特許第6692112号(P6692112)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 渡瀬 一人の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6692112
(24)【登録日】2020年4月16日
(45)【発行日】2020年5月13日
(54)【発明の名称】黒にんにくの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 19/00 20160101AFI20200427BHJP
   A23L 5/10 20160101ALN20200427BHJP
【FI】
   A23L19/00 C
   !A23L5/10 Z
【請求項の数】7
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2017-96888(P2017-96888)
(22)【出願日】2017年5月15日
(65)【公開番号】特開2018-153170(P2018-153170A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2018年12月12日
(31)【優先権主張番号】特願2017-53814(P2017-53814)
(32)【優先日】2017年3月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】516234133
【氏名又は名称】渡瀬 一人
(74)【代理人】
【識別番号】100088063
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 康治
(72)【発明者】
【氏名】渡瀬 一人
【審査官】 福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−085499(JP,A)
【文献】 特開2012−139218(JP,A)
【文献】 特開2008−263871(JP,A)
【文献】 特開2006−149325(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 19/00−19/20
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
にんにくを40乃至80°Cの温度で発酵・熟成させて黒にんにくを製造する方法であって、
にんにくをオリーブオイルに漬浸して発酵・熟成させるようにしたこと、
を特徴とする黒にんにくの製造方法。
【請求項2】
にんにくを40乃至80°Cの温度で発酵・熟成させて黒にんにくを製造する方法であって、
にんにくの表面全体にオリーブオイルを付着させて発酵・熟成させるようにしたこと、
を特徴とする黒にんにくの製造方法。
【請求項3】
にんにくを発酵・熟成させる期間の途中から、にんにくをオリーブオイルに漬浸するようにしたこと、
を特徴とする請求項1記載の黒にんにくの製造方法。
【請求項4】
にんにくを発酵・熟成させる期間の途中から、にんにくの表面全体にオリーブオイルを付着させるようにしたこと、
を特徴とする請求項2記載の黒にんにくの製造方法。
【請求項5】
にんにくを、にんにくエキスと混ぜて発酵させるか、或いは、にんにくエキス及び、ハチミツ、砂糖、お酢(または黒酢)、ゆず、シナモン、抹茶、むぎ茶、緑茶、ココア、にんにくエキスの内のいずれか1つまたは複数を混ぜて発酵・熟成させるようにしたこと、
を特徴とする請求項1乃至4の内のいずれか一項記載の黒にんにくの製造方法。
【請求項6】
にんにくを40乃至80°Cの温度で発酵・熟成させて黒にんにくを製造する方法であって、
初めは、にんにくを、にんにくエキスと混ぜるか、或いは、にんにくエキス及び、ハチミツ、砂糖、お酢(または黒酢)、ゆず、シナモン、抹茶、むぎ茶、緑茶、ココアの内のいずれか1つまたは複数を混ぜて、5乃至36時間程度の間、発酵・熟成させ、その後は、オリーブオイルに漬浸するか、またはにんにくの表面全体にオリーブオイルを付着させて発酵・熟成させるようにしたこと、
を特徴とする黒にんにくの製造方法。
【請求項7】
発酵・熟成が終わった黒にんにくの表面に黄な粉、ハチミツ、黒蜜、ごま、粉末または刻みナッツ、ヨーグルト、砂糖、味噌の内のいずれか1つまたは複数を付着させたこと、
を特徴とする請求項1乃至6の内のいずれか一項記載の黒にんにくの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は黒にんにくの製造方法に係り、とくに栄養成分の豊富な黒にんにくの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
にんにくを発酵・熟成させた黒にんにくには抗酸化作用、血中脂質低下作用を有するS−アリルシステイン、シクロアリインなどの優れた生理活性物質が含まれており、近年、注目を集めている食材である。従来は、多数のにんにくを保温容器に入れ、40乃至80℃程度に加温しながら数週間、発酵・熟成させることで、黒にんにくを製造していた。
ところが、従来の製法では栄養分の一部が揮発により喪失してしまう欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−107093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記した従来技術の問題に鑑みなされたもので、栄養成分の喪失が少ない黒にんにくの製造方法を提供することを、その目的とする。
また、味付の黒にんにくの製造方法を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明では、
にんにくを40乃至80°Cの温度で発酵・熟成させて黒にんにくを製造する方法であって、
にんにくをオリーブオイルに漬浸して発酵・熟成させるようにしたこと、
を特徴としている。
請求項2記載の発明では、
にんにくの表面全体にオリーブオイルを付着させて発酵・熟成させるようにしたこと、
を特徴としている。
請求項3、4記載の発明では、
にんにくを発酵・熟成させる期間の途中から、にんにくをオリーブオイルに漬浸するか、にんにくの表面全体にオリーブオイルを付着させるようにしたこと、
を特徴としている。
請求項5記載の発明では、
にんにくを、にんにくエキスと混ぜて発酵させるか、或いは、にんにくエキス及び、ハチミツ、砂糖、お酢(または黒酢)、ゆず、シナモン、抹茶、むぎ茶、緑茶、ココア、にんにくエキスの内のいずれか1つまたは複数を混ぜて発酵・熟成させるようにしたこと、
を特徴としている。
請求項6記載の発明では、
初めは、にんにくを、にんにくエキスと混ぜるか、或いは、にんにくエキス及び、ハチミツ、砂糖、お酢(または黒酢)、ゆず、シナモン、抹茶、むぎ茶、緑茶、ココア、にんにくエキスの内のいずれか1つまたは複数を混ぜて5乃至36時間程度の間、発酵・熟成させ、その後は、オリーブオイルに漬浸するか、またはにんにくの表面全体にオリーブオイルを付着させて発酵・熟成させるようにしたこと、
を特徴としている。
請求項7記載の発明では、
発酵・熟成が終わった黒にんにくの表面に黄な粉、ハチミツ、黒蜜、ごま、粉末または刻みナッツ、ヨーグルト、砂糖、味噌の内のいずれか1つまたは複数を付着させたこと、
を特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、オリーブオイルがにんにくからの揮発性栄養分の喪失を抑制し、オリーブオイルの栄養と合わせて、栄養価の優れた黒にんにくを得ることができる。
また、他の発明によれば、ハチミツ、砂糖、お酢(または黒酢)、ゆず、シナモン、抹茶、むぎ茶、緑茶、ココア、にんにくエキスの内のいずれか1種または複数種の味が付いた黒にんにくが得られる。
また、他の発明によれば、黄な粉、ハチミツ、黒蜜、ごま、粉末または刻みナッツ、ヨーグルト、砂糖、味噌の内のいずれか1種または複数種の味が表面に付いた黒にんにくが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
黒にんにくには抗酸化作用、血中脂質低下作用を有するS−アリルシステイン、シクロアリインなどの優れた生理活性物質が含まれている。けれども、揮発性の栄養成分(アリルスルフィド類など)は熟成・発酵途中、または熟成・発酵直後に喪失し易く含有量が少ない。本願発明者はにんにくを熟成・発酵させる期間の間、または熟成・発酵させる期間の途中から、にんにくをオリーブオイルに漬浸するか、にんにくの表面全体にオリーブオイルを付着させて熟成・発酵させると、揮発性栄養成分の喪失が少なくなることを見出し、本願発明を成すに至ったものである。
以下、本発明の最良の形態を実施例に基づき説明する。
【実施例1】
【0008】
多数の生にんにく(玉のまま、または一片ずつ分けたもの。皮付きのまま、または皮を剥いたもの、皮を剥いてスライスしたもの、みじん切りしたもの)を綿袋に詰めるか、または詰めずにオリーブオイルを入れた蒸し容器(保温機能付き炊飯器でも可)に浸漬し、45乃至70℃程度の温度で加温しながら2週間程度、発酵・熟成させる。
45乃至70℃程度で加温すると、発酵・熟成開始後、2日程度で、にんにくの外側に黄土色の色が付き始める。
3、4日程度で、にんにくの中全体が黄土色に変化する。
5日程度で、にんにくの中全体が薄く黒色を帯びてくる。
9、10日程度で、にんにくの中が黒ずんだ色になる。
11日乃至15日程度で、にんにくの中が黒に近い色になり、黒にんにくが出来上がる。
なお、加温する温度は40乃至80℃の範囲内であれば良い。
【0009】
上記の如く製造方法によれば、オリーブオイルにより、発酵・熟成中及び発酵・熟成後の揮発性栄養成分(アリルスルフィド類など)の喪失が抑制されるので、オリーブオイル自体の栄養とあいまって栄養価の優れた黒にんにくが得られる。
【0010】
なお、上記した実施例では、にんにくをオリーブオイルに浸漬して発酵・熟成させるようにしたが、にんにくをオリーブオイルに漬浸させたあと、ザルに上げてオリーブオイルを切り、にんにくの表面全体にオリーブオイルが付着した状態で発酵・熟成させるようにしても良い。
また、生にんにくを蒸し容器に入れる際、一緒に、ハチミツ、砂糖、お酢(または黒酢)、ゆず、シナモン、抹茶、むぎ茶、緑茶、ココア、にんにくエキスの内のいずれか1つまたは複数を混ぜて、40乃至80°C程度の温度で発酵・熟成させるようにすれば、これらの一種または複数種の味が付いた黒にんにくを製造することができる。
この場合、発酵・熟成期間の最初、5時間乃至36時間程度の間は、生にんにくに、ハチミツ、砂糖、お酢(または黒酢)、ゆず、シナモン、抹茶、むぎ茶、緑茶、ココア、にんにくエキスの内のいずれか1つまたは複数を混ぜ、オリーブオイルは無しで40乃至80°Cの温度で発酵・熟成させ、その後、オリーブオイルも入れてにんにくをオリーブオイルに漬浸し、発酵・熟成をすようにすれば、中までしっかり味の付いた黒にんにくを製造できる(発酵・熟成期間の最初、5時間乃至36時間程度の間は、生にんにくに、ハチミツ、砂糖、お酢(または黒酢)、ゆず、シナモン、抹茶、むぎ茶、緑茶、ココア、にんにくエキスの内のいずれか1つまたは複数を混ぜ、オリーブオイルは無しで40乃至80°Cの温度で発酵・熟成させたあと、一旦、オリーブオイルに浸漬し、ザルに上げてオリーブオイルを切り、にんにくの表面全体にオリーブオイルが付着した状態で再び発酵・熟成させるようにしても良い)。
上記の味付き黒にんにくにおいても、オリーブオイルにより揮発性栄養成分(アリルスルフィド類など)の喪失が抑制されるので、オリーブオイル自体の栄養とあいまって栄養価の優れた黒にんにくが得られる。
また、発酵・熟成が完了した黒にんにくの表面に、黄な粉、ハチミツ、黒蜜、ごま、粉末または刻みナッツ、ヨーグルト、砂糖、味噌の内のいずれか1つまたは複数を付着させることで、多彩な味わいの黒にんにくを具現できる。
【実施例2】
【0011】
多数の生にんにく(玉のまま、または一片ずつ分けたもの。皮付きのまま、または皮を剥いたもの、皮を剥いてスライスしたもの、みじん切りしたもの)を綿袋に詰めるか、または詰めずに蒸し容器(保温機能付き炊飯器でも可)に入れ、45乃至70℃程度の温度で加温しながら2週間程度、発酵・熟成させる。
45乃至70℃程度で加温すると、発酵・熟成開始後、2日程度で、にんにくの外側に黄土色の色が付き始める。
3、4日程度で、にんにくの中全体が黄土色に変化する。
5日程度で、にんにくの中全体が薄く黒色を帯びてくる。
発酵・熟成期間の真ん中近くである7日目ぐらいに来たら、蒸し容器にオリーブオイルを付加し、発酵・熟成中のにんにくをオリーブオイルに漬浸させて、発酵・熟成を継続する。或いは、一旦、オリーブオイルに漬浸させたあと、ザルに上げてオリーブオイルを切り、にんにくの表面全体にオリーブオイルが付着した状態で再び蒸し容器に戻し、発酵・熟成を継続する。
9、10日程度で、にんにくの中が黒ずんだ色になる。
11日乃至15日程度で、にんにくの中が黒に近い色になり、黒にんにくが出来上がる。
なお、加温する温度は40乃至80℃の範囲内であれば良い。
また、オリーブオイルの付加は、8日目以降でも良い。
【0012】
上記の如く製造方法によれば、オリーブオイルにより、発酵・熟成中及び発酵・熟成後の揮発性栄養成分(アリルスルフィド類など)の喪失が抑制されるので、オリーブオイル自体の栄養とあいまって栄養価の優れた黒にんにくが得られる。
また、オリーブオイルは熱に弱く加温で変性し易いが、発酵・熟成期間の途中からオリーブオイルを付加するので、最初から付加する場合に比べて、オリーブオイル自体の加温による劣化が抑制される。
【0013】
なお、上記した実施例ではにんにくの発酵・熟成期間の真ん中近くに来たところでオリーブオイルを付加するようにしたが、発酵・熟成開始の数日後などもう少し早い段階でオリーブオイルを付加するようにしたり、発酵・熟成期間の真ん中より数日後などもう少し遅い段階でオリーブオイルを付加するようにしても良い。或いは、発酵・熟成期間の最終段階、例えば、発酵・熟成が完了する1日前、または半日前、または数時間前、または1時間前、または30分前にオリーブオイルを付加するようにしても、発酵・熟成期間の最終段階及び発酵・熟成後の揮発性栄養成分(アリルスルフィド類など)の喪失を抑制できるとともに、オリーブオイルの加温による劣化を最小限に抑制しながらオリーブオイルの栄養も付加した栄養価の優れた黒にんにくが得られる。
また、生にんにくを蒸し容器に入れる際、一緒に、ハチミツ、砂糖、お酢(または黒酢)、ゆず、シナモン、抹茶、むぎ茶、緑茶、ココア、にんにくエキスの内のいずれか1つまたは複数を混ぜて、40乃至80°C程度の温度で発酵・熟成させるようにすれば、これらの一種または複数種の味の付いた黒にんにくを製造することができる。
また、発酵・熟成が完了した黒にんにくの表面に、黄な粉、ハチミツ、黒蜜、ごま、粉末または刻みナッツ、ヨーグルト、砂糖、味噌の内のいずれか1つまたは複数を付着させることで、多彩な味わいの黒にんにくを具現できる。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明は、黒にんにくの発酵・熟成に適用可能である。