特許第6692023号(P6692023)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6692023血液凝固促進剤及びそれを用いた血液凝固機能検査薬
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6692023
(24)【登録日】2020年4月16日
(45)【発行日】2020年5月13日
(54)【発明の名称】血液凝固促進剤及びそれを用いた血液凝固機能検査薬
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/86 20060101AFI20200427BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20200427BHJP
【FI】
   G01N33/86
   G01N33/48 K
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-529048(P2016-529048)
(86)(22)【出願日】2015年6月16日
(86)【国際出願番号】JP2015003003
(87)【国際公開番号】WO2015194165
(87)【国際公開日】20151223
【審査請求日】2018年6月12日
(31)【優先権主張番号】特願2014-124960(P2014-124960)
(32)【優先日】2014年6月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000125347
【氏名又は名称】学校法人近畿大学
(73)【特許権者】
【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白石 浩平
(72)【発明者】
【氏名】岡野 こずえ
【審査官】 西浦 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/156216(WO,A1)
【文献】 特開平08−154697(JP,A)
【文献】 特開2006−200997(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/139863(WO,A1)
【文献】 Somnath C. Roy et al.,The effect of TiO2 nanotubes in the enhancement of blood clotting for the control of hemorrhage,Biomaterials,英国,Elsevier B.V.,2007年11月,Volume 28 / Issues 31,pp.4667-4672
【文献】 Wei-En Yang et al.,Nano/submicron-scale TiO2 network on titanium surface for dental implant application,Journal of Alloys and Compounds,Elsevier B.V.,2009年 6月24日,Volume 479 / Issues 1-2,pp.642-647
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にカルボキシル基が配向された粒子を含み、
前記粒子は、カルボキシル基を有するセルロースである血液凝固促進剤。
【請求項2】
前記粒子におけるカルボキシル基の表面密度は、0.5μmol/m2以上、50μmol/m2以下である、請求項1に記載の血液凝固促進剤。
【請求項3】
前記粒子は、平均粒径が10nm以上、10μm以下である、請求項1又は2に記載の血液凝固促進剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の血液凝固促進剤を含む、血液凝固機能検査薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、血液凝固促進剤及びそれを用いた血液凝固機能検査薬に関する。
【背景技術】
【0002】
血液中のフィブリノーゲンがフィブリンとなり、フィブリンネットワークが生成されることにより血液は凝固する。血液の凝固は種々の因子が関係する複雑な機構であり、これらの機構が正常に機能しているかどうかの検査は、手術前のスクリーニング検査や、血友病等の血液凝固異常症のスクリーニング検査等として重要である。
【0003】
血液凝固の検査として、クエン酸ナトリウム等の抗凝固剤を添加して採取した血液に、血液凝固の第IV因子であるカルシウムを加え、フィブリンが析出するまでの時間を測定する、カルシウム再加時間がある。カルシウム再加時間は、内因性凝固系の検査として容易であるが、感度及び精度が低い等の問題がある。
【0004】
感度及び精度を向上させた内因性凝固系の検査として、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)がある。APTTにおいては、カルシウムと共に部分トロンボプラスチン分画と呼ばれるリン脂質と、エラジン酸等からなる活性剤とを加えることにより、血液凝固反応を促進している。外因性凝固系の検査としては、組織トロンボプラスチンと呼ばれる蛋白質と、カルシウムとを用いるプロトロンビン時間(PT)がある。
【0005】
血液凝固に関する検査の精度向上又は感度向上を目的として検査薬の組成等について種々の改良が行われている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−058393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これらの検査薬は基本的に主要成分である血液の凝固を促進する薬剤として生体由来の成分を用いている。このため、検査薬ごとの測定値のばらつき及びロットごとの測定値のばらつきが問題となっている。
【0008】
これらの問題を解決するために、国際感度指数を用いた標準化も行われているが、国際感度指数を求めるためには大きな労力が必要である。また、不安定な成分が多く、経時的な変化も生じやすいため、使用現場において毎回校正が必要となる。
【0009】
本開示の課題は、安定した血液凝固作用を示す血液凝固促進剤及びそれを用いた血液凝固機能検査薬を実現できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の血液凝固促進剤の第1の態様は、表面にカルボキシル基が配向された粒子を含んでいる。
【0011】
血液凝固促進剤の第1の態様において、粒子におけるカルボキシル基の表面密度は、0.5μmol/m2以上、50μmol/m2以下とすることができる。
【0012】
血液凝固促進剤の第1の態様において、粒子は樹脂とすることができる。
【0013】
血液凝固促進剤の第1の態様において、樹脂は、カルボキシル基を有するモノマーに由来するモノマー単位を含んでいる構成とすることができる。
【0014】
血液凝固促進剤の第1の態様において、カルボキシル基を有するモノマーは、イタコン酸、アクリル酸及びメタアクリル酸の少なくとも一つとすることができる。
【0015】
血液凝固促進剤の第1の態様において、樹脂は、カルボキシル基を有するモノマーに由来するモノマー単位を10mol%以上含む重合体とすることができる。
【0016】
血液凝固促進剤の第1の態様において、粒子は、カルボキシル基を有するセルロースであってもよい。
【0017】
血液凝固促進剤の第1の態様において、粒子は、表面にアミノ基を有していてもよい。
【0018】
血液凝固促進剤の第2の態様は、スポンジ状酸化チタンの粒子を含んでいる。
【0019】
血液凝固促進剤の第2の態様において、スポンジ状酸化チタンの粒子は、表面積が50m2/g以上、1000m2/g以下とすることができる。
【0020】
血液凝固促進剤の第1の態様及び第2の態様において、粒子は、平均粒径が10nm以上、10μm以下とすることができる。
【0021】
血液凝固機能検査薬は、本開示の第1の態様及び第2の態様の血液凝固促進剤の少なくとも一方を含んでいる。
【発明の効果】
【0022】
本開示の血液凝固促進剤によれば、安定した血液凝固作用を実現することができ、安定した血液凝固機能検査薬を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1(a)及び図1(b)は、カルボキシル基が配向した表面による血液凝固の促進を説明する図であり、図1(a)はカルボキシル基が配向した表面を示す図であり、図1(b)はカルボキシル基が配向していない表面を示す図である。
図2図2は表面にカルボキシル基が配向された粒子を用いて凝固させた血漿の電子顕微鏡写真である。
図3図3は表面にカルボキシル基が配向された粒子を用いて凝固させた血漿の電子顕微鏡写真である。
図4図4はスポンジ状酸化チタン粒子を用いて凝固させた血漿の電子顕微鏡写真である。
図5図5は表面にPMPCを固定した粒子を用いて凝固させた血漿の電子顕微鏡写真である。
図6図6はカルシウム添加により凝固させた血漿の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本開示の血液凝固促進剤は、表面にカルボキシル基が配向された粒子を含む。血液凝固促進剤とは、脱カルシウム作用のある抗凝固剤を含む全血又は血漿に、カルシウムと共に加えることにより、カルシウム単独の場合よりも凝固反応を促進する薬剤である。表面にカルボキシル基が配向された粒子とは、外側に向けてカルボキシル基が配向し、粒子表面にカルボキシル基が露出している粒子である。
【0025】
カルボキシル基の表面密度は、特に限定されないが、0.5μmol/m2以上、好ましくは1.0μmol/m2以上、より好ましくは5.0μmol/m2以上、50μmol/m2以下、好ましくは25μmol/m2以下、より好ましくは10μmol/m2以下とすることができる。カルボキシル基の量は、電気伝導度滴定法により求めることができる。カルボキシル基の量をBET(Brunauer, Emmet and Teller)法等により測定した比表面積の値で割ることによりカルボキシル基の表面密度を求めることができる。
【0026】
粒子の平均粒径は、特に限定されないが、0.01μm以上、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上、10μm以下、好ましくは5μm以下、より好ましくは1μm以下とすることができる。平均粒径は、レーザ回折式粒度分布測定装置等により測定することができる。
【0027】
粒子は、球形であっても、フレーク状、鱗片状又はナノファイバ等であってもよい。また、中実であっても、中空であってもよく、細孔を有するポーラスな形状であってもよい。粒子の表面は平滑であっても、凹凸があってもよい。
【0028】
粒子は、安定して同一の特性のものが得られればどのようなものであってもよい。例えば、工業的に製造した粒子を用いることができる。安定して同一の特性のものが得られるのであれば、植物、動物又は微生物由来であってもよい。粒子は、樹脂等の有機物であっても、シリカ等の無機物であってもよい。また、粒子は固体であっても、ハイドロゲル又はリポソーム等のある程度の流動性を持った材料であってもよい。工業的に製造した粒子としては例えば合成高分子等が挙げられる。合成高分子は、例えばカルボキシル基を有するモノマー単位を含む重合体とすることができる。例えば、アクリル酸、メタクリル酸又はイタコン酸等のモノマーに由来するモノマー単位を含む重合体とすればよい。重合体は、カルボキシル基を有するモノマーからなるホモポリマーとしてもよく、2元又はそれ以上の共重合体としてもよい。重合体は、所定の粒径の粒子とすることができれば、架橋されていても、架橋されていなくてもよい。
【0029】
重合体は、カルボキシル基を有するモノマー単位を含んでいれば、他にどのようなモノマー単位を含んでいてもよい。例えば、スチレンに由来するモノマー単位を含んでいてもよい。アクリル酸メチル又はメタクリル酸メチル等のアクリル酸又はメタクリル酸のエステル等の疎水性のモノマーに由来するモノマー単位を含んでいてもよい。N−ビニルピロリドン、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)、メタクリル酸2−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アリルアミン、又はポリエチレングリコールマクロモノマー等の親水性のモノマーに由来するモノマー単位を含んでいてもよい。また、スルホン酸基又はリン酸基等を有するモノマー単位を含んでいてもよい。また、負電荷を有する官能基ではなく、アミノ基等の正電荷を有する官能基を有するモノマー単位を含んでいてもよい。
【0030】
重合体におけるカルボキシル基を有するモノマー単位の含有量は、特に限定されないが10mol%以上、好ましくは20mol%以上、より好ましくは50mol%以上とすることができる。カルボキシル基の表面密度が高いほど、凝集促進効果が高くなると考えられるため、すべてのモノマー単位がカルボキシル基を有するモノマー単位である重合体としてもよい。また、重合体におけるカルボキシル基を有するモノマー単位の含有量を95mol%以下としてもよく、90%以下としてもよく、80%以下としてもよい。カルボキシル基を有するモノマー単位の含有量を調整することにより、粒子の表面におけるカルボキシル基の密度を容易に調整することができる。
【0031】
カルボキシル基を有するモノマーを重合して、カルボキシル基を有する重合体とするのではなく、粒子を形成した後、粒子にカルボキシル基を導入してもよい。例えば、末端がアミノ基となったポリマーからなる粒子を形成した後、アミノ基をシュウ酸等のジカルボン酸又はクエン酸等のトリカルボン酸と反応させることにより、表面にカルボキシル基が配向された粒子を形成してもよい。この場合には、粒子の表面にアミノ基が残存してもかまわない。また、無水マレイン酸とスチレン等との共重合体を形成した後、無水マレイン酸を加水分解してカルボキシル基を導入することができる。
【0032】
合成高分子に代えて天然高分子又はそれを修飾したもの用いることもできる。例えば、カルボキシル基を導入したセルロースを用いることができる。セルロースとしては、例えば長さが数μm〜数十μmとなるように解砕したセルロースナノファイバを用いることができる。セルロースの解砕は、物理的方法、化学的方法又はその両方を用いることができる。セルロースへのカルボキシル基の導入は、例えば水酸基を酸化することにより行うことができる。中でも2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルラジカル(TEMPO)を用いた酸化が好ましい。カルボキシル基の導入は、セルロースの解砕後に行っても、解砕前に行ってもよい。また、解砕とカルボキシル基の導入とを同時に行ってもよい。
【0033】
表面にカルボキシル基が配向された粒子は、カルシウムと共に血液に添加することにより、血液の凝固反応をカルシウム単独の場合よりも促進することができる。血液の凝固を促進させる場合、表面にカルボキシル基が配向された粒子の血液中における濃度は、特に限定されないが0.5μg/mL以上、好ましくは5μg/mL以上、より好ましくは50μg/mL以上、1000μg/mL以下、好ましくは500μg/mL以下、より好ましくは250μg/mL以下とすることができる。この場合、カルシウムは、血液中における濃度が、0.5mmol/L以上、好ましくは1mmol/L以上、より好ましくは5mmol/L以上、100mmol/L以下、好ましくは50mmol/L以下、より好ましくは25mol/L以下となるように添加すればよい。カルシウムは無機塩又は有機塩として血液に添加することができる。
【0034】
血液は、全血であっても血漿であっても凝固させることができる。血液は、クエン酸塩、又はエチレンジアミン4酢酸等の脱カルシウム作用を有する抗凝固剤を含んでいても凝固させることができる。
【0035】
表面にカルボキシル基が配向された粒子を含む血液凝固促進剤は、止血機能検査等に用いる血液凝固機能検査薬として用いることができる。プロトロンビン時間(PT)試薬、又は活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)試薬と同様に、凝固時間を測定することにより、凝固系の機能を検査することが可能となる。
【0036】
血液凝固機能検査薬として用いる場合には、血液凝固促進剤を含む第1の試薬と検体とを混合した後、カルシウムを含む第2の試薬を混合し、フィブリンが析出するまでの凝固時間を測定すればよい。フィブリンが析出するまでの時間は、目視又は吸光度変化等により測定することができる。
【0037】
第1の試薬はカルボキシル基が配向された粒子を含む懸濁液とすることができる。第1の試薬におけるカルボキシル基が配向された粒子の濃度は、最終的な血中濃度を先に示した好適な濃度とすることができる濃度であればよい。例えば、第1の試薬におけるカルボキシル基が配向された粒子の濃度は、1.5μg/mL以上、好ましくは10μg/mL以上、より好ましくは50μg/mL以上、特に好ましくは150μg/mL以上、3000μg/mL以下、好ましくは1500μg/mL以下、より好ましくは1000μg/mL以下、特に好ましくは750μg/mL以下とすることができる。第2の試薬は、例えばカルシウムを1.5mmol/L以上、好ましくは3mmol/mL以上、より好ましくは15mmol/L以上、300mmol/L以下、好ましくは150mmol/mL以下、より好ましくは75mmol/L以下含む溶液とすることができる。
【0038】
カルシウムを第2の試薬として加えるのではなく、カルシウムを含む第1の試薬を調製してもよい。この場合には、第1の試薬と検体とを混合して、凝固時間を測定すればよい。
【0039】
表面にカルボキシル基が配向された粒子は、PT試薬における組織トロンボプラスチン、又はAPTT試薬における部分トロンボプラスチン分画及び活性化剤と同様の凝固促進機能を有していると考えられる。従って、第1の試薬は、組織トロンボプラスチン又は部分トロンボプラスチン分画を含んでいないが血液の凝固反応を促進する。出血等により活性化されフォスファチジルセリンが露出した血小板は、血液の凝固反応を促進する。表面にカルボキシル基が配向された粒子は、活性化されフォスファチジルセリンが露出した血小板と同様の機構で、血液の凝固反応を促進している可能性がある。活性化された血小板の細胞膜の表面において、フォスファチジルセリンは外側に向かって配向して、露出していると考えられる。
【0040】
図1(a)に示すように、外側に向けてカルボキシル基が配向してカルボキシル基が露出している表面においては、カルボキシル基と結合した凝固活性因子も配列され、凝固活性複合体を容易に形成することができる。これにより、血液の凝固反応が促進されると考えられる。従って、外側に向けてカルボキシル基が配向し、粒子表面にカルボキシル基が露出している粒子も、血液の凝固反応を促進できると考えられる。一方、図1(b)に示すような、カルボキシル基が配向していない表面においては、カルボキシル基に凝固活性因子が結合しても、凝固活性複合体を形成しにくい。このため、外側に向けてカルボキシル基が配向していない粒子の場合には、カルボキシル基が存在していても、凝固反応の促進効果がほとんど認められないと考えられる。
【0041】
血液凝固機能検査薬には、弱酸性物質又はその複合体等を添加してもよい。例えば、以下の薬剤の1種以上を加えることができる。アルギン酸、キチン(ナノ)ファイバー、キトサン(ナノ)ファイバー、オゾン酸化処理セルロース(ナノ)ファイバー、天然ゴムラテックス、若しくはポリ(メタ)アクリル酸、又はこれらのゲル化物。グルクロン酸、ウロン酸、マンヌロン酸、アルドン酸、アルダル酸、ヒアルロン酸、又はカルボン酸含有糖鎖等の糖誘導体。シュウ酸、又はマロン酸等のジカルボン酸、酸性タンパク質、又は酸性ペプチド等、モノアニオン、又はポリアニオン等。デオキシリボ核酸若しくはリボ核酸等の核酸、ペプチド核酸、フマル酸、マレイン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸、クエン酸、リンゴ酸、又はエチレンジアミン4酢酸等の多塩基酸。フォスファチジルイノシトール、又はフォスファチヂルセリン等のリン脂質。アスパラギン酸、又はグルタミン酸等の酸性アミノ酸。ポリフェノール、ピロガロール、ピロカテコール、タンニン酸、エピカテキン、エピガロカテキン、エラジン酸、エラグ酸二水和物、アスコルビン酸、グルタチオン、α-トコフェロール、ブチルヒドロキシアニソール、カテキン、クエルセチン、尿酸、又はビリルビン等。末端反応性ポリエチレングリコールとポリスチレン又はポリイミンとの反応混合物。組織因子又はトロンビン等の血液凝固因子。
【0042】
これらの薬剤は担体に結合された状態で添加してもよい。担体には例えば以下の1種以上を用いることができる。金若しくは銀等の金属粒子、カオリン、モノリス型シリカ若しくはコロイダルシリカ等の無機粒子、カーボンブラック、フラーレン、フラーレンナノチューブ等のカーボン粒子、シクロデキストリン若しくはカリックスアレーン等の包接化合物、プルラン、マンナン、デキストラン若しくはアミロペクチン等の多糖類、リポソーム、ベシクル、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、磁性粒子、多機能性エンベローブ型ナノ構造体、高分子ミセル、ポリイオンコンプレックス、多環芳香族化合物、ウイルス、細胞、微生物、脳硫化物、又はフィブリン等。
【0043】
これらの薬剤又は担体に担持された薬剤は、第1の試薬に添加し、第1の試薬と共に検体と混合することができる。また、第1の試薬とは別に検体と混合してもよい。さらに、第2の試薬に添加してもよい。
【0044】
第1の試薬及び第2の試薬は、防腐剤等の一般的な検査薬に含まれる成分をさらに含んでいてもよい。
【0045】
表面にカルボキシル基が配向された粒子に代えて、スポンジ状酸化チタン粒子を血液凝固促進剤とすることもできる。スポンジ状酸化チタン粒子とは、3次元網目構造を有する酸化チタンの粒子である。スポンジ状酸化チタン粒子は、表面に多数のルイス酸サイトを有している。このルイス酸サイトが、カルボキシル基と同様に作用すると考えられる。酸化チタンはルチル型であっても、アナターゼ型であってもよい。
【0046】
スポンジ状酸化チタン粒子は、特に限定されないが表面積が50m2/g以上、好ましくは100m2/g以上、より好ましくは200m2/g以上、1000m2/g以下、好ましくは800m2/gとすることができる、より好ましくは500m2/g以下とすることができる。
【0047】
スポンジ状酸化チタン粒子の平均粒径は、特に限定されないが、カルボキシル基を表面に有する粒子と同様に、0.01μm以上、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上、100μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは10μm以下とすることができる。
【0048】
スポンジ状酸化チタン粒子は、特に限定されないが、数nm〜100nm程度の細孔を形成するように繊維状の酸化チタンが絡み合って形成されているものを用いることができる。また、水熱合成法等により形成したものを用いることができる。
【0049】
スポンジ状酸化チタン粒子を表面にカルボキシル基が配向された粒子に代えて血液凝固機能検査薬として用いる場合には、最終的な血中におけるスポンジ状酸化チタン粒子の濃度を0.2μg/mL以上、好ましくは1μg/mL以上、より好ましくは2μg/mL以上、400μg/mL以下、好ましくは100μg/mL以下、より好ましくは40μg/mL以下とすることができる。血中におけるカルシウムの濃度は、0.5mmol/L以上、好ましくは1mmol/L以上、より好ましくは5mmol/L以上、100mmol/L以下、好ましくは50mmol/L以下、より好ましくは25mol/L以下とすることができる。また、第1の試薬に含まれるスポンジ状酸化チタン粒子の濃度は、0.6μg/mL以上、好ましくは3μg/mL以上、より好ましくは6μg/mL以上、1200μg/mL以下、好ましくは300μg/mL以下、より好ましくは120μg/mL以下とすることができる。他の条件については、表面にカルボキシル基が配向された粒子と同様にすることができる。
【0050】
スポンジ状酸化チタンとカルボキシル基が配向された粒子との両方を含む血液基凝固機能検査薬とすることもできる。
【0051】
以下に、実施例を用いて本開示の血液凝固剤及びそれを用いた血液凝固機能検査薬についてさらに詳細に説明する。
【0052】
<官能基密度>
粒子表面の官能基密度は、電気伝導度滴定法により測定した。カルボキシル基及びスルホン酸基の滴定には、滴定剤として水酸化ナトリウム水溶液を用いた。アミノ基の滴定には、希塩酸を用いた。電気伝導度は、市販の電気伝導度計(東亜ディケーケー社製:CM-60S)を用い、窒素気流下で滴定を行った。粒子の表面積は、粒径のカタログ値を利用して球体の表面積の式から算出した。粒径のカタログ値が、レーザ回折光散乱光度計(島津製作所社製:SALD-2300)による測定値とほぼ一致することを確認した。
【0053】
<血液凝固促進機能の評価>
96穴マイクロプレートのウェルに、検体40μLと、イオン交換水により所定の倍率に希釈した試薬40μLとを入れた後、塩化カルシウム溶液(0.25mmol/L)40μLを添加し、添加直後からマイクロプレートリーダー(PerkinElmer社製:2030 ARVO X)を用いて攪拌及び反応させ、630nmの吸光度を測定した。吸光度はプラトーに達するまで測定した。吸光度変化が最大となった時間を反応時間とし、プラトーに達した吸光度を最終吸光度とした。試薬に代えて生理食塩水を加えた場合の反応時間(カルシウム再加凝固時間に相当)をブランク時間とし、反応時間をブランク時間で割った値を反応速度指数とした。反応速度指数が小さいほど試薬により凝固反応が促進されていることを示す。また、試薬を加えた場合の最終吸光度を、生理食塩水を加えた場合の最終吸光度で割った値を吸光度変化率とした。吸光度変化率が大きいほどフィブリンネットワークが成長していることを示す。すべての測定について、二重測定を行った。
【0054】
<フィブリンネットワークの観察>
凝固反応を測定した検体について、収束イオンビーム走査型電子顕微鏡(FIB−SEM、FEI社製:Qunta3D FEG(FIB、クライオ装置、OmniProbe,Gas injection、EDAXを使用))によりフィブリンネットワークの形成を確認した。
【0055】
<検体>
検体は、健常人から採血した正常ヒト血漿とした。採血は、クエン酸ナトリウム緩衝液入り真空採血管(ベクトンディッキンソン社製)と21ゲージ採血針を用いて行った。採血後、3000rmpで10分間遠心して、血漿と血球とを分離した。
【0056】
<試薬>
(試薬1)
ポリスチレンとアクリル酸及びメタクリル酸との共重合体からなる平均粒径0.05μmの樹脂粒子(Poly Science社製:15913-10)の2.5w/v%懸濁液を用いた。粒子濃度は、3.6×1014個/mLであった。カルボキシル基の表面密度は、2.3×10μmol/m2であった。
【0057】
(試薬2)
ポリスチレンとアクリル酸及びメタクリル酸との共重合体からなる平均粒径0.1μmの樹脂粒子(Poly Science社製:16688-15)とした以外は試薬1と同様にした。粒子濃度は、4.6×1013個/mLであった。
【0058】
(試薬3)
ポリスチレンとアクリル酸及びメタクリル酸との共重合体からなる平均粒径0.5μmの樹脂粒子(Poly Science社製:09836-15)とした以外は試薬1と同様にした。粒子濃度は、3.6×1011個/mLであった。カルボキシル基の表面密度は、1.5×10μmol/m2であった。
【0059】
(試薬4)
ポリスチレンとアクリル酸及びメタクリル酸との共重合体からなる平均粒径1.0μmの樹脂粒子(Poly Science社製:08226-15)とした以外は試薬1と同様にした。粒子濃度は、4.6×1010個/mLであった。カルボキシル基の表面密度は、8.0×10μmol/m2であった。
【0060】
(試薬5)
カルボキシル基を導入したセルロースナノファイバ(COOH−CNF)を用いた。粒子濃度は1w/V%とした。カルボキシル基の導入は以下のようにした。まず、市販のセルロース(日本製紙ケミカル社製:セルロース粉末KCフロックW−400G)を、水酸化ナトリウムを用いてマーセル化した。この後、マーセル化したセルロース1gを100mLの水に分散させ、25mgのTEMPO触媒、0.25gの臭化ナトリウム(NaBr)及び酸化剤として9.27%の次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)水溶液10mLを加え、室温、pH10で2時間、酸化処理を行った。この後、少量のエタノールを加えて反応を停止し、10,000gで10分間遠心分離して不純物を除去した後、上澄みにさらにメタノールを加え、COOH−CNFを沈殿させた。得られた沈殿物をさらに遠心分離して、COOH−CNFを回収した。回収したCOOH−CNFを80℃〜105℃で乾燥させた後、水に再分散させた。COOH−CNFの水中における平均粒径は5.4μmであった。COOH−CNFの長さは2μm〜5μmで、幅は100nm〜200nmあった。COOH−CNFの長さ及び幅は、電子顕微鏡(日本電子社製:Jsm−6510、倍率10000)により観察した視野内におけるCOOH−CNF、10本の長さの平均とした。なお、平均粒径は、レーザ回折光散乱光度計(島津製作所社製:SALD−2300)により測定した。カルボキシル基の表面密度は、1.2μmol/mであった。
【0061】
(試薬6)
平均粒径0.1μmのスポンジ状酸化チタン(アースクリーン東北社製:PW116-3)の水懸濁液を用いた。スポンジ状酸化チタンの比表面積は400m2/gであった。粒子濃度は、0.1w/v%とした。
【0062】
(試薬7)
試薬6に用いたスポンジ状酸化チタンを500℃で、2時間熱処理した他は試薬5と同様にした。
【0063】
(試薬8)
表面にアミノ基を有する、平均粒径0.1μmの樹脂粒子(Poly Science社製:16586-5)とした以外は試薬1と同様にした。粒子濃度は、4.6×1013個/mLであった。アミノ基の表面密度は、14×10μmol/m2であった。
【0064】
(試薬9)
表面にスルホン酸基を有する、平均粒径0.5μmの樹脂粒子(Poly Science社製:19403-15)とした以外は試薬1と同様にした。スルホン酸基の表面密度は、0.64×10μmol/m2であった。
【0065】
(試薬10)
表面にスルホン酸基を有する、平均粒径1.0μmの樹脂粒子(Poly Science社製:19404-15)とした以外は試薬1と同様にした。
【0066】
(試薬11)
poly(2-methacryloyloxyethylphoshoryl choline)(PMPC)を固定した樹脂粒子とした以外は試薬1と同様にした。樹脂粒子は、炭素数3のリンカーを解して結合されたアミノ基を有する、平均粒径0.1μmの樹脂粒子(Poly Science社製:16586-5)とした。PMPCの固定は、スクシイミジル基を介して行った。
【0067】
(試薬12)
PMPCに代えて、式1に示す、MPCとアクリル酸とのブロックコポリマーを固定した樹脂粒子とした以外は試薬10と同様にした。但し、式1において、仕込み比としてmは90、nは10である。
【0068】
【化1】
【0069】
(試薬13)
PMPCに代えて、式2に示す、MPC、アクリル酸及びジメチルシロキサンのブロックコポリマーを固定した樹脂粒子とした以外は試薬10と同様にした。但し、式2において、仕込み比として(m+n)は50、lは50であり、mは90、nは10である。
【0070】
【化2】
【0071】
(試薬14)
セルロースナノファイバ(スギノマシン社製:BiNFi-s)の水懸濁液を用いた。粒子濃度は、0.1w/v%とした。
【0072】
(試薬15)
市販のPT試薬(シスメックス社製:トロンボチェックPT)を用法用量に従い、精製水に溶解させて用いた。
【0073】
(試薬16)
市販のAPTT試薬(SIEMENS社製:ACTIN)を用いた。
【0074】
表1に各試薬についての反応速度指数を示す。表面にカルボキシル基が配向された粒子からなる試薬1〜4についての100倍希釈(250μg/mL)における反応速度指数は、それぞれ0.59、0.56、0.49及び0.60となった。市販のPT試薬である試薬14及びAPTT試薬である試薬15の100倍希釈における反応速度指数は、それぞれ0.55及び0.49であった。このように、試薬1〜4の反応速度指数は、市販のPT試薬及びAPTT試薬と同程度である。従って、試薬1〜4は、市販のPT試薬及びAPTT試薬と同様に血漿の凝固を促進しており、これらの試薬と同様の血液凝固促進機能を有している。また、試薬1〜3については10000倍希釈(2.5μg/mL)した場合においても、反応速度指数が1よりも小さく、血液凝固を促進した。
【0075】
COOH−CNFからなる試薬5は、10倍希釈(100μg/mL)で0.88、100倍希釈(10μg/mL)で、0.74という反応速度指数を示した。このように、COOH−CNFについても、血液凝固促進機能が認められた。
【0076】
また、スポンジ状酸化チタンからなる試薬6は、10倍希釈(100μg/mL)では0.71、100倍希釈(10μg/mL)では0.80という反応速度指数を示した。また、熱処理したスポンジ状酸化チタンからなる試薬7においても、反応速度指数は、10倍希釈で0.70、100倍希釈で0.81となり、熱処理していない場合とほぼ同じ反応速度指数を示した。このように、スポンジ状酸化チタン粒子についても、血液凝固促進機能が認められた。さらに、試薬6及び7は、1000倍希釈(1μg/mL)においても、反応速度指数が1より小さく、血液凝固を促進した。
【0077】
一方、試薬8〜14については、表面にアミノ基を有する粒子からなる試薬8の100倍希釈において反応速度指数が0.94となり、若干の血液凝固の促進が認められた。しかし、これ以外は、いずれも反応速度指数が1よりも大きく、表面にカルボキシル基が配向された粒子又はスポンジ状酸化チタン粒子を含まない場合には、血液凝固促進機能は認められなかった。
【0078】
【表1】
【0079】
表2に各試薬についての吸光度変化率を示す。反応速度指数が1未満であった、試薬1〜試薬8において、平均粒径が0.05μmの粒子からなる試薬1については、100倍希釈において吸光度変化率が1以下となった。平均粒径が0.5μmの粒子からなる試薬3、平均粒径が1.0μmの粒子からなる試薬4についても他の試薬と比べて100倍希釈における吸光度変化率が若干小さかった。また、反応速度指数が1以上であった試薬9〜試薬14においても、平均粒径が0.5μmの粒子からなる試薬9、平均粒径が1.0μmの粒子からなる試薬10では他の試薬と比べて100倍希釈における吸光度変化率が若干小さかった。
【0080】
【表2】
【0081】
図2図6にそれぞれ試薬1、3、6、11を100倍希釈した場合及びブランクにおいて得られたフィブリンネットワークのSEM写真を示す。試薬1の場合には他の試薬及びブランクと比べてフィブリン繊維が細かくなっている。しかし、試薬1も十分な血液凝固促進機能を有しており血液凝固促進剤として有用である。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本開示の血液凝固促進剤は、安定した血液凝固機能を示し、血液凝固機能検査薬等として有用である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6