特許第6692652号(P6692652)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6692652
(24)【登録日】2020年4月17日
(45)【発行日】2020年5月13日
(54)【発明の名称】無線通信システム及び通信端末
(51)【国際特許分類】
   H04W 56/00 20090101AFI20200427BHJP
   H04Q 9/14 20060101ALI20200427BHJP
【FI】
   H04W56/00 130
   H04Q9/14 L
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-23856(P2016-23856)
(22)【出願日】2016年2月10日
(65)【公開番号】特開2017-143430(P2017-143430A)
(43)【公開日】2017年8月17日
【審査請求日】2018年12月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【弁理士】
【氏名又は名称】寺薗 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【弁理士】
【氏名又は名称】河部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】萩原 一成
【審査官】 久松 和之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−227688(JP,A)
【文献】 特開2011−223419(JP,A)
【文献】 特開2008−244756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 − 7/26
H04W 4/00 − 99/00
H04Q 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信により互いに接続される複数の通信端末を備え、
前記複数の通信端末は、親機と、該親機に接続されてネットワークを構成する複数の子機とを含んでおり、
前記親機は、前記複数の子機を前記親機と同期させる同期制御を実行するように構成され、
前記複数の子機には、前記親機が通信不能状態の場合に前記親機に代わって他の子機を同期させる代理の子機を含み、
前記代理の子機は、前記複数の子機のうちの、前記親機に他の子機を介さずに接続された子機であり、
前記親機は、通信不能状態から復帰したときには、前記代理の子機及び前記代理の子機と同期している子機を前記親機に同期させることを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
請求項に記載の無線通信システムにおいて、
前記親機は、通信不能状態から復帰したときに、前記親機と前記代理の子機及び前記代理の子機と同期している子機との時間のずれが所定の時間幅よりも大きい場合には、該時間のずれを該時間幅ずつ縮めるように前記代理の子機及び前記代理の子機と同期している子機の時刻を訂正していき、前記代理の子機及び前記代理の子機と同期している子機を前記親機に同期させることを特徴とする無線通信システム。
【請求項3】
請求項に記載の無線通信システムにおいて、
前記複数の子機のそれぞれには、他の通信端末と通信を行う所定の通信期間が設定されており、
前記時間幅は、前記通信期間よりも短いことを特徴とする無線通信システム。
【請求項4】
他の通信端末に無線通信により接続され、他の通信端末を同期させる親機として機能する通信端末であって、
通信不能状態から復帰した際に自己と他の通信端末との時間のずれが所定の時間幅よりも大きい場合には、該時間のずれを該時間幅ずつ縮めるように前記他の通信端末の時刻を訂正していき、該他の通信端末を同期させ
前記親機と他の通信端末とは、所定の通信期間において通信を行うように設定され、
前記時間幅は、前記通信期間よりも短いことを特徴とする通信端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、無線通信システム及び通信端末に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数の通信端末を備えた無線通信システムが知られている。複数の通信端末は、互いに無線通信を行い、ネットワークを構築する。このような無線通信システムにおいては、通信端末間で各種情報を送受信するために、通信端末間で同期を取る必要がある(特許文献1参照)。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の無線通信システムにおいては、親機となる通信端末から同期信号が送信され、この同期信号を他の通信端末が受け取ることによって通信端末間での同期が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−176888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述のような構成においては、停電により親機の電源がオフになる等の理由で親機が通信不能状態となった場合には、他の通信端末は、親機からの同期信号を受信できず、通信端末間での同期を取ることができない。通信端末が非同期状態になってしまうと、親機が通信不能状態から復帰した際に、初期設定時のように通信端末間の同期処理を最初からやり直す必要があり、手間がかかってしまう。
【0006】
ここに開示された技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、親機が通信不能状態から復帰した際に早期に通信端末間の同期を取ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示された無線通信システムは、無線通信により互いに接続される複数の通信端末を備え、前記複数の通信端末は、親機と、該親機に接続されてネットワークを構成する複数の子機とを含んでおり、前記親機は、前記複数の子機を前記親機と同期させる同期制御を実行するように構成され、前記複数の子機には、前記親機が通信不能状態の場合に前記親機に代わって他の子機を同期させる代理の子機を含み、前記親機は、通信不能状態から復帰したときには、前記代理の子機及び前記代理の子機と同期している子機を前記親機に同期させるものとする。
【0008】
また、ここに開示された通信端末は、他の通信端末に無線通信により接続される通信端末であって、他の通信端末のうちの親機の同期制御に従って該親機と同期するように構成され、前記親機が通信不能状態の場合には、接続されている他の通信端末と同期を行うものとする。
【0009】
また、ここに開示された通信端末は、他の通信端末に無線通信により接続され、他の通信端末を同期させる親機として機能する通信端末であって、通信不能状態から復帰した際に自己と他の通信端末との時間のずれが所定の時間幅よりも大きい場合には、該時間のずれを該時間幅ずつ縮めるように前記他の通信端末の時刻を訂正していき、該他の通信端末を同期させるものとする。
【発明の効果】
【0010】
ここに開示された無線通信システムによれば、親機が通信不能状態から復帰した際に早期に通信端末間の同期を取ることができる。
【0011】
ここに開示された通信端末によれば、親機が通信不能状態から復帰した際に早期に通信端末間の同期を取るこができる。
【0012】
ここに開示された親機としての通信端末によれば、親機が通信不能状態から復帰した際に早期に通信端末間の同期を取るこができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、無線通信システムの概略図である。
図2図2は、データステーションのブロック図である。
図3図3は、中継機のブロック図である。
図4図4は、センサのブロック図である。
図5図5は、通信スケジュールを示す図である。
図6図6は、直下の中継機の動作を示すフローチャートである。
図7図7は、通信不能状態から復帰した場合のデータステーションの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1は、無線通信システム100の概略図である。無線通信システム100は、データステーション10と、複数の中継機20と、複数のセンサ30とを有している。データステーション10、中継機20、センサ30は、通信端末であり、互いに無線通信を行い、自律的にネットワークを構築する。無線通信システム100においては、マルチホップ無線ネットワークが形成される。データステーション10は、親機として機能し、中継機20及びセンサ30は、子機として機能する。基本的には、データステーション10は、中継機20と通信を行い、センサ30は、中継機20と通信を行う。センサ30の個数は、中継機20に比べて多い。データステーション10及び中継機20は、データステーション10を頂点(最上位)とするツリー型のネットワークトポロジを有している。本明細書では、ネットワークにおいてデータステーション10側を上流側又は上位とし、ツリーの末端側を下流側又は下位とする。また、データステーション10、中継機20、センサ30を区別しない場合には、単に通信端末と称する場合がある。また、各中継機20を区別する場合には、符号「20」の後にアルファベットを付して区別する。
【0016】
無線通信システム100においては、センサ30が対象物の所定の物理量を検出し、その検出値、即ち、検出データが中継機20を介してデータステーション10に収集される。本開示における例では、無線通信システム100は、蒸気システムを有する工場内に設置されている。蒸気システムは、複数のスチームトラップT(図1では1つだけ図示)を有している。対象物は、スチームトラップTである。センサ30は、スチームトラップTの振動数及び温度を検出する。
【0017】
〈データステーションの構成〉
図2は、データステーション10のブロック図である。データステーション10は、無線通信システム100の通信経路の確立やセンサ30の検出値の収集及び管理を行う。また、データステーション10は、図示を省略するが、外部ネットワーク等を介して上位のサーバ90に接続される。データステーション10は、必要に応じて、センサ30の検出値をサーバ90に転送する。
【0018】
データステーション10は、CPU11と、メモリ12と、記憶部13と、無線通信回路14と、計時回路15と、上位インターフェース部16と、電源回路17とを有している。
【0019】
記憶部13には、各種プログラム及び各種情報が記憶されている。CPU11は、記憶部13から各種プログラムを読み込み、実行することにより、様々な処理を行う。例えば、記憶部13には、ネットワークの通信経路を形成するためのプログラム、センサ30の検出値を収集するためのプログラム、中継機20と通信を行うスケジュールを規定したスケジュール情報、及び、収集した検出値等が記憶されている。
【0020】
無線通信回路14は、中継機20等の他の通信端末と無線通信を行う。無線通信回路14は、CPU11の制御によって動作し、各種信号を符号化・変調等の処理により無線信号に変換し、アンテナを介して送信する。また、無線通信回路14は、アンテナを介して受信した信号を復調・複合化等の処理により適切な信号に変換する。
【0021】
計時回路15は、所定のクロックを発生し、データステーション10の基準時刻を計時する。上位インターフェース部16は、サーバ90との間のインターフェース処理を行う。電源回路17は、外部電源(図示省略)が接続されており、データステーション10の各要素に電力を供給する。
【0022】
〈中継機の構成〉
図3は、中継機20のブロック図である。中継機20は、データステーション10の指令に応じて、センサ30の検出値をデータステーション10へ送信する。
【0023】
中継機20は、CPU21と、メモリ22と、記憶部23と、無線通信回路24と、計時回路25と、電源回路26と、電池27とを有している。
【0024】
記憶部23には、各種プログラム及び各種情報が記憶されている。CPU21は、記憶部23から各種プログラムを読み込み、実行することにより、様々な処理を行う。例えば、記憶部23には、ネットワークの通信経路を形成するためのプログラム、センサ30の検出値をデータステーション10へ送信するためのプログラム、及び、センサ30から取得した検出値等が記憶されている。
【0025】
無線通信回路24は、他の通信端末と無線通信を行う。無線通信回路24は、CPU21の制御によって動作し、各種信号を符号化・変調等の処理により無線信号に変換し、アンテナを介して送信する。また、無線通信回路24は、アンテナを介して受信した信号を復調・複合化等の処理により適切な信号に変換する。
【0026】
計時回路25は、所定のクロックを発生し、中継機20の基準時刻を計時する。また、計時回路25は、上位の通信端末からの同期信号に基づいて、中継機20の基準時刻を訂正する同期処理を実行する。
【0027】
電源回路26には、電池27が接続されている。電源回路26は、中継機20の各要素に電力を供給する。
【0028】
中継機20は、他の通信端末との信号の送受信等の様々な処理を実行できるアクティブ状態と、信号の送受信等の処理が実行できないが、アクティブ状態に比べて消費電力が抑制されたスリープ状態とを切り替え可能に構成されている。具体的には、中継機20のアクティブ状態では、CPU21がアクティブ状態となっており、中継機20のスリープ状態では、CPU21がスリープ状態となっている。CPU21は、アクティブ状態からスリープ状態になるときには、アクティブ状態になるべき時刻を計時回路25に設定し、スリープ状態となる。スリープ状態においては、計時回路25は、計時を継続する。設定された時刻になると、計時回路25は、CPU21に時刻の到来を通知し、この通知を受けたCPU21は、スリープ状態からアクティブ状態となる。
【0029】
〈センサの構成〉
図4は、センサ30のブロック図である。センサ30は、スチームトラップTの振動数及び温度を検出し、その検出値を対応する中継機20に送信する。センサ30は、対象物の所定の物理量を検出するセンサ部40と、センサ部40の検出値を他の通信端末に送信する処理部50とを有している。
【0030】
センサ部40は、振動センサ及び温度センサを含んでおり、スチームトラップTの振動数及び温度を検出する。センサ部40は、スチームトラップTのケーシング(例えば、蒸気及びドレンが流入する流入部)に接触するように設置され、接触した部分の振動数及び温度を検出する。センサ部40は、検出した振動数及び温度に対応する電気信号を処理部50に出力する。
【0031】
処理部50は、CPU51と、メモリ52と、記憶部53と、無線通信回路54と、計時回路55と、センサインターフェース部56と、電源回路57と、電池58とを有している。
【0032】
記憶部53には、各種プログラム及び各種情報が記憶されている。CPU51は、記憶部53から各種プログラムを読み込み、実行することにより、様々な処理を行う。例えば、記憶部53には、ネットワークの通信経路を形成するためのプログラム、センサ部40から振動数及び温度を取得し、検出値として中継機20に送信するためのプログラム、及び、検出値等が記憶されている。
【0033】
無線通信回路54は、他の通信端末と無線通信を行う。無線通信回路54は、CPU51の制御によって動作し、各種信号を符号化・変調等の処理により無線信号に変換し、アンテナを介して送信する。また、無線通信回路54は、アンテナを介して受信した信号を復調・複合化等の処理により適切な信号に変換する。
【0034】
計時回路55は、所定のクロックを発生し、センサ30の基準時刻を計時する。また、計時回路55は、接続される中継機20からの同期信号に基づいて、センサ30の基準時刻を訂正する同期処理を実行する。
【0035】
センサインターフェース部56は、センサ部40との間のインターフェース処理を行う。電源回路57には、電池58が接続されている。電源回路57は、センサ30の各要素に電力を供給する。
【0036】
センサ30は、中継機20と同様に、他の通信端末との信号の送受信等の様々な処理を実行できるアクティブ状態と、信号の送受信等の処理が実行できないが、アクティブ状態に比べて消費電力が抑制されたスリープ状態とを切り替え可能に構成されている。
【0037】
〈通信スケジュール〉
このように構成された無線通信システム100は、通常の運転動作として、センサ30の検出値をデータステーション10に収集する収集処理を行う。データステーション10は、図5に示す通信スケジュールに従って各中継機20と通信を行い、各中継機20に対応する、即ち、接続されているセンサ30の検出値を収集する。
【0038】
図5の通信スケジュールは、収集処理の1サイクルを示しており、図5の通信スケジュールが繰り返し実行される。通信スケジュールは、複数のタイムスロットに分割されている。各中継機20には、特定のタイムスロットが割り当てられている。各中継機20は、対応するタイムスロットにおいてデータステーション10と通信を行い、該中継機20に接続されたセンサ30からの検出値をデータステーション10に送信する(以下、この処理を「返信処理」ともいう)。基本的には、各中継機20は、割り当てられた特定のタイムスロット(以下、「特定スロット」とも称する)においてアクティブ状態となり、特定スロット以外のときはスリープ状態となる。ただし、他の中継機20とデータステーション10との通信経路上に存在する中継機20は、下位の中継機20がデータステーション10と通信する場合に中継処理を行う必要があるため、下位の中継機20に割り当てられたタイムスロット(以下、「中継スロット」とも称する)においてもアクティブ状態となって中継処理を実行する。また、センサ30は、接続されている中継機20の特定スロットにおいて該中継機20へ検出値を送信するので、該中継機20の特定スロットにおいてアクティブ状態となっている。センサ30は、中継機20へ検出値を送信する必要がないときには、基本的にはスリープ状態となっている。
【0039】
図5の通信スケジュールでは、タイムスロットがマトリックス状に規定されている。基本的には、ツリー構造の通信経路の階層に従ってタイムスロットが割り当てられている。詳しくは、列ごとにツリー構造の階層が割り当てられる。例えば、列L0には、データステーション10が割り当てられ、列L1には、第1階層(即ち、ホップ数が1)が割り当てられ、列L2には、第2階層(即ち、ホップ数が2)が割り当てられる。第3階層以降についても同様である。
【0040】
通常、各中継機20には、何れか1つのタイムスロットが割り当てられる。第1階層の中継機20a,20jには、列L1のタイムスロットが割り当てられる。第2階層の中継機20b,20c,20d,20kには、列L2のタイムスロットが割り当てられる。第3階層の中継機20e,20f,20gには、列L3のタイムスロットが割り当てられる。第4階層の中継機20h,20iには、列L4のタイムスロットが割り当てられる。一方、データステーション10は、中継機20に比べて処理内容が多いので、1つのタイムスロットではなく、複数のタイムスロット(図5では、列L0の全てのタイムスロット)がデータステーション10に割り当てられる。尚、列に含まれるタイムスロットの数と各階層に含まれる中継機20の数は異なる(通常、列に含まれるタイムスロットの数の方が多い)ので、列に含まれるタイムスロットには、中継機が割り当てられていないものも存在する。
【0041】
また、前述の如く、或る中継機20の特定スロットにおいては、該中継機20に接続されるセンサ30もアクティブ状態となるので、実質的に、各センサ30にも特定のタイムスロットが割り当てられていることになる。ただし、中継機20には複数のセンサ30が接続され得るので、そのような場合には、該中継機20の特定スロットには、複数のセンサ30が割り当てられていることになる。例えば、図5の例では、列L3、行N1のタイムスロットには中継機20eが割り当てられている。中継機20eには2つのセンサ30が接続されているので(図1参照)、列L3、行N1のタイムスロットには実質的に該2つのセンサ30が割り当てられていることになる。
【0042】
通信スケジュールでは、タイムスロットの処理は、列方向に進んでいく。例えば、或る列(例えば、列L1)において、行番号に関して昇順(即ち、行N1からNmの順)にタイムスロットの処理が進んでいき、当該行の最後の行番号(行Nm)のタイムスロットの処理が終了すると、次の列(例えば、列L2)の最初の行番号(行N1)のタイムスロットから同様の順序で処理が進められていく。
【0043】
タイムスロット内は、複数の期間に区切られている。例えば、タイムスロットには、中継機20が他の中継機20又はデータステーション10と通信を行う第1通信期間、及び、中継機20がセンサ30と通信を行う第2通信期間、中継機20が様々な処理を実行する処理期間とが少なくとも含まれている。第1通信期間において、中継機20は、データステーション10からの信号を受信したり、データステーション10又は他の中継機20へ信号を送信したりする。第2通信期間において、中継機20は、センサ30へ信号を送信したり、センサ30からの信号を受信したりする。処理期間において、中継機20は、自己の基準時刻の訂正等の処理を実行する。
【0044】
データステーション10は、ネットワークの通信経路を確立する際に、通信端末の接続関係を確定すると共に、タイムスロットの割り当てを行って通信スケジュールを完成させる。
【0045】
例えば、データステーション10は、どの通信端末同士が接続されるか、即ち、データステーション10、中継機20及びセンサ30の接続関係を確定させる。接続関係が確定されると、データステーション10は、各中継機20にタイムスロットを割り当て、通信スケジュールを完成させる。データステーション10は、通信スケジュール(即ち、中継機20へのタイムスロットの割り当て)を記憶部13に保存する。
【0046】
データステーション10は、タイムスロットの割り当てが完了すると、各中継機20に特定スロットのスロット番号を通知する。このとき、下位の中継機20の中継処理を行う必要がある中継機20には、それ自身の特定スロットのスロット番号に加えて、下位の中継機20の特定スロット、即ち、中継スロットのスロット番号も通知される。
【0047】
各中継機20は、接続されているセンサ30に該中継機20の特定スロットのスロット番号を通知する。中継機20は、特定スロット及び中継スロットのスロット番号を記憶部23に保存する。
【0048】
センサ30は、接続されている中継機20の特定スロットのスロット番号を記憶部53に保存する。
【0049】
〈システムの動作〉
−同期処理−
前述のようにデータステーション10、中継機20及びセンサ30が共通の通信スケジュールに基づいて処理を実行するために、データステーション10、中継機20及びセンサ30は、同期している。基本的には、データステーション10の同期制御に基づいて、中継機20及びセンサ30が同期処理を行うことによって、データステーション10、中継機20及びセンサ30が同期する。
【0050】
具体的には、データステーション10は、自己の基準時刻に基づく同期信号を作成する。データステーション10は、同期信号を通信スケジュールに従って各中継機20に送信する。より詳しくは、データステーション10は、各特定スロットにおける第1通信期間中に同期信号を送信する。対応する中継機20も特定スロットの第1通信期間中に同期信号を受信する。
【0051】
同期信号を受信した中継機20は、自己の基準時刻を同期信号に基づいてデータステーション10の基準時刻に訂正する、即ち、一致させる。また、中継機20は、自己の基準時刻に基づく同期信号を作成し、該同期信号をセンサ30に送信する。中継機20は、特定スロットにおける第2通信期間中に同期信号を送信する。センサ30も特定スロットの第2通信期間中に同期信号を受信する。同期信号を受信したセンサ30は、自己の基準時刻を同期信号に基づいて中継機20の基準時刻に訂正する、即ち、一致させる。中継機20の基準時刻は、データステーション10の基準時刻と一致しているので、結果として、センサ30の基準時刻は、データステーション10の基準時刻と一致することになる。
【0052】
全ての中継機20及びセンサ30の基準時刻が、データステーション10の基準時刻に統一されることによって、データステーション10、中継機20及びセンサ30の同期が完了する。
【0053】
−収集処理−
収集処理においては、データステーション10は、通信スケジュールに従って処理を進める。具体的には、データステーション10は、それ自身に割り当てられたタイムスロットにおいて、データステーション10に必要な処理を行う。続いて、データステーション10は、タイムスロットの順番で、タイムスロットに割り当てられた中継機20と順次、通信を行う。データステーション10は、センサ30の検出値の返信を要求するリクエスト信号を各特定スロットにおける第1通信期間中に送信する。このとき、データステーション10は、リクエスト信号と共に同期信号を送信する。
【0054】
一方、中継機20は、通信スケジュールに従って、特定スロットのタイミングでアクティブ状態となって、第1通信期間においてデータステーション10からのリクエスト信号を待機する。また、中継機20は、特定スロットの第2通信期間内に該中継機20に接続されているセンサ30から検出値を取得する。このとき、中継機20は、センサ30に検出値の返信を要求するリクエスト信号と共に同期信号を送信する。中継機20は、リクエスト信号を受信すると、センサ30からの検出値をリクエスト信号に対する応答としてデータステーション10へ返信する。また、中継機20は、中継スロットでもアクティブ状態となって、データステーション10と下位の中継機20との間の中継処理を行う。
【0055】
センサ30は、接続されている中継機20の特定スロットに応じてアクティブ状態となって、第2通信期間において検出値を該中継機20に送信する。一の中継機20に複数のセンサ30が接続されている場合には、一の中継機20の特定スロットの少なくとも開始時点において、該複数のセンサ30の全てがアクティブ状態となっている。複数のセンサ30は、順番に、中継機20からリクエスト信号を受け取り、検出値を中継機20へ送信する。複数のセンサ30は、中継機20への検出値の送信が完了した順にスリープ状態となる。
【0056】
このように、収集処理においては、データステーション10は、通信スケジュールに従って各特定スロットにおいて該特定スロットに対応するセンサ30の検出値を収集することによって、全てのセンサ30の検出値を収集する。尚、前述の同期処理は、収集処理と並行して行われている。
【0057】
−臨時同期処理−
このように構成された無線通信システム100においては、データステーション10が停電等によって電源がオフになって、通信不能状態となった場合には、データステーション10が同期制御を行うことができない。そのような場合には、中継機20のうちの代理中継機20が、データステーション10に代わって臨時的に同期制御を行う(以下、この同期制御を「臨時同期制御」という)。本開示では、代理中継機20は、データステーション10に他の中継機20を介さずに接続されている(即ち、データステーション10に1ホップで接続されている)中継機(以下、「直下の中継機」ともいう)20である。すなわち、図1の例では、中継機20a及び中継機20jが代理中継機20に相当する。代理中継機20は、代理の子機の一例である。
【0058】
詳しくは、代理中継機20は、収集処理における前述の動作(以下、「通常動作」と称する)を行う通常モードと、データステーション10の代わりに臨時同期制御を行う代理モードを有している。代理モードでは、代理中継機20は、代理中継機20よりも下位の中継機20及び下位のセンサ30と同期を行う。尚、単に「下位の中継機20」という場合には、代理中継機20の下位側に直接的に(1ホップで)又は間接的に(2ホップ以上で)接続された中継機20を意味する。同様に、単に「下位のセンサ30」という場合には、代理中継機20に接続されたセンサ30及び、下位の中継機20に接続されたセンサ30を意味する。
【0059】
データステーション10の通信不能状態においては、代理中継機20は、データステーション10からの同期信号を受信できないので、データステーション10と非同期状態となる。その結果、下位の中継機20及び下位のセンサ30も非同期状態となる。
【0060】
そこで、代理中継機20は、代理モードとなって、臨時同期制御を実行し、下位の中継機20及び下位のセンサ30を代理中継機20と同期させる。つまり、代理中継機20は、下位の中継機20及び下位のセンサ30の基準時刻を代理中継機20の基準時刻に一致させる。そして、データステーション10が通信不能状態から復帰した場合には、データステーション10の同期制御のもと、代理中継機20以下の中継機20及びセンサ30のそれぞれは、自己の基準時刻をデータステーション10の基準時刻に一致させることによって、データステーション10と同期する。
【0061】
以下に、代理中継機20及びデータステーション10の動作について詳細に説明する。図6は、代理中継機20の動作を示すフローチャートである。
【0062】
通常モードの代理中継機20は、特定スロットにおいてアクティブ状態となって、データステーション10が通信不能状態となっているか否かを判定する(ステップSa1)。詳しくは、代理中継機20は、特定スロットにおいてデータステーション10からの信号を受信できないことが所定回数(例えば、3回)続いた場合、即ち、通信スケジュールを所定回数繰り返してもデータステーション10からの信号を受信できない場合に、データステーション10が通信不能状態であると判定する。所定回数は、複数回に設定され得る。所定回数を複数回に設定することによって、通信環境の偶発的な悪化が原因で代理中継機20がデータステーション10からの信号を受信できない場合には、データステーション10の通信不能状態とは判定されない。つまり、停電等によってデータステーション10の電源がしばらくの間オフになった場合など、代理中継機20とデータステーション10とが通信できない状態がしばらく続いた場合に、通信不能状態と判定される。
【0063】
代理中継機20がデータステーション10からの信号を受信できた場合には、代理中継機20は、ステップSa2へ進み、収集処理における通常動作を行う。つまり、代理中継機20は、データステーション10からのリクエスト信号を受信すると、接続されているセンサ30の検出値をデータステーション10に送信する。さらに、代理中継機20は、中継スロットにおいてもアクティブ状態となり、データステーション10からの信号を下位の中継機20へ中継すると共に、下位の中継機20からの信号をデータステーション10へ中継する。
【0064】
また、通常モードの代理中継機20は、前述のデータステーション10による同期制御に従ってデータステーション10と同期する。つまり、代理中継機20は、データステーション10からリクエスト信号と共に送られてくる同期信号に基づいて、計時回路25が保持する基準時刻を訂正して、データステーション10と同期する。さらに、代理中継機20は、自己の基準時刻に基づいて同期信号を作成し、接続されているセンサ30に該同期信号を送信することによって、接続されているセンサ30を代理中継機20、ひいては、データステーション10に同期させる。
【0065】
このとき、下位の中継機20及び下位のセンサ30も、データステーション10による同期制御に従ってデータステーション10と同期する。
【0066】
代理中継機20は、このような通常動作を実行し、次回の特定スロットにおいてステップSa1からの処理を繰り返す。
【0067】
尚、代理中継機20がデータステーション10からの信号を受信できなくても、それが所定回数継続していない場合には、代理中継機20は、ステップSa2に進む。ただし、代理中継機20は、リクエスト信号及び同期信号を受信していないので、検出値のデータステーション10への返信やセンサ30の同期は行わず、次回の特定スロットにおいてステップSa1からの処理を繰り返す。
【0068】
一方、代理中継機20は、データステーション10が通信不能状態であると判定した場合には、通常モードから代理モードへ移行し、ステップSa3へ進む。ステップSa3において、代理中継機20は、現在のタイムスロットが特定スロットか中継スロットかを判定する。特定スロットの場合には、代理中継機20はステップSa4へ進む一方、中継スロットの場合には、代理中継機20はステップSa6へ進む。
【0069】
代理中継機20は、ステップSa4において、自己の基準時刻に基づいて同期信号を作成し、代理中継機20に接続されたセンサ30へ同期信号を送信する。
【0070】
さらに、代理中継機20は、ステップSa5において、データステーション10が通信不能状態から復帰したか否かを判定する。具体的には、代理中継機20は、特定スロットのうちの通信期間中にデータステーション10からの後述する探索信号を受信できたか否かを判定する。
【0071】
代理中継機20は、探索信号を受信できた場合にはデータステーション10が復帰したと判定し、ステップSa6において、探索信号に対する応答信号と共に自己の基準時刻をデータステーション10へ返信する。そして、代理中継機20は、臨時同期制御を終了し、通常モードへ移行する。
【0072】
代理中継機20は、探索信号を受信できない場合には、データステーション10がまだ復帰していないと判定し、スリープ状態となる。代理中継機20は、次の特定スロット又は中継スロットでアクティブ状態となり、ステップSa3からの処理を繰り返す。ステップSa1においてデータステーション10が通信不能状態であると判定したときの特定スロットにおいては、当然ながら、代理中継機20は、データステーション10がまだ復帰していないと判定してスリープ状態となり、次の中継スロットにおいてアクティブ状態となり、ステップSa3の処理を行う。
【0073】
一方、現在のタイムスロットが中継スロットの場合には、代理中継機20は、ステップSa7において、自己の基準時刻に基づいて同期信号を作成し、中継スロットの通信期間中に、該中継スロットに対応する下位の中継機20へ同期信号を送信する。この同期信号を受信した下位の中継機20は、同期信号に基づいて自己の基準時刻を訂正し、代理中継機20と同期する。
【0074】
また、該下位の中継機20は、自己の基準時刻に基づいて同期信号を作成し、該下位の中継機20に接続されたセンサ30に同期信号を送信する。この同期信号を受信したセンサ30は、同期信号に基づいて自己の基準時刻を訂正し、該下位の中継機20、ひいては、代理中継機20と同期する。
【0075】
代理中継機20は、同期信号の送信が完了すると、スリープ状態となる。代理中継機20は、次の特定スロット又は中継スロットでアクティブ状態となり、ステップSa3からの処理を繰り返す。
【0076】
このように、代理モードの代理中継機20は、図6の破線で囲まれた処理を繰り返すことによって、全ての下位の中継機20及び下位のセンサ30を代理中継機20と同期させる。そして、データステーション10が通信不能状態から復帰すると、代理中継機20は、代理モードから通常モードへ移行する。
【0077】
図7は、通信不能状態から復帰した場合のデータステーション10の動作を示すフローチャートである。
【0078】
データステーション10は、停電等の通信不能状態から復帰した場合には、中継機20及びセンサ30との同期状態を回復するための復帰モードとなっている。
【0079】
復帰モードのデータステーション10は、代理中継機20に対して応答信号を要求する探索信号を周期的に送信する。具体的には、データステーション10は、直下の中継機10の何れかを対象にした探索信号を送信し(ステップSb1)、応答信号を受信できたか否かを判定する(ステップSb2)。直下の中継機10は、特定スロットにおいてアクティブ状態となっており、このときに探索信号を受信すると、前述の如く応答信号をデータステーション10へ返信する。データステーション10は、応答信号を受信できるまで、この処理を所定の送信周期で繰り返す。送信周期は、特定スロットの第1通信期間よりも短い時間に設定されている。そのため、特定スロットの第1通信期間中に少なくとも1回、探索信号が送信されることになる。
【0080】
データステーション10は、応答信号を受信すると、ステップSb3において、応答信号と共に送られてくる代理中継機20の基準時刻と自己の基準時刻とを比較する。そして、データステーション10は、自己の基準時刻と代理中継機20の基準時刻との時間のずれ(即ち、基準時刻の時間差の絶対値)が所定の時間幅T以下か否かを判定する。ここで、時間幅Tは、タイムスロットにおける第1通信期間及び第2通信期間のうち短い方よりも短い時間である。
【0081】
時間のずれが時間幅T以下の場合には、データステーション10は、ステップSb4において、自己の基準時刻に基づく同期信号を作成し、通信スケジュールに従って各中継機20へリクエスト信号と共に同期信号を送信する。より詳しくは、データステーション10は、リクエスト信号及び同期信号の送信を代理中継機20の特定スロットから開始する。データステーション10は、リクエスト信号及び同期信号の送信を通信スケジュールの1サイクル行うことによって、代理中継機20以下の全ての中継機20にリクエスト信号及び同期信号を送信する。各中継機20は、リクエスト信号に応じてセンサ30の検出値を返信すると共に、同期信号に基づいて自己の基準時刻をデータステーション10の基準時刻に訂正する。また、各中継機20は、自己の基準時刻に基づいて同期信号を作成し、センサ30に同期信号を送信する。センサ30は、同期信号に基づいて自己の基準時刻を中継機20の基準時刻に訂正する。中継機20の基準時刻は、データステーション10の基準時刻と一致しているので、センサ30の基準時刻もデータステーション10の基準時刻と一致する。
【0082】
こうして、代理中継機20以下の中継機20及びセンサ30は、データステーション10と同期する。
【0083】
一方、ステップSb3における時間のずれが時間幅Tよりも大きい場合には、データステーション10は、ステップSb5において、代理中継機20の基準時刻を時間幅Tだけ自己の基準時刻に近づけた暫定的な基準時刻に基づく同期信号(この同期信号を「修正同期信号」という)を作成し、通信スケジュールに従って各中継機20へリクエスト信号と共に修正同期信号を送信する。詳しくは、データステーション10は、リクエスト信号及び修正同期信号の送信を代理中継機20の特定スロットから開始する。データステーション10は、リクエスト信号及び修正同期信号の送信を通信スケジュールの1サイクル行うことによって、代理中継機20以下の全ての中継機20にリクエスト信号及び修正同期信号を送信する。各中継機20は、リクエスト信号に応じてセンサ30の検出値を返信すると共に、修正同期信号に基づいて自己の基準時刻をデータステーション10の暫定的な基準時刻に訂正する。また、各中継機20は、自己の基準時刻に基づいて同期信号を作成し、センサ30に同期信号を送信する。センサ30は、同期信号に基づいて自己の基準時刻を中継機20の基準時刻に訂正する。中継機20の基準時刻は、データステーション10の暫定的な基準時刻と一致しているので、センサ30の基準時刻もデータステーション10の暫定的な基準時刻と一致する。
【0084】
こうして、代理中継機20以下の中継機20及びセンサ30の基準時刻は、データステーション10の暫定的な基準時刻と一致する。
【0085】
その後、データステーション10は、ステップSb3に戻り、自己の基準時刻と代理中継機20の基準時刻との時間のずれが時間幅T以下か否かを再び判定する。このときの、代理中継機20の基準時刻は、データステーション10の暫定的な基準時刻と一致している。時間のずれが時間幅Tよりも大きい場合には、データステーション10は、ステップSb5の処理を繰り返す(即ち、リクエスト信号及び修正同期信号の送信を通信スケジュールのもう1サイクル行う)一方、時間のずれが時間幅T以下の場合には、データステーション10は、ステップSb4の処理を実行し(即ち、リクエスト信号及び同期信号の送信を通信スケジュールの1サイクル行う)、代理中継機20以下の中継機20及びセンサ30をデータステーション10に同期させる。
【0086】
データステーション10は、代理中継機20以下の中継機20及びセンサ30の同期が完了すると、ステップSb6において、全ての代理中継機20に対して、中継機20及びセンサ30の同期が完了したか否かを判定する。完了していない場合には、データステーション10は、ステップSb1に戻り、対象とする代理中継機20を変更し、代理中継機20の探索から繰り返す。全ての代理中継機20に対して中継機20及びセンサ30の同期が完了した場合には、データステーション10は、復帰モードを終了して、通常モードに移行し、前述の収集処理を実行する。
【0087】
このように、データステーション10が通信不能状態となると、代理中継機20がデータステーション10の代わりに同期制御、即ち、臨時同期制御を行って、代理中継機20以下の中継機20及びセンサ30の間で同期が取られた状態を維持する。これにより、中継機20及びセンサ30が完全に非同期状態となることを防止することができる。尚、代理中継機20が複数存在する場合には、代理中継機20を最上位とする中継機20及びセンサ30のグループごとに同期が取られている。
【0088】
そして、データステーション10が通信不能状態から復帰した際には、代理中継機20以下の中継機20及びセンサ30をデータステーション10に同期させる。代理中継機20以下の中継機20及びセンサ30の間では同期が取れているので、該中継機20及びセンサ30の間では通信可能な状態となっており、該中継機20及びセンサ30の基準時刻をデータステーション10の基準時刻に容易に訂正することができる。つまり、中継機20及びセンサ30が非同期状態となっていると、中継機20及びセンサ30の間で通信を行えない場合もある。そのような場合には、中継機20及びセンサ30の間で通信可能な状態を構築することから始めなければならない。それに対し、代理中継機20以下の中継機20及びセンサ30の間で同期が取れた状態が維持されていれば、該中継機20及びセンサ30の基準時刻を訂正することだけで、該中継機20及びセンサ30をデータステーション10に同期させることができる。
【0089】
さらに、データステーション10の基準時刻と代理中継機20の基準時刻との時間のずれが大きい場合には、データステーション10は、代理中継機20以下の中継機20及びセンサ30の基準時刻を少しずつ(具体的には、時間幅Tずつ)データステーション10の基準時刻に近づけていく。これにより、データステーション10は、中継機20及びセンサ30との適切な通信を維持しながら、中継機20及びセンサ30をデータステーション10に同期させることができる。
【0090】
つまり、各中継機20は、他の中継機20やセンサ30と常時通信を行うのではなく、決められた期間だけ(詳しくは、タイムスロットの第1通信期間又は第2通信期間だけ)データステーション10と通信を行うので、中継機20の基準時刻をその期間を超えて変更してしまうと、該中継機20がそれよりも下位の中継機20と通信できなくなったり、該中継機20が該中継機20に接続されたセンサ30と通信できなくなったりする可能性がある。例えば、中継機20は、中継スロットの第1通信期間において中継処理を実行する。中継スロットは、下位の中継機20にとっての特定スロットであり、両者は通常一致する。上位の中継機20の基準時刻が大きく変更されると、上位の中継機20が認識している中継スロットと下位の中継機20が認識している特定スロットとが大きくずれてしまう。上位の中継機20の中継スロットの第1通信期間と下位の中継機20の特定スロットの第1通信期間とが少なくとも部分的に重複していないと、上位の中継機20と下位の中継機20とが通信できなくなってしまう。
【0091】
この状況は、中継機20とセンサ30との間でも起こり得る。センサ30は、接続される中継機20の特定スロットの第2通信期間において該中継機20と通信する。中継機20の基準時刻が大きく変更され、中継機20が認識している特定スロットの第2通信期間とセンサ30が認識している特定スロットの第2通信期間とが重複しないようになると、中継機20とセンサ30とが通信できなくなってしまう。
【0092】
それに対し、データステーション10は、中継機20及びセンサ30の基準時刻を最大でも時間幅Tしかずらさない。この時間幅Tは、タイムスロットの第1通信期間及び第2通信期間の何れよりも短く設定されている。そのため、上位の中継機20の中継スロットの第1通信期間と下位の中継機20の特定スロットの第1通信期間とが少なくとも部分的に重複した状態が維持されると共に、中継機20の特定スロットの第2通信期間とセンサ30の特定スロットの第2通信期間とが少なくとも部分的に重複した状態が維持される。その結果、データステーション10は、中継機20の間及び中継機20とセンサ30との間の通信を適切に維持しながら、中継機20及びセンサ30の基準時刻を訂正していくことができる。
【0093】
以上のように、無線通信システム100は、無線通信により互いに接続される複数の通信端末を備え、複数の通信端末は、データステーション10(親機)と、データステーション10に接続されてネットワークを構成する複数の中継機20及びセンサ30(子機)とを含んでおり、データステーション10は、中継機20及びセンサ30をデータステーション10と同期させる同期制御を実行するように構成され、複数の中継機20には、データステーション10が通信不能状態の場合にデータステーション10に代わって他の中継機20及びセンサ30を同期させる代理中継機20(代理の子機)を含み、データステーション10は、通信不能状態から復帰したときには、代理中継機20並びに代理中継機20と同期している中継機20及びセンサ30をデータステーション10に同期させる。
【0094】
この構成によれば、データステーション10が通信不能状態となった場合においても、代理中継機20が、代理中継機20以下の中継機20及びセンサ30の同期を維持する。そのため、データステーション10が通信不能状態から復帰した際には、代理中継機20以下の中継機20及びセンサ30の間で同期が取れているので通信を行うことができ且つそれぞれの基準時刻が統一されているので、代理中継機20以下の中継機20及びセンサ30をデータステーション10に早期に同期させることができる。
【0095】
具体的には、代理中継機20は、複数の中継機20のうちの、データステーション10に他の中継機20を介さずに接続された中継機20である。
【0096】
この構成によれば、代理中継機20は、データステーション10に直接的に接続されているので、データステーション10が通信不能状態になったことを容易且つ早期に知ることができる。
【0097】
また、データステーション10は、通信不能状態から復帰したときに、データステーション10と代理中継機20並びに代理中継機20と同期している中継機20及びセンサ30との時間のずれが所定の時間幅Tよりも大きい場合には、時間のずれを時間幅Tずつ縮めるように代理中継機20並びに代理中継機20と同期している中継機20及びセンサ30の基準時刻を訂正していき、代理中継機20並びに代理中継機20と同期している中継機20及びセンサ30をデータステーション10に同期させる。
【0098】
この構成によれば、データステーション10は、通信不能状態から復帰したときに、代理中継機20以下の中継機20及びセンサ30の基準時刻を少しずつ訂正していき、最終的にデータステーション10に同期させる。これにより、データステーション10は、中継機20同士の間、及び中継機20とセンサ30との間の通信を適切に維持しながら、代理中継機20以下の中継機20及びセンサ30をデータステーション10に同期させることができる。
【0099】
さらに、中継機20及びセンサ30のそれぞれには、他の通信端末と通信を行う第1通信期間及び第2通信期間(所定の通信期間)が設定されており、時間幅Tは、第1通信期間及び第2通信期間よりも短い。
【0100】
この構成によれば、データステーション10が代理中継機20以下の中継機20及びセンサ30の基準時刻を訂正する際に、基準時刻が第1通信期間及び第2通信期間よりも大きく変更されることが防止される。これにより、中継機20同士の間で両者の第1通信期間が少なくとも部分的に重複する状態が維持されるので、一方の中継機20の基準時刻が訂正されても中継機20同士の通信を行うことができる。同様に、中継機20とセンサ30との間で両者の第2通信期間が少なくとも部分的に重複する状態が維持されるので、中継機20及びセンサ30の一方の基準時刻が訂正されても中継機20とセンサ30との通信を行うことができる。
【0101】
また、中継機20は、データステーション10(他の通信端末のうちの親機)の同期制御に従ってデータステーション10と同期するように構成され、データステーション10が通信不能状態の場合には、接続されている中継機20及びセンサ30(他の通信端末)と同期を行う。
【0102】
この構成によれば、データステーション10が通信不能状態となっても、中継機20がそれよりも下位の中継機20及びセンサ30を同期させるので、該中継機20以下の中継機20及びセンサ30をデータステーション10と早期に同期できる状態に準備しておくことができる。
【0103】
さらに、データステーション10(他の通信端末に無線通信により接続され、他の通信端末を同期させる親機として機能する通信端末)は、通信不能状態から復帰した際に自己と中継機20及びセンサ30(他の通信端末)との時間のずれが所定の時間幅Tよりも大きい場合には、時間のずれを時間幅Tずつ縮めるように中継機20及びセンサ30の基準時刻を訂正していき、中継機20及びセンサ30を同期させる。
【0104】
この構成によれば、データステーション10は、通信不能状態から復帰したときに、中継機20及びセンサ30の基準時刻を少しずつ訂正していき、最終的にデータステーション10に同期させる。これにより、データステーション10は、中継機20同士の間、及び中継機20とセンサ30との間の通信を適切に維持しながら、中継機20及びセンサ30をデータステーション10に同期させることができる。
【0105】
《その他の実施形態》
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0106】
前記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0107】
例えば、無線通信システム100は、蒸気システム以外に適用してもよい。また、センサ30は、スチームトラップTの振動数及び温度を検出しているが、これ以外の物理量(例えば、電力等)を検出してもよい。
【0108】
また、無線通信システム100は、センサ30を含んでいなくてもよい。つまり、中継機20は、センサ30の検出値以外のデータをデータステーション10へ送信するものであってもよい。さらに、無線通信システム100は、データステーション10を含んでいなくてもよい。すなわち、無線通信システム100は、少なくとも複数の中継機20を含んでいればよい。
【0109】
データステーション10は、通信スケジュールに従って中継機20と通信を行い、中継機20にセンサ30の検出値を返信するように要求しているが、これに限られるものではない。例えば、データステーション10は、センサ30のそれぞれを最終送信先として通信を行い、センサ30に指令を直接送信する構成であってもよい。
【0110】
データステーション10と中継機20とは、通信スケジュールに従って通信を行わなくてもよい。
【0111】
また、通信スケジュールは、タイムスロットがマトリックス状に規定されていなくてもよい。中継機20へのタイムスロットの割り当ては、ネットワークの階層ごとでなくてもよい。また、1つの中継機20に1つの特定スロットが割り当てられているが、1つの中継機20に2以上の特定スロットが割り当てられていてもよい。また、通信スケジュールに含まれるタイムスロットは、共通の時間長、共通の仕様(内部に含まれる期間の仕様)を有していなくてもよい。タイムスロットごとに時間長や仕様が異なっていてもよい。
【0112】
タイムスロットの仕様は、任意に設定することができる。タイムスロットには、第1通信期間、第2通信期間、処理期間以外の期間を含んでいてもよい。また、タイムスロット内における第1通信期間、第2通信期間、処理期間の順番は任意に設定することができる。
【0113】
データステーション10の通信不能状態は、停電等を原因とするものに限られない。データステーション10が同期信号をしばらくの間、送信できない状態であれば、理由を問わず、通信不能状態に相当する。
【0114】
前述のフローチャートは、一例に過ぎず、前述のステップを省略したり、別のステップを追加したりしてもよい。例えば、図6の臨時同期制御におけるセンサの同期(ステップSa4)とデータステーション10の復帰判定(ステップSa5)とは、順番を入れ替えたり、並行に行ったりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0115】
以上説明したように、ここに開示された技術は、無線通信システム及び通信端末について有用である。
【符号の説明】
【0116】
100 無線通信システム
10 データステーション(通信端末、親機)
20 中継機(通信端末、子機)
30 センサ(通信端末、子機)
20a 中継機(代理の子機)
20j 中継機(代理の子機)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7