(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記モノマー成分の組成に対応する共重合体のガラス転移温度が、前記モノマー成分から前記(B)を除いた組成に対応する共重合体のガラス転移温度に比べて8℃以上高い、請求項1から7のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0018】
この明細書において「粘着剤」とは、前述のように、室温付近の温度域において柔らかい固体(粘弾性体)の状態を呈し、圧力により簡単に被着体に接着する性質を有する材料をいう。ここでいう粘着剤は、「C. A. Dahlquist, “Adhesion : Fundamental and Practice”, McLaren & Sons, (1966) P. 143」に定義されているとおり、一般的に、複素引張弾性率E
*(1Hz)<10
7dyne/cm
2を満たす性質を有する材料(典型的には、25℃において上記性質を有する材料)であり得る。
【0019】
この明細書において「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタクリレートを包括的に指す意味である。同様に、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイルおよびメタクリロイルを、「(メタ)アクリル」とはアクリルおよびメタクリルを、それぞれ包括的に指す意味である。
【0020】
この明細書において「(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分」とは、該粘着剤組成物から得られる粘着剤において(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー単位をいう。モノマー成分は、該粘着剤組成物中に、未重合物の形態(すなわち、重合性官能基が未反応である原料モノマーの形態)で含まれてもよく、重合物の形態で含まれていてもよく、これらの両方の形態で含まれていてもよい。
【0021】
この明細書において、粘着剤が油による透明性の低下(典型的には、粘着剤が油と接触することにより該粘着剤に濁りを生じる事象)を起こしにくい性質を「耐油白濁性」ということがある。ここでいう濁りは、特定の色(例えば白)のものに限定されない。また、ここでいう「油」は、常温で液体であってもよく固体であってもよい。すなわち、上記「油」の概念には油脂(fat)が含まれる。
【0022】
この明細書において「活性エネルギー線」とは、重合反応、架橋反応、開始剤の分解等の化学反応を引き起こし得るエネルギーをもったエネルギー線を指す。ここでいう活性エネルギー線の例には、紫外線、可視光線、赤外線のような光や、α線、β線、γ線、電子線、中性子線、X線のような放射線等が含まれる。
【0023】
<モノマー成分>
ここに開示される粘着剤組成物は、上記(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分として、以下の(A)成分、(B)成分および(C)成分を含む。
【0024】
上記(A)成分は、炭素数2〜18のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートである。以下、炭素数がX以上Y以下のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートを「C
X−Yアルキル(メタ)アクリレート」と表記することがある。C
2−18アルキル(メタ)アクリレートにおけるC
2−18アルキル基の構造は特に限定されず、上記アルキル基が直鎖のものおよび分岐鎖のもののいずれも使用可能である。(A)成分としては、このようなC
2−18アルキル(メタ)アクリレートの1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
直鎖アルキル基をエステル末端に有するC
2−18アルキル(メタ)アクリレートとして、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−へプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、n−ウンデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレート、n−ペンタデシル(メタ)アクリレート、n−ヘキサデシル(メタ)アクリレート、n−ヘプタデシル(メタ)アクリレートおよびn−オクタデシル(メタ)アクリレートが挙げられる。また、分岐鎖アルキル基をエステル末端に有するC
3−18アルキル(メタ)アクリレートとして、イソプロピル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、t−ペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、イソヘキシル(メタ)アクリレート、イソへプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、2−プロピルヘプチル(メタ)アクリレート、イソウンデシル(メタ)アクリレート、イソドデシル(メタ)アクリレート、イソトリデシル(メタ)アクリレート、イソミスチリル(メタ)アクリレート、イソペンタデシル(メタ)アクリレート、イソヘキサデシル(メタ)アクリレート、イソヘプタデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートなどが例示される。ここに開示される技術は、(A)成分がC
4−9アルキルアクリレートから選択される1種または2種以上を含む態様で好ましく実施され得る。C
4−9アルキルアクリレートの好適例としては、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレートおよびイソノニルアクリレートが挙げられる。
【0026】
ここに開示される技術における(A)成分は、上記アルキル基の平均炭素数が8以下となるように選択される。(A)成分が2種以上のC
2−18アルキル(メタ)アクリレートを含む場合、アルキル基の平均炭素数は、各C
2−18アルキル(メタ)アクリレートがエステル末端に有するアルキル基の炭素数と該C
2−18アルキル(メタ)アクリレートが(A)成分全体に占める重量分率との積の総和として算出される。例えば、後述する実施例に記載のサンプル2のようにn−ブチルアクリレート25重量部および2−エチルヘキシルアクリレート15重量部からなる(A)成分について、アルキル基の平均炭素数は、4×(25/40)+8×(15/40)=5.5と算出される。(A)成分が1種のC
2−18アルキル(メタ)アクリレートからなる場合は、該C
2−18アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の炭素数が(A)成分のアルキル基の平均炭素数となる。
【0027】
(A)成分のアルキル基の平均炭素数を8以下とすることにより、(B)成分および(C)成分との組合せにおいて、良好な耐油白濁性を示す粘着剤を実現することができる。より高い耐油白濁性を得る観点から、アルキル基の平均炭素数は、8未満であることが好ましく、7未満であることがより好ましく、6未満であることがさらに好ましい。アルキル基の平均炭素数の下限は特に限定されない。耐油白濁性と他の性能(接着性、凝集性、低温特性など)とを好適にバランスさせた粘着剤を実現する観点から、通常は、アルキル基の平均炭素数を3以上とすることが適当であり、3.5以上(例えば3.8以上)とすることが好ましい。
【0028】
(A)成分は、C
2−5アルキル(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。このことによって、(A)成分のアルキル基の平均炭素数を適切に調節し、上述した好ましい範囲とすることができる。したがって、(A)成分としてC
2−5アルキル(メタ)アクリレートを含む粘着剤組成物によると、良好な耐油白濁性を示す粘着剤を形成することができる。(A)成分がC
3−4アルキル(メタ)アクリレートを含有することがより好ましい。
【0029】
上記(B)成分は、脂環式モノマーである。脂環式モノマーとしては、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつ脂環構造含有基を有するものを、特に制限なく用いることができる。(B)成分としては、このような脂環式モノマーの1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。ここで「脂環構造含有基」とは、少なくとも一つの脂環構造を含む部分をいう。また、「脂環構造」とは、芳香族性を有しない飽和または不飽和の炭素環構造をいう。この明細書では、脂環構造含有基を単に「脂環式基」ということがある。脂環式基の好適例としては、脂環構造を含む炭化水素基や炭化水素オキシ基が挙げられる。
【0030】
ここに開示される技術において好ましい脂環式モノマーの例として、脂環式基と(メタ)アクリロイル基とを有する脂環式(メタ)アクリレートが挙げられる。脂環式(メタ)アクリレートの具体例としては、シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロブチル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートなどのほか、下記化学式に示すHPMPA、TMA−2、HCPAなどが挙げられる。
【0032】
脂環式モノマーにおける脂環式基(脂環式(メタ)アクリレートの場合、該脂環式(メタ)アクリレートから(メタ)アクリロイル基を除いた部分)の炭素数は特に限定されない。例えば、脂環式基の炭素数が4〜24(好ましくは5〜18、より好ましくは5〜12)である脂環式モノマーを用いることができる。なかでもシクロヘキシルアクリレート(CHA)、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート(IBXA)およびイソボルニルメタクリレートが好ましく、CHAおよびIBXAがより好ましく、CHAが特に好ましい。
【0033】
ここに開示される技術における(B)成分は、脂環式基の平均炭素数が12以下となるように選択されることが好ましい。ここで、(B)成分が2種以上の脂環式モノマーを含む場合、脂環式基の平均炭素数は、各脂環式モノマーが有する脂環式基の炭素数と該脂環式モノマーが(B)成分全体に占める重量分率との積の総和として算出される。例えば、CHA20重量部およびIBXA10重量部からなる(B)成分について、上記脂環式基の平均炭素数は、6×(20/30)+10×(10/30)=7.3と算出される。(B)成分が1種の脂環式モノマーからなる場合は、該脂環式モノマーの脂環式基の炭素数が(B)成分の脂環式基の平均炭素数となる。
【0034】
(B)成分の脂環式基の平均炭素数が12以下である態様によると、より良好な耐油白濁性を示す粘着剤が実現され得る。かかる観点から、脂環式基の平均炭素数は、10以下であることがより好ましい。脂環式基の平均炭素数の下限は特に限定されない。材料の入手容易性等の観点からは、脂環式基の平均炭素数を5以上とすることが有利である。
【0035】
上記(C)成分は、ヒドロキシ基およびカルボキシ基の少なくともいずれかを有するモノマーである。
【0036】
ヒドロキシ基含有モノマーとしては、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつヒドロキシ基を有するものを特に制限なく用いることができる。ヒドロキシ基含有モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート等などのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;(4−ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキルシクロアルカン(メタ)アクリレートが挙げられる。その他、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルなどが挙げられる。これらのなかでもヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。例えば、炭素数2〜6のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを好ましく使用し得る。好ましい一態様において、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)および4−ヒドロキシブチルメタクリレートから選択される1種または2種以上をヒドロキシ基含有モノマーとして用いることができる。ここに開示される技術の好適な態様において使用されるヒドロキシ基含有モノマーは、4HBA単独、2HEA単独、または4HBAと2HEAとの組合せであり得る。
【0037】
カルボキシ基含有モノマーとしては、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつカルボキシ基を有するものを特に制限なく用いることができる。カルボキシ基含有モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。カルボキシ基含有モノマーの例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和モノカルボン酸;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸;これらの金属塩(例えばアルカリ金属塩);無水マレイン酸、無水イタコン酸等の、上記エチレン性不飽和ジカルボン酸の無水物等;が挙げられる。これらのなかでも、アクリル酸、メタクリル酸が好ましく、特にアクリル酸が好ましい。
【0038】
ここに開示される技術は、(C)成分がヒドロキシ基含有モノマーを含む態様で好ましく実施することができる。すなわち、(C)成分がヒドロキシ基含有モノマーのみを含むか、ヒドロキシ基含有モノマーおよびカルボキシ基含有モノマーを含むことが好ましい。(C)成分がヒドロキシ基含有モノマーおよびカルボキシ基含有モノマーを含む場合、(C)成分全体に占めるヒドロキシ基含有モノマーの割合は、50重量%超であることが好ましく、80重量%以上(例えば90重量%以上)であることがより好ましい。(C)成分に占めるヒドロキシ基含有モノマーの割合を多くすることにより、カルボキシ基含有モノマーの量を減らしても良好な耐油白濁性が実現され得る。このことは、カルボキシ基に起因する金属腐食などを低減する観点から好ましい。ここに開示される技術は、モノマー成分がカルボキシ基含有モノマーを実質的に含有しない態様で好ましく実施され得る。例えば、モノマー成分に占めるカルボキシ基含有モノマーの割合を、1重量%未満、好ましくは0.5重量%未満、より好ましくは0.2重量%未満とすることができる。
【0039】
上記モノマー成分に占める(A)成分の割合は特に限定されない。耐油白濁性の観点から、上記(A)成分の割合は、90重量%以下が好ましく、85重量%以下がより好ましい。ここに開示される一態様において、上記(A)成分の割合は、60重量%以下とすることができ、例えば50重量%以下としてもよい。また、耐油白濁性と他の特性とをバランスよく両立する粘着剤を実現する観点から、上記(A)成分の割合は、30重量%以上が好ましく、35重量%以上がより好ましい。好ましい一態様において、モノマー成分に占める(A)成分の割合を35〜70重量%としてもよい。上記(A)成分の割合は、例えば、(C)成分の50重量%超がヒドロキシ基含有モノマーである態様において好ましく適用されて、耐油白濁性と他の特性とをより高レベルで両立する粘着剤を実現し得る。好ましい他の一態様において、モノマー成分に占める(A)成分の割合を55〜85重量%としてもよい。上記(A)成分の割合は、例えば、(C)成分の50重量%超がカルボキシ基含有モノマーである態様において好ましく適用されて、耐油白濁性と他の特性とをより高レベルで両立する粘着剤を実現し得る。
【0040】
上記モノマー成分に占める(B)成分の割合は特に限定されない。上記(B)成分の割合は、通常、3重量%以上が適当であり、耐油白濁性の観点から5重量%以上が好ましく、8重量%以上(例えば10重量%以上)がより好ましい。また、耐油白濁性と他の特性とをバランスよく両立する粘着剤を実現する観点から、上記(B)成分の割合は、65重量%以下が適当であり、60重量%以下が好ましく、55重量%以下(例えば50重量%以下)がより好ましい。好ましい一態様において、より良好な耐油白濁性を得る観点から、モノマー成分に占める(B)成分の割合を15重量%以上としてもよく、20重量%以上としてもよく、25重量%以上、さらには30重量%以上としてもよい。上記(B)成分の割合は、例えば、(B)成分としてCHAを単独で用いる態様、または(B)成分の50重量%超がCHAである態様において好ましく適用されて、より良好な耐油白濁性を示す粘着剤を実現し得る。
【0041】
上記モノマー成分に占める(C)成分の割合は、典型的には3重量%以上であり、耐油白濁性の観点から5重量%以上が好ましく、8重量%以上(例えば10重量%以上)がより好ましい。また、耐油白濁性と他の特性とをバランスよく両立する粘着剤を実現する観点から、上記(C)成分の割合は、35重量%以下が好ましく、30重量%以下がより好ましく、25重量%以下がさらに好ましい。好ましい一態様において、上記(C)成分の割合を15〜30重量%とすることができる。上記(C)成分の割合は、例えば、(C)成分の50重量%超がヒドロキシ基含有モノマーである態様において好ましく適用されて、より良好な耐油白濁性を示す粘着剤を実現し得る。
【0042】
ここに開示される技術における上記構成モノマーは、上記(A)成分、上記(B)成分および(C)成分以外のモノマー(以下「任意モノマー」ともいう。)を必要に応じて含有し得る。
【0043】
このような任意モノマーの例として、環状窒素含有モノマーや環状エーテル基含有モノマーなどのヘテロ環含有モノマーが挙げられる。このようなヘテロ環含有モノマーは、粘着剤の接着力や凝集力の向上に有利に寄与し得る。ヘテロ環含有モノマーは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
環状窒素含有モノマーとしては、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつ環状窒素構造を有するものを特に制限なく用いることができる。環状窒素構造は、環状構造内に窒素原子を有するものが好ましい。環状窒素含有モノマーとしては、例えば、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−ε−カプロラクタム、メチルビニルピロリドン等のラクタム系ビニルモノマー;2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンのようなオキサゾリン基含有モノマー;ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルモルホリン等の窒素含有複素環を有するビニル系モノマー等が挙げられる。また、モルホリン環、ピペリジン環、ピロリジン環、ピペラジン環、アジリジン環等の窒素含有複素環を含有する(メタ)アクリルモノマーが挙げられる。具体的には、N−アクリロイルモルホリン、N−アクリロイルピペリジン、N−メタクリロイルピペリジン、N−アクリロイルピロリジン、N−アクリロイルアジリジン等が挙げられる。上記環状窒素含有モノマーのなかでも、凝集性等の点からは、ラクタム系ビニルモノマーが好ましく、N−ビニルピロリドンがより好ましい。
【0045】
環状エーテル基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつエポキシ基またはオキセタン基等の環状エーテル基を有するものを特に制限なく用いることができる。エポキシ基含有モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等が挙げられる。オキセタン基含有モノマーとしては、例えば、3−オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3−メチル−オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3−エチル−オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3−ブチル−オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3−ヘキシル−オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、等が挙げられる。
【0046】
上記任意モノマーの他の例として、(A)成分に属しないアルキル(メタ)アクリレート、すなわちアルキル基の炭素数が1であるかまたは19以上(例えば19〜24)のアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。そのようなアルキル(メタ)アクリレートの具体例として、メチル(メタ)アクリレート、n−ノナデシル(メタ)アクリレート、イソノナデシル(メタ)アクリレート、n−エイコシル(メタ)アクリレート、イソエイコシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
上記任意モノマーの他の例として、ヒドロキシ基およびカルボキシ基以外の官能基を含有するモノマーが挙げられる。このような官能基含有モノマーは、(メタ)アクリル系ポリマーに架橋点を導入したり、(メタ)アクリル系ポリマーの凝集力を高めたりする目的で使用され得る。官能基含有モノマーとしては、例えば(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー;例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノ基含有モノマー; 例えばスチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;例えば2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等のリン酸基含有モノマー;例えばジアセトン(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリレート、ビニルメチルケトン、ビニルアセトアセテート等のケト基含有モノマー;例えば2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等のイソシアネート基含有モノマー;例えばメトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、等のアルコキシ基含有モノマー;例えば3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基含有モノマー;等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
ここに開示される技術におけるモノマー成分は、(メタ)アクリル系ポリマーのTgの調整や凝集力の向上等の目的で、上記任意モノマーとして、上記(A),(B),(C)成分と共重合可能であって上記で例示した以外の共重合性モノマーを含んでいてもよい。そのような共重合性モノマーとしては、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル;例えばスチレン、置換スチレン(α−メチルスチレン等)、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;例えばアリール(メタ)アクリレート(例えばフェニル(メタ)アクリレート)、アリールオキシアルキル(メタ)アクリレート(例えばフェノキシエチル(メタ)アクリレート)、アリールアルキル(メタ)アクリレート(例えばベンジル(メタ)アクリレート)等の芳香族性環含有(メタ)アクリレート;例えばエチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレン等のオレフィン系モノマー;例えば塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩素含有モノマー;例えばメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー;その他、ビニル基を重合したモノマー末端にラジカル重合性ビニル基を有するマクロモノマー等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
これらの任意モノマーの使用量は特に限定されず、適宜決定することができる。通常、任意モノマーの合計使用量は、モノマー成分の50重量%未満とすることが適当であり、30重量%以下とすることが好ましく、20重量%以下とすることがより好ましい。ここに開示される技術は、任意モノマーの合計使用量がモノマー成分の10重量%以下(例えば5重量%以下)である態様で好ましく実施され得る。任意モノマーを使用する場合には、接着力や凝集力を高める効果を適切に発揮する観点から、該任意モノマーの使用量をモノマー成分の0.5重量%以上とすることが適当であり、0.8重量%以上とすることが好ましい。また、ここに開示される技術は、任意モノマーを実質的に使用しない態様(例えば、任意モノマーの使用量がモノマー成分の0.3重量%以下、典型的には0.1重量%以下である態様)でも好ましく実施されて、本願の課題を好適に解決することができる。
【0050】
上述した(A)成分、(B)成分、(C)成分および任意モノマーは、典型的には単官能モノマーである。ここに開示される技術におけるモノマー成分は、このような単官能モノマーの他に、粘着剤の凝集力調整等の目的で、必要に応じて多官能モノマーを含有することができる。ここで、本明細書において単官能モノマーとは、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を1つ有するモノマーを指し、これに対して多官能モノマーとは、後述するように、上記重合性の官能基を少なくとも2つ有するモノマーを指す。
【0051】
多官能モノマーは、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を少なくとも2つ有するモノマーである。多官能モノマーの例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2−エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート,1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート等の、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル;アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート等が挙げられる。これらのなかでも、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートを好適に使用することができる。多官能性モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。反応性等の観点から、通常は、2以上のアクリロイル基を有する多官能モノマーが好ましい。
【0052】
多官能モノマーの使用量は、その分子量や官能基数等により異なるが、凝集力と接着力とをバランスよく両立する観点から、上記モノマー成分の3重量%以下とすることが好ましく、2重量%以下がより好ましく、1重量%以下(例えば0.5重量%以下)がさらに好ましい。また、多官能モノマーを使用する場合における使用量の下限値は、0重量%より大きければよく、特に限定されない。通常は、多官能モノマーの使用量をモノマー成分の0.001重量%以上(例えば0.01重量%以上)とすることにより、凝集力を向上させる効果が適切に発揮され得る。
【0053】
特に限定するものではないが、上記モノマー成分に占める(A)成分、(B)成分および(C)成分の合計量の割合は、典型的には50重量%超であり、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上である。ここに開示される技術は、上記合計量の割合が95重量%以上(例えば99重量%以上)である態様で好ましく実施され得る。上記合計量の割合が100重量%であってもよい。ここに開示される技術は、上記モノマー成分に占める上記合計量の割合が99.999重量%以下(例えば99.99重量%以下)である態様で好ましく実施され得る。
【0054】
ここに開示される技術において、上記モノマー成分に含まれる(B)成分の重量Wbと(C)成分の重量Wcとの関係は、0.8≦Wb/Wcを満たすことが好ましい。すなわち、上記モノマー成分は、重量基準で、(C)成分の0.8倍以上の(B)成分を含むことが好ましい。このことによって良好な耐油白濁性を実現することができる。より良好な耐油白濁性を得る観点から、Wb/Wcは、0.9以上であることが好ましく、1以上であることがより好ましい。好ましい一態様において、Wb/Wcは、1より大きくすることができ、1.5以上としてもよい。Wb/Wcの上限は特に制限されない。通常は、Wb/Wcを10以下(例えば5以下)とすることが適当である。好ましい一態様において、Wb/Wcを3以下(例えば3未満、さらには2.5以下)とすることにより、より良好な耐油白濁性が実現され得る。
【0055】
特に限定するものではないが、上記モノマー成分に占める(B)成分および(C)成分の合計量の割合は、例えば10重量%以上とすることができ、耐油白濁性の観点から15重量%以上とすることが好ましい。好ましい一態様において、上記合計量の割合を20重量%以上(好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは45重量%以上、例えば50重量%以上)とすることにより、より良好な耐油白濁性が実現され得る。上記合計量の割合は、例えば、(C)成分の50重量%超がヒドロキシ基含有モノマーである態様において好ましく適用されて、より耐油白濁性に優れた粘着剤を実現し得る。また、耐油白濁性と他の特性とを高レベルで両立する観点から、通常、上記合計量の割合は、70重量%以下とすることが適当であり、65重量%以下とすることが好ましい。
【0056】
ここに開示される技術において、上記モノマー成分に含まれる(A)成分の重量Waと(B)の重量Wbとの関係は特に限定されない。上記モノマー成分は、例えば、Wa/Wbが0.8以上(より好ましくは0.9以上)であることが好ましい。好ましい一態様において、Wa/Wbは、5以下であることが適当であり、3.5以下であることが好ましく、2.5以下であることがより好ましく、2以下(例えば1.5以下)であることがさらに好ましい。上記Wa/Wbの値は、例えば、(C)成分の50重量%超がヒドロキシ基含有モノマーである態様において好ましく適用されて、より耐油白濁性に優れた粘着剤を実現し得る。好ましい他の一態様において、Wa/Wbを1〜9とすることができ、2〜6としてもよい。上記Wa/Wbの値は、例えば、(C)成分の50重量%超がカルボキシ基含有モノマーである態様において好ましく適用されて、耐油白濁性と他の特性とをより高レベルで両立する粘着剤を実現し得る。
【0057】
特に限定するものではないが、上記モノマー成分の組成に対応する共重合体のTgは、粘着剤の接着性や低温特性等の観点から、−20℃以下であることが好ましく、−25℃以下であることがより好ましい。また、粘着剤の耐油白濁性や凝集性の観点から、上記共重合体のTgは、−55℃以上であることが適当であり、−50℃以上であることが好ましく、−45℃以上であることがより好ましい。上記共重合体のTgを−40℃以上(例えば−35℃以上)とすることにより、より良好な耐油白濁性が実現され得る。
【0058】
ここで、モノマー成分の組成に対応する共重合体のTgとは、上記モノマー成分に含まれる各モノマーの単独重合体(ホモポリマー)のTgおよび該モノマーの重量分率に基づいて、フォックス(Fox)の式から計算される値をいう。ただし、本明細書において、Tgの計算は単官能モノマーのみを考慮して行うものとする。したがって、モノマー成分が多官能モノマーを含む場合には、該モノマー成分に含まれる単官能モノマーの合計量を100重量%として、各単官能モノマーのホモポリマーのTgおよび該単官能モノマーの上記合計量に対する重量分率に基づいてTgを算出する。
【0059】
ホモポリマーのTgとしては、以下に示すモノマーについては下記の値を採用するものとする。
2−エチルヘキシルアクリレート −70℃
n−ブチルアクリレート −55℃
イソステアリルアクリレート −18℃
シクロヘキシルアクリレート 15℃
イソボルニルアクリレート 94℃
2−ヒドロキシエチルアクリレート −15℃
4−ヒドロキシブチルアクリレート −40℃
アクリル酸 106℃
【0060】
上記で例示した以外のモノマーについては、ホモポリマーのTgとして、「Polymer Handbook」(第3版、John Wiley & Sons,Inc、1989年)に記載の数値を用いるものとする。本文献に複数種類の値が記載されているモノマーについては、最も高い値が採用される。
【0061】
上記文献にもホモポリマーのTgが記載されていないモノマーについては、以下の測定方法により得られる値を用いるものとする(特開2007−51271号公報参照)。
具体的には、温度計、攪拌機、窒素導入管および還流冷却管を備えた反応器に、モノマー100重量部、アゾビスイソブチロニトリル0.2重量部および重合溶媒として酢酸エチル200重量部を投入し、窒素ガスを流通させながら1時間攪拌する。このようにして重合系内の酸素を除去した後、63℃に昇温し10時間反応させる。次いで、室温まで冷却し、固形分濃度33重量%のホモポリマー溶液を得る。このホモポリマー溶液を剥離ライナー上に流延塗布し、乾燥して厚さ約2mmの試験サンプル(シート状のホモポリマー)を作製する。この試験サンプルを直径7.9mmの円盤状に打ち抜き、パラレルプレートで挟み込み、粘弾性試験機(商品名「ARES」、レオメトリックス社製)を用いて周波数1Hzのせん断歪みを与えながら、温度領域−70〜150℃、5℃/分の昇温速度でせん断モードにより粘弾性を測定し、tanδ(損失正接)のピークトップ温度をホモポリマーのTgとする。
【0062】
特に限定するものではないが、上記モノマー成分は、該モノマー成分の組成に対応する共重合体のTgが、上記モノマー成分から上記(B)成分を除いた組成に対応する共重合体のTgに比べて8℃以上高いことが好ましい。以下、これらの共重合体のTgの差を「ΔTg
1」と表記することがある。このような組成のモノマー成分において、耐油白濁性のよい粘着剤が好適に実現され得る。より良好な耐油白濁性を得る観点から、ΔTg
1は、10℃以上であることが好ましく、15℃以上であることがより好ましく、20℃以上であることがさらに好ましい。また、耐油白濁性と他の特性(例えば接着性や凝集性)とをよりよく両立する観点から、ΔTg
1は、35℃以下であることが好ましく、30℃以下(例えば25℃以下)であることがより好ましい。なお、モノマー成分から上記(B)成分を除いた組成に対応する共重合体のTgは、Foxの式から求められる。具体的には、上記モノマー成分に含まれる単官能モノマーのうち(B)成分以外のモノマーの合計量を100重量%として、上記(B)成分以外の各モノマーのホモポリマーのTgおよび該モノマーの上記合計量に対する重量分率に基づいて、Foxの式から計算される値をいう。
【0063】
特に限定するものではないが、上記モノマー成分は、該モノマー成分の組成に対応する共重合体のTgが、上記モノマー成分から上記(B)成分および上記(C)成分を除いた組成に対応する共重合体のTgに比べて10℃以上高いことが好ましい。以下、これらの共重合体のTgの差を「ΔTg
2」と表記することがある。このような組成のモノマー成分において、耐油白濁性のよい粘着剤が好適に実現され得る。より良好な耐油白濁性を得る観点から、ΔTg
2は、15℃以上であることがより好ましく、20℃以上であることがさらに好ましい。また、耐油白濁性と他の特性(例えば接着性や凝集性)とをよりよく両立する観点から、ΔTg
2は、40℃以下であることが好ましく、35℃以下であることがより好ましい。なお、モノマー成分から上記(B)成分および上記(C)を除いた組成に対応する共重合体のTgは、Foxの式から求められる。具体的には、上記モノマー成分に含まれる単官能モノマーのうち(B)成分および(C)成分以外のモノマーの合計量を100重量%として、上記(B)成分および(C)成分以外の各モノマーのホモポリマーのTgおよび該モノマーの上記合計量に対する重量分率に基づいて、Foxの式から計算される値をいう。
【0064】
<粘着剤組成物>
ここに開示される粘着剤組成物は、上述のような組成のモノマー成分を、重合物、未重合物(すなわち、重合性官能基が未反応である形態)、あるいはこれらの混合物の形態で含み得る。上記粘着剤組成物は、有機溶媒中に粘着剤(粘着成分)を含む形態の組成物(溶剤型粘着剤組成物)、粘着剤が水性溶媒に分散した形態の組成物(水分散型粘着剤組成物)、紫外線や放射線等の活性エネルギー線により硬化して粘着剤を形成するように調製された組成物(活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物)、加熱溶融状態で塗工され、室温付近まで冷えると粘着剤を形成するホットメルト型粘着剤組成物等の、種々の形態であり得る。
【0065】
上記粘着剤組成物は、典型的には、該組成物のモノマー成分のうち少なくとも一部(モノマーの種類の一部であってもよく、分量の一部であってもよい。)を重合物の形態で含む。上記重合物を形成する際の重合方法は特に限定されず、従来公知の各種重合方法を適宜採用することができる。例えば、溶液重合、エマルション重合、塊状重合等の熱重合(典型的には、熱重合開始剤の存在下で行われる。);紫外線等の光を照射して行う光重合(典型的には、光重合開始剤の存在下で行われる。);β線、γ線等の放射線を照射して行う放射線重合;等を適宜採用することができる。なかでも光重合が好ましい。これらの重合方法において、重合の態様は特に限定されず、従来公知のモノマー供給方法、重合条件(温度、時間、圧力、光照射量、放射線照射量等)、モノマー以外の使用材料(重合開始剤、界面活性剤等)等を適宜選択して行うことができる。
【0066】
重合にあたっては、重合方法や重合態様等に応じて、公知または慣用の光重合開始剤や熱重合開始剤を使用し得る。このような重合開始剤は、1種を単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0067】
光重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えばケタール系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、α−ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤等を用いることができる。
【0068】
ケタール系光重合開始剤の具体例には、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(例えば、BASF社製の商品名「イルガキュア651」)等が含まれる。
アセトフェノン系光重合開始剤の具体例には、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニル−ケトン(例えば、BASF社製の商品名「イルガキュア184」)、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(例えば、BASF社製の商品名「イルガキュア2959」)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(例えば、BASF社製の商品名「ダロキュア1173」)、メトキシアセトフェノン等が含まれる。
ベンゾインエーテル系光重合開始剤の具体例には、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテルおよびアニソールメチルエーテル等の置換ベンゾインエーテルが含まれる。
アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤の具体例には、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(例えば、BASF社製の商品名「イルガキュア819」)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,4−ジ−n−ブトキシフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(例えば、BASF社製の商品名「ルシリンTPO」)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド等が含まれる。
α−ケトール系光重合開始剤の具体例には、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オン等が含まれる。芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤の具体例には、2−ナフタレンスルホニルクロライド等が含まれる。光活性オキシム系光重合開始剤の具体例には、1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシム等が含まれる。ベンゾイン系光重合開始剤の具体例にはベンゾイン等が含まれる。ベンジル系光重合開始剤の具体例にはベンジル等が含まれる。
ベンゾフェノン系光重合開始剤の具体例には、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が含まれる。
チオキサントン系光重合開始剤の具体例には、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントン等が含まれる。
【0069】
熱重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えばアゾ系重合開始剤、過酸化物系開始剤、過酸化物と還元剤との組合せによるレドックス系開始剤、置換エタン系開始剤等を使用することができる。より具体的には、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート等のアゾ系開始剤;例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素等の過酸化物系開始剤;例えばフェニル置換エタン等の置換エタン系開始剤;例えば過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの組合せ、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムとの組合せ等のレドックス系開始剤;等が例示されるが、これらに限定されない。なお、熱重合は、例えば20〜100℃(典型的には40〜80℃)程度の温度で好ましく実施され得る。
【0070】
このような熱重合開始剤または光重合開始剤の使用量は、重合方法や重合態様等に応じた通常の使用量とすることができ、特に限定されない。例えば、重合対象のモノマー100重量部に対して重合開始剤0.001〜5重量部(典型的には0.01〜2重量部、例えば0.01〜1重量部)を用いることができる。
【0071】
(モノマー成分の重合物と未重合物とを含む粘着剤組成物)
好ましい一態様に係る粘着剤組成物は、該組成物のモノマー成分(原料モノマー)の少なくとも一部を含むモノマー混合物の重合反応物を含む。典型的には、上記モノマー成分の一部を重合物の形態で含み、残部を未重合物(未反応のモノマー)の形態で含む。上記モノマー混合物の重合反応物は、該モノマー混合物を少なくとも部分的に重合させることにより調製することができる。
上記重合反応物は、好ましくは上記モノマー混合物の部分重合物である。このような部分重合物は、上記モノマー混合物に由来する重合物と未反応のモノマーとの混合物であって、典型的にはシロップ状(粘性のある液状)を呈する。以下、かかる性状の部分重合物を「モノマーシロップ」または単に「シロップ」ということがある。
【0072】
上記重合反応物を得る際の重合方法は特に制限されず、上述のような各種重合方法を適宜選択して用いることができる。効率や簡便性の観点から、光重合法を好ましく採用し得る。光重合によると、光の照射量(光量)等の重合条件によって、上記モノマー混合物の重合転化率を容易に制御することができる。
【0073】
上記部分重合物におけるモノマー混合物の重合転化率(モノマーコンバーション)は、特に限定されない。上記重合転化率は、例えば70重量%以下とすることができ、60重量%以下とすることが好ましい。上記部分重合物を含む粘着剤組成物の調製容易性や塗工性等の観点から、通常、上記重合転化率は、50重量%以下が適当であり、40重量%以下(例えば35重量%以下)が好ましい。重合転化率の下限は特に制限されないが、典型的には1重量%以上であり、通常は5重量%以上とすることが適当である。
【0074】
上記モノマー混合物の部分重合物を含む粘着剤組成物は、例えば、原料モノマーの全部を含むモノマー混合物を適当な重合方法(例えば光重合法)により部分重合させることにより容易に得ることができる。上記部分重合物を含む粘着剤組成物には、必要に応じて用いられる他の成分(例えば、光重合開始剤、多官能モノマー、架橋剤、後述するアクリル系オリゴマー等)が配合され得る。そのような他の成分を配合する方法は特に限定されず、例えば上記モノマー混合物にあらかじめ含有させてもよく、上記部分重合物に添加してもよい。
【0075】
また、ここに開示される粘着剤組成物は、モノマー成分(原料モノマー)のうち一部の種類のモノマーを含むモノマー混合物の完全重合物が、残りの種類のモノマーまたはその部分重合物に溶解した形態であってもよい。このような形態の粘着剤組成物も、モノマー成分の重合物と未重合物とを含む粘着剤組成物の例に含まれる。なお、本明細書において「完全重合物」とは、重合転化率が95重量%超であることをいう。
【0076】
このようにモノマー成分の重合物と未重合物とを含む粘着剤組成物から粘着剤を形成する際の硬化方法(重合方法)としては、光重合法を好ましく採用することができる。光重合法によって調製された重合反応物を含む粘着剤組成物では、その硬化方法として光重合法を採用することが特に好適である。光重合法により得られた重合反応物は、すでに光重合開始剤を含むので、この重合反応物を含む粘着剤組成物をさらに硬化させて粘着剤を形成する際、新たな光重合開始剤を追加しなくても光硬化し得る。あるいは、光重合法により調製された重合反応物に、必要に応じて光重合開始剤を追加した組成の粘着剤組成物であってもよい。追加する光重合開始剤は、重合反応物の調製に使用した光重合開始剤と同じでもよく、異なってもよい。光重合以外の方法で調製された粘着剤組成物は、光重合開始剤を添加することにより光硬化性とすることができる。光硬化性の粘着剤組成物は、厚手の粘着剤層であっても容易に形成し得るという利点を有する。好ましい一態様において、粘着剤組成物から粘着剤を形成する際の光重合は、紫外線照射により行うことができる。紫外線照射には、公知の高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプなどを用いることができる。
【0077】
(モノマー成分を完全重合物の形態で含む粘着剤組成物)
好ましい他の一態様に係る粘着剤組成物は、該剤組成物のモノマー成分を完全重合物の形態で含む。このような粘着剤組成物は、例えば、モノマー成分の完全重合物である(メタ)アクリル系ポリマーを有機溶媒中に含む溶剤型粘着剤組成物、上記(メタ)アクリル系ポリマーが水性溶媒に分散した水分散型粘着剤組成物、等の形態であり得る。
【0078】
(架橋剤)
ここに開示される粘着剤組成物は、架橋剤を含有することができる。架橋剤としては、粘着剤の分野において公知ないし慣用の架橋剤を使用することができる。例えば、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、シリコーン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、シラン系架橋剤、アルキルエーテル化メラミン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等を挙げることができる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0079】
架橋剤の含有量(2種以上の架橋剤を含む場合にはそれらの合計量)は特に限定されない。接着力や凝集力等の粘着特性をバランスよく発揮する粘着剤を実現する観点から、架橋剤の含有量は、粘着剤組成物に含まれるモノマー成分100重量部に対して、通常は5重量部以下とすることが適当であり、0.001〜5重量部とすることが好ましく、0.001〜4重量部とすることがより好ましく、0.001〜3重量部とすることがさらに好ましい。あるいは、上述のような架橋剤を含まない粘着剤組成物であってもよい。
【0080】
((メタ)アクリル系オリゴマー)
ここに開示される粘着剤組成物には、接着力向上の観点から、(メタ)アクリル系オリゴマーを含有させることができる。(メタ)アクリル系オリゴマーとしては、上記モノマー成分の組成に対応する共重合体のTg(典型的には、粘着剤組成物から形成される粘着剤に含まれる(メタ)アクリル系ポリマーのTgに概ね対応する。)よりもTgが高い重合体を用いることが好ましい。(メタ)アクリル系オリゴマーを含有させることにより、粘着剤の接着力を向上させ得る。
【0081】
上記(メタ)アクリル系オリゴマーは、Tgが約0℃以上300℃以下、好ましくは約20℃以上300℃以下、さらに好ましくは約40℃以上300℃以下であることが望ましい。Tgが上記範囲内であることにより、接着力を好適に向上することができる。なお(メタ)アクリル系オリゴマーのTgは、上記モノマー成分の組成に対応する共重合体のTgと同じく、Foxの式に基づいて計算される値である。
【0082】
(メタ)アクリル系オリゴマーの重量平均分子量(Mw)は、典型的には1000以上30000未満、好ましくは1500以上20000未満、さらに好ましくは2000以上10000未満であり得る。Mwが上記範囲内にあることで、良好な接着力や保持特性が得られるため好ましい。(メタ)アクリル系オリゴマーのMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定し、標準ポリスチレン換算の値として求めることができる。具体的には、東ソー株式会社製のHPLC8020に、カラムとしてTSKgelGMH−H(20)×2本を用いて、テトラヒドロフラン溶媒で流速約0.5ml/分の条件にて測定される。
【0083】
(メタ)アクリル系オリゴマーを構成するモノマーとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレートのようなアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル酸と脂環族アルコールとのエステル;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートのようなアリール(メタ)アクリレート;テルペン化合物誘導体アルコールから得られる(メタ)アクリレート;等を挙げることができる。このような(メタ)アクリレートは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0084】
(メタ)アクリル系オリゴマーとしては、イソブチル(メタ)アクリレートやt−ブチル(メタ)アクリレートのようなアルキル基が分岐構造を有するアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレートやイソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル酸と脂環式アルコールとのエステル;フェニル(メタ)アクリレートやベンジル(メタ)アクリレートのようなアリール(メタ)アクリレートなどの環状構造を有する(メタ)アクリレートに代表される、比較的嵩高い構造を有するアクリル系モノマーをモノマー単位として含んでいることが、粘着剤層の接着性をさらに向上させることができる観点から好ましい。また、(メタ)アクリル系オリゴマーの合成の際や粘着剤層の作製の際に紫外線を採用する場合には、重合阻害を起こしにくいという点で、飽和結合を有するものが好ましく、アルキル基が分岐構造を有するアルキル(メタ)アクリレート、または脂環式アルコールとのエステルを、(メタ)アクリル系オリゴマーを構成するモノマーとして好適に用いることができる。
【0085】
このような点から、好適な(メタ)アクリル系オリゴマーとしては、例えば、ジシクロペンタニルメタクリレート(DCPMA)、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)、イソボルニルメタクリレート(IBXMA)、イソボルニルアクリレート(IBXA)、ジシクロペンタニルアクリレート(DCPA)、1−アダマンチルメタクリレート(ADMA)、1−アダマンチルアクリレート(ADA)の各単独重合体のほか、CHMAとイソブチルメタクリレート(IBMA)との共重合体、CHMAとIBXMAとの共重合体、CHMAとアクリロイルモルホリン(ACMO)との共重合体、CHMAとジエチルアクリルアミド(DEAA)との共重合体、ADAとメチルメタクリレート(MMA)の共重合体、DCPMAとIBXMAとの共重合体、DCPMAとMMAの共重合体、等を挙げることができる。
【0086】
ここに開示される粘着剤組成物に(メタ)アクリル系オリゴマーを含有させる場合、その含有量は特に限定されないが、耐油白濁性の観点からは、該粘着剤組成物に含まれるモノマー成分100重量部に対して20重量部以下とすることが好ましく、15重量以下とすることがより好ましく、10重量部以下とすることがさらに好ましい。(メタ)アクリル系オリゴマーの含有量を少なくすることは、粘着剤の皮脂膨潤度を低く抑える観点からも好ましい。ここに開示される技術は、(メタ)アクリル系オリゴマーを使用しない態様でも好ましく実施され得る。
【0087】
その他、ここに開示される粘着剤組成物には、粘着剤の分野において公知の各種添加剤を含有させることができる。例えば、着色剤、顔料などの粉体、染料、界面活性剤、可塑剤、粘着付与樹脂、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、無機または有機の充填剤、金属粉、粒子状物、箔状物などを、用途に応じて適宜添加することができる。
【0088】
<粘着剤層および粘着シート>
ここに開示される粘着剤層は、上記粘着剤組成物から得ることができる。粘着剤層の厚さは特に制限されず、例えば1〜400μm程度であり得る。通常、上記粘着剤層の厚さは、1〜200μmが好ましく、2〜150μmがより好ましく、2〜100μmがさらに好ましく、5〜75μmが特に好ましい。
【0089】
特に限定するものではないが、ここに開示される粘着剤層は、該粘着剤層の厚さが50μmの場合に後述する実施例に記載の方法により測定される油接触後のヘイズ値が7%以下となる耐油白濁性を有することが好ましい。上記油接触後のヘイズ値が0〜5%である粘着剤層がより好ましく、0〜3%であることがさらに好ましく、0〜2%(例えば0〜1.5%)であることが特に好ましい。
【0090】
特に限定するものではないが、ここに開示される粘着剤層は、該粘着剤層の厚さが50μmの場合に後述する実施例に記載の方法により測定される油接触前のヘイズ値(初期ヘイズ値)が2%以下となる初期透明性を有することが好ましい。光学用途に利用される粘着剤層では、上記初期ヘイズ値が2%以下であることが特に有意義である。粘着剤層の初期ヘイズ値は、0〜1.5%であることが好ましく、0〜1%であることがより好ましい。
【0091】
特に限定するものではないが、ここに開示される粘着剤層は、上記油接触後のヘイズ値から上記初期ヘイズ値を引いた値が7%以下であることが好ましく、0〜5%であることがより好ましく、0〜3%であることがさらに好ましく、0〜1.5%(例えば0〜1%)であることが特に好ましい。
【0092】
特に限定するものではないが、ここに開示される粘着剤層は、以下の方法で測定される皮脂膨潤度が1.4以下であることが好ましく、1.3以下であることがより好ましく、1.2未満であることがさらに好ましく、1.1未満であることが特に好ましい。皮脂膨潤度は、低ければ低いほど好ましいものであり、1.0であることが理想的である。
【0093】
(皮脂膨潤度測定方法)
3cm×3cmの面積であって厚さが100μmの粘着剤層の一方の表面をポリエステルフィルムに貼り付け、他方の表面をアルカリガラスの片面に貼り付けて試験片を作製する。トリグリセリド(商品名:Lexol GT−865、INOLEX製)41重量部、イソステアリン酸(和光純薬工業(株)製)16.4重量部、スクアレン(和光純薬工業(株)製)12重量部からなる皮脂液に上記試験片を、50℃、95%RHの条件下で120時間浸漬させ、膨潤後の粘着剤層の面積(cm
2)を測定する。その結果から以下の式により皮脂膨潤度を算出する。
【0095】
ここに開示される粘着剤層のゲル分率は、特に限定されないが、通常は99.5重量%以下であることが好ましく、20〜99.5重量%であることがより好ましく、50〜99.5重量%であることがさらに好ましい。上記粘着剤組成物が架橋剤を含有する場合には、架橋剤の添加量を調整することとともに、架橋処理温度や架橋処理時間の影響を考慮して、ゲル分率を制御することができる。かかるゲル分率を有する粘着剤層は、耐油白濁性に優れ、かつ皮脂膨潤性が低いものとなり得る。
【0096】
ここに開示される粘着シート(テープ状等の長尺状の形態であり得る。)は、支持体の少なくとも片面に上記粘着剤層を有する。このような粘着シートにおいて、上記粘着剤層に接する支持体表面は、剥離性の表面(該表面から上記粘着剤層を剥離可能な表面)であってもよく、非剥離性の表面であってもよい。
【0097】
上記粘着シートは、例えば、
図1に示す断面構造を有する両面粘着シートの形態であり得る。この両面粘着シート1は、基材(支持体)15と、その基材15の両面にそれぞれ支持された第一粘着剤層11および第二粘着剤層12とを備える。より詳しくは、基材15の第一面15Aおよび第二面15B(いずれも非剥離性)に、第一粘着剤層11および第二粘着剤層12がそれぞれ設けられている。使用前(被着体への貼り付け前)の両面粘着シート1は、
図1に示すように、前面21Aおよび背面21Bがいずれも剥離面(剥離性の表面)である剥離ライナー(支持体)21と重ね合わされて渦巻き状に巻回された形態であり得る。かかる形態の両面粘着シート1は、第二粘着剤層12の表面(第二粘着面12A)が剥離ライナー21の前面21Aにより、第一粘着剤層11の表面(第一粘着面11A)が剥離ライナー21の背面21Bにより、それぞれ保護されている。あるいは、第一粘着面11Aおよび第二粘着面12Aが2枚の独立した剥離ライナー(支持体)によりそれぞれ保護された形態であってもよい。
【0098】
ここに開示される技術は、
図1に示すような基材付き両面粘着シートに好ましく適用されるほか、
図2に示すような基材レスの(すなわち、基材を有しない)両面粘着シート2にも適用され得る。使用前の両面粘着シート2は、例えば
図2に示すように、基材レスの粘着剤層11の第一粘着面11Aおよび第二粘着面11Bが、少なくとも該粘着剤層側の表面(前面)が剥離面となっている剥離ライナー(支持体)21,22によってそれぞれ保護された形態であり得る。あるいは、剥離ライナー22を省略し、両面が剥離面となっている剥離ライナー21を用い、これと粘着剤層11とを重ね合わせて渦巻き状に巻回することにより第二粘着面11Bが剥離ライナー21の背面に当接して保護された形態であってもよい。
【0099】
ここに開示される技術は、また、
図3に示すように、基材(支持体)15と該基材の第一面(非剥離面)15Aに支持された粘着剤層11とを備える片面粘着タイプの基材付き粘着シート3にも適用され得る。使用前の粘着シート3は、例えば
図3に示すように、その粘着剤層11の表面(粘着面)11Aが、少なくとも該粘着剤層側の表面(前面)が剥離面となっている剥離ライナー(支持体)21で保護された形態であり得る。あるいは、剥離ライナー21を省略し、第二面15Bが剥離面となっている基材15を用い、基材付き粘着シート3を巻回することにより第一粘着面11Aが基材15の第二面15Bに当接して保護された形態であってもよい。
【0100】
片面粘着タイプまたは両面粘着タイプの基材付き粘着シートにおいて、上記基材としては、プラスチックフィルム、紙、織布、不織布、ゴムシート、発泡体シート、金属箔、ガラス、これらの複合体等を用いることができる。基材のうち粘着剤層が設けられる面には、下塗り剤の塗布、コロナ放電処理、プラズマ処理等の表面処理が施されていてもよい。なお、この明細書においてプラスチックフィルムとは、典型的には非多孔質のシートであって、例えば不織布とは区別される(すなわち、不織布を含まない)概念である。上記プラスチックフィルムは、無延伸フィルム、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムのいずれであってもよい。
【0101】
ここに開示される粘着剤層の耐油白濁性を活かす観点から、上記基材としては、透明性を有する各種のプラスチックフィルムを好ましく採用することができる。かかる透明プラスチックフィルムの材料として、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、アセテート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、これらの混合物等が挙げられる。なかでも好ましい材料として、ポリエステル系樹脂、セルロース樹脂、ポリイミド系樹脂およびポリエーテルスルホン系樹脂が挙げられる。
【0102】
基材の厚さは特に限定されず、目的に応じて適宜選択できるが、一般的には10μm〜500μmであり、好ましくは10μm〜300μmである。好ましい一態様において、厚さ15μm〜200μmの基材(例えば、上記透明プラスチックフィルム)を好ましく採用することができる。
【0103】
剥離ライナーとしては、慣用の剥離紙等を使用することができ、特に限定されない。例えば、プラスチックフィルムや紙等の基材の表面に剥離処理層を有する剥離ライナーや、フッ素系ポリマー(ポリテトラフルオロエチレン等)やポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)の低接着性材料からなる剥離ライナー等を用いることができる。上記剥離処理層は、上記基材を剥離処理剤により表面処理して形成されたものであり得る。剥離処理剤の例としては、シリコーン系剥離処理剤、長鎖アルキル系剥離処理剤、フッ素系剥離処理剤、硫化モリブデン(IV)等が挙げられる。
【0104】
ここに開示される粘着剤層は、例えば、ここに開示されるいずれかの粘着剤組成物を支持体に塗布して乾燥または硬化させることにより粘着シートとして形成することができる。粘着剤組成物の塗布方法としては、従来公知の各種の方法を使用可能である。具体的には、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーターなどによる押出しコート法などの方法が挙げられる。
【0105】
粘着剤組成物の乾燥は加熱下で行うことができる。乾燥温度は、40℃〜200℃が好ましく、50℃〜180℃がより好ましく、70℃〜170℃がさらに好ましい。加熱温度を上記の範囲とすることによって、優れた粘着特性を有する粘着剤層を得ることができる。乾燥時間は、適宜、適切な時間が採用され得る。上記乾燥時間は、5秒〜20分が好ましく、5秒〜10分がより好ましく、10秒〜5分がさらに好ましい。
【0106】
ここに開示される粘着剤層または粘着シートは、油に接しても透明性が損なわれ難いことから、光学用途に好適である。例えば、支持体に光学部材を用いた粘着型光学部材として有用である。上記光学部材として光学フィルムを用いる場合には、上記粘着型光学部材は、粘着剤層付き光学フィルムとして用いられる。上記光学フィルムとしては、偏光板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、ハードコート(HC)フィルム、反射防止フィルム、衝撃吸収フィルム、防汚フィルム、フォトクロミックフィルム、調光フィルム、波長選択吸収フィルム、波長変換フィルム、さらにはこれらが積層されているもの等を用いることができる。ここに開示される粘着剤層または粘着シートは、眼科分野の用途にも好適である。また、本発明の粘着剤層または粘着シートは、上記のような光学用途や眼科用途に限定されず、例えば一般的な防汚フィルム、断熱フィルム、衝撃吸収フィルム等を支持体とする粘着シートの形態で、油と接触し得る種々の用途に適用することができる。
【0107】
この明細書により開示される事項には以下のものが含まれる。
(1) (メタ)アクリル系ポリマーを含む粘着剤を形成するための粘着剤組成物であって、
上記(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分として、
(A)炭素数2〜18のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレート、
(B)脂環式モノマー、および
(C)ヒドロキシ基およびカルボキシ基の少なくともいずれかを有するモノマー
を含み、
上記(A)における上記アルキル基の平均炭素数が8以下であり、
上記モノマー成分は、上記(C)を3重量%以上含み、かつ
上記モノマー成分に含まれる上記(B)の重量Wbと上記(C)の重量Wcとの関係が0.8≦Wb/Wcを満たす、粘着剤組成物。
(2) 上記(A)は、炭素数5以下のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートを含む、上記(1)に記載の粘着剤組成物。
(3) 上記(A)における上記アルキル基の平均炭素数が8未満である、上記(1)または(2)に記載の粘着剤組成物。
(4) 上記モノマー成分は、上記(B)と上記(C)とを合計で15〜85重量%含む、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の粘着剤組成物。
(5) 上記Wbと上記Wcとの関係が1≦Wb/Wc≦5を満たす、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の粘着剤組成物。
(6) 上記(C)は、ヒドロキシ基を含有するモノマーを含む、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の粘着剤組成物。
(7) 上記モノマー成分の組成に対応する共重合体のガラス転移温度が−45℃より高く−20℃以下である、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の粘着剤組成物。
(8) 上記モノマー成分の組成に対応する共重合体のガラス転移温度が、上記モノマー成分から上記(B)を除いた組成に対応する共重合体のガラス転移温度に比べて8℃以上高い、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【0108】
(9) 上記モノマー成分は多官能モノマーを含む、上記(1)〜(8)のいずれかに記載の粘着剤組成物。
(10) 上記モノマー成分の重合物を含む、上記(1)〜(9)のいずれかに記載の粘着剤組成物。
(11) 上記モノマー成分の少なくとも一部を含むモノマー混合物の部分重合物を含む、上記(1)〜(10)のいずれかに記載の粘着剤組成物。
(12) 上記部分重合物におけるモノマー混合物の重合転化率は5重量%以上70重量%以下である、上記(11)に記載の粘着剤組成物。
(13) さらに光重合開始剤を含む、上記(1)〜(12)のいずれかに記載の粘着剤組成物。
(14) 上記(1)〜(13)のいずれかに記載の粘着剤組成物から形成された、粘着剤層。
【0109】
(15) (メタ)アクリル系ポリマーを含む粘着剤層であって、
上記(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分は、
(A)炭素数2〜18のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレート、
(B)脂環式モノマー、および
(C)ヒドロキシ基およびカルボキシ基の少なくともいずれかを有するモノマー
を含み、
上記(A)における上記アルキル基の平均炭素数が8以下であり、
上記モノマー成分は、上記(C)を3重量%以上含み、かつ
上記モノマー成分に含まれる上記(B)の重量Wbと上記(C)の重量Wcとの関係が0.8≦Wb/Wcを満たす、粘着剤層。
(16) 上記(A)は、炭素数5以下のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートを含む、上記(15)に記載の粘着剤層。
(17) 上記(A)における上記アルキル基の平均炭素数が8未満である、上記(15)または(16)に記載の粘着剤層。
(18) 上記モノマー成分は、上記(B)と上記(C)とを合計で15〜85重量%含む、上記(15)〜(17)のいずれかに記載の粘着剤層。
(19) 上記Wbと上記Wcとの関係が1≦Wb/Wc≦5を満たす、上記(15)〜(18)のいずれかに記載の粘着剤層。
(20) 上記(C)は、ヒドロキシ基を含有するモノマーを含む、上記(15)〜(19)のいずれかに記載の粘着剤層。
(21) 上記モノマー成分の組成に対応する共重合体のガラス転移温度が−45℃より高く−20℃以下である、上記(15)〜(20)のいずれかに記載の粘着剤層。
(22) 上記モノマー成分の組成に対応する共重合体のガラス転移温度が、上記モノマー成分から上記(B)を除いた組成に対応する共重合体のガラス転移温度に比べて8℃以上高い、上記(15)〜(21)のいずれかに記載の粘着剤層。
(23) 上記モノマー成分は多官能モノマーを含む、上記(15)〜(22)のいずれかに記載の粘着剤層。
(24) 上記粘着剤層の厚さが1μm以上(好ましくは2μm以上、より好ましくは5μm以上)である、上記(14)〜(23)のいずれかに記載の粘着剤層。
(25) 上記粘着剤層の厚さが400μm以下(好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、さらに好ましくは100μm以下、例えば75μm以下)である、上記(14)〜(24)のいずれかに記載の粘着剤層。
(26) 支持体の少なくとも片面に上記(14)〜(25)のいずれかに記載の粘着剤層を有する、粘着シート。
【実施例】
【0110】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる具体例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0111】
(略号一覧)
以下の説明において、化合物の名称を以下の略号で表すことがある。
BA:n−ブチルアクリレート
2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
ISTA:イソステアリルアクリレート
CHA:シクロヘキシルアクリレート
IBXA:イソボルニルアクリレート
2HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート
4HBA:4−ヒドロキシブチルアクリレート
AA:アクリル酸
DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
【0112】
<実験例1>
(粘着シートの作製)
(サンプル1)
表1に示す種類と量の(A)成分、(B)成分および(C)成分と、光重合開始剤としての2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(BASF社製、商品名「イルガキュア651」)0.05重量部および1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニル−ケトン(BASF社製、商品名「イルガキュア184」)0.05重量部とを混合し、窒素雰囲気下で紫外線を照射して部分重合物(モノマーシロップ)を作製した。得られたモノマーシロップにDPHA(商品名「KAYARAD DPHA」、日本化薬(株)製)0.1重量部を添加し、均一に混合して粘着剤組成物を調製した。
【0113】
片面がシリコーン系剥離処理剤で剥離処理されている厚さ38μmのポリエステルフィルム(商品名:ダイアホイルMRF、三菱樹脂(株)製)の剥離処理面に、上記で調製した粘着剤組成物を、最終的な厚さが50μmになるように塗布して塗布層を形成した。次いで、上記塗布層の表面に、片面がシリコーンで剥離処理されている厚み38μmのポリエステルフィルム(商品名:ダイアホイルMRE、三菱樹脂(株)製)を、当該フィルムの剥離処理面が上記塗布層側になるようにして被せた。これにより上記塗布層を酸素から遮断した。このようにして得られた塗布層を有するシートにケミカルライトランプ((株)東芝製)を用いて照度5mW/cm
2の紫外線を360秒間照射することにより、上記塗布層を硬化させて粘着剤層を形成し、粘着シートを得た。この粘着シートにおいて、粘着剤層の両面に被覆されたポリエステルフィルムは、剥離ライナーとして機能する。
なお、上記照度の値は、ピーク感度波長約350nmの工業用UVチェッカー(トプコン社製、商品名「UVR−T1」、受光部型式UD−T36)による測定値である。
【0114】
(サンプル2〜4)
(A)成分、(B)成分および(C)成分の種類と量を表1に示すように変更した他はサンプル1と同様の操作により、サンプル2〜4に係る粘着シートを作製した。
【0115】
(性能評価)
サンプル1〜4に係る粘着剤層(厚さ50μm)の一方の表面から剥離ライナーを剥離し、その面を、ヘイズ0.1%のアルカリガラスの片面に貼り付けた。次いで、粘着剤層の他方の面からも剥離ライナーを剥がした後、アルカリガラスに貼り付けられた粘着剤層を70℃環境下で花王(株)製の商品名「ニベアクリーム」(成分:ラウリルアルコール、ジブチルヒドロキシトルエン、ジブチルヒドロキシアニソール、トコフェノール、安息香酸塩、香料)中に完全浸漬させた。これを70℃で60時間保管した後、乾いた布で粘着剤層からニベアクリームを拭き取った。そして、ヘイズメータ(MR−100、村上色彩技術研究所製)を用いて、油接触後における粘着剤層のヘイズを測定した。測定にあたっては、粘着剤層の貼り付けられたアルカリガラスを、該粘着剤層が光源側になるように配置した。アルカリガラスのヘイズ値が0.1%であるため、測定値から0.1%を引いた値を油接触後における粘着剤層のヘイズ値(耐油白濁性の評価値)とした。
【0116】
得られた結果を表1に示す。表1には、各サンプルについて、(A)成分におけるアルキル基の平均炭素数、(B)成分と(C)成分との重量比(Wb/Wc)、モノマー成分の組成に対応する共重合体のTg(℃)、上記共重合体のTgと(B)成分以外の共重合体のTgとの差(ΔTg
1(℃))、上記共重合体のTgと(B)成分および(C)成分以外の共重合体のTgとの差(ΔTg
2(℃))を併せて示している。
【0117】
【表1】
【0118】
表1から明らかなように、Wb/Wcが0.8に満たないサンプル3および(A)成分のアルキル基の平均炭素数が8より大きいサンプル4の粘着剤層に比べて、サンプル1,2の粘着剤層によると耐油白濁性(油接触後のヘイズ値)が著しく改善された。
【0119】
なお、上記でアルカリガラスに貼り付けられた粘着剤層について、該粘着剤層を油に接触させる前のヘイズを測定し、測定値からアルカリガラスのヘイズ値0.1%を引くことにより油接触前における粘着剤層のヘイズ値(初期透明性の評価値)を求めたところ、サンプル1〜4のいずれについても0.4%〜0.5%の範囲であった。
【0120】
<実験例2>
(A)成分、(B)成分および(C)成分の種類と量を表2に示すように変更した他はサンプル1と同様の操作により、サンプル5〜11に係る粘着シートを作製した。得られた粘着シートの耐油白濁性を実験例1と同様にして評価した。
【0121】
得られた結果を、実験例1におけるサンプル1と同等以上のレベルをE(耐油白濁性に優れる)、サンプル3と同等以下のレベルをP(耐油白濁性に乏しい)、サンプル1には及ばないがサンプル3に比べて明らかな改善が認められるレベルをG(耐油白濁性良好)として表2に示す。表1に示す結果との対比を容易とするため、表2にはサンプル1,2の評価結果を再度掲載している。また、表2には、各サンプルのモノマー成分について、アルキル基の平均炭素数およびWb/Wcを併せて示している。
【0122】
【表2】
【0123】
表2に示されるように、Wb/Wcが0.8に満たないサンプル10および(A)成分のアルキル基の平均炭素数が8より大きいサンプル11の粘着剤層に比べて、サンプル5〜9の粘着剤層では耐油白濁性(油接触後のヘイズ値)に明らかな改善がみられた。特に、サンプル5の粘着剤層は、サンプル1,2に匹敵する優れた耐油白濁性を示した。
【0124】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。