(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
  前記水電解装置は、再生可能エネルギー発電装置で発電された電力、および前記燃料電池で発電された電力の少なくとも一方によって前記水を電気分解する、請求項1に記載の炭素回収型燃料電池発電システム。
  炭素化合物を含み第1燃料極へ供給される燃料ガスと、酸素を含み第1空気極へ供給される酸化剤ガスと、により発電し、前記第1燃料極から第1燃料極オフガスを第1燃料極オフガス流路へ送出する第1燃料電池と、第2燃料極へ供給される前記第1燃料極オフガスと第2空気極へ供給される酸化剤ガスとを用いて発電し、前記第2燃料極から第2燃料極オフガスを第2燃料極オフガス流路へ送出する第2燃料電池とを含んで構成される前記燃料電池と、
  前記第1空気極及び前記第2空気極の少なくとも一方から空気極オフガスを送出する空気極オフガス流路と、
  前記空気極オフガス流路と連結されて前記空気極オフガスが供給され、前記空気極オフガスから酸素を分離する酸素分離部と、
  前記第2燃料極オフガスが供給されると共に、前記酸素分離部で分離された前記酸素が供給され、前記第2燃料極オフガスを前記酸素により燃焼反応させる燃焼部と、
  前記オフガスを熱源として用いて水を冷却して冷却水を生成する排熱投入型吸収式冷凍機、又は吸着式冷凍機と、
  を備え、
  前記二酸化炭素ガス分離部は、前記燃焼部から送出される燃焼オフガスを前記冷却水で冷却して二酸化炭素ガスと水とを分離する、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の炭素回収型燃料電池発電システム。
  前記二酸化炭素ガス分離部で分離された前記水を、前記排熱投入型吸収式冷凍機の冷却水経路または前記排熱投入型吸収式冷凍機を構成する冷却塔の冷却水補水経路、あるいは前記吸着式冷凍機の冷却水経路または前記吸着式冷凍機を構成する冷却塔の冷却水補水経路に供給する供給部を備え、
  前記排熱投入型吸収式冷凍機の前記冷却水または前記排熱投入型吸収式冷凍機を構成する冷却塔の冷却水補水の一部、あるいは前記吸着式冷凍機の前記冷却水または前記吸着式冷凍機を構成する冷却塔の冷却水補水の一部に、前記二酸化炭素ガス分離部で分離された前記水が用いられる、請求項4または請求項5に記載の炭素回収型燃料電池発電システム。
  前記酸素分離部は、前記第1燃料電池、及び前記第2燃料電池で発電された電力で駆動可能とされた高温PSA装置を有している、請求項4〜請求項6の何れか1項に記載の炭素回収型燃料電池発電システム。
  前記炭素生成部で生成された炭素をグラファイト、カーボンナノチューブ、またはダイヤモンドとする炭素製品製造装置を有する、請求項1〜請求項9の何れか1項に記載の炭素回収型燃料電池発電システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
  しかしながら、上記のEOR、EGR、ECBMをはじめとするCCSのいずれにおいても、貯留サイトへの二酸化炭素の輸送は、二酸化炭素ガスをパイプラインで輸送するか、二酸化炭素ガスを液化二酸化炭素にしてローリーで輸送するかが想定されていることから、CCSに対応した発電システムを構築する上でも、発電時に発生する二酸化炭素ガスを効率よく分離回収するとともに、回収した二酸化炭素ガスを効率よく貯蔵できるシステムを構築することが望ましい。
【0007】
  さらにCCSとBECCSについては、二酸化炭素ガスの圧入、貯留が可能な場所が限定される(例えば日本国内ではEORやEGSに適した油田やガス田が少ないことから、豪州などの海外貯留サイトまで液化二酸化炭素を輸送し、圧入ポンプで二酸化炭素ガスを地下に圧入貯留することが想定されている)ほか、帯水層貯留の場合には帯水層の汚染や地震・近く変動に伴う放出リスクが、海洋貯留の場合でも海洋生態系への影響や地殻変動等に伴う貯留した二酸化炭素ガスの放出リスクが懸念されており、改善の余地があった。
  二酸化炭素ガス、および液化二酸化炭素の輸送や圧入貯留には、多大なエネルギーを消費し、コストも嵩む。これら二酸化炭素ガスの分離回収、固定化、有効活用分野においては、CO
2の分離回収がCCSコスト全体の6〜7割を占め、CO
2の固定化コストが3〜4割を占めると言われており、二酸化炭素ガスの分離回収と固定化のそれぞれで、簡素化と高効率化が、極めて重要な技術課題となっている。
【0008】
  本発明は上記事実を考慮して成されたもので、燃料電池の発電に伴って発生した二酸化炭素を効率良く分離回収し、輸送や固定化が容易な炭素にして、二酸化炭素ガスの大気への放出を抑制できる炭素回収型燃料電池発電システムを提供することを目的とする。
 
【課題を解決するための手段】
【0009】
  請求項1記載の炭素回収型燃料電池発電システムは、炭素化合物を含み燃料極へ供給される燃料ガスと、酸素を含み空気極へ供給される酸化剤ガスと、により発電し、オフガスを排出する燃料電池と、前記オフガスから二酸化炭素ガスを分離する二酸化炭素ガス分離部と、水を電気分解して水素ガスを生成する水電解装置と、前記二酸化炭素ガス分離部からの前記二酸化炭素ガスと前記水電解装置からの前記水素ガスとを
単一の触媒上
で反応させることにより炭素と水蒸気とを生成する炭素生成部と、を備えている。
【0010】
  請求項1に記載の炭素回収型燃料電池発電システムにおいて、燃料電池は、燃料極へ供給された燃料ガスと空気極へ供給された酸化剤ガスにより発電が行われ、オフガスを排出する。
  燃料電池から排出されたオフガスは、二酸化炭素ガス分離部で二酸化炭素ガスが分離される。
  水電解装置は、水を電気分解して水素ガスを生成する。
  炭素生成部は、二酸化炭素ガス分離部で分離された二酸化炭素ガスと、水電解装置で生成された水素ガスとを
単一の触媒上で反応させ
ることにより、炭素(固体)と水蒸気とを生成する。
  このように、請求項1に記載の炭素回収型燃料電池発電システムでは、発電で生じた二酸化炭素ガスを、固体の炭素として回収することができる。
  固体の炭素で回収することは、二酸化炭素ガスのままで回収する場合に比較して、二酸化炭素ガスの大気放出を抑制し、輸送および固定化するプロセスを大幅に簡素化し、高効率化させることができる。
【0011】
  請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の炭素回収型燃料電池発電システムにおいて、前記水電解装置は、再生可能エネルギー発電装置で発電された電力、および前記燃料電池で発電された電力の少なくとも一方によって前記水を電気分解する。
【0012】
  請求項2に記載の炭素回収型燃料電池発電システムでは、水電解装置は、再生可能エネルギー発電装置で発電された電力、および燃料電池で発電された電力の少なくとも一方によって水を電気分解するので、発電に伴い二酸化炭素ガスを放出する発電装置で発電された電力を用いずに済み、大気中への二酸化炭素ガスの放出を抑制することができる。
【0013】
  請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の炭素回収型燃料電池発電システムにおいて、前記二酸化炭素ガス分離部は、前記オフガスから前記二酸化炭素ガスと水とを分離し、前記水電解装置では、前記二酸化炭素ガス分離部で分離した前記水を用いる。
【0014】
  請求項3に記載の炭素回収型燃料電池発電システムでは、水電解装置が、二酸化炭素ガス分離部で分離した水を電気分解に用いるので、外部の上水道等から水を供給する必要が無くなり、水の外部依存量を削減できる。
【0015】
  請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の炭素回収型燃料電池発電システムにおいて、炭素化合物を含み第1燃料極へ供給される燃料ガスと、酸素を含み第1空気極へ供給される酸化剤ガスと、により発電し、前記第1燃料極から第1燃料極オフガスを第1燃料極オフガス流路へ送出する第1燃料電池と、第2燃料極へ供給される前記第1燃料極オフガスと第2空気極へ供給される酸化剤ガスとを用いて発電し、前記第2燃料極から第2燃料極オフガスを第2燃料極オフガス流路へ送出する第2燃料電池とを含んで構成される前記燃料電池と、前記第1空気極及び前記第2空気極の少なくとも一方から空気極オフガスを送出する空気極オフガス流路と、前記空気極オフガス流路と連結されて前記空気極オフガスが供給され、前記空気極オフガスから酸素を分離する酸素分離部と、前記第2燃料極オフガスが供給されると共に、前記酸素分離部で分離された前記酸素が供給され、前記第2燃料極オフガスを前記酸素により燃焼反応させる燃焼部と、前記オフガスを熱源として用いて水を冷却して冷却水を生成する排熱投入型吸収式冷凍機、又は吸着式冷凍機と、を備え、前記二酸化炭素ガス分離部は、前記燃焼部から送出される燃焼オフガスを前記冷却水で冷却して二酸化炭素ガスと水とを分離する。
【0016】
  請求項4に記載の炭素回収型燃料電池発電システムでは、燃料電池が、第1燃料電池と第2燃料電池とを含んで構成されている。
  第1燃料電池では、第1燃料極へ供給された燃料ガスと第1空気極へ供給された酸化剤ガスにより発電が行われる。第2燃料電池では、第1燃料極から第2燃料極へ供給された第1燃料極オフガスと第2空気極へ供給された酸化剤ガスにより発電が行われる。
【0017】
  第1空気極及び第2空気極の少なくとも一方からは、空気極オフガス流路へ空気極オフガスが送出され、空気極オフガス流路を経由して酸素分離部へ空気極オフガスが供給される。酸素分離部では、空気極オフガスから酸素が分離され、分離された酸素は燃焼部へ供給される。
【0018】
  また、第2燃料極からは、燃料極オフガス流路へ第2燃料極オフガスが送出され、燃料極オフガス流路を経由して燃焼部へ第2燃料極オフガスが供給される。燃焼部では、第2燃料極オフガス中の可燃成分と酸素とで燃焼反応が生じ、燃焼部から燃焼オフガスが送出される。
【0019】
  燃焼オフガスは二酸化炭素分離部へ送出され、燃焼オフガスから二酸化炭素が分離される。
【0020】
  請求項4に係る燃料電池発電システムでは、第2燃料電池から送出された後の第2燃料極オフガスが燃焼部で燃焼されるので、第2燃料電池での発電に供される前の第1燃料極オフガスを燃焼する場合と比較して、第2燃料電池に供給される未反応燃料ガス量が多くなる。したがって、第2燃料電池での発電効率を高めることができる。
【0021】
  また、燃焼部では、第2燃料極オフガスに含まれている可燃成分と酸素との燃焼反応により二酸化炭素及び水蒸気が生成される。したがって、第2燃料極オフガスから可燃ガスを減じて、高濃度の二酸化炭素を回収することができる。
【0022】
  また、第2燃料極オフガスには、第1燃料極オフガスと比較して含まれる未反応の燃料ガス量が少なく、二酸化炭素の含有率が高い。したがって、燃焼部で未反応の燃料ガスを燃焼させる量を少なくすることができると共に、未反応の燃料ガスを燃焼させるために必要となる酸素量を少なくすることができる。
【0023】
  また、排熱投入型吸収式冷凍機、または吸着式冷凍機は、燃料電池から排出された空気極オフガスを駆動用熱源として駆動されて水の冷却を行なうので、オフガスの排熱を有効利用することができる。排熱投入型吸収式冷凍機、または吸着式冷凍機は、排熱を有効利用して冷熱を供給できるので、モータでコンプレッサーを駆動して冷媒の圧縮、膨張を行なうタイプの冷凍機で冷熱を生成する場合に比較して、少ない電力で効率的に水を冷却して冷却水とすることができる。
【0024】
  請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の炭素回収型燃料電池発電システムにおいて、前記第1燃料電池、および前記第2燃料電池は、水素イオン伝導型固体酸化物形燃料電池(PCFC:Proton Conducting Solid Oxide Fuel Cell)である。
【0025】
  水素イオン伝導型固体酸化物形燃料電池では、空気極側で発電反応による水蒸気が生成される。したがって、第1燃料極オフガスに含まれる水蒸気の量は少なくなるため、第2燃料極へ供給される燃料ガスの濃度低下が小さく、第2燃料電池での発電効率を向上させることができる。また、第2燃料極オフガスに含まれる水蒸気の量も少なくなるため、第2燃料極オフガスから除去する水蒸気の量を少なくすることができる。
【0026】
  請求項6に記載の発明は、請求項4または請求項5に記載の炭素回収型燃料電池発電システムにおいて、前記二酸化炭素ガス分離部で分離された前記水を、前記排熱投入型吸収式冷凍機の冷却水経路、または前記吸着式冷凍機の冷却水経路に供給する供給部を備え、前記排熱投入型吸収式冷凍機の前記冷却水または前記排熱投入型吸収式冷凍機を構成する冷却塔の冷却水補水の一部、あるいは前記吸着式冷凍機の前記冷却水または前記吸着式冷凍機を構成する冷却塔の冷却水補水の一部に、前記二酸化炭素ガス分離部で分離された前記水が用いられる。
【0027】
  請求項6に記載の炭素回収型燃料電池発電システムでは、二酸化炭素ガス分離部で分離された水を、排熱投入型吸収式冷凍機の冷却水経路、または吸着式冷凍機の冷却水経路に供給部で供給することができる。したがって、冷却水経路の冷却水が不足した場合等、外部の上水道等から水を供給する必要が無くなり、水の外部依存量を削減できる。
【0028】
  請求項7に記載の発明は、請求項4〜請求項6の何れか1項に記載の炭素回収型燃料電池発電システムにおいて、前記酸素分離部は、酸素を選択的に透過させる酸素透過膜を有し、前記燃焼部は、前記酸素透過膜の透過側に燃焼空間が配置されて前記酸素分離部と一体化している。
【0029】
  請求項7に係る炭素回収型燃料電池発電システムによれば、燃焼部を酸素分離部の酸素透過膜と隣接配置することができ、燃焼部と酸素分離部をコンパクトに構成することができる。
【0030】
  請求項8に記載の発明は、請求項4〜請求項6の何れか1項に記載の炭素回収型燃料電池発電システムにおいて、前記酸素分離部は、前記第1燃料電池、及び前記第2燃料電池で発電された電力で駆動する高温PSA装置を有している。
【0031】
  請求項8に係る炭素回収型燃料電池発電システムによれば、酸素分離部は、高温PSA装置で高温の空気極オフガスから酸素を分離するので、効率的に酸素を分離することができる。
【0032】
  請求項9に記載の発明は、請求項1〜請求項8の何れか1項に記載の炭素回収型燃料電池発電システムにおいて、前記二酸化炭素ガス分離部は、前記オフガスを冷却して前記二酸化炭素ガスと水とを生成し、前記炭素生成部で生成された前記水蒸気は、供給経路を介して前記二酸化炭素ガス分離部に供給される。
【0033】
  請求項9に記載の炭素回収型燃料電池発電システムによれば、二酸化炭素ガス分離部によってオフガスが冷却されて二酸化炭素ガスと水とが生成される。
  また、炭素生成部で生成された水蒸気は、供給経路を介して二酸化炭素ガス分離部に供給され、二酸化炭素ガス分離部で水蒸気が冷却されて水が生成される。  
  したがって、二酸化炭素ガス分離部では、オフガスで生成された水と、水蒸気が冷却されて生成された水とが得られ、システム内で生成される水の量を増大させることができ、これにより、水分解装置で生成する水素ガスの量も増大させることができる。
【0034】
  請求項10に記載の発明は、請求項1〜請求項9の何れか1項に記載の炭素回収型燃料電池発電システムにおいて、前記炭素生成部で生成された炭素をグラファイト、カーボンナノチューブ、またはダイヤモンドとする、炭素製品製造装置を有する。
【0035】
  請求項10に記載の炭素回収型燃料電池発電システムでは、炭素生成部で生成された炭素を、炭素よりも燃焼し難く、長期安定的に固定化しつつ、商工業にも利用できる、グラファイト、カーボンナノチューブ、またはダイヤモンドとすることができ、二酸化炭素ガスの安全かつ長期安定的な有効活用と固定化を実現することができる。
 
【発明の効果】
【0036】
  本発明に係る炭素回収型燃料電池発電システムによれば、燃料電池の発電に伴って発生した二酸化炭素を炭素にして、二酸化炭素ガスの貯留よりも容易かつ長期安定的な炭素固定とすることができる。
 
 
【発明を実施するための形態】
【0038】
  以下、図面を参照して本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。
 
【0039】
〔第1実施形態〕
  
図1には、本発明の二酸化炭素回収型燃料電池発電システムの一例としての第1実施形態に係る燃料電池発電システム10Aが示されている。燃料電池発電システム10Aは、主要な構成として、第1燃料電池セルスタック12、第2燃料電池セルスタック14、酸素透過膜付燃焼器20、凝縮器26、第1熱交換器30、第2熱交換器32、排熱投入型吸収式冷凍機36、水タンク27、炭素製造部66等を備え、これらがオンサイトで設けられている。また、燃料電池発電システム10Aは、
図2に示されるように、燃料電池発電システム10Aを制御する制御部40を備えている。
 
【0040】
  図1に示すように、第1燃料電池セルスタック12は、水素イオン伝導型固体酸化物形燃料電池(PCFC:Proton Ceramic Solid Oxide Fuel Cell)であり、電解質層12Cと、当該電解質層12Cの表裏面にそれぞれ積層された第1燃料極(燃料極)12A、及び第1空気極(空気極)12Bと、を有している。
 
【0041】
  なお、第2燃料電池セルスタック14についての基本構成は、第1燃料電池セルスタック12と同様であり、第1燃料極12Aに対応する第2燃料極14A、第1空気極12Bに対応する第2空気極14B、及び電解質層12Cに対応する電解質層14Cを有している。
 
【0042】
  第1燃料電池セルスタック12の第1燃料極12Aには、燃料ガス管P1の一端が接続されており、燃料ガス管P1の他端は図示しない燃料ガス源に接続されている。燃料ガス源からは、燃料供給ブロワB1により燃料ガスが第1燃料極12Aへ送出される。なお、本実施形態では、燃料ガスとしてメタンを用いるが、改質により水素を生成可能なガスであれば特に限定されず、炭化水素燃料を用いることができる。炭化水素燃料としては、天然ガス、LPガス(液化石油ガス)、バイオガス、石炭改質ガス、低級炭化水素ガスなどが例示される。低級炭化水素ガスとしては、メタン、エタン、エチレン、プロパン、ブタン等の炭素数4以下の低級炭化水素が挙げられ、本実施形態で用いるメタンが好ましい。なお、炭化水素燃料としては、上述した低級炭化水素ガスを混合したものであってもよく、上述した低級炭化水素ガスは天然ガス、都市ガス、LPガス等のガスであってもよい。原料ガスに不純物が含まれる場合、脱硫器等が必要になるが、図では省略されている。
 
【0043】
  燃料ガス管P1には、水蒸気管P2が合流接続されており、不図示の水蒸気源から、起動時や停止時などに、適宜水蒸気が送り込まれる。メタン及び水蒸気は燃料ガス管P1で合流され、第1燃料極12Aへ供給される。なお、本実施形態では、後述するように第2燃料極オフガスの一部が第1燃料極12Aへ戻されて水蒸気が再利用されるため、水蒸気管P2からの水蒸気は、燃料電池発電システム10Aの起動や停止工程において、必要時に補充的に供給される。
 
【0044】
  第1燃料極12Aでは、下記(1)式に示すように、燃料ガスが水蒸気改質され、水素と一酸化炭素が生成される。また、下記(2)式に示すように、生成された一酸化炭素と水蒸気とのシフト反応により二酸化炭素と水素が生成される。
 
【0045】
  CH
4+H
2O→3H
2+CO  …(1)
  CO+H
2O→CO
2+H
2  …(2)
 
【0046】
  そして、第1燃料極12Aにおいて、下記(3)式に示すように、水素が水素イオンと電子とに分離される。
 
【0047】
  (燃料極反応)
  H
2→2H
++2e
−…(3)
 
【0048】
  水素イオンは、電解質層12Cを通って第1空気極12Bへ移動する。電子は、外部回路(不図示)を通って第1空気極へ移動する。これにより、第1燃料電池セルスタック12において発電される。発電時に、第1燃料電池セルスタック12は、発熱する。
 
【0049】
  第1燃料電池セルスタック12の第1空気極12Bには、酸化剤ガス管P5から酸化剤ガス(空気)が供給される。酸化剤ガス管P5へは、酸化剤ガスブロワB2により空気が導入されている。酸化剤ガス管P5には、第2熱交換器32が設けられており、酸化剤ガス管P5を流れる空気が、後述する空気極オフガス管P6を流れる空気極オフガスと熱交換により加熱される。加熱された空気は、第1空気極12Bへ供給される。
 
【0050】
  第1空気極12Bでは、下記(4)式に示すように、電解質層12Cを通って第1燃料極12Aから移動してきた水素イオン、外部回路を通って第1燃料極12Aから移動した電子が、酸化剤ガス中の酸素と反応して水蒸気が生成される。
 
【0051】
  (空気極反応)
  2H
++2e
−+1/2O
2 →H
2O  …(4)
 
【0052】
  また、第1空気極12Bには、空気極オフガス管P6が接続されている。第1空気極12Bから空気極オフガス管P6へ空気極オフガスが排出される。なお、酸化剤ガス管P5及び空気極オフガス管P6は、第2空気極14Bとも同様に接続されており、第1空気極12B及び第2空気極14Bは、並列的に接続されている。
 
【0053】
  第1燃料電池セルスタック12の第1燃料極12Aには第1燃料極オフガス管P7の一端が接続されており、第1燃料極オフガス管P7の他端は第2燃料電池セルスタック14の第2燃料極14Aに接続されている。第1燃料極12Aから第1燃料極オフガス管P7へ第1燃料極オフガスが送出される。燃料極オフガスには、未改質の燃料ガス成分、未反応の水素、未反応の一酸化炭素、二酸化炭素及び水蒸気等が含まれている。
 
【0054】
  第2燃料電池セルスタック14の第2燃料極14Aには、第2燃料極オフガス管P7−2の一端が接続されており、第2燃料極14Aから、第2燃料極オフガスが送出される。第2燃料極オフガス管P7−2の他端は、酸素透過膜付燃焼器20と接続されている。第2燃料極オフガス管P7−2からは、循環ガス管P3が分岐されており、循環ガス管P3は、第1燃料極12Aへ接続される燃料ガス管P1と接続されている。循環ガス管P3には、循環ガスブロワB3が設けられている。
 
【0055】
  第2燃料電池セルスタック14では、第1燃料電池セルスタック12と同様の発電反応が行われ、第2空気極14Bから空気極オフガス管P6へ空気極オフガスが送出される。第2空気極14Bと接続された空気極オフガス管P6は、第1空気極12Bと接続された空気極オフガス管P6との合流部よりも上流側で分岐されており、分岐空気極オフガス管P6−2が形成されている。分岐空気極オフガス管P6−2には、流量調整可能な流量調整バルブ42が設けられている。流量調整バルブ42は、制御部40と接続されている。流量調整バルブ42は、制御部40により制御され、分岐空気極オフガス管P6−2へ分岐する空気極オフガス流量が調整される。分岐空気極オフガス管P6−2の下流端は、酸素透過膜付燃焼器20と接続されている。
 
【0056】
(酸素透過膜付燃焼器)
  酸素透過膜付燃焼器20は、多重円筒状とされており、多重円筒の外周筒を形成する燃焼部22と、燃焼部22の径方向内側に配置された酸素分離部24を有している。燃焼部22内には、燃焼空間22Aが形成されている。
 
【0057】
  酸素分離部24は、燃焼部22の径方向内側に配置されており、燃焼空間22Aに隣接して空気流路24Aが形成されている。空気流路24Aと燃焼空間22Aとは、酸素透過膜23により仕切られている。酸素透過膜23には、例えば、LSCFなどの電子と酸素イオンの混合導電性セラミクスや、YSZなどの酸素イオン導電性のセラミクス緻密膜を用いることができる。第2燃料極オフガス管P7−2の他端は、燃焼空間22Aの入口に接続され、分岐空気極オフガス管P6−2の下流端は、空気流路24Aの入口に接続されている。燃焼空間22Aの内部には、酸化触媒が配されている。酸化触媒としては、例えば、ニッケルやルテニウムなどを用いることができる。
 
【0058】
  第2空気極オフガスは、空気流路24Aに供給され、第2空気極オフガスに含まれている酸素が酸素透過膜23を透過して燃焼空間22Aへ移動する。燃焼空間22Aへ移動しない第2空気極オフガスは、空気流路24Aの出口側に接続された排気管P12から外部へ排気される。
 
【0059】
  第2燃料極オフガスは、燃焼空間22Aに供給され、酸素分離部24から酸素透過膜23を透過して移動した酸素と混合される。これにより、酸化触媒を介して、第2燃料極オフガス中の可燃ガス成分(未改質のメタン、未反応の水素、未反応の一酸化炭素等)と酸素とで燃焼反応が生じ、二酸化炭素と水蒸気が生成される。燃焼空間22Aの出口側には、燃焼オフガス管P8が接続されており、燃焼空間22Aから燃焼オフガスが送出される。
 
【0060】
  燃焼オフガス管P8は、第1熱交換器30を経由し、他端が凝縮器26に接続されている。第1熱交換器30では、燃料ガスと燃焼オフガスとの熱交換により、燃料ガスが加熱される。凝縮器26には、冷却水循環流路26Aが配管されており、後述する排熱投入型吸収式冷凍機36からの冷却水がポンプ26Pの駆動により循環供給され、燃焼オフガスが冷却される。これにより、燃焼オフガス中の水蒸気が凝縮する。凝縮した水は水配管P9を介して水タンク27へ送出される。
 
【0061】
  水蒸気が分離除去された燃焼オフガスは、二酸化炭素ガス管P10へ送出される。凝縮器26で水(液相)が除去された燃焼オフガスは、二酸化炭素濃度の高いガスとなっており、当該燃焼オフガスを二酸化炭素リッチガスと称する。二酸化炭素ガス管P10には、組成検出部44が設けられている。組成検出部44では、凝縮器26から送出された二酸化炭素リッチガスの組成が検出される。具体的には、メタン、一酸化炭素、水素などの可燃ガスの濃度、二酸化炭素、酸素のうち、何れか一つ以上の濃度が検出される。組成検出部44は、制御部40と接続されており、検出された二酸化炭素リッチガスの組成情報が制御部40へ送信される。なお、制御部40は、二酸化炭素ガスの濃度を高めるように種々の制御を行う。
 
【0062】
  なお、二酸化炭素ガス管P10の下流側には、後述する炭素製造部66が設けられている。
 
【0063】
  第1空気極12B及び第2空気極14Bからの空気極オフガス管P6が合流された合流部よりも下流側には、第2熱交換器32が設けられている。第2熱交換器32では、空気極オフガス管P6を流れる空気極オフガスと酸化剤ガス管P5を流れる酸化剤ガスとの間で熱交換が行われ、酸化剤ガスが加熱され、空気極オフガスが冷却される。空気極オフガスは、第2熱交換器32を経て、排熱投入型吸収式冷凍機36へ供給される。
 
【0064】
(排熱投入型吸収式冷凍機)
  排熱投入型吸収式冷凍機36は、排熱を用いて冷熱を生成するヒートポンプであり、一例として蒸気/排熱投入型吸収式冷凍機を用いることができる。蒸気/排熱投入型吸収式冷凍機では、空気極オフガスの熱により、水蒸気を吸収した吸収液(例えば、臭化リチウム水溶液やアンモニア水溶液)を加熱することにより吸収液から水を分離させて再生する。吸収液を加熱して冷却された空気極オフガスは、水蒸気が凝縮され、凝縮水は水配管P36−2により水タンク27へ供給される。水蒸気が凝縮除去された後の空気極オフガスは、排気管P36−1に送出され、排熱投入型吸収式冷凍機36の外部に排気される。
 
【0065】
  なお、排熱投入型吸収式冷凍機36の内部には、吸収液を循環させるポンプ、及び吸収液から分離した水を循環させるポンプ(何れも図示せず)が設けられている。これらのポンプは、直流モータで駆動され、直流モータは、第1燃料電池セルスタック12、及び第2燃料電池セルスタック14で発電された直流電力によって駆動することができる。
 
【0066】
  加熱により再生された吸収液は、水蒸気を吸収することにより水の蒸発を促進し、冷熱の生成に寄与する。排熱投入型吸収式冷凍機36は、放熱回路37を介して冷却塔38と接続されている。放熱回路37には、ポンプ37Pが設置されており、ポンプ37Pにより放熱回路37に冷却水が供給される。排熱投入型吸収式冷凍機36で吸収液が水蒸気を吸収するときに生じる吸収熱は、放熱回路37を流れる冷却水を介して冷却塔38から大気へ放出される。
 
【0067】
  排熱投入型吸収式冷凍機36で生成された冷熱は、冷却水循環流路26Aを流れる冷却水を介して凝縮器26へ送られ、凝縮器26で燃焼オフガスが冷却され、さらに燃焼オフガス中の水蒸気が凝縮除去される。
 
【0068】
  水タンク27は、冷却水循環流路26A、放熱回路37、及び、排熱投入型吸収式冷凍機36の熱媒としての水が流れる熱媒流路(不図示)と接続されている。冷却水循環流路26A、放熱回路37、及び、熱媒流路では、水が不足した場合に、水タンク27から適宜水が補充される。
 
【0069】
(炭素製造部66)
  二酸化炭素ガス管P10へ送出された二酸化炭素リッチガスは、炭素製造部66へ送られる。
  炭素製造部66は、水電解装置70、配管P14、水素ブロワ72、配管P15、酸素ブロワ74、酸素タンク76、粉末炭素生成器78等を含んで構成されている。
 
【0070】
  水電解装置70には、配管P16、ポンプ80、及び水浄化装置82を経た水タンク27の水が供給される。水浄化装置82は、水タンク27からの水を浄化(異物除去、PH調整等)する。水電解装置70は、第1燃料電池セルスタック12、及び第2燃料電池セルスタック14で得られた電力を用いて浄化した水を電気分解して水素ガスと酸素ガスとを生成することができる。なお、水電解装置70は、図示しない再生可能エネルギー発電で得られた電力(いわゆる「クリーンエネルギー」)を用いて水を電気分解することもできる。再生可能エネルギー発電として、一例として、太陽光発電、太陽熱発電、水力発電、風力発電、地熱発電、波力発電、温度差発電、バイオマス発電等を挙げることができるが、他のものであってもよい。即ち、大気中の二酸化炭素を削減、或いは大気への二酸化炭素の放出を抑制するという見地から、第1燃料電池セルスタック12、及び第2燃料電池セルスタック14で得られた直流電力や、再生可能エネルギー発電で得られた電力を用いることが好ましい。
 
【0071】
  水電解装置70は、第1燃料電池セルスタック12、及び第2燃料電池セルスタック14で得られた直流電力や、再生可能エネルギー発電で得られた電力を用いて水を電気分解するので、例えば、二酸化炭素ガスを放出する発電装置の交流電力を直流電力に変換して電気分解に用いる場合に比較して、効率的に水を電気分解することができる。なお、水電解装置70は、後述する制御部40で制御される。
 
【0072】
  水電解装置70で生成された水素ガスは、配管P14、水素ブロワ72を介して粉末炭素生成器78へ送られ、酸素ガスは配管P15、酸素ブロワ74を介して酸素タンク76へ送られ、酸素タンク76に貯留される。なお、水素ブロワ72、及び酸素ブロワ74は、後述する制御部40で制御される。
 
【0073】
(粉末炭素生成器の構成)
  粉末炭素生成器78は、一例として、多重円筒状とされており、平面視で円環状とされたガス流路78Aと、ガス流路78Aの径方向内側に配置された炭素固定化部78Bとを有している。
  炭素固定化部78Bでは、凝縮器26から送られた二酸化炭素ガスと、水電解装置70から送られた水素ガスとが供給される。炭素固定化部78Bで二酸化炭素ガスと水素ガスとに対し触媒を用いて下記(5)式のような還元反応を生じさせるようになっている。
  CO
2+2H
2→C+2H
2O  …(5)
 
【0074】
  上記還元反応で生じるCは、粉末炭素であり、炭素固定化部78Bの下部から排出することができる。また、上記還元反応で生じるH
20は、具体的には水蒸気であり、該水蒸気は、配管P17を介して凝縮器26へ送られる。
 
【0075】
(制御部)
  制御部40は燃料電池発電システム10Aの全体を制御するものであり、CPU、ROM、RAM、メモリ等を含んで構成されている。メモリには、後述する流量調整処理、冷却水温度調整処理や、通常運転時の処理に必要なデータや手順等が記憶されている。
図2に示されるように、制御部40は、流量調整バルブ42、組成検出部44、排熱投入型吸収式冷凍機36等と接続されている。流量調整バルブ42、組成検出部44、排熱投入型吸収式冷凍機36等は、制御部40により制御される。なお、
図2は、燃料電池発電システム10Aにおける制御部40の接続関係の一部を示すものであり、制御部40は、
図2では図示していない他の機器とも接続されている。
 
【0076】
  燃料電池発電システム10Aにおいて、ポンプ、ブロワ、その他の補機は、燃料電池発電システム10Aで発電された電力により駆動される。燃料電池発電システム10Aで発電された電力を直流のままで交流に変換することなく効率よく利用するために、補機は直流電流により駆動するものであることが好ましい。
 
【0077】
(作用、効果)
  次に、本実施形態の燃料電池発電システム10Aの動作について説明する。
 
【0078】
  燃料電池発電システム10Aにおいては、燃料供給ブロワB1により、ガス源からメタンが燃料ガス管P1へ送出され、第1熱交換器30を経ることで加熱され、第1燃料極12Aへ供給される。水蒸気管P2からは、水蒸気改質用の水蒸気が燃料ガス管P1を介して第1燃料極12Aへ供給される。なお、水蒸気の供給は、起動時及び不足時であり、定格運転時には、後述するように、循環ガス管P3から戻される第2燃料極オフガス中の水蒸気が利用される。
 
【0079】
  第1燃料電池セルスタック12の第1燃料極12Aでは、燃料ガスが水蒸気改質され、水素と一酸化炭素が生成される。また、生成された一酸化炭素と水蒸気とのシフト反応により二酸化炭素と水素が生成される。
 
【0080】
  第1燃料電池セルスタック12の第1空気極12Bには、空気が酸化剤ガス管P5を経て供給される。第1燃料電池セルスタック12では、第1燃料極12A及び第1空気極12Bにおいて水素イオンが移動すると共に前述の反応が生じ、発電が行われる。第1燃料電池セルスタック12の第1燃料極12Aからは、第1燃料極オフガス管P7へ第1燃料極オフガスが送出される。また、第1空気極12Bからは、空気極オフガス管P6へ空気極オフガスが送出される。
 
【0081】
  第1燃料極12Aから送出された第1燃料極オフガスは、第1燃料極オフガス管P7に導かれ、第2燃料電池セルスタック14の第2燃料極14Aへ供給される。第2燃料電池セルスタック14の第2空気極14Bには、空気が酸化剤ガス管P5を経て供給される。第2燃料電池セルスタック14でも第1燃料電池セルスタック12と同様に発電が行われる。第2燃料電池セルスタック14の第2燃料極14Aからは、第2燃料極オフガス管P7−2へ第2燃料極オフガスが送出される。また、第2空気極14Bからは、空気極オフガス管P6へ空気極オフガスが送出される。第2空気極14Bから送出された空気極オフガスは、一部が分岐空気極オフガス管P6−2へ分岐され、その他は第1空気極12Bから送出された空気極オフガスと合流される。
 
【0082】
  空気極オフガスは、第2熱交換器32を経て排熱投入型吸収式冷凍機36へ供給される。第2熱交換器32では、空気極オフガスと酸化剤ガスとの間で熱交換が行われ、空気極オフガスによって酸化剤ガスが加熱される。排熱投入型吸収式冷凍機36では、前述のように、空気極オフガスの熱を利用して冷熱が生成される。
 
【0083】
  第2燃料極オフガスは、一部が循環ガス管P3へ分岐し、第1燃料極12Aへ戻される。その他の第2燃料極オフガスは、酸素透過膜付燃焼器20の燃焼部22へ供給され、燃焼空間22Aを流れる。
 
【0084】
  分岐空気極オフガス管P6−2へ分岐された空気極オフガスは、酸素透過膜付燃焼器20の酸素分離部24へ供給される。酸素分離部24へ供給された空気極オフガスは、空気流路24Aを流れる。空気流路24Aにおいて、空気極オフガスに含まれる酸素は、酸素透過膜23を透過して燃焼空間22A側へ移動する。燃焼空間22Aでは、第2燃料極オフガス中の可燃ガス(メタン、水素、一酸化炭素等)と酸素の燃焼反応が生じ、二酸化炭素と水蒸気が生成される。二酸化炭素及び水蒸気を含む燃焼オフガスは、燃焼空間22Aから燃焼オフガス管P8へ送出される。燃焼オフガス管P8へ送出された燃焼オフガスは、第1熱交換器30を経て凝縮器26へ供給される。
 
【0085】
  凝縮器26へ供給された燃焼オフガスは、冷却水循環流路26Aを介して循環供給される排熱投入型吸収式冷凍機36からの冷却水により冷却され、燃焼オフガス内の水蒸気が凝縮される。凝縮された水は水配管P9を介して水タンク27へ送出され、水タンク27に貯留される。
 
【0086】
  凝縮器26で水蒸気が除去された燃焼オフガスは、二酸化炭素濃度の高い二酸化炭素リッチガスとなり、二酸化炭素用ブロワB4により二酸化炭素ガス管P10へ送出され、組成検出部44に送られる。組成検出部44では、二酸化炭素リッチガスの組成が検出され、検出された情報が制御部40へ送信される。
 
【0087】
  制御部40は、組成検出部44から送信された組成情報に基づいて、流量調整バルブ42を制御して分岐空気極オフガス管P6−2へ分岐する空気極オフガス量を調整すると共に、排熱投入型吸収式冷凍機36で冷却水循環流路26Aへ送る冷却水の温度を制御する。具体的には、制御部40では、以下の流量調整処理、冷却水温度調整処理が実行される。
 
【0088】
  図3に示されるように、流量調整処理では、ステップS10で、組成検出部44で検出された二酸化炭素リッチガスの組成情報において、可燃ガスの濃度が閾値G1以内かどうかを判断する。ここで、閾値G1は、二酸化炭素リッチガスにおいて十分に低い濃度であり0.1〜5vol%程度を設定することができ、0.1〜1vol%の範囲であることがより好ましい。可燃ガスの濃度が閾値G1よりも高い場合には、ステップS12で流量調整バルブ42を制御して、分岐空気極オフガス管P6−2へ分岐する空気極オフガスの流量を増加させる。これにより、酸素透過膜23を透過して燃焼空間22Aへ移動する酸素の量が増加し、燃焼空間22Aで燃焼反応させることにより、二酸化炭素リッチガスに含まれる可燃ガスを減少させることができる。
 
【0089】
  ステップS10で、可燃ガスの濃度が閾値G1以下の場合には、ステップS14で、組成検出部44で検出された二酸化炭素リッチガスの組成情報において、酸素の濃度が閾値O1以内かどうかを判断する。ここで、閾値O1は、二酸化炭素リッチガスにおいて十分に低い濃度であり0.1〜5vol%程度を設定することができ、0.1〜1vol%の範囲であることがより好ましい。酸素の濃度が閾値O1よりも高い場合には、ステップS16で流量調整バルブ42を制御して、分岐空気極オフガス管P6−2へ分岐する空気極オフガスの流量を減少させる。これにより、酸素透過膜23を透過して燃焼空間22Aへ移動する酸素の量が減少し、燃焼空間22Aで燃焼反応に供されずに残る酸素を減少させることができる。
 
【0090】
  ステップS12、S14、S16の後、ステップS10へ戻り、前述の処理を繰り返す。この流量調整処理は、燃料電池発電システム10Aの運転開始により開始され、運転中は継続され、運転停止により終了する。
 
【0091】
  また、
図4に示されるように、凝縮量調整処理では、ステップS20で、組成検出部44で検出された二酸化炭素リッチガスの組成情報において、水蒸気の濃度が閾値M以内かどうかを判断する。ここで、閾値Mは、二酸化炭素リッチガスにおいて十分に低い濃度であり0.1〜5vol%程度を設定することができ、0.1〜1vol%の範囲であることがより好ましい。水蒸気の濃度が閾値Mよりも高い場合には、ステップS22で、凝縮強化を行う。具体的には、排熱投入型吸収式冷凍機36を制御して冷却水循環流路26Aへ送る冷却水の温度を低下させたり、冷却水の循環流量を増加させたりする。これにより、凝縮器26で凝縮により燃焼オフガスから分離される水の量が増加し、二酸化炭素リッチガスに含有される水蒸気の割合を小さくすることができる。
 
【0092】
  ステップS20、S22の後、ステップS20へ戻り、前述の処理を繰り返す。本凝縮量調整処理は、燃料電池発電システム10Aの運転開始により開始され、運転中は継続され、運転停止により終了する。
 
【0093】
  水電解装置70は、水浄化装置82から送られた水を電気分解し、水素ガスと酸素ガスとを生成する。二酸化炭素ガス管P10へ送出された二酸化炭素リッチガスは、粉末炭素生成器78へ送られる。
  炭素固定化部78Bでは、凝縮器26から送られた二酸化炭素ガスと、水電解装置70から送られた水素ガスとが供給されて下記(6)式のような還元反応を生じさせる。
  CO
2+2H
2→C+2H
2O  …(6)
 
【0094】
  上記反応を開始させるには、雰囲気温度を高温にする必要があるが、該反応により熱が生じるので、一旦反応が開始された後には、外部より熱を加える必要はない。なお、粉末炭素生成器78を起動する際には、最初に、ガス流路78Aに水素ガスと酸素ガスとを供給して着火する。着火後、(6)式の反応により熱が生じれば、酸素ガスと水素ガスの供給は停止する。
 
【0095】
  炭素固定化部78Bでは、二酸化炭素ガスと水素ガスとを連続して供給することで、粉末炭素((6)式の「C」)を連続して生成することができる。生成された粉末炭素は、炭素固定化部78Bの下方から取り出すことができる。また、二酸化炭素ガスと水素ガスとが反応して生成された水蒸気((6)式のH
2O)は、炭素固定化部78Bの下方から排出される。なお、炭素固定化部78Bから排出された水蒸気は、配管P17を介して凝縮器26へ送られ、凝縮器26で冷却されて水となる。
 
【0096】
  本実施形態の燃料電池発電システム10Aは、第1燃料電池セルスタック12、及び第2燃料電池セルスタック14から炭素製造部66までが連続的に繋がってオンサイトで設けられているので、発電中は、連続的に粉末炭素を効率的に製造することができる。
  粉末炭素は、着火して燃焼しないかぎり、大気中に二酸化炭素ガスとなって放出されることは無く、二酸化炭素ガスの大気への放出を抑制することができる。
  また、粉末炭素は貯留サイトへの輸送も容易であり、着火源と酸素が揃う条件下に置かなければ、地下に埋め立て処分したり、地上に野積みするだけでも、長期安定的な炭素固定化が可能となる。なお、製造された粉末炭素は、カーボンブラック等として商工業利用することもできる。
 
【0097】
  本実施形態の燃料電池発電システム10Aでは、二酸化炭素ガスから粉末炭素を生成したが、粉末炭素をグラファイト、カーボンナノチューブまたはダイヤモンド等にする炭素製品製造装置84を更に付加してもよい。炭素製品製造装置84では、例えば、回収した粉末炭素を、燃料電池発電システム10Aで発電された電力、または再生可能エネルギーによる電力等を活用して高温(電気ヒータ昇温)、高圧(電動高圧プレス)環境下におくことで、公知の技術により合成ダイヤモンドの粉末を得ることができる。また、例えば、回収した粉末炭素を、燃料電池発電システム10Aで発電された電力、または再生可能エネルギーによる電力等を活用して、アーク放電法、レーザーアブレーション法、CVD法等、公知の技術によりカーボンナノチューブを得ることができる。さらに、回収した粉末炭素を、燃料電池発電システム10Aで発電された電力、または再生可能エネルギーによる電力等を活用して、公知の技術により、グラファイトを得ることができる。
  炭素粉末をグラファイトやカーボンナノチューブまたはダイヤモンド粉末とすることで、着火源や酸素があっても容易に燃焼することはなく、地上に野積みしても、安全かつ長期安定的に炭素を固定することが可能となり、貯留場所の制限もなくなり、輸送や圧入のエネルギーロスやコストを低減できる。なお、グラファイトは鉛筆の芯や自動車用のブレーキパッド等に、カーボンナノチューブは半導体や構造材料として、合成ダイヤモンド粉末は、工事、工作機械のダイヤモンドカッターの刃材等に、それぞれ商工業利用することもできる。
  なお、この炭素製品製造装置84も炭素製造部66の一部であり、燃料電池発電システム10Aにオンサイトで設けられている。また、粉末炭素を利用して製造する物も、上記の炭素製品に限らず、カーボンナノホーンやフラーレンといった炭素材料を、公知の技術により製造して商工業利用しても良い。
 
【0098】
  さらに、本実施形態の燃料電池発電システム10Aでは、第2燃料電池セルスタック14の第2燃料極14Aから送出された第2燃料極オフガスが燃焼部22で燃焼されるので、第2燃料電池セルスタック14での発電に供される前の第1燃料極オフガスを燃焼する場合と比較して、第2燃料電池セルスタック14の発電に供される未反応燃料ガス量が多くなる。したがって、第2燃料電池セルスタック14での発電効率を高めることができる。
 
【0099】
  また、燃焼部22では、第2燃料極オフガスに含まれている可燃ガスと酸素との燃焼反応により二酸化炭素及び水蒸気が生成される。したがって、第2燃料極オフガスから可燃ガスを減じて、高濃度の二酸化炭素を回収することができる。また、燃焼部22へは、空気極オフガス中の酸素のみが供給されまた、第2燃料極オフガスには、第1燃料極オフガスと比較して含まれる未反応の燃料ガス量が少なく、二酸化炭素の含有率が高い。したがって、燃焼部22で未反応の燃料ガスを燃焼させる量と、当該未反応の燃料ガスを燃焼させるために必要となる酸素の量を少なくすることができる。
 
【0100】
  また、本実施形態の燃料電池発電システム10Aでは、空気極オフガス管P6から分岐された分岐空気極オフガス管P6−2を有しているので、組成検出部44で検出された二酸化炭素リッチガスの組成情報に基づいて、分岐空気極オフガス管P6−2へ分岐させる空気極オフガス流量を容易に調整することができる。これにより、燃焼オフガスに含まれる可燃ガス及び酸素の量が所定の閾値よりも低くなるように、燃焼部22の燃焼空間22Aへ流入する酸素量を調整することができる。
 
【0101】
  さらに、本実施形態の燃料電池発電システム10Aでは、組成検出部44で検出された二酸化炭素リッチガスの組成情報に基づいて、凝縮器26で凝縮させる水の量を調整することにより、二酸化炭素リッチガスの二酸化炭素濃度を高くすることができる。
 
【0102】
  また、本実施形態の燃料電池発電システム10Aでは、燃料電池セルスタックに水素イオン伝導型固体酸化物形燃料電池を用いているので、第1燃料極12Aで水蒸気が生成されない。したがって、第1燃料極オフガスに含まれる水蒸気の量が少なくなるため、第2燃料電池での発電効率を向上させることができる。また、第2燃料極オフガスに含まれる水蒸気の量も少なくなるため、第2燃料極オフガスから除去する水蒸気の量を少なくすることができる。
 
【0103】
  また、本実施形態の燃料電池発電システム10Aでは、燃焼部22よりも上流側から第2燃料極オフガスの一部を第1燃料極12Aへ供給する循環ガス管P3を備えている。したがって、第2燃料極オフガス中の未反応燃料ガス及び水蒸気の一部を、発電及び燃料ガスの水蒸気改質に、それぞれ再利用することができる
 
【0104】
  また、本実施形態の燃料電池発電システム10Aでは、燃焼部22を酸素分離部24の酸素透過膜23と隣接配置することにより、燃焼部22と酸素分離部24が一体形成されたコンパクトな酸素透過膜付燃焼器20を構成することができる。
 
【0105】
  また、本実施形態の燃料電池発電システム10Aでは、空気極オフガスの熱を排熱投入型吸収式冷凍機36での冷熱生成に用いるので、第1燃料電池セルスタック12、第2燃料電池セルスタック14からの排熱を有効利用することができる。また、空気極オフガスには、水蒸気が多く含まれているので、排熱投入型吸収式冷凍機36において当該水蒸気が熱交換時に凝縮することにより、凝縮熱も有効に用いることができる。
 
【0106】
  なお、本実施形態では、燃焼オフガス内の水蒸気を凝縮器26で凝縮させて除去することにより、燃焼オフガスから二酸化炭素を分離したが、その他の手段、例えば、二酸化炭素分離膜で二酸化炭素を分離してもよいし、PSA装置により二酸化炭素を分離してもよい。
 
【0107】
[第2実施形態]
  次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態では、第1実施形態と同様の部分については同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
 
【0108】
  本実施形態の燃料電池発電システム10Bは、
図5に示すように、第1実施形態の酸素透過膜付燃焼器20に代えて、高温酸素製造装置50、及び、燃焼器52を備えている。高温酸素製造装置50、及び、燃焼器52以外の構成については、第1実施形態と同様である。
 
【0109】
  高温酸素製造装置50の入口側には、分岐空気極オフガス管P6−2の下流端が接続されている。高温酸素製造装置50は、空気極オフガスから酸素を分離する装置であり、一例として、高温下で吸着と脱着を行う高温(一例として、作動温度600〜900℃)PSA装置を用いることができる。高温酸素製造装置50の酸素出口側には、酸素供給管POの一端が接続されている。高温酸素製造装置50の酸素が分離された後の空気極オフガス出口側には、排気管P13が接続されている。酸素供給管POの他端は、燃焼器52の入口側に接続されている。排気管P13は、燃料電池発電システム10Bの外部に開放されている。なお、この高温酸素製造装置50は、高温の空気極オフガスを利用して酸素を効率的に製造することができる。また、この高温酸素製造装置50は、第1燃料電池セルスタック12、及び第2燃料電池セルスタック14で発電された直流電力によって駆動することができる。
 
【0110】
  燃焼器52の入口側には、前述の酸素供給管POの他端と、第2燃料極オフガス管P7−2の下流端が接続されている。燃焼器52の内部では、第2燃料極オフガス中の可燃ガス成分(未改質のメタン、未反応の水素、未反応の一酸化炭素等)と、酸素供給管POから供給される酸素とで燃焼反応が生じ、二酸化炭素と水蒸気が生成される。燃焼器52の出口側には、燃焼オフガス管P8が接続されており、燃焼器52から燃焼オフガスが送出される。
 
【0111】
  次に、本実施形態の燃料電池発電システム10Bの動作について説明する。
 
【0112】
  本実施形態においても、第1実施形態の燃料電池発電システム10Aと同様に、第1燃料電池セルスタック12、第2燃料電池セルスタック14での発電が行われる。第2空気極14Bから送出され、分岐空気極オフガス管P6−2へ分岐された第2空気極オフガスは、高温酸素製造装置50へ供給される。高温酸素製造装置50では、第2空気極オフガスから酸素が分離され、分離された酸素は、酸素供給管POを介して燃焼器52へ供給される。酸素が分離された後の空気極オフガスは、排気管P13から外部へ排出される。
 
【0113】
  燃焼器52では、第2燃料極オフガス中の可燃ガス成分(未改質のメタン、未反応の水素、未反応の一酸化炭素等)と、酸素とで燃焼反応が生じ、二酸化炭素と水蒸気が生成される。燃焼オフガスは、燃焼オフガス管P8へ送出され、第1実施形態と同様にして凝縮器26で水が分離され、分離された水が水タンク27に回収され、二酸化炭素リッチガスは、炭素製造部66へと供給される。
 
【0114】
  本実施形態においても、燃焼器52において、第2燃料極オフガスに含まれている可燃ガスと酸素との燃焼反応により二酸化炭素及び水蒸気が生成される。したがって、第2燃料極オフガスから可燃ガスを減じて、高濃度の二酸化炭素を回収し、効率的に粉末炭素を得ることができる。
 
【0115】
[第3実施形態]
  次に、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態では、第1、第2実施形態と同様の部分については同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
 
【0116】
  本実施形態の燃料電池発電システム10Cは、主に改質器54を備えている点、循環ガス管P3を備えていない点、及び、これらの構成に関連する配管流路が、第1実施形態と異なっている。その他の構成は第1実施形態と同様である。
 
【0117】
  図6に示すように、燃料電池発電システム10Cは、改質器54を備えている。改質器54の入口側には、燃料ガス管P1−1の一端が接続されている。また、改質器54の入口側には、水供給管P2−2の一端が接続されている。水供給管P2−2の他端は、水タンク27と接続されている。水供給管P2−2には、イオン交換樹脂56及びポンプ27Bが設けられている。ポンプ27Bを駆動させることにより、水タンク27に貯留された水がイオン交換樹脂56を経て改質器54へ供給される。
 
【0118】
  改質器54の出口側には、改質ガス管P1−2の一端が接続されている。改質ガス管P1−2の他端は、第1燃料電池セルスタック12の第1燃料極12Aと接続されている。
 
【0119】
  次に、本実施形態の燃料電池発電システム10Cの動作について説明する。
 
【0120】
  改質器54では、燃料ガスと水蒸気の混合ガスが燃焼オフガスとの熱交換により加熱され、水蒸気改質反応により、水素と一酸化炭素が生成される。また、生成された一酸化炭素と水蒸気とのシフト反応により二酸化炭素と水素が生成される。未反応の燃料ガス(メタン)、水素、一酸化炭素、二酸化炭素を含んだ改質ガスが、改質ガス管P1−2を通って第1燃料極12Aへ供給される。第1燃料電池セルスタック12、第2燃料電池セルスタック14では、第1実施形態と同様に発電が行われる。
 
【0121】
  第2燃料極14Aからは、第2燃料極オフガス管P7−2へ第2燃料極オフガスが送出される。第2燃料極オフガスは、分岐されることなく酸素透過膜付燃焼器20の燃焼部22へ供給される。第2空気極14Bからは、空気極オフガス管P6へ空気極オフガスが送出され、第1実施形態と同様に、空気極オフガスの一部が分岐空気極オフガス管P6−2へ分岐され、その他は第1空気極12Bから送出された空気極オフガスと合流される。
 
【0122】
  酸素透過膜付燃焼器20、凝縮器26では、第1実施形態と同様に処理が行われ、二酸化炭素リッチガスは、炭素製造部66へと供給される。
 
【0123】
  本実施形態においても、酸素透過膜付燃焼器20において、第2燃料極オフガスに含まれている可燃ガスと酸素との燃焼反応により二酸化炭素及び水蒸気が生成される。したがって、第2燃料極オフガスから可燃ガスを減じて、高濃度の二酸化炭素を回収し、効率的に粉末炭素を得ることができる。
 
【0124】
[第4実施形態]
  次に、本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態では、第1〜第3実施形態と同様の部分については同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
 
【0125】
  本実施形態の燃料電池発電システム10Dは、第3実施形態の酸素透過膜付燃焼器20に代えて、第2実施形態の高温酸素製造装置50、及び、燃焼器52を備えている。高温酸素製造装置50、及び、燃焼器52以外の構成については、第3実施形態と同様である。
 
【0126】
  図7に示すように、高温酸素製造装置50の入口側には、分岐空気極オフガス管P6−2の下流端が接続され、高温酸素製造装置50の酸素出口側には、酸素供給管POの一端が接続されている。高温酸素製造装置50の酸素が分離された後の空気極オフガス出口側には、排気管P13が接続されている。酸素供給管POの他端は、燃焼器52の入口側に接続されている。排気管P13は、燃料電池発電システム10Dの外部に開放されている。
 
【0127】
  燃焼器52の入口側には、前述の酸素供給管POの他端と、第2燃料極オフガス管P7−2の下流端が接続されている。燃焼器52の内部では、第2燃料極オフガス中の可燃ガス成分(未改質のメタン、未反応の水素、未反応の一酸化炭素等)と、酸素供給管POから供給される酸素とで燃焼反応が生じ、二酸化炭素と水蒸気が生成される。燃焼器52の出口側には、燃焼オフガス管P8が接続されており、燃焼器52から燃焼オフガスが送出される。
 
【0128】
  次に、本実施形態の燃料電池発電システム10Dの動作について説明する。
 
【0129】
  本実施形態においても、第3実施形態の燃料電池発電システム10Cと同様に、改質器54で燃料ガスが水蒸気改質されて改質ガスが生成され、第1燃料電池セルスタック12、第2燃料電池セルスタック14での発電が行われる。第2空気極14Bから送出され、分岐空気極オフガス管P6−2へ分岐された第2空気極オフガスは、高温酸素製造装置50へ供給される。高温酸素製造装置50では、第2空気極オフガスから酸素が分離され、分離された酸素は、酸素供給管POを介して燃焼器52へ供給される。酸素が分離された後の空気極オフガスは、排気管P13から外部へ排出される。
 
【0130】
  燃焼器52では、第2燃料極オフガス中の可燃ガス成分(未改質のメタン、未反応の水素、未反応の一酸化炭素等)と、酸素とで燃焼反応が生じ、二酸化炭素と水蒸気が生成される。燃焼オフガスは、燃焼オフガス管P8へ送出され、第1実施形態と同様にして凝縮器26で水が分離され、分離された水が水タンク27に回収され、二酸化炭素リッチガスは、炭素製造部66へと供給される。
 
【0131】
  本実施形態においても、燃焼器52において、第2燃料極オフガスに含まれている可燃ガスと酸素との燃焼反応により二酸化炭素及び水蒸気が生成される。したがって、第2燃料極オフガスから可燃ガスを減じて、高濃度の二酸化炭素を回収し、効率的に粉末炭素を得ることができる。
 
【0132】
[第5実施形態]
  次に、本発明の第5実施形態について説明する。本実施形態では、第1〜第4実施形態と同様の部分については同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
 
【0133】
  本実施形態の燃料電池発電システム10Eでは、第1燃料極オフガス管P7の経路に、第3熱交換器34及び凝縮器35が設けられている点が第1実施形態と異なっている。
 
【0134】
  図8に示すように、第1燃料極オフガス管P7は、第1燃料極12Aから延出され、第3熱交換器34を経て凝縮器35と接続されている。第1燃料極12Aから凝縮器35までの第1燃料極オフガス管P7を符号P7Aで示す。第1燃料極オフガス管P7Aは、凝縮器35の気体側出口から延出され、第3熱交換器34を経て第2燃料極14Aと接続されている。凝縮器35から第2燃料極14Aまでの第1燃料極オフガス管P7を符号P7Bで示す。凝縮器35の液体側出口には、水配管P9−2の一端が接続されている。水配管P9−2の他端は水タンク27に接続されている。凝縮器35には、冷却水循環流路35Aが配管されており、排熱投入型吸収式冷凍機36からの冷却水がポンプ35Pの駆動により循環供給されている。これにより、第1燃料極オフガスが冷却され、第1燃料極オフガス中の水蒸気が凝縮する。凝縮した水は水配管P9−2を介して水タンク27へ送出される。
 
【0135】
  次に、本実施形態の燃料電池発電システム10Eの動作について説明する。
 
【0136】
  本実施形態においても、第1実施形態の燃料電池発電システム10Aと同様に、第1燃料電池セルスタック12での発電が行われる。第1燃料極12Aから第1燃料極オフガス管P7−1へ送出された第1燃料極オフガスは、第3熱交換器34で後述する再生燃料ガスと熱交換により冷却され、凝縮器35へ供給される。凝縮器35では、冷却水循環流路35Aを循環する冷却水により、第1燃料極オフガスが更に冷却され、第1燃料極オフガス中の水蒸気が凝縮する。ここで、冷却水循環流路35Aを循環する冷却水の温度は、再生燃料ガス中に残る水蒸気量が第2燃料電池セルスタック14での発電効率を向上させる程度に第1燃料極オフガス中の水蒸気が凝縮するように設定されている。凝縮した水は水配管P9−2を介して水タンク27へ送出される。
 
【0137】
  凝縮水が分離された第1燃料極オフガスは、再生燃料ガスとして第1燃料極オフガス管P7Bへ送出され、第3熱交換器34で水が分離される前の第1燃料極オフガスとの熱交換により加熱され、第2燃料極14Aへ供給される。第2燃料電池セルスタック14では、第1実施形態の燃料電池発電システム10Aと同様に発電が行われる。
 
【0138】
  本実施形態では、第1燃料極オフガスから水蒸気の一部を分離して生成された再生燃料ガスを第2燃料極14Aへ供給するので、第2燃料電池セルスタック14における発電効率を向上させることができる。
 
【0139】
  また、本実施形態においても、酸素透過膜付燃焼器20の燃焼部22において、第2燃料極オフガスに含まれている可燃ガスと酸素との燃焼反応により二酸化炭素及び水蒸気が生成される。したがって、第2燃料極オフガスから可燃ガスを減じて、高濃度の二酸化炭素を回収し、効率的に粉末炭素を得ることができる。
 
【0140】
[第6実施形態]
  次に、本発明の第6実施形態について説明する。本実施形態では、第1〜第5実施形態と同様の部分については同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
 
【0141】
  図9に示すように、本実施形態の燃料電池発電システム10Fでは、第1燃料電池セルスタック62及び第2燃料電池セルスタック64は、第1実施形態の水素イオン伝導型固体酸化物形燃料電池に代えて固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)を用いている。したがって、第1燃料極62A(燃料極)、及び第1空気極62B(空気極)では、以下のように反応が生じる。なお、第2燃料極64A、及び第2空気極64Bでも同様である。
 
【0142】
  第1空気極62Bでは、下記(5)式に示すように、酸化剤ガス中の酸素と電子とが反応して酸素イオンが生成される。生成された酸素イオンは電解質層62Cを通って第1燃料電池セルスタック62の第1燃料極62Aに到達する。
 
【0143】
  (空気極反応)
  1/2O
2+2e
− →O
2−  …(5)
 
【0144】
  一方、第1燃料電池セルスタック62の第1燃料極62Aでは、下記(6)式及び(7)式に示すように、電解質層62Cを通ってきた酸素イオンが燃料ガス中の水素及び一酸化炭素と反応し、水蒸気及び二酸化炭素と電子が生成される。第1燃料極62Aで生成された電子が第1燃料極62Aから外部回路を通って第1空気極62Bに移動することで、発電される。
 
【0145】
  (燃料極反応)
  H
2 +O
2− →H
2O+2e
−  …(6)
  CO+O
2− →CO
2+2e
−  …(7)
 
【0146】
  固体酸化物形燃料電池では、第1燃料極62A、第2燃料極64Aで水蒸気が生成されることから、水素イオン伝導型固体酸化物形燃料電池と比較して、第1燃料極オフガス、第2燃料極オフガスに含まれる水蒸気量が多い。一方、第1空気極62B、第2空気極64Bでは、水蒸気が生成されない。排熱投入型吸収式冷凍機36へ供給された空気極オフガスは、熱交換後に排気管P36−1から排気される。
 
【0147】
  本実施形態の燃料電池発電システム10Fでは、その他の構成については、第5実施形態と同様であり、第1燃料極オフガス管P7の経路に、第3熱交換器34及び凝縮器35が設けられている。ここで、第1燃料極オフガス、第2燃料極オフガスに含まれる水蒸気量は、燃料電池発電システム10Eと比較して多いため、凝縮器35での凝縮により除去する水蒸気量が多くなるように、冷却水循環流路35Aを循環する冷却水の温度が設定されている。凝縮した水は水配管P9−2を介して水タンク27へ送出される。
 
【0148】
  本実施形態では、第1燃料極オフガスから水蒸気の一部を分離して生成された再生燃料ガスを第2燃料極14Aへ供給するので、第2燃料電池セルスタック14における発電効率を向上させることができる。
 
【0149】
  また、本実施形態においても、酸素透過膜付燃焼器20の燃焼部22において、第2燃料極オフガスに含まれている可燃ガスと酸素との燃焼反応により二酸化炭素及び水蒸気が生成される。したがって、第2燃料極オフガスから可燃ガスを減じて、高濃度の二酸化炭素を回収し、効率的に粉末炭素を得ることができる。
 
【0150】
[第7実施形態]
  次に、本発明の第7実施形態について説明する。本実施形態では、第1〜第6実施形態と同様の部分については同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
 
【0151】
  図10に示すように、本実施形態の燃料電池発電システム10Gでは、第6実施形態の酸素透過膜付燃焼器20に代えて、第2実施形態と同様の高温酸素製造装置50、及び、燃焼器52を備えている。高温酸素製造装置50、燃焼器52、及び、これらに関連する配管以外の構成については、第6実施形態と同様である。
 
【0152】
  本実施形態においても、第1燃料極オフガスから水蒸気の一部を分離して生成された再生燃料ガスを第2燃料極14Aへ供給するので、第2燃料電池セルスタック14における発電効率を向上させることができる。
 
【0153】
  また、本実施形態においても、燃焼器52において、第2燃料極オフガスに含まれている可燃ガスと酸素との燃焼反応により二酸化炭素及び水蒸気が生成される。したがって、第2燃料極オフガスから可燃ガスを減じて、高濃度の二酸化炭素を回収し、効率的に粉末炭素を得ることができる。
 
【0154】
[第8実施形態]
  次に、本発明の第8実施形態について説明する。本実施形態では、第1〜第7実施形態と同様の部分については同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
 
【0155】
  図11に示すように、本実施形態の燃料電池発電システム10Hでは、第3実施形態と同様に、改質器54を備えている点、循環ガス管P3を備えていない点、及び、これらの構成に関連する配管流路が、第6実施形態と異なっている。その他の構成は第6実施形態と同様である。
 
【0156】
  本実施形態においても、第1燃料極オフガスから水蒸気の一部を分離して生成された再生燃料ガスを第2燃料極14Aへ供給するので、第2燃料電池セルスタック14における発電効率を向上させることができる。
 
【0157】
  また、本実施形態においても、燃焼部22において、第2燃料極オフガスに含まれている可燃ガスと酸素との燃焼反応により二酸化炭素及び水蒸気が生成される。したがって、第2燃料極オフガスから可燃ガスを減じて、高濃度の二酸化炭素を回収し、効率的に粉末炭素を得ることができる。
 
【0158】
[第9実施形態]
  次に、本発明の第9実施形態について説明する。本実施形態では、第1〜第8実施形態と同様の部分については同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
 
【0159】
  図11に示すように、本実施形態の燃料電池発電システム10Iでは、第8実施形態の酸素透過膜付燃焼器20に代えて、第7実施形態の高温酸素製造装置50、及び、燃焼器52を備えている。高温酸素製造装置50、及び、燃焼器52以外の構成については、第8実施形態と同様である。
 
【0160】
  本実施形態においても、第1燃料極オフガスから水蒸気の一部を分離して生成された再生燃料ガスを第2燃料極14Aへ供給するので、第2燃料電池セルスタック14における発電効率を向上させることができる。
 
【0161】
  また、本実施形態においても、燃焼器52において、第2燃料極オフガスに含まれている可燃ガスと酸素との燃焼反応により二酸化炭素及び水蒸気が生成される。したがって、第2燃料極オフガスから可燃ガスを減じて、高濃度の二酸化炭素を回収し、効率的に粉末炭素を得ることができる。
 
【0162】
[その他の実施形態]
  以上、本発明の炭素回収型燃料電池発電システムの一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
 
【0163】
  本発明の燃料電池としては、他の燃料電池、例えば溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)、リン酸形燃料電池(PAFC)、固体高分子形燃料電池(PEFC)を用いることもできる。
 
【0164】
  なお、前述の第1〜第9実施形態では、排熱投入型吸収式冷凍機36を用いて冷熱を生成したが、排熱投入型吸収式冷凍機36に代えて他の排熱を利用するヒートポンプ、例えば、吸着式冷凍機を用いて冷熱を生成してもよい。
 
【0165】
  さらに、排熱投入型吸収式冷凍機36に代えて、排熱を利用せず、電力を利用することによって冷熱を生成する電動ターボ冷凍機60を用いる燃料電池発電システム10Jとしてもよい。
図13では、一例として、第1実施形態の燃料電池発電システム10Aについて、排熱投入型吸収式冷凍機36を電動ターボ冷凍機60に置き換えた構成が示されている。第2〜第9実施形態でも同様に置き換えることができる。燃料電池発電システム10Jでは、空気極オフガスは、第2熱交換器32での熱交換後にシステム外へ排気される。電動ターボ冷凍機60は、燃料電池発電システム10Jで発電された電力により駆動することができる。電動ターボ冷凍機60は、一般的に冷却効率が高いため、発電した電力を用いても、高効率で燃料電池発電システム10Jを運転することができる。なお、この場合にも、発電した電力を交流に変換することなく効率よく利用するために、電動ターボ冷凍機60を直流電流にて駆動させることが好ましい。