(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アナログデータに対してテント写像関数による演算を行って得られる演算結果を、所定閾値と比較して所定ビットを得る処理ステップを繰り返し実行して得られるビット数のグレイコードについて、上記繰り返しの各処理ステップと逆の処理を行ってアナログデータを得るD/A変換部と、
前記D/A変換部により得られたアナログデータを一時記憶するアナログメモリ部と、
前記アナログメモリ部からアナログデータを取り出し前記処理ステップを繰り返し実行してディジタルデータを得るA/D変換部と
を具備することを特徴とする一時記憶バッファ装置。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下添付図面を参照して本発明に係る一時記憶バッファ装置の実施形態を説明する。各図において同一の構成要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
図3に、一時記憶バッファ装置に係る実施形態の構成図を示す。この一時記憶バッファ装置は、D/A変換部100とアナログメモリ部200とA/D変換部300とを備える。
【0028】
D/A変換部100は、アナログデータに対してテント写像関数による演算を行って得られる演算結果を、所定閾値と比較して所定ビットを得る処理ステップを繰り返し実行して得られるビット数のグレイコードについて、上記繰り返しの各処理ステップと逆の処理を行ってアナログデータを得るものである。
【0029】
アナログメモリ部200は、上記D/A変換部により得られたアナログデータを一時記憶するものである。A/D変換部300は、上記アナログメモリ部200からアナログデータを取り出し上記処理ステップを繰り返し実行してディジタルデータを得るものである。
【0030】
本実施形態では、一例として、一次元の反復写像として知られるテント写像の演算をオペアンプにて行い、アナログ電圧値をディジタル値として変換するA/D(アナログ→ディジタル)変換部300を実現する。
【0031】
テント写像はカオス的性質を持つものとして、一般的に知られている。例えば、傾き2のテント写像において、ある初期値からテント写像演算を行い、写像が0.5以上の値を採ったときにビット”1”を取得し、0.5未満ではビット”0”を取得するものとする。このような取り決めの下で、取りうる初期値の範囲を均等に等分し、初期値を上記等分された各範囲内から始めてビット値を取得すると、各範囲に応じたグレイコードを出力することが知られている(例えば、「奥富秀俊、“テント写像から得られた疑似ランダムビット列に対する初期値推定法の性質について”、2012年1月30日発行、2012年暗号と情報セキュリティシンポジウム(SCIS2012)、予稿集CD−ROM[2F3−6]」)。
【0032】
本実施形態では、テント写像の初期値をサンプリングするアナログ電圧値とし、テント写像の演算をオペアンプによるアナログ演算で行い、コンパレータによるビット抽出を行ってグレイコードを取得する。更に、取得したグレイコードに対してバイナリ変換を行い、アナログ電圧値に相当するA/D変換値を得るように構成しても良い。
【0033】
本実施形態のテント写像によるA/D変換部300では、回路規模を大きくすることなく並列型(フラッシュ型)のような一括変換を実現でき、アナログ演算と同時にエンコードを行う構成となるため、エンコード回路は不要となる。また、本実施形態のテント写像によるA/D変換部300は、逐次比較型A/D変換回路のようにサンプリングした電圧値を保持しておく必要がなく、D/A変換回路も不要であるなどの様々な優位性を備えている。更に、本実施形態のA/D変換部300の回路規模はテント写像の反復演算を行う構成で主に決定され、より理想的な計算精度をもつアナログ演算回路を採用すれば、高い分解能を持つことができる。即ち、本実施形態によって小規模で高速なA/D変換部300を得ることができる。
【0034】
まず、実施形態に係るA/D変換の原理を説明する。
[I]テント写像について
テント写像は以下の式(1)で定義される。
【0036】
テント写像のリターンマップを
図4に示し、更に、式(1)のrを横軸とし、X
r+1を縦軸とした時系列を
図5に示す。
図4はテント写像の幾何学的イメージであり、X
rが0.5未満の場合、2X
r の演算を実行し、0.5以上の場合、2(1−X
r)の演算を実行し、値域となる区間[0,1]を反復して写像を行うことによって得られる。
図4は、初期値X
0=0.123とした場合であり、X
4=0.032までの例を載せている。
【0037】
本実施形態では、式(1)の演算を実行するアナログ演算回路を用い、A/D変換部300を構成する。A/D変換のディジタル値は
図5に示すように、0.5未満の場合にはビット”0”を、0.5以上の場合にはビット”1”を抽出する処理を継続する。
【0038】
[II]グレイコードの生成について
グレイコードは2進数において、前後に隣接する符合のハミング距離が常に1となる特徴をもつ、ディジタル回路用の数値符号として知られている。
グレイコードは以下の式(2)により変換する。ここで”b”は2進数ビット列になる。
【0040】
式(2)よる4ビットのグレイコードを
図6に示す。
【0041】
次に、テント写像によるグレイコードの生成について説明する。
テント写像において採り得る初期値の領域を均等に分割し、各領域内の値であれば、どれでもよく初期値を決め、テント写像演算を行い、写像が0.5以上の値を採ったときにビット”1”を取得し、0.5未満の値を採ったときにビット”0”を取得し、取得されたビット値を連続してビット列を取得すると、各範囲に対応するグレイコードが出力される。
【0042】
ここで例として、初期値 X
0 の領域を16分割し、各領域内より初期値X
0を選択し、上記のルールにてテント写像からビット列を4ビット分取り出す場合のテントマップイメージが、
図7になる。
図7に対応する、各初期値X
0の範囲の値を
図8に示す。
図8に示すように、各初期値X
0の範囲からテント写像の最上位ビットを連続して取った場合、式(2)によるグレイコードと同じコードが出力される。
【0043】
初期値X
0は、
図8で示した範囲内ならばどの値をとってもよく、各範囲に応じたグレイコードをテント写像の反復を行うことで出力できる。グレイコードをバイナリ変換することによって、元のバイナリのビット列を得ることができる。グレイコードをバイナリ変換する回路を
図9に示す。グレイコードとバイナリ変換のビット列の関係は
図6になる。
【0044】
ここで、テント写像の演算により得られたビット列がグレイコードと一致しているかを、式を追跡して確かめることにする。
グレイコードに変換する前の任意のnビット分のビット列
【0046】
を与える。iは各ビット桁とする。
グレイコードのビット列をG
iとすると式(2)より、グレイコードの各ビット桁は
【0048】
で表現される。
テント写像X
rのビット列を、写像の回数(ラウンド)をr、ビット桁をiとしてT
r,iとする。
テント写像から得られる写像毎の最上位ビット桁T
r,nの値は、以下のようにグレイコードと等価に
【0050】
となるはずであるが、写像毎の最上位ビット桁T
r,nと、グレイコードの各ビット桁G
iが等しくなっているかを確かめる。
【0051】
初期値X
0は、
図8に示した各範囲の中間の値から取得した場合を考えて(例えば “n=4”において、テント写像では
図7の第1番目の区間の場合、中間の値は“0.03125(0.00001)
2“となる)、初期値X
0とすると、任意の初期値X
0小数点以下のビット列は
【0052】
【数6】
となる。ここで
以外(
)は (3)と同じビット列である。
以下より、テント写像の1回ずつの演算結果X
rについて、各最上位ビットT
r,nについて検証する。
【0053】
初期値X0(r=0)
初期値X
0の最上位ビットは
【0055】
となり、グレイコードの最上位ビットG
nと一致する。
【0056】
1回の写像X1(r=1)
写像X
rが0.5以上の場合の計算結果を考慮すると、最上位ビットb
nが”1”の場合は1−X
rの操作を行う必要がある。その場合は1の補数(ビット反転)に1を加える操作を行う。
反転を考慮したビット列をα
1,iとすると、
【0058】
となる。
最後に、2X
r或いは2(1−X
r)の演算はβ
1,iを1ビット右シフトするため、1回目のテント写像を行ったXのビットの並びT
1,iは
【0060】
となり、式(5)が成り立ち、1回のテント写像の最上位ビットはグレイコードの最上位から2つ目のビットと等しくなることがわかる。
【0061】
2回の写像X2(r=2)
T
1,i(最上位ビット)が1の場合、反転を考慮したビット列をα
2,iとすると
【0064】
となり、ラウンドごとに下位ビットは左1ビットずつシフトしてゆく構造となる。
これらからテント写像より出力された最上位ビットの列は、グレイコード変換したビット列と同じであることが確かめられ、以下の関係にあることが導かれる。
【0066】
任意の値X
0(b
0,i)から、テント写像の最上位ビット“T
r,n”を順番に出力したものと、グレイコードによって変換された値は一致する。
【0067】
以上はディジタル演算で確かめたが、本実施形態では、ディジタルサンプリングするアナログ電圧値をテント写像の初期値X
0とし、アナログ演算回路によりテント写像の計算を行い、コンパレータでグレイコードを取り出して
図9に示す回路によりバイナリ変換を行うことで、ディジタル値を取得する。
【0068】
[III]テント写像の演算を行うアナログ演算回路
テント写像の演算は、オペアンプを使用したアナログ演算で行う。
写像X
rを電圧値として、0.5[V]未満の場合には、
図10に示したオペアンプ30による非反転増幅回路のアナログ演算にて、X
r+1=2X
rの演算を行い、X
rが0.5[V]以上の場合には
図11のオペアンプ31による反転増幅回路で、1−X
rの計算を実行した後、
図10の非反転増幅回路にてX
r+1=2(1−X
r)の演算を行う。ここで
図11のオペアンプ31による反転増幅回路は抵抗の比が1対1(増幅率は1)となっており、レファレンス電圧は0.5[V]のため、0.5[V]を境に折り返すようにして、1−X
rの演算を行う。注意点として、反転増幅回路は負帰還型であり、前の回路に電流が生じることで影響を及ぼすため、抵抗素子の抵抗値(Ω)を高抵抗にすることが望ましい。
【0069】
図12に、式(1)のテント写像の1回分の演算を行う回路図を示す。
図12に示すように、始めにX
rの電圧値が、0.5[V]未満か或いは0.5[V]以上かによってコンパレータ24がLowあるいはHighレベルを出力し、クロック信号がHigh状態となったとき、どちらも入力がHigh状態となるAND回路の出力がHighになり、アナログスイッチSW1かSW2が選択され、どちらかの導通を行う。この
図12の回路については、後に詳細に説明する。
【0070】
スイッチSW1が選択された場合、X
r+1=2X
rの演算が行われ、電圧レベルX
r+1を出力する。スイッチSW2が選択された場合は、1−X
rの演算を反転増幅回路(
図11)によって行い、その後、非反転増幅回路(
図10)にてX
r+1=2(1−X
r)の演算を行い、電圧レベルX
r+1を出力する。出力された電位レベルが、テント写像1回の演算結果となり、この演算結果の電位レベルを再び入力値として、テント写像の反復演算(
図12)を継続する。
【0071】
図13に本発明の第1の実施形態に係るA/D変換部300の構成図を示す。このA/D変換回路は、サンプルホールド手段11、演算手段12、変換手段13を備える。サンプルホールド手段11は、A/D変換の対象信号(アナログ信号)をサンプルホールドするものである。演算手段12は、サンプルホールドされた信号に対しテント写像のアナログ演算を行うと共に初期値及び演算結果をグレイコードのビット数に応じた閾値と比較する比較器を備えグレイコードを出力するものである。既に説明した通り、アナログ信号の初期値に対しテント写像のアナログ演算を行い、演算結果が採り得る値(上記例では、「1」)の1/2である「0.5」を閾値として比較器により比較を行うことでグレイコードが得られる。変換手段13は、演算手段により得られるグレイコードをバイナリコードに変換するものであり、適宜採用される。この第1の実施形態によって、アナログ信号を適切にディジタル信号に変換することができる。
【0072】
図14に、第2の実施形態に係るA/D変換部300の構成図を示す。この第2の実施形態は、一括型と称することができ、クロック信号のHighエッジをトリガとしてHighエッジを受けるたびに、一括でA/D変換(標本化・量子化・符号化)を行う回路構成となっている。このA/D変換部300は、4ビットの分解能を有するために、テント写像のアナログ演算を1回分行う1回分演算部であるテント写像演算回路1(1−1〜1−3)を3回路カスケード接続して構成される。1回分演算部であるテント写像演算回路1の数は、分解能に応じて変更される。最終段のテント写像演算回路1−3の出力は比較器CMPに与えられる。
【0073】
テント写像演算回路1−1〜1−3のグレイコード端子Gからの出力と比較器CMPの出力は、バイナリ変換回路3へ与えられて、バイナリ変換回路3ではグレイコードをバイナリコードへ変換する処理が行われる。バイナリ変換回路3の出力は出力バッファ4に保持されて、ここから出力される。バイナリ変換回路3と出力バッファ4は、必要に応じて採用されるもので、必須の構成でないことは前述の通りである。
【0074】
1回分演算部であるテント写像演算回路1は、
図12に示すように構成される。即ち、テント写像演算回路1は、制御部21、第1の演算回路であるアナログ演算回路22、第2の演算回路であるアナログ演算回路23、スイッチ群である(アナログ)スイッチSW1、SW2を備えている。スイッチ群であるスイッチSW1、SW2は、上記1回分演算部へ入力された信号を、上記第1の演算回路へ直接導くか、または、上記第2の演算回路であるアナログ演算回路23を介して上記第1の演算回路であるアナログ演算回路22へ導くか、経路を切り換えるスイッチ群である。
【0075】
制御部21は、上記1回分演算部へ入力された信号の大きさに基づき上記スイッチ群のオンオフを制御するものである。制御部21には、入力信号をグレイコード(1ビット)に変換するコンパレータ(比較器)24と、コンパレータ24の出力に基づきスイッチSW1、SW2を制御する制御信号を作成する論理回路25により構成される。ここでは、論理回路25は、インバータ25a、ANDゲート25b、25c、ORゲート25dにより構成されている。スイッチSW1、SW2の切り替えタイミングはコンパレータ24の出力がHighかLowに確定した後に行うため、入力クロック信号に遅延回路を設けることで切り替えの同期を取ることができる。
【0076】
本実施形態では、テント写像関数が一次式に定数を掛ける形式の関数であるため、アナログ演算回路22を、上記定数を掛ける演算を行う第1の演算回路として構成し、アナログ演算回路23を、上記一次式の演算を行う第2の演算回路として構成している。
【0077】
アナログ演算回路(第1の演算回路)22は、
図10に示したオペアンプ30による非反転増幅回路のアナログ演算にて入力信号X
rまたは1−X
rに定数2を掛ける演算を行う。
【0078】
アナログ演算回路(第2の演算回路)23は、反転増幅回路であり、抵抗の比が1対1(増幅率は1)となっており、入力信号X
rを1−X
rとする一次式の計算を行う。
【0079】
以上の通りに構成された第2の実施形態に係るA/D変換部300は、次の通りに動作する。変換対象のアナログ信号は、スイッチSW1を介してサンプルホールドアンプ2へ与えられる。また、サンプルホールドアンプ2の出力は、スイッチSW2を介してテント写像演算回路1−1へ与えられている。クロック信号がLow状態にあるとき、スイッチSW1が導通状態、スイッチSW2が非導通状態にあり、サンプルホールドの出力の電圧レベルは入力のアナログ信号と常に同期している。次にクロック信号がHigh状態になることで、スイッチSW1が非導通状態に遷移され、その時の電圧レベルがサンプリングされ保持される。
【0080】
サンプルホールドアンプ2によりサンプリングされた電圧レベルは、スイッチSW2が導通状態になると、テント写像の初期値X
0として、テント写像演算回路1−1に与えられ、演算結果X
1が出力される。演算結果X
1は入力値として、次のテント写像演算回路1−2に与えられる。一方、テント写像演算回路1−1のコンパレータ24によって、0.5以上かまたは0.5未満かの判別により得られた信号が論理回路25へ出力され、ORゲート25dの出力クロック信号のHigh状態がテント写像演算回路1−2へ送られる。このような繰り返しの動作が分解能のビット分のテント写像演算回路1−1〜1−3において行われ、テント写像の演算が行われていく。
【0081】
テント写像演算回路1−1〜1−3による演算結果の各X
r+1は、それぞれが内蔵する0.5以上か0.5未満の判別を行うコンパレータ24によって1か0かに分別されることで、グレイコードが生成される最終段のテント写像演算回路1−3の出力は比較器CMPに与えられ、閾値0.5[V]と比較されてグレイコードとされる。グレイコードはバイナリ変換回路3を介してバイナリコードとされ、最終的に出力バッファ4からディジタル値を得ることができる。
【0082】
バイナリ変換回路3は、
図9に示すように3つの排他的論理和回路により構成される。最上位側の排他的論理和回路は、MSBと第2桁目の排他的演算を行い、2番目の排他的論理和回路は、最上位側の排他的論理和回路の出力と第3桁目の排他的演算を行い、3番目の排他的論理和回路は、2番目の排他的論理和回路の出力と第3桁目の排他的演算を行う。
【0083】
図15は、
図14に示した第2の実施形態に係るA/D変換部300の動作時における各部の信号波形の遷移を示すタイミングチャートである。クロック信号のHighエッジを受けるたびに、その時点のアナログ信号の電圧値をテント写像の初期値X
0として、サンプルホールドアンプ2により取り込まれ、テント写像演算回路1−1〜1−3においてテント写像の演算が一括で行われる。演算の結果、テント写像演算回路1−1〜1−3のVoutからアナログ電圧値として出力された各電圧レベルをX
1,X
2,X
3として示している。
【0084】
各アナログ電圧値X
0,X
1,X
2,X
3は、テント写像演算回路1−1〜1−3内のコンパレータ24と
図14に示すコンパレータCMPにより0.5[V]以上か0.5[V]未満かにより1と0とに峻別されたグレイコードとして出力され、バイナリ変換回路3によるバイナリ変換を経て、最終的に
図14と
図15にOUT0,OUT1,OUT2,OUT3として示したディジタル値とされて出力される。
【0085】
図15では、1回目のクロック信号のHighエッジによる一連のA/D変換が、テント写像の初期値X
0=0.15[V]によって実行された例を示している。テント写像演算回路1−1〜1−3によるテント写像の結果として、X
0=0.15[V],X
1=0.30[V],X
2=0.60[V],X
3=0.80[V]の電圧レベルが出力されている。この電圧レベルを受けて、テント写像演算回路1−1〜1−3内のコンパレータ24と
図14に示すコンパレータCMPによりグレイコード(0 0 1 1)が出力され、
図9のバイナリ変換回路3により、最終的にディジタル出力(0010)が出力されている。
【0086】
2回目のクロック信号のHighエッジによる一連のA/D変換においては、テント写像の初期値X
0=0.48[V]が取り込まれ、3回目のクロック信号のHighエッジによる一連のA/D変換においては、テント写像の初期値X
0=0.79[V]が取り込まれ、2回目のクロック信号のHighエッジによる一連のA/D変換においては、テント写像の初期値X
0=0.63[V]が取り込まれ、それぞれの回において前述の通りの動作によりグレイコードが得られ、更にバイナリコードが得られることが
図15により示されている。
【0087】
図15中に示されている”遅延”は、
図12のサンプリングするクロックが遅延回路により遅延された時間に該当している。クロック信号がLowになった場合は、全てのスイッチSW1、SW2が非導通状態とされるため、各電圧レベルX
r+1(
図14と
図15に示したX
0,X
1,X
2,X
3)は、リセットされた状態になる。
【0088】
なお、ここでは基準電圧を1[V]としているが、例えば基準電圧を10[V]とした場合、コンパレータの閾値は5[V]となり、5[V]以上か未満で判定がされることになる。このように、基準電圧やコンパレータの閾値は、実装環境によって基準電圧を任意に設定してよい。
【0089】
この一括型の第2の実施形態に係るA/D変換部300は、1回のクロックでA/D変換を終了させるといった点で、従来のA/D変換回路として並列型(フラッシュ型)、またはパイプライン型に相当する。従来の並列型(フラッシュ型)では分解能が256階調の8ビットの場合、コンパレータ(オペアンプ)を255(=2
8−1)個必要とする。これに対して、第2の実施形態に係るA/D変換部300では、
図14に示す4ビットで段数に応じてテント写像演算回路1が3個であるので、8ビットではテント写像演算回路1が7個で済むことが分かる。1つのテント写像演算回路1にはオペアンプが3個含まれており、8ビット分の回路設計には、3x7=21個のオペアンプに、サンプルホールドと最後のコンパレータの2個を追加すると実質23個となることが分かる。
【0090】
更に分解能16ビットの回路を考えると、従来の並列型(フラッシュ型)は必要とするコンパレータ(オペアンプ)が65535(=2
16−1)個になるのに対し、本実施形態による構成では15段となるため、3x15+2=47個程度で一括変換が構成可能であることが分かる。また、並列型(フラッシュ型)A/D変換回路では、各抵抗による分圧が閾値電圧として入力され、アナログ入力の電圧レベルとの区分けによるコンパレータ群による量子化後に、符号化のためのエンコード回路が必要であるが、テント写像による方式では、0.5以上か、0.5未満かでコンパレータによる1/0ビット抽出を行い、アナログ演算と同時にエンコードを行える性質のため、エンコード回路は不要となる。
【0091】
図16に、第3の実施形態に係るA/D変換部300の構成図を示す。この第3の実施形態は、反復型と称することができ、クロック信号のHighエッジを受け、1回のテント写像の演算を行い、Lowエッジにより演算結果の電圧レベルをサンプルホールドアンプ38で保持し、次のクロック信号のHighエッジを受けて2回目のテント写像の演算を行う。以下同様にクロック信号のHighエッジを受けてテント写像の演算を行うもので、1クロックに1ビットずつ繰り返し連続してグレイコードを抽出するタイプである。
【0092】
第3の実施形態に係るA/D変換部300は、サンプルホールドアンプ38、テント写像演算回路1、レジスタ32、スイッチSW0、SW1、SW2、制御部5を備えている。スイッチSW0は、A/D変換対象のアナログ入力信号をサンプルホールドアンプ38の入力端子に導く経路に設けられ、スイッチSW1は、サンプルホールドアンプ38の出力をテント写像演算回路1の入力端子に導く経路に設けられ、スイッチSW2は、テント写像演算回路1の出力信号をサンプルホールドアンプ38の入力端子に導く経路に設けられる。
【0093】
制御部5は、スイッチSW0、SW1、SW2の開閉制御を行う制御部である。制御部5は、第3の実施形態に係るA/D変換回路の分解能をNビットとした場合、最初のアナログ信号のサンプリングは、クロック信号のLowエッジを受けてスイッチSW0を導通状態とし、アナログ信号をサンプルホールドアンプ38へ取り込む。次に制御部5は、クロック信号のHighエッジでスイッチSW0を非導通状態とし、スイッチSW1を導通状態として、サンプルホールドされた電圧レベルを、テント写像演算回路1へ転送する。クロック信号における2回目からは、そのLowエッジでスイッチSW2を導通状態(スイッチSW1は非導通状態)とし、HighエッジでスイッチSW1を導通状態(スイッチSW2は非導通状態)とする制御を行い、テント写像演算回路1によるテント写像の演算結果の電圧レベルをサンプルホールドアンプ38に送り、以降”N−1“回繰り返しテント写像演算回路1においてテント写像の演算を行う。また、テント写像演算回路1内のコンパレータ24によって抽出されグレイコード端子Gから出力されたグレイコードは1ビットずつレジスタ32に蓄積されて、Nビット分蓄えられた時点で、バイナリ変換回路3へと転送されて変換がなされ、出力バッファ4を介し、最終的にディジタル値を得るように制御が行われる。このような動作を1セットとして繰り返し動作が行われ、Nビットずつの取得が可能である。
【0094】
この第3の実施形態に係るA/D変換部300は、第2の実施形態に係るA/D変換部300(一括型)に比べて時間を要するが、1回分のテント写像回路(テント写像演算回路1)が1つで済むため、オペアンプの個数としては4個となり、面積削減になる。回数の点では逐次比較型に近くなる。
【0095】
従来の逐次比較型ではD/A変換回路を搭載するため、分解能を大きくするほど回路規模も大きくなる、といった問題があった。逐次比較型との違いとして、この第3の実施形態に係るA/D変換部300は、一連のディジタル変換が終了するまで、初期電圧値をサンプルホールドアンプ38で保つ必要がなく、D/A変換回路がいらない(コンパレータのレファレンス電圧が0.5[V]のみでよい)ことが利点である。
【0096】
図3の一次記憶バッファ装置の実施形態に用いられるD/A変換部100は、テント写像の演算より出力される上記グレイコードの値を基にして、逆に写像をたどることで初期値X
0の範囲を求める構成とすることができる。
【0097】
D/A変換部100の実施形態では、例として、テント写像から生成された4ビット分のビット列のグレイコードが、“0110”であったとする。ここで取得したビット列からテント写像の計算過程は、
図17のようである。
【0098】
テント写像から生成される上記グレイコードビット列が
図17における右側の矢印に示すように、上から順に生成されたとする。そのときに選択された写像式は、“○”と“×”で表した、“○”側の式を必ず実行して遷移していることが分かる。テント写像の最後の解 “X
4”から考えると写像X
iの値域は閉区間[0,1]のため、“0≦X
4≦1”の範囲のいずれかに必ず含まれている。
【0099】
即ち、A/D変換は、アナログデータをテント写像関数による演算を行って得られる演算結果と所定閾値との大小関係の不等式を用いてグレイコードを発生させるようにしたものである。そして、本実施形態のD/A変換装置は、A/D変換によって発生される上記グレイコードを、アナログデータに変換するものである。
【0100】
“X
4 ”を生成した式(関数)は、グレイコードのビット列が“0”であることから、関数“X
4=2X
3”が実行されていることが特定され、“X
3”はどの範囲であるのか、不等式を得ると、
【数13】
となり、この範囲から必ず“X
3”が計算されていることが判る。
【0101】
次に“X
3”について考察すると、グレイコードのビット列が“1”であるから、関数“X
3=2(1−X
2)”が選択されたことが分かる。これを不等式“0≦X
3≦0.5”に代入すると、
【数14】
から、“X
2”の範囲を絞ることができる。
【0102】
同様にして、次のグレイコードのビット列が“1”であるから、関数“X
2=2(1−X
1)”が選択されたことが特定され、“X
1”の範囲は、
【数15】
となる。
【0103】
最後に初期値“X
0”の範囲は、グレイコードのビット列“0”より、関数“X
1=2X
0 ”が選択されたことが特定され、“X
0”の範囲は、
【数16】
となる。
【0104】
以上により、初期値“X
0”は0.25から0.3125の範囲内のいずれから始まっていたことが分かり、これは
図8の「丸5」の範囲に該当し、この範囲内の初期値“X
0”について、テント写像式(1)を実行しグレイコードを生成すると必ず、“0110”が得られることを示している。なお、初期値X
0の境界については、厳密には上限の値を含まず、
図8の「丸5」のように“0.25≦X
0<0.3125”となる。D/A変換装置として、不等式の範囲の値をアナログデータとして出力することになる。
【0105】
上記の通り、第1の本実施形態のD/A変換装置は、まず、第n(1以上の整数であり、この実施形態では4である。)段目の演算より得られた第n段目演算結果から発生された第n段目グレイコードに基づき、当該第n段目グレイコードを発生させる際に用いた第n段目関数を特定する関数特定処理(
図18のA1)を行う。
【0106】
次に、上記第n段目演算結果を上記第n段目関数に基づく逆演算に適用することにより第n−1段目演算結果を得ると共に、上記第n段目演算結果が満たすべき不等式に基づき、上記第n−1段目演算結果が満たすべき不等式を得るようにする不等式検出処理(
図18のA2)を行う。
【0107】
次に、第n−1段目の演算より得られた第n−1段目演算結果から発生された第n−1段目グレイコードに基づき、当該第n−1段目グレイコードを発生させる際に用いた第n−1段目関数を特定する関数特定処理(
図18のA3)を行う。
【0108】
更に、上記第n−1段目演算結果を上記第n−1段目関数に基づく逆演算に適用することにより第n−2段目演算結果を得ると共に、上記不等式検出処理に得られた不等式に基づき、上記第n−1段目演算結果が満たすべき不等式を得るようにする不等式検出処理(
図18のA4)を行う。
【0109】
以下、上記A/D変換の際に行われた演算回数nとなるまで、関数特定処理と不等式検出処理とを繰り返して、最終的に得られた不等式の範囲の値をアナログデータとして出力(
図18のA5)する。
【0110】
上記の実施形態を、式(11)の写像関数の逆演算という考え方による実施形態として説明する。
【数17】
これらを式(11)のテント写像をさかのぼるイメージを数式化すると、グレイコードのビット列を
{b
0,b
1,…,b
i,…,b
n−1}として、以下の式(12)で表現できる。
【数18】
【0111】
ここで、グレイコードのビット数はnで、“X
n”の最小値と最大値は“0≦X
n≦1”から始められるため、最初(i=n−1)で、上記不等式の“X
n ”の右辺は“X
n=1 ”とし、左辺は“X
n=0 ”として別々に計算を行ってゆき最終的に“X
0 ”の最小値と最大値の範囲として算出できる。
【0112】
D/A変換として式(12)の演算をアナログ演算回路で行うことを考えた場合、最終的な“X
0”の最小値と最大値の中間値を出力すればD/A変換後のアナログ電圧値とすることができるが、あらかじめ最大値“1.0”と最小値“0.0”の中間値である“0.5”から始めれば別々に演算を行うことなく中間の値を得ることができる。
【0113】
本実施形態では、上記グレイコードのビット列4ビット分“0110”を考え、
“X
4=0.5“から始めてグレイコードのビット列“0”の情報から関数“X
4=2X
3”が実行されているため“X
3”は
【数19】
となる。
【0114】
次に“X
3”を考えると、グレイコードのビット列“1”の情報から、関数“X
3=2(1−X
2)”が選択されたことが分かるため、これを“X
3=0.25”に代入することにより、
【数20】
となる。
【0115】
以下、同様にして、グレイコードのビット列“1”のため、関数“X
2=2(1−X
1)”が選択されたことが分かるため、“X
1”は
【数21】
となる。
【0116】
最後に、グレイコードのビット列“0”より、関数“X
1=2X
0”が選択されたことが分かるため、初期値“X
0”は
【数22】
上記、初期値“X
0”の範囲の解“0.25≦X
0≦0.3125”の中間値となっていることが確かめられる。
【0117】
式(12)の処理は、ディジタル値としてグレイコードを基にし、アナログ演算回路を構成して行うことでアナログ電圧値として出力させることができる。
【0118】
本実施形態に係るD/A変換部100は、以上の説明から明らかなように、グレイコードを、アナログデータに変換するD/A変換装置である。グレイコードは、アナログデータをテント写像関数による演算を行って得られる演算結果と所定閾値との大小関係に応じてグレイコードを発生させるようにしたA/D変換によって発生させることができる。本実施形態に係るD/A変換部100は、上記グレイコードを、アナログデータに変換するD/A変換装置であり、次のように構成されている。
【0119】
本実施形態に係るD/A変換装置は、まず、第n(1以上の整数)段目の演算より得られた第n段目演算結果から発生された第n段目グレイコードに基づき、当該第n段目グレイコードを発生させる際に用いた第n段目関数を特定する関数特定処理(
図19のA11)を行う。
【0120】
次に、上記第n段目演算結果を上記第n段目関数に基づく逆演算により第n−1段目演算結果を得るようにする逆演算処理(
図19のA12)を行う。
【0121】
次に、第n−1段目の演算より得られた第n−1段目演算結果から発生された第n−1段目グレイコードに基づき、当該第n−1段目グレイコードを発生させる際に用いた第n−1段目関数を特定する関数特定処理(
図19のA13)を行う。
【0122】
更に、上記第n−1段目演算結果を上記第n−1段目関数に基づく逆演算により第n−2段目演算結果を得るようにする逆演算処理(
図19のA14)を行う。
【0123】
以下、上記A/D変換の際に行われた演算回数nとなるまで、関数特定処理と逆演算処理とを繰り返して、最終的に得られた逆演算処理の結果をアナログデータとして出力(
図19のA15)する。
【0124】
また、D/A変換対象とするディジタル値がバイナリコードである場合、変換対象とするディジタル値のバイナリコードをグレイコード変換してから、式(12)の手続きを行えば良い。
【0125】
グレイコードは、以下の式(13)によりバイナリコードを変換することにより得ることができる。ここでディジタル値とする“b”は2進数ビット列である。
【数23】
式(13)は、
図20のB/G変換回路110にて実現される。バイナリコードをグレイコードへ変換するB/G変換回路110は、
図18ではA1の前段に設けられ、
図19ではA11の前段に設けられる。
【0126】
次に、式(12)を実現する逆演算回路を用いた第3の実施形態に係るD/A変換部100の構成図を
図21に示す。この実施形態のD/A変換部100は、関数特定処理を行う制御手段140と、逆演算処理を行う逆演算手段120とを主な構成要素としている。本実施形態では、制御手段140のグレイコード入力端子113に、
図20に示したB/G変換回路110の出力を接続しているが、グレイコードを用いた処理を行っている回路からグレイコードを直接に取り込む構成であれば、上記B/G変換回路110は不要である。
【0127】
このD/A変換部100は、アナログデータをテント写像関数による演算を行って得られる演算結果と所定閾値との大小関係に応じてグレイコードを発生させるようにしたA/D変換によって発生される前記グレイコードを、アナログデータに変換する。
【0128】
制御手段140は、第n(1以上の整数)、n−1、・・・、1段目の演算より得られた第n、n−1、・・・、1段目演算結果から発生された第n、n−1、・・・、1段目グレイコードに基づき、当該第n、n−1、・・・、1段目グレイコードを発生させる際に用いた第n、n−1、・・・、1段目関数を特定する関数特定処理を行う。
【0129】
逆演算手段120は、上記第n、n−1、・・・、1段目演算結果を上記第n、n−1、・・・、1段目関数に基づく逆演算により第n−1、n−2、・・・、1段目演算結果を得るようにする逆演算処理を行う。
【0130】
制御手段140は、第n段目グレイコードに基づく処理のときには、第n段目関数を特定すると共に、上記第n段目演算結果を上記第n段目関数に基づく逆演算により第n−1段目演算結果を得るように逆演算手段を制御し、第n−1段目グレイコードに基づく処理のときには、第n−1段目関数を特定すると共に、上記第n−1段目演算結果を上記第n−1段目関数に基づく逆演算により第n−2段目演算結果を得るように逆演算手段を制御し、以下、上記A/D変換の際に行われた演算回数nとなるまで、関数特定処理と逆演算処理の制御を繰り返して、最終的に得られた逆演算処理の結果をアナログデータとして出力するように制御する。
【0131】
図22に、逆演算手段120の具体的な構成を示す。逆演算手段120は、テント写像関数がN(2以上の整数)個の関数から構成されている場合に上記N個の関数による演算とは逆の演算を行うN個の逆演算回路により構成される。この逆演算手段120は、式(12)を実現するものであるため、N=2である。
【0132】
グレイコードが“1”でも“0”でも、“X
i+1/2 ”の計算が必ず行われるため、電圧レベル“X
i+1”を抵抗素子R1、R2で半分に分圧する構成を採用しており、この部分が1個目の逆演算回路である。電圧レベル“X
i+1”の最大は1.0[V]のため、抵抗素子で分圧された後は必ず“(X
i+1/2)≦0.5”になる。
【0133】
グレイコードが“1”の場合、 “1−(X
i+1/2)”が選択されるため、これについては電圧レベル“X
i+1”[V]に対して、上記抵抗素子R1、R2にて半分に分圧された電圧値“X
i+1/2 ”を引き算する回路を2つのNMOSトランジスタで構成された逆演算回路121により行う。この部分が2個目の逆演算回路である。
【0134】
逆演算回路121は、
図23に示すように、同じサイズのNMOSトランジスタでダイオード接続したNMOSトランジスタ122a、122bから構成される。NMOSトランジスタ122aのゲートとソースの接続部の電圧値をVgsとした場合、出力Voutの電圧レベルは、ゲートがVinに接続され、ソースがVsに接続されたNMOSトランジスタ122bのVinとVsに対して、“Vout=Vgs−Vin+Vs(但し、Vin≦Vgs/2)”の関係にある。
【0135】
図24は、
図23の2つのNMOSトランジスタ122a、122bにより構成される逆演算回路121のDC解析を行った結果である。この
図24では、Vinを0.0[V]〜1.0[V]まで変化させた場合のVoutの電圧レベルを示している。“Vin≦Vgs/2(=0.5[V])”の範囲(NMOSトランジスタ122a、122bの静特性五極管(飽和)領域)では、Voutは0.5[V]を境に、Vinの電圧レベルに対して、リニアにVgs=1.0[V]からの引き算を行っている。なお、DC解析の電圧条件についてVgs=1.0[V]、Vs=0.0[V]としている。
【0136】
図22に示すように、抵抗素子R1、R2の接続点はスイッチSW0を介してサンプルホールドアンプ123の非反転端子へ接続されている。また、逆演算回路121の出力端子VoutはスイッチSW1を介してサンプルホールドアンプ123の非反転端子へ接続されている。スイッチSW0、SW1はグレイコードに基づき関数特定を行う制御手段140によりオンオフ制御される。すなわち、グレイコードが“0”の場合、スイッチSW0がオン(導通)状態に、スイッチSW1がオフ(断線)状態とされる。グレイコードが“1”の場合はスイッチSW0がオフ(断線)状態に、スイッチSW1がオン(導通)状態にされる。これによりグレイコードに応じ、式(12)がアナログ演算にて1回分実行される。
【0137】
このようにD/A変換部100は、アナログデータをテント写像関数による演算を行って得られる演算結果と所定閾値との大小関係に応じてグレイコードを所定段で発生させるようにしたA/D変換によって発生される上記グレイコードを、アナログデータに変換する。上記制御手段140は、A/D変換を行う場合のテント写像関数による演算毎に発生される上記グレイコードに基づき、当該グレイコードを発生させる際に用いたそれぞれの関数を特定する関数特定処理を行う。また、逆演算手段120は、上記各段の演算結果に対し、前記制御手段により特定された関数に基づく逆演算を行って、その前段の演算結果を得るようにする逆演算処理を行う。
【0138】
スイッチSW0またはスイッチSW1を介して出力された電圧値のレベルはサンプルホールドアンプ123で保存され、再び
図22と同一の回路に入力されることで式(12)の反復演算が行われる。つまり、A/D変換の際に行われた演算回数nとなるまで、関数特定処理と逆演算処理の制御を繰り返す。演算回数nの繰り返しは分解能分行うことを意味し、最終的にはサンプルホールドアンプ123がD/A変換結果のアナログ電圧として出力する。
【0139】
別言するならば、上記制御手段140は、最終段から初段に向かって順次に関数を特定し、上記逆演算手段120は、上記制御手段140により関数が最初に特定されると当該特定された関数に基づき第1段目の逆演算を最終段の演算結果に施して1段前の逆演算結果を得て、次に、上記制御手段140により関数が次に特定されると当該特定された関数に基づく第2段目の逆演算を第1段目の逆演算結果に施して更に1段前の逆演算結果を得て、以下同様に逆演算処理を繰り返して、最終的に得られた逆演算処理の結果をアナログデータとして出力するように制御する。
【0140】
図25に第4の実施形態に係るD/A変換部100の構成を示す。このD/A変換部100は、1クロックに同期して式(12)の演算を1回ずつ行う反復型の装置である。本D/A変換部100は、上記N個の逆演算回路の出力を、最終出力とするか、上記N個の逆演算回路の入力へフィードバックするかを切り換えるスイッチSWnext、SWoutを備え、上記制御手段140の制御回路141が上記スイッチSWnext、SWoutを切り換えることにより、上記A/D変換の際に行われた演算回数nだけ繰り返し演算制御を行う。
【0141】
フィードバックの経路には、サンプルホールドアンプ142が設けられている。このサンプルホールドアンプ142の非反転端子にはスイッチSWinを介して定常電圧0.5Vが与えられる。スイッチSWinは制御手段140の制御回路141がオンオフ制御する。この反復型D/A変換部100は、制御回路141からの分解能分のクロックパルス回数を与えることで1回分のD/A変換処理を行う。
図22に示した逆演算手段120を1つだけ備えて1回の演算結果を再び入力電圧として与え反復して演算し、分解能分の回数(A/D変換の際に行われた演算回数n)を演算した後に最終的にアナログ電圧として出力を行う。
【0142】
演算の開始の際には、スイッチSWinがオン状態とされ、サンプルホールドアンプ142に0.5[V]が与えられて電圧値が保持される。次に、制御回路141からクロックCLKgrayがHigh状態で与えられることで関数特定処理が可能状態となり、最初のグレイコードの情報によりAND回路を介して
図22のスイッチSW0かスイッチSW1がオンとされ、逆演算手段120において式(12)の演算が行われ、
図22のサンプルホールドアンプ123に逆演算結果が電圧値として保持される。この電圧値は
図25の出力“X
i”となり、グレイコードが“0”である場合に式(12)の関数は“X
i+1/2”であり、その演算結果は0.25[V]となる。
【0143】
図26に、上記D/A変換部100の構成にて分解能4ビットでD/A変換のシミュレーションを行った結果の波形を示す。
図25に示されている信号Grayが
図26における最上位欄の値として示されている。即ち、D/A変換対象とするディジタル値としてグレイコードがシリアルに入力されていることを示している。上記第1段目の演算で得られた演算結果である0.25[V]は、
図26の波形ではX
iとして示されている。
【0144】
次に、制御回路141からクロックCLKgrayがLow状態で出力され、スイッチSW0とスイッチSW1がオフとされた僅かの時間差後に、スイッチSWnextにHighの信号CLKnextが与えられてオン状態とされる。このとき、スイッチSWinを制御する信号CLKinは、LowでスイッチSWinはオフ状態である。この結果、0.25[V]が
図25のサンプルホールドアンプ142へ転送保持される。
【0145】
再びクロックCLKgrayがHigh状態とされ、次のグレイコードの情報によってAND回路を介してスイッチSW0とスイッチSW1が制御される。ここで、グレイコードが“1”であるため、式(12)の関数“1−(X
i+1/2)”を演算する逆演算回路121が選択されて逆演算が行われ、その演算結果である電圧値0.875[V]が
図22のサンプルホールドアンプ123に保持される。
【0146】
また、スイッチSWnextに対する制御信号CLKnextがHighとされて、スイッチSWnextがオン状態になり、サンプルホールドアンプ123に保持された電圧値は、
図25のサンプルホールドアンプ142に転送される。このような動作が繰り返されることで所望の分解能ビット回数(A/D変換の際に行われた演算回数n)の演算が行われ、最終的にスイッチSWoutに対する制御信号CLKoutがHighにされてスイッチSWoutがオン状態になることによりアナログ電圧が出力される。
【0147】
図26の波形に示すように、スイッチSWoutに対し制御信号CLKoutがHigh状態とされて出力され、同時にスイッチSWinに対する制御信号CLKinもHigh状態とされると、
図25に示すサンプルホールドアンプ142に次のラウンドとなる式(12)の演算を行うための初期電圧値0.5[V]がセットされ、ここから再び前述の通りの処理が繰り返されてD/A変換が進行される。
【0148】
図26では、2サンプルの処理を示しており、第1ラウンドでグレイコード列“0110”の処理を行い、第2ラウンドではグレイコード列“1101”の処理を行っている。それぞれの計算結果であるテント写像の初期値X
0に相当する電圧レベル“0.28125[V]”と“0.84375[V]”がそれぞれ出力されている。なお、シミュレーションはフリーのアナログ回路シミュレータとして知られるリニアテクノロジー社が提供する“LTspice IV”を用いた。
【0149】
次に、第5の実施形態として、一括型のD/A変換部100を
図27に示す。本実施形態に係るD/A変換部は、
図22に示した逆演算手段120を、必要な分解能に応じた数だけ直列にカスケード接続して構成したもので、それぞれが逆演算手段120と同一構成の逆演算手段120−1〜120−4が備えられている。また、逆演算手段120−1〜120−4のそれぞれに、2つのAND回路とインバータにより構成される回路を制御手段140内に備え、これらを制御回路141Aにより制御することで、
図25に示した制御手段140の機能(関数特定の機能)を実現する。このD/A変換部は、第4の実施形態として示した反復型のD/A変換部よりも高速にD/A変換を実現することが可能である。
【0150】
この第5の実施形態に係るD/A変換部では、制御回路141Aから同期信号GCTRLがHighレベルとして出力されるとき、D/A変換の対象とするグレイコードの情報が2つのAND回路とインバータにより構成される回路により論理演算される。論理演算の結果は、逆演算手段120−1〜120−4のそれぞれ対応するスイッチSW0とスイッチSW1にパラレルにオンオフ制御信号として伝達される。逆演算手段120−1〜120−4は、前段から送られる信号に対し式(12)の演算を行う。これにより、所要の分解能分が一括で計算される。この計算の後、制御回路141AからスイッチSWOUTに対する制御信号がHighレベルとして出力される。これにより、最終段の逆演算手段120−4で生成されたアナログ電圧レベルを出力し、1個のクロックパルスでD/A変換を行う。反復型のD/A変換部と比較して素子数は増加するが、高速にD/A変換できるというメリットがある。
【0151】
次に、第6の実施形態として反復型と一括型の組み合わせに係るD/A変換部を
図28に示す。本実施形態に係るD/A変換部は、
図22に示した逆演算手段120を、所要数(ここでは2)だけ直列にカスケード接続して構成したもので、逆演算手段120−1、120−2が備えられている。また、逆演算手段120−1、120−2のそれぞれに、2つのAND回路とインバータにより構成される
図27と同様の機能を有する回路を備え、これらを制御回路141Bにより制御することで、
図25に示した制御手段140の機能を実現する。
【0152】
更に、逆演算手段120−2の出力信号X
iを初段の逆演算手段120−1の入力信号X
i+1としてフィードバックする経路を備えている。このフィードバック経路には、逆演算手段120−2の出力信号X
iを保持してフィードバックするためのサンプルホールドアンプ125が設けられている。逆演算手段120−2の出力とサンプルホールドアンプ125の間には、フィードバックするか所定分解能のD/A変換結果のアナログ信号として出力するかを選択するスイッチSWnext、SWoutが備えられ、これらのスイッチSWnext、SWoutは制御回路141Bによりオンオフ制御される。
【0153】
この実施形態は、一般的には、N個の逆演算回路がn段カスケード接続され、上記制御手段は、各n段のN個の逆演算回路において該N個の逆演算回路のいずれかを選択するかの制御と、n段間の信号の送出制御とを行うものである。本実施形態は、1個のクロックパルスで2ビットのD/A変換を行う。反復型では分解能4ビットのD/A変換の場合にクロックパルス数を4個必要とするのに対し、2つカスケード接続した本実施形態ではクロックパルス数が2個で済む。このため応答時間(レイテンシ)が速くなるといったメリットがある。このように反復型と一括型を組み合わせた本実施形態のD/A変換部は、回路面積と変換速度に合わせることが可能なトレードオフな構成が選択できる。
【0154】
図22に示した逆演算手段120は、式(12)の結果をサンプルホールドアンプ123に与えて電圧レベルを保持する構成を備えている。これに対し、
図29に示すように電圧レベルを保持するサンプルホールドアンプ123を、コンデンサ128に保持するタイプの逆演算手段120Aに置き換えることができる。
【0155】
図30に、
図25の逆演算手段120を、上記
図29の逆演算手段120Aに置き換えて、
図26に示したものと同じグレイコード(ディジタル値)のパターンでシミュレーションした結果を示す。
【0156】
コンデンサは時間経過により電荷漏れが生じてしまうため、
図29の逆演算手段120Aにおいては、CR(容量・抵抗)時定数と電荷漏れを考慮したスイッチング素子の切り替えや、サンプルホールドアンプ123の代用とするコンデンサ128の静電容量を大きくし、その他のコンデンサは影響を軽減させるため静電容量を小さくするなどのチューニングを行う。シミュレーションでは
図25のコンデンサCoutの静電容量は20f[F]、コンデンサCsampleの静電容量は0.5p[F]としている。ここに、fはフェムト(10
−15)であり、pはピコ(10
−12)を表している。
【0157】
サンプルホールドアンプ123を
図29のようにコンデンサ128に置き換える構成の逆演算手段120Aは、
図22のようにサンプルホールドアンプ123で電圧レベルを保持する構成と比較してD/A変換の精度が落ちるといったデメリットがある。しかしながら、この構成の逆演算手段120Aは、サンプルホールドアンプ123を用いなくともよいため、簡単な回路構成となり回路面積を縮小できるといったメリットがある。
【0158】
以上説明した式(12)を実行することでD/A変換を実現する反復型のD/A変換部100は、所定値の抵抗素子や容量素子を複数用意しなくとも、固定の素子数で反復回数を多くすることで分解能を変更してD/A変換が行えるため小さい回路面積でも高い分解能のD/A変換部を実現できる。また、同じ物理条件の抵抗とトランジスタなどによる回路を反復使用する構成であるため、素子ばらつきの影響が少ない高精度なD/A変換が期待できる。
【0159】
従来のD/A変換装置は分解能を変更したい場合には素子を変更・追加するなどハードウェア上での変更が必要であったのに対し、本実施形態に係るD/A変換装置では素子の変更は不要であるため、反復回数の制御というソフト的手法により柔軟に変更が可能である。
【0160】
本実施形態に係るD/A変換部は、グレイコードをD/A変換する構成であるため、ディジタルデータとしてグレイコードを採用し処理を行っているシステム等に適用する場合には、バイナリ変換の構成が不要であり、回路規模を大きくすることなくD/A変換が行える利点がある。
【0161】
アナログ回路設計において必要な中間電位を生成したい場合、抵抗ストリング型で分圧して所望の参照電圧を生成し、アナログ回路に供給するシーンがある。本実施形態に係るD/A変換装置では必要最小限な素子を用いて制御回路から制御パルスを与えることで所望の分解能にて参照電圧を生成できるため、このようなシーンに好適である。
【0162】
次に説明を行う、第4の実施形態に係るA/D変換部は、
図3のA/D変換部300として用いることができる。この実施形態に係るA/D変換部は、1回の写像につき、複数ビット出力する。1回の写像演算につき、2ビット分の出力を行う場合、以下の式(7)を使用する。
【0164】
式(7)のテント写像マップの幾何学的イメージは
図31に示すように、2つの山を持つようなテント写像になる。
X
rの範囲が、
【0166】
というように、式(7)の演算1回につき、ビット列を2ビット分出力して、分解能ビット数分を連続して、グレイコード(ディジタル値)を取得する構成を備えている。
【0167】
例えば、4ビットの分解能を有する構成とする場合には、
図8に対応した初期値X
0の16種の範囲から、はじめに初期値 X
0 から2ビット分を出力し、次に初期値 X
0を用いて式(7)の演算を実行して得られたX
1 から2ビット分を得て、合わせて4ビット分のグレイコード(ディジタル値)が得られるため、写像の演算は1回分を行うことで済む構成となっている。
【0168】
図32に、第4の実施形態に係るA/D変換部の構成図を示す。このA/D変換部は、制御部41、アナログ演算回路42、43、44及びスイッチSW1〜SW6を備えている。制御部41は、スイッチSW1〜SW6のオンオフを制御する制御信号を作成すると共に、入力端子40から到来する初期値及び演算結果をグレイコードのビット数に応じた閾値と比較する比較器を備えグレイコードを出力するものである。
【0169】
スイッチSW1は、入力端子40とアナログ演算回路42との間の経路に設けられ、スイッチSW2はアナログ演算回路43の出力端子とアナログ演算回路42の入力端子の間に設けられている。更に、スイッチSW3は、アナログ演算回路42の出力端子と出力端子49との間の経路に設けられ、スイッチSW4はアナログ演算回路42の出力端子とアナログ演算回路44の入力端子の間に設けられている。また、スイッチSW5は、アナログ演算回路43へレファレンス電圧0.75[V]を与えるためのスイッチであり、スイッチSW6は、アナログ演算回路43へレファレンス電圧0.25[V]を与えるためのスイッチである。
【0170】
アナログ演算回路42は、入力された信号を4倍する回路であり、アナログ演算回路43は入力信号X
r(Vin)を0.5 − X
r or 1.5 − X
rとする一次式の計算を行う回路であり、アナログ演算回路44は2を引く引き算を行う回路である。アナログ演算回路44は、ダイオード接続したNMOSトランジスタ44aのドレインにNMOSトランジスタ44bのドレインを接続し、この接続点を出力端子とした回路である。また、NMOSトランジスタ44aのソースとゲートの接続点にスイッチSW4が接続されて入力信号を取込可能とされている。NMOSトランジスタ44bのゲートには0.0[V]が与えられ、NMOSトランジスタ44bのソースには−2.0[V]が与えられている。
【0171】
制御部41には、コンパレータCMP51〜53が備えられている。コンパレータCMP51は、入力信号と閾値0.25[V]とを比較するもので、その出力をインバータ41aにより反転させて“−025A”を作成する。コンパレータCMP52は、入力信号と閾値0.5[V]とを比較するもので、その出力“High05”を作成する。“High05”はスイッチSW4に対する制御信号であり、“High05”がHレベルのときSW4が閉成される。“High05”をインバータ41bにより反転させて“Low05”を作成する。“Low05”はスイッチSW3に対する制御信号であり、“Low05”がHレベルのときSW3が閉成される。
【0172】
コンパレータCMP53は、入力信号と閾値0.75[V]とを比較するもので、その出力“075−D”を作成する。“075−D”はスイッチSW5に対する制御信号であり、“075−D”がHレベルのときSW5が閉成される。“Low05”とコンパレータCMP51の出力をANDゲートにより論理積演算して“025−05B”を作成する。“025−05B”はスイッチSW6に対する制御信号であり、“025−05BがHレベルのときSW6が閉成される。
【0173】
コンパレータCMP53の出力“075−D”とANDゲート41cの出力信号“025−05B”はORゲート41eにより論理和演算され、この論理和信号はANDゲート41fによりクロック信号と論理積演算されスイッチSW2の制御信号が作成される。スイッチSW2の制御信号がHレベルのときにスイッチSW2が閉成される。
【0174】
また、ANDゲート41dにより作成された信号“05−075C”とインバータ41aの出力は、ORゲート41gにより論理和演算され、この論理和信号はANDゲート41hによりクロック信号と論理積演算されスイッチSW1の制御信号が作成される。スイッチSW1の制御信号がHレベルのときにスイッチSW1が閉成される。
【0175】
また制御部41には、それぞれの一方の入力端子が接続されたORゲート41i、41jが備えられている。ORゲート41iに信号“075−D”と信号“05−075C”とを与えてグレイコードの1ビット目の信号G1を得ると共に、ORゲート41jに信号“025−05B”と信号“05−075C”とを与えてグレイコードの2ビット目の信号G2を得るように構成されている。
【0176】
以上の通りに構成された第4の実施形態に係るA/D変換回路においては、入力端子40へ入力される入力信号X
r(V
in)が、X
r<0.25のとき、スイッチSW1、SW3が閉成されてX
r+1=4X
rの写像演算が実行される。また、入力端子40へ入力される入力信号X
r(V
in)が、0.25≦X
r<0.5のとき、スイッチSW2、SW3、SW6が閉成されてX
r+1=2−4X
rの写像演算が実行される。
【0177】
更に、入力端子40へ入力される入力信号X
r(V
in)が、0.5≦X
r<0.75のとき、スイッチSW1、SW4が閉成されてX
r+1=4X
r−2の写像演算が実行される。また、入力端子40へ入力される入力信号X
r(V
in)が、0.75≦X
rのとき、スイッチSW2、SW4、SW5が閉成されてX
r+1=4−4X
rの写像演算が実行される。
【0178】
第3の実施形態に係るA/D変換部では写像の反復毎に1ビットずつ出力しているが、式(7)を使用する本第4の実施形態に係るA/D変換部によれば、反復毎に2ビットずつ出力できるため、分解能のビット数が4とした場合、必要なクロック数は2でよい。第3の実施形態にあってはA/D変換に必要なクロック数が4であるのに対し、少ないクロックで済むことが分かる。
【0179】
本第4の実施形態に係るA/D変換部は、従来例に係るA/D変換回路が用いていたD/A変換を使用せず、従来のパイプライン型A/D変換回路が採用していた残差アンプや1ビット出力毎のサンプルホールドアンプを使用しない特徴を有している。更に本第4の実施形態に係るA/D変換部は、テント写像によるA/D変換において1回の写像で数ビットを出力できる写像関数を用意するので、フラッシュ型とパイプライン型を合わせたサブレンジ型のような、変換速度と回路面積、分解能精度のトレードオフ的な構成をとることが可能である。
【0180】
また、本第4の実施形態に係るA/D変換部を用いて、例えば、分解能8ビットのA/D変換を行う装置を、
図14に示した第2の実施形態のような構成によって実現することができる。即ち、
図14に示すテント写像演算回路1−1〜1−3のそれぞれを
図32に記載の本実施形態に係るA/D変換部によって置換し、
図14のコンパレータCMPを
図32に示す制御部41によって置換することになる。すると、本実施形態に係るA/D変換部は、1つのA/D変換部のコンパレータ(オペアンプ)を5個含むから、テント写像演算回路1−1〜1−3の3回路で、合計5×3=15個である。また、制御部41には、3個のコンパレータ(オペアンプ)が含まれるから15+3=18個となり、サンプルホールド1個を含めると合計19個である。これに対し並列型(フラッシュ型)で同様の分解能が8ビット回路を作成する場合にはコンパレータを255個必要とすることから、本実施形態が遥かに少ない部品点数で同じ分解能の回路を実現することが可能である。
【0181】
なお、上記第4の実施形態に係るA/D変換部を用いる場合には、一度の演算で2ビットのグレイコードに基づき関数特定を行い、テント写像関数が4個の関数から構成されている場合であり、上記4個の関数による演算とは逆の演算を行う4個の逆演算回路により逆演算手段が構成されるD/A変換部100を用いることになる。即ち、上記第4の実施形態に係るA/D変換部に対応するD/A変換部100を構成し、これを用いればよい。
【0182】
次に、第5の実施形態に係るA/D変換部300に適用される1回分演算部の説明を行う。式(1)の写像を1回分行う1回分演算部であるテント写像演算回路1を、既に
図12に示した。この
図12に示す反転増幅回路は負帰還型であり、“1 − X
r”を実行するが、応答時間(レイテンシ)が遅くなるという懸念と、複数段のカスケード接続を行う場合に、前段の回路に電流が生じることで演算精度に影響を及ぼす懸念を有している。そのため、上記反転増幅回路を例えばNMOSトランジスタを用いて構成することで、応答時間(レイテンシ)向上や演算精度向上、更に回路面積削減といった効果を上げることが期待できる。そこで、本実施形態のA/D変換回路では、テント写像式として、以下の式(8)を使用することができる。
【0184】
図33に、上記式(8)のテント写像マップの幾何学的イメージを示す。このテント写像マップはV字型のテント写像になり、値域[1,2]を反復する。X
rの範囲が、
X
r<1.5の時 ビット列 “1“
1.5≦X
rの時 ビット列 “0“
を取得する。
【0185】
式(8)を実現する場合、
図34に示す各初期値X
0の範囲から写像を行い、グレイコードを生成し、バイナリ変換を行うことで、最終的なディジタル値を取得する。ところが、式(8)により上記のルールによってビット列を取得すると、
図34に示すように、バイナリ変換した値が降順(初期値X
0の昇順と逆)に生成されてしまう。このため、最後にバイナリ変換した値を反転することで、最終的に適正なディジタル値(昇順)を得ることができる。
【0186】
図12に示した反転増幅回路を、NMOSトランジスタに置き換えて構成したテント写像演算回路50を
図35に示す。この
図35に示すテント写像演算回路50は、式(8)を実現する1回分演算部である。即ち、テント写像演算回路50は、制御部51、第1の演算回路であるアナログ演算回路52、第2の演算回路であるアナログ演算回路53、第3の演算回路であるアナログ演算回路54、スイッチ群である(アナログ)スイッチSW1、SW2を備えている。
【0187】
スイッチ群であるスイッチSW1、SW2は、上記1回分演算部へ入力された信号を、上記第1の演算回路へ直接導くか、または、上記第2の演算回路を介して上記第1の演算回路へ導くか、経路を切り換えるスイッチ群である。
【0188】
制御部51は、上記1回分演算部へ入力された信号の大きさに基づき上記スイッチ群のオンオフを制御するものである。制御部51には、入力信号をグレイコード(1ビット)に変換するコンパレータ(比較器)56及びインバータ51aと、コンパレータ56の出力に基づきスイッチSW1、SW2を制御する制御信号を作成する論理回路55により構成される。ここでは、論理回路55は、ANDゲート55b、55c、ORゲート55dにより構成されている。論理回路55の出力は、
図14に示したカスケード接続を利用する場合の次段へ送るクロック信号となる。
【0189】
本実施形態では、テント写像関数が一次式に第1の定数を掛け、更に第2の定数を引く形式の関数であるため、アナログ演算回路52を、上記第1の定数を掛ける演算を行う第1の演算回路として構成し、アナログ演算回路53を、上記一次式の演算を行う第2の演算回路として構成し、更にアナログ演算回路54を、上記第2の定数を引く演算を行う第3の演算回路として構成している。
【0190】
アナログ演算回路(第1の演算回路)52は、
図10に示したオペアンプ30による非反転増幅回路のアナログ演算にて入力信号X
rまたは3−X
rに定数2を掛ける演算を行う。
【0191】
アナログ演算回路(第2の演算回路)53は、X
r<1.5の場合に、
図33に示す”1.5”を折り返すようにして、”3−X
r”の演算を、NMOSトランジスタ53a、53bで構成した引き算回路で行うものである。ここでアナログ演算回路(第2の演算回路)53は、
図36に示すように、ダイオード接続したNMOSトランジスタ53aのドレインに別のNMOSトランジスタ53bを接続して構成される。ダイオード接続したNMOSトランジスタ53aのゲートとソースの接続点に電圧値Vgsが与えられている。上記別のNMOSトランジスタ53bではゲートがVinに接続され、ソースがVsに接続されている。2つのNMOSトランジスタ53a、53bの接続点は出力端子であり、出力Voutの電圧レベルは、“Vout=Vgs−Vin+Vs(但しVin≦Vgs/2)”の関係にある。
【0192】
図37に、
図36に示したNMOSトランジスタ53a、53bによる回路のDC解析を行った結果を示す。この
図37では、Vinを0.0[V]〜3.0[V]まで変化させた場合のVoutの電圧レベルを示している。”Vin≦Vgs/2(=1.5[V])”の範囲では、Voutは1.5[V]を境にVinの電圧レベルに対して、Vgs=3.0[V]からの引き算を行った値が、
図37にリニアに現れている。なお、DC解析の電圧条件については、Vgs=3.0[V]、Vs=0.0[V]である。
【0193】
アナログ演算回路(第3の演算回路)54は、アナログ演算回路(第2の演算回路)53と構成は同じである。アナログ演算回路(第3の演算回路)54では、アナログ演算回路(第1の演算回路)52の出力信号を、ダイオード接続したNMOSトランジスタのゲートとソースの接続点に入力している。この構成により、アナログ演算回路(第3の演算回路)54は入力から2を引く回路として機能する。
【0194】
図35において電圧レベル入力Vinに相当する“X
r”が、X
r<1.5のとき制御部51によりスイッチSW2が閉成され、1.5≦X
rのとき、スイッチSW1が閉成される。以上の構成により、1.5≦X
rのとき制御部51によりスイッチSW1が閉成(SW2は開放)され、アナログ演算回路52とアナログ演算回路54とが接続されて、X
r+1=“2X
r−2”の演算を行う回路が構成され、X
r+1が得られる。一方、X
r<1.5のとき制御部51によりスイッチSW2が閉成(SW1は開放)され、アナログ演算回路53とアナログ演算回路52とアナログ演算回路54が接続されて、X
r+1=“2(3−X
r)−2(=4−2X
r)”の演算を行う回路が構成され、X
r+1が得られる。
【0195】
図35に示した、第5の実施形態に係るA/D変換部に適用される1回分演算部は、
図12に示した1回分演算部と比較して、
図12の反転増幅回路により構成されるアナログ演算回路23をNMOSトランジスタにより構成されるアナログ演算回路53へ置き換えることで、応答時間(レイテンシ)向上、演算精度向上、また回路面積削減、といった効果が期待される。
【0196】
次に、第6の実施形態に係るA/D変換部300に適用される1回分演算部の説明を行う。
図38に、第6の実施形態に係るA/D変換部300に適用される1回分演算部であるテント写像演算回路であるテント写像演算回路20の回路図を示す。この1回分演算部であるテント写像演算回路20は、
図12に示した1回分演算部に対して、
図12の反転増幅回路により構成されるアナログ演算回路23をPMOSトランジスタ63a、63bによる構成で置き換えたものである。この1回分演算部であるテント写像演算回路20は、式(1)の写像演算を行うものである。
【0197】
図12のアナログ演算回路23を、PMOSトランジスタ63a、63bによる構成で置き換えたアナログ演算回路63は、”1−X
r”を実行する引き算回路であり、
図39に示すように2個のPMOSトランジスタで構成される。図の下側に示されるPMOSトランジスタ63bはソースとゲートがVs=0.0[V]に接続されている。このPMOSトランジスタ63bのドレインには別のPMOSトランジスタ63aのドレインが接続されている。上記別のPMOSトランジスタ63aのソースから電源がVdd=1.0[V]が供給され、そのPMOSトランジスタ63aのゲートに演算対象である入力電位レベルVinがX
rとして供給されている。ソースとゲートがVs=0.0[V]に接続されたPMOSトランジスタ63bのドレインからの出力電圧Voutは、”Vout=Vdd−Vin(但しVdd/2≦Vin)“の関係である。
【0198】
図40に、
図39のPMOSトランジスタ63a、63bにより構成される回路のDC解析を行った結果を示す。
図40には、入力電位レベルVinを0.0[V]〜1.0[V]まで変化させた場合における、出力電圧レベルVoutの変化が示されている。”Vdd/2(=0.5[V])≦Vin”の範囲では、Voutは0.5[V]を境にVinの電圧レベルに対して、Vdd=1.0[V]からの引き算を行った値が、
図40にリニアに現れている。
【0199】
この第6の実施形態によれば、
図35に示した、第5の実施形態に係るA/D変換部300に適用される1回分演算部同様に、
図12に示した1回分演算部に対して、
図12の反転増幅回路により構成されるアナログ演算回路23をPMOSトランジスタ63a、63bによる構成で置き換え構成することで、応答時間(レイテンシ)向上や演算精度向上、また回路面積削減といった効果を上げることができる。
【0200】
なお、上記第5、第6の実施形態に係るA/D変換部を用いる場合には、一度の演算で1ビットのグレイコードに基づき関数特定を行い、テント写像関数が2個の関数から構成されている場合であり、上記2個の関数による演算とは逆の演算を行う2個の逆演算回路により逆演算手段が構成されるD/A変換部100を用いることになる。即ち、上記第5、第6の実施形態に係るA/D変換部に対応するD/A変換部100を構成し、これを用いればよい。
【0201】
以上に説明した各実施形態に係るD/A変換部100とA/D変換部300のいずれを用いる場合においても、アナログメモリ部200は
図3に示したサンプルホールドアンプを用いることができる。このアナログメモリ部200は、出力端子を反転入力端子へフィードバック接続したサンプルホールドアンプ201により構成され、そのサンプルホールドアンプ201の非反転入力端子にはD/A変換部100の出力信号が与えられる。また、サンプルホールドアンプ201の非反転入力端子とグラウンドの間にはコンデンサが接続されている。更に、サンプルホールドアンプ201の出力はスイッチSWを介してA/D変換部300に接続されている。
【0202】
上記のサンプルホールドアンプ201によりNビット分のデータを記憶保持する場合は、保持する電圧の最小振れのΔVを、D/A変換により得られたアナログ電圧値を中央値として、Δ1/2
N+1前後の振れとなるように設定すると好適である。この振れの範囲内に測定限界が保証できる電圧値を収めることにより、正確なデータ読み出しが可能である。
【0203】
サンプルホールドアンプ201を、MOSトランジスタを用いて構成したものを、
図41に示す。PMOSを4つとNMOSを6つで構成することができ、MOSトランジスタの合計は10個になる。
【0204】
一方、ディジタルによる記憶保持で例えば8ビット分記憶する構成としては、8個分のDフリップフロップ(レジスタ)を用意する必要がある。
図42に、一般的なDフリップフロップにより構成した1ビット分を記憶保持する回路を示す。1ビット分を記憶保持するために、NAND回路が8つ、インバータが2つ必要である。
【0205】
これを、MOSトランジスタレベルに分解すると、NANDはPMOS2つとNMOS2つで構成され、インバータはPMOS1つとNMOS1で構成される。従って、MOSトランジスタの数は、8x4+2x2=36個となり、8ビット保存する構成では、36x8=288個のMOSトランジスタで構成する必要がある。またレジスタに保存して取り出す動作について、より大きい記憶容量と高速動作が要求される場合、制御する回路も大がかりになりタイミングを合わせるチューニングコストが大きくなる。
【0206】
これに対し、サンプルホールドアンプ201による構成では、サンプルホールドアンプ201を1つ用意すれば8ビット分をD/A変換後にアナログ電圧値として記憶できるため、トランジスタ数を大幅に削減できる効果が考えられる。また、MOSトランジスタのW/L[um]サイズを設定する必要はあるが、8ビットの情報量を保存したい場合、数の面ではサンプルホールドアンプ201によるアナログ量で保存する構成が記憶素子部の素子数を少なくできる。
【0207】
しかしながらサンプルホールドアンプ201は、時間経過に伴って電圧レベルが電荷漏れにより変化する性質があるため、ある時間内に電圧レベルの揺れがΔ1/2
N+1前後以内を保証できるといった一時的にデータを保存する用途に好適である。
【0208】
本実施形態に係る一時記憶バッファ装置は、例えばキャッシュレジスタを備える半導体メモリシステムに適用すると好適である。係る半導体メモリシステムは、リードクロック信号が出力開始となってからデータが出力されるまでの応答時間(レイテンシ)を良くするために次の通りの工夫がされている。具体的には、リードコマンドとアドレスの入力時に内部クロックを生成させて、上記アドレスで指定された所望のデータを記憶保持するセル部からキャッシュレジスタへ予め読み込んでおく。即ち、実際にリードクロック信号が出力開始となったときに、上記キャッシュレジスタから即座に上記所望のデータを出力できるように、一時的にデータをキャッシュレジスタ保存しておくものである。
【0209】
具体例として
図43に上記構成を採用した半導体メモリシステムの構成図を示し、
図44にデータのリード時の各信号のタイミングダイアグラムを示す。TW1によってリードコマンド信号が出力されるとき(こと)を示し、TW2によって読み出すべき所望のデータの保存アドレス(保存先アドレス)を指定入力されるとき(こと)を示す。このTW1とTW2とをトリガとして、制御回路がTW3により示すように内部クロックを生成して、
図43のメモリセル部からデータレジスタへデータを読み出し、更に、キャッシュレジスタへ転送しておく。つまり、TW1とTW2のときに、後に生じるリードクロック信号の出力開始のタイミングを受けて即座にデータを外部I/Oピンに出力させることを可能とするための処理が行われる。
【0210】
図43において、データの内部バス配線がTW3により指示されているD1,D2,D3,D4に対応し、
図44ではTW3により指示される連続した6ビット分のデータがそれぞれの内部バス配線へ出力されることを示している。即ち、バス配線は4本であり、各6ビットであるため、合計24ビット分のデータが
図43のキャッシュレジスタに一時記憶される例となっている。最終的には、
図43と
図44におけるTW4によって示されるリードクロック信号の出力開始を受けて、キャッシュレジスタから外部I/Oにデータが出力(データリード)される(
図44の”a”)。
【0211】
また、リードクロック信号が出力開始されると、同時に次に読み出すべきデータをデータレジスタからキャッシュレジスタに読み込む(
図44の”b”)。つまり、リードクロック信号の出力開始を受けて、キャッシュレジスタから外部I/Oにデータが出力されているタイミングでは同時に、外部I/Oに出力済みのキャッシュレジスタ部分は新しいデータに書き換えがなされている。このようにして
図43のシステムでは、緩衝記憶としてキャッシュレジスタが入力と出力を同時に行う処理に用いられる。
【0212】
上記のメモリシステムに本発明の実施形態の一次記憶バッファ装置を次のように適用することができる。即ち、
図43のキャッシュレジスタを、
図3に示したD/A変換部100とアナログメモリ部200とA/D変換部300により構成される一次記憶バッファ装置に置き換える。具体的には、
図43における内部バス配線D1,D2,D3,D4の各々に対応して
図3に示す装置がそれぞれ1基ずつ割り当てられる。つまり、合計4基の一次記憶バッファ装置がキャッシュレジスタ部に設置される。
【0213】
図44のTW3のように連続したビット列が6ビット分を反復型D/A変換部100(
図25)によりアナログ電圧に変換し、サンプルホールドアンプ201に、キャッシュレジスタへ記憶した6ビット分の情報をアナログ信号として保持させる。
図43と
図44のTW4により指示されるように、リードクロック信号を受けて、A/D変換部300(
図12)によりディジタルデータを外部I/Oに出力する。
【0214】
この場合において注意すべきポイントを指摘する。テント写像型D/A変換では最後にD/A変換を行ったビット値から、A/D変換部300より出力されるため、D/A変換時には、最終的に始めに出力すべきデータが最後に出力されるようにLIFO(Last in Fast out)にする。
図44の例では、内部バス配線D1では始めの6ビットは”010101”の順番でD/A変換し、A/D変換出力すると”101010”の順番で外部出力のIO<1>まで出力される。
【0215】
リードクロック信号が入力されると、A/D変換部300からデータを出力と同時に、データキャッシュから新しいデータがキャッシュレジスタに入力されてくるが、A/D変換出力と同時に新しい入力データをD/A変換にて計算する。
図44の例においては、6ビット分をアナログ電圧レベルに変換し、記憶保持部のサンプルホールドアンプ201に渡す。A/D変換の出力とD/A変換の入力処理を任意のビット量分の単位で並列処理することで、データが途切れることなく連続したビット列の緩衝記憶バッファとして使用することができる。
【0216】
以上の例で示したようにテント写像型A/D変換とD/A変換では、反復演算によりA/D変換とD/A変換を行うため、少ない記憶素子数で、連続したデータの緩衝記憶に好適である。また電圧レベルのみでなく磁力や抵抗などを利用したアナログ量に対して、本実施形態に係る一時記憶バッファ装置を適用することで記憶領域の面積、また消費電流を低減させることが期待できる。