブラケット160が、メインブラケット150に対して、水平方向に延びる回動軸線Ax2を中心にして上下方向に回動可能に支持されているが、この回動軸線Ax2は、第1投影レンズ32Aの光軸Axaと直交する方向(すなわち車幅方向)に延びている。
【0107】
そして、サブブラケット160は、光軸Axaよりも上方でかつ回動軸線Ax2が延びる方向の2箇所において、メインブラケット150にスクリュウ62によってネジ締めされている。
【0108】
また、光軸Axaよりも下方の位置には、サブブラケット160をメインブラケット150に対して回動軸線Ax2を中心にして上下方向に回動させるためのアジャスティングスクリュウ66が配置されている。
【0109】
本変形例の構成を採用した場合においても、サブブラケット160を回動させることにより、第1光学ユニット40Aと3つの第2光学ユニット140B、140C、40Dとの間の上下方向の光軸ズレを補正することができる。そしてこれにより、第1光学ユニット40Aおよび3つの第2光学ユニット40B、40C、40Dに対する光軸調整を精度良く行うことができる。
【0110】
なお、上記実施形態およびその変形例において諸元として示した数値は一例にすぎず、これらを適宜異なる値に設定してもよいことはもちろんである。
【0111】
また、本願発明は、上記実施形態およびその変形例に記載された構成に限定されるものではなく、これ以外の種々の変更を加えた構成が採用可能である。