特許第6692911号(P6692911)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6692911硬化鋼部品を製造するための方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6692911
(24)【登録日】2020年4月17日
(45)【発行日】2020年5月13日
(54)【発明の名称】硬化鋼部品を製造するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 22/20 20060101AFI20200427BHJP
   B21D 24/00 20060101ALI20200427BHJP
【FI】
   B21D22/20 Z
   B21D22/20 H
   B21D22/20 E
   B21D24/00 Z
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-541172(P2018-541172)
(86)(22)【出願日】2017年2月7日
(65)【公表番号】特表2019-504772(P2019-504772A)
(43)【公表日】2019年2月21日
(86)【国際出願番号】EP2017052605
(87)【国際公開番号】WO2017137379
(87)【国際公開日】20170817
【審査請求日】2018年10月5日
(31)【優先権主張番号】102016102344.2
(32)【優先日】2016年2月10日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513069145
【氏名又は名称】フォエスタルピネ スタール ゲーエムベーハー
(73)【特許権者】
【識別番号】517407833
【氏名又は名称】フォエスタルピネ メタル フォーミング ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100116872
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 和子
(72)【発明者】
【氏名】コルンベルガー ジークフリート
(72)【発明者】
【氏名】ハスルマイヤー ヨハネス
【審査官】 石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−195958(JP,A)
【文献】 特表2007−505211(JP,A)
【文献】 特開2007−098459(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/081043(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/037657(WO,A1)
【文献】 特開2014−088625(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/161192(WO,A1)
【文献】 特表2008−509284(JP,A)
【文献】 特開2013−091099(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/001630(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0232354(US,A1)
【文献】 国際公開第2005/032740(WO,A1)
【文献】 実開平01−084826(JP,U)
【文献】 特許第5901493(JP,B2)
【文献】 特許第5830056(JP,B2)
【文献】 特開2008−36709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 22/20
B21D 24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性合金鋼で構成された帯薄鋼板からブランクが切り抜かれ、前記ブランクは、次に、それがAcより高い温度に加熱されてオーステナイト化され、次に成形工具中に挿入され、前記成形工具中で成形され、前記成形時に臨界硬化速度より大きな速度で冷却される、薄鋼板部品をプレス硬化するための方法であって、前記成形および硬化プロセス時に成形される薄金属板ブランク中で第2の型の微小亀裂が形成されることを回避するために、周囲媒質が、引張ひずみを受ける箇所で注入または吸引されることを特徴とする方法。
【請求項2】
周囲媒質の注入は、1barを超える正圧で、行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
周囲媒質が、空気または酸素または窒素であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
周囲媒質が連続的に注入または吸引されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法を行うための装置であって、2つの成形工具半部を有し;2つの成形工具半部は、ブランクを深絞りするために協働し、それらが、互いの方へおよび互いから離れる方へ動くことができるように具現化され;流体媒質の交換用の少なくとも1つの供給ラインまたは排出ライン(8)が、引張ひずみを受ける箇所で設けられることを特徴とする、装置。
【請求項6】
少なくとも1つの窪みが、引張ひずみを受ける薄金属板の領域に設けられることを特徴とする、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
窪み(5,6,7)および/または工具表面(3,4,10)に、後ろから、すなわち前記工具(1)側から、供給開口と、対応して穿孔されたライン(8)とによって酸素含有流体が供給されることを特徴とする、請求項6に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化鋼部品を製造するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
硬化鋼部品は、特に自動車用の車体製造において、その優れた機械的性質に起因して、通常の強度でははるかに大型にしたがってそれだけ重く具現化されなければならない部品を用いる必要なしに、特別に安定な乗員室を実現することが可能であるという利点を有する。
【0003】
この種の硬化鋼部品を製造するために、急冷硬化によって硬化することができる鋼タイプが用いられる。この種の鋼タイプは、たとえばホウ素合金化マンガン炭素鋼を含み、これの最も広く用いられるものは、22MnB5である。しかし、他のホウ素合金化マンガン炭素鋼もこの目的で用いられる。
【0004】
これらのタイプの鋼から硬化部品を製造するために、鋼材料は、オーステナイト化温度(>Ac)に加熱されなければならず、鋼材料がオーステナイト化するまで待つ必要がある。所望の硬度に応じて、部分オーステナイト化または完全オーステナイト化をこれに関連して実現することができる。
【0005】
オーステナイト化後に、そのような鋼材料が臨界硬化速度を上回る速度で冷却されると、オーステナイト構造は、非常に硬い構造であるマルテンサイトに変換する。こうして、最大1500MPaを超える引張強度Rmを実現することが可能である。
【0006】
現在、鋼部品を製造するために2つの異なる手順の手法が共通に用いられている。
【0007】
いわゆる成形硬化においては、帯鋼から薄鋼板ブランクが切り取られ(例えばそれから切り抜かれるまたは打ち抜かれる)、次に―従来の、例えば5段階深絞りプロセスを用いて―深絞りされて仕上がり部品を製造する。この場合、この仕上がり部品は、次のオーステナイト化時の熱膨張を補償するために、いくぶんか小さい寸法にされる。
【0008】
こうして製造された部品は、オーステナイト化され、次に成形硬化工具中に挿入され、その中でプレスされるが、成形されないかまたは非常にわずかな程度にしか成形されず、このプレスする工程により、熱が、詳しくは臨界硬化速度より大きな速度で部品から流れ出し、プレス工具に流れ込む。
【0009】
他方の手順の手法は、帯薄鋼板からブランクが切り取られ(例えばそれから切り抜かれるまたは打ち抜かれる)、次にブランクがオーステナイト化され、熱間ブランクが、好ましくは一段階工程で782℃未満の温度で成形されると同時に臨界硬化速度より大きな速度で冷却される、いわゆるプレス硬化である。
【0010】
どちらの場合でも、金属防食コーティング(例えば亜鉛または亜鉛系合金)を施されたブランクを用いることが可能である。成形硬化は間接プロセスとも呼ばれ、プレス硬化は直接プロセスと呼ばれる。間接プロセスの利点は、より複雑な工具幾何形状を実現することが可能な点である。
【0011】
直接法の利点は、より高い材料利用率を実現することができる点である。しかし、実現できる部品の複雑さは、特に一段階成形プロセスで、低くなる。
【0012】
しかし、プレス硬化においては、特に亜鉛めっき薄鋼板ブランクで表面に微小亀裂が形成する点が不利である。
【0013】
これに関連して、一次微小亀裂と二次微小亀裂とが区別される。
【0014】
一次微小亀裂は、いわゆる液体金属脆化によるとされている。この理論は、成形時に、すなわち材料に引張応力が及ぼされると、液体亜鉛相がまだ存在するオーステナイト相と相互作用し、最大数百μmの深さを有する微小亀裂が材料中に作り出される原因となるというものである。
【0015】
本出願人は、材料を液体亜鉛相がもはや存在しない温度に―加熱炉からの取り出しと熱間成形プロセスの開始との間の時間に―能動的にまたは受動的に冷却することにより、この一次微小亀裂を抑制することに成功した。これは、熱間成形が約750℃未満の温度で行われることを意味している。
【0016】
これまでのところ、熱間成形において二次微小亀裂を制御することは、予備冷却しても可能ではなく、二次微小亀裂は、600℃未満の熱間成形温度においても発生する。亀裂深さは、この場合、数十μmに達する。
【0017】
一次微小亀裂も二次微小亀裂も、潜在的な損傷源を構成するので、使用者に受け容れられない。
【0018】
これまでの方法では、二次微小亀裂のない部品の製造を保証することはまだ可能でなかった。
【0019】
特許文献1は、薄鋼板で作られた、特に薄鋼板で構成される亜鉛めっきワークで作られた部品を熱間成形プレス硬化するための方法および成形工具を開示している。この場合、熱間成形およびプレス硬化のために用いられる雌金型は―正の絞り半径によって画定される雌金型の絞り角領域において―絞り角領域に隣接し、ワークが熱間成形およびプレス硬化されるときワークと接触する雌金型の区間の熱伝導率より少なくとも10W/(m×K)小さな熱伝導率を有する材料で液体被覆されるかまたはインサートピースを提供されるべきである。ワークに面する絞り角領域または適切な位置に置かれたインサートピースの表面に施用される材料は、雌金型の正の絞り半径の1.6倍から10倍の範囲にある、絞り角上に延在する横寸法を有するべきである。これは、薄鋼板で作られたワークの流れ特性を熱間成形時に向上させるはずであり、したがって薄鋼板で作られた、好ましくは亜鉛メッキ鋼ブランクで作られたワークの熱間成形における亀裂の発生のリスクを顕著に低下させるはずである。しかし、そのような工具は、第2の型の微小亀裂を回避することを可能にはしない。
【0020】
特許文献2は、工具の型表面が、型表面に導入された2つの微小穴により、一部の領域において微細構造化された、プレス硬化工具用の工具を開示している。この工程は、型表面とブランクとの間のブランクの成形のための有効接触面積を穴の間に位置する表面部分に制限することを意図している。これは、摩擦を減らすことを意図している。
【0021】
特許文献3は、薄鋼板から硬化部品を製造するための方法を開示している。この方法においては、成形部品の成形の前または後に、求められる成形部品の最終トリミングおよびなんらかの必要な穿孔手順または孔パターンの製造が実行され、成形部品は次に少なくとも一部の区域において鋼材料のオーステナイト化を可能にする温度に加熱され;部品は、次に成形硬化工具へ移され、成形硬化工具中で成形硬化が実行され、部品は冷却され、したがって部品の接触および加圧によって少なくとも一部の区域において硬化し;部品は、正の半径の領域の中で、少なくともある領域において、成形硬化工具によって支持され、好ましくはトリム端の領域において2つのクランプによって保持され、部品がクランプされていない領域において、部品は、金型の半部から少なくともギャップによって離間している。この手段は、部品を歪まないように固定し、異なる硬化速度により異なる硬度勾配を設定することを可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2011 055 643 A1号
【特許文献2】独国特許出願公開第10 2011 052 773 A1号
【特許文献3】独国特許第10 2004 038 626 B3号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の目的は、直接熱間成形された、すなわちプレス硬化された部品において、第2の型の微小亀裂を回避することである。
【0024】
この目的は、請求項1の特徴を有する方法によって達成される。
【0025】
従属請求項には、有利な改変形の特徴が示される。
【0026】
本発明の別の目的は、プレス硬化プロセスにおいて薄鋼板ブランクを熱間成形し、硬化することができ、微小亀裂を回避する装置を創製することである。
【0027】
この目的は、請求項4の特徴を有する装置によって達成される。この請求項に従属する従属請求項には、有利な改変形の特徴が示される。
【0028】
本発明者らは、引張歪を受けている領域において、発生する亜鉛蒸気が十分な濃度で鋼に到達する、いわゆる蒸気金属脆化(VME:vapor metal embrittlement)のとき、第2の型の微小亀裂が作り出されると認識した。亜鉛蒸気は、成形プロセス時の伸縮において起こる亜鉛/鉄層の裂けによって作り出される。十分な濃度は、薄金属板と工具との直接接触が優勢であるかまたは薄金属板が工具から非常に小さな距離にあるような領域において特に生じる。本発明によって定義される非常に小さな距離とは、0.5mm未満である。本発明によれば、材料および温度に関して最大の可能な動作窓を保持し、かつ安価な実体化を保証しながら、二次微小亀裂が回避されるはずである。少なくとも同じ滞留時間で、部品製造時にサイクル時間の増加もスループットの低下もないはずである。
【0029】
本発明によれば、引張歪を受けている領域(伸長端繊維)において、発生する亜鉛蒸気は、気体流(対流)によって離れるように運ばれる、またはより正確に言えば、吹き飛ばされる、または十分に薄められる。代替的にまたはこれに加えて、亜鉛は、流体の流入によって、急速に酸化亜鉛またはZnI2などの安定な化合物に変換されることができる。さらに、二次微小亀裂からの鋼の保護は、流体を供給することにより酸化物層などの保護層を作り出すことによっても実現することができる。上記の全ての手段は、微小亀裂が顕著に減少することをそれぞれ示している。
【0030】
この場合、二次微小亀裂の防止は、以下のことによって確実になる。成形される薄金属板ブランクで、周囲媒質が、端繊維で引張ひずみが発生する領域で、前記成形および硬化プロセス時に交換される。その交換によって、生じる亜鉛蒸気は、希釈または除去される。
【0031】
周囲媒質の交換は、特に連続的導入または除去、すなわち、媒質の注入または吸引によって、行われる。
【0032】
このための媒質は、空気、酸素、窒素、または他の流体または気体であることができる。
【0033】
空気または酸素などの気体酸素含有流体は、工具を過度に汚染することができず、さらに、流体を加減することによってたとえば水によって起こり得る種類のおそらく望ましくない強力な冷却作用をより容易に調節することができるから、特に好ましい。
【0034】
これらの媒質は、ボアまたは工具中の窪みのような他の通路を介して導入され、特に好ましくは、1barを超える正圧で注入される。吸引の場合、これは、同様に好ましくは1barを超える圧力で行われる。
【0035】
特に好ましい選択肢は、作業中の媒質の連続的交換である。このようにして、作業中の媒質の連続的交換が実現可能であるからであり、これは、可能な限り均一な製造条件を実現するからである。
【0036】
加えて、特定の温度制御を実現するために、および冷却作用を低減するためにも、導入される前に流体を加熱する予熱ユニットを設けることができる。好ましくは、部品の硬化は、成形手順の終わりでのみ、すなわち、工具が完全に閉じられたときにのみ、生じるべきだからである。
【0037】
加えて、工具の中の窪みを設けることができ、それは、一方では、深絞りが悪影響を受けない、またはブランクまたはワークピースが波形になるように、寸法決めされ、他方では、硬化に必要な熱の流出が、同様にかなりの程度悪影響を受けないように、寸法決めされるようになっている。
【0038】
窪みは、しかしながら、放出される亜鉛相または亜鉛/鉄相に酸化のための酸素を供給するために、十分な量の酸素が、絞り成形されるブランクにおよび材料に行くように、窪みが流体(特に酸素)用のリザーバを構成するように、寸法決めされる。
【0039】
有利にはフロークッションが形成することを可能にする、例えば適切な流入開口を介して、有利には、窪みに、成形時に流体または酸素含有流体が工具側から連続的に供給されることができる。加えて、型からのワークピースの取り出しおよび別のブランクの挿入の前に、型穴を酸素含有流体でフラッシュすることができ、それはその後窪みに存在する。酸素含有流体の例は、気体状態で供給される空気、および上記の流体を含む。
【0040】
引張ひずみを受ける箇所での周囲媒質の交換は、この媒質が、引張ひずみを受けるこれらの箇所に直接供給されないときでも、二次微小亀裂の形成を、生じる亜鉛蒸気を運び去ることによって効果的に妨げる。
【0041】
本発明は、例として、図面に基づいて説明される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】発明による窪みでの絞り角に隣接する工具領域を示す。
図2】発明による窪みの異なる実施形態での工具の絞り角領域を示す。
図3】発明によるスロット配置での工具の絞り角領域の部分切取側面図である。
図4図3による配置の上面図である。
図5】薄金属板押下機構および流体供給ノズルを含む絞り角領域を示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
絞り角領域1または正の半径の領域1は、成形工具に位置し、ワークピースに向かう2つの表面3,4を有し、ワークピースは、絞り角または正の半径2の領域で交わる。
【0044】
窪み5は、絞り方向で絞り角2の後に位置する表面4に設けられる。絞絞り成形用材料に十分な支持作用を提供するために、この場合、窪み5は、表面3と窪み5との間の絞り角2の厚さが、ほぼその半径に対応するように、寸法決めされる。
【0045】
絞り角2と表面4との間で、窪み5は、5〜9mmの深さで、約25〜35mmである高さを有する。
【0046】
別の有利な実施形態(図2)では、絞り角2に隣接する広域の窪み5を設ける代わりに、これの上記の厚さをそのままにして、溝6が、表面4に導入される。この場合、溝6は、5〜9mmの深さで、合計約8〜12mmである表面4と絞り角2との間の高さを有する。
【0047】
さらなる有利な実施形態では、絞り角2に隣接する壁4の領域にある連続した窪み5の代わりに、絞り方向に延びる複数の溝7が設けられる。例えば、溝7またはスロット7は、4〜8mmのスロット幅および7〜11mmのスロット間隔を有し、残りのブリッジピースが1〜5mmの幅を有するようになっている。この場合、溝7またはスロット7は、同様に5〜9mmの深さを有する。
【0048】
酸素の提供を通じて第2の型の微小亀裂の形成を効果的に防ぐために、上記の形状で、窪み5,6,7の中の比較的少量の流体で−場合によってはさらにブリッジピース4の存在にもかかわらず−十分であることが、意外にも分かっている。
【0049】
有利な実施形態(図示せず)では、必要であれば、窪み5、溝6、およびスロット7の領域の酸素の分圧をさらに増加させるために、窪み5、溝6、およびスロット7に、後ろから、すなわち工具側から、供給開口と、対応して穿孔されたラインとによって酸素含有流体が供給される。
【0050】
連続加工時に窪み5、溝6およびスロット7の中の酸素含有量を高い水準に保持するために、常時、窪み5、溝6およびスロット7の中に十分な酸素の貯えがあるように、型穴を酸素含有流体でフラッシュすることもできる。
【0051】
発明によると、全ての場合で、酸素含有気体の供給が、工具1でまたは押下機構でまたは雄金型9で供給ボア8を介して加圧ガスが供給されることによって、確実になる。これに関連して、このガスは、窪み(図1〜4)および/または表面4(図2)または表面4,3に運ばれることができる。上工具または薄金属板押下機構9が存在する場合に、押下表面10に達する対応するボア8も存在することができる。これは、この領域でも薄金属板膨張が起こるときに、特に重要である。
【0052】
供給ボア8は、好ましくは3〜8mmの直径をそれぞれ有する。しかし場合によっては、流出流体量が十分に多いときに、より小さい直径も使用することができる。
【0053】
例えば、600℃未満の成形温度で二次微小亀裂の形成を効果的に回避するために、250mm/秒の型速度で、成形される薄金属板表面の平方センチメートル当たり0.01l/秒の空気量で十分であることが、分かっている。
【0054】
より高い成形温度で、より多い空気量が必要である。
【0055】
主に直接プレス硬化プロセスにおいて、22MnB5に加えて20MnB8、22MnB8および他のマンガン/ホウ素鋼も用いられる。
【0056】
その結果、以下の合金組成の鋼が、本発明に適している(すべて質量%で示される)。
【表1】

残りは鉄および製錬由来の不純物で占められる。そのような鋼において、特に、合金元素ホウ素、マンガン、炭素および任意選択としてクロムおよびモリブデンが、変換遅延剤として用いられる。
【0057】
以下の一般合金組成の鋼も、本発明に適している(すべて質量%で示される)。
炭素(C) 0.08−0.6
マンガン(Mn) 0.8−3.0
アルミニウム(Al) 0.01−0.07
ケイ素(Si) 0.01−0.8
クロム(Cr) 0.02−0.6
チタン(Ti) 0.01−0.08
窒素(N) <0.02
ホウ素(B) 0.002−0.02
リン(P) <0.01
硫黄(S) <0.01
モリブデン(Mo) <1
残りは鉄および製錬由来の不純物で占められる。
【0058】
以下の鋼構成が特に適していることが分っている(すべて質量%で示される)。
炭素(C) 0.08−0.35
マンガン(Mn) 1.00−3.00
アルミニウム(Al) 0.03−0.06
ケイ素(Si) 0.01−0.20
クロム(Cr) 0.02−0.3
チタン(Ti) 0.03−0.04
窒素(N) <0.007
ホウ素(B) 0.002−0.006
リン(P) <0.01
硫黄(S) <0.01
モリブデン(Mo) <1
残りは鉄および製錬由来の不純物で占められる。
【0059】
酸素含有媒質の最適な導入箇所は、部品形状によって決まる。ビードまたはアンダーカットも考慮されなければならないからである。
【0060】
少ない、大きいボアの代わりに、工具のより大きい面に分布する小さい導入開口のふるい状パターンを設けることも、有利であり得る。

図1
図2
図3
図4
図5