(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6692011
(24)【登録日】2020年4月16日
(45)【発行日】2020年5月13日
(54)【発明の名称】多孔質体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 9/28 20060101AFI20200427BHJP
【FI】
C08J9/28 102
C08J9/28CEZ
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-196707(P2016-196707)
(22)【出願日】2016年10月4日
(65)【公開番号】特開2018-58981(P2018-58981A)
(43)【公開日】2018年4月12日
【審査請求日】2019年10月3日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
(72)【発明者】
【氏名】内田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】童銅 はる香
【審査官】
石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】
中国特許出願公開第103746086(CN,A)
【文献】
特表平05−508106(JP,A)
【文献】
特表2015−526603(JP,A)
【文献】
特許第5988121(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00−9/42
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小なポリ(p−フェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維を分散させた分散水溶液を凍結乾燥させて成る多孔質体の製造方法であって、
前記分散水溶液を凍結乾燥させる際に、前記分散水溶液を有底筒状の金属製の容器に貯留して、前記分散水溶液を-20〜0℃とした氷点下空間内に静置することで前記分散水溶液を下方から上方に向けて凍結させ、その後、減圧することで水を昇華させる多孔質体の製造方法。
【請求項2】
前記分散水溶液に分散させた前記ポリ(p−フェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維は、ポリ(p−フェニレンベンゾビスオキサゾール)を溶解させた結晶化溶液を冷却することで析出させたポリ(p−フェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維であって、前記結晶化溶液からろ別した前記ポリ(p−フェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維を水に分散させて前記分散水溶液としている請求項1に記載の多孔質体の製造方法。
【請求項3】
前記分散水溶液を前記金属製の容器に貯留する前に、前記分散水溶液にホモジナイザーによる解繊処理を行っている請求項1または請求項2に記載の多孔質体の製造方法。
【請求項4】
前記分散水溶液の前記ポリ(p−フェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維の濃度を0.3〜1.3wt%としている請求項1〜3のいずれか1項に記載の多孔質体の製造方法。
【請求項5】
前記結晶化溶液から前記ポリ(p−フェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維をろ別する際に耐酸性のフィルターを用いてろ過するとともに、この濾過によってろ別された前記ポリ(p−フェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維を水で洗浄した後に水に分散させて前記分散水溶液とした場合には、前記分散水溶液の前記ポリ(p−フェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維の濃度を0.3wt%以下としている請求項2に記載の多孔質体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質体の製造方法に関し、特に、微小なポリ(p−フェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維で構成される多孔質体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、繊維強化複合材料の一つとして、ポリ(p−フェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維を用いた繊維強化複合材料が知られている。
【0003】
ポリ(p−フェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維は、剛直分子鎖となっていることで、優れた力学的性質及び高耐熱性を有していることが知られており、このポリ(p−フェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維同士、あるいはポリ(p−フェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維と他の適宜の繊維とを交互に配置して、これにエポキシ樹脂の混合溶液に含浸させた後、100℃で10分間、乾燥させることでプリプレグとして使用されている。
【0004】
ポリ(p−フェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維は、一般的に、紡糸口金からの連続押出法で形成されることから糸状となっているが、いわゆるナノファイバーと呼ばれるような微細繊維を連続押出法で形成することは不可能であり、また、それ以外の方法で繊維化する方法も知られていなかった。
【0005】
そこで、本発明者の一人は、鋭意研究開発を行うことで、ナノファイバー化したポリ(p−フェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維を作製することに成功した。ここで、ナノファイバーとは、長手状となっている繊維体の長手方向と直交する方向の寸法が1nm〜1μmであるものをいうこととする。
【0006】
ナノファイバー化したポリ(p−フェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維を作製する際には、まず、ポリ(p−フェニレンベンゾビスオキサゾール)を硫酸等に完全に溶解させて溶解液を作製し、次いで、この溶解液を0.2℃/分以上の速度で急冷することで作製している(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
以下において、説明の便宜上、ポリ(p−フェニレンベンゾビスオキサゾール)を「PBO」と呼ぶこととし、ポリ(p−フェニレンベンゾビスオキサゾール)のナノファイバー、またはナノファイバー化されたポリ(p−フェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維を「PBOナノファイバー」と呼ぶこととする。
【0008】
さらに、本発明者の一人は、上述した方法で作成したPBOナノファイバーを含む硫酸溶液を多量の蒸留水で希釈して希釈溶液とし、この希釈溶液に対してメンブレンフィルターを用いた減圧ろ過を行うことでPBOナノファイバーを回収可能としている。
【0009】
しかも、メンブレンフィルターでろ別されたPBOナノファイバーは、メンブレンフィルターでサンドイッチ状に挟んで真空加熱プレス機でプレス加工することでマットを作成可能としている。このマットの空隙率は、マットの見かけ密度が1.1±0.1[g/cm
3]であったことから、28.7±4.2[%]であった。ここで、見かけ密度から空隙率を算出する方法は、PBOの密度が1.54[g/cm
3]であることを用いて、[1−(見かけ密度/1.54)]×100により算出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2015−110854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述した方法で作製したPBO製のマットは、マット状とはなっているものの、空隙率が小さく、この空隙率を大きくした多孔質体を作製できないかと考え、本発明を成すに至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の多孔質体の製造方法では、微小なPBO繊維を分散させた分散水溶液を凍結乾燥させて成る多孔質体の製造方法であって、分散水溶液を凍結乾燥させる際に、分散水溶液を有底筒状の金属製の容器に貯留して、分散水溶液を-20〜0℃とした氷点下空間内に静置することで分散水溶液を下方から上方に向けて凍結させ、その後、減圧することで水を昇華させているものである。
【0013】
さらに、本発明の多孔質体の製造方法は、以下の点にも特徴を有するものである。
(1)分散水溶液に分散させたポリ(p−フェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維は、ポリ(p−フェニレンベンゾビスオキサゾール)を溶解させた結晶化溶液を冷却することで析出させたポリ(p−フェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維であって、結晶化溶液からろ別したポリ(p−フェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維を水に分散させて分散水溶液としていること。
(2)分散水溶液を金属製の容器に貯留する前に、分散水溶液にホモジナイザーによる解繊処理を行っていること。
(3)分散水溶液のポリ(p−フェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維の濃度を0.3〜1.3wt%としていること。
(4)結晶化溶液からポリ(p−フェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維をろ別する際に耐酸性のフィルターを用いてろ過するとともに、この濾過によってろ別されたポリ(p−フェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維を水で洗浄した後に水に分散させて分散水溶液とした場合には、分散水溶液のポリ(p−フェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維の濃度を0.3wt%以下としていること。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、空隙率が90%以上である高空隙率の多孔質体を作製でき、PBOが難燃性であることから、難燃性の断熱材あるいは吸音材等の材料として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る多孔質体の熱重量分析の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の多孔質体の製造方法は、高空隙率の多孔質体であって、特に、微小なPBO繊維を分散させた分散水溶液を凍結乾燥させて成る多孔質体の製造方法である。以下において、実施例を示しながら詳説する。
【0017】
なお、微小なPBO繊維とは、PBOナノファイバーであって、長手方向の長さ寸法が0.01μm以上で、長手方向と直交する方向の寸法が1nm〜1μmとなっているPBOの繊維体であり、以下の手順で作製することができる。ただし、PBOナノファイバーの作製方法は、下記の方法に限定するものではなく、別の方法で作成してもよい。特に、以下の説明において、必要に応じて具体的な数値条件等を示しながら説明を行うが、後述する溶解液を冷却する際の冷却速度の限界値以外は提示した条件に限定するものではなく、状況等に応じて適宜調整してよい。
【0018】
<PBOナノファイバーの製造方法>
PBOナノファイバーは、窒素雰囲気下で硫酸に原料としてのPBOを溶解させて溶解液を作製した後に、この溶解液を0.2℃/分以上の速度で冷却することで、ナノファイバーとして析出させて作製している。
【0019】
原料としてのPBOは、既知の合成方法で合成してもよいし、東洋紡株式会社製の商品名「ザイロン」等の市販のPBOを用いてもよい。ここでは、ポリリン酸を重合触媒として用いて、4,6-ジアミノレゾルシノールとテレフタル酸とを縮合重合させることで合成したPBOを用いた。このPBOは、固有粘度10.7dL/g、重量平均分子量16600、重合度71、平均分子鎖73nmであった。なお、詳しくは説明しないが、固有粘度28.0dL/gのPBOを用いた場合であっても、以下に説明する多孔質体と同様の多孔質体を作製できた。
【0020】
まず、PBOと硫酸を用いてPBOを完全に溶解させた溶解液である結晶化溶液を作製した。この結晶化溶液は、PBO濃度を0.1wt%とし、硫酸濃度を94.5wt%とした。具体的には、ナスフラスコにPBOを入れ、このナスフラスコに98重量%硫酸を注入し、窒素雰囲気下で、120℃のオイルバスで加熱することでPBOを完全に溶解させて結晶化溶液とした。窒素雰囲気とするのは、硫酸の吸湿を防止するためである。
【0021】
ここでは硫酸を用いているが、硫酸ではなく、メタンスルホン酸、クロロスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ポリリン酸あるいは金属ハロゲン化物ルイス酸を用いることもできる。また、硫酸を用いる場合には、できるだけ高濃度の硫酸とすることでPBOの溶解を進めやすくすることができる。ただし、PBOが完全に溶解した後には、硫酸によるPBOの分子量の低下が生じることを抑制するために、硫酸濃度を下げることが望ましい。なお、硫酸濃度を下げることでPBOの析出が生じた場合には、窒素雰囲気下で、120℃のオイルバスで加熱することで析出物を溶解させることができる。
【0022】
PBOが溶解されている結晶化溶液を急冷することで、PBOナノファイバーを析出させることができる。なお、急冷するに当り、まず、結晶化溶液をゆっくりと冷却することで結晶化溶液に白い濁りが生じた状態となり、その後に急冷することが望ましい。ここで、急冷前のゆっくりとした冷却は、0.1℃/分程度の冷却速度が望ましく、急冷は、0.2℃/分以上の冷却速度とすることが望ましい。結晶化溶液に生じる白い濁りは、PBOナノファイバーの析出によるものである。ここでは、結晶化溶液を急冷するために、溶解液の入っているナスフラスコを水と氷で作製した氷浴に入れることで急冷した。
【0023】
結晶化溶液の冷却時には、硫酸の吸湿を抑制するために窒素雰囲気下で行うことが望ましい。このようにPBOが溶解された結晶化溶液を急冷することで、長手方向の長さ寸法が0.01μm以上で、長手方向と直交する方向の寸法が1nm〜1μmのPBOナノファイバーを作製することができる。
【0024】
<分散水溶液の作製>
急冷した結晶化溶液液は濃硫酸溶液であるため、以下の方法で結晶化溶液を希釈した。まず、1.5リットルの蒸留水入りのビーカーを氷浴に入れて、蒸留水を冷却及び撹拌しながらPBOナノファイバーが析出している結晶化溶液を蒸留水中に滴下した。すなわち、結晶化溶液の濃硫酸が蒸留水と反応することで生じる熱でPBOナノファイバーが溶解することを抑制ながら結晶化溶液を希釈して、PBOナノファイバーを含有した希釈溶液とした。
【0025】
次いで、メンブレンフィルター(メルク株式会社(以前の日本ミリポア株式会社を吸収合併)社製、型番JAWP04700)を用いて希釈溶液の減圧ろ過を行って、PBOナノファイバーをろ別した。このろ別したPBOナノファイバーを蒸留水に入れてメンブレンフィルターを用いた減圧ろ過を行うことを複数回繰り返し、PBOナノファイバーを蒸留水に入れた際の蒸留水が中性となるまで繰り返すことで洗浄した。
【0026】
洗浄したPBOナノファイバーを所定量の蒸留水に入れてPBOナノファイバーの分散水溶液とした。このPBOナノファイバーの分散水溶液は、後述する凍結乾燥を行う前に、ホモジナイザー(IKA製、T18 basic)を用いて3,600 rpmで30分間の解繊処理を行い、さらに、超音波照射を1時間行って、より均一な水分散液とした。以下における説明の便宜上、上記のように結晶化溶液を蒸留水中に滴下することで急冷して作製したPBOナノファイバーの分散水溶液を「急冷分散水溶液」と呼ぶこととする。
【0027】
また、PBOナノファイバーの分散水溶液の別の作製方法として、以下の方法を用いることもできる。
【0028】
濃硫酸溶液である急冷した結晶化溶液液を耐酸性のガラスフィルター(孔径4〜5.5μm)でろ過し、残留物に水を加えて中性になるまで洗浄することでPBOナノファイバーをろ別し、このろ別されたPBOナノファイバーを蒸留水に入れて、ホモジナイザー(IKA製、T25 digital)を用い 5,000 rpmで30分間の解繊処理を行い、超音波照射を1時間行っても分散水溶液を作製できる。以下における説明の便宜上、濃硫酸溶液をろ過して作製したPBOナノファイバーの分散水溶液を「硫酸ろ過分散水溶液」と呼ぶこととする。
【0029】
<分散水溶液の凍結乾燥>
まず、PBOナノファイバーの分散水溶液を底面が直径50mmの円形となっているシャーレに10g貯留して、庫内温度を-18〜-22℃とした冷凍庫内にシャーレを静置した。ここで、PBOナノファイバーの分散水溶液は、急冷分散水溶液でも、硫酸ろ過分散水溶液でも同じである。
【0030】
PBOナノファイバーの分散水溶液を貯留させる容器は、金属製であることが望ましく、本実施形態ではステンレスシャーレを用いた。金属製の容器は、容器の熱伝導率が高いため、容器の温度が全体的に均一となり、容器に接触した分散水溶液の接触面を均一な温度として冷却することができる。本実施例では、円形のステンレスシャーレを用いているが、容器は、底面が必ずしも円形状である必要はなく、任意の形状であってもよい。
【0031】
ステンレスシャーレに貯留させた分散水溶液は、液面が冷凍庫の雰囲気と接触する開放状態としており、ステンレスシャーレ内の分散水溶液の氷結による膨張によって分散水溶液の液面が上昇することを妨げない状態としている。
【0032】
ステンレスシャーレに貯留されて、冷凍庫内に置かれたPBOナノファイバーの分散水溶液は、ステンレスシャーレが冷凍庫内の温度となることで、ステンレスシャーレとの接触面から凍結が開始される一方で、冷凍庫の雰囲気と接触している液面では熱エネルギーの移動が小さいことから凍結が起こりにくくなっている。したがって、ステンレスシャーレに貯留されたPBOナノファイバーの分散水溶液は、容器の底側から氷結が進み、氷結にともなって分散水溶液の液面が上昇しながら全体として氷結することとなっている。
【0033】
すなわち、PBOナノファイバーの分散水溶液を全体的に急速凍結させるのではなく、下方から上方に向けて凍結させていくことで、凍結した分散水溶液は単結晶的な氷、すなわち一様な氷とすることができる。特に、下方から上方に向けて凍結させていくことで生成された一様な氷では、内部に歪み応力等の応力が生じにくくなっているものと考えている。
【0034】
ここで「単結晶的な氷」とは、例えば液体窒素等を用いてPBOナノファイバーの分散水溶液を急速凍結させた場合に、いろいろな方向から凍結が生じることで多結晶的な氷となって、氷の結晶粒界が形成された状態となるが、このような結晶粒界が形成されていない、あるいは極めて少ない氷という意味である。
【0035】
本発明では、PBOナノファイバーの分散水溶液を下方から上方に向けて凍結させていくことで、内部に応力が残留していない一様な氷とすることができていると考えている。
【0036】
冷凍庫内でPBOナノファイバーの分散水溶液を凍結させる際に、当然ながら冷凍庫の雰囲気と接触している液面側からも凍結が生じる可能性がある。液面全体が分散水溶液の内部よりも先に凍結してしまうと、応力の閉じ込めを生じるおそれがあるため、冷凍庫内は、-20〜0℃とした氷点下空間として、液面をできるだけ最後に凍結させることが望ましい。
【0037】
なお、PBOナノファイバーの分散水溶液は、凍結前に脱泡処理を行ってもよい。以下において説明する各実施形態では、脱法処理を行っていない。
【0038】
一様に凍結した氷は減圧乾燥機(EYELA製,FDU−1200)に入れて水を昇華させ、乾燥させた。具体的には、減圧状態として10Paとし、24時間維持することで、乾燥させた。
【実施例1】
【0039】
急冷分散水溶液を用い、PBOナノファイバーの濃度を、0.01, 0.1, 0.25, 0.3, 0.5, 0.8, 1.0, 1.5wt%に調整した急冷分散水溶液をそれぞれ作製し、シャーレにそれぞれ10g貯留して凍結乾燥し、多孔質体を作製した。結果を下表に示す。
【表1】
【0040】
ここで、見かけ密度は、凍結乾燥させることで多孔質体となったPBOナノファイバー多孔質体の平均直径と、平均厚さと、重量を測定して算出した。また、空隙率は、PBOファイバーの繊維密度1.54 g/cm
3を用い、[1−(見かけ密度/1.54)]×100として算出した。
【0041】
また、比表面積測定は、全自動比表面積測定装置(Mountech製、Macsorb Model 1201)を用い、150℃で15分間脱気した後、窒素ガス流量25ml/minで測定を行った。
【0042】
上表に示すように、分散水溶液のPBOナノファイバーの濃度が0.25wt%以上において、マット状の多孔質体とすることができた。ただし、濃度が0.25wt%の場合には、乾燥中にPBOナノファイバーの飛散が生じたためか、一体的なマットにはならなかった。また、濃度が1.5wt%の場合には、作製された多孔質体において粉末部分も観察された。以上のことから、分散水溶液のPBOナノファイバーの濃度は0.3〜1.3wt%、好適には0.5〜1.0wt%とすることが望ましい。
【0043】
分散水溶液のPBOナノファイバーの濃度が0.8wt%である場合の多孔質体を用い、熱重量分析を行った結果を
図1に示す。5%重量減少時の温度は432℃であり、10%重量減少時の温度は546℃であって、高い耐熱性を有していることが確認できた。
【0044】
分散水溶液のPBOナノファイバーの濃度が1.0wt%である場合の多孔質体を用い、SEM観察を行った結果を
図2に示す。
図2に示すように、多孔質体は、PBOナノファイバーが絡まり合って多孔質体を形成していることが分かった。また、多孔質体中のPBOナノファイバーの太さは90±20 nmであり、ほぼ一本のPBOナノファイバーの太さと一致していることから、PBOナノファイバー同士は凝集せずに多孔質体を形成していることが分かった。特に、本発明の多孔質体では、分散したPBOナノファイバーが網目状に広がっていることで、高空隙率や高比表面積を生み出していると考えられる。
【実施例2】
【0045】
硫酸ろ過分散水溶液を用い、PBOナノファイバーの濃度を、0.025, 0.07wt%に調整した硫酸ろ過分散水溶液をそれぞれ作製し、シャーレにそれぞれ10g貯留して凍結乾燥し、多孔質体を作製した。結果を下表に示す。見かけ密度、空隙率及び比表面積は、急冷分散水溶液の場合と同様に計測した。
【表2】
【0046】
硫酸ろ過分散水溶液を用いることで、急冷分散水溶液を用いた場合よりもPBOナノファイバーの濃度が低濃度でも、高空隙率、高比表面積の多孔質体を作製することができた。