(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6692743
(24)【登録日】2020年4月17日
(45)【発行日】2020年5月13日
(54)【発明の名称】白血球を分析するための試薬、システム、及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/49 20060101AFI20200427BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20200427BHJP
G01N 15/14 20060101ALI20200427BHJP
【FI】
G01N33/49 A
G01N33/48 B
G01N33/49 S
G01N33/49 K
G01N15/14 C
【請求項の数】70
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2016-500138(P2016-500138)
(86)(22)【出願日】2013年12月20日
(65)【公表番号】特表2016-514267(P2016-514267A)
(43)【公表日】2016年5月19日
(86)【国際出願番号】US2013077175
(87)【国際公開番号】WO2014143332
(87)【国際公開日】20140918
【審査請求日】2016年12月16日
(31)【優先権主張番号】61/777,966
(32)【優先日】2013年3月12日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】391008788
【氏名又は名称】アボット・ラボラトリーズ
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】ウー,チオン
【審査官】
西浦 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2012/0282598(US,A1)
【文献】
国際公開第2012/088351(WO,A2)
【文献】
特表2003−520594(JP,A)
【文献】
特開平10−160730(JP,A)
【文献】
特表昭61−502277(JP,A)
【文献】
米国特許第06197593(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動血液分析装置を用いて白血球(WBC)分析を実施する方法であって、
(a)WBC分析試薬を用いて全血の試料を希釈することであって、前記WBC分析試薬が、
前記試料中の複数の核含有細胞を標識する、有機溶媒に溶解した膜透過性蛍光色素と、
前記血液分析装置を用いて分析した場合、複数のWBC亜集団を互いに分離するモル浸透圧濃度調整成分と、を含み、このときモル浸透圧濃度調整成分が塩化アンモニウムと塩化ナトリウムである、希釈することと、
(b)約30℃〜約50℃の範囲の温度で、約25秒未満のインキュベーション時間にわたってステップ(a)の前記希釈された血液試料をインキュベートすることと、
(c)ステップ(b)からの前記インキュベートされた試料を前記血液分析装置内のフローセルに送達することと、
(d)前記インキュベートされた試料が前記フローセルを横切るときに、ステップ(c)からの前記インキュベートされた試料を励起源で励起させることと、
(e)前記励起した試料から複数の光散乱信号及び少なくとも1つの蛍光放射信号を収集することと、
(f)前記少なくとも1つの蛍光放射信号に基づいて、蛍光閾値を満たさない前記希釈された血液試料内のいずれの粒子も考慮から除去しつつ、ステップ(e)で収集される全ての前記信号に基づいてWBC差異分析を実施することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記励起源が、約350nm〜約700nmの波長を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記蛍光放射信号が、バンドパスフィルタまたはロングパスフィルタによって約360nm〜約750nmの波長で収集される、請求項1または2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記膜透過性蛍光色素が、アクリジンオレンジ、ヨウ化ヘキシジウム、SYTO RNA Select、SYTO 12、またはSYTO 14である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記試薬中の前記膜透過性蛍光色素の濃度が、約0.0001%〜最大約0.0005%の範囲である、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記試薬中の前記膜透過性蛍光色素の濃度が、約0.01μM〜最大約15μMの範囲である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記塩化アンモニウムと塩化ナトリウムの濃度が、約0.1%〜最大約0.5%である、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記試薬が、WBC保護剤を更に含む、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記WBC保護剤が、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、ブトキシエタノール、フェノキシエタノール、またはイソプロピルアルコールである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記WBC保護剤の濃度が、約0.1%〜最大約1.0%の範囲である、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記WBC分析試薬が、界面活性剤を更に含む、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記界面活性剤が、サポニンである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記界面活性剤の濃度が、約0.01%〜最大約0.05%の範囲である、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記試薬が、pH緩衝成分を更に含む、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記pH緩衝成分が、酢酸ナトリウムまたは重炭酸ナトリウムである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記pH緩衝成分の濃度が、約0.01%〜最大約0.5%の範囲である、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記試薬が、抗菌剤を更に含む、請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記抗菌剤の濃度が、約0.01%〜最大約0.1%の範囲である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記WBC分析試薬のpHが、約2.5〜最大約12.5pH単位の範囲である、請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記WBC分析試薬の前記モル浸透圧濃度が、約25〜最大約350mOsmである、請求項1〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
全血の試料に白血球(WBC)差異分析を行うためのシステムであって、前記システムが、
(a)血液分析装置であって、
前記血液試料内の粒子を励起させるように位置付けられた励起源と、
(1)前記励起された血液試料から軸方向光損失を測定するように位置付けられた軸方向光損失検出器、(2)前記励起された血液試料から中間角度散乱を測定するように位置付けられた中間角度散乱検出器、(3)前記励起された血液試料から大角度偏光側方散乱を測定するように位置付けられた偏光側方散乱検出器、(4)前記励起された血液試料から大角度偏光解消側方散乱を測定するように位置付けられた偏光解消側方散乱検出器、及び(5)前記励起された血液試料から放射された蛍光を測定するように位置付けられた蛍光検出器、を含む、複数の検出器と、
プロセッサであって、
(I)前記複数の検出器から(1)軸方向光損失、(2)中間角度散乱、(3)大角度偏光側方散乱、(4)大角度偏光解消側方散乱、及び(5)蛍光の測定値を受け取ることと、
(II)全ての5つの測定値に基づいて、蛍光閾値を超える蛍光を放射する粒子について、前記血液試料のWBC差異分析を実施することと、を行うように構成されるプロセッサと、を備える、血液分析装置と、
(b)前記試料内のWBCを分析するための試薬であって、
有機溶媒に溶解した膜透過性蛍光色素と
前記血液分析装置を用いて分析した場合に複数のWBC亜集団を互いに分離するモル浸透圧濃度調整成分であって、塩化アンモニウムと塩化ナトリウムであるモル浸透圧濃度調整成分と、を含む、試薬と、を含み、
前記膜透過性蛍光色素の濃度が、前記血液分析装置を用いて、核を含有する前記試料内の1つ以上の細胞の識別を容易にするのに十分であり、
前記モル浸透圧濃度調整成分の濃度が、前記血液分析装置を用いて、前記試料内のWBCの複数の亜集団の識別を容易にするのに十分である、システム。
【請求項22】
前記膜透過性蛍光色素が、アクリジンオレンジ、ヨウ化ヘキシジウム、SYTO RNA Select、SYTO 12、またはSYTO 14である、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記試薬中の前記膜透過性蛍光色素の濃度が、約0.0001%〜最大約0.0005%の範囲である、請求項21または22に記載のシステム。
【請求項24】
前記試薬中の前記膜透過性蛍光色素の濃度が、約0.01μM〜最大約15μMの範囲である、請求項21〜23のいずれかに記載のシステム。
【請求項25】
前記塩化アンモニウムと塩化ナトリウムの濃度が、約0.1%〜最大約0.5%である、請求項21〜24のいずれかに記載のシステム。
【請求項26】
前記試薬が、WBC保護剤を更に含む、請求項21〜25のいずれかに記載のシステム。
【請求項27】
前記WBC保護剤が、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、ブトキシエタノール、フェノキシエタノール、またはイソプロピルアルコールである、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記WBC保護剤の濃度が、約0.1%〜最大約1.0%の範囲である、請求項26または27に記載のシステム。
【請求項29】
前記試薬が、界面活性剤を更に含む、請求項21〜28のいずれかに記載のシステム。
【請求項30】
前記界面活性剤が、サポニンである、請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
前記界面活性剤の濃度が、約0.01%〜最大約0.05%の範囲である、請求項29または30に記載のシステム。
【請求項32】
前記試薬が、pH緩衝成分を更に含む、請求項21〜31のいずれかに記載のシステム。
【請求項33】
前記pH緩衝成分が、酢酸ナトリウムまたは重炭酸ナトリウムである、請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
前記pH緩衝成分の濃度が、約0.01%〜最大約0.5%の範囲である、請求項32または33に記載のシステム。
【請求項35】
前記試薬が、抗菌剤を更に含む、請求項21〜34のいずれかに記載のシステム。
【請求項36】
前記抗菌剤の濃度が、約0.01%〜最大約0.1%の範囲である、請求項35に記載のシステム。
【請求項37】
前記試薬のpHが、約2.5〜最大約12.5pH単位の範囲である、請求項21〜36のいずれかに記載のシステム。
【請求項38】
前記試薬の前記モル浸透圧濃度が、約25〜最大約350mOsmである、請求項21〜37のいずれかに記載のシステム。
【請求項39】
前記プロセッサが、前記蛍光閾値を満たさないいずれの粒子も考慮から除去するように前記受け取られた測定値を事前選別するように更に構成される、請求項21〜38のいずれかに記載のシステム。
【請求項40】
前記軸方向光損失検出器が、0°散乱で軸方向光損失を測定する、請求項21〜39のいずれかに記載のシステム。
【請求項41】
前記中間角度散乱検出器が、約3°〜約15°で光角度散乱を測定する、請求項21〜40のいずれかに記載のシステム。
【請求項42】
前記複数の検出器が、1つ以上の光電子増倍管を含む、請求項21〜41のいずれかに記載のシステム。
【請求項43】
前記励起源が、レーザである、請求項21〜42のいずれかに記載のシステム。
【請求項44】
前記レーザが、前記蛍光色素に対応する波長で光を放射する、請求項43に記載のシステム。
【請求項45】
前記蛍光色素が、前記励起源に対応するように選択される、請求項21〜44のいずれかに記載のシステム。
【請求項46】
前記試薬を用いて前記血液試料を希釈するためのインキュベーションサブシステムを更に含む、請求項21〜45のいずれかに記載のシステム。
【請求項47】
前記インキュベーションサブシステムが、約25秒未満である時間にわたり前記試薬を用いて前記血液試料をインキュベートするように構成される、請求項46に記載のシステム。
【請求項48】
前記インキュベーションサブシステムが、約17秒未満である時間にわたり前記試薬を用いて前記血液試料をインキュベートするように構成される、請求項46または47に記載のシステム。
【請求項49】
前記インキュベーションサブシステムが、約9秒未満である時間にわたり前記試薬を用いて前記血液試料をインキュベートするように構成される、請求項46〜48のいずれかに記載のシステム。
【請求項50】
前記インキュベーションサブシステムが、約30℃〜約50℃の範囲の温度で前記試薬を用いて前記血液試料をインキュベートするように構成される、請求項46〜49のいずれかに記載のシステム。
【請求項51】
前記インキュベーションサブシステムが、約40℃の温度で前記試薬を用いて前記血液試料をインキュベートするように構成される、請求項46〜50のいずれかに記載のシステム。
【請求項52】
血液分析装置を用いて全血の試料内の白血球(WBC)を分析するための試薬であって、
前記血液分析装置を用いて核を含有する前記試料内の複数の細胞の識別を容易にするのに十分な濃度の、有機溶媒に溶解した膜透過性蛍光色素と、
前記血液分析装置を用いて前記試料内のWBCの複数の亜集団の識別を容易にするために塩化アンモニウムと塩化ナトリウムを含むモル浸透圧濃度調整成分と、を含む、試薬。
【請求項53】
前記膜透過性蛍光色素が、アクリジンオレンジ、ヨウ化ヘキシジウム、SYTO RNA Select、SYTO 12、またはSYTO 14である、請求項52に記載の試薬。
【請求項54】
前記試薬中の前記膜透過性蛍光色素の濃度が、約0.0001%〜最大約0.0005%の範囲である、請求項52または53に記載の試薬。
【請求項55】
前記試薬中の前記膜透過性蛍光色素の濃度が、約0.01μM〜最大約15μMの範囲である、請求項52〜54のいずれかに記載の試薬。
【請求項56】
前記塩化アンモニウムと塩化ナトリウムの濃度が、約0.1%〜最大約0.5%である、請求項52〜55のいずれかに記載の試薬。
【請求項57】
前記試薬が、WBC保護剤を更に含む、請求項52〜56のいずれかに記載の試薬。
【請求項58】
前記WBC保護剤が、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、ブトキシエタノール、フェノキシエタノール、またはイソプロピルアルコールである、請求項57に記載の試薬。
【請求項59】
前記WBC保護剤の濃度が、約0.1%〜最大約1.0%の範囲である、請求項57または58に記載の試薬。
【請求項60】
界面活性剤を更に含む、請求項52〜59のいずれかに記載の試薬。
【請求項61】
前記界面活性剤が、サポニンである、請求項60に記載の試薬。
【請求項62】
前記界面活性剤の濃度が、約0.01%〜最大約0.05%の範囲である、請求項60または61に記載の試薬。
【請求項63】
前記試薬が、pH緩衝成分を更に含む、請求項52〜62のいずれかに記載の試薬。
【請求項64】
前記pH緩衝成分が、酢酸ナトリウムまたは重炭酸ナトリウムである、請求項63に記載の試薬。
【請求項65】
前記pH緩衝成分の濃度が、約0.01%〜最大約0.5%の範囲である、請求項63または64に記載の試薬。
【請求項66】
前記試薬が、抗菌剤を更に含む、請求項52〜65のいずれかに記載の試薬。
【請求項67】
前記抗菌剤の濃度が、約0.01%〜最大約0.1%の範囲である、請求項66に記載の試薬。
【請求項68】
pHが、約2.5〜最大約12.5pH単位の範囲である、請求項52〜67のいずれかに記載の試薬。
【請求項69】
前記モル浸透圧濃度が、約25〜最大約350mOsmである、請求項52〜68のいずれかに記載の試薬。
【請求項70】
前記有機溶媒が、ジメチルスルホキシド(DMSO)である、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2013年3月12日出願の米国仮特許出願第61/777,966号の利益を主張するものであり、この出願の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
自動血液分析装置を用いる全血試料内の白血球(WBC)の正確な計数及び分類は、必要不可欠な診断手順である。WBC分析は、典型的に、同時に、全血の試料内の赤血球(RBC、赤血球(erythrocytes))を溶解してWBCを保存することによって達成される。1つ以上のWBC試薬は、典型的に、現代の血液分析装置においてこれらの機能を実施し、WBCの分析を円滑にするために必要とされている。
【0003】
WBC計数及び差別化の質は、分析を実施するために使用される方法及び関連付けられる試薬に大いに依存している。頑強なWBC分析試薬を配合することは、血液産業において上位の課題のうちの残された1つを有する。原理上は、頑強なWBC試薬は、正確なWBC分析をもたらす。理想的には、高度に配合されたWBC試薬は、(1)典型的には約30秒以下の時間枠内で、標準的な条件下での赤血球(RBC)の完全な溶解、(2)大きいRBC断片のより小さい小片への分解または可溶、及び(3)WBCが正確に計数され適切に分類され得るようにRBC溶解プロセスからのWBCの保護、を円滑にするべきである。
【0004】
血液試料が不十分に溶解された場合、次いで、非常に小さい割合または濃度、またはより大きいRBC断片であっても、従来のWBC分析技術を用いてリンパ球(最小のWBC)からRBCまたはより大きいRBC断片を分離または差別化することが困難であるため、未溶解RBCは、WBC分析を妨げ得る。血液試料が過剰に溶解された場合、次いで、WBCの分類は、WBCの細胞膜への過度の損傷によって大いに影響され得る。したがって、これらの目的を達成できる改善したWBC分析試薬、システム、及び方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本発明の態様は、試料内の白血球(WBC)及びWBC亜集団を識別、分類、及び/または定量するように全血の試料を分析するために使用され得るWBC分析試薬、システム、及び方法を含む。本開示のWBC分析試薬は、一般的に、少なくとも1つの膜透過性蛍光色素、WBC保護試薬、及び界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、WBC試薬は、WBC試薬のモル浸透圧濃度を所望の範囲に調整するために好適な量のモル浸透圧濃度調整成分を含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、本開示は、自動血液分析装置を用いた白血球(WBC)分析の実施のための方法を提供し、その方法は、(a)WBC分析試薬が、試料中の複数の核含有細胞を標識する膜透過性蛍光色素と、血液分析装置を用いて分析した場合、複数のWBC亜集団を互いに分離するモル浸透圧濃度調整成分と、を含む、WBC分析試薬を用いて全血の試料を希釈することと、(b)約30℃〜約50℃の範囲の温度で、約25秒未満のインキュベーション時間にわたってステップ(a)の希釈された血液試料をインキュベートすることと、(c)ステップ(b)からのインキュベートされた試料を血液分析装置内のフローセルに送達することと、(d)インキュベートされた試料がフローセルを横切るときに、ステップ(c)からのインキュベートされた試料を励起源で励起させることと、(e)励起した試料から複数の光散乱信号及び少なくとも1つの蛍光放射信号を収集することと、(f)少なくとも1つの蛍光放射信号に基づいて、蛍光閾値を満たさない希釈された血液試料内のいずれの粒子も考慮から除去しつつ、ステップ(e)で収集される全ての信号に基づいてWBC差異分析を実施することと、を含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、励起源は、約350nm〜約700nmの波長を有する。いくつかの実施形態では、蛍光放射信号は、バンドパスフィルタまたはロングパスフィルタによって約360nm〜約750nmの波長で収集される。いくつかの実施形態では、膜透過性蛍光色素は、アクリジンオレンジ、ヨウ化ヘキシジウム、SYTO RNA Select、SYTO 12、またはSYTO 14である。いくつかの実施形態では、試薬中の膜透過性蛍光色素の濃度は、約0.0001%〜最大約0.0005%の範囲である。いくつかの実施形態では、試薬中の膜透過性蛍光色素の濃度は、約0.01μM〜最大約15μMの範囲である。いくつかの実施形態では、モル浸透圧濃度調整成分は、塩化アンモニウムまたは塩化ナトリウムである。いくつかの実施形態では、モル浸透圧濃度調整成分の濃度は、約0.1%〜最大約0.5%の範囲である。いくつかの実施形態では、試薬は、WBC保護剤を更に含む。いくつかの実施形態では、WBC保護剤は、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、ブトキシエタノール、フェノキシエタノール、またはイソプロピルアルコールである。いくつかの実施形態では、WBC保護剤の濃度は、約0.1%〜最大約1.0%の範囲である。いくつかの実施形態では、WBC分析試薬は、界面活性剤を更に含む。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、サポニンである。いくつかの実施形態では、界面活性剤の濃度は、約0.01%〜最大約0.05%の範囲である。いくつかの実施形態では、試薬は、pH緩衝成分を更に含む。いくつかの実施形態では、pH緩衝成分は、酢酸ナトリウムまたは重炭酸ナトリウムである。いくつかの実施形態では、pH緩衝成分の濃度は、約0.01%〜最大約0.5%の範囲である。いくつかの実施形態では、試薬は、抗菌剤を更に含む。いくつかの実施形態では、抗菌剤は、プロクリンである。いくつかの実施形態では、抗菌剤の濃度は、約0.01%〜最大約0.1%の範囲である。いくつかの実施形態では、WBC分析試薬のpHは、約2.5〜最大約12.5pH単位の範囲である。いくつかの実施形態では、WBC分析試薬のモル浸透圧濃度は、約25〜最大約350mOsmの範囲である。
【0008】
いくつかの実施形態では、本開示は、全血の試料に白血球(WBC)差異分析を行うためのシステムを提供し、そのシステムは、(a)血液試料内の粒子を励起させるように位置付けされた励起源と、(1)励起された血液試料から軸方向光損失を測定するように位置付けられた軸方向光損失検出器、(2)励起された血液試料から中間角度散乱を測定するように位置付けられた中間角度散乱検出器、(3)励起された血液試料から大角度偏光側方散乱を測定するように位置付けられた偏光側方散乱検出器、(4)励起された血液試料から大角度偏光解消側方散乱を測定するように位置付けられた偏光解消側方散乱検出器、及び(5)励起された血液試料から放射された蛍光を測定するように位置付けられた蛍光検出器、を含む、複数の検出器と、(I)複数の検出器から(1)軸方向光損失、(2)中間角度散乱、(3)大角度偏光側方散乱、(4)大角度偏光解消側方散乱、及び(5)蛍光の測定値を受け取り、(II)全ての5つの測定値に基づいて、蛍光閾値を超える蛍光を放射する粒子について、血液試料のWBC差異分析を実施することと、を行うように構成されるプロセッサと、を備える、血液分析装置と、(b)試料内のWBCを分析するための試薬であって、膜透過性蛍光色素とモル浸透圧濃度調整成分とを含み、膜透過性蛍光色素の濃度が、血液分析装置を用いて、核を含有する試料内の1つ以上の細胞の識別を容易にするのに十分であり、モル浸透圧濃度調整成分の濃度が、血液分析装置を用いて、試料内のWBCの複数の亜集団の識別を容易にするのに十分である、試薬と、を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、膜透過性蛍光色素は、アクリジンオレンジ、ヨウ化ヘキシジウム、SYTO RNA Select、SYTO 12、またはSYTO 14である。いくつかの実施形態では、試薬中の膜透過性蛍光色素の濃度は、約0.0001%〜最大約0.0005%の範囲である。いくつかの実施形態では、試薬中の膜透過性蛍光色素の濃度は、約0.01μM〜最大約15μMの範囲である。いくつかの実施形態では、モル浸透圧濃度調整成分は、塩化アンモニウムまたは塩化ナトリウムである。いくつかの実施形態では、モル浸透圧濃度調整成分の濃度は、約0.1%〜最大約0.5%の範囲である。いくつかの実施形態では、試薬は、WBC保護剤を更に含む。いくつかの実施形態では、WBC保護剤は、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、ブトキシエタノール、フェノキシエタノール、またはイソプロピルアルコールである。いくつかの実施形態では、WBC保護剤の濃度は、約0.1%〜最大約1.0%の範囲である。いくつかの実施形態では、試薬は、界面活性剤を更に含む。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、サポニンである。いくつかの実施形態では、界面活性剤の濃度は、約0.01%〜最大約0.05%の範囲である。いくつかの実施形態では、試薬は、pH緩衝成分を更に含む。いくつかの実施形態では、pH緩衝成分は、酢酸ナトリウムまたは重炭酸ナトリウムである。いくつかの実施形態では、pH緩衝成分の濃度は、約0.01%〜最大約0.5%の範囲である。いくつかの実施形態では、試薬は、抗菌剤を更に含む。いくつかの実施形態では、抗菌剤は、プロクリンである。いくつかの実施形態では、抗菌剤の濃度は、約0.01%〜最大約0.1%の範囲である。いくつかの実施形態では、試薬のpHは、約2.5〜最大約12.5pH単位の範囲である。いくつかの実施形態では、試薬のモル浸透圧濃度は、約25〜最大約350mOsmの範囲である。
【0010】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、蛍光閾値を満たさないいずれの粒子も考慮から除去するように、受け取られた測定値を事前選別するように更に構成される。いくつかの実施形態では、軸方向光損失検出器は、0°散乱で軸方向光損失を測定する。いくつかの実施形態では、中間角度散乱検出器は、約3°〜約15°で光角度散乱を測定する。いくつかの実施形態では、複数の検出器は、1つ以上の光電子増倍管を含む。いくつかの実施形態では、励起源は、レーザである。いくつかの実施形態では、レーザは、蛍光色素に対応する波長で光を放射する。いくつかの実施形態では、蛍光色素は、励起源に対応するように選択される。
【0011】
いくつかの実施形態では、システムは、試薬を用いて血液試料を希釈するためのインキュベーションサブシステムを更に含む。いくつかの実施形態では、インキュベーションサブシステムは、約25秒未満である時間にわたり試薬を用いて血液試料をインキュベートするように構成される。いくつかの実施形態では、インキュベーションサブシステムは、約17秒未満である時間にわたり試薬を用いて血液試料をインキュベートするように構成される。いくつかの実施形態では、インキュベーションサブシステムは、約9秒未満である時間にわたり試薬を用いて血液試料をインキュベートするように構成される。いくつかの実施形態では、インキュベーションサブシステムは、約30℃〜約50℃の範囲の温度で試薬を用いて血液試料をインキュベートするように構成される。いくつかの実施形態では、インキュベーションサブシステムは、約40℃の温度で試薬を用いて血液試料をインキュベートするように構成される。
【0012】
いくつかの実施形態では、本開示は、血液分析装置を用いて全血の試料内の白血球(WBC)を分析するための試薬を提供し、その試薬は、血液分析装置を用いて、核を含有する試料内の複数の細胞の識別を容易にするために十分な濃度中の膜透過性蛍光色素と、血液分析装置を用いて、試料内のWBCの複数の亜集団の識別を容易にするために十分な濃度中のモル浸透圧濃度調整成分と、を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、膜透過性蛍光色素は、アクリジンオレンジ、ヨウ化ヘキシジウム、SYTO RNA Select、SYTO 12、またはSYTO 14である。いくつかの実施形態では、試薬中の膜透過性蛍光色素の濃度は、約0.0001%〜最大約0.0005%の範囲である。いくつかの実施形態では、試薬中の膜透過性蛍光色素の濃度は、約0.01μM〜最大約15μMの範囲である。いくつかの実施形態では、モル浸透圧濃度調整成分は、塩化アンモニウムまたは塩化ナトリウムである。いくつかの実施形態では、モル浸透圧濃度調整成分の濃度は、約0.1%〜最大約0.5%の範囲である。いくつかの実施形態では、試薬は、WBC保護剤を更に含む。いくつかの実施形態では、WBC保護剤は、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、ブトキシエタノール、フェノキシエタノール、またはイソプロピルアルコールである。いくつかの実施形態では、WBC保護剤の濃度は、約0.1%〜最大約1.0%の範囲である。いくつかの実施形態では、WBC分析試薬は、界面活性剤を更に含む。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、サポニンである。いくつかの実施形態では、界面活性剤の濃度は、約0.01%〜最大約0.05%の範囲である。
【0014】
いくつかの実施形態では、試薬は、pH緩衝成分を更に含む。いくつかの実施形態では、pH緩衝成分は、酢酸ナトリウムまたは重炭酸ナトリウムである。いくつかの実施形態では、pH緩衝成分の濃度は、約0.01%〜最大約0.5%の範囲である。いくつかの実施形態では、試薬は、抗菌剤を更に含む。いくつかの実施形態では、抗菌剤は、プロクリンである。いくつかの実施形態では、抗菌剤の濃度は、約0.01%〜最大約0.1%の範囲である。いくつかの実施形態では、WBC分析試薬のpHは、約2.5〜最大約12.5pH単位の範囲である。いくつかの実施形態では、WBC分析試薬のモル浸透圧濃度は、約25〜最大約350mOsmの範囲である。
【0015】
本明細書に組み込まれる付随の図面は、明細書の一部を形成する。この書面による記載と一緒に、本図面は、本明細書内に提示される試薬、システム、及び方法の原理を説明するために、及び当業者が本明細書内に提示される試薬、システム、及び方法を作製及び使用することを可能にするために機能する。図面において、同じ参照番号は、同一または機能的に類似の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】蛍光色素として3.8μMのアクリジンオレンジを含有するWBC分析試薬を用いて獲得されたWBC散布図(FL1対IAS)を示す。好中球、リンパ球、単球、好酸球、及び好塩基球が、散布図に示される。
【
図2】蛍光色素として1.3μMのヨウ化ヘキシジウムを含有するWBC分析試薬を用いて獲得されたWBC散布図(FL1対IAS)を示す。好中球、リンパ球、単球、好酸球、及び好塩基球が、散布図に示される。
【
図3】蛍光色素として1.3μMのSYTO RNA Selectを含有するWBC分析試薬を用いて獲得されたWBC散布図(FL1対IAS)を示す。好中球、リンパ球、単球、好酸球、及び好塩基球が、散布図に示される。
【
図4】蛍光色素として1.3μMのSYTO 12を含有するWBC分析試薬を用いて獲得されたWBC散布図(FL1対IAS)を示す。好中球、リンパ球、単球、好酸球、及び好塩基球が、散布図に示される。
【
図5】蛍光色素として1.3μMのSYTO 14を含有するWBC分析試薬を用いて獲得されたWBC散布図(FL1対IAS)を示す。好中球、リンパ球、単球、好酸球、及び好塩基球が、散布図に示される。
【
図6A】11.3μM(1X)の濃度で蛍光色素としてアクリジンオレンジを含有するWBC分析試薬を用いて獲得された2つのWBC散布図(PSS対ALL及びFL1対IAS)を示す。好中球、リンパ球、単球、好酸球、及び好塩基球が、散布図に示される。
【
図6B】1.13μM(0.1X)の濃度で蛍光色素としてアクリジンオレンジを含有するWBC分析試薬を用いて獲得された2つのWBC散布図(PSS対ALL及びFL1対IAS)を示す。好中球、リンパ球、単球、好酸球、及び好塩基球が、散布図に示される。
【
図6C】0.11μM(0.01X)の濃度で蛍光色素としてアクリジンオレンジを含有するWBC分析試薬を用いて獲得された2つのWBC散布図(PSS対ALL及びFL1対IAS)を示す。好中球、リンパ球、単球、好酸球、及び好塩基球が、散布図に示される。
【
図6D】0.022μM(0.002X)の濃度で蛍光色素としてアクリジンオレンジを含有するWBC分析試薬を用いて獲得された2つのWBC散布図(PSS対ALL及びFL1対IAS)を示す。好中球、リンパ球、単球、好酸球、及び好塩基球が、散布図に示される。
【
図7A】0.22%のホルムアルデヒドを含有するWBC分析試薬を用いて(例示的なWBC分析試薬1番と同じ配合)獲得された2つのWBC散布図(ALL対IAS及びFL1対ALL)を示す。好中球/好酸球、リンパ球、単球、及び好塩基球が、散布図に示される。
【
図7B】0.22%のホルムアルデヒドを含有するWBC分析試薬を用いて(例示的なWBC分析試薬1番と同じ配合)獲得された2つのWBC散布図(PSS対ALL及びFL1対IAS)を示す。好中球/好酸球、リンパ球、単球、及び好塩基球が、散布図に示される。
【
図7C】0.22%のホルムアルデヒドを含有するWBC分析試薬を用いて(例示的なWBC分析試薬1番と同じ配合)獲得された2つのWBC散布図(PSS対IAS及びFL1対PSS)を示す。好中球/好酸球、リンパ球、単球、及び好塩基球が、散布図に示される。
【
図8A】0.2%のグルタルアルデヒドを含有するWBC分析試薬を用いて(例示的なWBC分析試薬6番と同じ配合)獲得された2つのWBC散布図(ALL対IAS及びFL1対ALL)を示す。好中球/好酸球、リンパ球、単球、及び好塩基球が、散布図に示される。
【
図8B】0.2%のグルタルアルデヒドを含有するWBC分析試薬を用いて(例示的なWBC分析試薬6番と同じ配合)獲得された2つのWBC散布図(PSS対ALL及びFL1対IAS)を示す。好中球/好酸球、リンパ球、単球、及び好塩基球が、散布図に示される。
【
図8C】0.2%のグルタルアルデヒドを含有するWBC分析試薬を用いて(例示的なWBC分析試薬6番と同じ配合)獲得された2つのWBC散布図(PSS対IAS及びFL1対PSS)を示す。好中球/好酸球、リンパ球、単球、及び好塩基球が、散布図に示される。
【
図9A】0.5%のブトキシエタノールを含有するWBC分析試薬を用いて(例示的なWBC分析試薬7番と同じ配合)獲得された2つのWBC散布図(ALL対IAS及びFL1対ALL)を示す。好中球/好酸球、リンパ球、単球、及び好塩基球が、散布図に示される。
【
図9B】0.5%のブトキシエタノールを含有するWBC分析試薬を用いて(例示的なWBC分析試薬7番と同じ配合)獲得された2つのWBC散布図(PSS対ALL及びFL1対IAS)を示す。好中球/好酸球、リンパ球、単球、及び好塩基球が、散布図に示される。
【
図9C】0.5%のブトキシエタノールを含有するWBC分析試薬を用いて(例示的なWBC分析試薬7番と同じ配合)獲得された2つのWBC散布図(PSS対IAS及びFL1対PSS)を示す。好中球/好酸球、リンパ球、単球、及び好塩基球が、散布図に示される。
【
図10A】0.5%のフェノキシエタノールを含有するWBC分析試薬を用いて(例示的なWBC分析試薬8番と同じ配合)獲得された2つのWBC散布図(ALL対IAS及びFL1対ALL)を示す。好中球/好酸球、リンパ球、単球、及び好塩基球が、散布図に示される。
【
図10B】0.5%のフェノキシエタノールを含有するWBC分析試薬を用いて(例示的なWBC分析試薬8番と同じ配合)獲得された2つのWBC散布図(PSS対ALL及びFL1対IAS)を示す。好中球/好酸球、リンパ球、単球、及び好塩基球が、散布図に示される。
【
図10C】0.5%のフェノキシエタノールを含有するWBC分析試薬を用いて(例示的なWBC分析試薬8番と同じ配合)獲得された2つのWBC散布図(PSS対IAS及びFL1対PSS)を示す。好中球/好酸球、リンパ球、単球、及び好塩基球が、散布図に示される。
【
図11A】0.5%のイソプロピルアルコールを含有するWBC分析試薬を用いて(例示的なWBC分析試薬9番と同じ配合)獲得された2つのWBC散布図(ALL対IAS及びFL1対ALL)を示す。好中球/好酸球、リンパ球、単球、及び好塩基球が、散布図に示される。
【
図11B】0.5%のイソプロピルアルコールを含有するWBC分析試薬を用いて(例示的なWBC分析試薬9番と同じ配合)獲得された2つのWBC散布図(PSS対ALL及びFL1対IAS)を示す。好中球/好酸球、リンパ球、単球、及び好塩基球が、散布図に示される。
【
図11C】0.5%のイソプロピルアルコールを含有するWBC分析試薬を用いて(例示的なWBC分析試薬9番と同じ配合)獲得された2つのWBC散布図(PSS対IAS及びFL1対PSS)を示す。好中球/好酸球、リンパ球、単球、及び好塩基球が、散布図に示される。
【
図12A】モル浸透圧濃度調整成分として0.5%の塩化アンモニウムを含有するWBC分析試薬を用いて獲得された3つのWBC散布図(ALL対IAS、PSS対ALL、及びPSS対IAS)を示す。好中球/好酸球、リンパ球、単球、及び好塩基球が、散布図に示される。
【
図12B】モル浸透圧濃度調整成分として0.375%の塩化アンモニウムを含有するWBC分析試薬を用いて獲得された3つのWBC散布図(ALL対IAS、PSS対ALL、及びPSS対IAS)を示す。好中球/好酸球、リンパ球、単球、及び好塩基球が、散布図に示される。
【
図12C】モル浸透圧濃度調整成分として0.25%の塩化アンモニウムを含有するWBC分析試薬を用いて獲得された3つのWBC散布図(ALL対IAS、PSS対ALL、及びPSS対IAS)を示す。好中球/好酸球、リンパ球、単球、及び好塩基球が、散布図に示される。
【
図12D】モル浸透圧濃度調整成分として0.125%の塩化アンモニウムを含有するWBC分析試薬を用いて獲得された3つのWBC散布図(ALL対IAS、PSS対ALL、及びPSS対IAS)を示す。好中球/好酸球、リンパ球、単球、及び好塩基球が、散布図に示される。
図12A〜12D間の比較は、WBC分析試薬中の塩化アンモニウムの濃度における変化が、散布図上のWBC亜集団の位置のずれをもたらしたことを示す。
【
図13】パネルA〜Eが、種々の濃度の塩化ナトリウムを含有するWBC試薬を用いて獲得されたWBC散布図(ALL対IAS)を示す。パネルA:NaClの添加なし、パネルB:+0.033%のNaCl、パネルC:+0.066%のNaCl、パネルD:+0.100%のNaCl、パネルE:+0.133%のNaCl。好中球/好酸球、リンパ球、単球、及び好塩基球が、散布図に示される。
【
図14】(フローサイトメトリーを含む)血液学的分析に好適な装置の照明及び検出光学を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の態様は、試料内の白血球(WBC)及びWBC亜集団を識別、分類、及び/または定量するように全血の試料を分析するために使用され得るWBC分析試薬、システム、及び方法を含む。本開示のWBC分析試薬は、一般的に、少なくとも1つの膜透過性蛍光色素、WBC保護試薬、及び界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、WBC試薬は、WBC試薬のモル浸透圧濃度を所望の範囲に調整するために好適な量のモル浸透圧濃度調整成分を含む。
【0018】
いくつかの態様では、本明細書に開示される試薬、システム、及び方法は、蛍光染色及び蛍光トリガ戦略を用いてWBCを選別するように使用される。本手法を用いることによって、未溶解RBC(例えば、溶解耐性のRBC、または「rstRBC」)及びRBC断片からの干渉は、実質的にまたは完全に排除され、それによって、WBC及びWBC亜集団の正確な計数及び差別化を確実にする。本開示はまた、例えば、蛍光トリガ手法を実行するように構成される自動血液分析装置を用いるWBCの向上した分析を容易にするWBC分析試薬を提供する。本開示のWBC分析試薬は、熟成された試料を含む、脆弱リンパ球(または他の脆弱WBC)を含有する試料のアッセイにもまた好適である。
【0019】
いくつかの実施形態では、例えば、本明細書に開示される方法は、血液試料を、血液分析装置によって生成される散布図上のWBC亜集団を分離するのに十分である濃度において少なくとも1つの膜透過性蛍光色素、WBC保護試薬、界面活性剤、及びモル浸透圧濃度調整成分を含むWBC分析試薬と接触させることと、上昇温度でWBC分析試薬を用いて血液試料をインキュベートすることと、蛍光色素を使って血液試料を染色することと、WBCのための血液試料を選別するように血液分析装置上で蛍光トリガを用いることと、試料内のWBCの差異分析を実施するために(1)軸方向光損失、(2)中間角度散乱、(3)大角度偏光側方散乱、(4)大角度偏光解消側方散乱、及び(5)蛍光放射の測定値の組み合わせを用いることと(例えば、試料内に存在するWBCの様々なサブタイプまたは亜集団の各々の数を計数すること)、を含む。
【0020】
本明細書に説明される蛍光トリガ分析手法と組み合わされて本明細書に説明される蛍光色素の使用は、WBC試薬によって溶解されていないRBCを選別して除くことによってWBCの分析に例外的な感度を提供する。このことは次に、より弱いWBC分析試薬の使用を容易にし(例えば、試料内のRBCを溶解するプロセスにおいてWBCを溶解しないかまたは損傷させない分析試薬)、それは、例えば、モル浸透圧濃度調整成分を用いて、(血液分析装置によって生成される1つ以上の散布図上に表示されるように)互いにWBCの種々の亜集団の更なる分離を容易にするように微細に調整され得る。
【0021】
本明細書で使用されるとき、「蛍光情報」という用語は、血液分析装置の蛍光チャネルから収集されたデータを意味する。本明細書で使用されるとき、「蛍光チャネル」という用語は、試料から放射された蛍光の量を測定するための適切な波長バンドを設定する光電子増倍管等の検出デバイスを意味する。
【0022】
WBC分析試薬
本発明の態様は、自動血液分析装置を用いて血液試料内のWBC及びWBC亜集団の分析を向上させるように使用され得るWBC分析試薬を含む。本発明の実施形態に従うWBC分析試薬は、一般的に血液試料内のRBCを溶解するように使用されるが、同時に分析のために血液試料内のWBCを保存する。本発明の実施形態に従うWBC分析試薬はまた、一般的に血液分析装置によって生成される差異散布図上に表示されるときに互いにWBC亜集団の向上した干渉なしの分離を提供する。この向上した分離は、血液試料内に存在する種々のWBC亜集団のより正確な分析を容易にする。
【0023】
本発明の実施形態に従うWBC分析試薬は、一般的に、少なくとも1つの膜透過性蛍光色素、WBC保護試薬、界面活性剤、モル浸透圧濃度調整成分、ならびにいくつかの追加成分を含み得る。これらの成分の各々は、以下に更に詳細に説明される。
【0024】
膜透過性蛍光色素
膜透過性蛍光色素は、血液細胞の2つのクラス、すなわち、DNAを含有する血液細胞及びDNAを含有しない血液細胞を差別化するように使用され得る。WBCがその核において大量のDNAを含有し、RBCがしないため、DNAと相互作用する膜透過性蛍光色素の含有は、RBCからのWBCの差別化を容易にする。色素の目的は、色素が適切な光源によって励起されるとき、細胞膜を通過させること、十分な親和性を用いて1つ以上の核酸と結合すること、及び十分に適切なストークスシフト(Stokes shift)を用いて蛍光信号を放射する、ことである。可視バンドにおける色素のピーク吸収は、色素を適切に励起し最適な結果を達成するために、光源の波長を実質的に整合する(光源の波長の50nm内、より好ましくは、光源の波長の25nm内)。
【0025】
膜透過性蛍光色素は、好ましくは、1)核酸(例えば、DNA)と結合することができる、2)WBCの細胞膜に浸透することができる、3)光源を受けたときに選択された波長で励起可能である、4)光源による励起時に蛍光を放射する、及び5)生物学的に安定であり液体中(例えば、水溶液)で可溶性である。好適な膜透過性蛍光色素の例としては、アクリジンオレンジ、ヨウ化ヘキシジウム、SYTO 12、SYTO 14、SYTO RNA Select、またはそれらの任意の等価物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
蛍光色素は、一般的に、血液分析装置内に構成された蛍光トリガに基づいてWBCを活性化し未溶解RBC及びRBCの断片を選別して除くように使用される。いくつかの実施形態では、色素は、結合親和性、膜透過性特性、及び/または色素の蛍光放射の強度に応じて、約1pg/L〜最大約1mg/Lの濃度で存在する。いくつかの実施形態では、色素は、結合親和性、膜透過性特性、及び/または色素の蛍光放射の強度に応じて、約1pM〜最大約1mMの濃度で存在する。種々の色素が利用可能であるが、ある単一の色素が、識別、定量化、及び/または分析されるように意図される全てのWBC亜集団の蛍光放射を染色し励起するように使用されるように、選択された色素は、一般的に、血液分析装置の励起源と対にされる。したがって、いくつかの実施形態では、単一の(すなわち、排他的な)色素は、同時に試料内に存在する異なるWBC亜集団の全てを識別、定量化、及び/または分析するように使用され得る。いくつかの実施形態では、2つ以上の蛍光色素が、WBC分析試薬中に含まれ得る。
【0027】
いくつかの実施形態では、蛍光色素は、約1.0μM、最大約1.3μM、最大約1.5μM、最大約1.8μM、または最大約2.0μM以上の濃度でWBC分析試薬中に存在する。いくつかの実施形態では、蛍光色素は、約0.0001%、最大約0.0002%、最大約0.0003%、最大約0.0004%、または最大約0.0005%以上の濃度でWBC分析試薬中に存在する。特定の実施形態では、蛍光色素は、約0.01μM、最大約0.022μM、最大約0.05μM、最大約0.1μM、最大約0.11μM、最大約0.5μM、最大約1.0μM、最大約1.13μM、最大約5.0μM、最大約10μM、最大約11.3μM、最大約15μM以上の濃度でWBC分析試薬中に存在する。
【0028】
WBC保護剤
本発明のいくつかの実施形態に従うWBC分析試薬は、RBC溶解中のWBCへの過度の損傷を防止するWBC保護剤を含んでもよい。WBC保護試薬の例としては、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、ブトキシエタノール、フェノキシエタノール、イソプロピルアルコール、またはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、WBC保護剤は、約0.1%、最大約0.2%、最大約0.3%、最大約0.4%、最大約0.5%、最大約0.6%、最大約0.7%、最大約0.8%、最大約0.9%、または最大約1%の濃度でWBC分析試薬中に存在する。
【0029】
モル浸透圧濃度調整成分
本発明の実施形態に従うWBC分析試薬は、モル浸透圧濃度調整成分を含み得る。モル浸透圧濃度調整成分は、一般的に、所望の程度までWBC分析試薬のモル浸透圧濃度を変化させる試薬である。モル浸透圧濃度調整成分の例としては、例えば、Na+、K+、NH4+、Ca2+、及びMg2+含有塩等のカチオン含有塩、例えば、Cl−、Br−、NO3−、CO32−、HCO3−、SO42−、HSO4−、PO43−、HPO42−、H2PO4−、COOH−、及びCH3COO−含有塩等のアニオン含有塩、例えば、糖(例えば、グルコース及びスクロース)及びアルコール(例えば、エタノール及びメタノール)等の有機化合物、またはそれらの等価物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
いくつかの実施形態では、モル浸透圧濃度調整成分は、約0.1%以上、最大約0.125%以上、最大約0.25%以上、最大約0.5%以上の濃度でWBC分析試薬中に存在する。
【0031】
追加成分
上述の成分に加えて、本発明のいくつかの実施形態に従うWBC分析試薬は、様々な追加成分もまた含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、WBC分析試薬は、溶液のpHを調整及び/または維持し、試薬の最適なモル浸透圧濃度を達成するように使用される緩衝剤または塩を含み得る。緩衝剤または塩の例としては、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、またはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、緩衝剤または塩は、約0.01%、最大約0.02%、最大約0.03%、最大約0.04%、最大約0.05%、最大約0.06%、最大約0.07%、最大約0.08%、最大約0.09%、最大約0.1%、最大約0.15%、最大約0.2%、最大約0.25%、最大約0.3%、最大約0.35%、最大約0.4%、最大約0.45%、最大約0.5%以上の濃度でWBC分析試薬中に存在し得る。
【0032】
いくつかの実施形態では、WBC分析試薬は、約2.5pH単位〜最大約3.0pH単位、最大約3.5pH単位、最大約4.0pH単位、最大約4.5pH単位、最大約5.0pH単位、最大約5.5pH単位、最大約6.0pH単位、最大約6.5pH単位、最大約7.0pH単位、最大約7.5pH単位、最大約8.0pH単位、最大約8.5pH単位、最大約9.0pH単位、最大約9.5pH単位、最大約10pH単位、最大約10.5pH単位、最大約11pH単位、最大約11.5pH単位、最大約12pH単位、最大約12.5pH単位まで変動するpHを有し得る。
【0033】
特定の実施形態では、WBC分析試薬は、WBC分析試薬中の微生物成長を防止するために使用される抗菌剤を含んでもよい。抗菌剤の例としては、例えば、プロクリン300等のプロクリン、またはそれらの等価物が挙げられるが、これらに限定されない。抗菌剤の濃度は、一般的に、必要とされる貯蔵寿命の間WBC分析試薬を保存するのに十分なものである。いくつかの実施形態では、抗菌剤は、約0.01%、最大約0.02%、最大約0.03%、最大約0.04%、最大約0.05%、最大約0.06%、最大約0.07%、最大約0.08%、最大約0.09%、または最大約0.1%以上の濃度でWBC分析試薬中に存在し得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、WBC分析試薬は、RBC断片の蓄積を最小限にし、RBC断片が試料内のWBCの分析に干渉することを防止するように使用される界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤の例としては、サポニン、またはそれらの等価物が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、約0.01%、最大約0.015%、最大約0.02%、最大約0.025%、最大約0.03%、最大約0.035%、最大約0.04%、最大約0.045%、最大約0.05%以上の濃度でWBC分析試薬中に存在し得る。
【0035】
いくつかの実施形態では、WBC分析試薬は、RBC溶解成分を含み得る。RBC溶解成分は、一般的に、血液試料中のRBCを溶解することを促し得ると同時にまた、試料中に存在する異なるクラスのWBCの分離及び/または分析を容易にするようにWBC分析試薬のモル浸透圧濃度調整に対して貢献し得る。RBC溶解成分の例としては、例えば、塩化アンモニウム等のアンモニウム塩、第三級アンモニウム塩、第四級アンモニウム塩、またはそれらの等価物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
WBC分析試薬の調製方法
いくつかの実施形態では、WBC分析試薬は、膜透過性蛍光色素を溶かすために2つの段階の調製プロセスを用いて調製される。第1のステップでは、蛍光色素は、例えば、DMSO等の好適な有機溶媒中に溶かされて、好適な第1の濃度で蛍光色素を含有する溶液を作製する。第2のステップでは、有機溶媒中に蛍光色素を含有する溶液は、所望の最終濃度で蛍光色素を含有する水性WBC分析試薬を作製するために水性溶媒と混合される。いくつかの実施形態では、水性溶媒は、WBC分析試薬の追加成分を含有してもよい。
【0037】
血液試料中のRBCを溶解する方法
本発明の実施形態に従うWBC分析試薬は、一般的に、全血の試料内のRBCを溶解するように使用され得る。血液試料中のRBCの溶解は、室温を超える温度(例えば、約40℃等の約30℃〜約50℃の間)で約5秒〜最大約1分の範囲の時間にわたって行われ得る。いくつかの実施形態では、RBCの溶解は、比較的短時間で実行され得(例えば、約25秒未満、約17秒未満、または更に約9秒未満)、その後に血液の試料をWBC分析試薬と混合することが続き得る。血液試料の容量とWBC分析試薬の容量との希釈比(「血液試料の容量:WBC分析試薬の容量」として表される)は、大幅に変動し得る。いくつかの実施形態では、血液試料の容量とWBC分析試薬の容量との比率は、約1:10〜最大約1:20、最大約1:30、最大約1:40、最大約1:50、最大約1:60、最大約1:70、最大約1:80、最大約1:90、最大約1:100以上の範囲である。
【0038】
蛍光トリガを含む分析の方法
血液細胞は、光源による蛍光色素の励起時に異なる規模の蛍光信号を放射する。蛍光信号の規模における違いは、細胞内の核酸、すなわちDNAの量から部分的に起こる。DNAの量が多ければ多いほど、より高い蛍光信号の可能性が多くなる。蛍光の規模における違いはまた、例えば、細胞膜に浸透する蛍光色素の能力、蛍光色素分子の大きさ、蛍光色素と結合した核酸との間の結合動態、蛍光色素と核酸との間の結合親和性、及び他のそのような要因から起こる。
【0039】
成熟RBC内にDNAが存在しないため、成熟RBCは、最小限の蛍光信号を放射する。DNAが有核赤血球(nRBC)の核内に存在するという理由のみならず、nRBCの膜が溶解手順中に破壊されるため染色がより容易に起こるという理由でも、nRBCは、非常に強い蛍光信号を放射する。未溶解RBCまたはRBC断片は、場合によって、それらは非常に弱い自動蛍光を放射し得るが、蛍光を放射しない。
【0040】
したがって、本明細書に提示されるシステム及び方法は、WBC分析試薬と組み合わせて蛍光トリガを使用して試料内のWBCを分析する。例えば、通常、RBCからの信号とWBCからの信号との間に設定される蛍光トリガを使用して、更なる分析のためにWBCから別個に信号を収集し得る。言い換えれば、蛍光トリガの使用は、RBCからの信号が分離されるかまたは分析から除去されることを可能にし、それは、RBC信号から干渉を排除することによって試料内のWBC及びWBC亜集団のより正確な測定及び分析を促進する。FL1、または蛍光トリガを用いる実施例が、
図1〜5に示される。
図1は、RBC(核のない粒子)の任意の断片を排除し核を含有する事象のみ(例えば、WBC及び/またはnRBC)を収集するために蛍光トリガの使用を示すFL1対IASの散布図である。
図1では、WBC分析試薬中の蛍光色素は、アクリジンオレンジであり、蛍光色素の濃度は、3.8μMであった。(更に徹底的に異なる色素の濃度、すなわち、
図6に示されるように11.3μM〜0.022μMを用いる)蛍光色素としてアクリジンオレンジを含有するWBC分析試薬の使用及び適切に設定されたFL1トリガは、FL1の閾値レベルを確立することによって核含有事象の識別を容易にする。結果として、FL1トリガを超える事象(例えば、存在した場合WBC及び/またはnRBC)のみが、更なる分析のために捕捉される。
【0041】
分析のための光学及び蛍光チャネルの使用
本発明の態様は、血液試料中のWBCを分析するための光学及び蛍光チャネルの使用を含む。例えば、いくつかの実施形態では、WBC差異分析は、蛍光情報によって向上された多角偏光散乱分離(Multiple Angle Polarized Scattering Separation)技術(MAPSS)によって行われる。少なくとも1つの光ダイオード、もしくは少なくとも1つの光電子増倍管、または少なくとも1つの光ダイオード及び少なくとも1つの光電子増倍管の両方が、フローセルを通過する各血液細胞によって散乱された光を検出するために必要である。2つ以上の光ダイオードが、約0°散乱を測定するALL信号と、低角度(例えば、約3°〜約15°)散乱を測定するIAS信号とを測定するために使用される。2つ以上の光電子増倍管(または電子なだれ光ダイオード)が、大角度(例えば、90°)PSS信号と、大角度(例えば、90°)DSS信号とを検出するために使用される。更なる光電子増倍管は、光源の波長の選択に応じて、適切な波長範囲(複数可)内のFL1測定値に必要とされる。システム上で捕捉される各事象は、したがって、ALL、IAS(1つ以上のチャネル)、PSS、DSS、及び蛍光(1つ以上のチャネル)等の情報の複数の寸法を呈する。これらの検出チャネルからの情報は、血液細胞の更なる分析のために使用される。
【0042】
図14は、(フローサイトメトリーを含む)血液学的分析に好適な装置の照明及び検出光学を示す概略図である。ここで
図14を参照すると、装置10は、光源12、光線曲げのための前方鏡14及び後方鏡16、第1の円柱レンズ20及び第2の円柱レンズ22を含む光線膨張器モジュール18、集束レンズ24、微細光線調整器26、フローセル28、前方散乱レンズ30、ブルズアイ検出器32、第1の光電子増倍管34、第2の光電子増倍管36、及び第3の光電子増倍管38を備える。ブルズアイ検出器32は、0°光散乱のための内部検出器32a及び7°光散乱のための外部検出器32bを有する。
図14に描写される装置は、本明細書に説明される方法を実行するように使用され得る装置の単なる実施例である。
【0043】
以下の考察では、光源は、好ましくは、レーザである。しかしながら、例えば、ランプ(例えば、水銀、キセノン)等の他の光源が使用され得る。光源は、CA、Santa ClaraのCoherent,Inc.から市販の垂直偏光空気冷却式Coherent Cubeレーザであり得る。いくつかの実施形態では、350nm〜700nmの範囲の波長を有するレーザが、使用され得る。レーザについての動作条件は、「CELL−DYN」自動血液分析装置で現在使用されるレーザのそれらに実質的に類似している。
【0044】
フローセルに関する更なる詳細は、レンズ、集束レンズ、微細光線調整機構、及び好適な自動血液分析装置のレーザ集束レンズが、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,631,165号、具体的に、第41欄、32行〜第43欄、11行に見出され得る。
図14に示される前方光路システムは、球状平凸レンズ30及びレンズの後焦点面に位置する2素子光ダイオード検出器32を含む。この構成では、2素子光ダイオード検出器32内の各ポイントは、フローセル28を通って移動する細胞からの光の特定の収集角度を地図に描く。検出器32は、軸方向光損失(ALL)及び中間角度前方散乱(IAS)を検出できるブルズアイ検出器であり得る。米国特許第5,631,165号は、第43欄、12〜52行で本検出器に対する種々の代替を説明する。
【0045】
第1の光電子増倍管34(PMT1)は、偏光解消側方散乱(DSS)を測定する。選択される蛍光色素及び用いられる光源に応じて、第2の光電子増倍管36(PMT2)は、偏光側方散乱(PSS)を測定し、第3の光電子増倍管38(PMT3)は、440nm〜680nmの蛍光放射を測定する。光電子増倍管は、信号の強度を増加させるために広範囲の波長において蛍光信号を収集する。側方散乱及び蛍光放射は、二色性光線スプリッタ40及び42によってこれらの光電子増倍管に対して方向付けられ、それは、効率的な検出を可能にするように必要とされる波長で効率的に透過し反射する。米国特許第5,631,165号は、第43欄、53行〜第44欄、4行で、光電子増倍管に関連する種々の更なる詳細を説明する。
【0046】
感度は、蛍光を測定するとき、浸漬収集システムを用いることによって、光電子増倍管34、36、及び38で増強される。浸漬収集システムは、屈折率整合層によって第1のレンズ30をフローセル28に光学的に連結させるものであり、広角にわたって光の収集を可能にする。米国特許第5,631,165号は、第44欄、5〜31行で本光学システムの種々の更なる詳細を説明する。
【0047】
冷却器44は、高分解能顕微鏡検査において使用される回折限界結像に関して十分な収差補正を有する光学レンズシステムである。米国特許第5,631,165号は、第44欄、32〜60行で本光学システムの種々の更なる詳細を説明する。
【0048】
図14に示される他の構成要素の機能、すなわち、スリット46、フィールドレンズ48、及び第2のスリット50は、米国特許第5,631,165号において、第44欄、63行〜第45欄、26行で説明される。検出される光の波長もしくは偏光、または波長及び偏光の両方を変化させるように光電子増倍管の光路内に挿入される光学フィルタ52または56及び偏光子52または56もまた、米国特許第5,631,165号において、第44欄、63行〜第45欄、26行で説明される。本明細書における使用に好適である光学フィルタは、バンドパスフィルタ及びロングパスフィルタを含む。
【0049】
光電子増倍管34、36、及び38は、側方散乱(その軸が入射レーザ光線に対してほぼ垂直である円錐体において散乱される光)または蛍光(入射レーザ光線のそれとは異なる波長で細胞から放射される光)のいずれかを検出する。
【0050】
米国特許第5,631,165号の選択部分が上に参照されるが、米国特許第5,631,165号は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0051】
4つの従来のMAPSSチャネル(ALL、IAS、PSS、DSS)から収集される情報に加えて、FL1チャネルは、互いに細胞亜集団を更に区別する。全ての光学寸法及び蛍光寸法からの組み合わされた定量的情報は、WBCを含有する血液の試料に向上したより信頼性の高い差異分析を提供する。
【0052】
未溶解RBC及びRBC断片からの干渉が実質的に排除されるため、本明細書に説明される方法は、血液分析装置に関するWBC分析を向上させ、より正確なWBC計数及びWBC亜集団のより正確な分類を提供する。蛍光の使用は、WBCの差異分析を改善するように更なる情報を提供する。本明細書に説明される方法は、rstRBCを有する試料及び脆弱WBCを有する試料を分析するとき、従来の方法よりも利点を示す。
【0053】
WBC分析試薬配合例:
WBC分析試薬配合の種々の例を以下に提供する。以下に提示される配合は、単に例として機能するものであり、決して限定するものではない。本明細書内に記載される成分の様々な組み合わせのいずれも、本発明の実施形態に従うWBC分析試薬において利用することができる。
【0054】
配合例1:
配合例2:
配合例3:
配合例4:
配合例5:
配合例6:
配合例7:
配合例8:
配合例9:
配合例10:
配合例11:
【0055】
実施例
図1〜5は、それぞれ、配合例1〜5において上に説明されるWBC分析試薬及びシステムを用いて分析された通常の全血検体に関するWBCの差異散布図(FL1対IAS)を示す。
図1〜5に見られるように、WBC分析試薬は、試料中のWBCを十分に区別し差別化することができた。
【0056】
図6A〜6Dは、4つの異なるWBC分析試薬配合に関するWBCの差異散布図(PSS対ALL及びFL1対IAS)を示す。結果は、WBC分析試薬中の膜透過性蛍光色素の濃度が著しく変動した場合でも同様のWBC差異を獲得するということを示す。試験された4つの配合は、それぞれ、アクリジンオレンジの濃度を、11.3μM(1X)、1.13μM(0.1X)、0.11μM(0.01X)、及び0.022μM(0.002X)で調製し、FL1 PMTの電圧を375V、420V、475V、及び520Vに設定したことを除いて、配合例1のそれらのものと同様であった。
【0057】
図7A〜7Cは、WBC保護剤として0.22%のホルムアルデヒドを含有するWBC分析試薬を用いて(配合例1と同じ配合)分析された通常の全血検体の種々のWBC散布図を示す。
【0058】
図8A〜8Cは、WBC保護剤として0.2%のグルタルアルデヒドを含有するWBC分析試薬を用いて(配合例6と同じ配合)分析された通常の全血検体の種々のWBC散布図を示す。
【0059】
図9A〜9Cは、WBC保護剤として0.5%のブトキシエタノールを含有するWBC分析試薬を用いて(配合例7と同じ配合)分析された通常の全血検体の種々のWBC散布図を示す。
【0060】
図10A〜10Cは、WBC保護剤として0.5%のフェノキシエタノールを含有するWBC分析試薬を用いて(配合例8と同じ配合)分析された通常の全血検体の種々のWBC散布図を示す。
【0061】
図11A〜11Cは、WBC保護剤として0.5%のイソプロピルアルコールを含有するWBC分析試薬を用いて(配合例9と同じ配合)分析された通常の全血検体の種々のWBC散布図を示す。
【0062】
図12A〜12Dは、モル浸透圧濃度調整成分として示された塩化アンモニウムの濃度を含有するWBC分析試薬を用いて獲得された種々のWBC散布図(ALL対IAS、PSS対ALL、及びPSS対IAS)を示す。好中球/好酸球、リンパ球、単球、及び好塩基球が、散布図に示される。WBC分析試薬は、塩化アンモニウムの濃度を示されるように調整したことを除いて、配合例10において使用されたものと同じ配合を有した。WBC分析試薬中の塩化アンモニウムの濃度における変化は、散布図上のWBC亜集団の位置のずれをもたらした。例えば、塩化アンモニウムの濃度は、WBC試薬中で0.125%〜0.5%まで変化した。種々の塩化アンモニウム濃度変化からもたらされるモル浸透圧濃度変化は、ALL対IAS散布図における好中球、リンパ球、及び単球間の相対位置に影響した。より低い塩化アンモニウムの濃度及びより低いモル浸透圧濃度は、好中球集団を「取り除き」、散布図上に好塩基球のための空間を作製するように見てとれる。モル浸透圧濃度を、0.5%、0.375%、0.25%、及び0.125%の塩化アンモニウムを含有するWBC試薬に関して、それぞれ、263、224、181、及び146mOsmで測定した。好中球/好酸球集団の位置的ずれは、散布図を比較することによって見ることができる。
【0063】
図13は、NaClの種々の濃度(配合例11を参照)からもたらされるモル浸透圧濃度変化に因るWBC集団の相対ずれを示す。モル浸透圧濃度は、この実験では149〜181mOsmの範囲であった。
【0064】
本発明の先述の記載は、例証及び説明の目的で提示されている。それは、網羅的であること、または開示される正確な形態に本発明を限定することを意図するものではない。上記教示を踏まえて、他の修正及び変形が可能であり得る。本発明の原理及びその実用性を最善に説明し、それによって当業者が本発明を企図される特定の使用に適したままで様々な実施形態及び様々な修正において最善に利用することを可能にするため、実施形態を選択及び記載した。付随の特許請求の範囲は、等価の構造、成分、方法、及び手段を含む本発明の他の代替実施形態を含むと解釈されることが意図される。
【0065】
上記の発明を実施するための形態は、1つ以上の例示的実施形態を例証する付随の図面を参照する。他の実施形態が可能である。本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、記載される実施形態に修正を加えてもよい。したがって、発明を実施するための形態は、限定するためのものではない。更に、発明の概要及び要約の項は、発明者(ら)により企図される本発明の全てではなく、1つ以上の例示的実施例を明らかにし得るため、本発明及び付随の特許請求の範囲を何らかの形で限定することを意図しない。