(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
脂肪族ポリエステル(A)100重量部に対し、シリカ(B)5〜23重量部と分散助剤(C)8〜23重量部とを含有する脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法であって、
脂肪族ポリエステル(A)にシリカ(B)および分散助剤(C)を混合する第一工程と、
第一工程で得られた混合物を溶融混練する溶融混練工程とを含み、
第一工程で混合する脂肪族ポリエステル(A)が、平均粒子径100〜700μmの粒子状脂肪族ポリエステルであることを特徴とする脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
第一工程が、脂肪族ポリエステル(A)に、シリカ(B)と分散助剤(C)と脂肪族芳香族ポリエステル(D)とを混合する工程である請求項1に記載の脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
第一工程で混合する脂肪族ポリエステル(A)が、平均粒子径200〜450μmの粒子状脂肪族ポリエステルである請求項1〜3のいずれか一項に記載の脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
第一工程で混合するシリカ(B)が、160℃で揮発する吸着水分量が0.5重量%以上7重量%以下のシリカである請求項1〜4のいずれか一項に記載の脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
分散助剤(C)が、グリセリンエステル系化合物、アジピン酸エステル系化合物、ポリエーテルエステル系化合物及びイソソルバイドエステル系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜5のいずれか一項に記載の脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチック廃棄物が、生態系への影響、燃焼時の有害ガス発生、大量の燃焼熱量による地球温暖化等、地球環境への大きな負荷を与えることが問題となっており、前記問題を解決できるものとして、生分解性プラスチックの開発が盛んになっている。
【0003】
中でも生分解性プラスチックが植物由来の場合、前記生分解性プラスチックを燃焼させた際に出る二酸化炭素は、もともと空気中にあったもので、大気中の二酸化炭素は増加しない。このことをカーボンニュートラルと称し、二酸化炭素削減目標値を課した京都議定書の下、重要視され、積極的な使用が望まれている。
【0004】
最近、生分解性およびカーボンニュートラルの観点から、植物由来のプラスチックとして脂肪族ポリエステル系樹脂が注目されており、特にポリヒドロキシアルカノエート(以下、PHAと称する場合がある)系樹脂、さらにはPHA系樹脂の中でもポリ(3−ヒドロキシブチレート)単独重合樹脂(以下、P3HBと称する場合がある)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレレート)共重合樹脂(以下、P3HB3HVと称する場合がある)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)共重合樹脂(以下、P3HB3HHと称する場合がある)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−4−ヒドロキシブチレート)共重合樹脂(以下、P3HB4HBと称する場合がある)およびポリ乳酸(以下、PLAと称する場合がある)等が注目されている。
【0005】
しかしながら、脂肪族ポリエステルやそれを含む樹脂組成物からなるフィルムやシートは引裂強度が不充分で実用特性に劣るのが実情であり、前記特性を改善するために様々な検討が行われている。
【0006】
特許文献1には、脂肪族ポリエステルとポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)と親水性シリカと可塑剤とを配合した処方で引裂強度を改良したポリエステル樹脂組成物が開示されており、当該組成物の製造方法として、脂肪族ポリエステルと親水性シリカと可塑剤を溶融混練する第1工程、それにPBATを添加し溶融混練する第2工程を含む製造方法が開示されている。
【0007】
特許文献2には、高引裂強度、且つ易生分解性を目的として脂肪族ポリエステル系樹脂と芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂と無機粒子を含有する樹脂組成物を成形する技術が開示されている。しかしながら、当該技術により得られる樹脂組成物は、例えば重量物や様々な形状の物を入れて使用するショッピングバッグやゴミ袋、あるいは農業用資材などに用いられるフィルムに用いられる場合には、引裂強度が極端に低すぎてとても実用的とはいえるものではないことに加えて、例えば嵩密度が小さく2次凝集しやすい無機粒子を用いる場合は特許文献2に開示された方法で加工しても分散性に問題が発生する場合があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献1に記載された製造方法によると、透明性、成形性、及び機械的特性に優れ、さらには生分解性にも優れた樹脂組成物を得ることができる。しかしながら、本発明者が本方法について継続して検討した結果、シリカの分散性向上及び樹脂組成物の引張強度向上の観点で、上記方法にはさらなる改善の余地があることがわかった。
【0010】
本発明は、少なくとも脂肪族ポリエステルとシリカと分散助剤を含む樹脂組成物を溶融混練して得るにおいて、安定してシリカの良分散性を確保でき、且つ樹脂組成物の生産性を改善する製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の粒径の脂肪族ポリエスエルをその他特定の原料と特定の配合量で溶融混練前に混合することにより、安定してシリカの良分散性を確保でき、且つ樹脂組成物の生産性を改善できる製造方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、例えば下記発明を提供する。
【0013】
[1]脂肪族ポリエステル(A)100重量部に対し、シリカ(B)5〜23重量部と分散助剤(C)8〜23重量部とを含有する脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法であって、
脂肪族ポリエステル(A)にシリカ(B)および分散助剤(C)を混合する第一工程と、
第一工程で得られた混合物を溶融混練する溶融混練工程とを含み、
第一工程で混合する脂肪族ポリエステル(A)が、平均粒子径100〜700μmの粒子状脂肪族ポリエステルであることを特徴とする脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【0014】
[2]第一工程が、脂肪族ポリエステル(A)に、シリカ(B)と分散助剤(C)と脂肪族芳香族ポリエステル(D)とを混合する工程である[1]に記載の脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【0015】
[3]溶融混練工程の後、得られた混練物と脂肪族芳香族ポリエステル(D)とを溶融混練する工程を含む[1]に記載の脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【0016】
[4]第一工程で混合する脂肪族ポリエステル(A)が、平均粒子径200〜450μmの粒子状脂肪族ポリエステルである[1]〜[3]のいずれか一つに記載の脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【0017】
[5]第一工程で混合するシリカ(B)が、160℃で揮発する吸着水分量が0.5重量%以上7重量%以下のシリカである[1]〜[4]のいずれか一つに記載の脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【0018】
[6]分散助剤(C)が、グリセリンエステル系化合物、アジピン酸エステル系化合物、ポリエーテルエステル系化合物及びイソソルバイドエステル系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である[1]〜[5]のいずれか一つに記載の脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【0019】
[7]脂肪族ポリエステル樹脂組成物が成形体である[1]〜[6]のいずれか一つに記載の脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、粒径と嵩密度が低いシリカを用いた場合であっても、脂肪族ポリエステル樹脂組成物において、脂肪族ポリエステル樹脂中及び/又はさらに加え得る脂肪族芳香族ポリエステル(例えば、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)又はポリブチレンサクシネートテレフターレート(PBST))中に安定してシリカを良分散させることができ、且つシリカの低フィード性による低生産性が改良され製造方法を提供することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について、さらに詳細に説明する。
【0022】
本発明の脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法は、脂肪族ポリエステル(A)と、シリカ(B)と、分散助剤(C)とを必須成分として含有し、かつシリカ(B)を脂肪族ポリエステル(A)100重量部に対して5〜23重量部、分散助剤(C)を脂肪族ポリエステル(A)100重量部に対して8〜23重量部含有する脂肪族ポリエステル樹脂組成物(「本発明の脂肪族ポリエステル樹脂組成物」と称する場合がある)を製造する方法である。本発明の脂肪族ポリエステル樹脂組成物は、さらに脂肪族芳香族ポリエステル(D)等のその他の成分を含んでいてもよい。
【0023】
(脂肪族ポリエステル)
本発明で用いられる脂肪族ポリエステル(A)は、例えば微生物から生産されるポリヒドロキシアルカノエート(PHA)(微生物産生ポリヒドロキシアルカノエート)やPLAなどが挙げられる。
【0024】
本発明においてPHAは、一般式:[−CHR−CH
2−CO−O−]で示される繰り返し単位を含む脂肪族ポリエステル樹脂である。
【0025】
特に、PHAは、式(1) :[−CHR−CH
2−CO−O−](式中、RはC
nH
2n+1で表されるアルキル基で、nは1以上15以下の整数である。)で示される繰り返し単位を含むことが好ましい。
【0026】
PHAを生産する微生物としては、PHA類の生産能を有する微生物であれば特に限定されない。例えば、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)(以下、「PHB」と略称する場合がある。)生産菌としては、1925年に発見されたBacillus megateriumが最初で、他にもカプリアビダス・ネケイター(Cupriavidus necator)(旧分類:アルカリゲネス・ユートロファス(Alcaligenes eutrophus、ラルストニア・ユートロフア(Ralstonia eutropha))、アルカリゲネス・ラタス(Alcaligenes latus)などの天然微生物が知られており、これらの微生物ではPHBが菌体内に蓄積される。
【0027】
また、ヒドロキシブチレートとその他のヒドロキシアルカノエートとの共重合体の生産菌としては、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレレート)(以下、「PHBV」と略称する場合がある)およびポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート(以下、「PHBH」と略称する場合がある。)生産菌であるアエロモナス・キヤビエ(Aeromonas caviae)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−4−ヒドロキシブチレート)生産菌であるアルカリゲネス・ユートロファス(Alcaligenes eutrophus)などが知られている。特に、PHBHに関し、PHBHの生産性を上げるために、PHA合成酵素群の遺伝子を導入したアルカリゲネス・ユートロファス AC32株(Alcaligenes eutrophus AC32, FERM BP−6038)(T.Fukui,Y.Doi,J.Bateriol.,179,p4821−4830(1997))などがより好ましく、これらの微生物を適切な条件で培養して菌体内にPHBHを蓄積させた微生物菌体が用いられる。また上記以外にも、生産したいPHAに合わせて、各種PHA合成関連遺伝子を導入した遺伝子組換え微生物を用いても良いし、基質の種類を含む培養条件を最適化してもよい。
【0028】
本発明で用いられるPHAの分子量は、目的とする用途で、実質的に十分な物性を示すものであれば、特に制限されない。分子量が低いと得られる成形品の強度が低下する。逆に高いと加工性が低下し、成形が困難になる。それらを勘案して本発明に使用するPHAの重量平均分子量の範囲は、50,000〜3,000,000が好ましく、100,000〜1,500,000がより好ましい。
【0029】
前記重量平均分子量の測定方法は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(昭和電工社製「Shodex GPC−101」)を用い、カラムにポリスチレンゲル(昭和電工社製「Shodex K−804」)を用い、クロロホルムを移動相とし、ポリスチレン換算した場合の分子量として求めることができる。この際、検量線は重量平均分子量31,400、197,000、668,000、1,920,000のポリスチレンを使用して作成する。当該GPCにおけるカラムとしては、前記分子量を測定するのに適切なカラムを使用すればよい。
【0030】
本発明で使用し得るPHAとしては、例えば、PHB〔ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸)〕、PHBH〔ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸−コ−3−ヒドロキシヘキサン酸)〕、PHBV〔ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレレート)、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸−コ−3−ヒドロキシ吉草酸)〕、P3HB3HV3HH〔ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸−コ−3-ヒドロキシ吉草酸−コ−3-ヒドロキシヘキサン酸)〕、P3HB4HB〔ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−4−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸−コ−4−ヒドロキシ酪酸)〕、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシオクタノエート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシオクタデカノエート)、ポリ乳酸などが挙げられる。これらのなかでも、工業的に生産が容易であるため、PHB、PHBH、PHBV、P3HB3HV3HH、P3HB4HB、およびポリ乳酸が好ましい。
【0031】
PHAの繰り返し単位の組成比は、柔軟性と強度のバランスの観点から、3−ヒドロキシブチレート(3HB)の組成比が80モル%〜99モル%であることが好ましく、85モル%〜97モル%であることがより好ましい。3−ヒドロキシブチレート(3HB)の組成比が80モル%未満であると剛性が不足する傾向があり、99モル%より多いと柔軟性が不足する傾向がある。なお、前記PHAの共重合樹脂中の繰り返し単位である各組成比は、ガスクロマトグラフィー等によって測定することできる(例えば、国際公開第2014/020838号参照)。
【0032】
本発明においては、主に、低嵩密度でフィード性が悪い微粒シリカのフィード性を改良するために、また分散助剤(C)を効果的にシリカ(B)の分散に機能させるために、第一工程で混合する脂肪族ポリエステル(A)が粒子状(例えば、粉体状)の脂肪族ポリエステルである。第一工程で混合する脂肪族ポリエステル(A)の平均粒子径(マイクロトラック測定における累積50%粒径)は、100〜700μmであり、200μm以上が好ましく、より好ましくは280μm以上であり、また、600μm以下が好ましく、より好ましくは500μm以下である。平均粒子径が100μmよりも小さい場合はそのフィード性やハンドリング性の悪さから生産性が低くなるという問題が発生したりする。一方、平均粒子径が700μmより大きい場合は、シリカ(B)との粒径の差が大きくなり、そのため十分に混ざらなかったり分級したりして、脂肪族ポリエステル(A)とシリカ(B)との混合物が依然嵩高いままでフィード性が悪く生産性に問題が発生する場合や、分散助剤(C)が局所的に過多にシリカ(B)に付着することでシリカ(B)が凝集してしまう可能性がある。
【0033】
本発明の脂肪族ポリエステル樹脂組成物における脂肪族ポリエステル(A)の含有量は、樹脂組成物の全量(100重量%)に対して、10〜90重量%が好ましく、より好ましくは25〜80重量%、さらに好ましくは35〜80重量%である。上記含有量を10重量%以上とすることにより、効果的に生分解性を発現させたり、脂肪族芳香族ポリエステルの欠点であるタック性を抑制してフィルムなどを成形する場合は生産性や口開き性を確保できる傾向にある。一方、上記含有量を90重量%以下とすることにより脂肪族ポリエステルの欠点である低結晶化速度の影響が抑えられて生産性が向上する傾向がある。なお、本発明の脂肪族ポリエステル樹脂組成物において脂肪族ポリエステル(A)は、一種を単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0034】
(シリカ)
本発明において用いられるシリカ(B)としては、特にその種類は限定されないが、汎用性の観点から乾式法あるいは湿式法で製造される合成非晶質シリカが好ましい。また、疎水処理、非疎水処理いずれのものも使用可能であり、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0035】
本発明におけるシリカ(B)の配合量(総配合量)は、本発明において配合する脂肪族ポリエステル(A)の総量100重量部に対して、5〜23重量部である。5重量部より少ないとポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)やポリブチレンサクシネートテレフタレート(PBST)などの脂肪族芳香族ポリエステル(D)と複合化した際に、引裂強度などの機械特性について十分な改良効果を発現できない場合がある。また、23重量部より多い場合はシリカ(B)を良好に分散させることが難しくなる場合がある。シリカ(B)の上記配合量は、6重量部以上が好ましく、より好ましくは8重量部以上、また、20重量部以下が好ましく、より好ましくは18重量部以下、さらに好ましくは15重量部以下である。
【0036】
本発明における第一工程で混合するシリカ(B)としては、吸着水分量が0.5重量%以上7重量%以下のシリカが好ましい。吸着水分量は、例えば研精工業株式会社製電磁式はかりMX−50を用いて160℃における揮発分を吸着水分量として測定することが出来る。吸着水分量が7重量%より大きい場合、シリカ(B)表面や粒子間に吸着した水分の凝集力で分散しにくくなってフィルム成形時にフィッシュアイとなって外観不良を起こす場合がある。また逆に0.5重量%未満の場合、この僅かに粒子間に残った水分が架橋液膜を形成して表面張力で大きな結合力を生み、分離・分散が極端に難しくなる傾向がある。
【0037】
また、本発明に用いられるシリカ(B)の平均一次粒子径は、フィルムやシートの引き裂き強度を向上させることができ、フィッシュアイ等の外観上の欠陥を生じにくく、透明性を大きく損なうことがなければ特に限定されないが、引き裂き強度等の機械的特性の向上効果が得られやすく、透明性に優れている点で、0.001〜〜0.1μmであることが好ましく、0.005μm〜0.05μmであることが特に好ましい。なお、平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察した任意の50個以上の一次粒子の径を算術平均することにより求められる。
【0038】
(分散助剤)
本発明において用いられる分散助剤(C)としては、例えばグリセリンエステル系化合物、アジピン酸エステル系化合物、ポリエーテルエステル系化合物、フタル酸エステル系化合物、イソソルバイドエステル系化合物、ポリカプロラクトン系化合物などが例示される。これらのうち、樹脂成分への親和性に優れブリードしにくいことから、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリンジアセトモノカプリレート、グリセリンジアセトモノデカノエートなどの変性グリセリン系化合物;ジエチルヘキシルアジペート、ジオクチルアジペート、ジイソノニルアジペートなどのアジピン酸エステル系化合物;ポリエチレングリコールジベンゾエート、ポリエチレングリコールジカプリレート、ポリエチレングリコールジイソステアレートなどのポリエーテルエステル系化合物が好ましく、更にはバイオマス由来成分を多く含むものが組成物全体のバイオマス度を高めることができることから特に好ましい。この様な分散助剤としては、理研ビタミン株式会社の「リケマール」(登録商標)PLシリーズやROQUETTE社のPolysorbシリーズなどが例示される。分散助剤は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0039】
本発明における分散助剤(C)の配合量(総配合量)は、本発明に配合する脂肪族ポリエステル(A)の総量100重量部に対して8〜23重量部である。8重量部未満では、シリカ(B)の分散助剤としての機能が十分に発揮できない場合があったり、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)やポリブチレンサクシネートテレフタレート(PBST)などの脂肪族芳香族ポリエステル(D)と複合化した際に引裂強度などの機械特性について十分な改良効果を発現できない場合がある。一方、23重量部を超えると、ブリードアウトの原因になる場合がある。分散助剤(C)の上記配合量は、13重量部以上が好ましく、より好ましくは15重量部以上、また、22重量部以下が好ましく、より好ましくは21重量部以下である。
【0040】
(脂肪族芳香族ポリエステル)
本発明で使用する脂肪族芳香族ポリエステル(D)としては、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリブチレンセバケートテレフタレート、ポリブチレンアゼレートテレフタレート、ポリブチレンサクシネートテレフタレート(PBST)などが挙げられる。ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)とは、1,4−ブタンジオールとアジピン酸とテレフタル酸のランダム共重合体のことをいい、中でも、特表平10−508640号公報等に記載されているような、(a)主としてアジピン酸もしくはそのエステル形成性誘導体またはこれらの混合物35〜95モル%、テレフタル酸もしくはそのエステル形成性誘導体またはこれらの混合物5〜65モル%(個々のモル%の合計は100モル%である)よりなる混合物に、(b)ブタンジオールが含まれている混合物(ただし(a)と(b)とのモル比が0.4:1〜1.5:1)の反応により得られるPBATが好ましい。PBATの市販品としてはBASF社製「エコフレックス F blend C1200」(登録商標)などが挙げられる。またポリブチレンサクシネートテレフターレート(PBST)としては、前記PBATのアジピン酸もしくはそのエステル形成性誘導体の部分をセバシン酸もしくはそのエステル形成性誘導体に置き換わったことをいい、PBSTの市販品としてはBASF社製「エコフレックス FS blend B1100」(登録商標)などが挙げられる。また、脂肪族芳香族ポリエステル(D)は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。本発明においては、脂肪族芳香族ポリエステル(D)と脂肪族ポリエステル(A)とを複合化することで、引裂強度などの機械的特性をいっそう改良することが出来る。
【0041】
本発明の脂肪族ポリエステル樹脂組成物における脂肪族芳香族ポリエステル(D)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、脂肪族ポリエステル(A)100重量部に対して、10〜900重量部が好ましく、より好ましくは25〜400重量部、さらに好ましくは40〜250重量部である。10重量部以上とすることにより、樹脂組成物全体の溶融張力を増加させて成形性や生産性が向上する傾向がある。一方、900重量部以下とすることにより、脂肪族芳香族ポリエステル(D)の欠点であるタック性が抑制されて生産性が向上したり、効率的な生分解性が発現する傾向がある。
【0042】
また、本発明の脂肪族ポリエステル樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で有機系または無機系フィラーなどを含んでいても良い。これらの中でも生分解性およびカーボンニュートラルの観点から、例えば、木屑、木粉、オガ屑などの木質系材料、米殻、米粉、澱粉、コーンスターチ、稲わら、麦わら、天然ゴム等の天然由来の材料が好ましい。これらは一種を単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。当該有機系または無機系フィラーの配合量は、適宜設定することができる。
【0043】
また本発明の脂肪族ポリエステル樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、通常の添加剤として使用されるシリカ以外の充填剤、顔料、染料などの着色剤、活性炭、ゼオライト等の臭気吸収剤、バニリン、デキストリン等の香料、酸化防止剤、抗酸化剤、耐候性改良剤、紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、撥水剤、抗菌剤、摺動性改良剤、その他の添加剤を一種または二種以上を添加してもよい。当該添加剤の配合量は、適宜設定することができる。
【0044】
本発明の脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法は、以下の第一工程および溶融混練工程を必須の工程として含む。
第一工程:脂肪族ポリエステル(A)にシリカ(B)および分散助剤(C)を混合する工程
溶融混練工程:第一の工程で得られた混合物を溶融混練する工程
なお、第一工程は、溶融混練工程に付す混合物を得るための工程であり、当該工程における「混合」は、通常、脂肪族ポリエステル(A)が溶融する温度未満で実施され、すなわち、非溶融状態での混合を意味する。
【0045】
(溶融混練前材料混合法:第一工程他)
本発明の脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法は、脂肪族ポリエステル(A)にシリカ(B)及び分散助剤(C)を混合する工程であればよく、当該工程においてはさらにその他の成分を混合してもよい。その他の成分としては、例えば、脂肪族芳香族ポリエステル(D)などが挙げられる。すなわち、第一工程は、脂肪族ポリエステル(A)に、シリカ(B)と分散助剤(C)と脂肪族芳香族ポリエステル(D)とを混合する工程であってもよい。なお、当該工程において混合する脂肪族ポリエステル(A)、シリカ(B)、分散助剤(C)および脂肪族芳香族ポリエステル(D)はそれぞれ(特に、脂肪族ポリエステル(A)、脂肪族芳香族ポリエステル(D))、本発明の脂肪族ポリエステル樹脂組成物を構成する総量であってもよいし、一部の量であってもよい。一部の量である場合、残りは例えば溶融混練工程において配合することができる。なお、脂肪族ポリエステル(A)に対するシリカ(B)、分散助剤(C)、脂肪族芳香族ポリエステル(D)の混合は、同時に実施してもよいし、逐次に実施してもよい。
【0046】
(溶融混練方法;溶融混練工程)
本発明の脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法の溶融混練工程においては、単軸押出機、二軸押出機、プラネタリーローラー押出機、バンバリーミキサーなどの公知の混練機を用いることができる。これらのうち、汎用性、そしてシリカ(B)の分配・分散や剪断の制御のし易さから、二軸押出機が好ましい。また、溶融混練機の設定条件としては、脂肪族ポリエステル(A)の熱分解を抑制できることから、シリンダー設定温度を180℃以下とすることが好ましい。当該工程においては、さらに脂肪族ポリエステル(A)(第一工程において混合しなかった残りの脂肪族ポリエステル(A))や脂肪族芳香族ポリエステル(D)等を配合してもよい。配合の方法については公知の方法を採用でき、例えばサイドフィーダー等のフィーダーを使用した配合を実施することができる。
【0047】
また、溶融混練工程は、一段階で実施することもできるし、二段階以上に分けて実施することもできる。例えば、溶融混練工程を二段階に分けて実施する場合、例えば、まず第一の溶融混練工程において脂肪族ポリエステル(A)、シリカ(B)及び分散助剤(C)の溶融混練物を得、その後、第二の溶融混練工程において当該混練物と脂肪族芳香族ポリエステル(D)とを溶融混練することにより、実施できる。
【0048】
(脂肪族芳香族ポリエステルの複合(混合))
本発明の脂肪族ポリエステル樹脂組成物には、上述のように、脂肪族芳香族ポリエステル(D)を、脂肪族ポリエステル樹脂組成物を製造する途中あるいは後で複合しても良い。すなわち、本発明の脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法は、上述の必須の工程以外にも、脂肪族芳香族ポリエステル(D)を混合する工程を含んでいてもよい。脂肪族芳香族ポリエステル(D)の混合は、溶融混練によって実施してもよいし(例えば、上述の溶融混練工程において実施してもよい)、非溶融混練によって実施してもよい(例えば、上述の第一工程において実施してもよい)。より詳しくは、脂肪族芳香族ポリエステル(D)の複合方法(混合方法)としては、脂肪族ポリエステル(A)、シリカ(B)、及び分散助剤(C)の混合物を押出機に投入する根元ホッパーと同じ箇所から別フィーダーで供給しても良いし、サイドフィードしても良い。あるいは脂肪族ポリエステル(A)、シリカ(B)、及び分散助剤(C)からなる組成物(脂肪族ポリエステル樹脂組成物)を一度製造した後に、当該組成物と脂肪族芳香族ポリエステル(D)とをドライブレンドした上で溶融混練して複合化してもよい。脂肪族芳香族ポリエステル(D)の混合は、生産性の観点で、溶融混練によって実施する(すなわち、上述の溶融混練工程において実施する)ことが好ましく、特に、脂肪族ポリエステル(A)、シリカ(B)及び分散助剤(C)の溶融混練物に対して、脂肪族芳香族ポリエステル(D)を溶融混練することにより実施することがより好ましい。
【0049】
本発明の脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法で得られた脂肪族ポリエステル樹脂組成物は単独で、または種々の樹脂と複合化したり、または種々の樹脂と多層化するなどの成形加工を実施することができる。例えばフィルムまたはシートに加工する際の成形加工方法としては、インフレーション法やTダイ押出法などの公知の方法を用いることができる。具体的な条件については適宜設定すればよいが、例えば、インフレーション法では、インフレーション成形前に除湿乾燥機などでペレットの水分率が500ppm以下になるまで乾燥し、シリンダー設定温度100〜160℃、アダプターおよびダイスの設定温度を130〜160℃にすることが好ましい。
【0050】
本発明の脂肪族ポリエステル樹脂組成物は、フィルムまたはシートに加工した際に、シリカ不分散による外観不良の問題なく、また特にPBATやPBSTと複合化した場合はいっそう高い引裂強度を発現することができる。
【0051】
フィルムまたはシートの厚みについて厳格な規定はないが、厚み1〜100μm程度を一般にフィルム、厚み100μmを超えて2mm程度までをシートとよぶ。
【0052】
本発明のフィルムまたはシートは、農業、漁業、林業、園芸、医学、衛生品、食品産業、衣料、非衣料、包装、自動車、建材、その他の分野に好適に用いることができる。例えば農業用マルチフィルム、林業用燻蒸シート、フラットヤーン等を含む結束テープ、植木の根巻フィルム、おむつのバックシート、包装用シート、ショッピングバック、ゴミ袋、水切り袋、その他コンポストバック等の用途に用いられる。
【0053】
本発明の脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法は、脂肪族ポリエステル樹脂組成物を成形加工する工程を含んでいてもよい。この成形加工する工程は、上述の溶融混練工程と連続して実施するものであってもよいし、非連続で実施するものであってもよい。成形加工の方法としては、上述の公知の方法が挙げられる。本発明の脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法が成形加工する工程を含む場合は、上記製造方法によって成形加工された(すなわち、成形体である)脂肪族ポリエステル樹脂組成物が得られる。成形体としては特に限定されず、上述のように例えばフィルムやシートが挙げられる。
【実施例】
【0054】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は当該実施例により限定されるものではない。
【0055】
[脂肪族ポリエステル]
本実施例で使用する脂肪族ポリエステルA−1は、国際公開第2013/147139号に記載の方法に準じて得た、3−ヒドロキシヘキサノエート(3HH)組成が11.2モル%の平均粒子径330μmの粒子状PHBH(粉体)である。GPCで測定した当該PHBHの重量平均分子量は、57万であった。
【0056】
脂肪族ポリエステルA−2は、国際公開第2013/147139号に記載の方法において、菌体残渣をろ別後、エバポレーターで総容量が30mLになるまで濃縮後、90mLのヘキサンを徐々に加えてPHAを析出させる際に、ヘキサンの添加速度および攪拌速度を小さくすることで得た、平均粒子径150μmの粒子状PHBH(粉体)である。GPCで測定した当該PHBHの重量平均分子量は57万であった。
【0057】
脂肪族ポリエステルA−3は、国際公開第2013/147139号に記載の方法において、菌体残渣をろ別後、エバポレーターで総容量が30mLになるまで濃縮後、90mLのヘキサンを徐々に加えてPHAを析出させる際に、ヘキサンの添加速度および攪拌速度を大きくすることで得た、平均粒子径670μmの粒子状PHBH(粉体)である。GPCで測定した当該PHBHの重量平均分子量は57万であった。
【0058】
脂肪族ポリエステルA−4は、国際公開2013/147139号に記載の方法において、菌体残渣をろ別後、エバポレーターで総容量が30mLになるまで濃縮後、90mLのヘキサンを徐々に加えてPHAを析出させる際に、ヘキサンの添加速度および攪拌速度を極端に大きくすることで得た、平均粒子径800μmの粒子状PHBH(粉体)である。GPCで測定した当該PHBHの重量平均分子量は57万であった。
【0059】
脂肪族ポリエステルA−5は、国際公開第2013/147139号に記載の方法において、菌体残渣をろ別後、エバポレーターで総容量が30mLになるまで濃縮後、90mLのヘキサンを徐々に加えてPHAを析出させる際に、ヘキサンの添加速度および攪拌速度を極端に小さくすることで得た、平均粒子径80μmの粒子状PHBH(粉体)である。GPCで測定した当該PHBHの重量平均分子量は57万であった。
【0060】
以下の実施例および比較例においては、以下の原料も用いた。
A−6:EM5400F[P3HB4HB](Ecomann社製)平均粒径299μm
【0061】
[シリカ]
B−1:Nipsil LP[湿式シリカ](東ソー・シリカ社製)
B−2:R972[乾式シリカ](日本アエロジル社製)
表1に示すシリカの平均一次粒子径はメーカーカタログ値を記載した。
【0062】
[分散助剤]
C−1:リケマールPL012[グリセリンエステル系化合物](理研ビタミン社製)
C−2:Polysorb ID46[イソソルバイドエステル系化合物](ROQUETTE社製)
【0063】
[脂肪族芳香族ポリエステル]
D−1:Ecoflex F Blend C1200(BASF社製):PBAT
D−2:Ecoflex FS Blend B1100(BASF社製):PBST
D−3:GF106/02(Biotec社製):PBAT/澱粉=66/34
【0064】
[実施例1]
(脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造)
脂肪族ポリエステルA−1、シリカB−1、及び分散助剤C−1を表1に示した配合比(表中の配合比は、重量部を示す。以下同じ。)でドライブレンドした。次に同方向噛合型二軸押出機(東芝機械社製:TEM−26SS)を用いて前記混合原料をホッパーから投入し、設定温度120〜140℃、スクリュ回転数100rpm(出口樹脂温度155℃)で溶融混練し、ポリエステル樹脂組成物を得た。出口樹脂温度はダイスから出てくる溶融した樹脂を直接K型熱電対で測定した。当該脂肪族ポリエステル樹脂組成物をダイスからストランド状に引き取り、ペレット状にカットした。
【0065】
(フィルムの製造)
150mm幅、リップ0.25mmのT型ダイスを装着した単軸押出機ラボプラストミル(東洋精機製作所製、20C200型)を用いて、ダイス設定温度160℃、スクリュー回転数40rpmの条件で上記で得られた脂肪族ポリエステル樹脂組成物を押出し、60℃に温調した冷却ロールで1m/minの速度で引き取り、40μm厚のフィルムを得た。
【0066】
(シリカ分散性[外観性]評価)
上記で得られたフィルムから幅10cm×長さ30cmの面積を任意に10箇所選び、それぞれの箇所において40μm以上のフィッシュアイが1個以下であることが全10箇所において確認できる場合を○、10箇所のうち1箇所でもフィッシュアイが2個以上確認される場合を×とした。評価結果を表1に示した。ここでいうフィッシュアイとは、例えば温度可変型偏光顕微鏡で250℃まで加熱しても溶融しないような固形物とし、250℃までの加熱の途中に溶融して固形状態を維持しないものは対象外とした。つまり、フィッシュアイとは、40μm以上のサイズのシリカ凝集体を指す。
【0067】
(平均粒子径)
シリカの平均一次粒子径はメーカーカタログ値を記載しており、脂肪族ポリエステルの粒径はNIKKISO社製マイクロトラック10.5.3−22STで測定し、累積50%における粒径を平均粒子径として記載した。全ての原料において1ピークの粒度分布を示すことが確認できた。
【0068】
(シリカ吸着水分量)
研精工業株式会社製電磁式はかりMX−50を用いて160℃における揮発分を測定し、その値を水分量(吸着水分量)として記載した。
【0069】
(ブリードアウト評価)
上記で得られたフィルムから10cm幅×100cm長さを切り出し、ZEBRA社製油性マジックで中央に1本と中央から4cmの間隔で両方に2本長さ方向に線を引いた。それを23℃、50%RHの下で6ヶ月間放置し、成形後から1週間ごとにマジック線の滲みを確認した。滲みの確認は目視および指で擦って確認した。6ヶ月経っても滲みがない場合を○、6ヶ月間の間に滲みが発生した場合を×とした。評価結果を表1に示した。
【0070】
[実施例2〜4]
配合する原料種、配合比やシリカ水分量を表1に示したように変更した以外は実施例1と同様にして、脂肪族ポリエステル樹脂組成物及びそれからなるフィルムを得、当該フィルムを用いてシリカの分散性とブリードアウトを評価した。評価結果を表1に示す。
【0071】
[比較例1]
脂肪族ポリエステルを表1に示したように変更した以外は実施例1と同様にして、脂肪族ポリエステル樹脂組成物及びそれからなるフィルムを得、当該フィルムを用いてシリカの分散性とブリードアウトを評価した。評価結果を表1に示す。
【0072】
[比較例2]
脂肪族ポリエステルを表1に示したように変更した以外は実施例1と同様にして脂肪族ポリエステル樹脂組成物を得ようと試みたが、脂肪族ポリエステルの粒径が小さすぎて嵩密度も低すぎて安定的にフィードできず、極端に吐出を下げなければ溶融混練できなかった。そのため樹脂組成物の取得は不可と判断した。
【0073】
[比較例3]
シリカ及び分散助剤の配合量を表1に示したように変更した以外は実施例1と同様にして、脂肪族ポリエステル樹脂組成物及びそれからなるフィルムを得、当該フィルムを用いてシリカの分散性とブリードアウトを評価した。評価結果を表1に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
実施例1と比較例1及び2を比較した場合、比較例1と2のように本発明で規定する適正範囲を外れる脂肪族ポリエステルを使用するとシリカの分散性や樹脂組成物の製造において問題が発生することがわかる。また、実施例1と比較例3を比較した場合、比較例3のように本発明で規定する適正範囲を外れる量のシリカと分散助剤を配合すると、シリカの分散性およびブリードアウト性に問題が発生することがわかる。一方、実施例1〜4に示すように、本発明で規定する製造方法によれば、種々の材料を用いても分散性の良い状態の脂肪族ポリエステル樹脂組成物を製造できることがわかる。
【0076】
[実施例5〜9]
実施例1で製造した脂肪族ポリエステル樹脂組成物を用いて、これを表2に示す配合比で脂肪族芳香族ポリエステルD−1〜3と混合して、得られた混合物を設定温度140℃(出口樹脂温度160℃)、スクリュ回転数100rpmで溶融混練し、脂肪族ポリエステル樹脂組成物を得た。当該脂肪族ポリエステル樹脂組成物をダイスからストランド状に引き取り、ペレット状にカットした。
【0077】
次いで、得られた脂肪族ポリエステル樹脂組成物を実施例1で用いたのと同様の成形機を用いてダイス設定温度160℃で40μm厚のフィルムを得、シリカの分散性とブリードアウトを評価した。評価結果を表2に示す。
【0078】
(引裂強度の測定)
得られたフィルム(シート)を用いて、エルメンドルフ引裂強度測定器(熊谷理器工業社製)により、JIS 8116に準拠して、MD方向の引き裂き強度を測定した。引裂強度測定結果を表3に示す。
【0079】
[比較例4、5]
実施例1で製造した脂肪族ポリエステル樹脂組成物の代わりにそれぞれ比較例1、3で製造した脂肪族ポリエステル樹脂組成物を用い、脂肪族芳香族ポリエステルD−1の配合量を表2に示すように変更した以外は実施例6と同様にして、脂肪族ポリエステル樹脂組成物及びそれからなるフィルムを得、当該フィルムを用いてシリカの分散性、ブリードアウト、および引裂強度を評価した。評価結果を表2に示す。
【0080】
【表2】
【0081】
実施例6と比較例4及び5を比較した場合、実施例6のようにシリカの分散性がよい脂肪族ポリエステル樹脂組成物と脂肪族芳香族ポリエステルとを別途溶融混練して複合化することによってシリカの分散性がよく、引裂強度が30N/mmと十分に大きいフィルムが得られることがわかる。また、実施例5〜9からわかるように、本発明の脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法で製造された脂肪族ポリエステル樹脂組成物、例えば実施例1で得られた脂肪族ポリエステル樹脂組成物を用いれば、種々の脂肪族芳香族ポリエステル(D)と複合化しても、また脂肪族芳香族ポリエステル(D)との複合化においてその配合量を変化させてもシリカの分散性がよく、引裂強度が十分に大きいフィルムが得られることがわかる。一方でシリカの分散性およびブリード性が良くない脂肪族ポリエステル樹脂組成物を用いて脂肪族芳香族ポリエステル(D)と複合化したフィルム成形体は、シリカ分散性(外観性)、ブリード性、引裂強度のうち1つ以上に問題が生じることがわかる。