(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、老朽化した道路構造物などの社会インフラが損傷することにより、死傷者の発生するような重大事故が発生している。このため、老朽化した社会インフラの更新が急務となっており、この更新が国や自治体によって推進されている。
【0003】
これに関連した既設橋梁用防護柵の更新工法につき、例えば、本願の出願人等により特許文献1に記載された工法が提案されている。この工法は、まず、コンクリート製の地覆から既設の橋梁用防護柵を除去し、更に、既設アンカーボルトにおいて地覆から突出した部分を除去する。この後、地覆に新しいアンカーボルト(例えば後施工アンカーボルト)を設置することで、地覆に新しい橋梁用防護柵を取り付ける工法である。
【0004】
ところで、特に自治体(都道府県及び市区町村)が管理する橋梁(道路用橋梁)は、国が管理する橋梁に比べて、例えば設置時期が古かったり橋長が短かったりすること等により地覆の幅が狭く形成されていることが多い。このような幅の狭い地覆に対しては、従来、既設橋梁用防護柵を更新する際、新しいアンカーボルトを地覆の延長方向に向かって複数列に設置できず、新しいアンカーボルトを地覆に深く埋め込むことで対処していた。
【0005】
しかし、幅の狭い地覆に後施工アンカーボルトを設置する場合、車両衝突に耐えうるコンクリートの有効せん断面積を確保するためにアンカーボルトを深く埋め込む必要があるが、例えば古い橋梁は地覆高が低く、床版までの距離が小さいため、アンカーボルトを十分な埋め込み深さで設置困難なケースが多い。このため、例えば橋梁用防護柵に車両が衝突した場合、この衝突によりアンカーボルトにかかる力によりアンカーボルトが地覆から引き抜かれてしまうことで、橋梁用防護柵が河川に落下し、それと共に車両も河川に落下してしまう可能性があって問題であった。また、アンカーボルトを設置できたとしても、地覆の幅が狭いことにより、道路構造令において定められた建築限界を確保できないケースが多くある。
【0006】
また、既設地覆を除去した上で拡幅した地覆を再度形成する方法もあるが、工事が大掛かりとなるために工期が長くかかり、長期にわたり交通規制が必要になる等、周囲に与える影響が大きい。そして、拡幅した地覆は拡幅前より重量が増加するため、橋梁の床版や橋脚にかかる負担が大きくなってしまう。
【0007】
また、地覆の橋梁幅方向外面(橋梁上の道路に面する側とは反対側の面、または河川側の面)にアンカーボルトにより金具を固定し、その金具に新しい支柱を取り付ける方法もあるが、金具を固定するアンカーボルトに常時引き抜き荷重がかかる可能性があるから、安全性及び耐久性に難がある。そして、地覆の橋梁幅方向外面にアンカーボルトを施工するためには、河川上に仮設足場を組む必要があるので工事施工コストが増加する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明は前記問題に鑑み、幅の狭い地覆であっても十分に強度を確保できる橋梁用防護柵の設置構造
、橋梁用防護柵の設置工法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、道路用橋梁における地覆上面に取り付けられ、地覆の延長方向に向かって2列以上となるように配置される複数のアンカーボルトと、地覆から橋梁幅方向外側に張り出すように、前記複数のアンカーボルトによって固定されるベース部材と、前記ベース部材上に固定される支柱と、前記支柱に取り付けられる横梁と、を備え、前記ベース部材は、前記複数のアンカーボルトの各々が貫通する複数のアンカーボルト取付孔を備え、前記複数のアンカーボルト取付孔は、地覆の延長方向における配置の間隔につき、前記複数のアンカーボルトの地覆への埋め込み深さを基準とした比率で0.5〜3.0となる間隔で配置された橋梁用防護柵の設置構造である。
【0011】
また本発明は、道路用橋梁における地覆上面に取り付けられ、地覆の延長方向に向かって2列以上となるように配置される複数のアンカーボルトの各々が貫通する複数のアンカーボルト取付孔と、橋梁用防護柵の支柱を取り付ける支柱取付用ボルト孔と、を備え、地覆に対して固定された場合に、地覆の橋梁幅方向における外面よりも一端が外方に位置し、前記複数のアンカーボルト取付孔は、地覆の延長方向における配置の間隔につき、前記複数のアンカーボルトの地覆への埋め込み深さを基準とした比率で0.5〜3.0となる間隔で配置されたベース部材である。
【0012】
これらの構成によると、地覆と支柱との間にベース部材を設けることで支柱を地覆からずらせて配置できる。このようにずらせて配置した分、幅の狭い地覆であっても、地覆上面に、地覆の延長方向に向かって2列以上となるように配置される複数のアンカーボルトを取り付ける十分なスペースが確保される。このため、幅の狭い地覆であっても複数のアンカーボルトを用いて支柱を固定できる。よって、複数のアンカーボルトにより支柱が十分な強度で固定される。
【0013】
更に、複数のアンカーボルト取付孔が、地覆の延長方向における配置の間隔につき、複数のアンカーボルトの地覆への埋め込み深さを基準とした比率で0.5〜3.0となる間隔で配置されたため、少なくとも地覆の延長方向でのアンカーボルト取付孔の間隔に応じて、地覆を構成するコンクリートにコーン破壊が生じる領域を隣接するコーン破壊が生じる領域から適度に離すことができるので、アンカーボルトに働く引き抜き方向の外力、及び、水平方向の外力に対する強度を向上できる。
【0014】
また本発明は、道路用橋梁における地覆上面に取り付けられ、地覆の延長方向に向かって2列以上となるように配置される複数のアンカーボルトと、地覆から橋梁幅方向外側に張り出すように、前記複数のアンカーボルトによって固定されるベース部材と、前記ベース部材上に固定される支柱と、前記支柱に取り付けられる横梁と、を備え、前記ベース部材は、前記複数のアンカーボルトの各々が貫通する複数のアンカーボルト取付孔を備え、前記複数のアンカーボルト取付孔は、橋梁幅方向の外側の列における孔間隔よりも内側の列における孔間隔が大きい橋梁用防護柵の設置構造である。
【0015】
また本発明は、道路用橋梁における地覆上面に取り付けられ、地覆の延長方向に向かって2列以上となるように配置される複数のアンカーボルトの各々が貫通する複数のアンカーボルト取付孔と、橋梁用防護柵の支柱を取り付ける支柱取付用ボルト孔と、を備え、地覆に対して固定された場合に、地覆の橋梁幅方向における外面よりも一端が外方に位置し、前記複数のアンカーボルト取付孔は、橋梁幅方向の外側の列における孔間隔よりも内側の列における孔間隔が大きいベース部材である。
【0016】
これらの構成によると、地覆と支柱との間にベース部材を設けることで支柱を地覆からずらせて配置できる。このようにずらせて配置した分、幅の狭い地覆であっても、地覆上面に、地覆の延長方向に向かって2列以上となるように配置される複数のアンカーボルトを取り付ける十分なスペースが確保される。このため、幅の狭い地覆であっても複数のアンカーボルトを用いて支柱を固定できる。よって、複数のアンカーボルトにより支柱が十分な強度で固定される。
【0017】
更に、地覆の延長方向に向かって2列以上となるように配置される複数のアンカーボルト取付孔の孔間隔につき、橋梁幅方向の外側の列における孔間隔よりも内側の列における孔間隔が大きいため、前記各列方向かつ橋梁幅方向でのアンカーボルト取付孔の間隔に応じて、地覆を構成するコンクリートにコーン破壊が生じる領域を隣接するコーン破壊が生じる領域から適度に離すことができるので、アンカーボルトに働く引き抜き方向の外力、及び、水平方向の外力に対する強度を向上できる。
【0018】
また、前記ベース部材の、地覆に対する前記橋梁幅方向外側への張り出しは、前記ベース部材の底面と地覆の橋梁幅方向における外面との間に空間を有するようになされるようにできる。
【0019】
この構成によると、ベース部材の底面と地覆の橋梁幅方向における外面(橋梁上の道路に面する側とは反対側の面、または河川側の面)との間に空間を有するよう構成することで、ベース部材に橋梁幅方向外側へ倒れ込む外力がかかった場合でも、この外力が地覆の橋梁幅方向における外面に伝わらないため、地覆が破壊されることを抑制できる。
【0020】
また、前記支柱は、前記ベース部材に対してボルトにより固定され、前記ベース部材は、前記支柱を固定するためのボルトの下方延長方向に、前記ボルトに当接可能であって、前記空間に面する蓋部材を備えるようにできる。
【0021】
この構成によると、蓋部材により、支柱を固定する前の状態のボルトが前記空間に脱落することを防止できる。
【0022】
また本発明は、地覆に複数のアンカーボルトを埋め込む工程と、地覆上に、前記ベース部材を配置し、前記アンカーボルトにナットをねじ込むことにより、地覆に対して前記ベース部材を固定する工程と、前記ベース部材上に支柱を載せ、前記支柱取付用ボルト孔に取り付けられた状態とされたボルトにナットをねじ込むことで、前記支柱を前記ベース部材に取り付ける工程と、前記支柱に横梁を取り付ける工程と、を有する橋梁用防護柵の設置工法である。
【0023】
この方法によると、幅の狭い地覆であっても支柱を十分な強度で固定した橋梁用防護柵を提供できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によると、地覆と支柱との間にベース部材を設けることで、地覆に対して支柱が十分な強度で固定される。よって、幅の狭い地覆であっても十分に強度を確保できる橋梁用防護柵の設置構造
、橋梁用防護柵の設置工法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明につき実施形態を取り上げて説明を行う。なお、本実施形態はあくまでも本発明を理解するための一例を示したに過ぎず、各部の形状、構造、材質等に関し、本実施形態以外のバリエーションが、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で許容されていることは言うまでもない。
【0027】
また、以下説明における「前後左右」の表現は、
図1、
図4(a)(b)、
図5(a)に記載した方向に基づき、「上下方向」の表現は、
図1に記載した方向に基づいている。
【0028】
本実施形態の橋梁用防護柵の設置構造として、
図1、
図2、
図3(a)〜(c)に示すように構成され、「高欄」とも呼ばれる支柱1及び横梁2(
図3(c)にのみ示す)が組み合わされてなる橋梁用防護柵に加え、地覆Wと支柱1との間に配置されるアタッチメントとして機能するベース部材3を備える。
【0029】
ベース部材3は鋳鉄製(より詳しくはダクタイル鋳鉄製)である。ただし、ベース部材3の素材はこれに限定されず、例えばアルミ鋳物、鉄、ステンレス合金等、種々の素材で形成できる。このベース部材3は、
図4(a)(b)及び
図5(a)〜(c)に示す形状のものである。このベース部材3は、
図1及び
図3(a)〜(c)に示すように地覆W上に配置される場合において、前方が橋梁上の道路に面するように位置し、左右方向が地覆Wの延長方向(左右方向)に位置する。このベース部材3は、地覆Wから後方、つまり橋梁幅方向(前後方向)外側に張り出すように地覆W上に固定される。
【0030】
ベース部材3における前方寄りの位置にはアンカーボルト取付部31が形成されている。このアンカーボルト取付部31には4個のアンカーボルト取付孔311が形成されており、地覆Wに上面から埋め込まれたアンカーボルトB1に対してナット止めで締結される。なお、アンカーボルトB1は上下方向に延びるように地覆Wに埋め込まれる。アンカーボルト取付孔311は、左右方向に長い長孔、つまり、地覆Wへの設置時において地覆Wの延長方向(左右方向)に沿って延びる長孔とされている。なお、地覆Wの延長方向は橋梁幅方向に対して交わる(本実施形態では直交する)方向である。このようにアンカーボルト取付孔311が長孔とされたことにより、例えばアンカーボルトB1の設置予定位置に地覆W内部の鉄筋が存在する場合、鉄筋を避けるためにアンカーボルトB1をずらせて設置できる。
【0031】
本実施形態のアンカーボルト取付部31には地覆Wの延長方向に向かって2列で4個のアンカーボルト取付孔311が形成されているが、アンカーボルト取付孔311の形成数はこれに限定されない。例えば、3列以上とすることができ、また、アンカーボルト取付孔311として形成された一つの長孔を共用するようにして、2本のアンカーボルトB1が取り付けられるようアンカーボルト取付部31を構成することもできる。
【0032】
アンカーボルト取付部31は、
図4(a)及び
図5(a)(c)に示すように凹部312を有する。凹部312は前方に開放された空間を有している。このため、アンカーボルトB1を締め付けるための工具がベース部材3に干渉しにくく、作業員による締め付け作業を円滑に行うことができる。一つの凹部312には、前後左右方向にずれた二つのアンカーボルト取付孔311が形成されている。
【0033】
ベース部材3の1台あたり、本実施形態では4個のアンカーボルト取付孔311が形成されている。
図5(a)に示すように、そのうち後側(橋梁幅方向の外側)の列に位置する2個は左右方向で相対的に小さい間隔(孔間隔)W311bで設けられ、前側(橋梁幅方向の内側)の列に位置する2個は左右方向で相対的に大きい間隔(孔間隔)W311fで設けられている。つまり、前後各列に属するアンカーボルト取付孔311は、前後方向にずれて配置されている。なお、これに限定されず、例えば、前方に位置する2個と後方に位置する2個とを同一間隔で設けることで、各列に属するアンカーボルト取付孔311が、前後方向に一致して配置されていてもよい。また、アンカーボルト取付孔311の左右方向間隔W311b,W311fは、支柱1の幅寸法(地覆Wの延長方向における寸法)よりも大きく設定することが好ましい。アンカーボルトB1を支柱1の幅寸法よりも小さい間隔で配置した場合、アンカー強度の十分な発揮が期待できないからである。
【0034】
複数のアンカーボルト取付孔311は、地覆Wの延長方向における配置の間隔につき、複数のアンカーボルトB1の地覆Wへの埋め込み深さDB1(
図3(c)参照)を基準とした比率で0.5〜3.0、好ましくは、地覆Wの押抜せん断面積が最大になる条件から、前記比率で0.5〜2.0となる間隔で配置されている。なお、複数のアンカーボルトB1の埋め込み深さDB1は、個々の寸法にばらつきがある場合には平均値を用いるものとする。この配置により、少なくとも地覆Wの延長方向でのアンカーボルト取付孔311の間隔に応じて、地覆Wを構成するコンクリートにコーン破壊(下すぼみの円錐形状の破壊であって、破壊深さは埋め込み深さDB1に対応する)が生じる領域を隣接するコーン破壊が生じる領域から適度に離すことができる。つまり、複数のコーン破壊が生じる領域を極力重ならないようにできる。特に、各列に属するアンカーボルト取付孔311(本実施形態では後側(橋梁幅方向の外側)の列に位置するアンカーボルト取付孔311と、前側(橋梁幅方向の内側)の列に位置するアンカーボルト取付孔311)が左右方向にずれて配置された場合には、各列に属するアンカーボルト取付孔311が前後にまっすぐ並んで配置された場合と比べ、前後各列の間隔が同一でも、前記コーン破壊が生じる領域を容易に離すことができる。本実施形態のように複数のアンカーボルト取付孔311を配置することで、アンカーボルトB1に働く引き抜き方向の外力、及び、水平方向の外力に対する強度を向上できる。このため、コンクリートの体積が十分に確保できない、幅の狭い地覆Wであっても、複数のアンカーボルトB1により確実にベース部材3を支持できる。
【0035】
ベース部材3は、底面3aから上面3bまでの距離(凹部312の上端からベース部材3の底面3aまでの距離)が、地覆Wの上面からアンカーボルトB1が突出する高さよりも大きいものとされている。このため、
図3(a)(c)に示すように、地覆Wから突出したアンカーボルトB1の上端部分をこの凹部312に納めるようにでき、ベース部材3の上面3bから突出しないようにできる。よって、後述のカバー5を設けない場合にあっては、地覆W上にベース部材3を取り付けた際の美観に優れる。更に、もし車両がベース部材3上に乗り上げた場合であっても、アンカーボルトB1が三方から「壁」で囲まれた状態となっていることから、アンカーボルトB1の周囲に何もない状態に比べると、アンカーボルトB1の上端部分がタイヤに当たることを抑制できるため、バースト等のタイヤ損傷が起こりにくい。
【0036】
ベース部材3における後方の領域には支柱取付部32が形成されている。この支柱取付部32の上面は支柱1の下端プレート11が配置できる形状とされている。この支柱取付部32には支柱取付用ボルト孔321が形成されており、支柱取付用ボルトB2が取り付けられて、支柱1の下端プレート11が固定される。ベース部材3は
図3(c)に示すように、この支柱取付部32において、底面3aから上面3bにわたって必要となる断面性能が確保されており、支柱1及び横梁2の荷重、及び、例えば強風時や車両の衝突時に、支柱1及び横梁2が橋梁幅方向外側(後方)に倒れ込もうとすることによりベース部材3に働く曲げ応力について、ベース部材3の撓みを弾性範囲内とし、材料の耐力値以下におさめることが可能である。
【0037】
支柱取付部32に支柱取付用ボルト孔321は4個設けられている。そのうち前方に位置する2個は左右方向で相対的に小さい間隔で設けられ、後方に位置する2個は左右方向で相対的に大きい間隔で設けられている。なお、これに限定されず、例えば、前方に位置する2個と後方に位置する2個とを同一間隔で設けることもできる。
図5(c)に示すように、支柱取付用ボルト孔321は底面3a側において拡大された拡大部321aを有する。この拡大部321aは、
図4(b)及び
図5(b)に示すように、底面視で左右方向に対向する平面321bを有する形状である。支柱取付用ボルトB2として六角ボルトが用いられた場合、
図3(c)に示すように、この拡大部321aにはボルト頭部が位置する。ボルト頭部は平面321bに当たることにより、支柱取付用ボルトB2の回り止めがなされる。このため、支柱取付用ボルトB2に対して上面3b側からナットをねじ込むだけでベース部材3に支柱1を固定できる。
【0038】
また
図2に示すように、ベース部材3は、支柱1を固定するための支柱取付用ボルトB2の下方延長方向に、支柱取付用ボルトB2に当接可能であって、空間S(
図3(c)参照)に面する蓋部材4を備えることもできる。この蓋部材4を設けた場合、支柱1を固定する前の状態の支柱取付用ボルトB2が下方の空間Sに脱落することを有効に防止できる。なお蓋部材4の他、例えばこの拡大部321aに、支柱取付用ボルトB2が支柱取付用ボルト孔321から脱落しないようにする脱落防止機構が設けられ、支柱取付用ボルトB2が脱落しないようにされていてもよい。
【0039】
支柱取付部32はアンカーボルト取付部31に対して後方(地覆Wの橋梁幅方向外側)に離れて位置している。このため、地覆Wと支柱1との間にベース部材3を設けることで支柱1を地覆Wからずらせて配置できる。このようにずらせて配置した分、幅の狭い地覆Wであっても、地覆上面に、地覆Wの延長方向に向かって2列以上(別の表現で表すと、橋梁幅方向の内外に少なくとも2列)となるように配置される複数(本実施形態では4本)のアンカーボルトB1を取り付ける十分なスペースが確保される。なお、前記「地覆Wの延長方向に向かって2列」とは、地覆Wの延長方向(左右方向)に向かう列が、橋梁幅方向(前後方向)に並ぶように2列存在するという意味である。また、前記「2列」には、各列が1本のアンカーボルトB1だけで構成される場合も含まれる。このため、幅の狭い地覆Wであっても、地覆Wの延長方向に向かって2列以上となるように配置される複数のアンカーボルトB1を用いて支柱1を固定できる。よって、複数のアンカーボルトB1により支柱1が十分な強度で固定される。
【0040】
また、支柱取付用ボルトB2をアンカーボルトB1とは別に設けている。このため、支柱取付用ボルトB2ではベース部材3の変形荷重を負担できることが想定され、この想定を前提とすると、アンカーボルトB1では、橋梁用防護柵に車両が衝突した場合等に生じる引き抜き荷重を負担できるので、支柱取付用ボルトB2とアンカーボルトB1とで負担する荷重を分散できる。よって、アンカーボルトB1の負担すべき荷重が小さくなる分、アンカーボルトB1の地覆Wへの埋め込み深さを小さくできると考えられる。
【0041】
また、アンカーボルトB1と支柱取付用ボルトB2とが互いに干渉しない。よって、地覆Wへのベース部材3の固定と、ベース部材3への支柱1の固定とを別個の工程で行うことができるので、橋梁用防護柵の更新工事を効率良く行うことができる。
【0042】
なお、本実施形態とは異なり、アンカーボルト取付孔311の一部または全部を支柱取付用ボルト孔321が兼ねることもできる。この場合、アンカーボルトB1の一部または全部を、ベース部材3に対して支柱1を固定するために用いることができる。ただしこの場合では、後述する道路構造令の建築限界に適合させるため、例えば特別な形状の支柱1を用意することが必要になるため、本実施形態のようにアンカーボルト取付孔311と支柱取付用ボルト孔321とは別個に形成することが望ましい。
【0043】
ベース部材3における後方で、支柱取付部32よりも左右方向端寄りには吊り下げ孔33が形成されている。この吊り下げ孔33に吊りベルト等を通すことにより、重機等を用いてベース部材3を吊り下げることが容易にでき、地覆W上へのベース部材3の配置を容易に行うことができる。この吊り下げ孔33は作業員の持ち手として使用することもでき、その場合、手作業によるベース部材3の運搬が容易となる。また、
図4(b)に示すように、ベース部材3で荷重負担に直接寄与しない、支柱取付用ボルト孔321の左右部分には、底面側に開口した肉盗み部34等が形成されており、ベース部材3の軽量化に貢献している。更に、肉盗み部34等の、空間を有する部分を形成することにより、断面係数(断面二次モーメント)を大きくできることから、ベース部材3の強度(剛性)を向上できる。
【0044】
ベース部材3は、
図1及び
図3(a)〜(c)に示すように地覆Wに取り付けられた状態で、図示のように前端が地覆W上に位置し、後端が地覆Wよりも後方(橋梁幅方向外側方向)に張り出す。この状態で取り付けられた支柱1は、地覆Wに対して後方(橋梁幅方向外側方向)にオフセットされた状態となるため、幅の狭い地覆Wであっても、後述する道路構造令の建築限界に適合させることができる。
【0045】
ベース部材3の、地覆Wに対する橋梁幅方向外側への前記張り出しは、
図3(c)に示すように、ベース部材3の底面3aと地覆Wの橋梁幅方向における外面(橋梁上の道路に面する側とは反対側の面、または河川側の面)W1との間に空間Sを有するようになされる。このように構成することで、ベース部材3に橋梁幅方向外側へ倒れ込む外力がかかった場合でも、この外力が地覆Wの橋梁幅方向における外面W1に伝わることがなく、外力が外面W1に伝わることが原因で地覆Wを構成するコンクリートが破壊されるということを抑制できる。
【0046】
支柱1及び横梁2は、従来用いられていたものと同構造のものを使用できる。支柱1の下端には下端プレート11が設けられている。この下端プレート11とベース部材3を固定部材で締結する。このため、下端プレート11にはボルト貫通孔111が形成されている(
図3(c)、
図7(d)参照)。なお、本実施形態では、この固定部材として支柱取付用ボルトB2及びナットが用いられているが、その他の締結手段を用いることもできる。また、本実施形態では、支柱取付用ボルトB2として六角ボルトが用いられているが、六角ボルト以外のボルトを用いることもできる。また、場合によっては(具体的にはベース部材3として溶接可能な素材で形成した場合)、下端プレート11をベース部材3に対して溶接することもできる。横梁2は、
図3(c)に示すように、支柱1の前方に形成された凹部に取り付けられ、
図6(a)に示すように、地覆Wの延長方向に沿って位置する。
【0047】
なお、支柱1とベース部材3とを一体に構成することも可能であり、この構成では、ベース部材3に支柱1を固定する手間が省けるというメリットがある。ただ、この構成では支柱1とベース部材3との結合体の重量が各々の重量よりも大きくなり、場合によっては重機が必要となること、及び、地覆Wに対する支柱1の位置調整がしにくくなるというデメリットがある。更に、支柱1とベース部材3とを一体に構成した場合、例えば支柱1とベース部材3の一方だけが損傷した場合であっても全部を交換しないとならないが、別体で構成しておけば損傷した部分だけを交換できる。これらにより、支柱1とベース部材3とは別体で構成することが望ましい。
【0048】
ここで、道路構造令(政令)において道路の建築限界が定められている。これによると、車道の外端、つまり、地覆Wの内面から構造物を250mm以上離すことが要求されている。
【0049】
地覆Wに対してアンカーボルトを設置する場合、地覆W内部の鉄筋、特にフープ筋に囲まれた領域にアンカーボルトB1を配置しないと十分な引き抜き強度を発揮できない。一方、この領域にアンカーボルトを配置しつつ建築限界に適合させることは、特に幅の狭い地覆Wでは難しかった。
【0050】
本実施形態では、ベース部材3により支柱1を後方(橋梁幅方向外側方向)にオフセットできるため、地覆Wの内面から、横梁2のうちで最も道路に近い位置までの水平距離X(
図3(c)参照)を250mm以上とできる。このため、容易に道路構造令の要求を満たすことができる。本実施形態では、
図3(c)に示すように4本のアンカーボルトB1全てが水平距離Xの範囲内に位置している。ただしこれに限定されず、例えば前方に位置するアンカーボルトB1等、複数のアンカーボルトのうち少なくとも一部のみが水平距離Xの範囲内に位置するよう構成されることもできる。以上、支柱1が後方にオフセットされるため、幅の狭い地覆Wを有する橋梁における防護柵の更新を促進できる。また、ベース部材3を用いることにより、支柱1及び横梁2については、建築限界を満たすための特殊な形状のものを用いずに、従来用いられていた形状のものがそのまま使用できる。
【0051】
本実施形態のアンカーボルトB1は、支柱1の1本当たりで4本が用いられる。なお、3本または5本以上が用いられることもできる。従来のようにアンカーボルトB1の1本当たりの地覆Wへの埋め込み長さを大きくしなくても、本数が多い分、アンカーボルトB1の1本当たりの負担荷重が小さくなるので、相対的に小さい埋め込み長さで十分な引き抜き強度を確保できる。アンカーボルトB1には、ケミカルアンカー等の後施工アンカーを用いることができる。
【0052】
本実施形態では、ベース部材3を覆うようにカバー5が取り付けられる。このカバー5は、例えば鋼板が略コの字状に曲げ成形されて形成され、
図6(a)(b)に示すように、ベース部材3及び地覆Wの上部を覆う全体カバーとして実施することができる。なお、ベース部材3のみを覆うようにしたり、ベース部材3同士の間のみを覆う部分カバーとして実施することもできる。カバー5の取り付けは種々の手段により行うことができる。例えば、ベース部材3への嵌合、ボルト止め、地覆W上に設置したレールへの固定等で行うことができる。なお、カバー5の素材はこれに限定されず、例えばアルミニウム合金や合成樹脂等、種々の素材で形成できる。
【0053】
このカバー5は、
図6(c)に示すように地覆Wから後方に張り出した形状とされている。この後方に張り出した部分は、
図6(b)に示すように、ベース部材3の地覆Wに対する張り出しに対応している。
【0054】
カバー5と地覆Wとの間には補強材6が配置される。本実施形態では、補強材6はアルミニウム合金等の金属押し出し材から構成された、横断面が中空の長尺状体である。中空に形成することで、補強材6の強度を保ちつつ軽量化できる。なお、補強材6は押し出しに限定されず、曲げやプレスにより形成することもできる。また、合成樹脂、炭素繊維、FRPで形成することもできる。本実施形態では、地覆Wの幅方向に複数本の補強材6が配置される。具体的には地覆W上に2本の補強材6が並列される。補強材6の高さ寸法は、ベース部材3の高さ寸法と略同一とされている。このように、地覆Wの幅方向に複数本を配置できるように補強材6を構成することにより、一定幅の補強材6を用意しておけば、補強材6の位置及び並列させる数量を調整して種々の幅寸法の地覆Wに適用できるため、汎用性に優れる。
図6(c)に示すように、補強材6はアンカーボルトB3により地覆Wに固定され、ねじ止め等により補強材6にカバー5が固定される。
【0055】
カバー5を設けることにより、橋梁用防護柵の美観を向上でき、ベース部材3及びアンカーボルトB1に雨粒や車両が跳ね上げた水滴が直接かからないようにできることから腐食を抑制できる。また、もしも車両がベース部材上に乗り上げた場合であっても、車両、ベース部材3、地覆Wのそれぞれが損傷することを抑制できる。特に、本実施形態のカバー5は全体カバーであって、カバー5の上面に凹凸を生じないようにできるため、もし車両がベース部材上に乗り上げた場合であっても、車両のタイヤがベース部材3の部分で引っ掛かることが起こりにくいので、車両を速やかに道路上に戻すよう誘導させることができる。また、特にカバー5が合成樹脂等の軽量材料で形成された場合には、仮に車両の衝突、または強風や河川の増水により地覆Wからカバー5が離脱しても、歩行者や他の構造物にカバー5が当たった際に生じる危険性を低減できる。
【0056】
そして、カバー5と地覆Wとの間に補強材6が配置されることで、カバー5の強度を向上できる。このため、前述のように車両がベース部材上に乗り上げた場合でも、カバー5の損傷を抑制できる。
【0057】
次に、本実施形態の橋梁用防護柵を用いた、橋梁用防護柵の設置工法の一例である、既設橋梁用防護柵の更新工法について説明する。ただし、施工順は以下の説明順に限定されるものではなく、順序を適宜前後させることもできる。まず、地覆Wから既設橋梁用防護柵の支柱及び横梁を除去する。次に、地覆Wに埋め込まれていた既設アンカーボルトのうち、少なくとも地覆Wの上面から突出した部分を除去する。また必要により、地覆Wの表面等の補修を行う。次に、
図7(a)に示すように、地覆Wに4本の新たなアンカーボルトB1を埋め込む。次に、
図7(b)に示すように、支柱取付用ボルト孔321の下方から支柱取付用ボルトB2を通した状態としたベース部材3を地覆W上に位置させ、
図7(c)に示すように、ベース部材3のアンカーボルト取付孔311にアンカーボルトB1を通してナットN1をねじ込む。なお、ナットN1はこの段階では仮止め状態としておく。
【0058】
次に、
図7(d)に示すように、支柱1をベース部材3の支柱取付部32上に位置させ、
図7(e)に示すように、支柱1における下端プレート11のボルト貫通孔111を貫通した支柱取付用ボルトB2に対してナットN2をねじ込む。なお、ナットN2はこの段階では仮止め状態としておく。次に、
図7(f)に示すように、支柱1に横梁2を取り付ける。その後、各部の位置関係を調整し、アンカーボルトB1及び支柱取付用ボルトB2にねじ込まれたナットN1,N2と、横梁2の取付用のボルト・ナットを本締めして完成する。
【0059】
以上、本実施形態では、ベース部材3が地覆Wを後方(橋梁幅方向外側方向)に延長するアタッチメントである「地覆延長部材」として作用する。このため、幅の狭い地覆Wであっても、地覆Wの延長方向に向かって2列以上となるように配置される複数(本実施形態では4本)のアンカーボルトB1で支柱1を支持できる。しかも建築限界も確保できる。このため、強度を確保しつつ安全性が高い。また、地覆Wを再構築する必要がない。また、地覆W上だけで既設橋梁用防護柵の更新工法の作業を完結できる(橋梁上だけで施工可能である)ため、河川上である橋梁の後方(外方)に仮設足場を設置する必要がなく、工期の短縮及び工事施工コストの低減が可能である。また、更新工法を実施するための各部材を、作業員が人力で持ち運ぶことのできるように構成できるため、重機を使う必要がなく、工事施工コストを低減できる。
【0060】
なお、本実施形態の工法は、ここまで説明してきた既設橋梁用防護柵の更新だけに限定されず、例えば橋梁用防護柵の設けられていなかった地覆Wに対し、新たに橋梁用防護柵を設ける際に適用することもできる。更には、新設した地覆Wに対してこの工法を適用することもできる。
【0061】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることができる。