特許第6692188号(P6692188)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6692188
(24)【登録日】2020年4月16日
(45)【発行日】2020年5月13日
(54)【発明の名称】電池、蓄電池、及び電気装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/10 20060101AFI20200427BHJP
   H01M 2/20 20060101ALI20200427BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20200427BHJP
【FI】
   H01M2/10 E
   H01M2/20 Z
   H01M10/04 Z
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-45167(P2016-45167)
(22)【出願日】2016年3月9日
(65)【公開番号】特開2017-162631(P2017-162631A)
(43)【公開日】2017年9月14日
【審査請求日】2018年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】特許業務法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小岩 馨
(72)【発明者】
【氏名】野村 富二夫
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 誠二
(72)【発明者】
【氏名】景山 登茂美
(72)【発明者】
【氏名】小林 弘行
(72)【発明者】
【氏名】安田 武司
【審査官】 結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−116436(JP,A)
【文献】 特開2011−243442(JP,A)
【文献】 特開2003−242956(JP,A)
【文献】 実開平03−112868(JP,U)
【文献】 特開2013−109914(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0123843(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10
H01M 2/20
H01M 10/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列接続された複数のセルを備える電池であって、
前記複数のセルは、セル内電流方向が平行となるように並べられており、前記セル内電流方向と垂直な方向を行方向及び列方向としてマトリクスを形成しており、
前記セルそれぞれの前記セル内電流方向は、前記行方向で隣にある前記セルの前記セル内電流方向と反対向きとなっており、さらに、前記列方向で隣にある前記セルのうち少なくとも一方の前記セルの前記セル内電流方向と反対向きとなっており
前記マトリクスは、前記セルを前記行方向に並べたセル群を前記列方向に積層した第1のセル群列と、前記列方向に積層された複数の前記セル群で構成され、前記第1のセル群列の前記行方向の隣に配置された第2のセル群列と、で構成されており、
前記第1のセル群列に属する前記セル群と前記第2のセル群列に属する前記セル群とを接続する列間接続には、前記セル群と前記セル群とを電流の流れに沿って接続することにより形成される電流ループが前記電池内に少なくとも2つ形成されるように、少なくとも1つの交差接続が含まれており、
前記列方向に隣接する前記電流ループのループ方向は互いに反対向きとなっている、
電池。
【請求項2】
前記セルの前記行方向の数は4の倍数である、
請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記セルの前記列方向の数は2の倍数である、
請求項1に記載の電池。
【請求項4】
記セル群それぞれのセル群内電流方向は、前記列方向で隣にある前記セル群の前記セル群内電流方向と反対向きとなっている、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電池。
【請求項5】
前記セル群は、前記列方向に4の倍数個積層されており、
前記電池内には、前記電流ループが前記列方向に沿って3つ形成されるように、2つの前記交差接続が含まれており、
3つの前記電流ループは、隣接する前記電流ループのループ方向が互いに反対向きとなっており、
それら3つの前記電流ループに属する前記セル群の数は、前記列方向に順に1:2:1の割合となっている、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電池。
【請求項6】
1つの前記セル群は、4の倍数個の前記セルで構成されている、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電池。
【請求項7】
直列接続された蓄電可能な複数のセルを備える蓄電池であって、
前記複数のセルは、セル内電流方向が平行となるように並べられており、前記セル内電流方向と垂直な方向を行方向及び列方向としてマトリクスを形成しており、
前記セルそれぞれの前記セル内電流方向は、前記行方向で隣にある前記セルの前記セル内電流方向と反対向きとなっており、さらに、前記列方向で隣にある前記セルのうち少なくとも一方の前記セルの前記セル内電流方向と反対向きとなっており
前記マトリクスは、前記セルを前記行方向に並べたセル群を前記列方向に積層した第1のセル群列と、前記列方向に積層された複数の前記セル群で構成され、前記第1のセル群列の前記行方向の隣に配置された第2のセル群列と、で構成されており、
前記第1のセル群列に属する前記セル群と前記第2のセル群列に属する前記セル群とを接続する列間接続には、前記セル群と前記セル群とを電流の流れに沿って接続することにより形成される電流ループが前記電池内に少なくとも2つ形成されるように、少なくとも1つの交差接続が含まれており、
前記列方向に隣接する前記電流ループのループ方向は互いに反対向きとなっている、
蓄電池。
【請求項8】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の電池を備える、
電気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施態様は、電池、蓄電池、及び電気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のセルを接続して1つの電池とすることがある。セルとは、電池を構成する最小単位のことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2004−510318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数のセルで構成される電池は大きな電力を出力可能である。しかしながら、大きな電力を出力可能な電池は、電池内部に大きな電流が流れるので、外部に大きな磁界(漂遊磁界)を発生させる。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、発生させる磁界が小さな電池、蓄電池、及び電気装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の電池は、直列接続された複数のセルを備える。複数のセルは、セル内電流方向が平行となるように並べられている。また、複数のセルは、セル内電流方向と垂直な方向を行方向及び列方向としてマトリクスを形成している。セルそれぞれのセル内電流方向は、行方向で隣にあるセルのセル内電流方向と反対向きとなっている。さらに、セルそれぞれのセル内電流方向は、列方向で隣にあるセルのうち少なくとも一方のセルのセル内電流方向と反対向きとなっている。マトリクスは、セルを行方向に並べたセル群を列方向に積層した第1のセル群列と、列方向に積層された複数のセル群で構成され、第1のセル群列の行方向の隣に配置された第2のセル群列と、で構成されている。第1のセル群列に属するセル群と第2のセル群列に属するセル群とを接続する列間接続には、セル群とセル群とを電流の流れに沿って接続することにより形成される電流ループが電池内に少なくとも2つ形成されるように、少なくとも1つの交差接続が含まれている。列方向に隣接する電流ループのループ方向は互いに反対向きとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態1の電池を示す図である。
図2図1に示した電池の分解図である。
図3図1に示した電池の中央部分の分解図である。
図4】(A)は電池モジュールの拡大図、(B)はセル監視装置を取り外した電池モジュールを示す図である。
図5】セルの斜視図である。
図6】電池からセルのみを取り出した図である。
図7】(A)は、セル内電流により形成される電流路を示す図、(B)はセル群内電流により形成される電流路を示す図である。
図8】セル内電流により形成される電流路の一部拡大図である。
図9】実施形態2の電池を構成するマトリクスを示す図である。
図10】(A)は、電池を負荷に接続したときに、電池の内部に形成される電流路を示した図、(B)セル群内電流により形成される電流路P2を示した図である。
図11】実施形態3の電池1を構成するマトリクスを示す図である。
図12】セル内電流により形成される電流路を示す図である。
図13】セル群内電流により形成される電流路を示す図である。
図14】セル群とセル群とを電流の流れに沿って接続することにより形成される電流路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一または同等の部分には同一の符号を付す。
【0009】
(実施形態1)
図1は、実施形態1の電池1を示す図である。電池1は蓄電池である。電池1は、移動体(例えば、航空機、車両、船)に設置されて使用される。電池1は移動体に電力を供給するとともに、移動体が持つ発電機で蓄電される。
【0010】
なお、以下の説明では、X軸、Y軸、及びZ軸から構成される直交座標系を用いる。図中、矢印の指し示す方向がプラス方向である。X軸プラス方向が右方向であり、X軸マイナス方向が左方向である。また、Y軸プラス方向が後方向(背面方向)であり、Y軸マイナス方向が前方向である。また、Z軸プラス方向が上方向であり、Z軸マイナス方向が下方向である。
【0011】
図2は、電池1の分解図である。電池1は、前後一対の冷却プレート11F、11Bと、左右一対の側板12L、12Rと、天板13と、電池管理装置(BMU:Battery Management Unit)14と、ベース15と、積層された複数の電池モジュール100と、を備える。
【0012】
冷却プレート11F、11Bは、電池モジュール100が発する熱のヒートパスとなるプレートである。冷却プレート11F、11Bは、電池モジュール100の前後の表面に固定される。冷却プレートは、鉄やアルミニウム等の熱伝導性の高い金属で構成される。冷却プレート11F、11Bは、電池内部に磁界を閉じ込めることができるように鉄等の磁性体で構成されていてもよい。或いは、冷却プレート11F、11Bは、表面に磁気が帯びないように、ステンレス等の非磁性体で構成されていてもよい。
【0013】
側板12L、12Rは、電池1の側面に配置されるプレートである。側板12L、12Rは、電池モジュール100の左右の表面に固定される。側板12L、12Rは、磁性体で構成されていてもよいし、非磁性体で構成されていてもよい。また、側板12L、12Rは、熱伝導性の高い金属で構成されていてもよい。側板12L、12Rを熱伝導性の高い金属とした場合、側板12L、12Rは冷却プレート11F、11Bと同様にヒートパスとして機能する。
【0014】
天板13は、電池1の天面に配置されるプレートである。天板13は、最上段の電池モジュール100の上面に配置される。天板13の上には、電池管理装置14が設置されている。
【0015】
電池管理装置14は、電池1の充放電を制御するための装置である。電池管理装置14は、例えば、電池1の状態を監視するためのセンサー(例えば、電流、電圧、温度センサー)と、電池1を制御するプロセッサと、を備える。電池管理装置14は、センサーからの信号に基づいて電池1の過充電や過放電、過電流などを検出し、充放電の停止等の制御と上位の電池管理システムへの状態通知を行う。
【0016】
ベース15は、電池モジュール100を乗せる台座である。ベース15は、電池モジュール100の底面と略同じ大きさベースプレートを備える。ベースプレートの下には、移動体の振動を低減させるため、防振ゴムが配置されている。ベースプレートの上には、複数の電池モジュール100が積層されている。
【0017】
図3は、電池1の中央部分(ベース15と電池モジュール100の部分)の分解図である。ベース15には、8個の電池モジュール100が積層されている。なお、電池モジュール100の積層数は8個に限定されない。積層数は、8個より多くてもよいし、少なくてもよいが、偶数(2の倍数)であることが望ましい。より望ましくは、電池モジュール100の積層数は4の倍数個である。
【0018】
図4(A)は、電池モジュール100の拡大図である。電池モジュール100は、セル監視装置(CMU:Cell Monitoring Unit)110と、モジュール本体120と、を備える。
【0019】
セル監視装置110は、電池モジュール100を構成するセル毎に電圧、温度を測定するための装置である。図4(B)は、電池モジュール100からセル監視装置110を取り外したものである。セル監視装置110は、2枚の基板を備える。一方の基板は、モジュール本体120の前面に配置され、他方の基板はモジュール本体120の背面に配置される。2枚の基板は、それぞれ、モジュール本体120の前面及び背面に露出するセルの端子22と接続される。
【0020】
セル監視装置110を構成する2枚の基板には、それぞれ、電圧、及び温度を計測するための回路(電圧センサー、サーミスタ等)が形成さており、各セルの、電圧、及び温度を計測する。セル監視装置110は、配線スペースに配置された配線(不図示)によって、電池管理装置14と接続されている。電池管理装置14は、セル監視装置110からの情報に基づいて電池1を制御する。
【0021】
モジュール本体120は、電池モジュール100の本体となる蓄電部である。モジュール本体120は、セル20を複数枚積層して一体構造としたものである。本実施形態では16枚積層して1つの電池モジュール100としているがセルの積層枚数は16枚に限られない。16枚より多くてもよいし、少なくてもよい。セル20の積層枚数は偶数であることが望ましい。
【0022】
図5は、セル20の斜視図である。セルとは、電池を構成する最小単位(電池ユニット)のことである。セル20は、例えば、リチウムイオン式の蓄電可能なセルである。セル20は、長方形の板状体であり、長手方向の両端に電流の入出力端子(図5に示す22P、22M)が配置されている。22Pがプラス端子であり、22Mがマイナス端子である。
【0023】
図6は、セル20の配置を視認容易にするため、電池1からセル20のみを取り出したものである。図6を見れば分かるように、セル20はセル内電流方向が平行となるように並べられている。セル内電流方向とは、電池1が負荷に電力を供給するときにセル20内に流れる電流の方向、例えば、マイナス端子22Mからプラス端子22Pに向う方向のことである。電池1を構成する複数のセル20は、セル内電流方向(Y軸方向)と垂直な方向を行方向および列方向としてマトリクスM1を形成している。本実施形態の場合、行方向はX軸方向であり、列方向はZ軸方向である。
【0024】
行方向の一列のセル20が1つの電池モジュール100である。セル20は、行方向の一列で1つのセル群を構成する。本実施形態の電池1は、8つの電池モジュール100が積層されたものであるので、マトリクスM1にはG1からG8の8つのセル群が存在することになる。また、電池モジュール100は16個のセル20で構成される。すなわち、マトリクスM1は8行16列の128個のセル20で構成される。
【0025】
1つのセル群を構成する複数のセル20は、プラス極とマイナス極が交互に反転している。そして、セル群内の複数のセル20は、セル監視装置110の2枚の基板によって直列接続される。また、セル群G1〜G8は、不図示の配線によって、上から順に直列接続されている。これにより、マトリクスM1を構成する全てのセル20が直列接続されることになる。
【0026】
1つのセル群内のセル20は、プラス極とマイナス極が交互に反転する交互配置となっている。また、セル群G1〜G8は、左右の端のセル20の端子22P、22Mをそのセル群のプラス極、マイナス極と見なした場合に、上から順にプラス極とマイナス極が交互に反転する交互配置となっている。これにより、マトリクスM1を構成する全てのセル20は、プラス極とマイナス極が行方向及び列方向に交互に反転する交互配置となる。すなわち、セル20それぞれのセル内電流方向は、行方向及び列方向で隣にあるセル20のセル内電流方向と反対向きとなる。
【0027】
図7(A)は、電池1を負荷に接続したときに、電池1の内部に形成される電流路を示したものである。1つのセル群内のセル20はプラス極とマイナス極が交互に反転する交互配置となっているので、セル群G1〜G8それぞれの内部には、矩形パルス状の電流路P1が形成される。
【0028】
図8は、電流路P1の一部拡大図である。セル内電流により電流路P1に沿って同心円状に磁界が発生する。しかし、セル20のセル内電流方向は行方向(X軸方向)で隣にあるセル20のセル内電流方向と反対向きとなっている。そのため、セル内電流により発生する行方向の磁界は交互に反対向きとなって打ち消し合う。また、セル20のセル内電流方向は列方向(Z軸方向)で隣にあるセル20のセル内電流方向と反対向きとなっている。そのため、セル内電流により発生する列方向の磁界は交互に反対向きとなって打ち消し合う。
【0029】
また、図7(B)は、セル群内電流により形成される電流路P2を示したものである。セル群内電流とは、セル群を1つのセルと見なした場合に、セル群内に流れる電流の方向、すなわち、セル群のマイナス端子からセル群のプラス端子に向う方向のことである。セル群のマイナス端子とはセル群の電流入力端子(セル群の一方の端にあるセル20のマイナス端子22M)のことであり、セル群のプラス端子とはセル群の電流出力端子(セル群の他方の端にあるセル20のプラス端子22P)のことである。
【0030】
セル群G1〜G8はプラス極とマイナス極が交互に反転する交互配置となっているので、電流路P2も矩形パルス状となる。セル群内電流方向は列方向(Z軸方向)で隣にあるセル群のセル群内電流方向と反対向きとなる。そのため、セル群内電流により発生する列方向の磁界は、図8に示すセル内電流の場合と同様に、交互に反対向きとなって打ち消し合う。
【0031】
本実施形態によれば、電池1を構成する複数のセル20がマトリクス状に配置されている。また、セル20それぞれのセル内電流方向は、行方向及び列方向で隣にあるセル20のセル内電流方向と反対向きとなっている。そのため、セル内電流により発生する磁界は互いに打ち消し合うので、電池1が外部に発生させる磁界は小さくなる。
【0032】
また、セル群それぞれのセル群内電流方向は、列方向で隣にあるセル群のセル群内電流方向と反対向きとなっている。そのため、セル群内電流により発生する磁界は互いに打ち消し合うので、電池1が外部に発生させる磁界はさらに小さくなる。
【0033】
(実施形態2)
実施形態1では、列方向に1列に積層した8つの電池モジュール100(セル群G1〜G8)で電池1を構成した。しかしながら、電池1を構成するセル群は必ずしも一列でなくてもよい。以下、実施形態2の電池1について説明する。
【0034】
図9は実施形態2の電池1を構成するマトリクスM2を示す図である。マトリクスM2は、16個のセル群G1〜G16で構成されている。セル群G1〜G16は、それぞれ、実施形態1で説明した電池モジュール100である。マトリクスM2は、実施形態1のマトリクスM1とは異なり、セル群列B1(第1のセル群列)及びセル群列B2(第2のセル群列)の2列のセル群列で構成されている。セル群列とは、セル群を列方向に積層したものである。セル群列B1はセル群G1〜セル群G8の8つのセル群で構成され、セル群列B2はセル群G9〜セル群G16の8つのセル群で構成される。これら16個のセル群G1〜G16は直列接続されている。
【0035】
1つのセル群は、16個のセル20で構成される。16個のセル20は、プラス極とマイナス極が交互に反転する交互配置となっている。実施形態1と同様に、1つのセル群に属する16個のセル20は直列接続されている。セル群G1〜G16も直列接続されているので、マトリクスM2に属する256個(16行×16列)のセル20は全て直列接続された状態となっている。
【0036】
図10(A)は、電池1を負荷に接続したときに、電池1の内部に形成される電流路を示したものである。セル群列B1に属するセル群G1〜G8及びセル群列B2に属するセル群G9〜G16は、両方とも、上から順にプラス極とマイナス極が交互に反転する交互配置となっている。セル群列B1、B2は行方向に並べられ、1つのマトリクスを形成している。セル群列B1、B2に属する16個のセル群の極性の方向は、いずれも、隣り合う左右のセル群で同じとなっている。例えば、セル群G1とその右隣りのセル群G16は両方とも左側がプラス極であり右側がマイナス極である。その下のセル群G2とセル群G15は両方とも左側がプラス極であり右側がマイナス極である。
【0037】
1つのセル群内のセル20は交互配置となっている。そのため、セル群G1〜G16それぞれの内部には、矩形パルス状の電流路P1が形成される。セル内電流方向は行方向(X軸方向)で隣にあるセル20のセル内電流方向と反対向きとなっている。そのため、セル内電流により発生する行方向の磁界は交互に反対向きとなって打ち消し合う。また、セル内電流方向は列方向(Z軸方向)で隣にあるセル20のセル内電流方向と反対向きとなっている。そのため、セル内電流により発生する列方向の磁界は交互に反対向きとなって打ち消し合う。
【0038】
図10(B)は、セル群内電流により形成される電流路P2を示したものである。セル群列B1内のセル群G1〜G8はプラス極とマイナス極が交互に反転する交互配置となっているので、セル群列B1に形成される電流路P2も電流路P1と同様に矩形パルス状となる。同様に、セル群列B2内のセル群G9〜G16もプラス極とマイナス極が交互に反転する交互配置となっているので、セル群列B2内に形成されるセル群内電流の電流路P2も矩形パルス状となる。セル群内電流方向は列方向(Z軸方向)で隣にあるセル群のセル群内電流方向と反対向きとなるので、セル群内電流により発生する列方向の磁界は交互に反対向きとなって打ち消し合う。
【0039】
また、セル群列B1は列方向下向き(Z軸マイナス方向)に電流が流れており、セル群列B2は列方向上向き(Z軸プラス方向)に電流が流れている。そのため、セル群列を1つのセルと見なしたときに、セル群列内電流方向(図10(B)に示す電流路P3を流れる電流の方向)は、セル群列B1とB2で反対向きとなる。従って、セル群列内電流により発生する行方向の磁界は反対向きとなって打ち消し合う。
【0040】
本実施形態によれば、セル内電流方向及びセル群内電流方向が交互に反対向きとなっているので、電池1が外部に発生させる磁界は小さくなる。また、実施形態2の電池1はセル群列内電流方向が反対向きとなった2つのセル群列で構成されている。セル群列内電流による行方向の磁界は打ち消し合うので、電池1が外部に発生させる磁界はさらに小さくなる。
【0041】
(実施形態3)
実施形態2では、セル群間を流れる電流の方向(図10(B)のP3で示す方向)はセル群列内では同一方向であった。しなしながら、セル群間の電流の方向はセル群列内で異なるものであってもよい。以下、実施形態3の電池1について説明する。
【0042】
図11は、実施形態3の電池1を構成するマトリクスM3を示す図である。マトリクスM3は、16個のセル群G1〜G16で構成されている。セル群G1〜G16は、それぞれ、実施形態1で説明した電池モジュール100である。マトリクスM3は、実施形態2のマトリクスM2と同様に、セル群列B1(第1のセル群列)及びセル群列B2(第2のセル群列)の2列のセル群列で構成されている。
【0043】
セル群列B1とB2はそれぞれ8つのセル群で構成されている。セル群列B1に配置されるセル群は、上から順にG1、G2、G14、G13、G12、G11、G7、G8となっている。また、セル群列B2に配置されるセル群は、上から順にG16、G15、G3、G4、G5、G6、G10、G9となっている。これら16個のセル群G1〜G16は直列接続されている。接続順は、符号の若い順、すなわち、G1、G2、・・・、G16の順となっている。
【0044】
1つのセル群は、16個のセル20で構成される。16個のセル20は、プラス極とマイナス極が交互に反転する交互配置となっている。実施形態1と同様に、1つのセル群に属する16個のセル20は直列接続されている。セル群G1〜G16も直列接続されているので、マトリクスM2に属する256個(16行×16列)のセル20は全て直列接続された状態となっている。
【0045】
図12は、電池1を負荷に接続したときに、電池1の内部に形成される電流路を示したものである。セル群列B1、B2に属する16個のセル群の極性の方向は、いずれも、列方向の少なくとも一方の隣にあるセル群の極性方向と反対向きになっている。例えば、セル群G1は左側がプラス極であり右側がマイナス極であるが、その下に隣接するセル群G2は左側がマイナス極であり右側がプラス極となっている。また、セル群列B1、B2に属する16個のセル群の極性の方向は、いずれも、隣り合う左右のセル群で同じとなっている。例えば、セル群G1とその右隣りのセル群G16は、両方とも、左側がプラス極であり右側がマイナス極である。
【0046】
1つのセル群内のセル20は交互配置となっている。そのため、セル群G1〜G16それぞれの内部には、矩形パルス状の電流路P1が形成される。セル内電流方向は行方向(X軸方向)で隣にあるセル20のセル内電流方向と反対向きとなっている。そのため、セル内電流により発生する行方向の磁界は交互に反対向きとなって打ち消し合う。また、セル内電流方向は列方向(Z軸方向)で隣にあるセル20のうち、少なくとも一方のセル20のセル内電流方向と反対向きとなっている。そのため、セル内電流により発生する列方向の磁界は反対向きとなって打ち消し合う。
【0047】
図13は、セル群内電流により形成される電流路P2を示したものである。セル群内電流方向は列方向(Z軸方向)の少なくとも一方の隣にあるセル群のセル群内電流方向と反対向きとなるので、セル群内電流により発生する列方向の磁界は交互に反対向きとなって打ち消し合う。
【0048】
なお、セル群列B1に属するセル群とセル群列B2に属するセル群とを接続する列間接続には、複数の交差接続が含まれる。交差接続とは2列のセル群列の2段4個セル群が交差するように接続されることをいう。より具体的には、交差接続とは、一方のセル群列のN段目のセル群の電流出力(プラス極)と他方のセル群列のN+1段目のセル群の電流入力(マイナス極)が接続され、さらに、一方のセル群列のN+1段目のセル群の電流出力(プラス極)と他方のセル群列のN段目のセル群の電流入力(マイナス極)が接続されることをいう。
【0049】
本実施形態の場合、上から2段目3段目の4個のセル群G2、G3、G14、G15が交差接続C1を形成しており、上から6段目7段目の4個のセル群G10、G11、G6、G7が交差接続C2を形成している。図14は、セル群とセル群とを電流の流れに沿って接続することにより形成される電流路P4を示す図である。マトリクスM3には2つの交差接続が含まれるので、本実施形態の電池1の内部には、L1〜L3の3つの電流ループが形成される。
【0050】
3つの電流ループに属するセル群の数は列方向に順に1:2:1の割合となっている。本実施形態の場合、電流ループL1には、4つのセル群G1、G2、G15、G16が属している。また、電流ループL2には、8つのセル群G3、G4、G5、G6、G11、G12、G13、G14が属している。また、電流ループL3には、4つのセル群G8、G7、G9、G10が属している。なお、電流ループとは、磁界の発生源としての電流のループのことであり、必ずしも電気回路的に電流路が閉じている必要はない。
【0051】
隣接する電流ループのループ方向は互いに反対向きとなっている、電流ループL1、L3のループ方向は前方向から見て反時計回りとなっており、電流ループL2のループ方向は前方向から見て時計回りとなっている。電流ループL2大きさは、電流ループL1、L3の2倍となっているので、電流ループL1〜L3が発生させる磁界は互いに打ち消し合う。
【0052】
本実施形態によれば、セル内電流方向及びセル群内電流方向が反対向きとなっているので、電池1が外部に発生させる磁界は小さくなる。また、実施形態3の電池1は、電流ループが電池1内に複数形成されるように交差接続が含まれている。そして、複数の電流ループのループ方向は交互に反対向きとなっている。電流ループが発生させる磁界は打消し合うので、電池1が外部に発生させる磁界はさらに小さくなる。
【0053】
上述の各実施形態はそれぞれ一例を示したものであり、種々の変更及び応用が可能である。例えば、実施形態1では、マトリクスM1を構成するセル20の行方向の数は8個であるものとしたが、行方向のセル20の数は8個より多くてもよいし少なくてもよい。消磁を考慮した場合、望ましい行方向のセル20の数は偶数、より望ましくは4の倍数である。実施形態1では、マトリクスM1を構成するセル20の行方向の数は16個であるものとしたが、列方向のセル20の数は16個より多くてもよいし少なくてもよい。消磁を考慮した場合、望ましい列方向のセル20の数は偶数、より望ましくは4の倍数である。実施形態2、3のマトリクスM2、M3についても、行方向及び列方向のセル20の数は偶数或いは4の倍数が望ましい。
【0054】
また、実施形態2では、マトリクスM2は2列のセル群列で構成されるものとしたが、行方向に並べるセル群列は2列以上あってもよい。このとき、セル群列の数は偶数或いは4の倍数であってもよい。また、電池1は、さらに、マトリクスM2を行方向及び列方向と垂直な方向(Y軸方向)に並べたものであってもよい。この場合、マトリクスM2の数は偶数或いは4の倍数であってもよい。また、実施形態2では、1つのセル群列を構成するセル群の数は8個であるものとしたが、8個より多くてもよいし少なくてもよい。消磁を考慮した場合、望ましいセル群の数は偶数、より望ましくは4の倍数である。セル群を構成するセル20の数も偶数或いは4の倍数が望ましい。
【0055】
また、実施形態3では、マトリクスM3は2列のセル群列で構成されるものとしたが、行方向に並べるセル群列は2列以上あってもよい。このとき、セル群列の数は偶数或いは4の倍数であってもよい。また、電池1は、さらに、マトリクスM3を行方向及び列方向と垂直な方向(Y軸方向)に並べたものであってもよい。この場合、マトリクスM3の数は偶数或いは4の倍数であってもよい。また、実施形態3では、1つのセル群列を構成するセル群の数は8個であるものとしたが、8個より多くてもよいし少なくてもよい。消磁を考慮した場合、望ましいセル群の数は偶数、より望ましくは4の倍数である。セル群を構成するセル20の数も偶数或いは4の倍数が望ましい。
【0056】
また、実施形態3では、電池1に含まれる電流ループは3つであるものとした。しかしながら、電池1に形成される電流ループは3つに限られない。例えば、マトリクスM3に含まれる交差接続を1つとし(例えば、4段目5段目の4つのセル群)に交差接続を形成し、電池1に2つの電流ループを形成してもよい。電流ループが2つの場合、形成される電流ループの大きさ(属するセル群の数)は同じであってもよい。もちろん、電池1に含まれる電流ループは3より多くてもよい。また、マトリクスM3をY軸方向に並べる場合、前後に隣接する電流ループでループ方向が反対となるようループを形成してもよい。
【0057】
また、上述の実施形態では、電池モジュール100を並べてセル20のマトリクスM1〜M3を形成したが、マトリクスの形成方法これに限られるものではない。単純に、絶縁板或いは放熱板を挟んでセル20をマトリクス状に並べるだけであってもよい。
【0058】
また、上述の実施形態では、セル20は蓄電可能なセルであるものとしたが、必ずしも蓄電可能でなくてもよい。また、上述の実施形態では、セル20はリチウムイオン式のセルであるものとして説明したが、セル20はリチウムイオン方式に限られない。セル20は、例えば、ニカド方式、ニッケル水素方式、アルカリ方式、の電池であってもよい。
【0059】
また、上述の実施形態では、セル20は長方形の板状体であるものとしたが、セルの形状は板状に限られない。例えば、セル20の形状は、円筒形、角形、ボタン形(コイン形)、ラミネート形、ピン形であってもよい。
【0060】
また、上述の実施形態では、電池1は蓄電池(二次電池)であるものとして説明したが、電池1は一次電池であってもよい。また、電池1は燃料電池であってもよい。電池1を燃料電池とする場合、電池1を構成するセル20は発電セルであってもよい。
【0061】
また、上述の実施形態の電池1は移動体に設置されるものとして説明したが、電池1は建造物に設置されて使用されてもよい。また、電池1は、電気装置に設置されて使用されてもよい。電気装置は、例えば、発電装置や変電装置であってもよいし、冷蔵庫等の電気機器であってもよい。電池1が設置される場合、自動車、鉄道、航空機、船等の移動体も電気装置とみなすことができる。
【0062】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことが出来る。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
1...電池
11F、11B...冷却プレート
12L、12R...側板
13...天板
14...電池管理装置
15...ベース
20...セル
22...端子
22M...マイナス端子
22P...プラス端子
100...電池モジュール
110...セル監視装置
120...モジュール本体
G1〜G16...セル群
B1、B2...セル群列
P1〜P4...電流路
C1、C2...交差接続
L1〜L3...電流ループ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14