(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6692753
(24)【登録日】2020年4月17日
(45)【発行日】2020年5月13日
(54)【発明の名称】透析装置
(51)【国際特許分類】
A61M 1/28 20060101AFI20200427BHJP
【FI】
A61M1/28 130
【請求項の数】10
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-560908(P2016-560908)
(86)(22)【出願日】2015年5月28日
(65)【公表番号】特表2017-518090(P2017-518090A)
(43)【公表日】2017年7月6日
(86)【国際出願番号】EP2015001093
(87)【国際公開番号】WO2015185197
(87)【国際公開日】20151210
【審査請求日】2018年5月25日
(31)【優先権主張番号】102014008367.5
(32)【優先日】2014年6月4日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】597075904
【氏名又は名称】フレゼニウス メディカル ケア ドイッチェランド ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】ヘーニヒ ノルベルト
【審査官】
寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−369882(JP,A)
【文献】
特開平1−501921(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/051927(WO,A1)
【文献】
特表2003−508169(JP,A)
【文献】
特表平10−508787(JP,A)
【文献】
特表平7−506523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透析装置であって、
圧縮機と、
前記圧縮機からの圧縮空気により動作し得るように前記圧縮機と通じた空気圧負荷と、
血圧カフであって、該血圧カフが前記圧縮機による圧縮空気の供給を受けることができるように前記透析装置と通じ又は通じ得る血圧カフと、を備え、
前記圧縮機と血圧カフの間に弁が配置され、前記弁によって前記圧縮機と血圧カフの間のラインがブロックまたは開放される透析装置において、
前記弁が多方弁であり、前記血圧カフ又は他の負荷のいずれかを前記圧縮機と圧縮空気で通じさせるように設計されている、
ことを特徴とする透析装置。
【請求項2】
請求項1記載の透析装置において、
前記透析装置は、前記血圧カフが脱着可能に接続され又は接続され得る、少なくとも1つの接続部を有することを特徴とする透析装置。
【請求項3】
請求項2記載の透析装置において、
前記接続部は、差込形の接続部であることを特徴とする透析装置。
【請求項4】
請求項1記載の透析装置において、
前記弁は二方弁として構成されていることを特徴とする透析装置。
【請求項5】
先行する請求項のうちいずれか1項に記載の透析装置において、
前記透析装置は、前記血圧カフへの圧縮空気の供給、及び/又は、血圧測定の手順を制御し又は調節するように構成された制御又は調節ユニットを有することを特徴とする透析装置。
【請求項6】
請求項5記載の透析装置において、
前記制御又は調節ユニットは、前記透析装置の動作を制御し又は調節するように構成されたことを特徴とする透析装置。
【請求項7】
先行する請求項のうちいずれか1項に記載の透析装置において、
少なくとも1つの圧力センサが血圧を検出するために設けられ、当該圧力センサは、前記透析装置の構成部品を形成し、又は、血圧測定値が前記透析装置にて表示され得るように前記透析装置と連絡していることを特徴とする透析装置。
【請求項8】
先行する請求項のうちいずれか1項に記載の透析装置において、
前記透析装置は、前記血圧カフを用いて測定されたデータの取得、蓄積及び処理が前記透析装置の中で実行されるように構成されたことを特徴とする透析装置。
【請求項9】
先行する請求項のうちいずれか1項に記載の透析装置において、
前記血圧カフを除いて、血圧測定及び測定データ処理のために必要な手段の全てが、前記透析装置の中に配置されたことを特徴とする透析装置。
【請求項10】
先行する請求項のうちいずれか1項に記載の透析装置において、
前記透析装置は腹膜透析装置であることを特徴とする透析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの圧縮機を備え、かつ、圧縮機からの圧縮空気により動作し得るように当該圧縮機と通じた少なくとも1つの空気圧負荷を備えた透析装置、特に腹膜透析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、所要の圧縮空気を複数の負荷へ供給する圧縮機を備えた腹膜透析装置が知られている。当該負荷は、例えば、患者に対する処置の間、腹膜透析装置に結合されたディスポーザブル(使い捨て用品)の中の流路を制御する、空気圧弁の形態の空気圧アクチュエータを含む。圧縮機から圧縮空気の供給を受け得る空気圧アクチュエータの他の例は、作動油の脱気に必要とされ、またドロアと機械ブロックとの間のディスポーザブルの押圧に役立つ当該ドロアの下のエアクッションに必要とされる、油圧ポンプにおけるブリード弁である。通常は、空気圧が特定の圧力値、例えば2barに制限される。
【0003】
圧縮機の制御は、作動コンピュータを通じて行われる。
【0004】
抵抗測定に基づいて体内水分を決定する装置が、米国特許出願公開第2003/0120170号明細書から知られている。この体内水分を決定する間は、血圧が特定の範囲に維持される。米国特許出願公開第2001/0012917号明細書及び米国特許出願公開第2002/0193691号明細書には、透析処置の間における患者の血圧測定が記載されている。
【発明の概要】
【0005】
本発明の基礎をなす目的は、透析処置の実行を容易にするように、透析装置、特に腹膜透析装置を更に発展させることにある。
【0006】
この目的は、請求項1の特徴を備えた透析装置により達成される。つまり、透析装置が少なくとも1つの血圧カフと通じ又は通じ得ることにより、血圧カフが透析装置の圧縮機による圧縮空気の供給を受け得るようにされる。したがって、本発明の基礎をなす概念は、当該装置の圧縮機が圧縮空気を従来の空気圧アクチュエータへ供給するだけでなく、血圧カフへも供給するように、最初に言及した種類の透析装置を更に発展させることにある。
【0007】
このことは、血圧測定が直接に透析装置へ統合され得ること、また好ましくは患者により又はユーザにより付加的に操作されるべき別個のユニットを必要としないこと、という利点を有する。
【0008】
「圧縮機」という用語は、一般的な意味に、つまり狭義の圧縮機だけでなく、所望の圧縮空気の任意の源を含むものと理解されるべきである。
【0009】
本発明の好ましい実施形態によれば、血圧カフを除いて、血圧測定に必要な構成部品と、必要に応じて測定データの処理に必要な構成部品とが、透析装置の中へ統合される。
【0010】
したがって、本発明によれば、透析装置の圧縮機は、背景技術から知られた、弁やディスポーザブル・カセットを固定するためのエアクッションのような負荷への圧縮空気の供給に役立つだけでなく、血圧カフへの圧縮空気の供給にも役立つ。したがって、血圧カフへの圧縮空気の供給のために特に設けられる別個の圧縮機、エアポンプなどは、本発明によれば、不要である。
【0011】
透析装置は、血圧カフが脱着可能に接続され又は接続され得る、少なくとも1つの接続部を有することが好ましい。この接続部は、差込形の接続部であり得る。これにより、透析装置に対する血圧カフの特に簡単な接続部が可能になる。
【0012】
本発明の他の実施形態によれば、圧縮機と血圧カフとの間に少なくとも1つの弁が配され、かつ、圧縮機と血圧カフとの間の1つ以上のライン、特に圧縮空気ラインが、弁によって閉鎖され又は解放され得る。
【0013】
血圧測定の必要がない場合、弁は、好ましくは閉鎖位置にある。すなわち、圧縮機の高圧側と血圧カフとの間の圧力ラインがブロックされる。血圧測定を行う場合、弁は、血圧カフが圧縮機から圧縮空気の供給を受け得るように、開かれる。
【0014】
弁は、血圧カフ又は1つ以上の他の負荷のいずれかが圧縮機と圧縮空気で通じるように設計された多方弁として、好ましくは二方弁として構成されることが、好ましい。
【0015】
本発明の他の実施形態によれば、透析装置は、血圧カフへの圧縮空気の供給、及び/又は、血圧測定の手順を制御し又は調節するように構成された制御又は調節ユニットを有する。この制御又は調節ユニットは、上記の弁を開き、かつ圧縮機を動作させることで、血圧カフへ圧縮空気を供給するように構成され得る。同ユニットは、血圧カフへの圧縮空気の供給動作を含む、血圧測定の全手順を更に制御し又は調節し得る。測定データの処理及び/又は格納及び/又は表示もまた、当該制御又は調節ユニットにより実行され得る。
【0016】
上記制御又は調節ユニットは、透析装置の動作をも制御し又は調節するユニットであることが好ましい。したがって、好ましくは、透析装置のソフトウェアにより血圧測定が行われる。
【0017】
本発明の他の実施形態によれば、少なくとも1つの圧力センサが血圧を検出するために設けられ、当該圧力センサは、透析装置の構成部品を形成し、又は透析装置と連絡している。血圧測定値は、透析装置にて表示され得ることが好ましい。好ましくは、透析装置の中に既に備えられた圧力センサが、上記圧力センサとして利用され得る。これにより、血圧測定のために別に設けられる別個の圧力センサは、不要である。
【0018】
したがって、血圧カフ中の圧力の受信は、透析装置の中の圧力センサを介して行われ得る。好ましくは、当該装置の中に既に備えられ、かつ他の圧力測定にも必要とされる圧力センサが、この目的で利用される。
【0019】
血圧測定値は、透析装置のディスプレイに表示されることが好ましい。ここでも、当該装置に既に備えられたディスプレイが、1つ又は複数の血圧値の表示に利用されるのが好ましい。
【0020】
本発明の好ましい実施形態によれば、透析装置は、血圧カフを用いて測定されたデータの取得、蓄積及び処理が透析装置の中で実行されるように構成される。したがって、圧力センサの部分で得られたデータを処理及び/又は格納するプロセッサ、メモリなどが、透析装置の中に備えられ得る。
【0021】
本発明の他の好ましい実施形態によれば、血圧カフを除いて、血圧測定及び測定データ処理のために必要な手段の全てが、透析装置の中に配置される。本発明のこの実施形態によれば、1つの血圧カフが透析装置に設けられ、又はこれに差し込まれるだけでよい。1つ又は複数の圧力センサ、圧縮機、制御又は調節ユニット、ディスプレイ、メモリ、データ処理のための処理ユニットなどの、血圧測定の構成として必要な他の全ての構成部品は、透析装置の構成部品であることが好ましい。このことは、それによって血圧測定がユーザ側で開始され得る、ボタン、スイッチなどの操作エレメントにも当てはまる。
【0022】
透析装置の一部にて、例えば特定の時間間隔で血圧測定が全自動で行われるという事実は、本発明にも概して該当する。
【0023】
図面に示された実施形態を参照しながら、本発明の他の利点及び特徴を、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】腹膜透析装置の圧縮機と、弁及び血圧カフと、空気圧システムとの概略を示す唯一の図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
参照符号100は、腹膜透析装置の圧縮機を示している。
【0026】
圧縮機100の高圧側Dは、三/二方弁200の位置に応じて、腹膜透析装置の空気圧システム300又は血圧カフ400と選択的に通じる。
【0027】
腹膜透析装置の空気圧システム300は、例えば、ディスポーザブル・カセットにおける流路を切り換えるための空気圧弁、つまり作動油の脱気に必要とされ、またドロアと腹膜透析装置の機械ブロックとの間のディスポーザブル・セットを押圧するようにエアクッションへ圧縮空気を印加するのに必要とされる、腹膜透析装置の油圧ポンプにおけるブリード弁を切り換えるための空気圧弁を備える。
【0028】
好ましくは、圧縮機100の高圧側Dにおける圧力を2barほどの最大値に制限する圧力制限装置が設けられる。
【0029】
参照符号500は、その中に圧縮機100と弁200とが配されたハウジングを表す。
【0030】
腹膜透析装置は、当該腹膜透析装置の動作を実行するだけでなく、血圧測定の動作をも実行するソフトウェア或いは制御又は調節ユニットを有する。血圧測定のための制御又は調節を腹膜透析装置の制御又は調節から切り離すことも考えられる。
【0031】
血圧測定を実行すべき場合、それはボタンなどを操作することにより又は当該ユニットによって自動的に実行され得るが、弁200は、
図1に示された位置から、圧縮機100の高圧側がライン410を介して血圧カフ400と通じて、圧縮空気が血圧カフ400へ導入され得るように、アクチュエータなどにより移動させられる。この弁位では、接続部の2と3ではなく、2と1が接続される結果、圧縮機100の高圧側と腹膜透析装置の空気圧システム300との間の連絡が断たれる。
【0032】
血圧測定が終了した後、空気は、同ライン410を介して戻され得る。
【0033】
血圧測定の手順は、制御又は調節ユニットにより実行されることが好ましい。これにより、血圧カフ400に圧力が設定され、また血圧測定の他の全手順が実行される。
【0034】
圧力測定は、腹膜透析装置の圧力センサによって実行される。血圧測定値の表示は、腹膜透析装置のディスプレイにて行われる。血圧値の格納及び/又は他の処理は、同様に、腹膜透析装置の中で行われ得る。
【0035】
血圧測定の後、弁200は、
図1に示された位置に戻る。この弁位置では、接続部の2と1ではなく、2と3が接続される結果、圧縮機100の高圧側と血圧カフ400との間の連絡が断たれる。弁200のリセットは、自動的に又はユーザによる起動で行われる。
【0036】
弁200は、血圧測定の期間を除き、常に
図1に示された位置にあるように、例えばバネにより、
図1に示された位置にバイアスされることが好ましい。この位置では、圧縮機の高圧側が、ライン310を介して腹膜透析装置の空気圧システムに接続される。