(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6691941
(24)【登録日】2020年4月15日
(45)【発行日】2020年5月13日
(54)【発明の名称】陰圧閉鎖療法用の非対称性の吸収性コアを備えるドレッシング
(51)【国際特許分類】
A61M 27/00 20060101AFI20200427BHJP
【FI】
A61M27/00
【請求項の数】25
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-155994(P2018-155994)
(22)【出願日】2018年8月23日
(62)【分割の表示】特願2015-552746(P2015-552746)の分割
【原出願日】2014年1月8日
(65)【公開番号】特開2019-10523(P2019-10523A)
(43)【公開日】2019年1月24日
【審査請求日】2018年9月13日
(31)【優先権主張番号】61/753,368
(32)【優先日】2013年1月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508268713
【氏名又は名称】ケーシーアイ ライセンシング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト,デイヴィッド,ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】ロック,クリストファー ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】クルサード,リチャード ダニエル,ジョン
【審査官】
佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2011/0224630(US,A1)
【文献】
特開2005−205120(JP,A)
【文献】
特表2003−534466(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/152368(WO,A1)
【文献】
特表2003−503106(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織部位から流体を収集する装置において、
親水性側面および疎水性側面を有する上流層と、
親水性側面および疎水性側面を有する下流層と、
前記上流層と前記下流層との間に囲まれた吸収部材であって、前記上流層の親水性側面が前記吸収部材に隣接して配置され、前記下流層の疎水性側面が前記吸収部材に隣接して配置されている吸収部材と、
前記組織部位と前記上流層の疎水性側面との間に配置されたマニホールドと、
前記下流層の親水性側面に隣接して配置されたシール部材であって、前記組織部位における実質的な気密封止をもたらすシール部材と、を具えることを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、前記上流層が第1の厚さを有し、前記下流層が第2の厚さを有しており、前記第2の厚さが前記第1の厚さよりも厚いことを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置において、前記上流層が第1の厚さを有し、前記下流層が第2の厚さを有しており、前記第2の厚さが前記第1の厚さよりも約3倍厚いことを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1に記載の装置において、前記上流層の物質密度が約80gsmであることを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置において、前記下流層の物質密度が約150gsmであることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項1に記載の装置において、前記上流層の物質密度が約80gsmであり、前記下流層の物質密度が約150gsmであることを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項1に記載の装置において、
前記上流層が第1の厚さを有し、前記下流層が第2の厚さを有しており、
前記第2の厚さが前記第1の厚さよりも約3倍厚く、
前記上流層の物質密度が約80gsmであり、
前記下流層の物質密度が約150gsmであることを特徴とする装置。
【請求項8】
減圧を用いて組織部位を治療するシステムにおいて、
前記シール部材を通って前記マニホールドに流体的に連結されるように構成された減圧源と、
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の装置と、
を具えることを特徴とするシステム。
【請求項9】
組織部位から流体を収集するための装置において、
親水性側面および疎水性側面を有する上流層と、
親水性側面および疎水性側面を有する下流層と、
前記上流層と前記下流層との間に囲まれた吸収部材と、を具え、
前記上流層の疎水性側面がパウチの外面の一部分を形成し、前記下流層の親水性側面が前記パウチの外面の別の部分を形成し、
前記装置が、さらに、
前記組織部位と前記上流層の疎水性側面との間に配置されたマニホールドと、
前記下流層の親水性側面に隣接して配置されたシール部材であって、前記組織部位における実質的な気密封止をもたらすシール部材と、を具えることを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項9に記載の装置において、前記上流層が第1の厚さを有し、前記下流層が第2の厚さを有しており、前記第2の厚さが前記第1の厚さよりも厚いことを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項9に記載の装置において、前記上流層が第1の厚さを有し、および前記下流層が第2の厚さを有し、および前記第2の厚さが前記第1の厚さよりも約3倍厚いことを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項9に記載の装置において、前記上流層の物質密度が約80gsmであることを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項9に記載の装置において、前記下流層の物質密度が約150gsmであることを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項9に記載の装置において、前記上流層の物質密度が約80gsmであり、前記下流層の物質密度が約150gsmであることを特徴とする装置。
【請求項15】
請求項9に記載の装置が、さらに、減圧源に流体的に連結しているとともにシール部材に連結したコネクタを具え、前記減圧源をマニホールドに流体的に連結していることを特徴とする装置。
【請求項16】
請求項9に記載の装置が、さらに、少なくとも1つのルーメンを有するチューブを具え、前記ルーメンが、第1の端部で減圧源に流体的に連結され、かつ前記第1の端部に対向する第2の端部で前記マニホールドに流体的に連結されていることを特徴とする装置。
【請求項17】
請求項9に記載の装置が、さらに、
少なくとも1つのルーメンと、第1の端部と、第2の端部とを有するチューブであって、前記第1の端部が減圧源に流体的に連結されるように構成されたチューブと、
フランジ部分およびポート部分を有するコネクタであって、前記フランジ部分はシール部材に連結され、前記ポート部分は、前記チューブの第2の端部に流体的に連結されていて、前記減圧源をマニホールドに流体的に連結するように構成されたコネクタと、
を具えることを特徴とする装置。
【請求項18】
請求項9に記載の装置において、前記上流層が、前記吸収部材に隣接して親水性側面を有することを特徴とする装置。
【請求項19】
請求項9に記載の装置において、前記上流層が、前記吸収部材の反対側に疎水性側面を有することを特徴とする装置。
【請求項20】
請求項9に記載の装置において、
前記上流層が、前記吸収部材に隣接して親水性側面を有し、
前記上流層が、前記吸収部材の反対側に疎水性側面を有することを特徴とする装置。
【請求項21】
請求項9に記載の装置において、前記下流層が、前記吸収部材に隣接して疎水性側面を有することを特徴とする装置。
【請求項22】
請求項9に記載の装置において、前記下流層が、前記吸収部材の反対側に親水性側面を有することを特徴とする装置。
【請求項23】
請求項9に記載の装置において、
前記下流層が、前記吸収部材に隣接して疎水性側面を有し、
前記下流層が、前記吸収部材の反対側に親水性側面を有することを特徴とする装置。
【請求項24】
請求項9に記載の装置において、
前記上流層が、前記吸収部材に隣接して親水性側面を有し、
前記上流層が、前記吸収部材の反対側に疎水性側面を有し、
前記下流層が、前記吸収部材に隣接して疎水性側面を有し、
前記下流層が、前記吸収部材の反対側に親水性側面を有することを特徴とする装置。
【請求項25】
減圧を用いて組織部位を治療するシステムにおいて、
前記シール部材を通して前記マニホールドに流体的に連結されるように構成された減圧源と、
請求項9乃至24のいずれか1項に記載の装置と、
を具えることを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、35U.S.C.§119(e)下において、2013年1月16日出願の米国仮特許出願第61/753,368号明細書(「Dressing with Asymmetric Absorbent Core for Negative Pressure Wound Therapy」)の優先権および利益を主張し、その開示全体を参照することにより本書に援用する。
【0002】
本開示は、概して、組織部位を治療しかつ流体を処理する治療システムに関する。より詳細には、限定されるものではないが、本開示は、減圧創傷療法のための非対称性の吸収性コアを有するドレッシングに関する。
【背景技術】
【0003】
臨床試験および診療から、組織部位に近接して減圧をもたらすことによって、組織部位における新しい組織の成長を増強および加速することが示されている。この現象の適用例は多数あるが、減圧を行うことは、創傷の治療において特に有益であることが分かっている。外傷、手術、または別の原因であるかなどの創傷の病因に関わらず、創傷を適切にケアすることが、結果に対し重要である。減圧による創傷の治療は、一般に「減圧創傷療法」と称し得るが、例えば「陰圧療法」、「陰圧閉鎖療法」、および「真空療法」を含む他の名称によっても知られている。減圧療法はいくつもの利点を提供し、それら利点には、上皮組織および皮下組織の移動、血流の改善、および創傷部位における組織の微小変形が含まれ得る。同時に、これらの利点には、肉芽組織の発生を増やし、および治癒にかかる時間を短縮することが含まれ得る。
【0004】
減圧療法の臨床的利点は広く知られているものの、減圧療法のコストおよび複雑さがその適用の制限要因であり、および減圧システム、その構成要素、およびプロセスの進化および操作が、製造者、ヘルスケア提供者、および患者に重大な課題を突き付け続けている。特に、組織部位に近接して位置決めされた吸収部材を含む減圧ドレッシングは、吸収材料の損失または不十分な吸収性を経験することがあり、これは、組織部位に減圧療法を施すための減圧システムの能力に悪影響を及ぼす。
【発明の概要】
【0005】
説明に役立つ実施形態によれば、組織部位から流体を収集するシステムが説明される。システムは、組織部位に隣接して配置されるように適合されたマニホールドと、組織部位の上側を覆って配置されるように適合されたシール部材と、シール部材を通ってマニホールドに流体的に結合されるように適合された減圧源とを含み得る。システムは、さらに、パウチを含み得る。パウチは、親水性側面および疎水性側面を有する、第1の厚さの上流層と、親水性側面および疎水性側面を有する、第2の厚さの下流層とを含み得る。装置はまた、上流層と下流層との間に囲まれた吸収部材を含み得る。上流層の親水性側面は、吸収部材に隣接して位置決めされるため、上流層の疎水性側面が装置の外面の一部分を形成し得る。下流層の疎水性側面は、吸収部材に隣接して位置決めされるため、下流層の親水性側面が、装置の外面の別の部分を形成し得る。第2の厚さは、第1の厚さよりも厚いとし得る。
【0006】
別の説明に役立つ実施形態によれば、減圧を用いて組織部位を治療するシステムが説明される。システムは、組織部位に隣接して配置されるように適合されたマニホールドと、組織部位およびマニホールドの上側を覆って配置されるように適合され、組織部位において実質的に気密封止をもたらすシール部材と、シール部材を通ってマニホールドに流体的に結合されるように適合された減圧源とを含み得る。システムは、さらに、パウチを含み得る。パウチは、親水性側面および疎水性側面を有する上流層、親水性側面および疎水性側面を有する下流層、および上流層と下流層との間に囲まれた吸収部材を含み得る。上流層の親水性側面は、吸収部材に隣接して位置決めされてもよく、および下流層の疎水性側面は、吸収部材に隣接して位置決めされてもよい。パウチは、マニホールドとシール部材との間に位置決めされるように適合され得る。
【0007】
さらに別の説明に役立つ実施形態によれば、組織部位から流体を収集するための装置が説明される。装置は、親水性側面および疎水性側面を有する上流層と、親水性側面および疎水性側面を有する下流層とを含み得る。装置はまた、上流層と下流層との間に囲まれた吸収部材を含み得る。上流層の親水性側面は、吸収部材に隣接して位置決めされるため、上流層の疎水性側面が、装置の外面の一部分を形成し得る。下流層の疎水性側面は、吸収部材に隣接して位置決めされるため、下流層の親水性側面が、装置の外面の別の部分を形成し得る。
【0008】
さらに別の説明に役立つ実施形態によれば、減圧を用いて組織部位を治療するシステムが説明される。システムは、組織部位に隣接して配置されるように適合されたマニホールドと、組織部位およびマニホールドの上側を覆って配置されるように適合され、組織部位において実質的に気密封止をもたらすシール部材と、シール部材を通ってマニホールドに流体的に結合されるように適合された減圧源とを含み得る。システムは、さらに、パウチを含み得る。パウチは、第1の厚さの上流層、第2の厚さの下流層、および上流層と下流層との間に囲まれた吸収部材を含み得る。第2の厚さは、第1の厚さよりも厚くてもよく、およびパウチは、マニホールドとシール部材との間に位置決めされるように適合され得る。
【0009】
さらに別の説明に役立つ実施形態によれば、組織部位から流体を収集するための装置が説明される。装置は、パウチを含み得る。パウチは、第1の厚さの上流層、第2の厚さの下流層、および上流層と下流層との間に囲まれた吸収部材を含み得る。第2の厚さは、第1の厚さよりも厚くてもよく、およびパウチは、マニホールドとシール部材との間に位置決めされるように適合され得る。
【0010】
さらに別の説明に役立つ実施形態によれば、組織部位を治療する方法が説明される。この方法では、組織部位に隣接してマニホールドを位置決めし、かつパウチを提供する。パウチは、親水性側面および疎水性側面を有する上流層、親水性側面および疎水性側面を有する下流層、および上流層と下流層との間に囲まれた吸収部材を含み得る。上流層の親水性側面は、吸収部材に隣接して位置決めされるため、上流層の疎水性側面が、装置の外面の一部分を形成し得る。下流層の疎水性側面は、吸収部材に隣接して位置決めされるため、下流層の親水性側面が、装置の外面の別の部分を形成し得る。この方法では、マニホールドおよび組織部位に隣接してパウチを位置決めするため、上流層がマニホールドに隣接し得る。パウチは、第1の厚さの上流層、第1の厚さよりも厚い、第2の厚さの下流層、および上流層と下流層との間に配置された吸収材料を有する吸収部材であって、上流層および下流層が吸収部材を囲む、吸収部材を含み得る。この方法では、マニホールドおよびパウチの上側を覆ってシール部材を位置決めし、実質的に気密封止をもたらし、およびマニホールドに減圧源を流体的に結合して、組織部位に減圧をもたらす。この方法では、パウチを通してマニホールドに減圧を分配し、および組織部位からの流体をパウチ内の吸収部材に分配し、そこに貯蔵する。
【0011】
別の説明に役立つ実施形態によれば、流体貯蔵キャニスターの製造方法が説明される。この方法では、親水性側面と、疎水性側面とを有する、第1の厚さの第1の層を提供する。この方法では、第1の層の親水性側面に隣接して吸収部材を位置決めする。この方法ではまた、親水性側面と、疎水性側面とを有する、第1の厚さよりも厚い第2の厚さの第2の層を提供する。この方法では、吸収部材に隣接して第2の層の親水性側面を位置決めする。この方法では、第1の層の外縁部分と第2の層の外縁部分を互いに結合して、吸収部材を囲む。
【0012】
説明に役立つ実施形態の他の態様、特徴、および利点は、以下の図面および詳細な説明を参照することにより、明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、例示的な実施形態による減圧治療システムを示す断面図である。
【
図2】
図2は、
図1の減圧治療システムのパウチを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
減圧療法環境において流体を貯蔵するための新しくかつ有用なシステム、方法、および装置が、添付の特許請求の範囲において記載される。システム、方法、および装置を作製および使用する目的、利益、および好ましい態様は、添付図面と併せて、以下の詳細な説明を参照することにより、最も理解され得る。説明は、当業者が、特許請求する主題を作製および使用できるようにする情報を提供するが、当業界で既に周知のいくつかの詳細な情報については省略し得る。さらに、他で明白に指定しない限り、用語「または」などを使用する様々な代替例の説明は、必ずしも相互排他性である必要はない。特許請求する主題はまた、具体的に詳細には説明されない代替的な例示的な実施形態、変形例、および等価物を含んでもよい。それゆえ、以下の詳細な説明は、限定ではなく、説明のためのものであるとみなされるべきである。
【0015】
例示的な実施形態はまた、減圧療法の適用例の関連において本明細書で説明され得るが、特徴および利点の多くは、他の環境および産業にも容易に適用可能である。様々な要素間の空間関係、または様々な要素の空間定位は、添付の図面に示すように説明され得る。概して、そのような関係または定位は、減圧療法を受ける位置にいる患者と一致するかまたは患者に対する基準系とする。しかしながら、当業者によって認識される必要があるように、この基準系は、厳密な規定ではなく、説明の手段にすぎない。
【0016】
図1は、組織部位106に減圧を供給するための治療システム100を示す、例示的な実施形態の断面図である。治療システム100は、組織部位106と流体連通するドレッシング102と、チューブ120に減圧をもたらす減圧源104であって、このチューブが流体的に結合され得る減圧源104と、チューブ120をドレッシング102に流体的に結合し得るコネクタ122とを含み得る。
【0017】
このような文脈において、用語「組織部位」は、骨組織、脂肪組織、筋組織、神経組織、皮膚組織、脈管組織、結合組織、軟骨、腱、または靭帯を含むがこれらに限定されない組織上にあるまたはその内部の、創傷または欠損を広範に指す。創傷は、例えば、慢性の、急性の、外傷性の、亜急性の、および離開した創傷、中間層熱傷、潰瘍(例えば糖尿病潰瘍、圧迫潰瘍、または静脈不全潰瘍)、弁(flap)、およびグラフトを含み得る。用語「組織部位」はまた、必ずしも傷ついても欠損してもいない任意の組織領域を指し得るが、その代わりに、追加的な組織の成長を支援または促進することが望ましいとし得る領域である。例えば、いくつかの組織領域において減圧を使用して、追加的な組織を成長させ、それら組織を採取し、別の組織の箇所に移植してもよい。
【0018】
減圧源104などの減圧源は、減圧での空気の溜め部としてもよいし、または密閉された体積部の圧力を低下させ得る手動または電動の装置、例えば真空ポンプ、吸引ポンプ、多くのヘルスケア施設で利用可能なものなどの壁面吸い込みポート、またはマイクロポンプなどとしてもよい。減圧源は、減圧療法をさらに容易にするセンサー、処理装置、アラームインジケータ、メモリ、データベース、ソフトウェア、表示装置、またはユーザインターフェースなどの他の構成要素内に収容され得るかまたはそれらと一緒に使用される。組織部位に行われる減圧の量および性質は、治療条件に従って変化し得るが、圧力は、一般に、−5mm Hg(−667Pa)〜−500mm Hg(−66.7kPa)の範囲とし得る。一般的な治療範囲は、−75mm Hg(−9.9kPa)〜−300mm Hg(−39.9kPa)である。
【0019】
密閉された治療環境内などの別の構成要素または場所における圧力を低下させるために減圧源を使用する流体力学は、数学的に複雑となり得る。しかしながら、減圧療法に適用できる流体力学の基本原理は、一般的に当業者によく知られており、および圧力を低下させるプロセスは、例えば減圧の「送達」、「分配」、または「生成」として、本明細書で説明的に記載され得る。
【0020】
概して、滲出液および他の流体は、流体流路に沿って、より低い圧力の方へ流れる。この方向付けは、一般的に、本明細書の減圧治療システムの様々な特徴およびその構成要素を説明するために利用され得る。それゆえ、減圧療法との関連では、用語「下流」は、一般に、流体流路において、減圧の比較的近くにあるものを意味し、逆に、用語「上流」は、減圧源から比較的離れているものを意味する。同様に、そのような基準系において、流体の「入口」または「出口」に関して、いくつかの特徴を説明するのに好都合とし得る。しかしながら、流体流路はまた、一部の適用例では逆にされてもよく(陽圧源を減圧源の代わりにすることによってなど)、この説明の慣例は、限定的な慣例であるとみなされるべきではない。
【0021】
「減圧」は、一般的に、密閉された治療環境の外側にある局所環境における周囲圧力などの局所的な周囲圧力を下回る圧力を指す。多くの場合、局所的な周囲圧力はまた、患者がいる場所の大気圧とし得る。あるいは、圧力は、組織部位における組織に関連する静水圧を下回り得る。他に指定のない限り、本明細書で述べる圧力の値はゲージ圧である。同様に、減圧の上昇への言及は、一般に絶対圧の低下を指す一方、減圧の低下は、一般に絶対圧の上昇を指す。
【0022】
治療システム100の構成要素は、互いに直接または間接的に結合され得る。構成要素は互いに流体的に結合されて、構成要素間で流体(すなわち、液体および/または気体)を移送する経路を提供し得る。一部の例示的な実施形態では、構成要素は、例えば、チューブ120などの導管に流体的に結合され得る。本明細書では、「チューブ」は、チューブ、パイプ、ホース、導管、または2つの端部間で流体を運ぶように適合された、1つ以上のルーメンを備える他の構造体を広く指す。一般に、チューブは、ある程度可撓性のある、細長いシリンダー状の構造体であるが、幾何学的形状および剛性は様々とし得る。それに加えてまたはその代わりに、一部の例示的な実施形態では、構成要素は、単一の構造体に一体的であるかまたは同じ材料部片から形成される物理的近接によって、結合され得る。結合はまた、一部の状況において、機械的、熱的、電気的、または化学的な結合(ケミカルボンドなど)を含み得る。
【0023】
減圧源104によって生じた減圧は、チューブ120を通ってコネクタ122まで送達され得る。コネクタ122は、減圧源104をドレッシング102に流体的に結合するように構成された装置とし得る。一部の例示的な実施形態では、コネクタ122は、ドレッシング102に結合し得るフランジ部分123と、チューブ120に流体的に結合し得るポート部分とを含み得る。ポート部分は、フランジ部分123に対して流体的に封止されてもよく、およびフランジ部分123を通して流体連通をもたらし得る。一部の実施形態では、コネクタ122は、ドレッシング102によって形成された密閉治療環境と、周囲環境との間の流体連通を防止し得る。コネクタ122は、ドレッシング102を通した、組織部位106とチューブ120との間の流体連通を可能にし得る。コネクタ122はまた、コネクタ122の流路内に配置された主フィルタ121を含み得る。主フィルタ121は、コネクタ122を通る流路を実質的に塞ぎかつコネクタ122を通ってチューブ120まで液体が通過するのを制限するように適合された疎水性材料とし得る。一部の実施形態では、コネクタ122は、Kinetic Concepts,Inc.(KCI)(San Antonio、Texas)から入手可能なT.R.A.C.(登録商標)PadまたはSensa T.R.A.C.(登録商標)Padとし得る。他の例示的な実施形態では、コネクタ122は、ドレッシング102に挿入された導管とし得る。
【0024】
ドレッシング102は、組織部位106と流体連通するように適合されたマニホールド110と、マニホールド110とコネクタ122との間で流体連通するように適合されたパウチ112と、組織部位106においてマニホールド110およびパウチ112の双方を被覆するドレープ108とを含み得る。マニホールド110は、組織部位、例えば、組織部位106内に、その上側を覆って、その上に、または他の方法でそれに近接して配置され得る。パウチ112は、マニホールド110に隣接して配置されてもよく、およびドレープ108は、マニホールド110の上側を覆って配置されて、組織部位106に近接する組織に対して封止されてもよい。組織部位106に近接した組織は、組織部位106の周辺にある無傷の表皮であることが多い。それゆえ、ドレッシング102は、組織部位106に近接して、組織部位106を外部環境から実質的に隔離する、密閉された治療環境を提供できる。減圧源104は、密閉された治療環境の圧力を低下させることができる。密閉された治療環境にあるマニホールド110を通して一様に適用された減圧は、組織部位106にマクロ歪みおよび微小歪みを誘発でき、ならびに組織部位106から滲出液および他の流体を除去でき、それらをパウチ112に収集して適切に廃棄できる。
【0025】
一部の実施形態では、マニホールド110は組織部位106に接触する。マニホールドは、組織部位106に部分的にまたは全体的に接触し得る。組織部位106が、組織表面から組織に延在する場合、例えば、マニホールド110は、組織部位106を部分的にまたは完全に塞ぎ得る。他の例示的な実施形態では、マニホールド110は、組織部位106の上側を覆って配置され得る。マニホールド110は多くの形態をとってもよく、および様々な要因、例えば、施されている治療のタイプまたは組織部位106の性質およびサイズなどに依存して、多くのサイズ、形状、または厚さを有し得る。例えば、マニホールド110のサイズおよび形状は、深くて不規則な形状の組織部位の輪郭に適合され得る。
【0026】
マニホールド110は、例えば、組織部位に減圧を分配するか、組織部位から流体を除去するか、または組織部位に減圧を分配しかつ組織部位から流体を除去するように適合された物体または構造体とし得る。一部の例示的な実施形態では、例えば、流体流路が逆にされる場合または副流体流路が設けられる場合、マニホールドはまた、組織部位への流体の送達を促し得る。マニホールドは、マニホールドの周りの組織部位に提供されかつそこから除去される流体を分配する流路または流れ経路を含み得る。例示的な一実施形態では、流路または流れ経路は相互に接続されて、組織部位に提供されるまたはそこから除去される流体の分配を改善し得る。例えば、気泡質の発泡体、連続気泡発泡体、多孔性組織集合体、およびガーゼまたはフェルトのマットなどの他の多孔質材は、一般的に、流路を形成するように配置された構造要素を含む。液体、ゲル、および他の発泡体はまた、流路を含み得るか、または硬化して流路を含み得る。
【0027】
例示的な一実施形態では、マニホールド110は、組織部位106に減圧を一様に(または準一様に)分配するように適合された連続気泡または細孔を有する多孔質の発泡材料とし得る。発泡材料は、疎水性でもまたは親水性でもよい。非限定的な一例では、マニホールド110は、連続気泡の網状ポリウレタン発泡体、例えばKinetic Concepts,Inc.(San Antonio、Texas)から入手可能なGranuFoam(登録商標)ドレッシングとし得る。
【0028】
マニホールド110が親水性材料から作製され得る例では、マニホールド110はまた、組織部位106にわたって減圧を分配し続ける間に、組織部位106から流体を吸い上げ得る。マニホールド110のウィッキングすなわち吸い上げ特性は、毛細管流動または他のウィッキング機構によって組織部位106から流体を引き出し得る。親水性発泡体の例は、ポリビニルアルコール製の連続気泡発泡体、例えばKinetic Concepts,Inc.(San Antonio、Texas)から入手可能なV.A.C. WhiteFoam(登録商標)ドレッシングである。他の親水性発泡体は、ポリエーテルから作製されたものを含み得る。親水性を示し得る他の発泡体は、親水性をもたらすように処理または被覆された疎水性発泡体を含む。
【0029】
マニホールド110は、さらに、密閉された治療環境内の圧力が低下すると、組織部位106における肉芽形成を促進させ得る。例えば、減圧がマニホールド110を通して組織部位106に適用される場合、マニホールド110の表面のいずれかまたは全ては、凸凹した、粗い、またはギザギザしたプロファイルを有することがあり、組織部位106において微小歪みおよび応力を誘発し得る。
【0030】
例示的な一実施形態では、マニホールド110は、生体再吸収性材料から構成され得る。好適な生体再吸収性材料は、限定されるものではないが、ポリ乳酸(PLA)とポリグリコール酸(PGA)のポリマーブレンドを含み得る。ポリマーブレンドはまた、限定されるものではないが、ポリカーボネート、ポリフマレート、およびカプララクトン(capralactones)を含み得る。マニホールド110は、新しい細胞増殖のための足場としての機能をさらに果たしてもよいし、または細胞増殖を促進するためにマニホールド110と足場材料が一緒に使用されてもよい。足場は、一般的に、細胞増殖または組織形成を増進させるまたは促進するのに使用される生分解性または生体適合性の物体または構造体であり、例えば、細胞増殖のテンプレートを提供する三次元の多孔質構造体とし得る。足場材料の説明に役立つ例は、リン酸カルシウム、コラーゲン、PLA/PGA、コーラルヒドロキシアパタイト(coral hydroxy apatite)、カーボネート、または加工された同種移植片材料を含む。
【0031】
ドレープ108はシール部材を含み得る。シール部材は、2つの構成要素間または2つの環境間、例えば密閉された治療環境と局所的な周囲環境との間に流体シールをもたらし得る材料から構成され得る。シール部材は、例えば、所与の減圧源に関して減圧を組織部位において維持するのに適切なシールをもたらし得る、不透過性または半透過性のエラストマー性材料とし得る。半透過性材料に関し、透過性は、一般的に、所望の減圧が維持され得るように十分に低い必要がある。ドレープ108は、さらに、シール部材を取付面、例えば無傷の表皮、ガスケット、または別のシール部材に取り付けるために使用され得る取付装置を含み得る。取付装置は、多くの形態をとり得る。例えば、取付装置は、シール部材の周辺、一部分、または全体に延在する、医学的に容認できる感圧接着剤とし得る。取付装置の他の例示的な実施形態は、両面テープ、糊、親水コロイド、ヒドロゲル、シリコーンゲル、オルガノゲル、またはアクリル接着剤を含み得る。
【0032】
より具体的に、
図2を参照すると、パウチ112は、吸収部材124と、第1の外層、例えば上流層126と、第2の外層、例えば下流層128とを含み得る。上流層126および下流層128は、減圧によって上流層126を通じて引き込まれた体液を吸収する吸収部材124を包むまたは囲む。
【0033】
吸収部材124は、吸収材料で形成されてもまたはそれを含んでもよい。吸収材料は、組織部位106から収集され得る流体を保持する、安定にする、および/または凝固させるように機能する。吸収材料は、「ヒドロゲル」、「超吸収剤」、または「親水コロイド」と称するタイプのものとし得る。吸収材料は、ドレッシング102内に配置される場合、繊維状または球体状に形成されて、吸収部材124が飽和されるまで減圧を多岐的に分配し(manifold)得る。繊維間または球体間の空間またはボイドによって、ドレッシング102に供給される減圧が、吸収部材124内を通って、マニホールド110および組織部位106まで移されることができるようにし得る。一部の例示的な実施形態では、吸収材料は、1平方メートル当たり800グラム(gsm)の物質密度を有するTexsus FP2325とし得る。他の例示的な実施形態では、吸収材料は、BASF 402C、Technical Absorbents(www.techabsorbents.com)から入手可能なTechnical Absorbents 2317、ポリアクリル酸ナトリウム超吸収体、セルロース系材料(カルボキシメチルセルロース、およびCMCナトリウムなどのカルボキシメチルセルロース塩)、またはアルギン酸とし得る。
【0034】
一部の例示的な実施形態では、吸収材料は、紙基材上に散布させて被覆され得る粒状の吸収性構成成分で形成され得る。散布被覆は、テキスタイル基材、例えば紙の上に粒状の吸収性粉体を均一に広げることを含む。上に粒状の吸収性粉体が配置された基材は、粉体を硬化させるためにオーブンに通過させられて、粉体が紙基材に接着するようにし得る。硬化した粒状の吸収性粉体および基材は、カレンダー機を通過させられ、吸収材料に滑らかで均一な表面をもたらすようにし得る。散布被覆プロセスを使用して形成され得る吸収材料は、取り扱いの最中に、部分的な吸収材料の損失を生じる。吸収材料の損失は、吸収材料を組織部位に近接して位置決めしている間に、吸収材料を製造施設から使用施設へ運搬する間に、または吸収材料のみで形成されたパウチの製造プロセスの最中に、発生し得る。
【0035】
一部の例示的な実施形態では、上流層126および下流層128の周囲の寸法は、吸収部材124の周囲の寸法よりも大きいとし得るため、吸収部材124が上流層126と下流層128との間に位置決めされ、かつ吸収部材124、上流層126、および下流層128の中心部分が整列される場合、上流層126および下流層128は、吸収部材124の外周を越えて延在し得る。一部の例示的な実施形態では、上流層126および下流層128は、吸収部材124を取り囲む。上流層126および下流層128の外縁部分は結合され得るため、上流層126および下流層128は吸収部材124を囲んで包み込む。上流層126および下流層128は、例えば、高周波溶接、超音波溶接、熱溶接、またはインパルス溶接によって結合され得る。他の例示的な実施形態では、上流層126および下流層128は、例えばボンディングまたは折り畳みによって結合され得る。
【0036】
より具体的に
図2および
図3を参照すると、上流層126は、第1の側面、例えば疎水性側面130と、第2の側面、例えば親水性側面132とを有し得る。親水性側面132は、吸収部材124に隣接して位置決めされ得るため、上流層126の疎水性側面130はまた、パウチ112の上流側面である。上流層126は、厚さ138を有する不織材料で形成され得る。一部の例示的な実施形態では、上流層126は、ポリエステルの繊維状多孔質構造を有し得る。上流層126は多孔質とし得るが、好ましくは穿孔されていない。上流層126は、約80gsmの物質密度を有する。他の例示的な実施形態では、物質密度は、パウチ112の特定の適用例に依存して、それよりも低くてもまたは高くてもよい。上流層126は、例えば、Libeltex TDL2で形成し得る。
【0037】
疎水性側面130は、マニホールド110からの体液を、パウチ112の上流表面領域にわたって分配するように構成され得る。疎水性側面130はまた、ウィッキングすなわち吸い上げ側面、吸い上げ面、分配面、分配側面、または流体分配面と称し得る。疎水性側面130は、上流層126を通って上流層126のグレーンに沿って流体を移動させ、上流層126全体に流体を分配するように構成された、滑らかな分配表面とし得る。親水性側面132は、疎水性側面130から体液を獲得して、吸収部材124への体液の動きを支援するように構成され得る。親水性側面132はまた、流体獲得面、流体獲得側面、親水性獲得面、または親水性獲得側面と称し得る。親水性側面132は、繊維性表面としてもよく、かつ上流層126に流体を引き入れるように構成され得る。
図3に別個の構成要素として示すように、上流層126の親水性側面132および疎水性側面130は、上流層126の対向側面であり得、および説明を容易にするために別個の構成要素として示す。
【0038】
下流層128は、第1の側面、例えば疎水性側面134と、第2の側面、例えば親水性側面136とを有し得る。疎水性側面134は、吸収部材124に隣接して位置決めされ得るため、下流層128の親水性側面136はまた、パウチ112の下流側面である。下流層128は、厚さ140を有する不織材料で形成され得る。一部の例示的な実施形態では、下流層128は、ポリエステルの繊維性多孔質構造を有し得る。下流層128は多孔質とし得るが、好ましくは穿孔されていない。下流層128は、約150gsmの物質密度を有し得る。他の例示的な実施形態では、物質密度は、パウチ112の特定の適用例に依存して、それよりも低くても、または高くてもよい。下流層128の物質密度は、上流層126の物質密度よりも高いとし得る。下流層128の厚さ140は、上流層126の厚さ138よりも厚いとし得る。
図2および
図3に示す例示的な実施形態では、厚さ140は、厚さ138よりも約3倍厚いとし得る。下流層128は、Libeltex TL4で形成され得る。他の例示的な実施形態では、下流層128は、Libeltex TDL2で形成され得る。
【0039】
疎水性側面134は、上流層126の親水性側面132から吸収部材124の反対側に、吸収部材124に隣接して配置され得る。疎水性側面134は、吸収部材124に含まれない体液を、下流層128の親水性側面136に分配するように構成され得る。疎水性側面134はまた、吸い上げ側面、吸い上げ面、分配面、分配側面、または流体分配面と称し得る。疎水性側面134は、流体を、下流層128を通して下流層128のグレーンに沿って移動させ、流体を下流層128全体に分配するように構成された、滑らかな分配面とし得る。親水性側面136は、疎水性側面134によって吸収部材124から吸い上げられた過剰な体液を獲得するように構成され得る。親水性側面136はまた、流体獲得面、流体獲得側面、親水性獲得面、または親水性獲得側面と称し得る。親水性側面136は、繊維性表面としてもよく、および下流層128に流体を引き入れるように構成され得る。
図3には別個の構成要素として示すが、疎水性側面134および親水性側面136は、下流層128の対向側面であり得、および記載した例示的な実施形態の説明を助けるために、別個の構成要素として示し得る。
【0040】
本明細書で説明するように、上流層126および下流層128は、吸収部材124を収容し、パウチ112の製造、配送、および使用の最中の吸収材料の損失を低減させる。吸収材料を封じ込めることは、パウチ112が製造プロセスの最中に移動され得るときの、粒状の吸収性構成成分の損失を防止する。さらに、上流層126および下流層128から形成されたパウチ112に吸収材料を封じ込めることは、例えば、パウチ112を組織部位106に隣接して配置するかまたはパウチ112を治療システム100内に位置決めする間の、パウチ112の使用の最中の粒状の吸収性構成成分の損失を低減させ得る。そのうえ、パウチ112を組織部位106において使用する場合、吸収材料を封じ込めることによって、粒状の吸収性構成成分の組織部位106への移動を制限し得る。
【0041】
組織部位106が小さい場合、パウチ112は、マニホールド110が減圧を組織部位106に分配することを支援し得る。上流層126および下流層128は、吸収部材124を囲み、減圧を組織部位106に多岐的に分配し、および組織部位106から吸収部材124へ流体を吸い上げ得る。パウチ112は、小さな組織部位106を治療するときに経験され得る、囲み、多岐的に分配し、および吸い上げることの難しさが増したことに対応し得る。さらに、パウチ112は、吸収部材124を形成するために、散布被覆された吸収材料を使用することに関連付けられた構造的完全性が失われるのを防止し、構造的完全性が失われることは、パウチ112の交換をより頻繁に行うようにすることが多いとし得る。
【0042】
減圧を行っている最中、吸収材料を含む一部のパウチは、吸収部材自体内への流体の流入点において飽和する傾向を有する。1つの領域における吸収材料が、他の領域において吸収材料が飽和する前に飽和する場合、吸収材料は、流体を、流入点から、飽和していない可能性がある吸収材料の領域に移動させる能力が低くなる。さらに、組織部位に分配される減圧の量は、減少される可能性があり、減圧を使用することの治療効果が低下する。小さな組織部位または少量の滲出液を生じる組織部位に隣接して配置させるためにパウチのサイズが小さくなる場合、パウチの吸収能力はさらに低下され得る。そのようなパウチの吸収能力が低下される場合、より頻繁にドレッシングを交換する必要があり、それにより、減圧療法を供給するコストが増加し得る。
【0043】
本明細書で開示するように、治療システム100は、
図2〜3に関して上述したようなパウチ112を提供することによって、これらのおよび他の欠点を克服する。有効な例示的な実施形態では、パウチ112によって受け入れられる流体の流れの速度は、比較的長期間、比較的ゆっくりとし得る。上流層126の疎水性側面130をマニホールド110に隣接して配置することにより、疎水性側面130の疎水性によって、疎水性側面130のグレーン(図示せず)に沿って上流層126の幅にわたって流体を移動させることができるようにし得る。流体の移動は、マニホールド110に平行であり、かつ減圧の最も強い点から離れるようにされ得る。このウィッキング作用によって、組織部位106から引き入れた流体をより広い領域にわたって広げる。流体が上流層126を通って疎水性側面130から吸収部材124の方へ移動するとき、流体は親水性側面132に到達する。親水性側面132は、流体を吸収部材124に引き入れる。親水性の勾配は、流体が吸収部材124の方へ下流に移動するとき、疎水性側面130から親水性側面132へ増加する。
【0044】
動作中、下流層128の厚さ140の増加および物質密度の増加は、上流層126およびマニホールド110への減圧の分配を支援する。例示的な一実施形態では、上流層126は、約80gsmの密度を有してもよく、および下流層128は、約150gsmの密度を有してもよいため、上流層126に対する下流層128の相対的厚さは、約1.875とし得る。他の例示的な実施形態では、下流層128の相対的厚さは、他の減圧療法の適用例に関しては、約1.5〜約3.0の範囲に収まり得る。下流層128による減圧の分配は、上流層126の疎水性側面130のウィッキング作用を支援するため、組織部位106から引き出された流体は、ドレッシング102により均一に分配され得る。同様に、組織部位106から引き出された流体のより均一な分配は、吸収部材124をより有効利用できるようにし、ドレッシング102の交換までの時間を延長し、および同量の流体を吸収するために必要とされるドレッシングがより少数となり得るため、コストを削減する。
【0045】
本明細書で説明するように、上流層126および下流層128の位置決めは、吸収部材124の有効利用を増やすように、上流層126および下流層128のグレーンを方向付け得る。減圧源104に近接して親水性側面136を配置することによって。親水性側面126はまた、コネクタ122の主フィルタ121の遮断を防止するのを支援し得る追加的なフィルタ機構の機能を果たし得る。ドレッシング102が減圧を多岐的に分配できる持続期間も延長され得る。ウィッキング機能をもたらす材料を使用することによって、入手可能な吸収材料の有効利用を改善できる。
【0046】
流体を吸い上げかつ減圧を多岐的に分配する層の使用は、入手可能な吸収材料を制御して使用できるようにする。流体を分配するためにより多くの流体経路を使用し得るため、上述のように配置された層は、減圧を分配し、流体が、パウチの吸収部材により均一に分配されるようにし、吸収部材の吸収材料を飽和させるのに必要な総時間を増やし得る。異なる親水性を有する構造を備えるパウチを形成するための層の使用は、パウチの吸収部材に入る流体を、より良好に制御できるようにする。異なる塗布量を有する層の使用は、パウチの特性を、技術的に優れかつコスト効率が高い解決法における適用例に適合できるようにする。開示の解決法は、追加的な吸収材料を必要とせずに、容量に達成し得る前の吸収レベルをより高くする。
【0047】
本明細書で説明したシステムおよび方法は、重要な利点をもたらし、そのうちの一部を既に説明した。例えば、治療システムは、材料効率を高め、低コストであり、および減圧の多岐的な分配においてより良好に機能する。開示の例示的な実施形態はまた、インライン式キャニスター、例えば、ドレッシングの外部に配置された流体吸収パウチまたは流体吸収キャニスターと一緒に使用し得る。
【0048】
重要な利点を有する発明が提供されたことが上記から理解されたい。いくつかの形態のみを示すが、説明したシステムおよび方法は、その趣旨から逸脱することなく、様々な変更および修正を行われる。
【0049】
説明に役立つ非限定的で例示的ないくつかの実施形態を提示したが、添付の特許請求の範囲から逸脱せずに、様々な変更、代替、置換、および修正をなし得ることを理解されたい。いずれかの一つの例示的な実施形態に関連して説明され得る任意の特徴はまた、任意の他の例示的な実施形態にも適用可能であり得ることを理解されたい。
【0050】
上述の利益および利点は、例示的な一実施形態に関連し得ること、またはいくつかの例示的な実施形態に関連し得ることも理解されたい。「1つの(an)」品目への言及は、1つ以上のそれら品目を指すことをさらに理解されたい。
【0051】
本明細書で説明した方法のステップは、任意の好適な順序で、または適切な場合には、同時に実施し得る。
【0052】
適切な場合には、上述の任意の例示的な実施形態の特徴を、説明の他の任意の例示的な実施形態の特徴と組み合わせて、類似のまたは異なる特性を有しかつ同じまたは異なる問題に対処する別の例を形成する。
【0053】
上述の好ましい例示的な実施形態は例示にすぎず、当業者は様々な修正をなし得ることを理解されたい。上述の明細書、例、およびデータは、本発明の例示的な実施形態の構造および使用の完全な説明を提供する。本発明の様々な例示的な実施形態を、ある程度詳細に、または1つ以上の個々の例示的な実施形態を参照して上記で説明したが、当業者は、特許請求の範囲から逸脱せずに、開示の例示的な実施形態に多数の修正をなすことができる。