特許第6692889号(P6692889)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6692889
(24)【登録日】2020年4月17日
(45)【発行日】2020年5月13日
(54)【発明の名称】発光装置および発光システム
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/02 20060101AFI20200427BHJP
   H05B 33/04 20060101ALI20200427BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20200427BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20200427BHJP
   H05B 33/22 20060101ALI20200427BHJP
   H05B 33/26 20060101ALI20200427BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20200427BHJP
【FI】
   H05B33/02
   H05B33/04
   H05B33/12 B
   H05B33/14 A
   H05B33/22 Z
   H05B33/26 Z
   H01L27/32
【請求項の数】13
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2018-502490(P2018-502490)
(86)(22)【出願日】2016年3月4日
(86)【国際出願番号】JP2016056834
(87)【国際公開番号】WO2017149772
(87)【国際公開日】20170908
【審査請求日】2018年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】原田 千寛
(72)【発明者】
【氏名】吉田 綾子
【審査官】 本田 博幸
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/190252(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/148512(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/097387(WO,A1)
【文献】 特開2012−012915(JP,A)
【文献】 特開2014−067503(JP,A)
【文献】 特開2011−228249(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0220901(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第101977458(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50 − 51/56
H01L 27/32
H05B 33/00 − 33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性の基板と、
前記基板の第1面に形成され、透光性の第1電極、光反射性の第2電極および、前記第1電極と前記第2電極との間に位置する有機層を有する複数の発光部と、
前記複数の発光部の間に位置する透光性領域と
記基板の前記第1面側に位置しており、前記基板の屈折率nよりも低い屈折率nを有する低屈折率層と、
を備え
前記低屈折率層は、前記基板に垂直な方向から見て、隣り合う二つの前記発光部の少なくとも一部およびその間の前記透光性領域を連続して覆うように設けられている発光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発光装置において、
θc1=arcsin(1/n)としたとき、
<n×sin(3θc1/10+7π/20)が成り立つ発光装置。
【請求項3】
請求項2に記載の発光装置において、
<n×sin(θc1/2+π/4)が成り立つ発光装置。
【請求項4】
請求項3に記載の発光装置において、
<n×sin(7θc1/10+3π/20)が成り立つ発光装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の発光装置において、
前記複数の発光部は、互いに離間しており、それぞれ前記基板に垂直な方向から見て同一方向に延在している発光装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の発光装置において、
前記低屈折率層は、前記基板の表面に垂直な方向から見て、前記透光性領域を少なくとも覆うように設けられている発光装置。
【請求項7】
請求項6に記載の発光装置において、
前記低屈折率層は、前記基板の表面に垂直な方向から見て、前記基板の縁を除いた全体を覆うように設けられている発光装置。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の発光装置において、
前記低屈折率層は、前記第1電極の縁を覆うように設けられている発光装置。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の発光装置において、
前記発光部を覆う被覆部材をさらに備え、
前記被覆部材は前記低屈折率層である発光装置。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の発光装置において、
前記発光部を覆う被覆部材をさらに備え、
前記低屈折率層は、前記発光部と前記被覆部材との間に位置する発光装置。
【請求項11】
請求項10に記載の発光装置において、
前記低屈折率層は、接着層である発光装置。
【請求項12】
請求項10に記載の発光装置において、
前記低屈折率層の厚さは1μm以上500μm以下である発光装置。
【請求項13】
空間を外部から仕切る透光性の仕切部材と、
前記仕切部材に配置された透光性の基板と、
前記基板の第1面に形成され、透光性の第1電極、光反射性の第2電極および、
前記第1電極と前記第2電極との間に位置する有機層を有する複数の発光部と、
前記複数の発光部の間に位置する透光性領域と
記基板の前記第1面側に位置しており、前記基板の屈折率nよりも低い屈折率nを有する低屈折率層と、
を備え
前記低屈折率層は、前記基板に垂直な方向から見て、隣り合う二つの前記発光部の少なくとも一部およびその間の前記透光性領域を連続して覆うように設けられている発光システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置および発光システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年は有機ELを利用した発光装置の開発が進んでいる。この発光装置は、照明装置や表示装置として使用されており、第1電極と第2電極の間に有機層を挟んだ構成を有している。そして、一般的には第1電極には透明材料が用いられており、第2電極には金属材料が用いられている。
【0003】
有機ELを利用した発光装置の一つに、特許文献1に記載の技術がある。特許文献1の技術は、有機ELを利用した表示装置に光透過性(シースルー)を持たせるために、第2電極を画素の一部にのみ設けている。このような構造において、複数の第2電極の間に位置する領域は光を透過させるため、表示装置は光透過性を有することができる。なお、特許文献1に記載の技術において、複数の第2電極の間には、画素を画定するために、透光性の絶縁膜が形成されている。特許文献1において、この絶縁膜の材料として、酸化シリコンなどの無機材料や、アクリル樹脂などの樹脂材料が例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−23336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
片面(おもて面)からのみ光を取り出したい透過型の発光装置において、逆側の面(裏面)からも一部の光が漏れ出てしまう場合がある。この場合、裏面側から発光装置を介して反対側を視認しにくくなったり、おもて面での光取り出し効率が低下したりする。
【0006】
本発明が解決しようとする課題としては、透過型の発光装置において、発光面とは逆の面から光を漏れにくくすることが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、
透光性の基板と、
前記基板の第1面に形成され、透光性の第1電極、光反射性の第2電極および、前記第1電極と前記第2電極との間に位置する有機層を有する複数の発光部と、
前記複数の発光部の間に位置する透光性領域と
記基板の前記第1面側に位置しており、前記基板の屈折率nよりも低い屈折率nを有する低屈折率層と、
を備え
前記低屈折率層は、前記基板に垂直な方向から見て、隣り合う二つの前記発光部の少なくとも一部およびその間の前記透光性領域を連続して覆うように設けられている発光装置
である。
【0008】
請求項13に記載の発明は、
空間を外部から仕切る透光性の仕切部材と、
前記仕切部材に配置された透光性の基板と、
前記基板の第1面に形成され、透光性の第1電極、光反射性の第2電極および、
前記第1電極と前記第2電極との間に位置する有機層を有する複数の発光部と、
前記複数の発光部の間に位置する透光性領域と
記基板の前記第1面側に位置しており、前記基板の屈折率nよりも低い屈折率nを有する低屈折率層と、
を備え
前記低屈折率層は、前記基板に垂直な方向から見て、隣り合う二つの前記発光部の少なくとも一部およびその間の前記透光性領域を連続して覆うように設けられている発光システム
である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0010】
図1】実施形態に係る発光装置の構成を示す断面図である。
図2】低屈折率層と基板との界面、および、基板と空気との界面における光の反射、屈折の様子を示す模式図である。
図3】実施形態に係る発光装置の平面図である。
図4】低屈折率層の屈折率nと、裏面漏れ光の抑制率との関係を示す図である。
図5】実施例1に係る発光装置の構成を示す断面図である。
図6】実施例2に係る発光装置の構成を示す断面図である。
図7】実施例3に係る発光装置の構成を示す断面図である。
図8】実施例5に係る発光装置の構成を示す断面図である。
図9】実施例6に係る発光システムの構成例を示す断面図である。
図10】実施例6に係る発光システムの他の構成例を示す断面図である。
図11】実施例7に係る発光システムの構成例を示す断面図である。
図12】実施例8に係る発光システムの構成例を示す断面図である。
図13】実施例8に係る発光システムの他の構成例を示す断面図である。
図14】実施例9に係る発光システムの構成例を示す断面図である。
図15】実施例10に係る発光システムの構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0012】
図1は、実施形態に係る発光装置10の構成を示す断面図である。人物Pは、図1の基板100に垂直な方向から発光装置10の光射出面を見ている。実施形態に係る発光装置10は、照明装置または表示装置である。図1は、発光装置10が照明装置である場合を示している。
【0013】
本実施形態に係る発光装置10は、透光性の基板100、複数の発光部140、透光性領域、被覆部材200、および低屈折率層400を備える。発光部140は、基板100の第1面Sに形成されており、透光性の第1電極110、光反射性の第2電極130、および第1電極110と第2電極130との間に位置する有機層120を有する。透光性領域は、複数の発光部140の間に位置する。被覆部材200は、発光部140を覆っている。そして、低屈折率層400は、基板100の第1面S側に位置しており、基板100の屈折率nよりも低い屈折率nを有する。以下、詳細に説明する。
【0014】
なお、以下では、発光部140を基準に基板100が設けられた側を発光装置10のおもて面、被覆部材200が設けられた側を発光装置10の裏面と呼ぶ。
【0015】
本実施形態において、発光装置10は基板100、複数の発光部140、及び絶縁膜150を備えている。基板100は透光性の材料が用いられている。複数の発光部140は互いに離間しており、いずれも、第1電極110、有機層120、及び第2電極130を有している。第1電極110は透光性の電極であり、第2電極130は遮光性あるいは光反射性を有する電極である。第1電極110と第2電極130の少なくとも一部は重なっている。ただし第2電極130の形成される領域の一部は透光性の電極であってもよい。有機層120は第1電極110と第2電極130の間に位置している。絶縁膜150は第1電極110の縁を覆っている。また、絶縁膜150の少なくとも一部は第2電極130で覆われていない。
【0016】
そして、基板100に垂直な方向から見た場合において、発光装置10は、第1領域102、第2領域104、及び第3領域106(透光性領域)を有している。第1領域102は第2電極130と重なる領域である。つまり、第1領域102は基板100に垂直な方向から見た場合において、第2電極130に覆われている領域である。第2電極130が遮光性を有している場合、第1領域102は、発光装置10または基板100の表面から裏面、及び裏面から表面のそれぞれにおいて光を通さない領域である。第2領域104は、第2電極130に覆われていないが、絶縁膜150と重なる領域である。第3領域106は、第2電極130に覆われておらず、絶縁膜150とも重ならない領域である。そして、第2領域104の幅は第3領域106の幅よりも狭いため、発光装置10は、十分な光透過性を有している。なお、第2領域104及び第3領域106によって透光性領域が形成されていてもよい。
【0017】
図2は、低屈折率層400と基板100との界面、および、基板100と空気との界面における光の反射、屈折の様子を示す模式図である。本図中、実線および破線の矢印は、発光部140から出射した光の光路の例を示している。基板100と空気との界面に基板100側からの光が臨界角θc1より小さい入射角で入射した場合には(本図中、L)、光の一部は反射光(本図中、L)となり、一部は出射光(本図中、L)となる。ここで、基板100の屈折率をnとして、臨界角θc1=arcsin(1/n)が成り立つ。一方、基板100と空気との界面に基板100側からの光が臨界角θc1以上の入射角で入射した場合には(本図中、L,L)、基板100のおもて面Sに達した全ての光が全反射する(本図中、L,L)。そして、反射した光(L,L)の一部は、基板100の裏面(第1面)Sから被覆部材200側に透過し(本図中、L,L)、裏面漏れ光の原因となる。
【0018】
ここで、基板100と低屈折率層400との界面において、基板100側からの入射角が臨界角θc2以上の場合(L)、全反射によって光は基板100側に戻り(L10)、被覆部材200側への光の侵入を抑制することができる。すなわち、高屈折率の材料から、低屈折率の材料へは光が透過しにくいということができる。したがって、裏面漏れ光が減少する。なお、低屈折率層400の屈折率をnとして、臨界角θc2=arcsin(n/n)が成り立つ。また、本図では、基板100に接して低屈折率層400が設けられている例について説明したが、基板100と低屈折率層400との間に他の層が存在する場合にも同様に考えることができる。低屈折率層400は、発光部140より裏面側であれば、発光装置10の積層構造のうち、どの層に形成されていても良い。
【0019】
基板100を被覆部材200や接着層210で覆う場合には、基板100の裏面109が空気中に露出される場合に比べて、基板100の裏面S側での全反射が起きにくく、裏面漏れ光が生じやすくなる。それに対し、本実施形態に係る発光装置10は、基板100の屈折率nよりも低い屈折率nを有する低屈折率層400を備えることにより、被覆部材200が設けられた発光装置10の裏面側へ出射される光を低減することができる。
【0020】
図1に戻り、発光装置10の各構成要素について説明する。基板100は、例えばガラス基板や樹脂基板などの透光性を有する基板である。基板100は可撓性を有していてもよい。可撓性を有している場合、基板100の厚さdは、例えば10μm以上1000μm以下である。基板100は、例えば矩形などの多角形や円形である。基板100が樹脂基板である場合、基板100は、例えばPEN(ポリエチレンナフタレート)、PES(ポリエーテルサルホン)、PET(ポリエチレンテレフタラート)、又はポリイミドを用いて形成されている。基板100の屈折率nは特に限定されないが、たとえば1.5以上である。また、基板100が樹脂基板である場合、水分が基板100を透過することを抑制するために、基板100の少なくとも一面(好ましくは両面)に、SiNやSiONなどの無機バリア膜が形成されているのが好ましい。
【0021】
基板100の一面には、発光部140が形成されている。発光部140は、第1電極110、有機層120、及び第2電極130をこの順に積層させた構成を有している。発光装置10が照明装置の場合、複数の発光部140はライン状に延在している。一方、発光装置10が表示装置の場合、複数の発光部140はマトリクスを構成するように配置されているか、セグメントを構成したり所定の形状を表示したりするように(例えばアイコンを表示するように)なっていてもよい。そして複数の発光部140は、画素別に形成されている。
【0022】
第1電極110は、光透過性を有する透明電極である。透明電極の材料は、金属を含む材料、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、IWZO(Indium Tungsten Zinc Oxide)、ZnO(Zinc Oxide)等の金属酸化物である。第1電極110の厚さは、例えば10nm以上500nm以下である。第1電極110は、例えばスパッタリング法又は蒸着法を用いて形成される。なお、第1電極110は、カーボンナノチューブ、又はPEDOT/PSSなどの導電性有機材料であってもよい。本図において、基板100の上には、複数の線状の第1電極110が互いに平行に形成されている。このため、第2領域104及び第3領域106には第1電極110は位置していない。なお、第1電極110は、光透過性を有する透明電極であるため、第2領域104および第3領域106に位置しても良い。
【0023】
また、第1電極110には補助電極(不図示)が設けられていても良い。この場合、補助電極は、第1電極110よりも抵抗値が低い材料によって、第1電極110に接触して形成される。補助電極は第1電極110の上層(有機層120側)にあっても下層(基板100側)にあってもよい。補助電極は例えば少なくとも一つの金属層を用いて形成される。また、補助電極が第1電極110の上層にある場合、補助電極の上部は、絶縁膜150によって覆われており、補助電極は有機層120及び第2電極130のいずれにも直接接続しない。補助電極を設けることにより第1電極110の見かけ上の抵抗値を低くすることができる。
【0024】
有機層120は発光層を有している。有機層120は、例えば、正孔注入層、発光層、及び電子注入層をこの順に積層させた構成を有している。正孔注入層と発光層との間には正孔輸送層が形成されていてもよい。また、発光層と電子注入層との間には電子輸送層が形成されていてもよい。有機層120は蒸着法で形成されてもよい。また、有機層120のうち少なくとも一つの層、例えば第1電極110と接触する層は、インクジェット法、印刷法、又はスプレー法などの塗布法によって形成されてもよい。なお、この場合、有機層120の残りの層は、蒸着法によって形成されている。また、有機層120のすべての層が、塗布法を用いて形成されていてもよい。
【0025】
第2電極130は、例えば、Al、Au、Ag、Pt、Mg、Sn、Zn、及びInからなる第1群の中から選択される金属、又はこの第1群から選択される金属の合金からなる金属層を含んでいる。この場合、第2電極130は遮光性を有している。第2電極130の厚さは、例えば10nm以上500nm以下である。ただし、第2電極130は、第1電極110の材料として例示した材料を用いて形成されていてもよい。第2電極130は、例えばスパッタリング法又は蒸着法を用いて形成される。本図に示す例において、発光装置10は複数の線状の第2電極130を有している。第2電極130は、第1電極110のそれぞれに対して設けられており、かつ第1電極110よりも幅が広くなっている。このため、基板100に垂直な方向から見た場合において、幅方向において第1電極110の全体が第2電極130によって重なっており、また覆われている。また、第1電極110は、第2電極130よりも幅が広く、基板100に垂直な方向から見た場合において、幅方向において第2電極130の全体が第1電極110によって覆われていてもよい。
【0026】
本図の例では、第1電極110および有機層120は発光部140毎に設けられているが、第1電極110および有機層120の少なくとも一方が、隣り合う二つ以上の発光部140にわたって連続して設けられていても良い。すなわち、第1電極110および有機層120の少なくとも一方が第1領域102、第2領域104、および第3領域106にわたって設けられていても良い。
【0027】
本実施形態において、第1電極110の縁は、絶縁膜150によって覆われている。絶縁膜150は例えばポリイミドなどの感光性の樹脂材料によって形成されており、第1電極110のうち発光部140となる部分を囲んでいる。第2電極130の幅方向の縁は、絶縁膜150上に位置している。言い換えると、基板100に垂直な方向から見た場合において、絶縁膜150の一部は第2電極130からはみ出ている。また本図に示す例において、有機層120は絶縁膜150の上及び側面にも形成されている。ただし、有機層120は隣り合う発光部140の間で分断されている。また、有機層120が透光性を有する場合は、隣り合う発光部140の間で分断されていなくても良い。
【0028】
そして上記したように、発光装置10は第1領域102、第2領域104、及び第3領域106を有している。第1領域102は第2電極130と重なる領域である。第2領域104は、第2電極130に覆われていないが、絶縁膜150と重なる領域である。本図に示す例において、有機層120は第2領域104にも形成されている。第3領域106は、第2電極130に覆われておらず、絶縁膜150とも重ならない領域である。本図に示す例において、有機層120は第3領域106の少なくとも一部には形成されていない。そして第2領域104の幅は、第3領域106の幅よりも狭い。また第3領域106の幅は第1領域102の幅よりも広くてもよいし、狭くてもよい。第1領域102の幅を1とした場合、第2領域104の幅は例えば0以上(又は0超)0.2以下であり、第3領域106の幅は例えば0.3以上2以下である。また第1領域102の幅は、例えば50μm以上500μm以下であり、第2領域104の幅は例えば0μm以上(又は0μm超)100μm以下であり、第3領域106の幅は例えば15μm以上1000μm以下である。
【0029】
低屈折率層400は、基板100の表面に垂直な方向から見て、透光性領域を少なくとも覆うように設けられている。たとえば、低屈折率層400は隣り合う二つの発光部140の間の領域に設けられており、第2領域104および第3領域106に設けられている。本図の例では、低屈折率層400は、基板100の表面に垂直な方向から見て、基板100の縁(端部)を除いた全体を覆うように設けられている。たとえば基板100の縁には端子等が設けられていても良い。低屈折率層400は、隣り合う二つの発光部140およびその間の領域を連続して覆うように設けられているとも言える。低屈折率層400が基板100の縁を除いた全体を覆うように設けられていることにより、外気や封止のダメージから発光部140を保護することができる。また、本実施形態において低屈折率層400は、発光部140と被覆部材200との間に位置している。すなわち、低屈折率層400は被覆部材200とは別途設けられている。また、本図の例では、低屈折率層400のうちの基板100側の面は第2電極130と接しており、かつ、低屈折率層400の被覆部材200側の面は接着層210と接している。
【0030】
低屈折率層400は、基板100上を覆っており、光透過性の膜である。低屈折率層400の材質は特に限定されないが、たとえばSiO、MgF等の無機膜、SiO、MgF等の微粒子を含有する樹脂、およびフッ素化樹脂等が挙げられる。樹脂材料におけるベース材料は特に限定されないが、アクリル、エポキシ等を用いることができる。低屈折率層400の形成方法は、特に限定されないが、たとえば蒸着やスパッタリング法等の真空成膜法、ダイコート法やインクジェット法等の塗布法が挙げられる。また、低屈折率層400の厚さはたとえば10nm以上100μm以下である。低屈折率層400が透明であるため、発光装置10の光透過性を維持することができる。低屈折率層400の屈折率nは基板100の屈折率nよりも低ければ特に限定されないが、例えば1以上1.5以下である。
【0031】
被覆部材200は、発光部140および絶縁膜150を覆い、直接、又は接着層210を介して発光部140に固定されている。被覆部材200は、例えば封止部材としての機能を有する。そして、被覆部材200の一の面は発光装置10の裏面側に露出している。また、被覆部材200および接着層210は光透過性を有する。本図では、被覆部材200が接着層210を介して発光部140に固定されている例を示している。被覆部材200として、例えば、樹脂フィルムやガラスなどを用いることができる。本図の例では、接着層210の基板100に対向する面は低屈折率層400に接しており、かつ、接着層210の基板100と反対側の面は被覆部材200に接している。
【0032】
また、被覆部材200の縁を接着材で基板100に固定し、被覆部材200と基板100の間に乾燥機能をもつ材料を充填してもよい。
【0033】
なお、被覆部材200にはさらにバリア層等が設けられても良い。その場合、被覆部材200とバリア層を合わせて被覆部材とみなすことができる。
【0034】
一方、水分バリア性の高い膜を直接発光部140の上に成膜することで封止してもよい。封止膜としては、例えば、SiN、SiON、Al、TiOなどの無機バリア膜や、それらを含むバリア積層膜、またはそれらの混合膜を用いることができる。これらは、例えば、スパッタリング法、CVD法、ALD法などの真空成膜法で形成することができる。また、封止膜の上層に樹脂膜を設けておくことで、無機封止膜に傷がつきバリア性が損なわれるのを抑制することができる。このような場合には、無機バリア膜、バリア積層膜、樹脂膜を合わせて被覆部材200とする。低屈折率層400は、発光部140と被覆部材200との間に位置している。被覆部材200は低屈折率層400に接する。この場合、被覆部材200の厚さは特に限定されないが、例えば10nm以上1mm以下である。
【0035】
図3は本実施形態に係る発光装置10の平面図である。なお、本図では、接着層210、被覆部材200および低屈折率層400は省略されており、図1図3のA−A断面に対応している。本図に示す例において、複数の発光部140は、互いに離間しており、それぞれ基板100に垂直な方向から見て同一方向に延在している。また、第1領域102、第2領域104、及び第3領域106は、いずれも線状かつ同一方向に延在している。そして図1および図3に示すように、第2領域104、第1領域102、第2領域104、及び第3領域106が、この順に繰り返し並んでいる。
【0036】
次に、発光装置10の製造方法について説明する。まず、基板100に第1電極110を、例えばスパッタリング法を用いて形成する。次いで、第1電極110を例えばフォトリソグラフィー法を利用して所定のパターンにする。次いで、第1電極110の縁の上に絶縁膜150を形成する。例えば絶縁膜150が感光性の樹脂で形成されている場合、絶縁膜150は、露光及び現像工程を経ることにより、所定のパターンに形成される。次いで、有機層120及び第2電極130をこの順に形成する。有機層120が蒸着法で形成される層を含む場合、この層は、例えばマスクを用いるなどして所定のパターンに形成される。第2電極130も、例えばマスクを用いるなどして所定のパターンに形成される。その後、たとえば真空蒸着法を用いて低屈折率層400を形成し、さらに被覆部材200を用いて発光部140を封止する。
【0037】
上述の通り、発光装置10は、基板100の屈折率nよりも低い屈折率nを有する低屈折率層400を備える。以下では、低屈折率層400についてさらに説明する。
【0038】
図4は、低屈折率層400の屈折率nと、裏面漏れ光の抑制率との関係を示す図である。本図の縦軸は低屈折率層400の屈折率nであり、横軸は裏面漏れ光の抑制率(%)である。ここで、裏面漏れ光の抑制率は、基板100と空気との界面で全反射した光に対する、基板100と低屈折率層400との界面で全反射させることができる光の割合であり、以下の様に算出することができる。
【0039】
基板100側から基板100と空気との界面に入射する光のうち、入射角θ[rad]がθc1≦θ<π/2の範囲にある光が全反射する。そして、入射角θ[rad]がθc2≦θ<π/2の範囲にある光はさらに基板100と低屈折率層400との界面で全反射する。なお、θc1<θc2である。したがって、基板100と空気との界面で全反射する光に対する、基板100と低屈折率層400との界面で全反射する光の割合は、角度の比率において、(π/2−θc2)/(π/2−θc1)で表される。
【0040】
上述の通り、θc1=arcsin(1/n)およびθc2=arcsin(n/n)が成り立ち、本図は、基板100の屈折率nを1.6とした場合の関係を示している。
【0041】
低屈折率層400の屈折率nは、上述の様に基板100の屈折率nよりも低ければよく、特に限定されないが、n<n×sin(3θc1/10+7π/20)が成り立つことが好ましく、n<n×sin(θc1/2+π/4)が成り立つことがより好ましく、n<n×sin(7θc1/10+3π/20)が成り立つことがさらに好ましい。本図に示す様に、n<n×sin(3θc1/10+7π/20)が成り立てば、基板100の表側で全反射する光のうち、30%以上を低屈折率層400で反射させることができる。また、n<n×sin(θc1/2+π/4)が成り立てば、基板100の表側で全反射する光のうち、50%以上を低屈折率層400で反射させることができる。そして、n<n×sin(7θc1/10+3π/20)が成り立てば、基板100の表側で全反射する光のうち、70%以上を低屈折率層400で反射させることができる。
【0042】
以上、本実施形態によれば、発光装置10は、基板100の屈折率nよりも低い屈折率nを有する低屈折率層400を備える。したがって、基板100のおもて面側で反射された光が発光装置10の裏面側へ出射されることを抑制し、裏面漏れ光を低減することができる。
【0043】
なお、基板100は複数の層から構成されている場合がある。例えば、基板にはバリア層が形成される場合がある。バリア層の一例として、無機バリア層と樹脂層の積層構造があげられる。また、基板100の少なくとも一面に反射防止膜等の光学フィルムを設けても良い。この場合、バリア層や光学フィルム等の複数の層を含んで基板100と定義することができる。このように、基板100が複数の層から構成される場合でも、屈折率nの層の中でθ>arcsin(1/n)の角度θをもつ光が空気界面で全反射することは変わらない。なおここで、θは、当該層と他の層(おもて面側)との界面での光の入射角を示す。また、どの層に関しても同様に上述の理論が成り立つ。したがって、屈折率nとしてはどの層の屈折率を用いても構わない。最も厚い層の屈折率を用いてもよいし、最表層の屈折率を用いてもよいし、最も高い屈折率をnとしてもよい。すなわち、少なくとも一つの層の屈折率が基板100の屈折率nよりも低ければよく、少なくとも一つの層の屈折率をnとしてn<n×sin(3θc1/10+7π/20)が成り立つことが好ましく、n<n×sin(θc1/2+π/4)が成り立つことがより好ましく、n<n×sin(7θc1/10+3π/20)が成り立つことがさらに好ましい。中でも、最も低い屈折率をnとして上記の関係が満たされる場合に、より高い効果が得られる。
【0044】
(実施例1)
図5は、実施例1に係る発光装置10の構成を示す断面図である。本図は、実施形態の図1に相当する。本実施例に係る発光装置10は、発光部140と低屈折率層400の間に保護層162が設けられている点を除いて、実施形態に係る発光装置10と同様である。以下に詳しく説明する。
【0045】
保護層162は、基板100の表面に垂直な方向から見て、少なくとも発光部140を覆っている。本図の例では、保護層162は基板100の縁を除いた全体を覆うように設けられている。また、本図の例では保護層162の基板100に対向する面は第2電極130に接しており、かつ、保護層162の基板100と反対側の面は低屈折率層400に接している。保護層162は、例えば絶縁材料、さらに具体的には酸化アルミニウムや酸化チタンなどの無機材料によって形成される。また、保護層162の厚さは、例えば50nm以上300nm以下である。
【0046】
保護層162は、例えばALD(Atomic Layer Deposition)法を用いて形成される。この場合、保護層162の段差被覆性は高くなる。またこの場合、保護層162は、複数の層を積層した多層構造を有していてもよい。この場合、第1の材料(例えば酸化アルミニウム)からなる第1封止層と、第2の材料(例えば酸化チタン)からなる第2封止層とを繰り返し積層した構造を有していてもよい。最下層は第1封止層及び第2封止層のいずれであってもよい。また、最上層も第1封止層及び第2封止層のいずれであってもよい。また、保護層162は第1の材料と第2の材料の混在する単層であってもよい。
【0047】
ただし、保護層162は、他の成膜法、例えばCVD法やスパッタリング法を用いて形成されていてもよい。この場合、保護層162は、SiO、SiNなど絶縁膜によって形成されており、その膜厚は、例えば10nm以上1000nm以下である。
【0048】
なお、発光部140と低屈折率層400との間には、保護層162以外の層がさらに設けられていても良いし、保護層162の代わりに他の層がさらに設けられていても良い。また、保護層162は低屈折率層400と被覆部材200との間に設けられていても良いし、低屈折率層400と被覆部材200との間には他の層がさらに設けられていても良い。
【0049】
以上、本実施例によれば、実施形態と同様、基板100のおもて面側で反射された光が発光装置10の裏面側へ出射されることを抑制し、裏面漏れ光を低減することができる。さらに、保護層162としてバリア性の高い膜を形成することで、水分やガス、低屈折率層400や被覆部材200等の形成プロセスによるダメージから、発光部140を保護することができる。ひいては、発光装置10の製造プロセスの自由度を上げることができる。
【0050】
(実施例2)
図6は、実施例2に係る発光装置10の構成を示す断面図である。本図は、実施形態の図1に相当する。本実施例に係る発光装置10は、低屈折率層400が第1電極110の縁を覆うように設けられている点を除いて、実施例1に係る発光装置10と同様である。以下に詳しく説明する。
【0051】
本実施例に係る発光装置10は、低屈折率層400が実施形態の絶縁膜150の機能を兼ねている。低屈折率層400は、基板100の表面に垂直な方向から見て、発光部140が形成されていない領域のみを覆っている。また、低屈折率層400は、基板100の表面に垂直な方向から見て、発光部140が形成されていない領域全体を覆っている。そして、低屈折率層400は、発光部140を画定している。本図の例では低屈折率層400は、基板100に対向する面において基板100および第1電極110に接し、かつ、基板100と反対側の面において有機層120に接している。また、本図では発光部140を覆う保護層162が設けられている例を示しているが、保護層162は省略しても良い。
【0052】
本実施例に係る発光装置10では、隣り合う二つの第1領域102の間の領域が第3領域106であり、第1領域102と第3領域106とが交互に設けられている。
【0053】
本実施例において低屈折率層400は例えばフッ素系樹脂からなる。その他、低屈折率層400としてはSiO、MgFなどの低屈折粒子を含有する樹脂を用いてもよい。ベースとなる樹脂の種類は特に限定されないが、ポリイミド、アクリル、エポキシなどを用いることができる。また、本実施例おいて低屈折率層400の厚さは、例えば100nm以上5000nm以下である。本実施例に係る低屈折率層400は、第1電極110を形成した後、有機層120を形成する前に例えば塗布法により形成される。例えば低屈折率層400が感光性の樹脂で形成されている場合、低屈折率層400は、露光及び現像工程を経ることにより、所定のパターンに形成される。
【0054】
以上、本実施例によれば、実施形態と同様、基板100のおもて面側で反射された光が発光装置10の裏面側へ出射されることを抑制し、裏面漏れ光を低減することができる。くわえて、本実施例によれば、低屈折率層400で第1電極110の縁が覆われている。したがって、低屈折率層400が絶縁膜150の機能を兼ねることができ、絶縁膜150と低屈折率層400を別々の工程で形成する必要が無い。
【0055】
また、基板100上に実施形態のような絶縁膜150を設ける場合には、絶縁膜150が基板100と接合するエッジ部分で生じる剥離を抑制するため、接合部に第1電極110と同じ材質の膜を細線状にパターニングして設ける場合がある。それに対し、本実施例では低屈折率層400は発光部140と重なる領域以外の全面に設けられているため基板100から剥離しにくい。よって、そのような細線のパターンを設ける必要が無い。
【0056】
(実施例3)
図7は、実施例3に係る発光装置10の構成を示す断面図である。本図は、実施形態の図1に相当する。本実施例に係る発光装置10は、低屈折率層400が接着層210である。すなわち、接着層210が低屈折率層400を兼ねている点を除いて、実施例1に係る発光装置10と同様である。以下に詳しく説明する。
【0057】
本実施例では、屈折率が基板100の屈折率nよりも低い材料で接着層210を形成する。本実施例において、低屈折率層400は、基板100の縁を除いた全体を覆うように設けられている。また、本図の例では低屈折率層400の基板100に対向する面は保護層162に接しており、かつ、低屈折率層400の基板100と反対側の面は被覆部材200に接している。なお、本図では発光部140を覆う保護層162が設けられている例を示しているが、保護層は、複数層を積層した構造でも構わないし、省略しても良い。保護層162を省略する場合、低屈折率層400の基板100側の面は基板100および第2電極130に接するよう設けられる。
【0058】
本実施例において低屈折率層400は、例えばSiO、MgFなどの低屈折粒子を含有する接着剤からなる。ベースとなる接着剤としては、例えばエポキシ樹脂を用いることができるが、これに限られない。また、低屈折率層400の厚さは、例えば1μm以上500μm以下である。
【0059】
以上、本実施例によれば、実施形態と同様、基板100のおもて面側で反射された光が発光装置10の裏面側へ出射されることを抑制し、裏面漏れ光を低減することができる。くわえて、本実施例によれば、接着層210が低屈折率層400を兼ねている。したがって、低屈折率層400のために製造の工程を増やす必要が無い。
【0060】
(実施例4)
実施例4に係る発光装置10について以下に説明する。本実施例に係る発光装置10は被覆部材200が低屈折率層400である、すなわち被覆部材200が低屈折率層400を兼ねている点を除いて実施例1に係る発光装置10と同様である。本実施例に係る発光装置10は、図7と同様の断面図で説明することができる。ただし、接着層210は低屈折率層400ではなくてよい。
【0061】
本実施例では、屈折率が基板100の屈折率nよりも低い材料で被覆部材200を形成する。本実施例において、低屈折率層400は、基板100の縁を除いた全体を覆うように設けられている。
【0062】
被覆部材200が接着層210を介して発光部140に固定されている場合、低屈折率層400は、例えば、SiO、MgFなどの低屈折粒子を含有する樹脂や、フッ素系樹脂からなる。ベースとなる樹脂は特に限定されないが、PEN、PETなどを用いることができる。また、低屈折率層400の厚さは特に限定されないが、たとえば10μm以上1000μm以下とすることができる。低屈折率層400は一方の面が接着層210に接し、他方の面が発光装置10の裏側に露出している。なお、低屈折率層400(被覆部材200)の少なくとも一方の面には、上述の通りさらにバリア層等が設けられても良い。
【0063】
一方、接着層210を設けずに、SiN、SiON、Al、TiOなどからなる保護層162上に、低屈折率層400としての被覆部材200を設けてもよい。この場合、屈折率層400は、保護層162に対して接着層210を介さず固定される。低屈折率層400は、例えばSiO、MgFなどの低屈折粒子を含有する樹脂や、フッ素系樹脂からなる。低屈折率層400は無機封止膜(保護層162)に傷がつきバリア性が損なわれるのを抑制する機能も兼ねる。この場合、低屈折率層400の厚さは特に限定されないが、例えば0.1μm以上100μm以下である。
【0064】
なお、本実施例に係る発光装置10には実施例1のように発光部140を覆う保護層162が設けられていても良いし、保護層162は省略されていても良い。
【0065】
以上、本実施例によれば、実施形態と同様、基板100のおもて面側で反射された光が発光装置10の裏面側へ出射されることを抑制し、裏面漏れ光を低減することができる。くわえて、本実施例によれば、被覆部材200が低屈折率層400を兼ねている。したがって、低屈折率層400のために製造の工程を増やす必要が無い。
【0066】
(実施例5)
図8は、実施例5に係る発光装置10の構成を示す断面図である。本図は、実施形態の図1に相当する。本実施例に係る発光装置10は、低屈折率層400が設けられている位置を除いて、実施形態に係る発光装置10と同様である。図8では、低屈折率層400が接着層210と被覆部材200との間に設けられている例を示しているが、低屈折率層400は被覆部材200の反対側の面に設けられていてもよい。以下に詳しく説明する。
【0067】
本実施例では、屈折率が基板100の屈折率nよりも低い低屈折率層400を、被覆部材200に形成する。低屈折率層400は、水分・ガスに対してバリア性を有していてもよいし、有していなくてもよい。ただし、バリア性を持たない場合には、別途バリア層が積層されていることが好ましい。本実施例において、低屈折率層400は、基板100の縁を除いた全体を覆うように設けられている。また、本図の例では低屈折率層400の基板100に対向する面は接着層210に接しており、かつ、低屈折率層400の基板100と反対側の面は被覆部材200に接している。本実施例において低屈折率層400は、例えばSiOx、MgF等の無機膜、SiOx、MgF等の微粒子を含有する樹脂、およびフッ素系樹脂等からなる。また、低屈折率層400の厚さは、例えば10nm以上100μm以下である。
【0068】
本実施例に係る発光装置10の製造方法は、第2電極130を形成する工程までは実施形態に係る発光装置10の製造方法と同じである。本実施例の方法においては、別途、被覆部材200の少なくともどちらか一面に低屈折率層400を例えばスパッタリング法、CVD法、ALD法などの真空成膜法により成膜しておく。低屈折率層400がバリア層を兼ねていても構わない。そして、被覆部材200を接着層210で貼り付ける。
【0069】
なお、本実施例において、実施例1のように、発光部140と接着層210との間にさらに保護層162が設けられていても良い。
【0070】
以上、本実施例によれば、実施形態と同様、基板100のおもて面側で反射された光が発光装置10の裏面側へ出射されることを抑制し、裏面漏れ光を低減することができる。くわえて、本実施例によれば、低屈折率層400が被覆部材200に積層して設けられている。すなわち、低屈折率層400を被覆部材200に積層した上で、発光部140上に固定することができる。したがって、発光装置10を構成する材料や製造プロセスの自由度が高い。
【0071】
(実施例6)
図9は、実施例6に係る発光システムの構成例を示す断面図である。この発光システムは、上述した発光装置10及び仕切部材20を有している。具体的には、発光システムは、透光性の仕切部材20、透光性の基板100、複数の発光部140、透光性領域、被覆部材200、および低屈折率層400を備える。仕切部材20は、空間を外部から仕切る。基板100は、仕切部材20に配置されている。発光部140は、基板100の第1面Sに形成されている。また、発光部140は、透光性の第1電極110、光反射性の第2電極130および、第1電極110と第2電極130との間に位置する有機層120を有する。透光性領域は、複数の発光部140の間に位置する。被覆部材200は、発光部140を覆っている。低屈折率層400は、基板100の第1面S側に位置しており、基板100の屈折率nよりも低い屈折率nを有する。以下に詳しく説明する。
【0072】
仕切部材20は透光性を有しており、空間を外部から仕切っている。この空間は、例えば人が滞在する空間、又は商品等のものが配置されている空間である。発光装置10は、上記した実施形態、実施例1から実施例5のいずれかと同様の構成を有している。本図に示す例において、基板100のうち発光部140が設けられている側の面(第1面100a)は、人が滞在する空間を向いている。
【0073】
仕切部材20は、例えば人が移動するための移動体30の窓、又はショーケースの窓であり、ガラス又は透光性の樹脂を用いて形成されている。移動体30は、例えば自動車、列車、又は飛行機である。移動体30が自動車の場合、仕切部材20はフロントガラス、リアガラス、又は座席の横に取り付けられた窓ガラス(例えばドアガラス)である。仕切部材20がリアガラスの場合、複数の発光部140は例えばブレーキランプとして機能する。また、仕切部材20がフロントガラス又はリアガラスの場合、複数の発光部140はターンランプであってもよい。また、仕切部材20は、会議室などの部屋の内部と外部を仕切る窓であってもよい。発光部140の点灯/非点灯により、会議室を利用しているか否かを識別できる発光システムでも良い。
【0074】
そして、発光装置10の第2面100bは、接着層300を介して仕切部材20の内面(第1面22)に固定されている。ここで、第2面100bは、第1面100aとは反対側の面であり、光取出側の面である。このため、発光装置10の発光部140から放射された光は、仕切部材20を介して上記した空間(例えば移動体30)の外部に放射される。一方、発光装置10は光透過性を有している。このため、人は、仕切部材20を介して空間の外部や内部を視認することができる。例えば移動体30の内側に位置する人は、仕切部材20を介して移動体30の外部を視認することができる。
【0075】
接着層300は発光装置10を仕切部材20に固定している。このような機能を果たす材料であれば、接着層300の材料はとくに限定はされない。本実施例において、基板100の第2面100bの一部(例えば互いに対向する2辺)が、接着層300を介して仕切部材20の第1面22に固定されている。したがって、基板100と第1面22との間にはエアギャップが形成されている。この様な場合でも、発光装置10が低屈折率層400を備えることにより、裏面漏れ光を低減することができる。
【0076】
図10は、実施例6に係る発光システムの他の構成例を示す断面図である。本図に示す様に、基板100の第2面100bの全面が接着層300を介して仕切部材20の第1面22に固定されていてもよい。ここで、例えば仕切部材20と基板100がともにガラスで形成された場合など、仕切部材20の屈折率と発光装置10の基板100の屈折率がほぼ同じ場合は、接着層300には、両者と同じか近い屈折率を有する材料を用いる。また、仕切部材20と基板100とで屈折率とが異なる(例えば、仕切部材20がプラスチックで形成され、基板100がガラスで形成される)場合は、接着層300の屈折率は仕切部材20の屈折率と基板100の屈折率の間の数値が好ましい。このようにすると、発光装置10の発光を、仕切部材20を介して外部へ効率よく光取り出しができる。本図の例においても、実施形態と同様に、発光装置10が低屈折率層400を備えることにより、裏面漏れ光を低減することができる。
【0077】
(実施例7)
図11は、実施例7に係る発光システムの構成例を示す断面図である。本実施例に係る発光システムは、発光装置10が仕切部材20のうち移動体30の外側の面(第2面24)に取り付けられている点を除いて、実施例6に係る発光システムと同様の構成である。
【0078】
本実施例に係る発光装置10は、上記した実施形態、実施例1から実施例5のいずれかと同じ構成を有している。ただし、発光装置10は、仕切部材20とは逆側の面が光取出面となっている。このようにするためには、発光装置10の第1面100a側の面を仕切部材20に対向させればよい。
【0079】
本実施例によっても、発光装置10が低屈折率層400を備えることにより、裏面漏れ光を低減することができる。
【0080】
また、発光装置10からの光は仕切部材20を介さずに直接移動体30の外部に放射される。このため、実施例6と比較して、移動体30の外部にいる人は発光装置10からの光を認識しやすい。また、移動体30の外部すなわち仕切部材の20の第2面24側に発光装置10を取り付けているので、発光装置10の発光が仕切部材20で反射して移動体30の内部へ入ることを抑制できる。
【0081】
(実施例8)
図12は、実施例8に係る発光システムの構成例を示す断面図である。本実施例に係る発光システムは、固定部材310を用いて発光装置10を仕切部材20に固定している点を除いて、実施例6に係る発光システムと同様の構成である。
【0082】
固定部材310は枠状の部材であり、下面が接着層300を用いて仕切部材20に固定されている。固定部材310の上部は固定部材310の内側に向けて折れ曲がっており、この折れ曲がっている部分で発光装置10の縁を押さえている。ただし、固定部材310の形状は本図に示す例に限定されない。
【0083】
本実施例において、発光装置10の第2面100bには、基板100に垂直な方向から見て発光部140を囲むように凸部101が設けられている。したがって、基板に垂直な方向から見て140と重なる領域において、基板100と第1面22との間にはエアギャップが形成されている。凸部101はたとえば樹脂材料により形成される。ただし、発光装置10に凸部101が設けられておらず、エアギャップが形成されていなくてもよい。この様な場合でも、発光装置10が低屈折率層400を備えることにより、裏面漏れ光を低減することができる。
【0084】
図13は、実施例8に係る発光システムの他の構成例を示す断面図である。本図に示すように、移動体30の外側に向けて凸になる方向に仕切部材20が湾曲している場合がある。このような場合において、平板上の発光装置10を仕切部材20の内面(第1面22)に直接固定することは難しい。しかし、固定部材310を用いると、このような場合でも発光装置10を仕切部材20の第1面22に固定することができる。なお、基板100には、図12に示した凸部101が設けられていても良いし、設けられていなくても良い。
【0085】
本実施例においても、発光装置10が低屈折率層400を備えることにより、裏面漏れ光を低減することができる。
【0086】
(実施例9)
図14は、実施例9に係る発光システムの構成例を示す断面図である。本実施例に係る発光システムは、仕切部材20に複数の発光装置10が取り付けられている点を除いて、上記した実施例6〜8のいずれかと同様の構成である。なお、図14では、図12に対応する例を簡略化して示している。複数の発光装置10は、互いに同一の制御信号に従って発光及び消灯が制御されていてもよいし、互いに異なる制御信号に従って発光及び消灯が制御されていてもよい。
【0087】
本実施例によっても、発光装置10が低屈折率層400を備えることにより、裏面漏れ光を低減することができる。
【0088】
(実施例10)
図15は、実施例10に係る発光システムの構成例を示す断面図である。本実施例に係る発光システムは、仕切部材20の構成及び発光装置10の位置を除いて、実施例6に係る発光システムと同様の構成である。
【0089】
本実施例において、仕切部材20は、複数枚の透光部材21(例えばガラス板や樹脂板)を重ねた構成を有している。そして、発光装置10は、隣り合う透光部材21の間に挟まれることにより、仕切部材20に取り付けられている。
【0090】
本実施例において、発光装置10の第2面100bには、基板100に垂直な方向から見て発光部140を囲むように凸部101が設けられている。したがって、基板に垂直な方向から見て発光部140と重なる領域において、基板100と透光部材21の基板100に対向する面211との間にはエアギャップが形成されている。ただし、発光装置10に凸部101が設けられておらず、エアギャップが形成されていなくてもよい。
【0091】
本実施例においても、発光装置10が低屈折率層400を備えることにより、裏面漏れ光を低減することができる。
【0092】
以上、図面を参照して実施形態及び実施例について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、参考形態の例を付記する。
1. 透光性の基板と、
前記基板の第1面に形成され、透光性の第1電極、光反射性の第2電極および、前記第1電極と前記第2電極との間に位置する有機層を有する複数の発光部と、
前記複数の発光部の間に位置する透光性領域と、
前記発光部を覆う被覆部材と、
前記基板の前記第1面側に位置しており、前記基板の屈折率nよりも低い屈折率nを有する低屈折率層と、
を備える発光装置。
2. 1.に記載の発光装置において、
θc1=arcsin(1/n)としたとき、
<n×sin(3θc1/10+7π/20)が成り立つ発光装置。
3. 2.に記載の発光装置において、
<n×sin(θc1/2+π/4)が成り立つ発光装置。
4. 3.に記載の発光装置において、
<n×sin(7θc1/10+3π/20)が成り立つ発光装置。
5. 1.〜4.のいずれか一つに記載の発光装置において、
前記複数の発光部は、互いに離間しており、それぞれ前記基板に垂直な方向から見て同一方向に延在している発光装置。
6. 1.〜5.のいずれか一つに記載の発光装置において、
前記低屈折率層は、前記基板の表面に垂直な方向から見て、前記透光性領域を少なくとも覆うように設けられている発光装置。
7. 6.に記載の発光装置において、
前記低屈折率層は、前記基板の表面に垂直な方向から見て、前記基板の縁を除いた全体を覆うように設けられている発光装置。
8. 1.〜6.のいずれか一つに記載の発光装置において、
前記低屈折率層は、前記第1電極の縁を覆うように設けられている発光装置。
9. 1.〜7.のいずれか一つに記載の発光装置において、
前記被覆部材は前記低屈折率層である発光装置。
10. 1.〜7.のいずれか一つに記載の発光装置において、
前記低屈折率層は、前記発光部と前記被覆部材との間に位置する発光装置。
11. 10.に記載の発光装置において、
前記低屈折率層は、接着層である発光装置。
12. 10.に記載の発光装置において、
前記低屈折率層の厚さは1μm以上500μm以下である発光装置。
13. 空間を外部から仕切る透光性の仕切部材と、
前記仕切部材に配置された透光性の基板と、
前記基板の第1面に形成され、透光性の第1電極、光反射性の第2電極および、
前記第1電極と前記第2電極との間に位置する有機層を有する複数の発光部と、
前記複数の発光部の間に位置する透光性領域と、
前記発光部を覆う被覆部材と、
前記基板の前記第1面側に位置しており、前記基板の屈折率nよりも低い屈折率nを有する低屈折率層と、
を備える発光システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15