(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御装置は、前記速度指令値に基づいて前記制御弁を制御することにより、前記操作量に対する前記作業アタッチメントの移動速度の比で定義される速度ゲインを補正する請求項1に記載の建設機械。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に、実施例による建設機械の側面図を示す。下部走行体10に、旋回機構11を介して上部旋回体12が旋回可能に搭載されている。上部旋回体12にブーム13、アーム15、及びバケット17等の作業部品が連結されている。作業部品は、ブームシリンダ14、アームシリンダ16、及びバケットシリンダ18等の油圧シリンダにより油圧駆動される。ブーム13、アーム15、及びバケット17により、掘削用のアタッチメントが構成される。なお、掘削用のアタッチメントの他に、破砕用のアタッチメント、リフティングマグネット用のアタッチメント等を連結することも可能である。
【0011】
図2に、実施例による建設機械の油圧制御系の概略図を示す。油圧回路が、ブームシリンダ14、アームシリンダ16、及びバケットシリンダ18に作動油を供給する。さらに、この油圧回路は、油圧モータ19、20、及び21にも作動油を供給する。油圧モータ19、20は、それぞれ下部走行体10(
図1)の2本のクローラを駆動する。油圧モータ21は、上部旋回体12(
図1)を旋回させる。
【0012】
油圧回路は、油圧ポンプ26及び制御弁25を含む。動力発生装置35によって油圧ポンプ26が駆動される。動力発生装置35には、例えばディーゼルエンジン等の内燃機関が用いられる。油圧ポンプ26は、制御弁25に高圧の作動油を供給する。制御弁25には、方向切換弁251、流量調整弁252、回生弁253等が含まれる。方向切換弁251は、油圧シリンダ及び油圧モータに供給する作動油の流れの方向を切り替える。流量調整弁252は、油圧シリンダ及び油圧モータに供給する作動油の流量を調整する。方向切換弁251及び流量調整弁252は、油圧シリンダごと、及び油圧モータごとに準備される。回生弁253は、ブーム13またはアーム15の下降時にブームシリンダ14またはアームシリンダ16からタンクに戻る戻り油を、それぞれアームシリンダ16またはブームシリンダ14に流入させる。これにより、アームシリンダ16またはブームシリンダ14への作動油の流量がブーストされる。
【0013】
ブームシリンダ14のボトム室及びロッド室が、それぞれ油圧ライン141及び油圧ライン142を介して、制御弁25に接続されている。アームシリンダ16のボトム室及びロッド室が、それぞれ油圧ライン161及び油圧ライン162を介して、制御弁25に接続されている。バケットシリンダ18のボトム室及びロッド室が、それぞれ油圧ライン181及び油圧ライン182を介して、制御弁25に接続されている。
【0014】
圧力センサ271、272が、それぞれブームシリンダ14のボトム室及びロッド室に供給される作動油、またはボトム室及びロッド室から排出される作動油の圧力を測定する。圧力センサ273、274が、それぞれアームシリンダ16のボトム室及びロッド室に供給される作動油、またはボトム室及びロッド室から排出される作動油の圧力を測定する。圧力センサ275、276が、それぞれバケットシリンダ18のボトム室及びロッド室に供給される作動油、またはボトム室及びロッド室から排出される作動油の圧力を測定する。圧力センサ271〜276の測定結果が、制御装置30に入力される。
【0015】
操作装置31が、操縦者によって操作される操作レバー311を含む。操作装置31は、操作レバー311の操作量OAに応じたパイロット圧または電気信号を発生する。操作量OAに応じたパイロット圧または電気信号が制御装置30に入力される。
【0016】
制御装置30は、操作装置31から入力される操作量OAに基づいて、ブームシリンダ14、アームシリンダ16、及びバケットシリンダ18からなる油圧シリンダを駆動するための指令値CVを生成する。さらに、制御装置30は、操作量OAに基づいて、油圧モータ19〜21を駆動するための指令値CVを生成する。指令値CVに応じたパイロット圧または電気信号が制御弁25に与えられる。一部の制御弁25にパイロット圧が与えられ、他の制御弁25に電気信号が与えられる構成としてもよい。例えば、方向切換弁251に油圧式の弁を用い、流量調整弁252に電磁式の弁を用いてもよい。指令値CVに基づいて制御弁25が制御されることにより、油圧シリンダ、及び油圧モータ19〜21が動作する。
【0017】
制御装置30は、さらに、動力発生装置35の回転数、油圧ポンプ26の斜板傾斜角を制御する。これにより、油圧ポンプ26からの作動油の吐出量が制御される。
【0018】
図3を参照して、作業部品の姿勢を定義する座標系について説明する。上部旋回体12(
図1)にブーム13が連結されている。ブーム13の先端にアーム15が連結され、アーム15の先端にバケット17が連結されている。建設機械を水平面上に配置したとき、ブーム13の上部旋回体12への連結点を原点とし、水平方向の前方をx軸の正の向きとし、鉛直上方をz軸の正の向きとするxz直交座標系を定義する。
【0019】
原点から、ブーム13とアーム15との連結点に向かうブームベクトル130と、z軸の正の向きとのなす角度をθ1で表す。ブーム13とアーム15との連結点から、アーム15とバケット17との連結点に向かうアームベクトル150と、ブームベクトル130とのなす角度をθ2で表す。アーム15とバケット17との連結点から、バケット17の先端である作用点APに向かうバケットベクトル170と、アームベクトル150とのなす角度をθ3で表す。ブーム13とアーム15との連結点から、作用点APに向かう作用点ベクトル151と、ブームベクトル130とのなす角度をθ4で表す。
【0020】
角度センサ291が角度θ1を測定し、角度センサ292が角度θ2を測定し、角度センサ293が角度θ3を測定する。角度θ4は、角度θ2、角度θ3、アームベクトル150の長さ、及びバケットベクトル170の長さから、角度θ4を算出することができる。アーム15とバケット17との相対位置関係が固定された状態、すなわち角度θ3が一定の状態で作業を行う場合、角度θ2の測定値から角度θ4を算出することができる。角度センサ291、292、293で測定された角度θ1、θ2、θ3から、作業部品の姿勢が特定される。角度センサ291、292、293をまとめて、姿勢センサ29ということとする。
【0021】
作用点APの位置(x,z)は、角度θ1、角度θ4、ブームベクトル130の長さ、及び作用点ベクトル151の長さにより一意に決定される。言い換えると、角度θ1及びθ4は、作用点APの位置(x,z)から求められる。従って、角度θ1及び角度θ4は、関数A及び関数Bを用いて以下の式で表すことができる。
【数1】
【0022】
角度θ3が一定である場合、アーム15の角速度は、作用点ベクトル151の角速度に等しい。このため、ブームの角速度Wb及びアームの角速度Waは、以下の式で表される。
【数2】
【0023】
図4A〜
図4Cを参照して、比較例による建設機械によって、作用点AP(
図3)を水平面に沿って手前に移動させる動作(水平引き動作)を行う例について説明する。水平引き動作中、角度θ3(
図3)は一定であり、角度θ1及び角度θ2(
図3)が変化すると仮定する。すなわち、ブームシリンダ14及びアームシリンダ16(
図2)が動作し、バケットシリンダ18(
図2)は動作しない。
【0024】
図4Aは、一般的な熟練度の操縦者が操縦した場合の作用点APの軌跡の一例を示す。作用点APの実際の軌跡Lを実線で示す。操縦者は、z=0の直線に沿って作用点APが移動するように操作したにも関わらず、作用点APがブーム13の基部に近い領域において、作用点APの軌跡Lが目標とする軌跡から大きく外れていることがわかる。
【0025】
図4Bは、角度θ1の時間変化を示す。横軸は操作開始からの経過時間を表し、縦軸はブーム13の角度θ1を表す。実際の角度θ1の変化A1を太い実線で示す。参考のために、z=0の直線に沿って作用点APを移動させるための理想的なブーム13の角度θ1の変化A2を細い実線で示す。経過時間がt1を超えたときに、角度θ1を、変化A2で示すように急激に小さくしなければならないにも関わらず、実際の操作による角度θ1の減少は変化A1のように緩やかである。
【0026】
図4Cに、機械的速度ゲインの時間変化を示す。横軸は操作開始からの経過時間を表し、縦軸は機械的速度ゲインを表す。機械的速度ゲインとは、ブーム及びアームの角速度に対する作用点APの速度の比を意味する。機械的速度ゲインには、作用点APの上下方向の速度に関するものと、前後方向の速度に関するものとが含まれる。
図4Cでは、ブームの角速度に対する作用点APのz方向(上下方向)の速度の比が、機械的速度ゲインとして示されている。
【0027】
経過時間がt2よりも前の時間帯では、機械的速度ゲインはほぼ一定である。ところが、経過時間がt2よりも後の時間帯では、経過時間の増加に伴って機械的速度ゲインが徐々に低下している。これは、操縦者による操作装置の操作量に対して、作用点APのz方向への動きが緩慢になることを意味する。このため、
図4Aに示したように、ブーム13の基部の近傍において、作用点APが目標の軌跡から逸脱しても、操縦者は、目標とする軌跡に迅速に戻せなかったと考えられる。
【0028】
目標とする軌跡に沿って作用点APを移動させるためには、
図4Bに示したように、経過時間がt1を超えたときに、ブームの角度θ1を急激に小さくしなければならない。ところが、
図4Bに示した例では、角度θ1の減少が、理想的な変化に比べて緩やかである。これは、作用点APの動きが緩慢になったことに操縦者が気付かず、操作レバーの操作量を緩やかに変化させたことを意味する。
【0029】
図5Aに、ブームに関する機械的速度ゲインの前後方向位置依存性を示す。横軸は前後方向の位置(x座標)を表し、縦軸は、ブームの角速度Wbに対する作用点APのz方向の速度Vzの比を表す。x座標が小さくなるに従って、すなわち、作用点APがブーム13の基部に近づくに従って、ブームに関する機械的速度ゲインが低下していることがわかる。ブームに関する機械的速度ゲインの上下方向位置(z座標)依存性は、前後方向位置依存性よりも小さい。
【0030】
図6に、実施例による建設機械の作業部品を駆動する機能のブロック図を示す。
図6を参照して、バケット17の角度θ3(
図3)は一定値に保持され、ブーム13の角度θ1(
図3)及びアーム15の角度θ2(
図3)を変化させる作業を行う例について説明する。
【0031】
操作装置31から、ブームシリンダ14、アームシリンダ16、及びバケットシリンダ18(
図2)ごとの操作量OAが、制御装置30に入力される。姿勢センサ29が、ブーム13、アーム15、及びバケット17からなる作業部品23の姿勢を検出し、検出結果が制御装置30に入力される。姿勢センサ29は、角度センサ291、292、293(
図3)を含み、作業部品23の姿勢の検出結果は、角度θ1、θ2、及びθ3を含む。角度θ1、θ2、及びθ3に基づいて、作用点APのx座標及びz座標を算出することができる。
【0032】
駆動装置33が、制御装置30から制御されることにより、作業部品23を駆動する。駆動装置33は、動力発生装置35(
図2)、油圧回路34、ブームシリンダ14、アームシリンダ16、及びバケットシリンダ18を含む。油圧回路34は、油圧ポンプ26、制御弁25(
図2)等を含む。
【0033】
制御装置30からのブーム用の制御信号SCb及びアーム用の制御信号SCaに応じて、油圧回路34が動作する。これにより、制御信号SCbで指令された流量の作動油がブームシリンダ14に供給され、制御信号SCaで指令された流量の作動油が、アームシリンダ16に供給される。本実施例では、バケットシリンダ18は駆動されないため、バケットシリンダ18の制御については、説明を省略する。
【0034】
作用点AP(
図3)がブーム13の基部に近いほど、操作装置31の操作量OAに対するブーム13の角速度Wbの比が高くなるように、制御装置30が駆動装置33を制御する。これにより、
図5に示した作用点APの位置による機械的速度ゲインの変化を補償することができる。操作量OAに対する作用点APの速度の比を、「入出力速度ゲイン」ということとする。入出力速度ゲインにも、機械的速度ゲインと同様に、作用点APの上下方向の速度に関するものと、前後方向に関するものとが含まれる。制御装置30は、入出力速度ゲインが作用点APの位置によらず均一になるように、操作装置31の操作量OAに対するブーム13の角速度の比を、作用点APの位置に応じて変化させる。
【0035】
上下方向に関する入出力速度ゲインが均一になると、操作量OAの大きさと、作用点APの上下方向の移動速度との関係が、作用点APの位置に依存しなくなる。このため、作用点APがブーム13の基部に近づいても、作用点APを目標とする軌跡に沿って移動させることが容易になる。
【0036】
図5Aでは、機械的速度ゲインとして、ブーム13の角速度Wbに対する作用点APのz方向の速度Vzの比(ブームに関する上下方向の機械的速度ゲイン)を示したが、アーム15の角速度Waに対する作用点APの速度の比(アームに関する機械的速度ゲイン)も、作用点APの位置に依存して変化する。
【0037】
図5Bに、アームに関する機械的速度ゲインの上下方向位置依存性を示す。横軸は上下方向位置(z座標)を表し、縦軸は、アームに関する前後方向の機械的速度ゲインを表す。z座標が小さくなるに従って、すなわち、作用点APの位置が低くなるに従って、アームに関する前後方向の機械的速度ゲインが低下していることがわかる。従って、作用点APの位置が低いほど、アーム15の操作量OAに対するアーム15の角速度Waの比が高くなるように、駆動装置33を制御することが好ましい。この制御を行うことにより、前後方向に関する入出力速度ゲインを、作用点APの高さによらず均一に近づけることができる。アームに関する前後方向の機械的速度ゲインの前後方向位置(x座標)依存性は、上下方向位置(z座標)依存性よりも小さい。
【0038】
作用点APを前後方向に移動させる場合には、上下方向に関する入出力速度ゲインを補正して均一に近づけ、作用点APを上下方向に移動させる場合には、前後方向に関する入出力速度ゲインを補正して均一に近づけることが好ましい。これにより、目標とする軌跡からの作用点APのずれを迅速に修正することができる。
【0039】
上下方向に関する入出力速度ゲインを補正するのか、前後方向に関する入出力速度ゲインを補正するのかの選択は、操作装置31に設けた選択スイッチで行うことができる。その他に、制御装置30に、作用点APの移動方向を検知する機能を持たせてもよい。この場合には、作用点APの移動方向の検知結果に基づいて、制御装置30が、上下方向に関する入出力速度ゲインを補正するのか、前後方向に関する入出力速度ゲインを補正するのかを自動的に選択する。
【0040】
次に、制御装置30で実行される処理について、より詳細に説明する。制御装置30は、
図6に示すように操作量検出部301、位置検出部302、速度要求値補正部303、補正係数決定部304、及び駆動部305を含む。各部の機能は、例えば、中央処理ユニット(CPU)がコンピュータプログラムを実行することにより、実現される。さらに、制御装置30の記憶装置に、位置−補正係数対応表306が格納されている。位置−補正係数対応表306には、作用点APの位置と、補正係数との対応関係が定義されている。位置−補正係数対応表306によって、作用点APの現在位置から、補正係数を求めることができる。位置−補正係数対応表306の代わりに、作用点APの位置から補正係数を求める関数を定義してもよい。
【0041】
操作量検出部301は、操作装置31から入力される操作量OAに基づいて、ブーム角速度要求値WRb及びアーム角速度要求値WRaを生成する。一例として、ブーム角速度要求値WRb及びアーム角速度要求値WRaは、それぞれブーム13に対する操作量OA及びアーム15に対する操作量OAに比例する。
【0042】
位置検出部302は、姿勢センサ29で検出された角度θ1、θ2、θ3から、作用点APのx座標及びz座標を算出する。作用点APのx座標及びz座標が、補正係数決定部304に入力される。
【0043】
補正係数決定部304は、作用点APの位置に基づいて、位置−補正係数対応表306を参照し、ブーム用の補正係数CFb及びアーム用の補正係数CFaを生成する。生成された補正係数CFb及びCFaが、速度要求値補正部303に入力される。
【0044】
速度要求値補正部303は、ブーム角速度要求値WRb及びアーム角速度要求値WRaを、補正係数CFb、CFaに基づいて補正演算を行うことにより、ブーム角速度指令値WCb及びアーム角速度指令値WCaを生成する。具体的には、以下の計算式により、ブーム角速度指令値WCb及びアーム角速度指令値WCaが求まる。
【数3】
【0045】
駆動部305は、ブーム角速度指令値WCb及びアーム角速度指令値WCaに基づいて、それぞれブーム用の制御信号SCb及びアーム用の制御信号SCaを駆動装置33に送信する。駆動装置33の方向切換弁251及び流量調整弁252が、制御信号SCb、SCaに基づいて動作することにより、ブーム角速度指令値WCb及びアーム角速度指令値WCaに応じた流量の作動油が、ブームシリンダ14及びアームシリンダ16に供給される。その結果、ブーム13の角速度Wb及びアーム15の角速度Wcが、それぞれブーム角速度指令値WCb及びアーム角速度指令値WCaにほぼ一致する。
【0046】
次に、作用点APの位置と、補正係数CFb、CFaとの関係について説明する。
図4Aに示したように、水平引き動作において、作用点APのz方向へのずれを補正する必要があるため、作用点APのz方向の速度に着目する。式(2)において、拘束条件として、x方向の速度をゼロとおく。式(2)のdx/dt=dz/dt=0とすると、以下の式が得られる。
【数4】
【0047】
ブーム13の角速度Wb及びアーム15の角速度Waに関する機械的速度ゲインMGb及びMGaは、式(4)に基づいて、以下の式で表される。
【数5】
【0048】
補正係数CFb、CFaは、以下の式を満たすように決定される。
【数6】
ここで、Cb及びCaは定数である。
【0049】
ブーム13の角速度Wb及びアーム15の角速度Waが、それぞれブーム角速度指令値WCb及びアーム角速度指令値WCaに一致するようにブームシリンダ14及びアームシリンダ16が動作するため、Wb=WCb、Wa=WCaが満足されると仮定することができる。この条件の下で、作用点APのz方向の速度は、式(5)、(3)、(6)に基づいて、以下の式で表される。
【数7】
【0050】
式(7)から分かるように、作用点APのz方向の速度Vzは、ブーム角速度要求値WRb及びアーム角速度要求値WRaに比例する。補正係数CFb、CFaは、式(5)及び式(6)に基づいて決定することができる。式(5)の右辺の関数gb(x,z)及びga(x,z)が作用点APの位置(x,z)の関数であるため、補正係数CFb、CFaは、作用点APの位置に依存する。
【0051】
ブーム角速度要求値WRb及びアーム角速度要求値WRaは、それぞれブーム13の操作量OAb及びアーム15の操作量OAaに応じて生成され、操作量OAb及びOAaに比例する。従って、ブーム角速度要求値WRb及びアーム角速度要求値WRaは、以下の式で表すことができる。
【数8】
【0052】
ここで、C1a、C1bは、比例定数である。式(7)及び式(8)から、作用点APの速度は、以下の式で表される。
【数9】
【0053】
式(9)の定数Cb×C1b、及び定数Ca×C1aが、入出力速度ゲインに相当する。すなわち、入出力速度ゲインは一定値である。このように、操作量OAに対する作用点APの移動速度の比で定義される入出力速度ゲインを、作用点APの位置に依存する補正係数CFb、CFaを用いて補正することにより、入出力速度ゲインを一定値に近づけることができる。
【0054】
上記実施例では、入出力速度ゲインとして、操作量OAに対する作用点APのz方向(上下方向)の速度の比を用いた。この入出力速度ゲインを一定値に近づけることにより、水平引き動作において、作用点APの目標とする軌跡からのずれを小さくすることができる。水平方向以外の軌跡に沿って作用点APを移動させる場合には、入出力速度ゲインの基礎となる作用点APの速度の方向として、z方向以外の方向を採用してもよい。例えば、作用点APを上下方向に移動させる場合には、入出力速度ゲインとして、操作量OAに対する作用点APのx方向(前後方向)の速度の比を用いることが好ましい。
【0055】
上記実施例では、バケット17に関する角度θ3(
図3)を一定に保った条件の下で、作用点APを移動させたが、動作中に角度θ3を変化させる場合もある。作用点APを水平方向または上下方向に移動させる際に、バケットシリンダ18(
図1)を動作させて角度θ3を変化させてもよい。
【0056】
バケットシリンダ18を動作させる場合、入出力速度ゲインには、ブームの操作量に対する作用点APの移動速度の比で定義される第1の入出力速度ゲインと、アームの操作量に対する作用点APの移動速度の比で定義される第2の入出力速度ゲインと、バケットの操作量に対する作用点APの移動速度の比で定義される第3の入出力速度ゲインとが含まれる。制御装置30は、指令値CVに基づいて、第1の入出力速度ゲイン、第2の入出力速度ゲイン、及び第3の入出力速度ゲインの少なくとも1つを、作用点APの位置に基づいて補正する。一例として、作用点APの位置によって最も大きく変動する入出力速度ゲイン(補正前)を補正対象とすることが好ましい。これにより、補正対象の入出力速度ゲインを、作用点APの位置によらず均一に近づけることができる。
【0057】
次に、
図7を参照して、他の実施例による建設機械の作業部品の制御方法について説明する。以下、
図1〜
図6に示した実施例との相違点について説明し、共通の構成については説明を省略する。
【0058】
図7に、建設機械の作業部品を駆動する機能のブロック図を示す。
図7に示した実施例による制御装置30は、速度要求値補正部303(
図6)に代えて、吐出量補正部307を有する。操作量検出部301で生成されたブーム角速度要求値WRb及びアーム角速度要求値WRaが、駆動部305に直接入力される。駆動部305は、ブーム角速度要求値WRb及びアーム角速度要求値WRaに基づいて、ブーム用の制御信号SCb及びアーム用の制御信号SCaを出力する。
【0059】
吐出量補正部307は、作用点APの位置に依存する補正係数CFb、CFaに基づいて、吐出量指令値DQCを生成する。駆動部305は、吐出量指令値DQCに基づいて、油圧ポンプ26(
図2)からの作動油の吐出量が吐出量指令値DQCに一致するように、動力発生装置35の回転数を制御する。
【0060】
図7に示した実施例では、油圧ポンプ26からの作動油の吐出量を制御することにより、ブーム13の角速度Wb及びアーム15の角速度Waを調整する。油圧ポンプ26からの作動油の吐出量は、実際の角速度Wb及びWaが、それぞれ
図6に示した実施例のブーム角速度指令値WCb及びアーム角速度指令値WCaに等しくなるように制御される。これにより、
図6に示した実施例と同様に、入出力速度ゲインを作用点APの位置に依存することなく一定値に近づけることができる。
【0061】
一例として、機械的速度ゲインが相対的に小さな領域に作用点APが位置する状態で、吐出量を相対的に多くすることにより、入出力速度ゲインを高めることができる。その結果、入出力速度ゲインを一定値に近づけることが可能になる。
【0062】
図7に示した実施例では、動力発生装置35の回転数を制御することにより、作動油の吐出量を調整したが、油圧ポンプ26(
図2)の斜板の傾斜角を変化させることによって、吐出量を調整してもよい。
【0063】
次に、
図8を参照して、さらに他の実施例による建設機械の作業部品の制御方法について説明する。以下、
図7に示した実施例との相違点について説明し、共通の構成については説明を省略する。
【0064】
図8に、建設機械の作業部品を駆動する機能のブロック図を示す。
図8に示した実施例による制御装置30は、吐出量補正部307(
図7)に代えて、回生流量補正部308を有する。
【0065】
回生流量補正部308は、作用点APの位置に依存する補正係数CFb、CFaに基づいて、回生流量指令値RFCを生成する。駆動部305は、回生流量指令値RFCに基づいて、回生弁253(
図2)を制御する。例えば、アーム15が下降する時に、アームシリンダ16からタンクに戻る戻り油をブームシリンダ14へ流入させることにより、ブームシリンダ14をブーストすることができる。これにより、ブーム13の角速度に対する作用点APの速度の比で定義される機械的速度ゲインの低下を補うことができる。
【0066】
逆に、アーム15の角速度に対する作用点APの速度の比で定義される機械的速度ゲインの低下を補う必要がある場合には、ブーム13が下降する時に、ブームシリンダ14からタンクに戻る戻り油をアームシリンダ16へ流入させることにより、アームシリンダ16をブーストすればよい。このように、回生弁253を制御して、回生ラインを流れる作動油の方向及び流量を調整することにより、入出力速度ゲインを一定値に近づけることができる。
【0067】
次に、
図9を参照して、さらに他の実施例による建設機械の作業部品の制御方法について説明する。以下、
図8に示した実施例との相違点について説明し、共通の構成については説明を省略する。
【0068】
図9に、建設機械の作業部品を駆動する機能のブロック図を示す。
図9に示した実施例では、制御装置30が負荷判定部309を有する。圧力センサ271〜276(
図2)の検出結果が負荷判定部309に入力される。
【0069】
負荷判定部309は、圧力センサ271〜276で検出されたブームシリンダ14、アームシリンダ16、及びバケットシリンダ18の圧力に基づいて、作用点APに加わる負荷を算出する。さらに、作用点APに加わる負荷に基づいて、現在の作業が無負荷作業か負荷作業かを判定する。例えば、作用点APに加わる負荷(または反力)が判定基準値未満の場合、現在の作業は無負荷作業であると判定され、判定基準値以上の場合、現在の作業は負荷作業であると判定される。
【0070】
現在の作業が無負荷作業である場合には、回生流量補正部308で生成された回生流量指令値RFCが駆動部305に入力される。現在の作業が負荷作業である場合には、回生流量補正部308で生成された回生流量指令値RFCが駆動部305に入力されない。すなわち、現在の作業が無負荷作業である場合には、入出力速度ゲインを補正する機能が有効にされ、現在の作業が負荷作業である場合には、入出力速度ゲインを補正する機能が無効にされる。
【0071】
図8に示した実施例では、アームシリンダ16及びブームシリンダ14の一方からタンクに戻る戻り油を、回生ラインを通して他方に流入させる。これにより、入出力速度ゲインを作用点APの位置によらず一定値に近づけることができるが、掘削力が低下してしまう場合がある。
【0072】
図9に示した実施例では、掘削等の負荷作業中のときに、入出力速度ゲインを補正する機能が無効にされるため、掘削力の低下を防止することができる。水平引き動作等の無負荷作業を行っているときには、入出力速度ゲインを補正する機能が有効にされるため、作用点APの軌跡と、目標とする軌跡との差を小さくすることができる。
【0073】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。