特許第6692703号(P6692703)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6692703
(24)【登録日】2020年4月17日
(45)【発行日】2020年5月13日
(54)【発明の名称】制汗又はデオドラント化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/891 20060101AFI20200427BHJP
   A61K 8/894 20060101ALI20200427BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20200427BHJP
   A61K 8/04 20060101ALI20200427BHJP
   A61Q 15/00 20060101ALI20200427BHJP
【FI】
   A61K8/891
   A61K8/894
   A61K8/34
   A61K8/04
   A61Q15/00
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-116600(P2016-116600)
(22)【出願日】2016年6月10日
(65)【公開番号】特開2017-218440(P2017-218440A)
(43)【公開日】2017年12月14日
【審査請求日】2019年4月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】大村 孝之
【審査官】 佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−117239(JP,A)
【文献】 国際公開第1997/002888(WO,A1)
【文献】 特表2010−528090(JP,A)
【文献】 特表2006−509736(JP,A)
【文献】 特開平05−229925(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/150705(WO,A1)
【文献】 特開2002−179548(JP,A)
【文献】 特開平03−044309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)化粧料全量に対する配合量が0.01〜1質量%である高重合シリコーンを含む油分、
(b)下記一般式(III):
[ただし、式中Aは一般式:−CO(CO)(CO)−R’(式中、R’は水素原子、アシル基及び炭素数1〜4のアルキル基からなる群から選択される基であり、またaは5〜50の整数であり、bは5〜50の整数である)で示されるポリオキシアルキレン基であり、Rはメチル基又はフェニル基であり、またmは50〜1,000の整数であり、nは1〜40の整数である]
で示されるポリエーテル変性シリコーンの一種又は二種以上からなる乳化剤、
(c)50質量%以上の低級アルコール、及び
(d)水、
を含有するアルコール・水中油型乳化組成物からなることを特徴とする、制汗又はデオドラント化粧料。
【請求項2】
前記(c)低級アルコールの配合量が、前記(d)水の配合量の3倍以上であることを特徴とする、請求項1に記載の制汗又はデオドラント化粧料。
【請求項3】
制汗成分を更に含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の制汗又はデオドラント化粧料。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の化粧料をディスペンサー型容器に充填してなることを特徴とする噴霧型制汗又はデオドラント化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用前に振る必要のないパウダーフリーの制汗又はデオドラント化粧料に関する。より詳細には、特定のポリエーテル変性シリコーンで高重合シリコーンを含む油分を乳化したアルコール・水中油型乳化組成物からなり、粉末成分を含まなくても良好な制汗及びデオドラント効果を発揮する化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
汗による肌のべたつきや、そのべたつきから生じる不快感を軽減するための化粧料として、制汗デオドラント剤が用いられている。この制汗剤化粧料には、制汗成分が配合され発汗の抑制や収れん作用が期待される他、皮膚に塗布したときにヒンヤリとした清涼感や爽快感が得られることや、塗布後のさらさら感が使用者に強く求められている。
【0003】
従来の制汗剤化粧料としては、べたつきを抑制し、さらさら感を得ることを目的として粉末成分が配合された商品が多く市販されていた。しかしながら、パウダー入り制汗剤は静置時には粉体が容器内に沈殿しているため、使用時には振とうにより十分に粉体を再分散させる必要がある。この再分散が不十分である場合には、粉末成分による良好な使用感が得られないだけでなく、霧状に噴霧するミストタイプ又はスプレータイプの制汗剤においては目詰まりが生じるという問題があった。また、粉末成分に起因して塗布後の皮膚が白くなることも懸念されていた。
【0004】
特許文献1には、制汗成分(粉末成分)、架橋型メチルポリシロキサン及び架橋型メチルフェニルポリシロキサン化合物の少なくともいずれか、架橋型ポリエーテル変性シリコーン、及び低級アルコールを配合した制汗剤組成物が開示されており、粉末の分散性を向上させることによって粉末成分の結晶化を防止し、乾燥後の使用感(外観)を改善したとされている。しかしながら、依然として粉末成分を含むため、使用前には振とうにより粉末を再分散させる必要がある上、外観は改善されているものの塗布後の皮膚が白浮きする傾向があった。
【0005】
したがって、塗布時のべたつきがなく、十分な清涼感およびさらさら感を得ることができる、パウダーフリーの制汗又はデオドラント化粧料が強く求められている。
【0006】
一方、毛髪化粧料の分野では、ポリエーテル変性シリコーンを乳化剤として配合することにより、高重合シリコーン等の毛髪処理成分を含む油分をアルコール中に安定に乳化したアルコール中油型乳化組成物が知られており、このアルコール中油型乳化組成物はヘアトリートメント剤やヘアステイリング剤等に用いられていた(特許文献2)。しかしながら、このアルコール中油型乳化組成物を制汗又はデオドラント化粧料に利用した例は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−229925号公報
【特許文献2】特許第3417567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、粉末成分(制汗剤)を配合しなくても、制汗又はデオドラント化粧料に求められる使用時の清涼感および塗布後のさらさら感を有するパウダーフリーの化粧料を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、前記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、従来ヘアトリートメント剤やヘアスタイリング剤に用いられていたアルコール中油型乳化組成物において、高重合シリコーンの配合量を1質量%以下とすることによって、従来の制汗成分を配合しなくても、肌に塗布した際にさらさら感を与えることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、(a)1質量%以下の高重合シリコーンを含む油分と、(b)特定構造を有するポリエーテル変性シリコーンからなる乳化剤と、(c)50質量%以上の低級アルコールと、(d)水とを含有する、アルコール・水中油型乳化組成物からなる制汗又はデオドラント化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、粉末成分を実質的に配合していないので、使用前に振とうにより粉末成分を再分散させる必要がなく、塗布後の肌の白浮きも生じない。また、上記構成とすることにより、肌に塗布した際のべたつきがなく、塗布時および乾燥後に清涼感およびさらさら感が得られる。また、特定構造を有するポリエーテル変性シリコーンを乳化剤として配合することによりアルコール中に油分を安定に乳化することができるので、経時的安定性にも優れ、配合成分が析出して噴霧容器が目詰まりすることもない。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の化粧料を構成する各成分について詳述する。
<(a)高重合シリコーンを含む油分>
本発明で用いられる(a)高重合シリコーンを含む油分(以下、単に「(a)成分」と称する場合がある)は、ガム状(例えば30℃における粘度が約1,000,000mPa・s以上)の、高重合シリコーンおよびアミノ変性又はアンモニウム変性高重合シリコーンから選択される一種又は二種以上(シリコーンガムと称する場合もある)を含む油分である。
【0013】
本発明における高重合シリコーンとしては、下記の一般式(I)で表される高重合ポリシロキサン又は高重合ジメチコノールを例示することができる。
【化1】
式中、R1はメチル基またはフェニル基を表し(ただし、Rの全てがフェニル基である場合はない)、R2はメチル基または水酸基を表す。また、nは3,000〜20,000の整数を表す。
【0014】
本発明のアミノ変性又はアンモニウム変性高重合シリコーン(単にアミノ変性シリコーンと称する場合もある)としては、下記の一般式(II)で表されるものが例示される。
【化2】
式中、R1はメチル基または一部がフェニル基を表し、R2はR3と同一またはメチル基または水酸基を表す。R3は式R4Z{R4は3から6の炭素原子を有する2価のアルキレン基を表し、Zは−NR52、−N+53-、−NR5(CH2aNR52、−NR5(CH2a+53-および−NR5(CH2aN(R5)C=O(R6)(R5は水素または1から4の炭素原子を有するアルキル基を表し、R6は1から4の炭素原子を有するアルキル基を表し、AはCl、BrまたはIを表し、aは2から6の整数である。)からなる群から選ばれる1価の基を表す。}で表されるアミノ基またはアンモニウム基を有する置換基を表し、mおよびnはそれぞれ正の整数でm+nは3,000〜20,000の整数を表し、n/mは1/500〜1/10,000である。
なかでも、アミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(アミノプロピルジメチコン)が好ましい。
【0015】
本発明の化粧料における高重合シリコーン(シリコーンガム)の配合量は、化粧料全量に対する実分にして1.0質量%以下であることが必要である。配合量が1.0質量%を超えると塗布時にべたつきが生じる上、乾燥後の清涼感が得られない。高重合シリコーンの配合量の下限値は特に限定されないが、通常は化粧料全量に対して0.01質量%以上、であり、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上である。
【0016】
本発明の(a)成分としては、前記の高重合シリコーンと油分とを含む市販品を用いることができる。
【0017】
上記一般式(I)で表される高重合シリコーンと油分を含む市販品としては、例えば、信越化学工業社製のジメチルシリコーンオイルブレンド、例としてKF−9008(高重合ジメチコン20%とシクロペンタシロキサン80%の混合物)、KF−9011(高重合ジメチコン10%とシクロペンタシロキサン90%の混合物)、KF−9013(高重合ジメチコン15%と低粘度ジメチコン85%の混合物)、KF−9014(高重合ジメチコン15%とシクロペンタシロキサン85%の混合物)、MK−15H(高重合ジメチコン20%と低粘度ジメチコン80%の混合物)、X−21−5495(高重合ジメチコン15%とシクロペンタシロキサン85%の混合物)、KF−9028(高重合ジメチコン20%とシクロペンタシロキサン80%の混合物)、KF−9030(高重合ジメチコン20%と低粘度ジメチコン80%の混合物)、高重合ジメチコノール、例としてX−21−5613(高重合ジメチコノール20%と低粘度ジメチコン80%の混合物)、X−21−5666(高重合ジメチコノール30%とシクロペンタシロキサン70%の混合物)、X−21−5847(高重合ジメチコノール)、X−21−5849(高重合ジメチコノール)、東レ・ダウコーニング社製の高重合ジメチルシリコーン、例としてBY11−007(高重合ジメチコン10%とジメチコン90%の混合物)、BY11−014(高重合ジメチコン15%とジメチコン85%の混合物)、BY11−026(高重合ジメチコン30%とジメチコン70%の混合物)等を挙げることができる。
【0018】
上記一般式(II)で表されるアミノ変性高重合シリコーンと油分を含む市販品としては、例えば、信越化学工業社製の高重合アミノオイルブレンド(アミノガム)、例としてKF−8017(アミノプロピルジメチコン10%とジメチコン90%の混合物)、KF−8018(アミノプロピルジメチコン10%とシクロペンタシロキサン90%の混合物)、KF−8020(アミノプロピルジメチコン20%とジメチコン80%の混合物)等を挙げることができる。
【0019】
本発明の(a)成分における高重合シリコーン以外の油分は、前記市販品に含まれる各種油分に加えて、制汗又はデオドラント化粧料を含む皮膚化粧料に通常使用され得る油分から選択される。例えば、流動パラフィン、スクワラン等の炭化水素油、エステル油、アボカド油、パーム油、ホホバ油等の植物油、シリコーン油等を挙げることができる。
【0020】
本発明の化粧料における(a)成分の配合量は特に限定されないが、通常は、化粧料全量に対して、0.1〜30質量%、好ましくは0.5〜25質量%、より好ましくは0.5〜20質量%である。(a)成分の配合量が30質量%を超えると乳化物の安定性が低下する場合がある。
【0021】
<(b)ポリエーテル変性シリコーン>
本発明では、(b)特定構造を有するポリエーテル変性シリコーンの一種または二種以上からなる乳化剤(以下、単に「(b)成分」と称する場合がある)を配合することを特徴とする。
本発明で用いられるポリエーテル変性シリコーン((b)成分)は、下記一般式(III)で表されるポリエーテル変性シリコーンから選択される一種又は二種以上である。
【0022】
【化3】
式中、Rはメチル基又はフェニル基である。Aは一般式:−C36O(C24O)a(C36O)b−R’(式中、R’は水素原子、アシル基及び炭素数1〜4のアルキル基からなる群から選択される基であり、またaは5〜50の整数であり、bは5〜50の整数である)で示されるポリオキシアルキレン基である。R’のアシル基として、具体的には、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、アクリロイル基、ベンゾイル基、トルオイル基等が例示され、炭素数1〜4のアルキル基として、具体的には、メチル基、エチル基、i−プロピル基、n−プロピル基、t−ブチル基、n−ブチル基等が例示される。
【0023】
なお、前記ポリオキシアルキレン基において、aまたはbが5未満である場合には、ポリエーテル変性シリコーンが十分な界面活性効果を示さなくなり、またa又はbが50を超える場合には、得られた組成物がべとつき感を有するようになる。
ポリオキシアルキレン基の分子中での含有量は特に限定されないが、ポリオキシアルキレン基の含有量が全分子量中20質量%を超えるものが望ましい。これは、ポリオキシアルキレン基の含有量が全分子量中20質量%以下の場合には、ポリエーテル変性シリコーンの増粘効果が著しく低下するためである。
また、mは50〜1,000の整数であり、nは1〜40の整数である。これは、mが50未満であり、nが1未満である場合には、乳化安定性に乏しく、またmが1,000を超え、nが40を超える場合には、得られた組成物にべたつき感が生じるようになるからである。また、m:nは200:1〜5:1であることが好ましく、60:1〜15:1であることが特に好ましい。
【0024】
本発明に用いられるポリエーテル変性シリコーンの分子量は特に限定されず、また粘度は特に限定されないが、特に安定性のあるエマルジョンを形成し、さらさら感を有することから、ポリエーテル変性シリコーンをオクタメチルテトラシロキサン又はイソパラフィンの50質量%溶液としたときの25℃における粘度が1,000〜100,000mPa・sの範囲であることが望ましい。
【0025】
本発明で使用するポリエーテル変性シリコーンとしては、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、東レ・ダウコーニングシリコーン社製のBY11−030(50質量%のPEG/PPG−19/19ジメチコンと50質量%のシクロペンタシロキサンを含む。PEG/PPG−19/19ジメチコンとは、上記一般式においてm=400、n=10、a=19、b=19となる分子量55000のポリエーテル変性シリコーンである;HLB(Si)=7)、BY25−337(50質量%のPEG/PPG−19/19ジメチコンと50質量%の軽質流動イソパラフィン(水添ポリイソブテン)を含む)等を挙げることができる。
【0026】
本発明に用いられるポリエーテル変性シリコーンの配合量は特に限定されないが、好ましくは、化粧料全量に対して、実分で0.1〜5.0質量%、より好ましくは0.3〜4.0質量%である。本発明の組成物において、ポリエーテル変性シリコーンの配合量が実分にして0.1質量%未満であると安定な乳化が難しく、また、5.0質量%を超えると組成物がべたつき感を有するようになる場合がある。
【0027】
<(c)低級アルコール>
本発明に用いられる(c)低級アルコール(以下、単に「(c)成分」と称する場合がある)は、一般に医薬、化粧品分野等で用いられ得る炭素原子数1〜6、好ましくは炭素原子数1〜4のアルコールをいい、具体的にはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール等が挙げられ、なかでもエタノールが特に好ましく用いられる。
なお、i−プロパノール、n−プロパノール、t−ブタノール、s−ブタノール等は疎水性が強すぎて乳化し難いため、エタノールと併用することが望ましい。
本発明に用いられる低級アルコール((c)成分)の配合量は化粧料全量に対して50質量%以上、好ましくは60質量%以上である。また、低級アルコールの配合量は、組成物中の水の配合量に対し3倍以上(質量比)であることが好ましい。低級アルコールの量が3倍未満であると、塗布後の清涼感およびさらさら感が十分に得られ難い。
【0028】
<(d)水>
本発明における(d)水(以下、単に「(d)成分」と称する場合がある)の配合量は、化粧料全量に対して、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下である。水の配合量が15質量%を超えると塗布時にべたつきが生じ、さらさら感が得られない。
【0029】
本発明の制汗剤化粧料は、上記のように(a)〜(d)成分の配合により安定性の高いアルコール・水中油型乳化組成物となり、従来の制汗成分(粉末成分)を配合しなくても使用時の清涼感およびさらさら感が得られるものである。この効果は従来技術から予測できない驚くべき効果であるが、この事実は、本発明の化粧料に、従来の制汗剤化粧料に配合されてきた制汗成分、抗菌剤、防臭成分をさらに配合することを排除することを意味しない。ただし、その配合量は、本発明の効果を損なわない範囲に限られる。
【0030】
配合可能な制汗成分としては、例えば、パラフェノールスルホン酸亜鉛(スルフォ石炭酸亜鉛)、クエン酸、各種アルミニウム化合物等の収斂・制汗剤;トリクロサン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、ハロカルバン等の抗菌剤;酸化亜鉛、フラボノイド、クロロフィル等の消臭剤;メントール、乳酸メンチル等の冷感剤;各種マスキング剤等が挙げられる。
【0031】
本発明の制汗又はデオドラント化粧料には、上記の制汗成分に加えて、化粧料に通常配合され得る他の成分、例えば、保湿剤、防腐剤、香料、キレート剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ゲル化剤、増粘剤等を、本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
【0032】
本発明の制汗又はデオドラント化粧料の製品形態は特に制限されず、例えば、制汗剤、ボディローション、化粧水、美容液等の形態で提供できる。本発明の化粧料は、粉末状の制汗成分を配合しなくてもよいため、ディスペンサー等の噴霧容器に収容したミスト用又は噴射剤とともに収容したスプレー用の形態で提供するのに特に適しており、ノズルの目詰まりを生ずることがない。
【実施例】
【0033】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、配合量は全量に対する質量%を表す。
【0034】
本発明に係る制汗・デオドラント化粧料を調製し、使用感について評価した。
(実施例1〜16および比較例1〜3)
実施例1〜16および比較例1〜3に示す化粧料は、以下表1〜3に示す成分のうちイオン交換水および塩化ベンザルコニウム液以外の成分を均一に溶解し、撹拌処理にて乳化した後、イオン交換水および塩化ベンザルコニウム液を添加することにより調製した。
【0035】
(比較例4〜6)
比較例4〜6に示す化粧料は、低級アルコールを含有する水相成分と粉末成分とを混合し、次いで界面活性剤を溶かした油相成分を撹拌処理にて乳化させることにより調整した。
【0036】
上記方法により調製した化粧料サンプルを、10名の専門パネラーに塗布し、塗布後のべたつきのなさ、塗布時の清涼感、塗布乾燥後の清涼感、さらさら感について、以下の評価点および評価基準に基づいて判定した。
【0037】
+3点:非常に良い。
+2点:良い。
+1点:やや良い。
0点:普通。
−1点:やや悪い。
−2点:悪い。
−3点:非常に悪い。
【0038】
上記評価点の平均点に基づいて、以下の評価基準に従って判定した。
A:平均点が+2点以上。
B:平均点が+1点以上、+2点未満。
C:平均点が0点以上、+1点未満。
D:平均点が−1点以上、0点未満。
E:平均点が−2点以上、−1点未満。
F:平均点が−2点未満。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】
【0042】
表1および表2の結果から、本発明の制汗剤化粧料は、清涼感およびさらさら感を得るために制汗剤に通常配合される粉末成分を配合しなくとも、塗布時のべたつきがなく、乾燥後においても清涼感およびさらさら感を得ることができる。
【0043】
一方、表3の結果に示されるように、高重合シリコーンをシリコーンガム実分にして1質量%を超えて配合する場合(比較例1および比較例2)には塗布時にべたつきが生じ、十分な清涼感が得られなかった。また、低級アルコールの配合量を50質量未満とした場合(比較例3)には塗布時にべたつきが生じ、さらさら感が得られなかった。
また、表1および表2に示されたように、本願発明においては(a)成分および(b)成分に起因して清涼感およびさらさら感が得られるものである。本願発明の(a)および(b)成分に代えて、清涼感およびさらさら感を得るために従来配合されている粉末成分を配合した場合(比較例4〜6)には、たとえエタノール含量を50質量%から80質量%に増やしたとしても制汗剤としての良好な使用感は得られなかった。また、粉末成分に制汗成分(クロルヒドロキシアルミニウム)を組み合わせたとしても(比較例6)、塗布時にべたつきが生じ、さらさら感は得られなかった。
【0044】
次いで、本発明に係る乳化物を調製し、温度の異なる環境下における経時的安定性について評価した。
具体的には、下記表4に挙げた組成を有する乳化物を、上記実施例と同様の方法で調製し、調製した各乳化物について、0℃、室温、50℃で4週間放置後、以下の基準に基づいて目視観察により安定性の評価を行った。結果を表4に示す。
<評価基準>
A:変化なし。
B:わずかにクリーミングが生じた。
C:顕著なクリーミングが生じた。
D:分離。
【0045】
【表4】
【0046】
表4の結果に示されるように、いずれの乳化物も良好な乳化安定性を有していた。