特許第6692902号(P6692902)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6692902
(24)【登録日】2020年4月17日
(45)【発行日】2020年5月13日
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20200427BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20200427BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20200427BHJP
【FI】
   H01L21/304 645C
   H01L21/302 101B
   H05H1/46 M
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-520219(P2018-520219)
(86)(22)【出願日】2016年5月30日
(86)【国際出願番号】JP2016065935
(87)【国際公開番号】WO2017208311
(87)【国際公開日】20171207
【審査請求日】2019年5月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000120386
【氏名又は名称】株式会社JCU
(74)【代理人】
【識別番号】110001988
【氏名又は名称】特許業務法人小林国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅野 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】山田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】川崎 智弘
(72)【発明者】
【氏名】沼川 信孝
【審査官】 平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−172168(JP,A)
【文献】 特開2008−053728(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/064779(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/3065
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の被処理物を保持する被処理物保持部材と、
前記被処理物保持部材を収納し、内部が真空引きされる真空槽と、
前記被処理物保持部材で保持された前記被処理物に向けてプロセスガスを送る複数の吹き出し孔を有し、負の電極となる板状の吹き出しパネルと、
前記吹き出しパネル及び前記被処理物保持部材の間に配置され、複数の棒状電極が並べられている正の電極パネルとを備え
前記負の電極となる前記吹き出しパネルの表面と、前記正の電極パネルと、前記被処理物保持部材に保持される前記被処理物とは互いに平行に配され、
前記被処理物から一側にプロセスガス導入孔に向けて順次に前記電極パネルと前記吹き出しパネルが配され、前記吹き出しパネルと前記電極パネルとの距離は、前記電極パネルと前記被処理物との距離よりも大きいプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記吹き出し孔は前記電極パネルの複数の棒状電極の間に向けて開口し、且つマトリクスに配されている請求項記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記吹き出しパネルは、複数の整風孔を有する整風板を内部に有する請求項記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記真空槽は、第1槽及び第2槽に分離される分離状態と、前記第1槽及び前記第2槽が結合されて真空引きが可能となる結合状態との間で変位し、前記分離状態で前記被処理物保持部材への前記被処理物の搬入及び搬出が行われる請求項記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記第1槽は、前記被処理物保持部材と前記プロセスガスの排出孔を有し、
前記第2槽は、前記吹き出しパネルと前記電極パネルとを有し、
前記第1槽及び前記第2槽の少なくとも一方には大気開放孔を有する請求項記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記被処理物保持部材は前記被処理物の両面を露呈した状態で前記被処理物を保持し、
前記吹き出しパネルと前記電極パネルとは前記被処理物を挟んで前記被処理物の両面に設けられ、前記被処理物の両面をプラズマ処理する請求項1からいずれか1項記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記第1槽及び前記第2槽は、前記吹き出しパネルと前記電極パネルとを有し、
前記第1槽又は前記第2槽は、前記被処理物保持部材と、前記プロセスガスの排出孔と、大気開放孔とを有する請求項を引用する請求項記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記吹き出しパネルと前記電極パネルと前記被処理物保持部材とは熱媒体が循環される通路を有する請求項1からいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
真空槽内で板状の被処理物を被処理物保持部材により保持するステップと、
前記被処理物に平行に配される正の電極パネルと、前記正の電極パネルに対して前記被処理物の配置側とは反対側であるプロセスガス導入孔側で前記正の電極パネルと離して前記正の電極パネルと並行に配される負の電極パネルとの間に、高周波電圧を印加し、且つ負の電極パネルに配される複数の吹き出し孔からプロセスガスを前記被処理物に向けて吹き出して、前記被処理物をプラズマ処理するステップと
を有し、
前記負の電極パネルと前記正の電極パネルとの距離は、前記正の電極パネルと前記被処理物との距離よりも大きいプラズマ処理方法。
【請求項10】
真空槽内で板状の被処理物の両面を露呈した状態で前記被処理物を被処理物保持部材により保持するステップと、
前記被処理物の前記両面に平行に配される正の電極パネルと、前記正の電極パネルに対して前記被処理物の配置側とは反対側であるプロセスガス導入孔側で前記正の電極パネルと離して前記正の電極パネルと並行に配される負の電極パネルとの間に、高周波電圧を印加し、且つ負の電極パネルに配される複数の吹き出し孔からプロセスガスを前記被処理物の前記両面に向けて吹き出して、前記被処理物の前記両面をプラズマ処理するステップと
を有し、
前記被処理物の両側において、前記負の電極パネルと前記正の電極パネルとの距離は、前記正の電極パネルと前記被処理物との距離よりも大きいプラズマ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空の処理室内で被処理物にプラズマ処理を行うプラズマ処理装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
真空にされた処理室内で被処理物として、例えば基板に対してプラズマを用いて各種処理を行うプラズマ処理装置が知られている。プラズマ処理としては、例えば基板表面の汚れを除去するクリーニングや、エッチング、基板にスルーホールに形成した際にそのスルーホールの壁面に付着する樹脂残渣(スミア)を除去するデスミア、基板表面のレジスト(有機物)の残渣(スカム)を除去するデスカムなどがある。プラズマ処理では、処理室内を真空にして一対の電極間に高周波電源から高周波電圧を印加した状態でプロセスガスを導入する。これにより、プロセスガスをプラズマ化する。そして、発生したプラズマ中のラジカルやイオンが被処理物の表面に接触ないし衝突することによって、例えば表面の汚れを除去してクリーニングする。
【0003】
例えば、特開平8−37178号公報に記載のアッシング装置では、処理室内の一対の平板電極の間に被処理物としての基板を配置し、プラズマによりレジストを灰化(Ashing)し除去するアッシング処理を行っている。一対の平板電極の一方に高周波電圧が印加され、他方が接地される。そして、接地される電極に基板を載置した状態でプロセスガスを導入し、プラズマを発生させ処理を行っている。
【0004】
また、特開2008−186994号公報に記載のプラズマ洗浄装置では、被処理物としての基板を挟むように一対の電極を配し、且つ一方の電極側から他方の電極に向けてプロセスガスを導入して、基板をプラズマ洗浄している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献で示されるようなプラズマ処理装置では、一対の電極間に被処理物としての基板を配置する構成を採用しており、プラズマ中に基板が置かれる。このため、基板表面におけるプラズマの量が大きくなり過ぎて基板にダメージを与えやすい。また、基板表面におけるプラズマの量や分布の調整が容易でなく、基板表面を均一に処理することが困難である。
【0006】
本発明は、プラズマ処理を被処理物に対して行う際に、被処理物に対して十分なプラズマを供給し、またプラズマの供給量が調整しやすいプラズマ処理装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のプラズマ処理装置は、被処理物保持部材と、真空槽と、吹き出しパネルと、正の電極パネルとを備える。被処理物保持部材は、被処理物を保持する。真空槽は、被処理物保持部材を収納し、内部が真空引きされる。吹き出しパネルは、被処理物保持部材で保持された被処理物に向けてプロセスガスを送る複数の吹き出し孔を有し、負の電極となり、板状に形成されている。正の電極パネルは複数の棒状電極が並べて構成され、吹き出しパネル及び被処理物保持部材の間に配置される。
【0008】
なお、被処理物は板状であり、負の電極となる吹き出しパネルの表面と、正の電極パネルと、被処理物保持部材に保持される被処理物とは互いに平行に配されることが好ましい。被処理物から一側にプロセスガス導入孔に向けて順次に電極パネルと吹き出しパネルが配され、吹き出しパネルと電極パネルとの距離は、電極パネルと被処理物との距離よりも大きいことが好ましい。吹き出し孔は電極パネルの複数の棒状電極の間に向けて開口し、且つマトリクスに配されていることが好ましい。吹き出しパネルは、複数の整風孔を有する整風板を内部に有することが好ましい。なお、平行とは一方が他方に対して±15°傾斜する略平行も含まれる。
【0009】
真空槽は、第1槽及び第2槽に分離される分離状態と、第1槽及び第2槽が結合されて真空引きが可能となる結合状態との間で変位し、分離状態で被処理物保持部材への被処理物の搬入及び搬出が行われることが好ましい。
【0010】
第1槽は、被処理物保持部材とプロセスガスの排出孔を有し、第2槽は、吹き出しパネルと電極パネルとを有し、第1槽及び第2槽の少なくとも一方には大気開放孔を有することが好ましい。
【0011】
被処理物保持部材は被処理物の両面を露呈した状態で被処理物を保持し、吹き出しパネルと電極パネルとは被処理物を挟んで被処理物の両面に設けられ、被処理物の両面をプラズマ処理することが好ましい。
【0012】
第1槽及び第2槽は、吹き出しパネルと電極パネルとを有し、第1槽又は第2槽は、被処理物保持部材と、プロセスガスの排出孔と、大気開放孔とを有することが好ましい。また、吹き出しパネルと電極パネルと被処理物保持部材とは熱媒体が循環される通路を有することが好ましい。
【0013】
本発明のプラズマ処理方法は、被処理物保持ステップと、被処理物をプラズマ処理するステップとを有する。被処理物保持ステップでは、真空槽内で板状の被処理物を被処理物保持部材により保持する。被処理物をプラズマ処理するステップでは、被処理物に平行に配される正の電極パネルと、正の電極パネルに対して被処理物の配置側とは反対側であるプロセスガス導入孔側で正の電極パネルと離して正の電極パネルと並行に配される負の電極パネルとの間に、高周波電圧を印加する。且つ負の電極パネルに配される複数の吹き出し孔からプロセスガスを被処理物に向けて吹き出す。負の電極パネルと正の電極パネルとの距離は、正の電極パネルと被処理物との距離よりも大きい。
【0014】
本発明のプラズマ処理方法は、被処理物保持ステップと、被処理物をプラズマ処理するステップとを有する。被処理物保持ステップでは、真空槽内で板状の被処理物の両面を露呈した状態で被処理物を被処理物保持部材により保持する。被処理物をプラズマ処理するステップでは、被処理物の両面に平行に配される正の電極パネルと、正の電極パネルに対して被処理物の配置側とは反対側であるプロセスガス導入孔側で正の電極パネルと離して正の電極パネルと並行に配される負の電極パネルとの間に、高周波電圧を印加する。且つ負の電極パネルに配される複数の吹き出し孔からプロセスガスを被処理物の両面に向けて吹き出す。被処理物の両側において、負の電極パネルと正の電極パネルとの距離は、正の電極パネルと被処理物との距離よりも大きい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、被処理物に対してプラズマを均一かつ十分に供給することができ、処理を均一にかつ短時間で行える。また、被処理物に対して供給されるプラズマの量を容易に調整することができる。さらには、短時間でプラズマ処理を完了させることができ、熱による被処理物のダメージの発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明のプラズマ処理装置の外観を示す斜視図である。
図2】処理室を構成する真空槽を示す縦断面図である。
図3】真空槽を分解して示す斜視図である。
図4】基板ホルダを分解して示す斜視図である。
図5】吹き出しパネルを分解して示す斜視図である。
図6】電極パネルの斜視図である。
図7図2におけるVII−VII線の断面図である。
図8】基板の両面をプラズマ処理する第2実施形態の真空槽を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1実施形態]
図1に示すように、本発明のプラズマ処理装置10は、被処理物に対して、プラズマ処理を行う。この例では被処理物として、板状の被処理物である基板11(図3参照)の表面を被処理面としてプラズマ処理する。
【0018】
プラズマ処理装置10は、処理ユニット12と制御ユニット13とを有する。処理ユニット12は、内部に処理室14(図2参照)を形成する真空槽15と、真空ポンプ16と、ガス供給装置17と、高周波電源18と、温調装置19とを有する。制御ユニット13は、処理ユニット12を制御する回路(図示省略)と操作パネル13aを有する。
【0019】
真空ポンプ16は、処理室14の排気を行う。このため、図3に示すように、真空槽本体15aの底には、図示省略の真空引き孔が設けられている。真空引き孔には図示しないパイプを介して真空ポンプ16が接続されている。真空ポンプ16の作動により、処理室14を例えば10〜30Paの真空度にする。また、真空ポンプ16は、プラズマ処理中においても、処理室14からの排気を継続して行い、所定の真空度を維持する。
【0020】
図2に示すように、真空槽15は、例えばステンレス製の箱状であり、第1槽としての真空槽本体15aと、その上面に設けた蓋(第2槽)15bとを有する。蓋15bは、図1に示すように、実線で示す結合状態の閉鎖位置と、二点鎖線で示す分離状態の開放位置との間で移動(変位)する。図2に示すように、閉鎖位置では気密な処理室14が形成され、真空引きが可能となって、プラズマ処理が行われる。開放位置では、図1に示すように、真空槽本体15aから蓋15bが上方に移動した後に、例えば奥側に水平移動して、真空槽本体15aの上方が開放される。この開放位置では、基板11の処理室14への搬入や搬出が行われる他に、正の電極パネル32(図2参照)の位置調整やメンテナンスが可能になる。
【0021】
蓋15bの上面中央には、プロセスガス導入孔21が設けられている。このプロセスガス導入孔21に接続具26及びチューブ27を介してガス供給装置17が接続されており、真空槽15内にプロセスガスが導入される。図2や後に説明する図7図8における矢線ARはプロセスガスの流れを示している。
【0022】
ガス供給装置17は、処理室14に導入するプロセスガス、例えば四フッ化炭素(CF4)と酸素(O2)の混合ガスを供給する。なお、プロセスガスとしては、プラズマ処理の内容や処理対象によって適宜に選択することができ、窒素ガス、酸素ガス,水素ガス、アルゴンガス等の単体又は混合ガスが好ましく用いられる。
【0023】
図3に示すように、真空槽本体15aの底面には、図示省略の真空引き孔の他に、大 気開放孔を兼ねるプラズマガスの排出孔24やチューブ挿通孔25が形成されている。 プラズマガスの排出孔24には図示省略の大気開放弁が設けられており、蓋15bを開 放する前に大気開放弁が開放される。これにより大気開放され、プラズマガスの排出孔 24からはプラズマガスが排出される。なお、プラズマガスの排出孔24は蓋15bに 設けてもよい。チューブ挿通孔25には、後述するチューブ37が挿通される。
【0024】
図2に示すように、処理室14内には、下から上に向けて順に、被処理物保持部材としての基板ホルダ31と、正の電極パネル32と、負の電極を兼ねる吹き出しパネル33とが収納されている。基板ホルダ31は図示を省略したブラケットやステー等を用いて、真空槽本体15aに水平に取り付けられる。
【0025】
図3に示すように、基板ホルダ31には、被処理物としての基板11が図示省略のロボットハンドや他の移送装置により載せられる。図2に示すように、基板ホルダ31の基板載置面31cは、真空槽本体15aの開口面よりも上側に位置している。これにより、真空槽本体15aが基板11の搬入、搬出の邪魔になることがなくなる。従って、基板11の通過経路を複雑にすることなく、基板11の搬入や搬出が容易になる。なお、基板載置面31cは、真空槽本体15aの開口面よりも下側であってもよい。
【0026】
図4に示すように、基板ホルダ31は、板状のホルダ本体31aとガイド枠31bとを有する。ガイド枠31bはL型に形成されており、ホルダ本体31aの4隅の外周縁部の上面に取り付けられる。ガイド枠31bは基板11(図2参照)の4隅を保持して、ホルダ本体31aからの脱落を阻止する。なお、ガイド枠31bに代えて又は加えてクランプ装置を設けてもよい。クランプ装置は基板の外周縁部を挟持する。
【0027】
ホルダ本体31aの基板載置面31cには、溝34が例えば十文字に形成されている。溝34は、基板11のホルダ本体31aへの搬入や搬出に際して、基板11と基板載置面31cとの間のガス抜きとして機能する。このガス抜きにより、基板11のセットや取り出しを確実に且つ安定して行うことができる。
【0028】
基板ホルダ31の内部には、基板載置面31cの略全面に亘って冷却通路35が形成されている。冷却通路35は、U型通路35a同士を連結して構成されている。図2に示すように、冷却通路35には、接続具36を介してチューブ37が接続されている。チューブ37は温調装置19(図1参照)に接続されている。温調装置19から、チューブ37を介して熱媒体である冷却水が真空槽15の外部から冷却通路35に送られる。これにより、基板ホルダ31は冷却され、基板ホルダ31の冷却によって基板11も冷却される。
【0029】
図2に示すように、蓋15bの内部には、正の電極パネル32及び吹き出しパネル33が取り付けられている。吹き出しパネル33は蓋15bの内部の上面に配されている。吹き出しパネル33は、内部パネル41と、この内部パネル41を覆う外部パネル42との二重構造になっている。
【0030】
図5に示すように、内部パネル41は矩形の薄型箱状に形成されている。内部パネル41は、矩形の枠体41aとこの枠体41aを覆う整風板41bとを有する。整風板41bには複数の整風孔43が配されている。
【0031】
外部パネル42も、内部パネル41と同様に、矩形の薄型箱状に形成されている。外部パネル42は、矩形の枠体42aとこの枠体42aを覆うノズル板42bとを有する。ノズル板42bには複数の吹き出し孔44が配されている。
【0032】
吹き出し孔44は、吹き出し孔列45を吹き出し孔列45に直行する方向に離間して並べて配されている。吹き出し孔列45には、吹き出し孔44が例えば50mmのピッチで配されている。隣り合う吹き出し孔列45同士は、吹き出し孔44の形成位置が例えばピッチの半分である25mmずらして配されている。これにより、一方の吹き出し孔列45の吹き出し孔44は、他方の吹き出し孔列の吹き出し孔44の中間に位置する。整風孔43も、吹き出し孔44と同様な整風孔列49を有する。
【0033】
整風孔43及び吹き出し孔44は、例えば直径が1mmの円孔であり、各孔43,44のピッチは50mmである。これら孔43,44の直径やピッチは、処理する基板11のサイズや処理室14の容量等に合わせて適宜変更することが好ましい。なお、整風孔43及び吹き出し孔44は、ノズル板42bを45°回転した状態で見た場合にはマトリクスに配されている。
【0034】
外部パネル42の内側には、ノズル板42bに密着させて、冷却パイプ46が配されている。冷却パイプ46も、冷却通路35と同様に、U型パイプ46aを例えば4個連結して平面状に配列して構成されている。冷却パイプ46は、吹き出し孔44を塞ぐことがないように、各吹き出し孔44の間に配されている。
【0035】
冷却パイプ46の両端には、接続具47を介してチューブ48が接続されている。チューブ48は温調装置19に接続されている。温調装置19から、チューブ48を介して熱媒体である冷却水が真空槽15の外部から冷却パイプ46に送られる。これにより、吹き出しパネル33は冷却される。
【0036】
図2に示すように、正の電極パネル32は、吹き出しパネル33の吹き出し面33aから離して、吹き出し面33aに平行に配される。従って、負の電極となる吹き出しパネル33の表面である吹き出し面33aと、正の電極パネル32と、基板ホルダ31に保持される基板11とは互いに平行に配される。言い換えれば、正の電極パネル32に対して基板配置側とは反対側で、正の電極パネル32と離して吹き出しパネル33が配される。
【0037】
図6に示すように、正の電極パネル32は、例えば複数のアルミ製パイプからなる棒状電極32aを平面状に並べて構成されている。吹き出し面33aと、電極パネル32の棒状電極32aの中心線との距離は、例えば50mmである。また、電極パネル32の棒状電極32aの中心線と基板11との距離は、例えば吹き出し面33aと棒状電極の中心線との距離の半分である25mmである。
【0038】
棒状電極32aの一端は隣の棒状電極32aの一端に連結具32bを介し連結され、棒状電極32aの他端は隣の棒状電極32aの他端に連結される。そして、これら連結により、複数の棒状電極32aは直列に接続される。従って、冷却パイプ46と同じように、隣り合う棒状電極32aがU型に並べられ、このU型電極が複数個並べられて、面状に構成されている。各棒状電極32aの配列ピッチは、ノズル板42bの各吹き出し孔44のピッチと同じ50mmとなっている。そして、吹き出し孔44の中心線方向から見た場合に、各吹き出し孔44の中間位置に各棒状電極32aが配される。
【0039】
正の電極パネル32の両端には、接続具51を介してチューブ52が接続されている。チューブ52は温調装置19に接続されている。温調装置19から、チューブ52を介して熱媒体である冷却水が真空槽15の外部から電極パネル32に送られる。これにより、正の電極パネル32は冷却される。
【0040】
図7に示すように、電極パネル32は図示しないブラケットにより、蓋15b内に保持されている。電極パネル32と、ブラケット及びチューブとの間には図示省略の絶縁部材が配されている。絶縁部材は、ブラケット及び蓋部と電極パネルとの間を絶縁する。図2に示すように、図示しない電源線を介して、正の電極パネル32には高周波電源18の+極が接続されている。また、真空槽15には高周波電源18の−極が接続されている。
【0041】
高周波電源18は、プラズマを発生させるためのプラズマ発生用電圧として高周波電圧を出力する。高周波電源18が出力する高周波電圧の周波数は、例えば40kHz〜数百kHz程度である。なお、高周波電圧の周波数は、上記周波数に限らず、プラズマ処理の内容等に応じて適宜に設定することができ、例えば上記範囲より高い周波数や低い周波数であってもよい。
【0042】
次に上記構成の作用について説明する。プラズマ処理は、制御ユニット13の制御下で各部が作動されて実施される。まず、図1に二点鎖線で示すように、蓋15bを開放位置に移動する。次に処理すべき基板11を基板ホルダ31に挿入した後に、蓋15bを閉鎖位置に戻す。なお、処理室14の開閉や基板11の搬出・搬入は、他の移送装置やロボットハンドにより自動で行われるが、手動により行ってもよい。これにより、基板11を基板ホルダ31に保持するステップが行われる。
【0043】
次に、真空ポンプ16が作動して処理室14内が所定の真空度となるまで排気される。所定の真空度に達すると、ガス供給装置17からのプロセスガスが供給され、且つ高周波電源18により正の電極パネル32に対し高周波電圧が印加される。プロセスガスは、導入孔21から吹き出しパネル33に導入される。先ず、内部パネル41の整風板41bによって、外側パネルの吹き出し孔44に均一にプロセスガスが送られる。そして、吹き出し孔44からプロセスガスが均一に吹き出す。
【0044】
正の電極パネル32に対する高周波電圧の印加により、正の電極パネル32と、接地電極となる吹き出しパネル33の吹き出し面33aと間に電界が生じる。この電界中でプロセスガスは励起されてプラズマ化される。そして、発生したプラズマ中のラジカルやイオンが基板11に供給され、基板11の表面に付着している汚染物質が除去される。このようにして、プラズマ処理ステップである基板11のクリーニングが行われる。クリーニング後のプロセスガスは、正の電極パネル32と基板11との間から流出し、基板ホルダ31の下面にある排出孔24から排出される。
【0045】
吹き出しパネル33の吹き出し面33aと、正の電極パネル32と、基板ホルダ31に保持される基板11とは互いに平行に配されるため、プロセスガスが負の電極である吹き出しパネル33と正の電極パネル32との間で効率的にプラズマ化される。しかもプラズマ化されたプラズマ領域は、吹き出しパネル33と正の電極パネル32との間で、全面にわたり均一となる。従って、プラズマ領域からプラズマ(ラジカルやイオン)が基板11の上面の各部に均一かつ十分に供給される。このため、基板11の上面は、プラズマによって均一にクリーニングされる。また、十分なプラズマでクリーニングされるから、短時間でプラズマ処理が完了する。短時間で処理が済むので、電極パネル32に生じる熱の影響も受けにくい。しかも、正の電極パネルを通過したプラズマが基板11に接触するため、プラズマ領域中に基板11を配置する場合と異なり、放電による基板11の損傷も抑えられる。
【0046】
一定時間が経過して基板11へのプラズマ処理が完了すると、プロセスガスの供給、排気、及び高周波電圧の印加が停止される。この後、処理室14内を大気圧に戻してから蓋15bを開放位置に移動して、処理室14を開放する。そして、処理室14からプラズマ洗浄した基板11を取り出す。以下、同様の処理が繰り返されることにより、基板11を次々とクリーニングすることができる。
【0047】
なお、上記実施形態では、基板11を被処理物として説明したが、被処理物は、基板11に限らず、リードフレーム、表面に凹凸があるものや半導体チップを実装したもののように板状といえる被処理物や、立体的な形状の被処理物であってもよい。また、基板11のプラズマ洗浄(クリーニング)について説明したが、プラズマ処理は、基板等の表面に実装された半導体チップの電極のクリーニング、レジストのエッチングやデスカム、デスミア、表面改質などでもよい。
【0048】
[第2実施形態]
上記第1実施形態では、1枚の基板11の片面(表面)をプラズマ処理しているが、図8に示す第2実施形態では、1枚の基板11の両面(表面及び裏面)をプラズマ処理している。第2実施形態では、基板ホルダ60は、基板載置面60aが基板11の外周縁部のみになっている。そして、基板11の表面及び裏面が露呈した状態で、基板11が基板載置面60aに水平に保持される。なお、基板11の外周縁部が載置される基板載置面60aに代えて、又は加えて基板11の外周縁部の一部を挟持するクランプ装置を設けてもよい。
【0049】
真空槽61は、真空槽本体61aと蓋61bとを有する。蓋61bには第1実施形態と同じ構成の吹き出しパネル33及び電極パネル32が設けられる。また、真空槽本体61aには、第1実施形態の蓋15bと同じ構成の吹き出しパネル33と電極パネル32とが設けられる。また、蓋61bの両側部には、大気開放孔を兼ねる排出孔24及び真空引き孔(図示省略)が形成されている。なお、蓋61bの両側部に排出孔24及び真空引き孔を形成する代わりに、真空槽本体61aに排出孔24や真空引き孔を形成してもよい。
【0050】
真空槽本体61a及び蓋61bの吹き出しパネル33及び電極パネル32により、基板ホルダ60で保持された基板11の両面に対し、第1実施形態と同様にしてプラズマによるクリーニングが行われる(両面プラズマ処理ステップ)。なお、第1実施形態と同一構成部材には同一符号を付して、重複した説明を省略している。
【0051】
上記各実施形態では、真空槽15は、上下に2分割される薄い箱形状としたが、左右又は前後に2分割される構成であってもよい。また、蓋は真空槽本体に対して開閉可能であれば良く、ヒンジによる開閉であってもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8