(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、人形玩具のデザインテーマの1つとして、人型ロボットのデザインが知られている。人型ロボットとしてデザインされた人形玩具では、胸部や腹部、腰部など主要な躯幹は、装甲に覆われた直線的で機械的なデザインのものが多く、従来それらの躯幹パーツは1つの箱状パーツとしてデザインされてきた。その為、躯幹に設けられた可動部位の可動に不自由が生じ易かった。
【0005】
具体的には、例えば、ヒーローもののテレビアニメやマンガでは、胸の前で伸ばした両手を組むようにして剣や銃を構えるポーズは良く登場するので、ユーザとしては是非とも人形玩具でそれを再現したいと願うところである。しかし、従来のように胸部を1つの箱状体としてデザインしてしまうと、肩関節に連結された上腕の肩部分の位置はほぼ固定である。その為、腕を前へ大きく出すようなポーズをさせようとしても、肩部分の位置はそのままで腕だけが前方へ曲がるため、いわゆる「前へならえ」のポーズになってしまっていた。また、腕を前方へ向けて肘関節を曲げることで両手を組ませることが可能な場合もあったが、そうすると不格好な“構え”となってしまい、腕を伸ばす本来の“構え”からかけ離れていた。いずれにしろ、望みは叶えられなかったのである。
【0006】
特許文献1に開示されている軟質材を用いた関節機構を用いれば、上記の“構え”が実現するのではないかとも考えられる。しかし、軟質材のしわや撓みが見えてしまうと、“構え”自体はできるものの外観デザインの本来の魅力が損なわれてしまう。また、撓んだ軟質材が復元しようとするため、上記の“構え”を保持できない。
【0007】
上述した“構え”の問題は一例であり、他の関節部においても、当該関節部を大きく(或いは深く)曲げる場合に生じる問題であった。
本発明の目的とするところは、外観デザインの魅力低減を抑えつつ、関節部の可動自由度を高めることができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る人形体の関節構造は、人形体の関節構造であって、躯幹を構成する第1パーツ(例えば、
図8の胸部20、
図14の腹部30)と、四肢を構成し、前記第1パーツに対し回動可能な第2パーツ(例えば、
図8の上腕部40、
図14の大腿部44)と、前記躯幹の一部又は前記躯幹の外観を構成し、前記第1パーツに対し回動可能な第3パーツであって、前記第2パーツと前記第1パーツとの成す角度を低減させるように回動した場合に、前記第2パーツの当該回動に合わせて当該成す角度を低減させる方向に回動可能に 構成された第3パーツ(例えば、
図8の胸部20の左方胸部パーツ24及び右方胸部パーツ26、
図14及び
図21の大垂部81、左前垂部83、右前垂部84)と、を備えている。また、本発明に係る人形体の関節構造は、胸部中央パーツと、胸部の左右いずれかの側方に位置し、前記胸部の一部又は前記胸部の外観を構成し、前記胸部中央パーツに対し回動可能な胸部側方パーツと、前記胸部側方パーツに対し回動可能な腕用パーツと、を備え、前記胸部側方パーツを前記胸部中央パーツに対して回動させると、胸部の正面の左右方向の幅が狭くなる。
また、本発明に係る人形体の関節構造は、人形体の関節構造であって、胸部中央パーツと、胸部の左右いずれかの側方に位置し、前記胸部の一部又は前記胸部の外観を構成し、前記胸部中央パーツに対し回動可能な胸部側方パーツと、前記胸部側方パーツに対し回動可能な腕用パーツと、を備え、前記胸部側方パーツの前記胸部に対する回動中心は胸部の前後方向の中心線に対して胸部背面に近い位置とされており、 前記胸部側方パーツを前記胸部中央パーツに対して回動させると、胸部の正面の左右方向の幅が狭くなる。
【0009】
また、本発明は、前記第1パーツと前記第3パーツとは、前記成す角度を低減させる方向への前記第3パーツの回動時に、部分的に一方が外側、他方が内側に重なるように構成としてもよい。
また、本発明に係る人形体の関節構造においては、前記胸部中央パーツと前記胸部側方パーツとは、前記胸部側方パーツの回動時に、部分的に一方が外側、他方が内側に重なるように構成してもよい。
【0010】
また、本発明は、前記第3パーツが、前記第1パーツ寄りの端部に、回動時に前記第1パーツとの接触を回避するためのテーパ面を有してもよい。
また、本発明に係る人形体の関節構造においては、前記胸部側方パーツは、前記胸部中央パーツ寄りの端部に回動時に前記胸部中央パーツとの接触を回避するためのテーパ面を有するようにしてもよい。
【0011】
また、本発明は、上面視において、前記第2パーツを角度変更するための可動軸(例えば、
図3の左腕用ボールスタッド243、左肩軸244)は、前記第3パーツを向き変更するための可動軸(例えば、
図3の左揺動軸226)よりも、前記躯幹の中心から離れた位置に設けられて構成されてもよい。
【0012】
また、本発明は、前記第1パーツは胸部中央用のパーツであり、前記第2パーツは腕用のパーツであり、前記第3パーツは胸部左右に位置するパーツであるようにしてもよい。
【0013】
また、本発明は、前記第3パーツが前記第2パーツを支持する支持部を有してもよい。
また、本発明に係る人形体の関節構造においては、前記胸部側方パーツが前記腕用パーツを支持する支持部を有するようにしてもよい。
【0014】
また、本発明は、正面視において、前記第2パーツを回動するための可動軸(例えば、
図14及び
図15のボールスタッド75)は、前記第3パーツを回動するための可動軸(例えば、
図15の大垂可動軸74)よりも下方に設けられて構成されてもよい。
【0015】
また、本発明は、前記第3パーツは、当該第3パーツを回動するための可動軸(例えば、
図15の大垂可動軸74)より上の部分と下の部分とを有し、前記成す角度を低減させる方向への当該第3パーツの回動時に、前記第3パーツの当該上の部分と当該下の部分とのうちの一方が前記第1パーツの外側へ、他方が前記第1パーツの内側に部分的へ重なるように構成されてもよい(例えば、
図16〜
図19)。
【0016】
また、本発明は、前記第1パーツは腹部用のパーツ(例えば、
図14の腹部30)であり、前記第2パーツは脚部用のパーツ(例えば、
図14の大腿部44)であり、前記第3パーツは腰部外観用のパーツ(例えば、
図14の大垂部81)であってもよい。
【0017】
また、本発明は、前記第3パーツは、前記第1パーツに対し揺動するように構成され、一端部が前記第3パーツの揺動軸を支持し、他端部が軸支されたリンクパーツ(例えば、
図15の大垂リンク72)を更に備え、前記他端部を軸中心として前記リンクパーツを上下に揺動させることで前記第3パーツの前記揺動軸が上下に位置調整可能に構成されてもよい。
【0018】
また、本発明は、前記成す角度を低減させるように前記第2パーツを回動した場合に、前記リンクパーツを下方に揺動させることで前記第1パーツと前記第3パーツとの干渉防止空間を拡大させることが可能に構成されてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態における人形玩具の上半身部分の斜視外観図である。
人形玩具2は、部位別のパーツを組み付けて構成した玩具である。図示の例では、人形玩具2の頭部10と、胸部20と、腹部30と、上腕部40と、背嚢部50との各パーツを選択的に図示しているが、図示されていない部位のパーツも(例えば、下腕部や、腰部、脚部、など)も適宜備える。ユーザは、これらの各パーツの相対向きや相対姿勢を任意に変更し、人形玩具2のポーズを様々に変えて楽しむことができる。
【0021】
本実施形態の胸部20は、中央胸部パーツ22と、左方胸部パーツ24と、右方胸部パーツ26とを有する。
体的には、中央胸部パーツ22は、躯幹を構成する第1パーツであって、本実施形態では胸部20の左右中央部分を形作っている。左方胸部パーツ24と右方胸部パーツ26は、躯幹の一部又は躯幹の外観を構成する第3パーツである。本実施形態では、それぞれ、右肩及び右肺部に相当する右半体、左肩及び左肺部に相当する左半体を形作っている。そして、中央胸部パーツ22の外面と、左方胸部パーツ24の外面と、右方胸部パーツ26の外面とで、胸部20としての一体的に連なった外観を形成している。
【0022】
図2は、本実施形態における人形玩具2の正面図であって、左方胸部パーツ24の正面側をカットした部分断面図を含む。
図3は、本実施形態における人形玩具2の正面視分解図であって、左方胸部パーツ24の正面側をカットした部分断面図を含む。
図4は、本実施形態の人形玩具2の上面図である。
【0023】
図3に示すように、本実施形態の中央胸部パーツ22は、左右対称形をなしており、上部パーツ221と下部パーツ222とを有する。
上部パーツ221は、左右と下方が開口した略箱状体であって、胸部20の上面・中央正面・中央背面を形作る。そして、上部には頭部10を連結するボールジョイント12を連結させるためのジョイント部223を有する。
下部パーツ222は、腹部30と連結される胸部20の底面224と、ジョイント部223と連結するジョイント連結柱部225と、左方胸部パーツ24を左右回転自在に連結させる左揺動軸226と、右方胸部パーツ26を左右回転自在に軸支する右揺動軸227と、を有する。
【0024】
左方胸部パーツ24と右方胸部パーツ26は、本実施形態では互いに左右対称形を成している。以降では、代表して左方胸部パーツ24について説明することとする。
左方胸部パーツ24は、右方と下方に開口した箱状体であって、胸部左半体の正面・側面・背面及び上面の一部外観を形づくる左外装部241と、左揺動軸226を上下に挿通させる左軸受242と、左の上腕部40(第2パーツ)をボールジョイント連結するための左腕用ボールスタッド243と、を有する。左腕用ボールスタッド243は、胸部左半体の前後中央上面を形作り、左外装部241内に前後方向に延びるように設けられた左肩軸244により上下揺動可能に軸支される。つまり、人形玩具2は、左肩軸244で左腕用ボールスタッド243を上下方向に揺動させることで、左肩を上げるポーズを取らせることができる。
【0025】
なお、本実施形態では、上腕部40(第2パーツ)を角度変更するための可動軸(左腕用ボールスタッド243、左肩軸244)は、左方胸部パーツ24(第3パーツ)の向きを変更するための可動軸(左揺動軸226)よりも、躯幹の中心線L1から離れた位置に設けられている(
図3参照)。また、上面視すると、左揺動軸226は、胸部20の前後中心線L2に対して胸部背面に近いた位置に立設されている(
図4参照)。
【0026】
図3に示すように、本実施形態の人形玩具2の上半身においては、左揺動軸226を左軸受242へ挿入するようにして、左方胸部パーツ24が下部パーツ222に対して上方より組み付けられている。そして、同様にして、右揺動軸227を右軸受へ挿入するようにして、右方胸部パーツ26が下部パーツ222に対して上方より組み付けられている。さらに、左方胸部パーツ24及び右方胸部パーツ26の上から、上部パーツ221が組み付けられている。そして、左方胸部パーツ24及び右方胸部パーツ26へそれぞれ上腕部40が組み付けられ、ジョイント部223に頭部10が組み付けられている。
したがって、
図4に示すように、左方胸部パーツ24の右端部の先端が、中央胸部パーツ22の左方開口部からその内側へ挿入された状態となり、右方胸部パーツ26の左端部の先端が、中央胸部パーツ22の右方開口部からその内側へ挿入された状態となる。
【0027】
図5は、
図2のA−A断面図であって、両肩を後方へ向き変更した場合の断面図である。本実施形態における人形玩具2は、
図5に示すように、両肩を後に反らせて胸を張るポーズをとらせることができる。
すなわち、躯幹を構成する中央胸部パーツ22の後面と左方胸部パーツ24の後面との成す角度が低減するように、左揺動軸226を中心にして左方胸部パーツ24の向きを変更することができる。これにより、左腕用ボールスタッド243は後方に回動し、胸部20の正面は、前方に向かって凸を成すように略湾曲したように変形し、あたかも胸を張るようなポーズができあがる。
【0028】
この時、左方胸部パーツ24の前側かつ中央胸部パーツ22寄りの端部は、向きを変えるにつれて中央胸部パーツ22の内側に挿入されていた部分が引き出される格好となり、左方胸部パーツ24と中央胸部パーツ22との間に隙間を生じづらくさせている。このことにより、胸部20としての連なった外観を好適に保つ。同様のことは、右方胸部パーツ26と中央胸部パーツ22との間にも言える。
【0029】
また、左方胸部パーツ24の中央胸部パーツ22寄りの端部と、右方胸部パーツ26の胸部中央寄りの端部とには、それぞれテーパ面Tが設けられており、中央胸部パーツ22に対して向きを変更する際に、中央胸部パーツ22との接触を回避するとともに、外面の滑らかな繋がりを作り出している。なお、テーパ面Tの形状は、直線的な勾配面に限らず、揺動軸226,227を中心とした回転体からなる曲面で形成しても良いし、中央胸部パーツ22との接触を回避するよう体積を減少させた自由曲面で形成しても良い。
【0030】
図6は、
図2のA−A断面図であって、両肩を前方へ向き変更した場合の断面図である。本実施形態における人形玩具2は、
図6に示すように、両肩を前にすぼめるポーズをとらせることができる。
すなわち、躯幹を構成する中央胸部パーツ22の前面と左方胸部パーツ24の前面との成す角度が低減するように、左揺動軸226を中心にして左方胸部パーツ24の向きを変更することができる。これにより、左腕用ボールスタッド243は前に回動し、胸部20の正面の左右方向の幅が狭くなるように変形し、あたかも肩を前にすぼめるようなポーズができあがる。この時、左方胸部パーツ24の前側中央胸部パーツ22寄りの端部は、向きを変えるにつれて中央胸部パーツ22の更に内側へ挿入される。これにより、あたかも肩を前にすぼめるようなポーズにしようとしたとき、左方胸部パーツ24と中央胸部パーツ22とで形成する胸部前方の体積が小さくなり、上腕部40の動きを妨げないようにすることで、上腕部40の可動範囲を拡大しつつも、胸部20として連なった外観を好適に保つことができる。同様のことは、右方胸部パーツ26と中央胸部パーツ22との間にも言える。
【0031】
両肩を前にすぼめるポーズをとらせることができるようになることで、本実施形態における人形玩具2はより多様で自然なポーズをとらせることができるようになる。
具体的には、例えば
図7に示すように、仮に従来の人形玩具のように胸部20が1つの略箱形に形成されている(中央胸部パーツ22・左方胸部パーツ24・右方胸部パーツ26というような分割構成になっていない)場合には、両肩を前にすぼめることができないので、両腕を前(
図7の下側)に向けても、いわゆる「前にならえ」の姿勢しかできない。
【0032】
しかし、
図8に示すように、本実施形態のように胸部20が中央胸部パーツ22・左方胸部パーツ24・右方胸部パーツ26の分割構成になっていれば、両肩を前にすぼめて両腕を前に向け、あたかも両腕を伸ばした状態で胸の前で組むようなポーズが可能になる。例えば、正面に銃を構える格好の良いポーズなどを再現できるようになる。
【0033】
しかも、左方胸部パーツ24や右方胸部パーツ26の可動軸(左揺動軸226、右揺動軸227)を、左右の腕の可動軸であるボールスタッド243と躯幹の中心(中心線L1)との中間に設けることで(
図3参照)、中央胸部パーツ22と、左方胸部パーツ24と、右方胸部パーツ26とを、胸部として連なった印象の上面視を実現することができる。
【0034】
また、左揺動軸226、右揺動軸227が、胸部20の前後方向の中心線L2に対して背面に近い位置に設けた点は(
図4参照)、肩を前方に揺動させる際の左方胸部パーツ24および右方胸部パーツ26のそれぞれの中央胸部パーツ22寄りの端部の回転半径を大きくすることで、中央胸部パーツ22との干渉を回避するためのテーパ面を小さくし、中央胸部パーツ22と、左方胸部パーツ24と、右方胸部パーツ26とを、胸部として連なった印象の上面視を実現することに寄与している。
【0035】
〔第2実施形態〕
次に、本発明を適用した第2実施形態について説明する。なお、以降では第1実施形態との差異について主に述べることとし、第1実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付与して重複する説明を適宜省略するものとする。
【0036】
図9は、本実施形態における人形玩具2Bの構成例を示す上半身部の正面図である。
図10は、人形玩具2Bの内部構造例を示す部分断面正面図である。
図11は、人形玩具2Bの左側面図である。
【0037】
人形玩具2Bの胸部20は、中央胸部パーツ22Bと、左方胸部パーツ24Bと、右方胸部パーツ26Bとで分割構成されている。中央胸部パーツ22Bは、左右に開口する略箱形体であって、上部パーツ221Bと下部パーツ222Bとが連結される。左方胸部パーツ24B及び右方胸部パーツ26Bは、中央胸部パーツ22Bの左右の開口部をそれぞれ覆う略椀型又は略皿型の構造体である。すなわち、左方胸部パーツ24Bの右端は中央胸部パーツ22Bの左方開口部の外側を覆い、右方胸部パーツ26Bの左端は中央胸部パーツ22Bの右方開口部の外側を覆っており、胸部20としての一体的で連なった外観を構成している。
【0038】
中央胸部パーツ22Bと、左方胸部パーツ24B及び右方胸部パーツ26Bとの連結は、本実施形態ではボールジョイント27により実現される。また、上腕部40と、左方胸部パーツ24B及び右方胸部パーツ26Bとの連結は、本実施形態ではボールジョイント28により実現される。つまり、本実施形態の人形玩具2Bの肩及び腕の自由度は第1実施形態よりも高くなる。
【0039】
当然、本実施形態における人形玩具2Bもまた、第1実施形態と同様に両肩を前にすぼめるポーズをとらせて、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
すなわち、仮に胸部20Bが1つの略箱形に形成されていると仮定すると(中央胸部パーツ22B・左方胸部パーツ24B・右方胸部パーツ26Bの分割構成になっていない一体構成であると仮定すると)、
図12に示すように、両肩を前にすぼめることができないので、両腕を前(
図12の下側)に向けても、いわゆる「前にならえ」の姿勢しかできない。
【0040】
しかし、
図13に示すように、胸部20Bが中央胸部パーツ22B・左方胸部パーツ24B・右方胸部パーツ26Bの分割構成になっていることで、両肩を前にすぼめて両腕を前に向けると、あたかも伸ばした両腕を胸の前に突き出して組んだポーズが可能になる。例えば、胸の前で、剣を構えるといった格好の良いポーズを再現できるようになる。
【0041】
また、本実施形態では、中央胸部パーツ22Bと、左方胸部パーツ24B及び右方胸部パーツ26Bとの連結がボールジョイント27により実現されているので、肩は前だけでなく、前斜め下方向や、前斜め上方向、頭上方向、後斜め上方向、後斜め下方向、にもすぼめることができる。そして、中央胸部パーツ22の外面と、左方胸部パーツ24の外面と、右方胸部パーツ26の外面とで、胸部20としての一体的に連なった外観を形成している。
【0042】
〔第3実施形態〕
次に、本発明を適用した第3実施形態について説明する。なお、以降では第1及び第2実施形態との差異について主に述べることとし、第1及び第2実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付与して重複する説明を適宜省略するものとする。
【0043】
図14は、本実施形態における人形玩具2Cの構成例を示す正面図である。
人形玩具2Cは、上から順に頭部10・胸部20・腹部30・腰部60を備え、これらのうち隣接するパーツ同士は、ボールジョイントにより相対角度を変更可能に連結されている。
【0044】
腰部60は、腰基部70と、腰基部70の側面を覆う複数の外装部80とを備える。
【0045】
外装部80は、腰部60の正面を臍部から股間までを一体に覆う大垂部81と、大垂部81の上端にボールジョイントで連結されていて左右の大腿関節部の前方を覆う左前垂部83及び右前垂部84と、腰部60の左右側面を覆う左側垂部85及び右側垂部86と、腰部60の後方を覆う尻垂部87(
図17参照)と、を備える。左側垂部85及び右側垂部86は、それぞれの上端部で腰基部70に対して前後方向の横軸で揺動自在に支持されており、下端を上下へ揺動可能に連結されている。
【0046】
図15は、腰基部70と、大腿部44と、大垂部81との連結構成例を示す斜視分解図である。なお、理解を容易にするために一部を透視で示すとともに、腰基部70と他の垂部(左側垂部85、右側垂部86、尻垂部87)との連結構造は図示省略している。
【0047】
腰基部70は、前後方向及び上下方向に長い略箱体であって、その上端に腹部30とボールジョイントで連結するためのボールスタッド71を有する。
また、腰基部70の前方上部には大垂リンク72が上下に揺動自在に連結されている。大垂リンク72の後方ジョイントは、リンク可動軸73により腰基部70に対して上下揺動可能に連結されている。また、大垂リンク72の前方ジョイントは、大垂部81の裏面の上下中間部に設けられた軸受部82にて大垂可動軸74で連結され、大垂部81を上下へ揺動可能に支持している。
【0048】
腰基部70の左右側面には、それぞれ大腿部44とボールジョイントで連結するためのボールスタッド75を有する大腿リンク76が連結されている。
大腿リンク76の前方ジョイントは、リンク可動軸73に連結されている。そして、大腿リンク76の後方ジョイントは、腰基部70に設けられた弧状のガイド溝77に嵌合している。すなわち、大腿リンク76は、リンク可動軸73を中心に後方ジョイント部を腰基部70の左右側面のガイド溝77に沿って上下に揺動させることができるようになっている。
【0049】
なお、正面視すると、腹部30(第1パーツ)に対して大腿部44(第2パーツ)の角度を変更するための可動軸(ボールスタッド75)は、大垂部81(第3パーツ)の向きを変更するための可動軸(大垂可動軸74)よりも下方に設けられて構成されている。また、上面視すれば、大腿部44の角度を変更するための可動軸(ボールスタッド75)は、大垂部81の向きを変更するための可動軸(大垂可動軸74)よりも後方にあり、より躯幹の中心(ボールスタッド71)に近い前後位置に設けられている。
【0050】
次に、
図16〜
図19を参照しながら、人形玩具2Cを直立姿勢から立て膝で且つ前屈の姿勢に変更する場合における、腰部60周りのパーツが取り得る位置関係について説明する。なお、これらの図では、相対位置関係の理解を容易にするために一部のパーツは透視で表し、更に一部については図示を省略している。
【0051】
図16は、人形玩具2Cに直立姿勢を取らせている状態の腰部60周りのパーツの位置関係を示す簡略断面図である。
腹部30は、内部空間にボールスタッド71と連結するソケット部31を内部に有するとともに、前側下端には大垂部81の上端が挿入可能な開口部32を備えている。しかし、直立姿勢における大垂部81はほとんど上下に立った姿勢にあり、その上端は腹部30の前面と近接した位置にあって開口部32を覆い隠している。その為、人形玩具2Cを正面から見ると開口部32の存在は目立たず、胸部20→腹部30→腰部60へ大きな切れ目のない連なった外観を形づくっている。なお、直立姿勢においては、腰部60の横周りも、外装部80により大きな切れ目のない連なった外観を形づくっている(
図14参照)。
【0052】
ここから、人形玩具2Cに立て膝をつくポーズをさせるには、大腿部44(
図16〜
図19では透視状態で図示)を前へ向けて向きを変える必要があり、腰部60周りのパーツは
図17→
図18→
図19のように遷移する。すなわち、大腿リンク76は、リンク可動軸73を回転軸にして揺動されボールスタッド75が、腰基部70の前側下端部まで降ろされる。それとともに、大腿部44は、前面を上に向けるように横倒し姿勢にされる。
【0053】
そして、人形玩具2Cに前屈をさせるには、大腿リンク76と大腿部44の向きの変更に並行して、大垂部81の角度を変えながら腹部30を腰部60に対して成す角が低減するように向きを変える。つまり、腹部30を前方に向けて倒す。
【0054】
具体的には、
図16に示すように、直立姿勢における大垂リンク72では、前方ジョイントはリンク可動軸73やボールスタッド75より上方にある。ここから前屈をさせるには、先ず
図17→
図18に示すように、大垂リンク72を、リンク可動軸73を中心に前方ジョイントを下げるように回転させる。すると、大垂リンク72の揺動軸が下がりつつ前方に移動して大垂部81の揺動軸が腹部30から離隔する。これにより、腹部30(第1パーツ)と大垂部81(第3パーツ)との干渉防止空間Sp(
図18参照)が拡大する。
【0055】
そこから、
図18→
図19に示すように、大垂部81の上端を腹部30の開口部32に向けて傾斜させる。それに加えて腹部30を前方に傾け、大垂部81の上端を腹部30の内部空間に挿入させる。この結果、腹部30を大きく前屈させつつ、正面から見ると腹部30から腰部60へかけて大きな切れ目のない連なった外観を形づくることができる。なお、大垂部81の上端にはテーパ面Tが設けられており(
図15、
図16参照)、大垂部81の向きを変更する際に腹部30の開口部32との接触を回避する効果を生む。
【0056】
そして、こうした大垂部81の揺動位置の移動と向きの変更は、腰部60の横周りの外観についても、大きな切れ目のない連なった外観を形づくる効果をもたらす。
図20と
図21は、腰部60周りのパーツを抜き出して示した簡略斜視図である。
仮に本実施形態のように大垂部81の揺動位置(大垂リンク72の前方ジョイント;大垂可動軸74(
図15参照))を変えられない構成だと仮定すると、
図20に示すように、人形玩具2Cに立て膝をつくポーズをさせるために右の大腿部44を前方に振り上げた場合には、右前垂部84も振り上げられることになるが、大垂部81は直立姿勢の位置のままとなり、右鼠径部に大きな外観の途切れ部9が生じる。しかし、本実施形態では、
図21に示すように、大垂部81を前方に振り上げつつ寝かせることができるので、右前垂部84→大垂部81→左前垂部83の横周りにおいて大きな切れ目のない外観を形づくることができ、外観のデザイン性を向上させることができる。
【0057】
以上述べてきた実施形態に係る人形玩具の関節構造によれば、第2パーツ(例えば、
図8の上腕部40、
図14の大腿部44)を、第1パーツ(例えば、
図8の胸部20、
図14の腹部30)に対して成す角度を低減させるように動かす際、第3パーツ(例えば、
図8の胸部20の左方胸部パーツ24及び右方胸部パーツ26、
図14及び
図21の大垂部81、左前垂部83、右前垂部84)を第2パーツの動きに合わせて動かすことができる。例えば、第1パーツを中央胸部、第2パーツを腕部、第3パーツを左右胸部として、人形玩具に胸の前で両手を組むように腕を突き出すポーズをさせようとした場合、腕の動きに合わせて左右胸部(胸部の左右部)を可動させることができることになる。つまり、従来であれば1つの箱状として構成されていた躯幹(この例では胸部全体)を、第1パーツと第3パーツとで分割構成し、第2パーツの動きにあわせて第3パーツも動かせるようにすることで、関節部の可動自由度を高めることができる。加えて、見た目の上では、第3パーツが第1パーツと第2パーツとの間を取り持つことで、第1パーツ〜第3パーツ〜第2パーツへとつながる途絶感(見た目の大きな切れ目)の無い連なった外観を形作ることができるため、外観デザインの魅力低減を抑えることができる。
【0058】
また、本実施形態においては、前記第1パーツと前記第3パーツとは、前記成す角度を低減させる方向への前記第3パーツの回動時に、部分的に一方が外側、他方が内側に重なるように構成していることで、第1パーツと第3パーツとの干渉を回避しつつ見た目上の途絶感が少ない連なりのある外観を形作ることができる。
【0059】
また、本実施形態においては、前記第3パーツが、前記第1パーツ寄りの端部に、回動時に前記第1パーツとの接触を回避するためのテーパ面を有しているので、第1パーツと第3パーツとの間の隙間を小さくしても、確実に両パーツの干渉を回避することができる。また、テーパ面が、第1パーツの外面と第3パーツの外面との角度の違いを適当に緩衝し、第1パーツや第3パーツが直線的なデザインであっても両パーツの外観の連なりをより滑らかに見せることができる。
【0060】
また、本実施形態においては、上面視において、前記第2パーツを角度変更するための可動軸(例えば、
図3の左腕用ボールスタッド243、左肩軸244)は、前記第3パーツを向き変更するための可動軸(例えば、
図3の左揺動軸226)よりも、前記躯幹の中心から離れた位置に設けられて構成されているので、第1パーツの側方に第2パーツを配置する構成であっても、第2パーツが第1パーツに対して成す角度よりも緩やかな角度で第1パーツと角度を成す第3パーツを、第1パーツと第2パーツとの間に配置できる。よって、人形玩具全体としてのポーズを見た時に、第1パーツの外面〜第3パーツの外面〜第2パーツの外面と連なるため、外面の角度変化がより滑らかになり、美しく見えるようになる。
【0061】
また、本実施形態においては、前記第1パーツは胸部中央用のパーツであり、前記第2パーツは腕用のパーツであり、前記第3パーツは胸部左右に位置するパーツであり、このように、胸部を中央と左右の少なくとも3つに分割構成することで、肩を前にすぼめることが可能になり、胸の前に両腕を伸ばした状態で両手を組むようにして剣や銃を構えるといった格好いいポーズを人形玩具で再現できるようになる。
【0062】
また、本実施形態においては、前記第3パーツが前記第2パーツを支持する支持部を有しているので、第2パーツの支持構造を第3パーツに兼ねさせることができる。
【0063】
また、本実施形態においては、正面視において、前記第2パーツを回動するための可動軸(例えば、
図14及び
図15のボールスタッド75)は、前記第3パーツを回動するための可動軸(例えば、
図15の大垂可動軸74)よりも下方に設けられて構成されているので、第1パーツの下方に第2パーツを配置する構成であっても、第2パーツが第1パーツに対して成す角度よりも緩やかな角度で第1パーツと角度を成す第3パーツを第1パーツと第2パーツとの間に配置できる。よって、人形玩具全体としてのポーズを見た時に、第1パーツの外面〜第3パーツの外面〜第2パーツの外面と連なる外面の角度変化がより滑らかになり、美しく見えるようになる。
【0064】
また、本実施形態においては、前記第3パーツは、当該第3パーツを回動するための可動軸(例えば、
図15の大垂可動軸74)より上の部分と下の部分とを有し、前記成す角度を低減させる方向への当該第3パーツの回動時に、前記第3パーツの当該上の部分と当該下の部分とのうちの一方が前記第1パーツの外側へ、他方が前記第1パーツの内側に部分的へ重なるように構成されている(例えば、
図16〜
図19)ので、第1パーツと第3パーツとの干渉を回避しつつ見た目上、途絶感が少なく連なり感のある外観を形成できる。
【0065】
また、本実施形態においては、前記第1パーツは腹部用のパーツ(例えば、
図14の腹部30)であり、前記第2パーツは脚部用のパーツ(例えば、
図14の大腿部44)であり、前記第3パーツは腰部外観用のパーツ(例えば、
図14の大垂部81)としており、このことにより、第2パーツであるところの脚部の位置変更に応じて、第3パーツである腰部外観用パーツの位置を変更することができる。よって、例えば立て膝のポーズをさせるのに応じて、腰回りの外観用パーツを適当な位置に変更し、自然で見栄えの良い外観を実現できる。
【0066】
また、本実施形態においては、前記第3パーツは、前記第1パーツに対し揺動するように構成され、一端部が前記第3パーツの揺動軸を支持し、他端部が軸支されたリンクパーツ(例えば、
図15の大垂リンク72)を更に備え、前記他端部を軸中心として前記リンクパーツを上下に揺動させることで前記第3パーツの前記揺動軸が上下に位置調整可能に構成されているので、第3パーツ(例えば、
図14の大垂部81)の揺動軸の位置を変えることができる。よって、第3パーツの変更可能な姿勢や位置を拡張し、人形玩具の様々なポーズ実現に寄与することができる。
【0067】
また、本実施形態は、前記成す角度を低減させるように前記第2パーツを回動した場合に、前記リンクパーツを下方に揺動させることで前記第1パーツと前記第3パーツとの干渉防止空間を拡大させることが可能に構成されているので、第2パーツの回動にともないリンクパーツが下方へ揺動することにより、第3パーツ全体が第1パーツから離れる方向に移動されて干渉防止空間が拡大する。干渉防止空間の拡大は、第1パーツと干渉させない位置に第3パーツを変更する余地の拡大であり、第1パーツに対して成す角度を低減させる方向への第3パーツの向きを変更しやすくなる。この結果、人形玩具全体としてみれば、より第1パーツに対する第3パーツの成す角度を小さくできる。
【0068】
〔変形例〕
なお、本発明の実施形態は上記の例に限るものでは無く、発明の要旨を変更しない限りにおいて適宜構成要素の追加・省略・変更が可能である。
【0069】
例えば、上記実施形態では、玩具の例として人形玩具を挙げたが、人型に限らず、動物、鳥類、昆虫、甲殻類など、体躯から可動部位が突出するように連結した構成体であれば本発明を適用することができる。可動部位の例として、上記実施形態では腕や脚を挙げたが、首や砲身、角、触覚、センサー、など玩具のデザインに応じて適宜呼び名を変えることができる。