(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6692844
(24)【登録日】2020年4月17日
(45)【発行日】2020年5月13日
(54)【発明の名称】インクジェット方法及び3Dプリンティング装置
(51)【国際特許分類】
B29C 64/386 20170101AFI20200427BHJP
B29C 64/112 20170101ALI20200427BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20200427BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20200427BHJP
B33Y 50/00 20150101ALI20200427BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20200427BHJP
B41J 2/205 20060101ALI20200427BHJP
【FI】
B29C64/386
B29C64/112
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/00
B41J2/01 109
B41J2/205
【請求項の数】13
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-39660(P2018-39660)
(22)【出願日】2018年3月6日
(65)【公開番号】特開2019-43127(P2019-43127A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2018年3月6日
(31)【優先権主張番号】201710760887.8
(32)【優先日】2017年8月30日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514008930
【氏名又は名称】三緯國際立體列印科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】XYZprinting, Inc.
(73)【特許権者】
【識別番号】511067204
【氏名又は名称】金▲宝▼電子工業股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(72)【発明者】
【氏名】謝 欣達
(72)【発明者】
【氏名】▲黄▼ 郁庭
(72)【発明者】
【氏名】施 可▲うぇい▼
【審査官】
▲来▼田 優来
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−044299(JP,A)
【文献】
特開2014−082551(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C64/112,64/386
B33Y50/00
B41J2/01,2/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3Dプリンティング装置に適用されるインクジェット方法であって、前記3Dプリンティング装置は、プロセッサと、記憶装置と、インクジェットヘッドとを備え、前記記憶装置は、第1の参照画像と第2の参照画像とを記憶し、前記第1の参照画像と前記第2の参照画像とは、3Dモデルを水平にスライスすることで得られる2つの隣接する層画像であり、前記インクジェット方法は、
前記プロセッサによって、前記第1の参照画像中の第1の参照ピクセルの第1の参照ピクセル値が、所定の閾値以上か判別し、第1のインクジェット画像における第1のピクセルの第1のピクセル値を決定し、前記第1のインクジェット画像は、2値画像であり、かつ、前記第1のピクセル値は、1又は0であり、
前記プロセッサによって、前記第1の参照画像及び前記第2の参照画像の少なくとも1つにおける前記第1の参照ピクセルに隣接する少なくとも1つの第2の参照ピクセルの数に従って、前記少なくとも1つの第2の参照ピクセルに対応する少なくとも1つの重み値を生成し、
前記プロセッサによって、前記第1の参照ピクセル値、前記第1のピクセル値、及び前記少なくとも1つの重み値に従って、前記第1の参照画像及び前記第2の参照画像の少なくとも1つにおける前記少なくとも1つの第2の参照ピクセルの少なくとも1つの第2の参照ピクセル値を調整する、ことを含み、
前記第1の参照画像及び前記第2の参照画像の少なくとも1つにおける前記第1の参照ピクセルに隣接する前記少なくとも1つの第2の参照ピクセルの数に従って、前記少なくとも1つの第2の参照ピクセルに対応する前記少なくとも1つの重み値を生成するステップは、
前記プロセッサによって、前記第1の参照ピクセルに隣接する前記少なくとも1つの第2の参照ピクセルの誤差拡散マトリクスを、少なくとも1つ確立し、かつ、前記少なくとも1つの誤差拡散マトリクスは、前記少なくとも1つの重み値を含む、
ことを特徴とするインクジェット方法。
【請求項2】
前記プロセッサによって、前記第1の参照画像中の前記第1の参照ピクセルの前記第1の参照ピクセル値が、前記所定の閾値以上か判別し、前記第1のインクジェット画像における前記第1のピクセルの前記第1のピクセル値を決定するステップは、
前記第1の参照ピクセル値が、前記所定の閾値以上の場合、前記プロセッサによって、前記第1のインクジェット画像における前記第1のピクセルの前記第1のピクセル値は、1であると決定し、
前記第1の参照ピクセル値が、前記所定の閾値未満の場合、前記プロセッサによって、前記第1のインクジェット画像における前記第1のピクセルの前記第1のピクセル値は、0であると決定する、ことを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット方法。
【請求項3】
前記第1のピクセル値が1の場合、前記インクジェットヘッドによって、3Dプリントされたオブジェクト上の前記第1のピクセルに対応する位置にインクジェット動作を行い、
前記第1のピクセル値が0の場合、前記インクジェットヘッドによって、3Dプリントされたオブジェクト上の前記第1のピクセルに対応する位置にインクジェット動作を行わない、ことをさらに含む、
ことを特徴とする請求項2に記載のインクジェット方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの重み値の合計は、1である、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェット方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの重み値の大きさは、前記少なくとも1つの第2の参照ピクセルの前記第1の参照ピクセルに対する関連性に正比例する、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクジェット方法。
【請求項6】
前記プロセッサによって、前記第1の参照ピクセル値、前記第1のピクセル値、及び前記少なくとも1つの重み値に従って、前記第1の参照画像及び前記第2の参照画像の少なくとも1つにおける前記少なくとも1つの第2の参照ピクセルの少なくとも1つの第2の参照ピクセル値を調整するステップは、
前記プロセッサによって、前記第1の参照ピクセル値から、前記第1のピクセル値を減算して、誤差値を取得し、
前記プロセッサによって、前記誤差値を前記少なくとも1つの第2の参照ピクセルに対応する前記少なくとも1つの重み値で乗算して、調整した値を取得し、
前記調整した値を前記少なくとも1つの参照ピクセル値に加算して、前記少なくとも1つの第2の参照ピクセル値を調整する、ことを含む、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインクジェット方法。
【請求項7】
3Dプリンティング装置であって、
複数のモジュールと、第1の参照画像と第2の参照画像とを記憶するよう構成される記憶装置であって、前記第1の参照画像と前記第2の参照画像とは、3Dモデルを水平にスライスすることで得られる2つの隣接する層画像である記憶装置と、
前記記憶装置に接続され、前記複数のモジュールを実行するよう構成されるプロセッサと、
前記プロセッサに接続され、3Dプリントされたオブジェクトに対してインクジェット動作を行うよう構成されるインクジェットヘッドと、
を備え、
前記プロセッサは、前記第1の参照画像中の第1の参照ピクセルの第1の参照ピクセル値が、所定の閾値以上か判別し、第1のインクジェット画像における第1のピクセルの第1のピクセル値を決定し、前記第1のインクジェット画像は、2値画像であり、かつ、前記第1のピクセル値は、1又は0であり、
前記プロセッサは、前記第1の参照画像及び前記第2の参照画像の少なくとも1つにおける前記第1の参照ピクセルに隣接する少なくとも1つの第2の参照ピクセルの数に従って、前記少なくとも1つの第2の参照ピクセルに対応する少なくとも1つの重み値を生成し、
前記プロセッサは、前記第1の参照ピクセル値、前記第1のピクセル値、及び前記少なくとも1つの重み値に従って、前記第1の参照画像及び前記第2の参照画像の少なくとも1つにおける前記少なくとも1つの第2の参照ピクセルの少なくとも1つの第2の参照ピクセル値を調整し、
前記プロセッサは、前記第1の参照ピクセルに隣接する前記少なくとも1つの第2の参照ピクセルの誤差拡散マトリクスを、少なくとも1つ確立し、かつ、前記少なくとも1つの誤差拡散マトリクスは、前記少なくとも1つの重み値を含む、
ことを特徴とする3Dプリンティング装置。
【請求項8】
前記第1の参照ピクセルが最初の参照ピクセルの場合、前記プロセッサは、前記第1の参照ピクセルの前記第1の参照ピクセル値を1に設定する、ことを特徴とする請求項7に記載の3Dプリンティング装置。
【請求項9】
前記第1の参照ピクセル値が前記所定の閾値以上の場合、前記プロセッサは、前記第1のインクジェット画像における前記第1のピクセルの前記第1のピクセル値が、1であると決定し、
前記第1の参照ピクセル値が前記所定の閾値未満の場合、前記プロセッサは、前記第1のインクジェット画像における前記第1のピクセルの前記第1のピクセル値が、0であると決定する、
ことを特徴とする請求項7または8に記載の3Dプリンティング装置。
【請求項10】
前記第1のピクセル値が1の場合、前記プロセッサは、前記インクジェットヘッドを駆動して前記3Dプリントされたオブジェクト上の前記第1のピクセルに対応する位置にインクジェット動作を行わせ、
前記第1のピクセル値が0の場合、前記プロセッサは、前記インクジェットヘッドを駆動せず前記3Dプリントされたオブジェクト上の前記第1のピクセルに対応する位置にインクジェット動作を行わせない、
ことを特徴とする請求項9に記載の3Dプリンティング装置。
【請求項11】
前記少なくとも1つの重み値の合計は、1である、ことを特徴とする請求項7乃至10のいずれか1項に記載の3Dプリンティング装置。
【請求項12】
前記少なくとも1つの重み値の大きさは、前記少なくとも1つの第2の参照ピクセルの前記第1の参照ピクセルに対する関連性に正比例する、ことを特徴とする請求項7乃至11のいずれか1項に記載の3Dプリンティング装置。
【請求項13】
前記プロセッサは、前記第1の参照ピクセル値から、前記第1のピクセル値を減算して、誤差値を取得し、
前記プロセッサは、前記誤差値を前記少なくとも1つの第2の参照ピクセルに対応する前記少なくとも1つの重み値で乗算して、調整した値を取得し、
前記プロセッサは、前記調整した値を前記少なくとも1つの参照ピクセル値に加算して、前記少なくとも1の第2の参照ピクセル値を調整する、
ことを特徴とする請求項7乃至12のいずれか1項に記載の3Dプリンティング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する技術分野は、インクジェット技術、より詳細には、インクジェット方法及び3Dプリンティング装置に関連する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ支援製造(CAM)の進歩に伴って、製造産業界は、オリジナルのデザインコンセプトから迅速にプロダクトを製作可能な3Dプリンティング技術を発展させた。3Dプリンティング技術は、実際には、一連のラピッドプロトタイピング(RP)技術の総称である。その基本原理は、プリンティングプラットフォーム上への積層製造であり、RP機器は、プリンティングプラットフォーム上に、スキャンを介して水平面上に複数の層オブジェクトを連続してプリントする。これにより、層オブジェクトが積層されて3Dプリントされたオブジェクトが形成される。
【0003】
また、既存の3Dプリンティング技術は、さらに、3Dプリントされたオブジェクト上にインクジェット動作を行うことを含む。すなわち、3Dプリンティング装置が層オブジェクトを印刷する場合、同時に、層オブジェクトのそれぞれに対してインクジェット動作が実行される。しかしながら、3Dプリンティング装置のインクジェット動作においては、インクジェット画像の複数のピクセルに対応する層オブジェクト中の位置に対してインクジェット動作を実行するか否かは、ピクセルのピクセル値によって判別される。従って、ユーザが3Dプリンティング装置へ入力する画像が、より高い解像度を有する参照画像である場合、3Dプリンティング装置は、この参照画像に従ってインクジェット動作を行なうことができない場合がある。あるいは、別の場合では、3Dプリンティング装置のインクジェット解像度と参照画像の解像度との差によって、インクジェット動作の実施の後の3Dプリントされたオブジェクトのオブジェクト画像が、極度に歪む場合がある。以上より、いくつかの例示的な実施の形態が、そのような問題を解決するために提案される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、インクジェット方法及び3Dプリンティング装置を提供し、インクジェット画像が参照画像に従って生成され、これによって3Dプリンティング装置が3Dプリントされたオブジェクトに対して正確にインクジェット動作を実行することができるようになる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のインクジェット方法は、3Dプリンティング装置に適用される。前記3Dプリンティング装置は、プロセッサと、記憶装置と、インクジェットヘッドとを備える。前記記憶装置は、第1の参照画像と第2の参照画像とを記憶する。前記第1の参照画像と前記第2の参照画像とは、3Dモデルを水平にスライスすることで得られる2つの隣接する層画像である。前記インクジェット方法は、以下のステップを含む。前記プロセッサによって、前記第1の参照画像中の第1の参照ピクセルの第1の参照ピクセル値が、所定の閾値以上か判別し、第1のインクジェット画像における第1のピクセルの第1のピクセル値を決定する。
前記第1のインクジェット画像は、2値画像であり、かつ、前記第1のピクセル値は、1又は0である。前記プロセッサによって、前記第1の参照画像及び前記第2の参照画像の少なくとも1つにおける前記第1の参照ピクセルに隣接する少なくとも1つの第2の参照ピクセルの数に従って、前記少なくとも1つの第2の参照ピクセルに対応する少なくとも1つの重み値を生成する。前記プロセッサによって、前記第1の参照ピクセル値、前記第1のピクセル値、及び前記少なくとも1つの重み値に従って、前記第1の参照画像及び前記第2の参照画像の少なくとも1つにおける前記少なくとも1の第2の参照ピクセルの少なくとも1つの第2の参照ピクセル値を調整する。
前記第1の参照画像及び前記第2の参照画像の少なくとも1つにおける前記第1の参照ピクセルに隣接する前記少なくとも1つの第2の参照ピクセルの数に従って、前記少なくとも1つの第2の参照ピクセルに対応する前記少なくとも1つの重み値を生成するステップは、前記プロセッサによって、前記第1の参照ピクセルに隣接する前記少なくとも1つの第2の参照ピクセルの誤差拡散マトリクスを、少なくとも1つ確立し、かつ、前記少なくとも1つの誤差拡散マトリクスは、前記少なくとも1つの重み値を含む。
【0006】
本開示の3Dプリンティング装置は、記憶装置と、プロセッサと、インクジェットヘッドとを備える。前記記憶装置は、複数のモジュールと、第1の参照画像と第2の参照画像とを記憶するよう構成される。前記第1の参照画像と前記第2の参照画像とは、3Dモデルを水平にスライスすることで得られる2つの隣接する層画像である。前記プロセッサは、前記記憶装置に接続される。前記プロセッサは、前記複数のモジュールを実行するよう構成される。前記インクジェットヘッドは、前記プロセッサに接続される。前記インクジェットヘッドは、3Dプリントされたオブジェクトに対してインクジェット動作を行うよう構成される。前記プロセッサは、前記第1の参照画像中の第1の参照ピクセルの第1の参照ピクセル値が、所定の閾値以上か判別し、第1のインクジェット画像における第1のピクセルの第1のピクセル値を決定する。
前記第1のインクジェット画像は、2値画像であり、かつ、前記第1いのピクセル値は、1又は0である。前記プロセッサは、前記第1の参照画像及び前記第2の参照画像の少なくとも1つにおける前記第1の参照ピクセルに隣接する少なくとも1つの第2の参照ピクセルの数に従って、前記少なくとも1つの第2の参照ピクセルに対応する少なくとも1つの重み値を生成する。前記プロセッサは、前記第1の参照ピクセル値、前記第1のピクセル値、及び前記少なくとも1つの重み値に従って、前記第1の参照画像及び前記第2の参照画像の少なくとも1つにおける前記少なくとも1つの第2の参照ピクセルの少なくとも1つの第2の参照ピクセル値を調整する。
前記プロセッサは、前記第1の参照ピクセルに隣接する前記少なくとも1つの第2の参照ピクセルの誤差拡散マトリクスを、少なくとも1つ確立し、かつ、前記少なくとも1つの誤差拡散マトリクスは、前記少なくとも1つの重み値を含む。
【発明の効果】
【0007】
以上より、本開示に係るインクジェット方法及び3Dプリンティング装置では、複数の参照画像の各ピクセルが分析され、連続して誤差拡散法によって調整され、これによって複数の対応するインクジェット画像が正確に生成される。従って、本開示に係る3Dプリンティング装置は、インクジェット画像に従って、3Dプリントされたオブジェクトに対してインクジェット動作を正確に実行することができる。
【0008】
本開示の上記の特徴及び利点についての理解をより容易にするため、添付の図面とともにいくつかの実施の形態について以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】例示的な実施の形態に係る3Dプリンティング装置のブロック図である。
【0010】
【
図2】
図1における例示的な実施の形態に係る3Dプリンティング装置の概要図である。
【0011】
【
図3A】例示的な実施の形態に係る複数の参照画像の概要図である。
【0012】
【
図3B】例示的な実施の形態に係る第1の参照画像及び第2の参照画像の概要図である。
【0013】
【
図3C】例示的な実施の形態に係るインクジェット画像の概要図である。
【0014】
【
図4A】例示的な実施の形態に係る複数のインクジェット画像の概要図である。
【0015】
【
図4B】例示的な実施の形態に係る、参照画像がインクジェット画像に変換される様子を示す概要図である。
【0016】
【
図5】例示的な実施の形態に係るインクジェット方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示についての理解を容易にするため、例示的な実施の形態を、本開示を実際に実現する例として以下に説明する。また、好適な場合には、同一の参照番号が付された要素/構成部材/ステップは、図面及び実施の形態において、同一あるいは類似の部分を示す。
【0018】
図1は、例示的な実施の形態に係る3Dプリンティング装置の概要図である。
図1を参照すると、3Dプリンティング装置100は、プロセッサ110と、プリント部120と、記憶装置130とを備える。プロセッサ110は、プリント部120及び記憶装置130に接続される。この例示的な実施の形態では、プロセッサ110は、3Dプリンティング動作を実行するため、プリント部120を操作するように構成される。この例示的な実施の形態では、プリント部120は、プリントヘッド、インクジェットヘッド、ドライバ等を含んでいてもよい。例えば、プリントヘッドは、プリンティングプラットフォーム上に3Dプリントされたオブジェクトをプリントするように構成され、インクジェットヘッドは、3Dプリントされたオブジェクトに対してインクジェット動作を実行するように構成される。この例示的な実施の形態では、プリント部120は、さらに、例えば、プリントヘッド、インクジェットヘッド及びドライバとともに3Dプリンティング及びインクジェッド動作を完了するための他の構成要素を含んでよく、他の構成用途としては、例えば、コントローラ、加熱モジュール、供給パイプラインあるいはリンク機構が挙げられる。また、この分野における周知技術から、教示、示唆及び具現の態様が十分に得られるので、本明細書では関連部材の詳細な説明については省略する。
【0019】
この例示的な実施の形態では、プロセッサ110は、処理チップ、画像処理チップ、あるいは例えば中央演算装置(CPU)もしくはプログラマブル汎用あるいは専用マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、プログラマブルコントローラ、アプリケーションスペシフィックインテグレーテッドサーキット(ASIC)、プログラマブルロジックデバイス(PLD)、他の同様の処理回路、あるいはそれらの組み合わせであってよい。
【0020】
この例示的な実施の形態では、記憶装置130は、例えば、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、フラッシュメモリあるいは不揮発性のランダムアクセスメモリ(NVRAM)等であってよい。この例示的な実施の形態では、記憶装置130は、例えば、画像編集モジュール、オペレーションモジュール、画像データ等を記憶し、プロセッサ110がモジュール及び画像データを読み出して実行でき、これによって本開示の例示的な実施の形態に係るインクジェット方法を実現する。この例示的な実施の形態では、記憶装置130は、さらに、複数の参照画像を記憶し、この参照画像は、水平に3Dモデルをスライスすることで得られた複数の隣接層画像である。
【0021】
この例示的な実施の形態では、3Dプリンティング装置100が、3Dプリントされたオブジェクトのある層オブジェクトのプリンティングを完了すると、3Dプリンティング装置100は、この層オブジェクトに対してインクジェット動作を実行し続けるため、対応するインクジェット画像を読み出す。この例示的な実施の形態では、3Dプリンティング装置100は、インクジェット画像中の各ピクセル位置におけるピクセル値が、1か0かに応じて、3Dプリンティング装置100が、3Dプリントされたオブジェクト上の対応する場所に対してインクジェット動作を実行するか否かを判別するように、インクジェット動作を実行する。しかしながら、この例示的な実施の形態において、3Dプリンティング装置100によって受け取られた参照画像の解像度が、3Dプリンティング装置100のインクジェット解像度よりも高い場合があるので、3Dプリンティング装置100は、複数の対応するインクジェット画像を取得するため、参照画像を事前に分析して調整する。すなわち、この例示的な実施の形態では、3Dプリンティング装置100は、外部から入力された参照画像を、3Dプリンティング装置100に適用可能なインクジェット解像度を有するインクジェット画像に変換するように構成される。また、この例示的な実施の形態では、インクジェット画像は、例えば、
2値画像であってよい。従って、3Dプリンティング装置100は、インクジェット画像の各ピクセル位置のピクセル値(1または0)に応じてインクジェット動作を実行するべきかどうか明白に判別し得る。
【0022】
図2は、
図1の例示的な実施の形態に係る3Dプリンティング装置の概要図である。
図1及び
図2を参照すると、この例示的な実施の形態では、3Dプリンティング装置100は、例えば、第1の方向P1と、第2の方向P2と、第3の方向P3とで形成される空間に配置され、第1の方向P1、第2の方向P2、及び第3の方向P3は、互いに垂直である。この例示的な実施の形態では、プロセッサ110は、プリント部120に接続され、プリント部120は、プリントヘッド121とインクジェットヘッド122とを備える。この例示的な実施の形態では、プリントヘッド121は、3Dプリントされたオブジェクト20をプリントするように、プリンティングプラットフォーム140の(第1の方向P1及び第2の方向P2によって形成された面と平行な)搬送面S1上に3Dプリンティング動作を行うように構成される。インクジェットヘッド122は、3Dプリントされたオブジェクト20に対してインクジェット動作を実行するように構成される。例えば、まず、プロセッサ110は、3Dモデルの複数の層画像に従ってプリントヘッド121の移動経路を制御し、プリンティングプラットフォーム140の搬送面S1上に層オブジェクトをプリントするようにプリントヘッド121を操作する。ここで、層画像は2D画像ファイルである。次に、プロセッサ110は、複数の対応インクジェット画像を生成するため、複数の参照画像を分析し、プロセッサ110は、インクジェット画像に従って、対応する層オブジェクトに対してインクジェットヘッド122によるインクジェット動作を実行すべきか否か判別する。
【0023】
図3Aは、例示的な実施の形態に係る複数の参照画像の概要図である。
図3Aを参照すると、この例示的な実施の形態では、複数の参照画像300(1)乃至300(n)が、それぞれ、3Dプリントされたオブジェクト20の層オブジェクトに対応し、nは0より大きい正の整数である。この例示的な実施の形態では、参照画像300(1)乃至300(n)は、例えば、それぞれ、画像の端でピクセル変更を有する、あるいは、それぞれ、画像の全領域に渡ってピクセル変更を有し得る。本開示はこれに限定されない。例えば、3Dプリントされたオブジェクト20は、単にその外殻にのみ色を示す必要があるため、参照画像300(1)乃至300(k+1)は、それぞれ、画像の端にのみピクセル変更を有してよい。しかしながら、参照画像300(n)は、3Dプリントされたオブジェクト20の最上層上にあり、従って画像の全領域に渡ってピクセル変更を有する。
【0024】
図3Bは、例示的な実施の形態に係る、第1の参照画像及び第2の参照画像の概要図である。
図3Cは、例示的な実施の形態に係るインクジェット画像の概要図である。
図2乃至3Cを参照すると、参照画像300(1)乃至300(n)のうち、2つの参照画像300(k)及び300(k+1)を、例示の目的で説明し、kは1とnとの間である。この例示的な実施の形態では、参照画像300(k)及び300(k+1)は、水平に3Dモデルをスライスすることで得られる2つの隣接層画像である。この例示的な実施の形態では、プロセッサ110は、所定の順序で参照画像300(k)を分析する。この例示的な実施の形態では、所定の順序は、例えば、参照画像300(1)から参照画像300(n)までであり、参照画像300(1)乃至300(n)の各々の第1の列から最後の列までの各ピクセルに対し、(左から右、上から下に)分析が行われる。しかしながら、本開示はこれに限定されない。また、この例示的な実施の形態のプロセッサ110は、さらに、参照画像300(1)乃至300(n)の各ピクセルのピクセル値を調整するため、誤差拡散法を使用する。
【0025】
特に、
図3Cは、プロセッサ110が参照画像300(k)の各ピクセルを連続して分析することを示し、
図3Bの参照画像300(k)における斜線で示すピクセルは、これらのピクセルが分析され、インクジェット画像400(k)における対応ピクセル値(例えば、順番に、1、1、0、1、0、1、及び0)が取得されたことを意味する。この例示的な実施の形態では、プロセッサ110が参照画像300(k)中の参照ピクセル301を分析する場合、プロセッサ110は、参照画像300(k)中の参照ピクセル301の参照ピクセル値Xが、所定の閾値以上か判別され、インクジェット画像400(k)中のピクセル401のピクセル値X’が判別される。この例示的な実施の形態では、所定の閾値は、例えば、0.5であってよい。 従って、プロセッサ110は次の式(1)を演算し得る。
【数1】
【0026】
次に、参照画像300(k)及び300(k+1)中の参照ピクセル301に隣接する複数のピクセル302_1乃至302_5の数に従って、プロセッサ110は、参照ピクセル302_1から302_5に対応する複数の重み値を生成する。すなわち、参照ピクセル302_1から302_5の数が5であるので、プロセッサ110は、以下の式(2)及び(3)で表される2つの誤差拡散マトリクスを確立する。
【数2】
【数3】
【0027】
この例示的な実施の形態では、上記の式(2)及び(3)の誤差拡散マトリックス中の重み値の大きさ及び数は、フロイド−スタインバーグ誤差拡散法、ジャービス−ジューディス−ニンケ誤差拡散法等の誤差拡散法を発展させることでデザインされ得る。しかしながら、本開示はこれに限定されない。この例示的な実施の形態では、プロセッサ110は、参照画像300(k)及び300(k+1)のそれぞれに、上記の誤差拡散マトリックスを適用してよい。上記の式(2)及び(3)について、式(2)の誤差拡散マトリクスは、重み値7/21、3/21、5/21及び1/21を含み、式(3)の誤差拡散マトリクスは、重み値5/21を含む。
【0028】
詳細には、最初に、参照ピクセル302_1(つまり、次に分析される対象)は、参照ピクセル301の右に位置し、プロセッサ110は、参照ピクセル302_1が参照ピクセル301と最も大きな関連性を有すると判別し、従って重み値を7/21、つまり、最も高い重み値と定める。次に、参照ピクセル302_3及び302_5は、それぞれ、参照ピクセル301真下、および参照ピクセル301に対応する次の参照画像300(k+1)上の位置にあるので、プロセッサ110は、参照ピクセル302_3及び302_5が、参照ピクセル301に対して2番目に大きな関連性を有すると判別し、従って重み値を5/21、つまり、2番目に大きな重み値として定める。最後に、参照ピクセル302_2及び302_4は、それぞれ、参照ピクセル301の左下、右下に位置するので、プロセッサ110は、参照ピクセル302_2及び302_4が参照ピクセル301に対する関連性が少ないと判別し、従って重み値をそれぞれ3/21及び1/21として定める。すなわち、重み値の大きさは、参照ピクセル301に対する参照ピクセル302_1から302_5の関連性に正比例する。また、この例示的な実施の形態では、これらの重み値の合計は1である。
【0029】
例示的な実施の形態において、現在解析されている参照ピクセルが参照画像300(k)の境界に位置する場合、参照画像300(k)はこの参照ピクセルに隣接している他の参照ピクセルが3つのみであり、参照画像300(k+1)は、この参照ピクセルに隣接している他の参照ピクセルが1つのみである。すなわち、この例において、プロセッサ110は、上記の誤差拡散マトリックスを同様に確立し、対応する参照ピクセルに対してのみ対応する重み値を適用する。例えば、プロセッサ110は、対応する参照ピクセルを調整するため、式(2)の誤差拡散マトリクスにおける重み値7/21、5/21、及び1/21と、式(3)の誤差拡散マトリクスにおける重み値5/21のみを用いる。しかしながら、プロセッサ110は、対応する参照ピクセルがないため、式(2)の誤差拡散マトリクスの中の重み値3/21は用いない。また、別の例示的な実施の形態において、現在分析されている参照ピクセルが最初の参照ピクセル(例えば、参照画像300(1)左上の角に位置する最初のピクセル)である場合、プロセッサ110は、最初に、この参照ピクセルの参照ピクセル値を直接1にプリセットし、次に、近隣の参照ピクセルを分析して調整する。
【0030】
この例示的な実施の形態では、参照ピクセル301の参照ピクセル値Xと、ピクセル値X’と、上記の重み値とに従って、プロセッサ110は、参照画像300(k)及び300(k+1)の参照ピクセル302_1から302_nの参照ピクセル値n1乃至n5を調整する。従って、この例示的な実施の形態では、プロセッサ110は、以下の式(4)乃至(8)で表されるように、参照ピクセル302_1乃至302_5を調整し、これによって参照ピクセル302_1乃至302_5の調整された参照ピクセル値n1’乃至n5’を取得する。
【数4】
【数5】
【数6】
【数7】
【数8】
【0031】
例えば、この例示的な実施の形態において、参照画像300(k)の参照ピクセル301の参照ピクセル値Xが0.5だとすると、プロセッサ110は、上記の式(1)に従って、インクジェット画像400(k)のピクセル401のピクセル値X’を1として定める。また、この例示的な実施の形態において、参照画像300(k)及び300(k+1)が参照ピクセル301に隣接する5つの参照ピクセル302_1乃至302_5を有するので、プロセッサ110は、上記の式(2)及び(3)で表される誤差拡散マトリックスを確立して参照ピクセル302_1乃至302_5を調整する。この例示的な実施の形態では、プロセッサ110は、上記の式(4)乃至(8)で表される操作を行って参照ピクセル302_1乃至302_5の調整された参照ピクセル値n1’乃至n5’を取得する。また、プロセッサ110は、続いて参照ピクセル302_1を分析し、上記の式(1)乃至(8)で表される操作を行い、インクジェット画像400(k)のピクセル401の次のピクセルのピクセル値を決定し、さらに、プロセッサ110は、同様にして参照ピクセル302_1に隣接する他の5つの参照ピクセルを調整する。
【0032】
図4Aは、例示的な実施の形態に係る複数のインクジェット画像の概要図である。
図4Bは、例示的な実施の形態に係る、参照画像がインクジェット画像に変換されることを示す概要図である。
図2、
図3A、
図4A、及び
図4Bを参照すると、プロセッサ110は、参照画像300(1)乃至300(n)の各ピクセルに対して上記の分析及び操作を連続して実行した後、参照画像300(1)乃至300(n)にそれぞれ対応するインクジェット画像400(1)乃至400(n)を生成する。すなわち、プロセッサ110は、より高い解像度を有する参照画像300(1)乃至300(n)を、インクジェット画像400(1)乃至400(n)に変換し、インクジェット画像400(1)乃至400(n)は、
2値画像である。また、インクジェット画像400(1)乃至400(n)を重ね合わせることで形成され、横に示される画像410もまた、
2値画像である。
【0033】
図4Bを参照すると、
図3Aにおける最上層(3Dモデルの上面)上の参照画像300(n)、あるいは参照画像300(1)乃至300(n)を重ね合わせることで形成され、横(3Dモデルの側面)に示される画像は、画像420として示されてよい。しかしながら、プロセッサ110が参照画像300(1)乃至300(n)に対して上記の分析及び操作を行った後、プロセッサ110は、インクジェット画像400(1)乃至400(n)を生成する。従って、インクジェット画像400(n)、あるいはインクジェット画像400(1)乃至400(n)を重ね合わせることで形成され、横に示されるインクジェット画像は、画像430として示されてよい。すなわち、プロセッサ110は、インクジェット画像400(1)乃至400(n)に従って、インクジェットヘッド122を駆動し、インクジェットヘッド122は、3Dプリントされたオブジェクト20に対して正確なインクジェット動作を行うことができる。
【0034】
図5は、例示的な実施の形態に係るインクジェット方法のフローチャートである。
図1乃至
図5を参照すると、本開示に係るインクジェット方法は、
図1の例示的な実施の形態に係る3Dプリンティング装置100に少なくとも適用可能である。ステップS510で、プロセッサ110は、第1の参照画像中の第1の参照ピクセルの第1の参照ピクセル値が所定の閾値以上か判別し、第1のインクジェット画像中の第1のピクセルの第1のピクセル値を決定する。ステップS520で、第1の参照画像及び第2の参照画像の少なくとも1つにおける第1の参照ピクセルに隣接している少なくとも1つの第2の参照ピクセルの数に従って、プロセッサ110は、少なくとも1つの第2の参照ピクセルに対応する少なくとも1つの重み値を生成する。ステップS530で、第1の参照ピクセル値、第1のピクセル値及び少なくとも1つの重み値に従って、プロセッサ110は、第1の参照画像及び第2の参照画像の少なくとも1つのうちの少なくとも1つの第2の参照ピクセルの少なくとも1つの第2の参照ピクセル値を調整する。従って、プロセッサ110が上記のステップS510乃至S530に従って複数の参照画像の各参照ピクセルを連続して分析して調整した後、プロセッサ110は、参照画像に対応する複数のインクジェット画像を生成する。
【0035】
要約すると、本開示に係るインクジェット方法及び3Dプリンティング装置では、複数の参照画像の各参照ピクセルの参照ピクセル値が分析され、複数のインクジェット画像に対応するピクセル値を定める。また、本開示に係る3Dプリンティング装置では、現在分析されている参照ピクセルに隣接している他の参照ピクセルの参照ピクセル値が、誤差拡散法によって調整され、次の参照ピクセルを分析する際に、3Dプリンティング装置は、インクジェット画像における対応するピクセル値を正確に定めることができる。従って、本開示に係る3Dプリンティング装置は、インクジェット画像に従って正確に3Dプリントされたオブジェクトに対してインクジェット動作を行うことができる。
【0036】
本開示の技術的範囲から逸脱しない限りにおいて、開示した実施の形態に対して様々な応用及び変更を行うことが可能な点、当業者にとって明らかである。以上より、本開示は、添付の特許請求の範囲及びその均等の範囲内における応用及び変更も包含するものである。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の実施の形態による、参照画像中のピクセルのピクセル値を調整してインクジェット画像を生成する方法は、3Dプリンティング装置に適用可能であり、インクジェット画像に従って3Dプリントされたオブジェクトに対して正確にインクジェット動作を行うことができる。
【符号の説明】
【0038】
20 3Dプリントされたオブジェクト
100 3Dプリンティング装置
110 プロセッサ
120 プリント部
121 プリントヘッド
122 インクジェットヘッド
130 記憶装置
140 プリンティングプラットフォーム
300(1)、300(k)、300(k+1)、300(n)、400(1)、400(k)、400(k+1)、400(n)、410、420、430 画像
301、302_1、302_2、302_3、302_4、302_5、401 ピクセル
S1 搬送面
P1、P2、P3 方向
S510、S520、S530 ステップ
n1,n2、n3、n4、n5、X、X’ ピクセル値