(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
防水性テープ(11)のテープ側縁部にエレメント列(12)が設けられた左右一対のファスナーストリンガー(10)と、前記エレメント列(12)に沿って摺動するスライダー(20)と、前記エレメント列(12)の閉鎖方向側の端部に隣接して配されるスライダー止部材(30)とを少なくとも有する防水性スライドファスナー(1) にあって、
前記スライダー(20)は、上翼板(22)及び下翼板(23)と、前記上翼板(22)及び前記下翼板(23)を連結する案内柱(24)と、前記上翼板(22)及び前記下翼板(23)の左右側縁部に配されるフランジ部(25)とを有し、前記フランジ部(25)は、前記スライダー(20)の後口からスライダー摺動方向に沿って直線状に延びる直線部(26a) と、前記直線部(26a) の端部から外側に湾曲して延びる湾曲部(26b) とを有し、
前記スライダー止部材(30)は、左右の前記防水性テープ(11)間に跨って配され、前記スライダー(20)の前記上翼板(22)及び前記下翼板(23)間に挿入される挿入基部(34)と、前記挿入基部(34)から前記エレメント列(12)に向けて延出する左右の挿入脚部(35a,35b) と、前記挿入脚部(35a,35b) の先端部外側面に配され、前記フランジ部(25)に圧接する左右のフランジ圧接部(41)と、前記上翼板(22)及び前記下翼板(23)の内面に密接する翼板密接部(38)とを有する防水性スライドファスナー(1) において、
左右の前記フランジ圧接部(41)は、前記スライダー(20)の前記フランジ部(25)の前記湾曲部(26b) に対応して湾曲する圧接湾曲部(41b) と、前記圧接湾曲部(41b) の後口側端部から前記後口へ向けてスライダー摺動方向に沿って直線状に延びる圧接直線部(41a) とをそれぞれ有し、
前記スライダー(20)が閉鎖方向側の摺動限位置に保持された状態にて、前記止部材(30)における左右の前記挿入脚部(35a,35b) 同士が圧接し且つ前記翼板密接部(38)の左右先端部同士が圧接する中央圧接部分(46)と、前記止部材(30)の前記フランジ圧接部(41)が前記フランジ部(25)に圧接する左右の外側圧接部分(47,48) とが形成され、
前記中央圧接部分(46)と左右の前記外側圧接部分(47,48) とは、スライダー摺動方向において、前記フランジ部(25)の前記直線部(26a) と前記湾曲部(26b) との間の境界位置(27)よりも前記スライダー(20)の後口側に延出する後方圧接領域を有し、
前記スライダー(20)が閉鎖方向側の摺動限位置に保持された状態にて、前記スライダー(20)の前記案内柱(24)の後口側端部周面と、当該後口側端部周面の後方に配される前記挿入脚部(35a,35b)の内周面との間に移動許容間隙(45)が形成され、
前記中央圧接部分(46)及び左右の前記外側圧接部分(47,48) の各後方圧接領域のスライダー摺動方向における長さ寸法(L1,L2,L3)は、前記移動許容間隙(45)のスライダー摺動方向における最少長さ寸法(L4)よりも大きく設定されてなる
ことを特徴とする防水性スライドファスナー。
防水性テープ(11)のテープ側縁部にエレメント列(12)が設けられた左右一対のファスナーストリンガー(10)と、前記エレメント列(12)に沿って摺動するスライダー(20)と、前記エレメント列(12)の閉鎖方向側の端部に隣接して配されるスライダー止部材(30)とを少なくとも有する防水性スライドファスナー(1) にあって、
前記スライダー(20)は、上翼板(22)及び下翼板(23)と、前記上翼板(22)及び前記下翼板(23)を連結する案内柱(24)と、前記上翼板(22)及び前記下翼板(23)の左右側縁部に配されるフランジ部(25)とを有し、
前記スライダー止部材(30)は、左右の前記防水性テープ(11)間に跨って配され、前記スライダー(20)の前記上翼板(22)及び前記下翼板(23)間に挿入される挿入基部(34)と、前記挿入基部(34)から前記エレメント列(12)に向けて延出する左右の挿入脚部(35a,35b) と、前記挿入脚部(35a,35b) の先端部外側面に配され、前記フランジ部(25)に圧接する左右のフランジ圧接部(41)と、前記上翼板(22)及び前記下翼板(23)の内面に密接する翼板密接部(38)とを有する防水性スライドファスナー(1) において、
前記スライダー(20)が閉鎖方向側の摺動限位置に保持された状態にて、前記止部材(30)における左右の前記挿入脚部(35a,35b) 同士が圧接し且つ前記翼板密接部(38)の左右先端部同士が圧接する中央圧接部分(46)が形成され、
前記スライダー(20)が前記摺動限位置から移動して、前記スライダー(20)の前記案内柱(24)が前記スライダー止部材(30)の前記挿入基部(34)から離間し、且つ、前記翼板密接部(38)が前記スライダー(20)の前記上翼板(22)及び前記下翼板(23)と密接する位置に保持された状態においても、前記中央圧接部分(46)が維持されてなる、
ことを特徴とする防水性スライドファスナー。
前記フランジ部(25)は、前記スライダー(20)の後口からスライダー摺動方向に沿って直線状に延びる直線部(26a) と、前記直線部(26a) の端部から外側に湾曲して延びる湾曲部(26b) とを有し、
左右の前記フランジ圧接部(41)は、前記スライダー(20)の前記フランジ部(25)の前記湾曲部(26b) に対応して湾曲する圧接湾曲部(41b) と、前記圧接湾曲部(41b) の後口側端部から前記後口へ向けてスライダー摺動方向に沿って直線状に延びる圧接直線部(41a) とをそれぞれ有し、
前記スライダー(20)が前記摺動限位置に保持された状態にて、前記止部材(30)の前記フランジ圧接部(41)が前記フランジ部(25)に圧接する左右の外側圧接部分(47,48) が形成され、
前記中央圧接部分(46)と左右の前記外側圧接部分(47,48) とは、スライダー摺動方向において、前記フランジ部(25)の前記直線部(26a) と前記湾曲部(26b) との間の境界位置(27)よりも前記スライダー(20)の後口側に延出する後方圧接領域を有してなる、
請求項2記載の防水性スライドファスナー。
前記中央圧接部分(46)の前記後方圧接領域のスライダー摺動方向における長さ寸法(L1)と、左右の前記外側圧接部分(47,48) の少なくとも一方の前記後方圧接領域のスライダー摺動方向における長さ寸法(L2)とが、前記フランジ部(25)の前記直線部(26a) のスライダー摺動方向における長さ寸法(L5)よりも小さく設定されてなる請求項1又は3記載の防水性スライドファスナー。
前記スライダー(20)が閉鎖方向側の摺動限位置に保持された状態にて、前記スライダー(20)の前記案内柱(24)の後口側端部周面と、当該後口側端部周面の後方に配される前記挿入脚部(35a,35b)の内周面との間に移動許容間隙(45)が形成され、
前記中央圧接部分(46)及び左右の前記外側圧接部分(47,48) の各後方圧接領域のスライダー摺動方向における長さ寸法(L1,L2,L3)は、前記移動許容間隙(45)のスライダー摺動方向における最少長さ寸法(L4)よりも大きく設定されてなる、
請求項3記載の防水性スライドファスナー。
前記中央圧接部分(46)の前記後方圧接領域における前記長さ寸法(L1)と、左右の前記外側圧接部分(47,48) のうちの一方の前記後方圧接領域における前記長さ寸法(L2)とが、左右の前記外側圧接部分(47,48) のうちの他方の前記後方圧接領域における前記長さ寸法(L3)よりも小さく設定されてなる請求項4記載の防水性スライドファスナー。
前記中央圧接部分(46)の前記後方圧接領域における前記長さ寸法(L1)と前記フランジ部(25)の前記直線部(26a) の前記長さ寸法(L5)との差(D) 、及び、左右の前記外側圧接部分(47,48) のうちの一方の前記後方圧接領域における前記長さ寸法(L2)と前記フランジ部(25)の前記直線部(26a) の前記長さ寸法(L5)との差(D) が、前記エレメント列(12)のファスナーエレメント(13)のスライダー摺動方向における最大長さ寸法の1/3よりも大きく設定されてなる請求項4記載の防水性スライドファスナー。
前記翼板密接部(38)は、前記挿入基部(34)及び左右の前記挿入脚部(35a,35b) における内側縁部の表裏両面に連続して突設される突条部(38)により形成され、
前記突条部(38)は、左右の前記外側圧接部分(47,48) が前記フランジ部(25)に圧接する状態にて、テープ表裏方向に直交する断面を見たときに前記スライダー(20)の前記案内柱(24)を取り囲むとともに、前記突条部(38)の内側領域を密閉状態に保持してなる、
請求項1又は3記載の防水性スライドファスナー。
【背景技術】
【0002】
マリンスポーツ等を行う際には、防寒対策や怪我予防対策などのために防水性を備える防水スーツ(保護スーツ)が着用されることが多い。防水スーツとしては、スーツ内部に水を侵入させないタイプのドライスーツや、スーツ内部への水の侵入を許すタイプのウェットスーツなどが知られており、例えばドライスーツは、極寒水域や汚染水域といった過酷な環境で着用されることが多い。
【0003】
また、このような防水スーツには、防水スーツを着脱するとき等に開閉する開閉部又は開口部が設けられており、その開閉部又は開口部には、防水性を備えるスライドファスナー(以下、防水性スライドファスナーと称する)が取り付けられている。
【0004】
防水性スライドファスナーは、一般的に、エラストマーからなる防水層を備えた防水性テープにエレメント列が形成された左右一対のファスナーストリンガーと、エレメント列に沿って摺動可能なスライダーとを有する。このような防水性スライドファスナーでは、左右のエレメント列を噛合させて左右の防水性テープの対向側縁部同士を密接させることにより、左右の防水性テープ間を介して水がテープ表面側からテープ裏面側に(又は、テープ裏面側からテープ表面側に)浸入することを防いでいる。
【0005】
また、防水性スライドファスナーにおけるエレメント列の両端部には、スライダーの摺動を停止させるとともにスライダーの摺動範囲を規定するスライダー止部材(止具とも言う)や、蝶棒、箱棒及び箱体からなる開離嵌挿具が、エレメント列に隣接して配される。ここで、エレメント列の両端部に止部材が配される場合、左右のエレメント列を完全に閉鎖させるときにスライダーが当接するファスナー閉鎖方向側のスライダー止部材(止具)を、第1止部材(上止とも言う)とし、左右のエレメント列を完全に開くときにスライダーが当接するファスナー開離側のスライダー止部を、第2止部材(下止とも言う)とする。
【0006】
例えば特開2007−89898号公報(特許文献1)には、防水性スライドファスナーの閉鎖方向側に配される第1止部材が開示されている。
この特許文献1に記載されている第1止部材80は、
図8及び
図9に示すように、左右のエレメント列の一端部に隣接して、左右の防水性テープ71に跨って配されている。この第1止部材80は、防水性テープ71のテープ表面(第1テープ面)側とテープ裏面(第2テープ面)側に膨出して形成されている。
【0007】
特許文献1の第1止部材80は、第1止部材80の前端部に配され、テープ表裏方向の厚さ寸法がスライダー72の上下翼板間の間隔よりも大きな湾曲状のストッパー部81と、ストッパー部81からエレメント列側に向けて延出し、スライダー72の上下翼板間(エレメント案内路内)に挿入されるスライダー挿入部82とを有する。
【0008】
第1止部材80のスライダー挿入部82は、スライダー挿入部82を上方から見た正面視において逆U字状を呈するように形成されている。このスライダー挿入部82は、左右の防水性テープ71間に跨って配される挿入基部83と、挿入基部83からエレメント列に向けて延びる左右の挿入脚部84,85とを有する。
【0009】
また、スライダー挿入部82には、スライダー挿入部82がスライダー72の上下翼板間に挿入されたときに、挿入基部83と左右の挿入脚部84,85とによって囲まれるとともにスライダー72の案内柱73が収容される収容空間部88が形成される。
【0010】
左右の挿入脚部84,85の先端部(後端部)における外側縁部には、スライダー72の左右フランジ部74に圧接する圧接隆起部86がそれぞれ配されている。左右の各圧接隆起部86は、挿入脚部84,85の外側端縁よりも更に外側に膨出して形成され、且つ、挿入脚部84,85の上面及び下面よりも上下方向(テープ表裏方向)に膨出して形成される。
【0011】
スライダー挿入部82における挿入基部83の内側縁部と、左右の挿入脚部84,85の内側縁部とには、収容空間部88を取り囲むようにして上下方向に突出する突条部87が形成されている。この突条部87は、スライダー挿入部82の上面と下面とにそれぞれ突設されており、スライダー挿入部82がスライダー72内に挿入されたときに、スライダー72の上翼板の内面と下翼板の内面とにそれぞれ密接する。
【0012】
特許文献1の第1止部材80を有する防水性スライドファスナー70では、スライダー72を閉鎖方向に摺動させて左右のエレメント列を噛合させることによって、左右の防水性テープ71の対向側縁部同士を密接させることができる。それにより、左右の防水性テープ71間で水密性を確保し、水等の液体が左右の防水性テープ71間を介してテープ表面側からテープ裏面側に(又はその反対方向に)浸入することを防止できる。
【0013】
更に、スライダー72を閉鎖方向側の摺動限の位置まで摺動させて保持することにより、スライダー72の案内柱73が、第1止部材80の左右の挿入脚部84,85の先端部間を通過し、
図9に示したように第1止部材80の収容空間部88に収容される。それとともに、第1止部材80に配された上下の突条部87が、スライダー72の上翼板の内面と下翼板の内面とにそれぞれ密接する。
【0014】
またこのとき、第1止部材80の左右の圧接隆起部86の外側面が、スライダー72の左右フランジ部74に当接することにより、左右の挿入脚部84,85が内側に向けて押圧される。それによって、左右の挿入脚部84,85の先端部同士を圧接させるとともに突条部87の左右の先端部同士を圧接させる。その結果、突条部87の内側領域と外側領域とが突条部87によって遮断され、水等の液体が突条部87を越えて侵入することを防止できる。
【0015】
従って、上述のような第1止部材80を有する防水性スライドファスナー70では、スライダー72を閉鎖方向側の摺動限位置(前端位置)まで移動させて保持することにより、左右のエレメント列が配されている部分だけでなく、防水性スライドファスナー70の第1止部材80が配されているファスナー前端部においても、水の浸入を防止する水密性を確保できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
例えば上述した特許文献1の第1止部材80を備えた防水性スライドファスナー70の場合、スライダー72を第1止部材80に当接するまで摺動させて閉鎖方向側の摺動限位置で保持することによって、上述したように、スライダー72の案内柱73が収容される第1止部材80の収容空間部88を密閉して防水性(水密性)が発揮される。
【0018】
一方、このような防水性スライドファスナー70において、スライダー72を閉鎖側の摺動限位置まで摺動させる場合、スライダー72のエレメント案内路に第1止部材80の突条部87が挿入され、その挿入された突条部87がスライダー72の上翼板及び下翼板の内面に摺接する。このため、スライダー72の摺動抵抗が、スライダー72内に突条部87が挿入されてから大きくなり、摺動操作が重く感じることがある。その結果、スライダー72を閉鎖方向側の摺動限位置まで十分に摺動させずに、第1止部材80の途中で無意識に停止させてしまうことが考えられる。
【0019】
このようにスライダー72が第1止部材80の途中の位置で保持される場合、第1止部材80の左右の圧接隆起部86がスライダー72の左右のフランジ部74に十分に接触しないため、収容空間部88の密閉状態が形成されない。その結果、防水性スライドファスナー70が本来備える水密性を適切に発揮させることができなくなる。
【0020】
また、スライダー72が閉鎖側の摺動限位置に保持されて防水性スライドファスナー70の水密性が発揮されている状態にあっても、例えばスライダー72が何らかの弾みで予期せずに移動することにより、スライダー72の位置が摺動限位置からエレメント列側にずれてしまうことが考えられる。その結果、防水性スライドファスナー70の水密性を維持することができずに、防水スーツ内へ水の流入を許してしまうことも考えられる。
【0021】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、その具体的な目的は、スライダーが、止部材によって定められる所定の摺動限位置から少し内側にずれた位置に保持される場合でも水密性を適切に発揮することが可能に形成され、防水機能の信頼性を向上させた防水性スライドファスナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するために、本発明により提供される防水性スライドファスナーは、基本的な構成として、防水性テープのテープ側縁部にエレメント列が設けられた左右一対のファスナーストリンガーと、前記エレメント列に沿って摺動するスライダーと、前記エレメント列の閉鎖方向側の端部に隣接して配されるスライダー止部材とを少なくとも有する防水性スライドファスナーにあって、前記スライダーは、上翼板及び下翼板と、前記上翼板及び前記下翼板を連結する案内柱と、前記上翼板及び前記下翼板の左右側縁部に配されるフランジ部とを有し、前記フランジ部は、前記スライダーの後口からスライダー摺動方向に沿って直線状に延びる直線部と、前記直線部の端部から外側に湾曲して延びる湾曲部とを有し、前記スライダー止部材は、左右の前記防水性テープ間に跨って配され、前記スライダーの前記上翼板及び前記下翼板間に挿入される挿入基部と、前記挿入基部から前記エレメント列に向けて延出する左右の挿入脚部と、前記挿入脚部の先端部外側面に配され、前記フランジ部に圧接する左右のフランジ圧接部と、前記上翼板及び前記下翼板の内面に密接する翼板密接部とを有する防水性スライドファスナーにおいて、左右の前記フランジ圧接部は、前記スライダーの前記フランジ部の前記湾曲部に対応して湾曲する圧接湾曲部と、前記圧接湾曲部の後口側端部から前記後口へ向けてスライダー摺動方向に沿って直線状に延びる圧接直線部とをそれぞれ有し
、前記スライダーが閉鎖方向側の摺動限位置に保持された状態にて、前記止部材における左右の前記挿入脚部同士が圧接し且つ前記翼板密接部の左右先端部同士が圧接する中央圧接部分と、前記止部材の前記フランジ圧接部が前記フランジ部に圧接する左右の外側圧接部分とが形成され、前記中央圧接部分と左右の前記外側圧接部分とは、スライダー摺動方向において、前記フランジ部の前記直線部と前記湾曲部との間の境界位置よりも前記スライダーの後口側に延出する後方圧接領域を有し、前記スライダーが閉鎖方向側の摺動限位置に保持された状態にて、前記スライダーの前記案内柱の後口側端部周面と、当該後口側端部周面の後方に配される前記挿入脚部の内周面との間に移動許容間隙が形成され、前記中央圧接部分及び左右の前記外側圧接部分の各後方圧接領域のスライダー摺動方向における長さ寸法は、前記移動許容間隙のスライダー摺動方向における最少長さ寸法よりも大きく設定されてなることを最も主要な特徴とするものである。
【0024】
また、本発明により提供される別の防水性スライドファスナーは、基本的な構成として、防水性テープのテープ側縁部にエレメント列が設けられた左右一対のファスナーストリンガーと、前記エレメント列に沿って摺動するスライダーと、前記エレメント列の閉鎖方向側の端部に隣接して配されるスライダー止部材とを少なくとも有する防水性スライドファスナーにあって、前記スライダーは、上翼板及び下翼板と、前記上翼板及び前記下翼板を連結する案内柱と、前記上翼板及び前記下翼板の左右側縁部に配されるフランジ部とを有し、前記スライダー止部材は、左右の前記防水性テープ間に跨って配され、前記スライダーの前記上翼板及び前記下翼板間に挿入される挿入基部と、前記挿入基部から前記エレメント列に向けて延出する左右の挿入脚部と、前記挿入脚部の先端部外側面に配され、前記フランジ部に圧接する左右のフランジ圧接部と、前記上翼板及び前記下翼板の内面に密接する翼板密接部とを有する防水性スライドファスナーにおいて、前記スライダーが閉鎖方向側の摺動限位置に保持された状態にて、前記止部材における左右の前記挿入脚部同士が圧接し且つ前記翼板密接部の左右先端部同士が圧接する中央圧接部分が形成され、前記スライダーが前記摺動限位置から移動して、前記スライダーの前記案内柱が前記スライダー止部材の前記挿入基部から離間し、且つ、前記翼板密接部が前記スライダーの前記上翼板及び前記下翼板と密接する位置に保持された状態においても、前記中央圧接部分が維持されてなることを最も主要な特徴とするものである。
【0025】
このような本発明の防水性スライドファスナーにおいて、前記フランジ部は、前記スライダーの後口からスライダー摺動方向に沿って直線状に延びる直線部と、前記直線部の端部から外側に湾曲して延びる湾曲部とを有し、左右の前記フランジ圧接部は、前記スライダーの前記フランジ部の前記湾曲部に対応して湾曲する圧接湾曲部と、前記圧接湾曲部の後口側端部から前記後口へ向けてスライダー摺動方向に沿って直線状に延びる圧接直線部とをそれぞれ有し、前記スライダーが前記摺動限位置に保持された状態にて、前記止部材の前記フランジ圧接部が前記フランジ部に圧接する左右の外側圧接部分が形成され、前記中央圧接部分と左右の前記外側圧接部分とは、スライダー摺動方向において、前記フランジ部の前記直線部と前記湾曲部との間の境界位置よりも前記スライダーの後口側に延出する後方圧接領域を有することが好ましい。
【0026】
上述した本発明の防水性スライドファスナーにおいて、前記中央圧接部分の前記後方圧接領域のスライダー摺動方向における長さ寸法と、左右の前記外側圧接部分の少なくとも一方の前記後方圧接領域のスライダー摺動方向における長さ寸法とが、前記フランジ部の前記直線部のスライダー摺動方向における長さ寸法よりも小さく設定されることが好ましい。
【0027】
また、前記スライダーが閉鎖方向側の摺動限位置に保持された状態にて、前記スライダーの前記案内柱の後口側端部周面と、当該後口側端部周面の後方に配される前記挿入脚部の内周面との間に移動許容間隙が形成され、前記中央圧接部分及び左右の前記外側圧接部分の各後方圧接領域のスライダー摺動方向における長さ寸法は、前記移動許容間隙のスライダー摺動方向における最少長さ寸法よりも大きく設定されることが好ましい。
【0028】
更に、前記中央圧接部分の前記後方圧接領域における前記長さ寸法と、左右の前記外側圧接部分のうちの一方の前記後方圧接領域における前記長さ寸法とが、左右の前記外側圧接部分のうちの他方の前記後方圧接領域における前記長さ寸法よりも小さく設定されることが好ましい。
【0029】
更にまた、前記中央圧接部分の前記後方圧接領域における前記長さ寸法と前記フランジ部の前記直線部の前記長さ寸法との差、及び、左右の前記外側圧接部分のうちの一方の前記後方圧接領域における前記長さ寸法と前記フランジ部の前記直線部の前記長さ寸法との差が、前記エレメント列のファスナーエレメントのスライダー摺動方向における最大長さ寸法の1/3よりも大きく設定されることが好ましい。
【0030】
また、本発明の防水性スライドファスナーにおいて、前記翼板密接部は、前記挿入基部及び左右の前記挿入脚部における内側縁部の表裏両面に連続して突設される突条部により形成され、前記突条部は、左右の前記外側圧接部分が前記フランジ部に圧接する状態にて、テープ表裏方向に直交する断面を見たときに前記スライダーの前記案内柱を取り囲むとともに、前記突条部の内側領域を密閉状態に保持することが好ましい。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る防水性スライドファスナーは、少なくとも一方のテープ面に防水層を備える防水性テープのテープ側縁部にエレメント列が形成された左右一対のファスナーストリンガーと、スライダーと、エレメント列の閉鎖方向側端部に隣接して配されるスライダー止部材(第1止部材)とを少なくとも有する。また、スライダーのフランジ部は、スライダーの後口から境界位置までスライダーの摺動方向に沿って直線状に延びる直線部と、その境界位置から外側に湾曲して延びる湾曲部とを少なくとも備える。この場合、スライダーの摺動方向は、防水性テープのテープ長さ方向と同じ方向である。
【0032】
また、本発明の止部材は、左右の防水性テープ間に跨って配される挿入基部と、挿入基部からエレメント列に向けて延出する左右の挿入脚部と、各挿入脚部の先端外側縁部に配され、スライダーのフランジ部に圧接する左右のフランジ圧接部と、上翼板及び下翼板の内面に密接する翼板密接部とを有する。また、止部材における左右のフランジ圧接部は、スライダーのフランジ部の湾曲部に対応して湾曲する圧接湾曲部だけでなく、圧接湾曲部の後口側端部からスライダー摺動方向に沿って直線状に延びる圧接直線部をそれぞれ有する。
【0033】
このように止部材における左右のフランジ圧接部が、直線状に延びる圧接直線部をその後端部に有することにより、スライダーが閉鎖方向側の摺動限位置(以下、閉鎖側の摺動限位置と略記する)に保持される場合だけでなく、スライダーが閉鎖側の摺動限位置から少し内側に離れた所定の範囲内の位置(以下、摺動限近傍位置と称する)に保持される場合でも、止部材における左右のフランジ圧接部がスライダーのフランジ部の直線部に圧接して止部材の左右の挿入脚部を内側に向けて押圧する状態と、その押圧により左右の挿入脚部同士が圧接するとともに翼板密接部の左右先端部同士が圧接する状態とを安定して維持できる。
【0034】
本発明では、このようにスライダーが上述の摺動限近傍位置に保持されていても、止部材がスライダーの案内柱を収容する収容空間部を密閉する状態を確保できる。このため、防水性スライドファスナーの止部材が配される閉鎖方向側のファスナー端部において、水密性を適切に発揮させることができる。従って、本発明の防水性スライドファスナーでは、防水機能の信頼性を従来よりも向上させることができる。
【0035】
更に、本発明の防水性スライドファスナーは、スライダーが閉鎖側の摺動限位置や摺動限近傍位置に保持される場合に、左右のファスナーストリンガー間の密閉性と止部材の収容空間部の密閉性とに優れているため、液体の浸入を防止する水密性だけでなく、気体の侵入を防止する気密性を発揮させることも可能である。
【0036】
このような本発明の防水性スライドファスナーにおいて、スライダーが閉鎖側の摺動限位置に保持された状態において、止部材における左右の挿入脚部同士が圧接し且つ翼板密接部の左右先端部同士が圧接する中央圧接部分と、止部材のフランジ圧接部がフランジ部に圧接する左右の外側圧接部分とが形成される。また、これらの中央圧接部分と左右の外側圧接部分とは、スライダー摺動方向において、フランジ部の直線部と湾曲部との間の境界位置よりもスライダーの後口側に延出する後方圧接領域を有する。
【0037】
このような形態を有する本発明の防水性スライドファスナーであれば、スライダーが閉鎖側の摺動限位置から少し内側に離れた摺動限近傍位置に保持されていても、上述の中央接触部分と左右の外側接触部分とが後方圧接領域をそれぞれ有することにより、中央圧接部分と左右の外側圧接部分とが維持される。従って、収容空間部の密閉状態を摺動限近傍位置でも維持できるため、防水性スライドファスナーの良好な水密性や気密性を安定して発揮させることができる。
【0038】
一方、本発明に係る別の防水性スライドファスナーは、少なくとも一方のテープ面に防水層を備える防水性テープのテープ側縁部にエレメント列が形成された左右一対のファスナーストリンガーと、スライダーと、エレメント列の閉鎖方向側端部に隣接して配されるスライダー止部材(第1止部材)とを少なくとも有する。スライダー止部材は、左右の防水性テープ間に跨って配される挿入基部と、挿入基部からエレメント列に向けて延出する左右の挿入脚部と、各挿入脚部の先端外側縁部に配され、スライダーのフランジ部に圧接する左右のフランジ圧接部と、上翼板及び下翼板の内面に密接する翼板密接部とを有する。
【0039】
また、スライダーが閉鎖側の摺動限位置に保持された状態において、止部材における左右の挿入脚部同士が圧接し且つ翼板密接部の左右先端部同士が圧接する中央圧接部分が形成される。更に、スライダーが閉鎖側の摺動限位置から移動して、スライダーの案内柱が止部材の挿入基部から離間するとともに、止部材の翼板密接部がスライダーの上翼板及び下翼板と密接する位置に保持された状態においても、中央圧接部分が形成(維持)される。
【0040】
これにより、スライダーが閉鎖側の摺動限位置に保持される場合だけでなく、スライダーが閉鎖側の摺動限位置から少し内側に移動して、スライダーの案内柱が止部材の挿入基部から離間するとともに、止部材の翼板密接部がスライダーの上翼板及び下翼板と密接する上述の摺動限近傍位置に保持される場合でも、止部材がスライダーの案内柱を収容する収容空間部を密閉する状態が安定して維持されて、水密性及び気密性を適切に発揮させることができる。このため、本発明では、防水機能の信頼性を従来よりも向上させることができる。
【0041】
このような本発明の防水性スライドファスナーにおいて、スライダーのフランジ部は、スライダーの後口からスライダー摺動方向に沿って直線状に延びる直線部と、直線部の端部から外側に湾曲して延びる湾曲部とを有する。止部材の左右のフランジ圧接部は、スライダーのフランジ部の湾曲部に対応して湾曲する圧接湾曲部と、圧接湾曲部の後口側端部から後口へ向けてスライダー摺動方向に沿って直線状に延びる圧接直線部とをそれぞれ有する。また、スライダーが摺動限位置に保持された状態にて、止部材のフランジ圧接部がフランジ部に圧接する左右の外側圧接部分が形成される。更に、中央圧接部分と左右の外側圧接部分とは、スライダー摺動方向において、フランジ部の直線部と湾曲部との間の境界位置よりもスライダーの後口側に延出する後方圧接領域を有する。
【0042】
このような形態を有する本発明の防水性スライドファスナーであれば、上述の中央接触部分と左右の外側接触部分とが後方圧接領域を有するため、スライダーが閉鎖側の摺動限位置から少し内側に離れた摺動限近傍位置に保持されていても、中央圧接部分と左右の外側圧接部分とが維持される。従って、収容空間部の密閉状態を摺動限近傍位置でも維持できるため、防水性スライドファスナーの良好な水密性や気密性を安定して発揮させることができる。
【0043】
上述した形態を有する本発明の防水性スライドファスナーにおいて、中央圧接部分の後方圧接領域のスライダー摺動方向における長さ寸法と、左右の外側圧接部分の少なくとも一方の後方圧接領域のスライダー摺動方向における長さ寸法とが、フランジ部の直線部のスライダー摺動方向における長さ寸法よりも小さく設定される。これにより、スライダーが閉鎖側の摺動限位置に保持されている状態においては、スライダーのエレメント案内路内に、止部材だけでなく、その止部材に隣接して配されるファスナーエレメントの少なくとも一部を挿入して保持することができる。その結果、例えば防水性スライドファスナーが完全に閉鎖されている状態で、同防水性スライドファスナーにテープ幅方向の外側に向けて引っ張る横引き力が加えられたときに、エレメント案内路内に保持されるファスナーエレメントがスライダーのフランジ部に当接し、エレメント列の端部において左右の防水性テープが密接(圧接)している状態を維持できる。それにより、防水性スライドファスナーの水密性や気密性を適切に安定して発揮させることができる。
【0044】
また本発明において、スライダーが閉鎖方向側の摺動限位置に保持された状態において、スライダーの案内柱の後口側端部周面と、当該後口側端部周面の後方に配される挿入脚部の内周面との間に移動許容間隙が形成される。更に、中央圧接部分及び左右の外側圧接部分の各後方圧接領域のスライダー摺動方向における長さ寸法は、移動許容間隙のスライダー摺動方向における最少長さ寸法よりも大きく設定される。
【0045】
これにより、スライダーが閉鎖側の摺動限位置から移動して離れても、スライダーの案内柱における後口側先端部の周面が左右の挿入脚部と接触するまでは、止部材の外側圧接部分がスライダーのフランジ部に圧接しているとともに、左右の挿入脚部同士及び翼板密接部の左右先端部同士が圧接しているため、防水性スライドファスナーの水密性や気密性を適切に発揮させることができる。
【0046】
更に本発明では、中央圧接部分の後方圧接領域における長さ寸法と、左右の外側圧接部分のうちの一方の後方圧接領域における長さ寸法とが、左右の外側圧接部分のうちの他方の後方圧接領域における長さ寸法よりも小さく設定される。特に、中央圧接部分の後方圧接領域における長さ寸法とフランジ部の直線部の長さ寸法との差、及び、左右の外側圧接部分のうちの一方の後方圧接領域における長さ寸法とフランジ部の直線部の長さ寸法との差が、エレメント列のファスナーエレメントのスライダー摺動方向における最大長さ寸法の1/3よりも大きく、好ましくは1/2よりも大きく設定される。
【0047】
これにより、スライダーが閉鎖側の摺動限位置に保持されている状態において、止部材に隣接して配されるファスナーエレメントを、同ファスナーエレメントの最大長さ寸法の1/4よりも大きい範囲で、好ましくは1/3以上の範囲でスライダーのエレメント案内路内に挿入して保持することが可能である。このため、閉鎖状態の防水性スライドファスナーに横引き力が加えられても、左右の防水性テープが密接(圧接)している状態を安定して維持できる。
【0048】
また本発明において、翼板密接部は、挿入基部及び左右の挿入脚部における内側縁部の表裏両面に連続して突設される突条部により形成される。また、その突条部は、左右の外側圧接部分がフランジ部に圧接する状態において、テープ表裏方向に直交する断面を見たときにスライダーの案内柱を取り囲むとともに、突条部の内側領域を密閉状態に保持する。
【0049】
本発明の翼板密接部が突条部により形成されていることにより、翼板密接部の密接によるスライダーの摺動抵抗の増大を小さく抑える効果が得られる。更に、スライダーが摺動限位置に保持されている状態だけでなく、摺動限近傍位置に保持されて左右の外側圧接部分がフランジ部に圧接している状態であっても、スライダーの案内柱を収容する収容空間部が突条部によって密閉されるため、防水性スライドファスナーの水密性や気密性を適切に発揮させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下で説明する実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明と実質的に同一な構成を有し、かつ、同様な作用効果を奏しさえすれば、多様な変更が可能である。
【0052】
例えば以下の実施形態では、エレメント列の両端部に隣接して第1止部材及び第2止部材が配されている防水性スライドファスナーについて説明するが、本発明は、エレメント列の開離方向側の端部に隣接して、第2止部材の代わりに開離嵌挿具が設けられている防水性スライドファスナーを含む。また、本発明において、ファスナーエレメントは合成樹脂を射出成形することにより形成されていれば良く、ファスナーエレメントの形状や寸法などは任意に変更することが可能である。
【0053】
ここで、
図1は、本実施形態に係る防水性スライドファスナーを示す平面図である。
図2は、本実施形態の防水性スライドファスナーにおいてスライダーが閉鎖側の摺動限位置に保持されている状態を示す断面図であり、
図3及び
図4は、
図2の一部を拡大して示す部分拡大断面図である。
図5は、
図2に示したV−V線における断面図である。なお、
図2の断面図は、
図5に示したII−II線における断面を示している。
【0054】
また、以下の説明において、前後方向とは、防水性テープのテープ長さ方向を指し、スライダーが摺動する摺動方向と同じ直線的な方向を言う。特に、左右のエレメント列を噛合させるようにスライダーを摺動させる閉鎖方向を前方とし、エレメント列の噛合を解除させるようにスライダーを摺動させる開離方向を後方とする。
【0055】
左右方向とは、防水性テープのテープ幅方向を指し、防水性テープのテープ面に平行で、且つ、テープ長さ方向に直交する方向である。特に、
図1に示すような防水性スライドファスナーの平面図における左方向及び右方向を、それぞれ左方及び右方とする。上下方向とは、防水性テープのテープ表裏面に直交するテープ表裏方向を指し、特に、前後方向及び左右方向に直交し、且つ、防水性テープに対してスライダーの引手が配される側の方向を上方とし、その反対側の方向を下方とする。
【0056】
本実施形態に係る防水性スライドファスナー1は、
図1に示すように、防水スーツなどのファスナー被着製品5の開口部5a(又は開閉部)に取り付けられて用いられる。
図1に示した防水性スライドファスナー1を閉鎖することにより、防水性スライドファスナー1の防水性が発揮されて、防水性スライドファスナー1を介してファスナー被着製品5の内部に水などの液体や空気が侵入することが防止される。
【0057】
本実施形態の防水性スライドファスナー1は、防水性テープ11の対向するテープ側縁部にエレメント列12が形成された左右一対のファスナーストリンガー10と、左右のエレメント列12に沿って摺動可能なスライダー20と、エレメント列12の閉鎖方向側の端部となる前端部に隣接して配される第1止部材30(第1スライダー止部材又は上止具とも言う)と、エレメント列12の開離方向側の端部となる後端部に隣接して配される第2止部材50(第2スライダー止部材又は下止具とも言う)とを有する。
【0058】
本実施形態の各ファスナーストリンガー10は、防水性テープ11と、防水性テープ11のテープ側縁部に射出成形された複数の合成樹脂製のファスナーエレメント13とを有する。左右の各エレメント列12は、防水性テープ11のテープ側縁部に、テープ長さ方向に沿って列設された複数のファスナーエレメント13によって形成されている。
【0059】
防水性テープ11は、帯状に織成又は編成されたテープ(ファスナーテープ)のテープ表面(第1テープ面)とテープ裏面(第2テープ面)の両面に、熱可塑性エラストマーからなる防水層が設けられることによって形成されている。なお、本発明では、ファスナーテープの一方のテープ面(例えばテープ表面)のみに防水層を設けて防水性テープ11を形成することも可能である。
【0060】
ファスナーエレメント13は、ポリアセタール、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン、ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂を射出成形することにより、防水性テープ11の防水層に固着して形成されている。ファスナーエレメント13は、防水性テープ11におけるテープ表裏方向の中心位置を基準にして、表裏方向(上下方向)に対称的な形状を有する。
【0061】
ファスナーエレメント13は、長円形状の噛合頭部と、噛合頭部から連続して形成され、括れた形状を有する首部と、首部から連続して形成された胴部と、首部及び胴部から上下方向に延出する薄板状の肩部と、胴部のテープ内方側端部から分岐してテープ幅方向に延出する前後一対のヒレ部とを有する。
【0062】
この場合、ファスナーエレメント13のヒレ部は、スライダー20の後述する上フランジ部25aと下フランジ部25bとの間に挿入可能な厚さで形成されている。また、噛合頭部の頂端部(先端部)には、噛合相手側のファスナーエレメント13の肩部と防水性テープ11のテープ側縁を嵌入するための図示しない嵌入凹部が凹設されている。
【0063】
本実施形態のスライダー20は、合成樹脂又は金属により形成されている。また、本実施形態のスライダー20は、スライダー胴体21と、スライダー胴体21に回動可能に保持される図示しない引手とを有する。スライダー胴体21は、互い平行に配される上翼板22及び下翼板23と、上翼板22及び下翼板23を幅方向の中央部で連結する案内柱24と、上翼板22及び下翼板23の左右側縁部に配される左右のフランジ部25と、上翼板22の上面に配される引手取付部28とを有する。
【0064】
この場合、上翼板22と下翼板23とは、案内柱24の前端面の位置よりも更に前方に張り出して形成されている。これにより、後述するようにスライダー20を閉鎖側の摺動限位置まで摺動させたときに、第1止部材30の後述する挿入基部34を、スライダー20の案内柱24よりも前方領域で上翼板22と下翼板23との間に円滑に挿入することができる。
【0065】
また、スライダー胴体21のフランジ部25は、上翼板22の左右側縁部に垂設される左右の上フランジ部25aと、下翼板23の左右側縁部に立設される左右の下フランジ部25bとを備える。上フランジ部25aと下フランジ部25bとの間には、防水性テープ11を挿通させるテープ挿通間隙が形成されている。
【0066】
このスライダー胴体21には、案内柱24を間に挟むようにして左右の肩口が設けられている。また、スライダー胴体21の後端には後口が設けられている。更に、スライダー胴体21内には、上翼板22、下翼板23、及びフランジ部25に囲まれるようにして、左右の肩口と後口とを連通する略Y字形状のエレメント案内路が形成されている。
【0067】
本実施形態のスライダー20において、各フランジ部25(すなわち、左右の上フランジ部25aと左右の下フランジ部25b)は、
図2に示したように、スライダー20の後口からスライダー20の摺動方向に沿って直線状に延びる後方直線部26aと、後方直線部26aの前端から外側に湾曲して延びる湾曲部26bと、湾曲部26bの前端からスライダー20の摺動方向に対して傾斜した方向に直線状に延びる中間直線部26cと、中間直線部26cの前端から湾曲しながら延びる肩口側先端部26dとを有する。
【0068】
この場合、フランジ部25の後方直線部26aは、平行部とも呼ばれることもある。また、フランジ部25における後方直線部(平行部)26aと湾曲部26bとの境界部分をフランジ境界部とし、そのフランジ境界部のスライダー摺動方向における位置を境界位置27として
図2に一点鎖線で図示する。この境界位置27は、後方直線部26aに対して、湾曲部26b(特に、湾曲部26bの内側面)が外側に湾曲し始めた箇所と言い換えることができる。
【0069】
本実施形態の第2止部材50は、熱可塑性エラストマーを射出成形することにより、防水性テープ11のテープ表面とテープ裏面の両面に膨出して形成されている。この第2止部材50は、スライダー20の摺動範囲の開離方向側の摺動限位置(後端限位置)を定めるように、エレメント列12の後端部に隣接して配される。
【0070】
また、第2止部材50は、スライダー20を当接させて停止させる本体部51と、本体部51から下方に延出する延出部52とを有する。この場合、本体部51は、平面視にて台形状を呈する形態を有するとともに、ファスナーエレメント13よりもテープ表裏方向の厚さ寸法を大きくして形成される。延出部52は、一定のテープ幅方向の幅寸法を有して、テープ長さ方向に沿って配されている。また、延出部52は、テープ表裏方向の厚さ寸法とテープ幅方向の幅寸法とを本体部51よりも小さくして形成される。
【0071】
本実施形態の防水性スライドファスナー1において特徴的な形態を有する第1止部材30は、熱可塑性エラストマーを射出成形することにより、防水性テープ11のテープ表面とテープ裏面の両面に膨出して形成されている。この第1止部材30は、スライダー20の摺動範囲の閉鎖方向側の限界位置(前端限位置)を定めるように、エレメント列12の前端部に隣接して配される。
【0072】
本実施形態の第1止部材30は、左右の防水性テープ11に跨って配されるとともにスライダー20の上翼板22及び下翼板23間の間隔よりも大きな厚さ寸法を有する厚肉連結部31と、厚肉連結部31から下方に延出し、スライダー20の上翼板22及び下翼板23間(エレメント案内路内)に挿入されるスライダー挿入部33と、防水性テープ11のテープ裏面側で厚肉連結部31から前方に延出して配されるシール部32とを有する。ここで、厚さ寸法とは、防水性テープ11のテープ表裏方向における寸法のことを言う。
【0073】
この第1止部材30における厚肉連結部31は、スライダー20の上翼板22及び下翼板23の前端縁の形状に対応するように、平面視において前方へ向けて少し凸状に湾曲した形状を有する。なお、この厚肉連結部31は、
図5に示すように、スライダー20が閉鎖側の摺動限位置に保持されていても、そのスライダー20とは接触しないように設けられているが、本発明の厚肉連結部31は、スライダー20の上翼板22及び下翼板23を当接させてスライダー20を停止させるストッパー部として形成されていても良い。
【0074】
本実施形態の厚肉連結部31は、スライダー挿入部33(特に、後述する挿入基部34)よりも厚さ寸法を大きくして設けられており、厚肉連結部31とスライダー挿入部33との間には段差がテープ表面側とテープ裏面側とに形成されている。本実施形態のシール部32は、防水性テープ11のテープ裏面側において左右の防水性テープ11に跨って配されており、厚肉連結部31よりも前方の領域で、左右の防水性テープ11間から液体が漏れることを防止している。
【0075】
第1止部材30におけるスライダー挿入部33は、平面視にて逆U字状を呈する形状を有しており、後述する左右の挿入脚部35a,35bの後端部を開閉することが可能な弾性を備える。このスライダー挿入部33のテープ表裏方向における厚さ寸法は、スライダー20の上翼板22及び下翼板23間に挿入可能な大きさに設定されている。
【0076】
本実施形態のスライダー挿入部33は、厚肉連結部31に連結するとともに左右の防水性テープ11間に跨るようにテープ幅方向に延びて配される挿入基部34と、挿入基部34から分岐して左右のエレメント列12に向けてそれぞれ延びる左側の挿入脚部35a及び右側の挿入脚部35bと、挿入基部34及び左右の挿入脚部35a,35bにおける内側縁部の表裏両面に突設される密接突条部38とを有する。また、スライダー挿入部33には、スライダー20が閉鎖側の摺動限位置に保持された状態において挿入基部34と左右の挿入脚部35a,35bとに包囲される収容空間部39が形成され、この収容空間部39にはスライダー20の案内柱24が収容される。
【0077】
スライダー挿入部33における左右の挿入脚部35a,35bは、挿入基部34から相互に異なる長さで形成されている。例えば本実施形態の場合、左右のエレメント列12において最も前端に配されるファスナーエレメント13が左側の防水性テープ11に設けられているため、左側の挿入脚部35aが、右側の挿入脚部35bよりも短く形成されている。なお、本発明では、左側の挿入脚部35aを右側の挿入脚部35bよりも長く形成しても良いし、左右の挿入脚部35a,35bを同じ長さで形成しても良い。
【0078】
左右の各挿入脚部35a,35bは、一定の厚さを有する脚片本体部36a,36bと、挿入脚部35a,35bの先端部(後端部)の外側縁部に配され、スライダー20の上フランジ部25aと下フランジ部25bとに圧接する圧接隆起部37a,37bとをそれぞれ有する。ここで、挿入脚部35a,35bの先端部とは、エレメント列12側の端部(後端部)を言う。
【0079】
圧接隆起部37a,37bは、脚片本体部36a,36bよりも外側に膨らんで配されるとともに、脚片本体部36a,36bよりも大きな厚さ寸法を有する。また、圧接隆起部37a,37bの外側面は、スライダー20が閉鎖側の摺動限位置に保持されるときに圧接するフランジ圧接面(フランジ圧接部)41となる。この場合、スライダー20の上フランジ部25aと下フランジ部25bとが第1止部材30の圧接隆起部37a,37bに当接(圧接)してそれ以上に前方へ移動できない位置が、スライダー20の閉鎖方向側の摺動限位置となる。
【0080】
この場合、圧接隆起部37a,37bは、
図2〜
図4に示したように、スライダー20の上フランジ部25a及び下フランジ部25bの接触対象部分(すなわち、上フランジ部25a及び下フランジ部25bにおける後方直線部26a、湾曲部26b、及び中間直線部26c)の形状に対応する形状を有する。このため、左右の圧接隆起部37a,37bの外側面により形成されるフランジ圧接部41は、フランジ部25の後方直線部26aに圧接する第1圧接直線部41aと、フランジ部25の湾曲部26bに圧接する圧接湾曲部41bと、フランジ部25の中間直線部26cに圧接する第2圧接直線部41cとを有する。
【0081】
左右のフランジ圧接部41の第1圧接直線部41aは、圧接湾曲部41bの後端からスライダー20の摺動方向(テープ長さ方向)に沿って直線状に後方へ延びている。圧接湾曲部41bは、左右のフランジ圧接部41間の間隔を後方へ漸減させるように湾曲して形成される。第2圧接直線部41cは、圧接湾曲部41bの前端からスライダー20の摺動方向(テープ長さ方向)に対して斜めに傾斜した方向に沿って直線状に延びている。
【0082】
また、本実施形態の挿入脚部35a,35bは、スライダー20が閉鎖側の摺動限位置に保持されるときにスライダー20の上フランジ部25a及び下フランジ部25bに挿入脚部35a,35bの圧接隆起部37a,37bのみが接触しており、圧接隆起部37a,37b以外の挿入脚部35a,35bの部分は、上フランジ部25a及び下フランジ部25bに接触しない非接触部に形成されている。
【0083】
左右の挿入脚部35a,35bの先端部(後端部)は、左右の圧接隆起部37a,37bがスライダー20の上フランジ部25a及び下フランジ部25bに圧接して各挿入脚部35a,35bが内側に向けて押圧されることにより、左右の挿入脚部35a,35bが相互に圧接する内側圧接面(内側圧接部)43を有する。この場合、左右の挿入脚部35a,35bに配される内側圧接面43は、左右の防水性テープ11の対向するテープ側面と略同一面を形成する。
【0084】
更に、左右の挿入脚部35a,35bは、平面視において内側に向けて凸状に湾曲する内側湾曲面44をそれぞれ有しており、この内側湾曲面44は、上述の内側圧接面43から挿入基部34側に向けて連続して配されている。この内側湾曲面44が設けられていることにより、後述するように、スライダー20を閉鎖側の摺動限位置からエレメント列12の開離方向に向けて摺動させるときにスライダー20の摺動抵抗を軽減させることが期待できる。
【0085】
なお本実施形態では、左側の挿入脚部35aにおける第1圧接直線部41aの外側面から内側圧接面43までのテープ幅方向における幅寸法と、右側の挿入脚部35bにおける第1圧接直線部41aの外側面から内側圧接面43までのテープ幅方向における幅寸法との和(すなわち、左右の挿入脚部35a,35bの第1圧接直線部41aが配される部分の幅寸法の合計)が、スライダー20の後口側端部における左右のフランジ部25の後方直線部26a間の間隔よりも僅かに大きくなるように設定されている。これにより、スライダー20が閉鎖側の摺動限位置に移動したときに、同スライダー20の左右のフランジ部25と第1止部材30の左右の圧接隆起部37a,37bとを安定して圧接させることができ、且つ、左右の挿入脚部35a,35bを内側に向けて安定して押圧することができる。
【0086】
またこの場合において、スライダー20のフランジ部25における上述した後方直線部26aとは、フランジ部25において、左右のフランジ部25間の間隔(すなわち、左側のフランジ部25の内側面から右側のフランジ部25の内側面までのテープ幅方向における寸法)が、上述した「左右の挿入脚部35a,35bの第1圧接直線部41aが配される部分の幅寸法の合計」の大きさ以下となる領域の部分のことを言う。このため、フランジ部25の後方直線部26aの前端部には、僅かに外側に湾曲した部分を含むこともある。
【0087】
また本発明において、左右の挿入脚部35a,35bは、上述したようなスライダー20の上フランジ部25aと下フランジ部25bに圧接するフランジ圧接面(フランジ圧接部)41をそれぞれ備えていれば、各挿入脚部は上述のような圧接隆起部37a,37bを備えずに、挿入脚部の全体が一定の厚さを有して形成されていても良い。このように挿入脚部の全体が一定の厚さで形成される場合には、当該挿入脚部の先端部外側面が、スライダー20の上フランジ部25a及び下フランジ部25bに圧接するフランジ圧接面(フランジ圧接部)41となる。
【0088】
本実施形態のスライダー挿入部33における密接突条部38は、挿入基部34及び左右の挿入脚部35a,35bの内側縁部に連続して周設されている。また、この密接突条部38は、挿入基部34及び左右の挿入脚部35a,35bの表面及び裏面に、スライダー20の上翼板22及び下翼板23に圧接可能な所定の高さ寸法で突設されている。この場合、密接突条部38は、当該密接突条部38の先端部(後端部)を除いて、挿入基部34及び左右の挿入脚部35a,35bの内側縁から離れた位置に、当該内側縁に沿うようにして配されている。
【0089】
なお、本実施形態において、密接突条部38の大きさ(幅)は、任意に変更することが可能である。また本実施形態では、連続する1本の密接突条部38がスライダー挿入部33の表面と裏面にそれぞれ突設されているが、本発明では、スライダー挿入部33の表面及び裏面に、連続する複数本の密接突条部が並ぶようにそれぞれ突設されていても良い。更に本発明では、スライダー挿入部33に密接突条部を設けずに、挿入基部34と左右の挿入脚部35a,35bとが、それらの表面及び裏面をスライダー20の上翼板22及び下翼板23に全体的に密接させるような一定の高さ寸法(厚さ寸法)をもって形成されていても良い。この場合、挿入基部34及び左右の挿入脚部35a,35bの全体が、上翼板22及び下翼板23に密接する翼板密接部を形成する。
【0090】
また、密接突条部38の左右の先端部は、密接突条部38の高さ寸法を後方に向けて漸減させるように下り傾斜する傾斜面を有する。これにより、密接突条部38をスライダー20のエレメント案内路内に挿入するときに、密接突条部38の先端部がスライダー20の上翼板22及び下翼板23に引っ掛かることを抑制し、スライダー20の操作性を向上させることができる。
【0091】
更に、本実施形態の密接突条部38における左右の先端部(後端部)には、左右の挿入脚部35a,35bの内側圧接面43と同一平面を形成し、且つ、左右の圧接隆起部37a,37bがスライダー20の上フランジ部25a及び下フランジ部25bに圧接することによって相互に圧接する内側圧接面(内側圧接部)43が配されている。
【0092】
これにより、スライダー20が閉鎖側の摺動限位置まで移動して第1止部材30の左右の圧接隆起部37a,37bがスライダー20の上フランジ部25a及び下フランジ部25bに圧接したときに、密接突条部38の左右の先端部が左右の挿入脚部35a,35bの先端部とともに互いに圧接し、スライダー20の案内柱24を収容する収容空間部39を隙間が生じないように包囲することができる。その結果、収容空間部39を、水などの液体も空気も侵入しない密閉された状態にすることができる。
【0093】
このような本実施形態の防水性スライドファスナー1において、スライダー20を閉鎖方向に摺動させて、
図2に示すように、スライダー20の上フランジ部25a及び下フランジ部25bが第1止部材30の左右の圧接隆起部37a,37bに圧接する閉鎖側の摺動限位置でスライダー20を停止させる。
【0094】
この場合、第1止部材30のスライダー挿入部33がスライダー20のエレメント案内路内に挿入され、且つ、スライダー挿入部33の密接突条部38の頂端面(上端面及び下端面)がスライダー20の上翼板22の内面及び下翼板23の内面に密接する。それとともに、スライダー20の案内柱24の前端面が第1止部材30の挿入基部34の内側縁(内側縁面)に当接する。またこのとき、スライダー20の案内柱24における後口側に向いた後端部周面が、その後方に配される挿入脚部35a,35bの後端部(特に、後端部の上述した内側湾曲面44)から離間して、両者の間には、スライダー20の案内柱24が移動可能な移動許容間隙45が形成される。
【0095】
更に、スライダー20が上述の摺動限位置で保持される場合、
図2〜
図4に示すように、第1止部材30の左右の圧接隆起部37a,37bとスライダー20の上フランジ部25a及び下フランジ部25bとが圧接している部分となる左右の外側圧接部分47,48が形成される。それとともに、左右の外側圧接部分47,48の間には、左右の挿入脚部35a,35bの内側圧接面43が互いに圧接しているとともに密接突条部38の左右先端部が互いに圧接している部分となる中央圧接部分46が形成される。
【0096】
このとき、上述した中央圧接部分46と左右の外側圧接部分47,48とは、
図2に示した上フランジ部25a及び下フランジ部25bにおける上述の境界位置27よりもスライダー20の後口側に直線状に延びる後方圧接領域を有する。特にこの場合、中央圧接部分46の後方圧接領域のスライダー摺動方向における長さ寸法L1と、左右の外側圧接部分47,48の後方圧接領域のスライダー摺動方向における長さ寸法L2,L3とは、スライダー20の案内柱24と挿入脚部35a,35bの後端部との間に形成される移動許容間隙45のスライダー摺動方向における最少長さ寸法L4よりも大きく設定されている。
【0097】
これにより、例えば
図6を参照しながら後述するように、スライダー20を閉鎖側の摺動限位置からエレメント列12の開離方向に向けて摺動させても、同スライダー20の案内柱24が左右の挿入脚部35a,35bに接触するまでは、左右の圧接隆起部37a,37bがスライダー20の上フランジ部25a及び下フランジ部25bに圧接して、左右の外側圧接部分47,48が形成される状態が維持される。それとともに、左右の挿入脚部35a,35bの先端部同士及び密接突条部38の左右先端部同士が圧接して、中央圧接部分46が形成される状態が維持される。このため、収容空間部39の密閉状態を安定して保持できる。この状態で、スライダー20の案内柱24の前端面と挿入基部34との間に形成される隙間のスライダー摺動方向における大きさは、1.0mm〜2.0mmである。この場合、案内柱24と挿入基部34との間の隙間の大きさは、実際に計測することに替えて、スライダー20を上述の摺動限位置から後方(エレメント列12の開離方向)に向けて移動させる距離で置き換えても良い。
【0098】
更に、左右の外側圧接部分47,48は、
図2に示した上フランジ部25a及び下フランジ部25bにおける上述の境界位置27よりもスライダー20の肩口側に延びる前方圧接領域を有する。この前方圧接領域は、左右の挿入脚部35a、35bの内側面が互いに接触した状態で、左の挿入脚部35aの外側面で左のフランジ部25に接触する箇所から右の挿入脚部35bの外側面で右のフランジ部25に接触する箇所までのテープ幅方向における寸法が、左右のフランジ部25の湾曲部26bにおける対応する部分間のテープ幅方向における寸法以上の大きさとなる部分である。
【0099】
この場合、上述した前方圧接領域のスライダー摺動方向における長さ寸法L7に、左側の外側圧接部分47の後方圧接領域のスライダー摺動方向における長さ寸法L2を加算した合計の寸法は、移動許容間隙45のスライダー摺動方向における最少長さ寸法L4よりも大きい。これにより、スライダー20がエレメント列12の開離方向に向けて所定の範囲内で移動しても、収容空間部39の密閉状態を保持して水密性を維持することが可能となる。特にこの場合、左側の外側圧接部分47の後方圧接領域における長さ寸法L2自体が、移動許容間隙45の最少長さ寸法L4よりも大きいことがより好ましい。本実施形態において、前方圧接領域の長さ寸法L7は、2.5mm以上5.0mm以下に設定される。
【0100】
更に本実施形態において、左右の挿入脚部35a,35b同士が圧接し且つ密接突条部38の左右先端部同士が圧接する中央圧接部分46も、境界位置27よりもスライダー20の肩口側に延びる前方圧接領域を有する。この場合、中央圧接部分46の前方圧接領域のスライダー摺動方向における長さ寸法は、左右の外側圧接部分47,48の前方圧接領域の長さ寸法L7以下の大きさとなる。
【0101】
また本実施形態の第1止部材30では、
図2に示したように、スライダー20が閉鎖側の摺動限位置で保持されている状態のときに、中央圧接部分46の後方圧接領域における長さ寸法L1と、左側の外側圧接部分47の後方圧接領域における長さ寸法L2とが、右側の外側圧接部分48の後方圧接領域における長さ寸法L3よりも小さく設定されているとともに、フランジ部25の後方直線部26aのスライダー摺動方向における長さ寸法L5よりも小さく設定されている。
【0102】
特にこの場合、中央圧接部分46及び左側の外側圧接部分47における後方圧接領域の長さ寸法L1,L2と、フランジ部25の後方直線部26aの長さ寸法L5との差Dは、ファスナーエレメント13のスライダー摺動方向における最大長さ寸法の1/3よりも大きく、好ましくは1/2よりも大きく設定されている。
【0103】
以上のような本実施形態の防水性スライドファスナー1では、スライダー20を第1止部材30に向けて摺動させることにより、左右のエレメント列12が噛み合わせられ、それによって、左右の防水性テープ11を相互に密接させることができる。
【0104】
更に、スライダー20を閉鎖側の摺動限位置まで摺動させて保持することにより、
図2に示したように、第1止部材30のスライダー挿入部33がスライダー20のエレメント案内路内に挿入されるとともに、スライダー20の案内柱24が第1止部材30の左右の挿入脚部35a,35bの後端部間を通って収容空間部39内に収容される。またこのとき、第1止部材30の密接突条部38がスライダー20の上翼板22の内面及び下翼板23の内面に密接する。
【0105】
更に、スライダー20を閉鎖側の摺動限位置まで摺動したときに、スライダー20のフランジ部25(すなわち、上フランジ部25a及び下フランジ部25b)が第1止部材30の圧接隆起部37a,37bの外側面(フランジ圧接面41)に圧接して左右の外側圧接部分47,48が形成されるとともに、スライダー20の案内柱24の前端面が第1止部材30の挿入基部34の内側縁に当接する。
【0106】
また同時に、スライダー20のフランジ部25と第1止部材30の左右の圧接隆起部37a,37bとが圧接することにより、左右の挿入脚部35a,35bが内側に向けて押圧され、それによって、挿入脚部35a,35bの後端部同士が圧接し、且つ密接突条部38の左右後端部同士が圧接した中央圧接部分46が形成される。
【0107】
その結果、スライダー20の案内柱24を収容した収容空間部39と、密接突条部38よりも外側の領域とが、スライダー20の上翼板22及び下翼板23に密接する密接突条部38によって遮断され、収容空間部39は、水などの液体も空気も侵入しない密閉された状態となる。それによって、ファスナー被着製品5の開口部5aに取り付けられている本実施形態の防水性スライドファスナー1は、ファスナー被着製品5の内部に水などの液体や空気が侵入することを防止する水密性や気密性を適切に発揮できる。
【0108】
またこのとき、本実施形態の第1止部材30では、上述の中央圧接部分46と左右の外側圧接部分47,48とが、フランジ境界位置27よりも後方に延びる後方圧接領域をそれぞれ有しており、各後方圧接領域の長さ寸法L1,L2,L3は、上述した移動許容間隙45における最少長さ寸法L4よりも大きく設定されている。
【0109】
本実施形態の一例として、上記長さ寸法L1〜L4について具体的な寸法を示すと、中央圧接部分46における後方圧接領域の長さ寸法L1と、左側の外側圧接部分47における後方圧接領域の長さ寸法L2とは、同じ大きさの2.3mmに設定されている。右側の外側圧接部分48における後方圧接領域の長さ寸法L3は、3.7mmに設定されている。また、案内柱24と左右の挿入脚部35a,35bの後端部との間の移動許容間隙45における最少長さ寸法L4は、2.0mmに設定されている。なお本発明において、長さ寸法L1〜L4の具体的な大きさは限定されず、任意に変更することが可能である。例えば、上述の長さ寸法L1と長さ寸法L2とは、上述の長さ寸法L4よりも大きければ、互いに異なる大きさに設定されていても良い。
【0110】
上述のように長さ寸法L1〜L4が設定されていることにより、例えば閉鎖側の摺動限位置に保持されているスライダー20が何かの弾みで予期せずに摺動してスライダー20の案内柱24が第1止部材30の挿入基部34の内側縁から少し離れてしまった場合や、スライダー20を第1止部材30に向けて摺動させる際にスライダー20を摺動限位置まで十分に摺動させずに第1止部材30の途中で無意識に停止させてしまった場合でも、スライダー20が閉鎖側の摺動限位置から所定の範囲(本実施形態の場合は2mm)内の摺動限近傍位置に保持されていれば、
図6に示したように、中央圧接部分46の圧接状態と左右の外側圧接部分47,48の圧接状態とが維持される。
【0111】
言い換えると、スライダー20の案内柱24の前端面が第1止部材30の挿入基部34の内側縁から離間した離間距離が、スライダー20が摺動限位置にあるときの上述した移動許容間隙45の最少長さ寸法L4以下となる位置にスライダー20が保持されていれば、スライダー20の上フランジ部25a及び下フランジ部25bと第1止部材30の左右の圧接隆起部37a,37bとが互いに圧接して、左右の外側圧接部分47,48が形成される状態が維持される。また同時に、挿入脚部35a,35bの後端部同士が圧接しているとともに密接突条部38の左右後端部同士が圧接して、中央圧接部分46が形成される状態が維持される。
【0112】
その結果、防水性スライドファスナー1の水密性や気密性を安定して発揮させ続けることができる。従って、本実施形態の場合、スライダー20を閉鎖側の摺動限位置からエレメント列12の開離方向に向けて2mm以下の距離で摺動させても、水密性や気密性が安定して確保される。
【0113】
以上のような本実施形態の防水性スライドファスナー1は、ファスナー被着製品5の開口部5a(又は開閉部)に取り付けられた場合、スライダー20が閉鎖側の摺動限位置や、摺動限位置から2mm以内の摺動限近傍位置に保持されることにより、水密性や気密性を発揮させることができる。このため、防水性スライドファスナー1が備える防水機能の信頼性が高く、防水性スライドファスナー1を介してファスナー被着製品5の内部に水などの液体や空気が侵入することを、従来よりも効果的に防止できる。このような本実施形態の防水性スライドファスナー1は、例えばスーツ内部に水を侵入させないドライスーツなどに対してより好適に用いられる。
【0114】
また、本実施形態の防水性スライドファスナー1では、
図2に示したようにスライダー20が閉鎖側の摺動限位置に保持されている状態において、中央圧接部分46及び左右の外側圧接部分47,48における各後方圧接領域の長さ寸法L1,L2,L3が、スライダー20の上翼板22及び下翼板23の前端縁と第1止部材30における密接突条部38の内壁面との間のスライダー摺動方向における最少長さ寸法L6以下の大きさに設定されている。
【0115】
例えば閉鎖側の摺動限位置に保持されているスライダー20が、上述した最少長さ寸法L6に相当する距離を越えて摺動した場合、密接突条部38の一部が上翼板22の内面及び下翼板23の内面に密接しなくなり、収容空間部39の密閉状態が解除される。本実施形態の第1止部材30では、密接突条部38の一部が上翼板22の内面及び下翼板23の内面が密接しなくなって密閉状態が解除された状態のときまで、中央圧接部分46の圧接状態と、左右の外側圧接部分47,48の圧接状態とを維持する必要はない。
【0116】
従って、スライダー20が閉鎖側の摺動限位置に保持されている状態において、中央圧接部分46及び左右の外側圧接部分47,48における各後方圧接領域の長さ寸法L1,L2,L3は、上述したように、上翼板22及び下翼板23の前端縁と密接突条部38の内壁面との間のスライダー摺動方向における最少長さ寸法L6以下の大きさに設定されている。
【0117】
更に本実施形態では、スライダー20が閉鎖側の摺動限位置に保持されている状態において、中央圧接部分46及び左側の外側圧接部分47における後方圧接領域の長さ寸法L1,L2と、フランジ部25の後方直線部26aの長さ寸法L5との差Dは、上述したように、ファスナーエレメント13のスライダー摺動方向における最大長さ寸法の1/3よりも大きく、好ましくは1/2よりも大きく設定されている。
【0118】
これにより、
図2に示したように、閉鎖側の摺動限位置に保持されているスライダー20のエレメント案内路内に、エレメント列12の最も前端に配されるファスナーエレメント13のスライダー摺動方向における1/4よりも大きい部分を、好ましくはファスナーエレメント13のスライダー摺動方向における1/3以上の部分を挿入して保持することが可能である。
【0119】
このように最も前端に配されるファスナーエレメント13の一部をスライダー20のエレメント案内路内に保持することにより、例えばスライダー20が閉鎖側の摺動限位置に保持されて防水性スライドファスナー1が完全に閉鎖されている状態において横引き力が加えられた場合でも、左右のエレメント列12と第1止部材30との間の部分において、左右の防水性テープ11間に隙間が形成されることを適切に防止し、防水性スライドファスナー1の水密性や気密性を安定して維持できる。
【0120】
更に、本実施形態の防水性スライドファスナー1では、
図6に示したようなスライダー20の案内柱24の後端部周面が左右の挿入脚部35a,35bに接触している状態から、
図7に示したように、スライダー20をエレメント列12の開離方向に向けて更に摺動させる場合、第1止部材30の左右の挿入脚部35a,35bが、スライダー20の案内柱24によって案内されながらスライダー20の肩口側に相対的に移動する。
【0121】
それによって、左右の挿入脚部35a,35bの後端部が相互に離れるとともに、密接突条部38の左右の後端部も相互に離れて、左右の挿入脚部35a,35bの後端部間に間隙が形成される。更にこの間隙は、スライダー20の摺動距離の増大によって、スライダー20の案内柱24が通過可能な大きさに次第に拡大する。このように左右の挿入脚部35a,35bの後端部間に間隙が形成されることにより、収容空間部39の密閉状態が解除されて水密性や気密性が発揮されない状態となる。
【0122】
このとき、左右の挿入脚部35a,35bは、上述したように内側圧接面43から挿入基部34側に向けて連続して配されるとともに平面視において凸状に湾曲する内側湾曲面44を有する。これにより、第1止部材30の左右の挿入脚部35a,35bがスライダー20の肩口側に相対的に移動する際に、左右の挿入脚部35a,35bにおける凸状の内側湾曲面44がスライダー20の案内柱24に摺接し、それによって、挿入脚部35a,35bが外向きに回転するように開きながらスライダー20の肩口側に移動するように挿入脚部35a,35bの動きを促すことが可能となる。その結果、左右の挿入脚部35a,35bをスライダー20の肩口側に移動させ易くし、スライダー20の摺動抵抗を軽減することが期待できる。