【実施例1】
【0032】
本発明の第1実施形態の平坦化加工装置を
図3及び
図4に示す。本実施形態の平坦化加工装置は、中心部に開口7を設けるとともに、ラジカルに対して耐食性と吸着能を備えた表面を有する水平な回転定盤工具1と、前記回転定盤工具1の表面に対して所定ギャップを設けて配置した電極ヘッド2と、前記電極ヘッド2に少なくともラジカルを生成する元素若しくは置換基を含むガスと希ガスを混合した反応ガスを供給するガス供給手段3と、前記電極ヘッド2に高周波電界を印加して前記ギャップでプラズマを発生させる高周波電源4と、プラズマ発生領域Pで生成したラジカルを吸着して反応活性種が付与された前記回転定盤工具1の表面の回転方向前方に被加工物Wを保持し、該被加工物Wを所定圧力(接触圧力P
L)で回転定盤工具1の表面に接触させるワークホルダー5と、を備え、被加工物Wの表面を平坦化加工するものである。ここで、加工雰囲気の圧力P
Gは、大気圧を基本とするが、減圧雰囲気であっても良い。
【0033】
前記回転定盤工具1の表面には、無電解NiめっきによってNi層6を形成している。ここで、前記回転定盤工具1は接地され、加工基準面となるNi層6はアース電位となっている。前記回転定盤工具1の開口7の中心部に、前記電極ヘッド2の基部が垂直軸により支持され、ヘッド部が水平首振り可能になっている。前記電極ヘッド2は、
図4(a)、(b)に示すように、水平なアーム部8の基部をロータリージョイント9で保持し、ヘッド部10が前記回転定盤工具1の表面に所定のギャップで配置されている。更に、前記電極ヘッド2は、ロータリージョイント9からアーム部8及びヘッド部10に連続してガス流路11が形成され、前記ガス供給手段3の一部を構成している。前記電極ヘッド2のヘッド部10は、プラズマに曝されて損耗するので、交換可能な構造にすることが好ましい。前記電極ヘッド2は、ロータリージョイント9を中心に回転角度を変えることにより、前記ワークホルダー5に保持された被加工物Wとの間隔を調節できるようになっている。
【0034】
前記回転定盤工具1の回転駆動機構や前記ワークホルダー5の駆動機構は、従来の研磨装置と同様な構造であり、従来の研磨装置に前記電極ヘッド2とガス供給手段3及び高周波電源4を追加するだけで、本発明の平坦化加工装置を構成できる。しかも、本発明は、ドライエッチングであるので、水周りの構造は不要であり、装置構成を簡単にできる。
【実施例2】
【0035】
本発明の第2実施形態の数値制御加工装置を
図5に示す。本実施形態の数値制御加工装置は、回転軸20を備えるとともに、少なくとも外周部表面にラジカルに対して耐食性と吸着能を備えている球状回転工具21と、前記球状回転工具21の外周部22に対して所定ギャップGを設けて配置した電極23と、前記電極23に少なくともラジカルを生成する元素若しくは置換基を含むガスと希ガスを混合した反応ガスを供給するガス供給手段(図示せず)と、前記電極23に高周波電界を印加して前記ギャップGでプラズマを発生させる高周波電源24と、プラズマ発生領域Pで生成したラジカルを吸着して反応活性種が付与された前記球状回転工具21のプラズマ発生領域Pとは異なる外周部22を、被加工物Wの表面に所定圧力(接触圧力P
L)で接触させた状態で、前記球状回転工具21と被加工物Wとを相対的に数値制御走査する走査手段(図示せず)と、を備え、前記球状回転工具21と被加工物Wの接触部Cを被加工物Wの表面上で数値制御走査して任意形状に加工するものである。この場合、球状回転工具21の外周部22に吸着したラジカルに由来する反応活性種が、該球状回転工具21の回転に伴って前記被加工物Wとの接触部Cに輸送されるのである。本実施形態でも加工雰囲気の圧力P
Gは、大気圧を基本とするが、減圧雰囲気であっても良い。
【0036】
前記球状回転工具21は、文字通りの球状に限定されず、円板状若しくはタイヤ状の外周部22が円弧面を有する形状であれば良い。そして、被加工物Wの表面を任意形状に加工するには、前記球状回転工具21によって接触部Cで形成される単位加工痕のプロファイルを取得し、被加工物Wの表面における局所的な加工量のデータに基づき、前記接触部Cの滞在時間を規定するのである。実際には、繰り返し走査するので、走査速度を変えることによって、滞在時間を制御する。尚、数値制御走査は、前記球状回転工具21と被加工物Wの何れか一方を駆動することによって行う。
【0037】
<加工原理を実証するための加工実験1>
次に、前記平坦化加工装置を用いて、本発明の加工原理を実証する実験を行った。つまり、プラズマで発生したラジカルが回転定盤に吸着して、回転定盤の表面に付与された反応活性種が被加工物との接触部に供給されているかを確認するために行った基礎実験の結果を示す。
【0038】
ラジカル吸着工具として無電解Niめっきを20μm厚で施した回転定盤工具を用い、試料(シリコン基板)の上流約15mmの位置でHe:SF
6=99:1の反応ガス(圧力P
G:大気圧)のプラズマを発生させたときと発生させなかったときの試料表面の変化を比較した。試料はSiの10mm四方の基板の表面粗さの悪い面を用いた。試料は回転させずに回転定盤工具のみを回転させ、その回転速度は10rpmで、試料を回転定盤工具に押し付ける接触圧力P
Lは3kPaである。プラズマを発生させる際の実験条件を表1に示す。1時間毎に試料表面の表面粗さを評価した。表面粗さの評価方法としては、白色干渉計(Zygo社製 NewView 200)によって64×48(μm
2)の範囲で4つの観測点を計測した。
【0039】
【表1】
【0040】
先ず、プラズマを発生させない状態(電圧印加無し、反応ガスの供給無し)で加工した結果を
図6に示す。試料を回転速度10rpm、圧力3kPa下で加工を行い、1時間毎に表面粗さを計測した。
図6中の左欄に○で表示した基板中央部・上部・右部・左部の4点の加工前から3時間加工後までの白色干渉計(Zygo社製 NewView 200)像を
図6に示す。尚、Si基板の上部とは、前記電極ヘッド2に近い部分であり、以下同様とする。いずれの観測点においても表面粗さの改善が見られないことから、回転速度10rpm、接触圧力3kPaの加工条件では機械加工の作用がないことを確認できた。
【0041】
次に、プラズマを発生させた状態(電圧印加有り、反応ガスの供給有り)で加工した結果を
図7に示す。プラズマを表1の条件で発生させた状態で、試料を回転速度10rpm、接触圧力3kPa下で加工を行い、1時間毎に表面粗さを計測した。
図7中の左欄に○で表示した基板中央部・上部・右部・左部の4点の加工前から3時間加工後までの白色干渉計(Zygo社製 NewView 200)像を
図7に示す。Fラジカルに由来する反応活性種の作用により、いずれの観測点においても、表面粗さ(rms)が、加工前の400nm超から、3時間の加工後に10nm以下になり、大幅な改善が見られた。
【0042】
プラズマを発生させない場合の加工では表面粗さが改善されなかったことから、機械加工の作用は働いてないと考えられるため、プラズマ発生領域で生成したラジカルが研磨定盤の表面に吸着し、それが研磨定盤の回転に伴って試料表面に供給されていることが確認できた。試料表面をプラズマに直接曝すプラズマエッチングでは、除去レートが等方的であるため平坦化はできないが、回転定盤工具と電極間でプラズマを発生させることで、回転定盤工具にFラジカルを吸着させ、そのFラジカルに由来する反応活性種を回転定盤工具の回転に伴って試料表面に供給することで、試料表面の平坦化加工を実現した。今回の実験で、Fラジカルに由来する反応活性種が試料表面に供給されており、それによってSi基板の平坦化が行われていることが明らかとなった。
【0043】
<加工原理を実証するための加工実験2>
次に、前記平坦化加工装置を用いて、被加工物としてSiC基板を用いて同様の実験を行った結果を
図8に示す。プラズマ発生条件は表1に示したものと同じであるが、この場合のSiC基板の接触圧力P
Lは5kPaである。3時間の平坦化加工により、SiC基板の表面粗さ(rms)は、加工前の100nm超から10nm以下に平坦化された。Fラジカルの作用により、SiC基板もSi基板と同様に平坦化加工されることが確認された。
【0044】
<加工原理を実証するための加工実験3>
次に、反応ガスとして、HeとH
2O(水蒸気)の反応ガス(圧力P
G:大気圧)を用い、前記平坦化加工装置を用いて、被加工物としてSi基板(面積:0.59cm
2)の表面を加工した。プラズマ発生条件と加工条件は、表2に示している。この場合も、無電解Niめっきを20μm厚で施した回転定盤工具を用いた。Si基板の接触圧力P
Lは3.4kPaである。水蒸気を含む反応ガスは、
図9に示すように、密閉容器に水を入れ、水中でHeガスを噴出し、気相中でHeと水蒸気の反応ガスを回収して使用した。回転定盤工具1と電極ヘッド2とのギャップGは200μm、該電極ヘッド2から下流側のSi基板までの距離Lを15mmとした。
【0045】
【表2】
【0046】
先ず、プラズマを発生させない状態(電圧印加無し、反応ガスの供給無し)で加工した結果を
図10に示す。
図10中、上段はSi基板の上部、下段はSi基板の中央部の白色干渉計(Zygo社製 NewView 200)像であり、それぞれ左から順に、加工前、30分間の加工後、1時間の加工後を示している。この場合も、1時間経過してもSi基板の表面に殆ど変化がないことが分かる。
【0047】
次に、プラズマを発生させた状態(電圧印加有り、反応ガスの供給有り)で加工した結果を
図11に示す。
図11中、上段はSi基板の上部、下段はSi基板の中央部の白色干渉計(Zygo社製 NewView 200)像であり、それぞれ左から順に、加工前、30分間の加工後、1時間の加工後、1.5時間の加工後、2時間の加工後、3時間の加工後を示している。Si基板の上部では、加工前の表面粗さ(rms)が、加工前の167nmであったのが、1時間の加工後には22nm、3時間の加工後には16nmに改善していることが分かる。一方、Si基板の中央部では、加工前の表面粗さ(rms)が、加工前の184nmであったのが、1時間の加工後には48nm、3時間の加工後には16nmに改善していることが分かる。水蒸気プラズマを発生させたことにより、OHラジカルが生成し、このOHラジカルがSi基板表面の加工に寄与したものと考えられる。
【0048】
<加工原理を実証するための加工実験4>
最後に、前記平坦化加工装置を用いて、導電性の基体表面にアルミナ(Al
2O
3)をコーティングした回転定盤工具を用い、被加工物としてSi基板(面積:0.78cm
2)の表面を加工した。プラズマ発生条件と加工条件は、表3に示している。この場合、表1の条件と略同じであるが、回転定盤工具に対するSi基板の接触圧力P
Lを5.1kPaと大きくしている。また、回転定盤工具と電極ヘッドとのギャップGは600μm、該電極ヘッドから下流側のSi基板までの距離Lを15mmとした。
【0049】
【表3】
【0050】
先ず、先ず、プラズマを発生させない状態(電圧印加無し、反応ガスの供給無し)で加工した結果を
図12に示す。この場合、接触圧力P
Lが1kPaでも機械的な加工ラインが発生し、全く平坦化加工ができないことが分かった。加工ラインが発生した原因は、Si基板のエッジが欠けて発生した微細なSi屑が、前記回転定盤工具とSi基板の間に挟まってSi基板の表面を傷付けているからと推測できる。
【0051】
次に、プラズマを発生させた状態(電圧印加有り、反応ガスの供給有り)で加工した結果を
図13に示す。
図13中、上段はSi基板の上部、下段はSi基板の下部の白色干渉計(Zygo社製 NewView 200)像であり、それぞれ左から順に、加工前、30分間の加工後、1時間の加工後、1.5時間の加工後を示している。Si基板の上部では、加工前の表面粗さ(rms)が、加工前の547nmであったのが、30分の加工後には72nmと大幅に改善し、1時間の加工後には21nm、1.5時間の加工後には24nmに改善していることが分かる。一方、Si基板の下部では、加工前の表面粗さ(rms)が、加工前の592nmであったのが、30分の加工後では470nmとあまり改善していないが、1時間の加工後には80nm、1.5時間の加工後には40nmに改善していることが分かる。
【0052】
この加工実験によって、アルミナ工具を用いてもSi基板が平坦化加工できたことを示している。アルミナ工具は、表面の安定性に優れており、経時劣化が少ないので、実用化において有利である。尚、回転定盤工具に対するSi基板の接触圧力P
Lを5.1kPaとしても、機械的な加工ラインが発生しないのは、回転定盤工具に付着していた微細なSi屑がプラズマ発生領域を通過する際に、プラズマエッチングにより除去されたものと推測できる。
【0053】
以上の実施例では平坦化加工と、球状回転工具による数値制御加工への適用例を示したが、他にもワイヤー走行工具による溝加工等、ラジカル吸着工具の形状によって種々の応用が可能と考えられる。また、ダイヤモンド工具や宝石も平面加工あるいは鋭角形状に加工することも可能になる。