特許第6691925号(P6691925)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許66919255−フルオロ−1H−ピラゾール−4−カルボニルフルオリドの調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6691925
(24)【登録日】2020年4月15日
(45)【発行日】2020年5月13日
(54)【発明の名称】5−フルオロ−1H−ピラゾール−4−カルボニルフルオリドの調製方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 231/16 20060101AFI20200427BHJP
【FI】
   C07D231/16
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-556167(P2017-556167)
(86)(22)【出願日】2016年4月28日
(65)【公表番号】特表2018-514538(P2018-514538A)
(43)【公表日】2018年6月7日
(86)【国際出願番号】EP2016059462
(87)【国際公開番号】WO2016174121
(87)【国際公開日】20161103
【審査請求日】2018年11月2日
(31)【優先権主張番号】15290112.0
(32)【優先日】2015年4月29日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507203353
【氏名又は名称】バイエル・クロップサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【弁理士】
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】パツエノク,セルギー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス,ハンス・マルティン
(72)【発明者】
【氏名】フォルツ,フランク
【審査官】 伊藤 佑一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−526768(JP,A)
【文献】 特表2014−501713(JP,A)
【文献】 特表2013−543859(JP,A)
【文献】 特表2009−507867(JP,A)
【文献】 特表2013−525324(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)の5−フルオロ−1H−ピラゾール−4−カルボニルフルオリド:
【化1】

[式中、
はC−C−アルキルであり;
は、H、CF、CFCl、CClF、C又はC
である。]の調製方法であって、
下記式(II)の5−クロロ−1H−ピラゾール−4−カルボニルクロライド:
【化2】

[式中、R及びRは上記で定義の通りである。]を、相間移動触媒の存在下、トルエン、エチルベンゼン、o−、m−及びp−キシレン(個別若しくは混合物として)、メシチレン、クロロベンゼン及びジクロロベンゼンから選択される溶媒の存在下にフッ素化剤と反応させることを特徴とする方法。
【請求項2】
が好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル又はペンチルである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
がメチル又はエチルである請求項2に記載の方法。
【請求項4】
がメチルである請求項3に記載の方法。
【請求項5】
Hである請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記フッ素化剤が下記式(IV)のものである請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【化3】

[式中、Mはアルカリ金属カチオン又はアンモニウムカチオンである。]
【請求項7】
前記フッ素化剤がフッ化カリウムである請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記相間移動触媒が塩化トリブチルメチルアンモニウム(Aliquat175)、塩化メチルトリオクチルアンモニウム、塩化トリカプリルメチルアンモニウム(Aliquat336)、塩化ヘキサブチルグアニジニウム、塩化ヘキサエチルグアニジニウム、塩化ヘキサメチルグアニジニウム、臭化テトラフェニルホスホニウム及び塩化テトラブチルホスホニウムから選択される請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記相間移動触媒が塩化ヘキサメチルグアニジニウム、塩化ヘキサエチルグアニジニウム又は塩化テトラブチルホスホニウムである請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記溶媒がトルエン、o−、m−及びp−キシレン(個別若しくは混合物として)、メシチレン、クロロベンゼン及びジクロロベンゼンから選択される請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記溶媒がトルエン、o−、m−及びp−キシレン(個別若しくは混合物として)及びクロロベンゼンから選択される請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5−クロロ−1H−ピラゾール−4−カルボニルクロライドのアルカリ金属
フルオリドとのハロゲン交換反応による5−フルオロ−1H−ピラゾール−4−カルボニ
ルフルオリドの新規調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
5−フルオロ−1H−ピラゾール−4−カルボニルフルオリドは、植物保護剤の合成に
おける重要な中間体である(WO2011/131615参照)。
【0003】
特許出願US7,714,144(WO2007/031212に相当)及びUS5,
675,016に、アルカリ金属フルオリドの存在下に5−クロロ−1H−ピラゾール−
4−カルボニルクロライドを出発原料とする塩素のフッ素への交換(ハロゲン交換(ha
lex)プロセス)が開示されている。US5,675,016には、前記反応を行う上
で好適な溶媒が全ての極性非プロトン性有機溶媒であり、好ましくはスルホラン類などの
スルホン類であることが開示されている。
【0004】
US7,714,144には、極性非プロトン性溶媒、より好ましくはスルホラン、ジ
メチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド又はN−メチルピロリドンの存在下での5−
クロロ−1,3−ジアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボニルクロライドからの5−
フルオロ−1,3−ジアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボニルフルオリドの調製が
開示されている。US7,714,144及びUS5,675,016の両方には、ハロ
ゲン交換反応への非プロトン性極性溶媒の使用が開示されている。
【0005】
ハロゲン交換反応へのジメチルホルムアミド(DMF)又はジメチルスルホキシド(D
MSO)などの非プロトン性極性溶媒の使用は、当業者には公知である(Finger
et al., J. Am. Chem. Soc, 1956, 78 (23),
pp6034−6037)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2011/131615
【特許文献2】US7,714,144(WO2007/031212)
【特許文献3】US5,675,016
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Finger et al., J. Am. Chem. Soc, 1956, 78 (23), pp6034−6037
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そうではあっても、ハロゲン交換反応への非プロトン性極性溶媒の使用は、特にはそれ
らが部分的に水と混和性であり、それに関連して再利用性が低いために、その方法の経済
的実行可能性についての欠点を有するものである。これらの溶媒中での反応の後処理は通
常、高コストでのみ可能であり、及び/又はそれによって、特別な処理を必要とする多量
の廃水が生じる。フッ素化を奏功させるためには、反応混合物からその水を実質的に除去
しなければならないことが知られていることから、過剰の水の問題を解決するために、非
プロトン性極性溶媒に、水と共沸体を形成可能な追加の低沸点溶媒を加えることが必要又
は有利となり得るが、そのさらなる溶媒添加による二成分溶媒の形成が複雑さ及びより高
コストの原因となる。さらに、非プロトン性極性溶媒は比較的高価な溶媒である。
【0009】
従って本発明の目的は、アルカリ金属フルオリドを用いる5−クロロ−1H−ピラゾー
ル−4−カルボニルクロライドからのハロゲン交換反応による5−フルオロ−1H−ピラ
ゾール−4−カルボニルフルオリドの調製についての上記欠点を持たない代替溶媒を見出
すことにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
非常に驚くべきことに、本発明によって、トルエン、エチルベンゼン、o−、m−及び
p−キシレン(個別若しくは混合物として)、メシチレン、クロロベンゼン又はジクロロ
ベンゼンなどの非極性溶媒を、アルカリ金属フルオリドを用いる5−クロロ−1H−ピラ
ゾール−4−カルボニルクロライドのハロゲン交換反応による5−フルオロ−1H−ピラ
ゾール−4−カルボニルフルオリドの調製に非プロトン性極性溶媒に代えて用いることが
可能であることが明らかになった。非極性溶媒は、当該反応においては新規且つ予想外の
好適な溶媒であるだけではく、さらに、それらは、非プロトン性極性溶媒の欠点のほとん
どを解決するものである。
【0011】
従って、本発明の主題は、下記式(I)の5−フルオロ−1H−ピラゾール−4−カル
ボニルフルオリド:
【化1】
【0012】
[式中、RはC−C−アルキルであり;Rは、CH、CFH、CF、CF
Cl、CClF、C又はCである。]を、下記式(II)の5−クロロ
−1H−ピラゾール−4−カルボニルクロライド:
【化2】
【0013】
[式中、R及びRは上記で定義の通りである。]を、相間移動触媒の存在下、トルエ
ン、エチルベンゼン、o−、m−及びp−キシレン(個別若しくは混合物として)、メシ
チレン、クロロベンゼン、及びジクロロベンゼンから選択される溶媒の存在下にフッ素化
剤と反応させることで調製することである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
式(II)の相当する5−クロロ−1H−ピラゾール−4−カルボニルクロライドのフ
ッ素化は段階的に行うことができ(図式1)、そこでは、式(III)の相当する酸フッ
化物を最初に形成し、次に式(I)の相当するフルオロ酸フッ化物を形成する。これは、
反応のいずれかの箇所で、3種類全ての化合物が同時に存在することがあり得ることを意
味する。そうではあっても、相間移動触媒の存在及び十分な反応期間により、そして式(
I)の5−フルオロ−1H−ピラゾール−4−カルボニルフルオリドへの完全な変換を得
ることができるまで、式(III)の化合物と比較した式(I)の化合物の相対的蓄積量
は上昇する。あるいは、式(I)の化合物豊富の混合物を得ることができる。次に、必要
な場合、前記式(I)の化合物を単離することができる。単離は、例えば、溶媒(例えば
クロロベンゼン)の蒸留と、次に、当業者が決定することができる条件(R=CH
びR=CHFの場合、次の蒸留条件とすることができると考えられる:ジャケット:
177℃から197℃/サンプ:165℃/沸点:130℃//圧力=18mbar)下
でのより高温での所望の化合物の蒸留によって行うことができると考えられる。
【0015】
その反応は、2段階で行うことも可能であると考えられる。その場合、通常は相間移動
触媒を加えることなく、比較的温和な条件下で化合物(III)が最初に生成され、それ
も単離可能である。これは、HF又はトリアルキルアミン−n−ヒドロフルオリド(n=
1から5)を用いて行うことができる。第2の段階では、この化合物(III)を、相間
移動触媒の存在下での(I)の調製のための反応物として用いる。
【0016】
図式1
【化3】
【0017】
本発明の方法は、先行技術と比較して、より経済性が高く、より環境に優しく、そして
技術的に実施が明らかに容易である。スルホランなどの先行技術の非プロトン性溶媒の回
収は、ほとんどの場合非常に高い沸点(例えば、スルホランは沸点285℃)及び/又は
ジメチルアセトアミド及びジメチルホルムアミドなどの溶媒の部分分解が原因で、かなり
困難なものになると考えられる。スルホランなどの非プロトン性溶媒を使用することのさ
らなる欠点は、一部のピラゾール類がそれらと同じ沸点範囲であるため、蒸留による分離
が困難であるというものである。本発明で使用される溶媒を用いることで、全く問題なく
、蒸留による分離が可能となる。
【0018】
さらに、この反応手順は、かなり低い温度を可能とするものであり、それによって簡素
化された経費効果がより高いプラント設計を行うことができる。これら条件下で反応がか
なり選択的に進行することから、収率は、ハロゲン交換反応については非常に良好な範囲
(80から90%)であり、非プロトン性極性溶媒中で行う反応を超えるものである。
【0019】
式(II)は、本発明による方法を行うための出発材料として使用される化合物の一般
的定義を提供する。残基Rは、好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピ
ル、ブチル又はペンチル、好ましくはメチル又はエチル、より好ましくはメチルである。
残基Rは、メチル又は、CFH、CF、CFCl、CClF、C、C
である。Rに特に好ましいものは、メチル及びCFHである。
【0020】
式(II)の5−クロロ−1H−ピラゾール−4−カルボニルクロライドは、例えば、
相当するアルデヒドから出発する酸化的塩素化によって調製することができる。先行技術
は、WO2008/086962及びWO2011/061205に記載されている。
【0021】
本発明による手順のさらなる利点は、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの塩素化
で一般的な有機塩素溶媒中の得られる溶液を、ハロゲン交換段階での複雑な溶媒交換や酸
塩化物の単離も行わずに直接用いることができることである。
【0022】
式(II)の化合物のフッ素化は、式(IV)のフッ素化剤の存在下に、本発明に従っ
て行う。
【化4】
【0023】
式(IV)において、Mは、アルカリ金属カチオン又はアンモニウムカチオン、好ま
しくはLi、Na、K、Cs、アルキル、又はこれらの混合物であり、ア
ルキルはC−C−アルキルである。特に好ましくは、フッ素化剤としてアルカリ金属
フルオリド、特にはフッ化カリウムを用いる。
【0024】
フッ化カリウムは、合成において公知の化学物質であり、市販されている。
【0025】
四級アンモニウム、ホスホニウム化合物又はアミドホスホニウム塩が、本発明による方
法を行う上での相間移動触媒として好適である。例には、塩化若しくは臭化テトラメチル
アンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、塩化トリメチルベンジルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、塩化トリカプリルメチルアンモニウム(Aliquat336)、塩化メチルトリオクチルアンモニウム、塩化トリブチルメチルアンモニウム(Aliquat175)、塩化テトラブチルホスホニウム、臭化テトラブチルホスホニウム、塩化テトラフェニルホスホニウム、イオン性液体、例えば特にはトリヘキシルテトラデシルホスホニウムクロライド、ブロマイド、ジシアナミド、ヘキサフルオロホスフェート又はテトラフルオロボレート、塩化若しくは臭化テトラキス(ジメチルアミノ)ホスホニウム、塩化若しくは臭化テトラキス(ジエチルアミノ)ホスホニウム、塩化若しくは臭化トリス(ジエチルアミノ)(ジメチルアミノ)ホスホニウム、塩化若しくは臭化トリス(ジメチルアミノ)(ジヘキシルアミノ)ホスホニウム、塩化若しくは臭化トリス(ジエチルアミノ)(ジヘキシルアミノ)ホスホニウム、ヘキサアルキルグアニジニウム塩(アルキル=C−C)又は鎖長r6から17及び平均モル質量500g/molを有するポリエチレングリコールジメチルエーテル類、ウロトロポニウム塩、塩化若しくは臭化オクタアルキルオキシアミジニウム(アルキル=C−C)などの化合物などがある。好ましいものは、塩化トリブチルメチルアンモニウム(Aliquat175)、塩化メチルトリオクチルアンモニウム、塩化トリカプリルメチルアンモニウム(Aliquat336)、塩化ヘキサブチルグアニジニウム、塩化ヘキサエチルグアニジニウム、塩化ヘキサメチルグアニジニウム、臭化テトラフェニルホスホニウム及び塩化テトラブチルホスホニウムである。特に好ましいものは、塩化ヘキサメチルグアニジニウム、塩化ヘキサエチルグアニジニウム及び塩化テトラブチルホスホニウムである。
【0026】
トルエン、エチルベンゼン、o−、m−及びp−キシレン(個別若しくは混合物として
)、メシチレン、クロロベンゼン及びジクロロベンゼンから選択される非極性溶媒の使用
が、本発明による方法を行う上で好適である。好ましいものはトルエン、o−、m−及び
p−キシレン(個別若しくは混合物として)、メシチレン、クロロベンゼン及びジクロロ
ベンゼンから選択される芳香族溶媒であり、特に好ましいものはトルエン、o−、m−及
びp−キシレン(個別若しくは混合物として)及びクロロベンゼンである。
【0027】
本発明による方法(図式1)は、好ましくは20℃から200℃の温度範囲内で、より
好ましくは80℃から180℃の温度で、特に好ましくは100℃から160℃の温度で
行う。
【0028】
反応時間はあまり重要ではなく、バッチ規模及び温度に従って、1時間から数時間、好
ましくは2から20時間、3から16時間、4から16時間の範囲内で選択することがで
きる。
【0029】
本発明による方法を行うには、式(II)の化合物1mol当たり2.0から5.0m
ol、好ましくは2.2molから4.0mol、特に好ましくは2.5から3.5mo
lのアルカリ金属フルオリドを用いる。
【0030】
本発明による方法を行うには、式(II)の化合物1mol当たり0.005から0.
5mol、好ましくは0.01molから0.25mol、特に好ましくは0.02から
0.1molの相間移動触媒を用いる。
【0031】
後処理のため、得られた反応混合物を濾過することで、アルカリ金属塩を除去する。次
に、生成物から蒸留によって溶媒を除去し、さらなる蒸留によって精製することができる
。当然のことながら、それ以上後処理を行わずに、得られた溶液を次の化学段階で用いる
ことが可能である。
【0032】
調製例:
実施例1:
【化5】
【0033】
クロロベンゼン(50g)中の5−クロロ−1−メチル−3−メチル−1H−ピラゾー
ル−4−カルボニルクロライド(10g、0.05mol)、KF(8.8g、0.15
mol)及び塩化ヘキサメチルグアニジニウム(0.454g、2.53mmol)をア
ルゴン下に140℃で15.5時間撹拌した。次に、無機塩を濾去し、クロロベンゼンを
減圧下に留去した。5−フルオロ−1,3−ジメチル−1H−ピラゾール−4−カルボニ
ルフルオリド25.8gを得た(含有率:64.4%、収率:理論値の65.3%)。
【0034】
GC/MS:m/z=160.
実施例2:
【化6】
【0035】
5−クロロ−1−メチル−3−ジフルオロメチル−1H−ピラゾール−4−カルボニル
クロライド(40g、85.5mmol、クロロベンゼン中49%)、カリウムフルオリ
ド(15.9g、273.8mmol)及び塩化ヘキサブチルグアニジニウム(1.85
g、4.28mmol)を、アルゴン下に135℃で8.5時間撹拌した。得られた懸濁
液から濾過によって塩を除去した。5−フルオロ−1−メチル−3−ジフルオロメチル−
1H−ピラゾール−4−カルボニルフルオリドのクロロベンゼン中溶液77gを得た(含
有率:19.9%、収率:理論値の91.5%)。
【0036】
GC/MS:m/z=196.
H−NMR(CDCl):δ=3.86(s)、6.77(t)。
【0037】
実施例3:
【化7】
【0038】
5−クロロ−1−メチル−3−ジフルオロメチル−1H−ピラゾール−4−カルボニルクロライド(311g、クロロベンゼン中45%溶液、0.61mol)、KF(113.3g、1.94mmol)及び塩化ヘキサメチルグアニジニウム(5.47g、0.03mol)をアルゴン下に138℃で6時間撹拌した。次に、無機塩を濾去し、フィルターケーキをクロロベンゼン250gで洗浄した。5−フルオロ−1−メチル−3−ジフルオロメチル−1H−ピラゾール−4−カルボニルフルオリドのクロロベンゼン中溶液704gを得た(含有率:16.1%、収率:理論値の95.1%)。
【0039】
実施例4:
【化8】
【0040】
トルエン(20g)中の5−クロロ−1−メチル−3−ジフルオロメチル−1H−ピラ
ゾール−4−カルボニルクロライド(5.24g、22.8mmol)、KF(4.25
g、73mmol)及び塩化ヘキサメチルグアニジニウム(0.2g、1.11mmol
)を、アルゴン下に120℃で10時間撹拌した。サンプルを分析した。GC:5−フル
オロ−1−メチル−3−ジフルオロメチル−1H−ピラゾール−4−カルボニルフルオリ
ドへの変換率75%。
【0041】
実施例5:
【化9】
【0042】
キシレン(10g)中の5−クロロ−1−メチル−3−ジフルオロメチル−1H−ピラ
ゾール−4−カルボニルクロライド(2.28g、9.93mmol)、KF(1.85
g、31.7mmol)及び塩化ヘキサメチルグアニジニウム(89mg、0.50mm
ol)をアルゴン下に135℃で4時間撹拌した。サンプルを分析した。GC:5−フル
オロ−1−メチル−3−ジフルオロメチル−1H−ピラゾール−4−カルボニルフルオリ
ドへの変換率100%。
【0043】
実施例6:
【化10】
【0044】
o−ジクロロベンゼン(63g)中の5−クロロ−1−メチル−3−ジフルオロメチル
−1H−ピラゾール−4−カルボニルクロライド(29.3g、127mmol)、二フ
ッ化水素カリウム(16g、204mmol)を、アルゴン下に120℃で2時間撹拌し
た。サンプルを分析した。GC:5−クロロ−1−メチル−3−ジフルオロメチル−1H
−ピラゾール−4−カルボニルフルオリドへの変換率>99%。
【0045】
GC−MS:[M+]=212.
実施例7:
【化11】
【0046】
クロロベンゼン(10g)中の5−クロロ−1−メチル−3−ジフルオロメチル−1H
−ピラゾール−4−カルボニルクロライド(1.36g、5.96mmol)、フッ化カ
リウム(1.1g、19mmol)を、アルゴン下に130℃で2時間撹拌した。サンプ
ルを分析した。GC:5−クロロ−1−メチル−3−ジフルオロメチル−1H−ピラゾー
ル−4−カルボニルフルオリドへの変換率>99%。
【0047】
実施例8:
【化12】
【0048】
5−クロロ−1−メチル−3−ジフルオロメチル−1H−ピラゾール−4−カルボニル
クロライド(100g、0.21mmol、クロロベンゼン中49%)、フッ素化カリウ
ム(39.8g、0.68mol)及び塩化テトラブチルホスホニウム(3.15g、1
1mmol)を、アルゴン下に135℃で6時間撹拌した。得られた懸濁液から濾過によ
って塩を除去し、クロロベンゼンで洗浄した。5−フルオロ−1−メチル−3−ジフルオ
ロメチル−1H−ピラゾール−4−カルボニルフルオリドのクロロベンゼン中溶液217
.9gを得た(含有率:17.8%、収率:理論値の92.3%)。
【0049】
実施例9:
各種相間移動触媒を用いたさらなる実験を行った。GCによって変換をチェックし、下
記の表1から4にまとめている。
【化13】
【0050】
表1:各種相間移動触媒のスクリーニング(IIIaに3当量のKF及びクロロベンゼ
ン中5mol%相間移動触媒を入れ、135から140℃で5時間撹拌し、変換をGCに
よってチェックした。)
【表1】
【0051】
表2:各種トリヘキシルテトラデシルホスホニウム塩のスクリーニング(GCによる変
換チェック)、IIIa 1g、3当量のKF、135から140℃、5mol%相間移
動触媒/キシレン
【化14】
【表2】
【0052】
表3:各種トリヘキシルテトラデシルホスホニウム塩のスクリーニング(GCによる変
換チェック)、IIIa 1g、3当量のKF、135から140℃、5mol%相間移
動触媒/クロロベンゼン
【化15】
【表3】
【0053】
表4:ウロトロピン系相間移動触媒及び二臭化オクタメチルオキシアミジニウム、II
Ia 1g、5mol%相間移動触媒/クロロベンゼン
【表4】