(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
真空雰囲気下で、第1の貼合プレートに支持された第1の貼合部材と第2の貼合プレートに支持された第2の貼合部材とを、貼合樹脂材を介して所定の貼合圧力で貼り合わせる工程と、
次いで、上記第1、第2の貼合部材が上記第1、第2の貼合プレートに挟持された状態で上記第1、第2の貼合プレートを離間させて、上記貼合圧力を減じる工程と、
次いで、真空雰囲気下から大気圧へ開放する工程と、
次いで、上記第1、第2の貼合部材に対する貼合圧力を解除する工程とを有する接合体の製造方法。
上記第1の貼合部材及び第2の貼合部材が、それぞれ画像表示部材及び光透過性カバー部材であり、上記貼合樹脂材が上記第2の貼合部材に全面的に塗布されている請求項1に記載の接合体の製造方法。
真空雰囲気下で、第1の貼合プレートに支持された第1の貼合部材と第2の貼合プレートに支持された第2の貼合部材とを、貼合樹脂材を介して所定の貼合圧力で貼り合わせる工程と、
次いで、上記第1、第2の貼合部材が上記第1、第2の貼合プレートに挟持された状態で上記第1、第2の貼合プレートを離間させて、貼合圧力を減じる工程と、
次いで、真空雰囲気下から大気圧へ開放する工程と、
次いで、上記第1、第2の貼合部材に対する貼合圧力を解除する工程とを有する接続方法。
【背景技術】
【0002】
スマートホン等の情報端末に用いられている液晶表示パネル等の画像表示装置は、液晶表示パネルや有機ELパネル等の画像表示部材と光透過性カバー部材との間に、光硬化性樹脂組成物を配した後、その組成物に紫外線を照射して硬化させて光透過性硬化樹脂層とし、それにより画像表示部材と光透過性カバー部材とを接着・積層することにより製造されている。
【0003】
画像表示部材と光透過性カバー部材とが光透過性硬化樹脂組成物を介して接続する方法として真空貼合工法が用いられている。
図9〜
図11に真空貼合工法の一例を示す。
図9に示すように、光透過性カバー部材50は、貼り合わせ面に光透過性樹脂組成物51が塗布され、適宜仮硬化された後、真空チャンバー55内において、第1の貼合プレート52によって貼り合わせ面を下方に向けて支持される。また、画像表示部材53は、真空チャンバー55内において、第2の貼合プレート54によって貼り合わせ面を上方に向けて支持される。
【0004】
次いで、真空チャンバー55内が排気され真空雰囲気とされる。その後、
図10に示すように、第2の貼り合せプレート54が上昇し、画像表示部材53が光透過性樹脂組成物51を介して光透過性カバー部材50に押し当てられる。光透過性カバー部材50及び画像表示部材53は、真空雰囲気下で光透過性樹脂組成物51を介して貼り合わされることにより、貼り合わせ面や光透過性硬化樹脂層中に気泡が残存することを防止することができる。
【0005】
次いで、
図11に示すように、第1の貼り合せプレート52による光透過性カバー部材50の支持が解除され、第2の貼り合せプレート54が下降される。この状態で、真空チャンバー55内が大気圧に開放され、光透過性カバー部材50及び画像表示部材53の接合体56が真空チャンバー55から取り出される。
【0006】
その後、接合体56は、光透過性樹脂組成物51が硬化されることにより、光透過性硬化樹脂層を介して接続された光透過性カバー部材50及び画像表示部材53の画像表示装置が完成する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本技術が適用された接合体の製造方法及び接続方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本技術は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがある。具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
[接合体の構成]
【0017】
以下、本技術が適用された接合体は、第1の貼合部材と第2の貼合部材とが貼合樹脂材を介して貼り合わされたものである。以下に接合体の一例として、画像表示装置1について説明する。画像表示装置1は、
図1に示すように、第1の貼合部材である画像表示部材2と、第2の貼合部材である光透過性カバー部材3とが、貼合樹脂材である光硬化性樹脂組成物から形成された光透過性の硬化樹脂層4を介して積層されている。
【0018】
[画像表示部材]
画像表示部材2としては、液晶表示パネル、有機EL表示パネル、プラズマ表示パネル、タッチパネル等を挙げることができる。ここで、タッチパネルとは、液晶表示パネルのような表示素子とタッチパッドのような位置入力装置を組み合わせた画像表示・入力パネルを意味する。
【0019】
[光透過性カバー部材]
光透過性カバー部材3としては、画像表示部材に形成された画像が視認可能となるような光透過性があればよく、ガラス、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート等の板状材料やシート状材料が挙げられる。これらの材料には、片面又は両面ハードコート処理、反射防止処理などを施すことができる。光透過性カバー部材3の厚さや弾性などの物性は、使用目的に応じて適宜決定することができる。
【0020】
なお、光透過性カバー部材3の画像表示部側表面の周縁部には、表示画像の輝度やコントラスト向上のために遮光層5が設けられている。遮光層5は、黒色等に着色された塗料をスクリーン印刷法などで塗布し、乾燥・硬化させたものである。遮光層5の厚みとしては、通常5〜100μmである。
【0021】
[貼合樹脂材]
硬化樹脂層4を構成する光硬化性樹脂組成物6は、透明で、紫外線若しくは可視光で硬化が可能な光硬化性樹脂を好適に用いることができる。光硬化性樹脂組成物6は、液晶表示装置1の透過率を低減させないように、硬化後の400nm以上の光透過率が90%以上であるもの選択することが望ましい。また、光硬化性樹脂組成物6は、モノマー、重合開始剤、粘度調整のためのポリマーからなる光硬化性樹脂を含有する。
【0022】
光硬化性樹脂組成物6は液状、ゲル状等のいずれの性状であってもよいが、好ましくは液状である。光硬化性樹脂組成物6が液状であることにより、例えば後述する画像表示装置1の製造方法において、遮光層5と光透過性カバー部材3の遮光層形成側表面とで形成される段差をより確実にキャンセルすることができる。ここで、光硬化性樹脂組成物6が液状であるとは、B型粘度計で測定した25℃における粘度が0.01〜100Pa・sを示すことが好ましい。
【0023】
また、硬化樹脂層4は、光硬化性樹脂組成物6がシート状に成型された光学粘着シート(OCA: Optical Clear Adhesive)により構成されてもよい。光学粘着シートは、例えば離型処理されたポリエチレンテレフテレート等の基材に光硬化性樹脂組成物6を塗布、乾燥して粘着剤層を形成し、必要に応じて架橋反応させることにより製造される。
【0024】
光硬化性樹脂組成物6の一例を説明する。本実施の形態に係る光硬化性樹脂組成物6は、光ラジカル重合性ポリ(メタ)アクリレート(成分(a))と、光ラジカル重合性(メタ)アクリレート(成分(b))と、液状可塑剤(成分(c))、又は粘着付与剤(成分(d))からなる柔軟剤と、光重合開始剤(成分(e))とを含有する。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリル酸エステル(アクリレート)とメタクリル酸エステル(メタクリレート)とを包含する意味である。
【0025】
[成分(a)]
光ラジカル重合性ポリ(メタ)アクリレート(成分(a))の好ましい具体例としては、ポリウレタン、ポリイソプレン、ポリブタジエン等を骨格に持つ(メタ)アクリレート系オリゴマーを挙げることができる。ポリウレタン骨格を持つ(メタ)アクリル系オリゴマーの好ましい具体例としては、脂肪族ウレタンアクリレート(EBECRYL230(分子量5000)、ダイセル・サイテック社;UA−1、ライトケミカル社)等を挙げることができる。また、ポリイソプレン骨格の(メタ)アクリレートオリゴマーの好ましい具体例としては、ポリイソプレン重合体の無水マレイン酸付加物と2−ヒドロキシエチルメタクリレートとのエステル化物(UC102(ポリスチレン換算分子量17000)、(株)クラレ;UC203(ポリスチレン換算分子量35000)、(株)クラレ;UC−1(分子量約25000)、(株)クラレ)等を挙げることができる。
【0026】
[成分(b)]
光ラジカル重合性(メタ)アクリレート(成分(b))の好ましい具体例としては、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ベンジルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0027】
[成分(c)]
液状可塑成分(成分(c))は、紫外線照射によりそれ自身は光硬化をせず、光硬化後の硬化樹脂層あるいは仮硬化樹脂層に柔軟性を与え、また硬化樹脂層間あるいは仮硬化樹脂層の硬化収縮率を低減させるものである。このような液状可塑成分としては、液状のポリブタジエン系可塑剤、ポリイソプレン系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤及びアジピン酸エステル系可塑剤からなる群から選択される少なくも一種を挙げることができる。
【0028】
[成分(d)]
粘着付与剤(タッキファイア)(成分(d))は、成分(c)と同様、光硬化後の硬化樹脂層あるいは仮硬化樹脂層に柔軟性を与えるとともに、光硬化性樹脂組成物6から形成された硬化樹脂層又は仮硬化樹脂層の初期接着強度(いわゆるタック性)を向上させる。粘着付与剤としては、例えば、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、水素添加テルペン樹脂等のテルペン系樹脂、天然ロジン、重合ロジン、ロジンエステル、水素添加ロジン等のロジン樹脂、ポリブタジエン、ポリイソプレン等の石油樹脂などを使用することができる。柔軟剤としては、成分(c)又は成分(d)の少なくともいずれか一方が含まれていればよい。
【0029】
[成分(e)]
光重合開始剤(成分(e))としては、例えば、1−ヒドロキシ−シクロへキシルフェニルケトン(イルガキュア184、BASFジャパン(株))、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2一ヒドロキシ−2−メチル−プロピロニル)ベンジル]フェニル}−2−メチル−1−プロパン−1−オン(イルガキュア127、BASFジャパン(株))、ベンゾフェノン、アセトフェノン等を挙げることができる。
【0030】
光重合開始剤の添加量は、少なすぎると紫外線照射時に硬化不足となり、多すぎると開裂によるアウトガスが増え発泡不具合の傾向があるので、光ラジカル重合性ポリ(メタ)アクリレート100質量部に対し、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.2〜5質量部である。
【0031】
なお、光硬化性樹脂組成物6には、上述した成分(a)〜成分(e)に加えて、本発明の効果を損なわない範囲で種々の添加剤を配合することができる。例えば、硬化樹脂の分子量の調整のために連鎖移動剤、例えば、2−メルカプトエタノール、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、2,3−ジメチルカプト−1−プロパノール、α−メチルスチレンダイマー等を配合することができる。その他にも、必要に応じて、シランカップリング剤等の接着改善剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含有することができる。このような光硬化性樹脂組成物6は、上述した成分(a)〜成分(e)と、必要に応じて添加される各種添加剤とを、公知の混合手法に従って均一に混合することにより調製することができる。これらの添加剤の添加量は、所望する物性が得られるように適宜設定することができる。なお、光硬化性樹脂組成物の市販品としては、例えば商品名「LCR1000−DM」「HSVR600」「HSVR330」(いずれもデクセリアルズ(株))などが挙げられる。
【0032】
[接合体の製造工程]
次いで、光硬化性樹脂組成物6を用いて画像表示部材2に光透過性カバー部材3を貼り合せて画像表示装置1を製造する工程について説明する。先ず、真空雰囲気下で、第1の貼合プレート11に支持された画像表示部材2と第2の貼合プレート12に支持された光透過性カバー部材3とを、光硬化性樹脂組成物6を介して所定の貼合圧力で貼り合わせる。
【0033】
具体的に、
図2に示すように、片面の周縁部に形成された遮光層5を有する光透過性カバー部材3を用意し、
図3に示すように、光透過性カバー部材3の遮光層5が設けられた表面3aに、液状の光硬化性樹脂組成物6を塗布し、光硬化性樹脂層7を形成する。ここで、液状とは、B型粘度計で0.01〜100Pa.s(25℃)の粘度を示すものである。
【0034】
また、この塗布工程では、液状の光硬化性樹脂組成物6を遮光層5の厚さよりも厚く塗布することが好ましい。光硬化性樹脂組成物6を遮光層5の厚さよりも厚く塗布することにより、後述する貼合工程において、光透過性カバー部材3と遮光層5との間に厚み方向に段差がある場合でも、仮硬化された光硬化性樹脂組成物6の柔らかい内部が当該段差を吸収するため、貼合性を向上させることができる。なお、光硬化性樹脂組成物6の塗布は、必要な厚みが得られるように複数回行ってもよい。
【0035】
次に、
図4に示すように、光硬化性樹脂組成物6に対して紫外線を照射し、光硬化性樹脂組成物6を仮硬化させて仮硬化樹脂層8を形成する。これにより仮硬化樹脂層8は、表面に薄膜が形成される。仮硬化樹脂層8表面の反応率は60〜80%以上であることが好ましい。これにより、仮硬化樹脂層8全体の弾性率を貼り合わせ可能な低弾性率に維持しながら、次の貼合工程におけるはみ出しを抑制し、貼合性を向上させることができる。
【0036】
次いで、
図5に示すように、チャンバー10内に画像表示部材2及び光透過性カバー部材3を配置する。チャンバー10は、第1、第2の貼合プレート11,12が、図示しない昇降機構により、互いに近接離間可能に設けられている。画像表示部材2は、第1の貼合プレート11に表示部を上向きにして支持される。また、光透過性カバー部材3は、第2の貼合プレート12に仮硬化樹脂層8が形成された表面3aを下側に向けて画像表示部材2の表示部と対向されて支持される。
【0037】
なお、第1、第2の貼合プレート11,12は、一方がメタルプレートであり、他方が粘着性を有するゴムプレートであり、メタルプレートに支持された貼合部材に対してゴムプレートに支持された貼合部材側がアライメント調整を図る。また、第1、第2の貼合プレート11,12は、真空吸着あるいはメカチャックにより貼合部材を支持する。その他、第1、第2の貼合プレート11,12は、公知の材質、支持方法を採用することができる。
【0038】
[貼合工程]
次に、チャンバー10内の空気をポンプなどで排気し、所定の真空雰囲気とした後、
図6に示すように、第1の貼合プレート11を上昇させること等により第1、第2の貼合プレート11,12を近接させ、画像表示部材2と光透過性カバー部材3の仮硬化樹脂層8が形成された表面3aとを、所定の圧力及び所定の時間だけ貼り合わせる。また、貼り合わせ温度は、適宜設定されるが、例えば10℃〜80℃とされる。
【0039】
仮硬化樹脂層8は、表面に薄膜が形成されているため、天地逆転した際の未硬化樹脂の流れ落ちを防ぐことができる。また、仮硬化樹脂層8上面の周縁部には、遮光層5及び表面張力による微小な凹凸が生じることがあるが、仮硬化樹脂層8の内部が液状に近い状態であるため、仮硬化樹脂層8を押し込むことができる。
【0040】
また、真空雰囲気下で画像表示部材2と光透過性カバー部材3との間に仮硬化樹脂層8を押し込むことにより、気泡の混入を防止することができる。また、仮硬化樹脂層8の押し込みにより仮硬化樹脂層8表面の薄膜が画像表示部材2表面に追従するため、気泡の発生を抑制するとともに微小な凹凸を平坦化させることができる。
【0041】
[減圧工程]
貼り合せ開始から所定時間が経過した後、第1の貼合プレート11を下降させる等により第1、第2の貼合プレート11,12を若干離間させ、画像表示部材2と光透過性カバー部材3とが第1、第2の貼合プレート11,12に挟持された状態で貼合圧力を減じる。これにより、画像表示部材2と光透過性カバー部材3とに掛かる貼合圧力が低減される。
【0042】
減圧の程度としては、第1、第2の貼合プレート11,12が画像表示部材2と光透過性カバー部材3とを挟持している状態を維持できる範囲であればよく、例えば貼合工程における所定の貼合圧力に対し5〜60%減圧してもよい。なお、減圧の程度は、仮硬化樹脂層8の弾性率によって第1、第2の貼合プレート11,12の離間距離に対する減圧率は異なるため、使用する光硬化性樹脂組成物6に応じて所定の減圧率となるように第1、第2の貼合プレート11,12の離間距離を適宜設定する。
【0043】
また、液状の光硬化性樹脂組成物6を用いた場合、弾性率(Pa)を正確に測定することは困難であるため、減圧の程度は第1、第2の貼合プレート11,12の離間距離により定める。すなわち、減圧の程度としては、第1、第2の貼合プレート11,12が画像表示部材2と光透過性カバー部材3とを挟持している状態を維持できる範囲であり、例えば第1の貼合プレート及び第2の貼合プレートを、5〜50μm離間させる。
【0044】
[大気開放工程]
次いで、チャンバー10内の雰囲気を大気圧にする。このとき、本技術によれば、画像表示部材2と光透過性カバー部材3とは、第1、第2の貼合プレート11,12によってそれぞれチャッキングされるとともに第1、第2の貼合プレート11,12によって挟持された状態が維持されているため、画像表示部材2と光透過性カバー部材3との貼合位置にズレが生じることを防止することができる。したがって、大気開放時間を短くすることにより、チャンバー10内に急激な圧力変動や乱気流が発生した場合にも、画像表示部材2と光透過性カバー部材3との貼合位置ズレが防止でき、画像表示装置1の製造タクトを短縮することができる。
【0045】
[貼合圧力の解除工程]
次いで、
図7に示すように、第2の貼合プレート12による光透過性カバー部材3のチャッキングを解除するとともに第1の貼合プレート11をさらに下降させる等により第1、第2の貼合プレート11,12を完全に離間させ、画像表示部材2と光透過性カバー部材3とに対する貼合圧力を解除する。
【0046】
[本硬化工程]
その後、
図8に示すように、画像表示部材2と光透過性カバー部材3との接合体に対して、さらに紫外線を照射することにより、仮硬化樹脂層8を本硬化させる。これにより、画像表示部材2と光透過性カバー部材3とを光透過性の硬化樹脂層4を介して接合させた画像表示装置1(
図1)を得る。さらに必要に応じて、光透過性カバー部材3の遮光層5と画像表示部材2との間の仮硬化樹脂層8に紫外線を照射し、仮硬化樹脂層8を本硬化させてもよい。
【0047】
なお、本硬化工程において、光硬化性樹脂組成物6の反応率は、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。光硬化性樹脂組成物6を十分に硬化させることにより、光透過性カバー部材3と画像表示部材2との接着力を向上させることができる。
【0048】
[本技術の効果]
本技術が適用された接合体の製造工程によれば、画像表示部材2と光透過性カバー部材3とが第1、第2の貼合プレート11,12に挟持された状態で貼合圧力を減じ、この状態で大気開放を行う。したがって、光透過性樹脂組成物6が液状やゲル状であった場合でも光透過性カバー部材3と画像表示部材2との貼合位置ズレを防止することができる。
【0049】
また、光透過性カバー部材3と画像表示部材2とが第1、第2の貼合プレート11,12に挟持されているため、大気開放時間を短縮しチャンバー10内の急激な圧力変動や乱気流が生じた場合にも貼合位置ズレが防止されることから、製造タクトの短縮化を図ることができる。
【0050】
さらに、画像表示部材2と光透過性カバー部材3との貼合圧力を減圧した状態で大気開放を行うため、大気開放が終了するまで第1、第2の貼合プレート11,12に挟持させていても、画像表示部材2と光透過性カバー部材3とに貼合圧力が過剰に掛かることがない。したがって、本技術が適用された製造工程により製造された画像表示装置1は、硬化樹脂層4に残存応力が局所的に介在することがなく、硬化樹脂層4の応力ムラに起因する色ムラの発生を防止することができる。また、薄型化が進展している画像表示部材2や光透過性カバー部材3に対する負荷も低減でき、反りや損傷を防止することができる。
【0051】
なお、上記では、光透過性カバー部材3に光硬化性樹脂組成物6を塗布し、仮硬化させた後、天地を逆転して第2の貼合プレート12に支持させたが、第1の貼合プレートに支持された画像表示部材2又は光透過性カバー部材3に液状の光硬化性樹脂組成物6を塗布し、仮硬化させずに貼り合せ、その後、光硬化させてもよい。
【0052】
また、液状又はゲル状の光硬化性樹脂組成物6を用いる他、光硬化性樹脂組成物6がシート状に成型された光学粘着シートを用いてもよい。光学粘着シートは、成型過程でタック性を備え、画像表示部材2と光透過性カバー部材3との貼合位置は保持できるが、本技術が適用された接合体の製造工程に適用すれば、画像表示部材2及び光透過性カバー部材3を第1、第2の貼合プレート11,12間に挟持させた状態で貼合圧力を減じて大気開放を行うことにより、貼合位置ズレを確実に防止できるとともに、画像表示部材2及び光透過性カバー部材3に対して貼合圧力が過剰に掛かることを防止することができる。
【実施例】
【0053】
次いで、本技術の実施例について説明する。本実施例では、液晶表示パネルとカバーガラスとを光硬化性樹脂組成物を介して真空雰囲気下で接続し、大気開放した後のズレ量を測定した。カバーガラスは、厚さ0.7mm、5inchサイズのものを使用した。また、各実施例及び比較例に係る液晶表示パネルとカバーガラスとの接続体のサンプル数は10個とした。
【0054】
[実施例1]
実施例1では、貼合樹脂材として液状の光学弾性樹脂(LCR1000−DM、液粘度4200mPa・sec;デクセリアルズ株式会社製)を使用した。この液状の光学弾性樹脂をカバーガラスに塗布し、チャンバー内において真空雰囲気下で機械的にカバーガラスとのギャップ及び樹脂厚を制御しながら液晶表示パネルを載置して貼り合せた。光学弾性樹脂の塗布厚みは100μm、チャンバー内の真空度は50Paとした。
【0055】
貼り合せ後、液晶表示パネルを支持する貼合プレートとカバーガラスを支持する貼合プレートと間の距離を5μm離間させ、光学弾性樹脂を介して貼り合わされた液晶表示パネルとカバーガラスとが一対の貼合プレート間に挟持された状態で貼合圧力を減じ、この状態で大気開放を行った。大気開放時間は1秒とした。
【0056】
大気開放後に、貼合プレートによる液晶表示パネル及びカバーガラスの支持を解除するとともに、一対の貼合プレートを離間させて液晶表示パネル及びカバーガラスの接合体に掛かる貼合圧力を完全に解除し、液晶表示パネルとカバーガラスとの位置ズレ量を測定したところ、ズレは生じなかった。
【0057】
[実施例2]
実施例2では、貼合樹脂材として液状の光学弾性樹脂(HSVR330;デクセリアルズ株式会社製)を使用した。この液状の光学弾性樹脂をカバーガラスに塗布し、紫外線を照射することにより仮硬化させ、仮硬化樹脂層を形成した。次いで、チャンバー内において真空雰囲気下で液晶表示パネルと貼り合せた。光学弾性樹脂の塗布厚みは100μm、仮硬化樹脂層の弾性率は1.60E+4(Pa)、チャンバー内の真空度は50Pa、貼り合せの推力は500Nとした。
【0058】
貼り合せ後、液晶表示パネルを支持する貼合プレートとカバーガラスを支持する貼合プレートと間の距離を離間させ、液晶表示パネルとカバーガラスとが一対の貼合プレート間に挟持された状態で貼合圧力を30%減じ、この状態で大気開放を行った。大気開放時間は1秒とした。
【0059】
大気開放後に、貼合プレートによる液晶表示パネル及びカバーガラスの支持を解除するとともに、一対の貼合プレートを離間させて液晶表示パネル及びカバーガラスの接合体に掛かる貼合圧力を完全に解除し、液晶表示パネルとカバーガラスとの位置ズレ量を測定したところ、ズレは生じなかった。
【0060】
[実施例3]
実施例3では、貼合樹脂材として液状の光学弾性樹脂(HSVR600;デクセリアルズ株式会社製)を使用した。この液状の光学弾性樹脂をカバーガラスに塗布し、紫外線を照射することにより仮硬化させ、仮硬化樹脂層を形成した。次いで、チャンバー内において真空雰囲気下で液晶表示パネルと貼り合せた。光学弾性樹脂の塗布厚みは100μm、仮硬化樹脂層の弾性率は5.10E+4(Pa)、チャンバー内の真空度は50Pa、貼り合せの推力は500Nとした。
【0061】
貼り合せ後、液晶表示パネルを支持する貼合プレートとカバーガラスを支持する貼合プレートと間の距離を離間させ、液晶表示パネルとカバーガラスとが一対の貼合プレート間に挟持された状態で貼合圧力を30%減じ、この状態で大気開放を行った。大気開放時間は1秒とした。
【0062】
大気開放後に、貼合プレートによる液晶表示パネル及びカバーガラスの支持を解除するとともに、一対の貼合プレートを離間させて液晶表示パネル及びカバーガラスの接合体に掛かる貼合圧力を完全に解除し、液晶表示パネルとカバーガラスとの位置ズレ量を測定したところ、ズレは生じなかった。
【0063】
[比較例1]
比較例1では、貼り合せ後、貼合プレートによるカバーガラスの支持を解除し、一対の貼合プレートを離間させて液晶表示パネル及びカバーガラスの接合体に掛かる貼合圧力を完全に解除した後に大気開放を行った。その他の条件は実施例1と同じである。
【0064】
比較例1では、液晶表示パネルとカバーガラスとの位置ズレ量を測定したところ、0.5〜3mmのズレが生じた。
【0065】
[比較例2]
比較例2では、貼り合せ後、貼合プレートによるカバーガラスの支持を解除し、一対の貼合プレートを離間させて液晶表示パネル及びカバーガラスの接合体に掛かる貼合圧力を完全に解除した後に大気開放を行った。その他の条件は実施例2と同じである。
【0066】
比較例2では、液晶表示パネルとカバーガラスとの位置ズレ量を測定したところ、0.03〜0.3mmのズレが生じた。
【0067】
[比較例3]
比較例3では、貼り合せ後、貼合プレートによるカバーガラスの支持を解除し、一対の貼合プレートを離間させて液晶表示パネル及びカバーガラスの接合体に掛かる貼合圧力を完全に解除した後に大気開放を行った。その他の条件は実施例3と同じである。
【0068】
比較例3では、液晶表示パネルとカバーガラスとの位置ズレ量を測定したところ、0.03〜0.1mmのズレが生じた。
【0069】
[比較例4]
比較例4では、貼り合せ後、大気開放が終了するまで液晶表示パネル及びカバーガラスの接合体に貼合圧力を掛け続け、その後貼合プレートによる液晶表示パネル及びカバーガラスの支持を解除するとともに、一対の貼合プレートを離間させて液晶表示パネル及びカバーガラスの接合体に掛かる貼合圧力を完全に解除した。その他の条件は実施例2と同じである。
【0070】
比較例4では、液晶表示パネルとカバーガラスとの位置ズレ量を測定したところ、ズレは生じなかったが、接合体に反りが生じた。
【0071】
【表1】
【0072】
表1に示すように、実施例1〜3では、液晶表示パネルとカバーガラスとが一対の貼合プレート間に挟持された状態で貼合圧力を減じ、この状態で大気開放を行っているため、1秒という短時間で大気開放を行い、チャンバー内に急激な圧力変動や乱気流が発生したにも関わらず、液晶表示パネルとカバーガラスとの貼合位置ズレを防止することができた。
【0073】
また、大気開放に先立って貼合圧力を減じていることから、大気開放後に貼合圧力を解除しても、接合体に反りが生じることなく、液晶表示パネルやカバーガラスに損傷を与える恐れもない。
【0074】
一方、比較例1〜3は、液晶表示パネル及びカバーガラスに対する貼合圧力を解除した後に大気開放を行ったため、短時間の大気開放によって生じたチャンバー内の急激な圧力変動や乱気流により、液晶表示パネルとカバーガラスとの貼合位置ズレが生じた。比較例1では、液状の光学弾性樹脂を介在させていたため、光学弾性樹脂を仮硬化させた比較例2、比較例3と比べて位置ズレ量が大きくなった。
【0075】
また、比較例4は、貼り合せから大気開放が終了するまで液晶表示パネル及びカバーガラスに貼合圧力を掛けていたため、大気開放による位置ズレは防止できたが、液晶表示パネル及びカバーガラスに貼合圧力が過剰に掛かり、反りが発生した。