特許第6692913号(P6692913)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6692913バッテリー放電制御のためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6692913
(24)【登録日】2020年4月17日
(45)【発行日】2020年5月13日
(54)【発明の名称】バッテリー放電制御のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20200427BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20200427BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20200427BHJP
   B60L 58/14 20190101ALI20200427BHJP
【FI】
   H01M10/48 301
   H01M10/48 P
   H01M10/44 P
   H02J7/00 B
   B60L58/14
【請求項の数】21
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-543316(P2018-543316)
(86)(22)【出願日】2016年2月17日
(65)【公表番号】特表2019-512149(P2019-512149A)
(43)【公表日】2019年5月9日
(86)【国際出願番号】EP2016053331
(87)【国際公開番号】WO2017140355
(87)【国際公開日】20170824
【審査請求日】2018年10月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】509043571
【氏名又は名称】トヨタ・モーター・ヨーロッパ
【氏名又は名称原語表記】TOYOTA MOTOR EUROPE
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小宮山 啓太
(72)【発明者】
【氏名】加藤 祐樹
【審査官】 大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−012761(JP,A)
【文献】 特開2014−120335(JP,A)
【文献】 特開2013−125701(JP,A)
【文献】 特開2011−135680(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0004464(US,A1)
【文献】 米国特許第07244527(US,B2)
【文献】 米国特許第07592776(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/42−10/48
H02J 7/00−7/12
H02J 7/34−7/36
B60L 1/00−3/12
B60L 7/00−13/00
B60L 15/00−58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーのための放電制御システムであって、
前記バッテリーに関連付けられた温度値を提供するように構成された温度感知手段と、
前記バッテリーに関連付けられた電圧値を提供するように構成された電圧感知手段と、
前記バッテリーの内側部分に関連付けられた圧力値を提供するように構成された圧力感知手段と、
コントローラとを含み、前記コントローラは、
放電プロセスが開始される前に、前記バッテリーに関連付けられた予め定められたデータマップから選択されたマップデータに基づいて、前記バッテリーの放電に関連付けられたしきい値圧力変化を判断し、
前記放電プロセス中に、前記電圧感知手段によって得られた現在の電圧値と、前記圧力感知手段によって得られた現在の圧力値と、前記現在の圧力値に基づく総圧力変化とを監視し、
前記総圧力変化が前記しきい値圧力変化未満であり、前記現在の圧力値が予め定められた最小しきい値圧力よりも大きい場合に、前記現在の電圧値が第1の下限電圧値を下回ると、前記放電プロセスの継続を許可し、
(i)前記現在の電圧値が、前記第1の下限電圧値よりも小さい第2の下限電圧値を下回るという条件;
(ii)前記総圧力変化が前記しきい値圧力変化以上であるという条件;または
(iii)前記現在の圧力値が前記予め定められた最小しきい値圧力よりも小さいという条件、のうちのいずれか1つが真である場合に、前記放電プロセスの継続を禁止するように構成されている、放電制御システム。
【請求項2】
前記マップデータの選択は、前記温度感知手段から得られた放電前温度値と、前記電圧感知手段から得られた放電前電圧値と、前記圧力感知手段から得られた放電前圧力値とに基づいている、請求項1に記載の放電制御システム。
【請求項3】
前記コントローラは、前記総圧力変化が前記しきい値圧力変化未満であり、前記現在の圧力値が予め定められた最小圧力よりも大きい場合に、前記現在の電圧値が前記第1の下限電圧値を下回ると、前記第1の下限電圧値を減少させるように構成されている、請求項1および請求項2のいずれか1項に記載の放電制御システム。
【請求項4】
前記コントローラはさらに、初期内部圧力測定値と放電前圧力値と放電前温度値とに基づいて圧力情報のうちの少なくとも1つを修正することにより、前記バッテリーの1つ以上の部分におけるクリープを補償するように構成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の放電制御システム。
【請求項5】
前記コントローラは、前記初期内部圧力測定値と前記放電前圧力値とを比較し、前記初期内部圧力測定値が前記放電前圧力値よりも大きい場合に、前記放電前圧力値に関連付けられた新しいマップデータを選択するように構成されている、請求項4に記載の放電制御システム。
【請求項6】
予め定められたマップは、代表的なバッテリーの代表的な使用条件下での前記バッテリーの実験的に測定された内部圧力と開路電圧と温度との集合を含む、請求項5に記載の放電制御システム。
【請求項7】
前記圧力感知手段は、前記バッテリーに埋込まれた少なくとも1つの触覚センサを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の放電制御システム。
【請求項8】
前記少なくとも1つの触覚センサは、前記バッテリーのバッテリーセルの積層方向と平行に位置付けられている、請求項7に記載の放電制御システム。
【請求項9】
前記バッテリーの充電状態を判断するように構成された充電状態センサをさらに含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の放電制御システム。
【請求項10】
前記電圧感知手段は、前記バッテリーに関連付けられた1つ以上のバッテリーパックに接続されたダミーセルから前記電圧値を受ける、請求項1〜9のいずれか1項に記載の放電制御システム。
【請求項11】
前記電圧値は、前記バッテリーの開路電圧である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の放電制御システム。
【請求項12】
前記バッテリーは、リチウムイオン固体バッテリーおよびリチウムイオン液体電解質バッテリーのうちの少なくとも1つを含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の放電制御システム。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の放電制御システムを含む、車両。
【請求項14】
バッテリーを放電するための方法であって、
前記バッテリーに関連付けられた温度値を求めるステップと、
前記バッテリーに関連付けられた電圧値を求めるステップと、
前記バッテリーの内側部分に関連付けられた圧力値を求めるステップと、
前記バッテリーの放電が開始される前に、前記バッテリーに関連付けられた予め定められたデータマップから選択されたマップデータに基づいて、前記バッテリーのフル放電に関連付けられたしきい値圧力変化を求めるステップと、
前記バッテリーを放電するステップと、
前記放電中に、電圧感知手段によって得られた現在の電圧値と、圧力感知手段によって得られた現在の圧力値に基づく総圧力変化とを監視するステップと、
前記総圧力変化が前記しきい値圧力変化未満であり、前記現在の圧力値が予め定められた最小しきい値圧力よりも大きい場合に、前記現在の電圧値が第1の下限電圧値を下回ると、放電プロセスの継続を許可するステップと、
(i)前記現在の電圧値が、前記第1の下限電圧値よりも小さい第2の下限電圧値を下回るという条件;
(ii)前記総圧力変化が前記しきい値圧力変化以上であるという条件;または
(iii)前記現在の圧力値が前記予め定められた最小しきい値圧力よりも小さいという条件、のうちのいずれか1つが真である場合に、前記放電プロセスの継続を禁止するステップとを含む、方法。
【請求項15】
前記マップデータの選択は、温度感知手段から得られた放電前温度値と、前記電圧感知手段から得られた放電前電圧値と、前記圧力感知手段から得られた放電前圧力値とに基づいている、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記現在の電圧値が前記第1の下限電圧値を下回り、前記総圧力変化が前記しきい値圧力変化未満である場合に、前記第1の下限電圧値を減少させるステップを含む、請求項14〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
初期内部圧力測定値と放電前圧力値と放電前温度値とに基づいて、前記データマップから新しいマップデータを選択することにより、前記バッテリーの1つ以上の部分におけるクリープを補償するステップを含む、請求項14〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記初期内部圧力測定値と放電前圧力値とを比較するステップと、
前記初期内部圧力測定値が前記放電前圧力値よりも大きい場合に、前記放電前圧力値に関連付けられた新しいマップデータを選択するステップとを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
代表的な使用条件下での代表的なバッテリーの実験的に測定された内部圧力と開路電圧と温度との関数として作成された予め定められたマップに基づいて、新しいしきい値圧力変化が設定される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記バッテリーの充電状態を判断し、前記放電が開始される前に、前記バッテリーの前記充電状態に基づいて前記しきい値圧力変化を修正するステップを含む、請求項14〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記バッテリーは、リチウムイオン固体バッテリーおよびリチウムイオン液体電解質バッテリーのうちの少なくとも1つを含む、請求項14〜20のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の分野
本開示は、バッテリーの放電を制御するためのシステムおよび方法に関する。より特定的には、本開示は、バッテリー内の内部圧力測定値に基づいて放電状態を管理することに関する。
【背景技術】
【0002】
開示の背景
バッテリー、たとえばリチウムイオンバッテリーの放電中、バッテリーパックでの総電圧が、劣化が生じたある積層部分での過電圧によって急激に減少する場合がある。それにより総電圧は、過放電を防止するために設定された下限電圧に達し、放電システムは、バッテリーパックがフル充電されていると考えて放電を停止する。
【0003】
しかしながら、バッテリーの劣化が進むにつれて、バッテリーパックは典型的には、下限電圧に達した結果として放電が停止されたときにまだフル放電されていない(すなわち、充電状態(state of charge:SOC)>0%)。したがって、バッテリーからの利用可能なエネルギーの量は、とりわけ劣化分散により減少する。
【0004】
JP2004−087238としても公開されているUS2004/0038123は、直列接続されるように積層方向に積層された複数の単位セルと、複数の単位セルについて電圧が測定されることを可能にするように複数の単位セル上にそれぞれ形成された分担電圧測定タブ電極とを有する積層型バッテリーであって、分担電圧測定タブ電極は、積層型バッテリーの側面上で、積層方向と交差する方向においてずれた位置に配置されるようになっている、積層型バッテリーに向けられている。しかしながら、US2004/0038123のシステムは、各積層部分間に電圧センサを必要とするため、高コストをもたらす。加えて、積層の数が多くなるほど、それらの間に電圧センサを配置することが難しくなる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
本発明の発明者らは、バッテリーの過放電およびバッテリーの損傷の可能性を制限しつつ、より低い放電レベルを可能にすることによってますます多くのエネルギーがバッテリーに蓄えられ得るようにすることを望んでいる。
【0006】
したがって、本開示の実施形態によれば、バッテリーのための放電制御システムが提供される。放電制御は、バッテリーに関連付けられた温度値を提供するように構成された温度感知手段と、バッテリーに関連付けられた電圧値を提供するように構成された電圧感知手段と、バッテリーの内側部分に関連付けられた圧力値を提供するように構成された圧力感知手段と、コントローラとを含んでいてもよい。コントローラは、放電プロセスが開始される前に、バッテリーに関連付けられた予め定められたデータマップから選択されたマップデータに基づいて、バッテリーの放電に関連付けられたしきい値圧力変化を判断し、放電プロセス中に、電圧感知手段によって得られた現在の電圧値と、圧力感知手段によって得られた現在の圧力値と、現在の圧力値に基づく総圧力変化とを監視し、総圧力変化がしきい値圧力変化未満であり、現在の圧力値が予め定められた最小しきい値圧力よりも大きい場合に、現在の電圧値が第1の下限電圧値を下回ると、放電プロセスの継続を許可し、
(i)現在の電圧値が、第1の下限電圧値よりも小さい第2の下限電圧値を下回るという条件;
(ii)総圧力変化がしきい値圧力変化以上であるという条件;または
(iii)現在の圧力値が予め定められた最小しきい値圧力よりも小さいという条件、のうちのいずれか1つが真である場合に、放電プロセスの継続を禁止するように構成されてもよい。
【0007】
そのようなシステムを提供することにより、劣化を経験したバッテリーをより完全に充電するために、許容できる電圧範囲を見越すことが可能であり得る。これは次に、バッテリーの損傷のリスクが減少した、より大きいエネルギー利用可能性を可能にする。
【0008】
マップデータの選択は、温度感知手段から得られた放電前温度値と、電圧感知手段から得られた放電前電圧値と、圧力感知手段から得られた放電前圧力値とに基づいていてもよい。
【0009】
コントローラは、総圧力変化がしきい値圧力変化未満であり、現在の圧力値が予め定められた最小圧力よりも大きい場合に、現在の電圧値が第1の下限電圧値を下回ると、第1の下限電圧値を減少させるように構成されてもよい。
【0010】
コントローラは、初期内部圧力測定値と放電プロセス前圧力値と放電前温度値とに基づいて圧力情報のうちの少なくとも1つを修正することにより、バッテリーの1つ以上の部分におけるクリープを補償するように構成されてもよい。
【0011】
コントローラは、初期内部圧力測定値と放電前圧力値とを比較し、初期内部圧力測定値が放電プロセス前圧力値よりも大きい場合に、充電前圧力値に関連付けられた新しいマップデータを選択するように構成されてもよい。
【0012】
予め定められたマップは、代表的なバッテリーの代表的な使用条件下での当該バッテリーの実験的に測定された内部圧力と開路電圧と温度との集合を含んでいてもよい。
【0013】
圧力感知手段は、バッテリーに埋込まれた少なくとも1つの触覚センサを含んでいてもよい。
【0014】
少なくとも1つの触覚センサは、バッテリーのバッテリーセルの積層方向と平行に位置付けられてもよい。
【0015】
バッテリーの充電状態を判断するように構成された充電状態センサが含まれていてもよい。
【0016】
電圧感知手段は、バッテリーに関連付けられた1つ以上のバッテリーパックに接続されたダミーセルを含んでいてもよい。
【0017】
電圧値は、バッテリーの開路電圧であってもよい。
バッテリーは、リチウムイオン固体バッテリーおよびリチウムイオン液体電解質バッテリーのうちの少なくとも1つであってもよい。
【0018】
本開示のさらなる実施形態によれば、上述の実施形態のいずれかに従った放電制御システムを含む車両が提供されてもよい。
【0019】
本開示のさらに別の実施形態によれば、バッテリーを放電するための方法が提供される。この方法は、バッテリーに関連付けられた温度値を求めるステップと、バッテリーに関連付けられた電圧値を求めるステップと、バッテリーの内側部分に関連付けられた圧力値を求めるステップと、バッテリーの放電が開始される前に、バッテリーに関連付けられた予め定められたデータマップから選択されたマップデータに基づいて、バッテリーのフル放電に関連付けられたしきい値圧力変化を求めるステップと、バッテリーを放電するステップと、放電中に、電圧感知手段によって得られた現在の電圧値と、圧力感知手段によって得られた現在の圧力値に基づく総圧力変化とを監視するステップと、総圧力変化がしきい値圧力変化未満であり、現在の圧力値が予め定められた最小しきい値圧力よりも大きい場合に、現在の電圧値が第1の下限電圧値を下回ると、放電プロセスの継続を許可するステップと、
(i)現在の電圧値が、第1の下限電圧値よりも小さい第2の下限電圧値を下回るという条件;
(ii)総圧力変化がしきい値圧力変化以上であるという条件;または
(iii)現在の圧力値が予め定められた最小しきい値圧力よりも小さいという条件、のうちのいずれか1つが真である場合に、放電プロセスの継続を禁止するステップとを含んでいてもよい。
【0020】
そのような方法を提供することにより、劣化を経験したバッテリーをより完全に充電するために、許容できる電圧範囲を見越すことが可能であり得る。これは次に、バッテリーの損傷のリスクが減少した、より大きいエネルギー利用可能性を可能にする。
【0021】
マップデータの選択は、温度感知手段から得られた充電前温度値と、電圧感知手段から得られた充電前電圧値と、圧力感知手段から得られた充電前圧力値とに基づいている。
【0022】
方法はまた、現在の電圧値が下限電圧値を下回り、総圧力変化がしきい値圧力変化未満である場合に、上限電圧値を減少させるステップを含んでいてもよい。
【0023】
方法は、初期内部圧力測定値と充電プロセス前圧力値と充電前温度値とに基づいて、選択されたマップデータを修正することにより、バッテリーの1つ以上の部分におけるクリープを補償するステップを含んでいてもよい。
【0024】
方法は、初期内部圧力測定値と放電前圧力値とを比較するステップと、初期内部圧力測定値が放電プロセス前圧力値よりも大きい場合に、放電前圧力値に関連付けられた新しいマップデータを選択するステップとを含んでいてもよい。
【0025】
代表的な使用条件下での代表的なバッテリーの実験的に測定された内部圧力と開路電圧と温度との関数として作成された予め定められたマップに基づいて、新しいしきい値圧力変化が設定されてもよい。
【0026】
方法は、バッテリーの充電状態を判断し、放電が開始される前に、バッテリーの充電状態に基づいてしきい値圧力変化を修正するステップを含んでいてもよい。
【0027】
バッテリーは、リチウムイオン固体バッテリーおよびリチウムイオン液体電解質バッテリーのうちの少なくとも1つであってもよい。
【0028】
この発明の追加の目的および利点が、以下の説明で一部述べられるか、または、この発明の実践によって習得され得る。この発明の目的および利点は、添付された請求項で特に指摘された要素および組合せによって実現され達成されるであろう。
【0029】
前述の概要および以下の詳細な説明は双方とも単に例示的および説明的であり、請求されるようなこの発明を限定するものではない、ということが理解されるべきである。
【0030】
この明細書において援用され、その一部を構成する添付図面は、この発明の実施形態を例示しており、記載とともにこの開示の原理を説明するよう機能する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1A】本開示の実施形態に従った、バッテリーのための放電システムの概略図である。
図1B】例示的な開路電圧測定構成の概略図である。
図2】圧力センサを含むバッテリーの内側部分の例示的表現を示す図である。
図3】本開示の実施形態に従った、充電制御のための例示的な一方法を示すフローチャートである。
図4】クリープ補償のための例示的な一方法を示すフローチャートである。
図5A図4の例示的な方法を適用するための例示的なデータマップの表現を示す図である。
図5B図4の例示的な方法を適用するための例示的なデータマップの表現を示す図である。
図6A】放電プロセス中の圧力と電圧と利用可能エネルギーとの関係を示す例示的なグラフである。
図6B】放電プロセス中の圧力と電圧と利用可能エネルギーとの関係を示す例示的なグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
実施形態の説明
この開示の例示的な本実施形態を、以下に詳細に参照する。本実施形態の例が添付図面に例示されている。可能な限り、同じまたは同様の部分を指すために同じ参照番号が図面全体を通して使用される。
【0033】
図1Aは、本開示の実施形態に従った、バッテリーのための放電システムの概略図である。このシステムは、バッテリー5と、1つ以上のセンサ27と、バッテリー制御部70と、放電制御部20とを含んでいてもよい。バッテリー5は、とりわけ、1つ以上のバッテリーパック10と、1つ以上の圧力感知膜15と、ダミーセル25とを含んでいてもよい。バッテリー5は、任意の好適なタイプのバッテリー、たとえばリチウムイオンバッテリー、NiMHバッテリー、鉛酸蓄電池などであってもよい。
【0034】
バッテリー5はインバータ100に接続されてもよく、インバータ100は次に1つ以上のモータ105に接続されてもよく、充電プロセス中にバッテリー5に蓄えられたエネルギーがインバータ100によって昇圧され、放電プロセス中にモータ105に供給されることを許可し、それにより、車両の運動をもたらす。
【0035】
バッテリーパック10は、バッテリー5に関連付けられたハウジング内に設置されてもよい。たとえば、バッテリー5は、たとえば金属、プラスチック、化合物などといった、バッテリーパック10を収容するための任意の好適な材料を含むハウジング11を含んでいてもよい。そのようなハウジング11は、そこに配置され接続された1つ以上のバッテリーパック10を有するように構成されてもよく、次にハウジング11は、たとえばハウジング11の開放部分上にカバーを固定する(たとえばボルト留めする)ことによって閉鎖されてもよい。
【0036】
いくつかの実施形態によれば、1つ以上のボルト(図示せず)がハウジングの長さまたは幅にわたって延在してもよく、ハウジング11の開放部分上へのキャップ(図示せず)の配置に続いて、1つ以上のボルトにナットが取付けられて締付けられてもよく、ハウジング11の閉鎖をもたらす。このタイプのボルト留め構成は、ボルトに経時的に印加された変化する応力が、固定に使用されたボルトの永久歪みと、バッテリーパック10を収容するバッテリー5の内部空洞内の空間の膨張/拡大とをもたらすクリープ現象を経験するかもしれないということを、当業者であれば理解するであろう。したがって、バッテリー5の内部空洞内の圧力は、バッテリーパック10の膨張および収縮に基づいて、およびクリープの関数として変化する。本開示の実施形態は、そのようなクリープおよび膨張/収縮を、以下に説明されるように考慮に入れる。
【0037】
バッテリー5内に存在する各バッテリーパック10は、バッテリー5内に存在する他のバッテリーパック10に直列または並列で接続されてもよい。ここに説明されるようにバッテリーおよび接続を設計する場合、所望の電圧、所望の最大電流などといったさまざまな基準が考えられ得るということを、当業者であれば認識するであろう。
【0038】
1つ以上の圧力センサ15がバッテリー5内に設けられてもよい。たとえば、充電中に各バッテリーパック10の膨張によって生じる圧力が膨張量に基づいて1つ以上の圧力センサ15に力を加えるように、圧力センサ15がバッテリー5内の各バッテリーパック10間に配置されてもよい。加えて、バッテリー5のハウジング11の端とバッテリー5内のバッテリーパック10の端子との間に、圧力センサ15がさらに設けられてもよい。
【0039】
同様に、放電中、バッテリー内の各バッテリーパック10の収縮によって減少する圧力が、収縮量に基づいて1つ以上の圧力センサ15に加えられる力を減少させ得る。
【0040】
いくつかの実施形態によれば、圧力センサ15は、バッテリー5内のバッテリーパック10の積層方向と平行に位置付けられてもよい(図2参照)。
【0041】
バッテリー5内に含まれる圧力センサの数は、バッテリーパック10の数、および/または、当業者が好適であると判断し得る任意の他の基準に基づいて定められてもよい。たとえば、バッテリー5内にバッテリーパック10が2つ存在する場合、これら2つのバッテリーパック10の間に1つの圧力センサ15が配置されてもよい。同様に、バッテリー5内にバッテリーパックが3つ存在する場合、バッテリー5内に2つの圧力センサ15が配置されてもよく、第1の圧力センサ15は第1のバッテリーパックと第2のパックとの間に配置され、第2の圧力センサ15は第2のバッテリーパックと第3のバッテリーパックとの間に配置されてもよい。
【0042】
圧力センサ15は任意の好適な圧力感知装置を含んでいてもよく、たとえば、バッテリーパック10の膨張および収縮を測定するのに好適な厚さを有する触覚センサであってもよい。いくつかの実施形態によれば、圧力センサ15の厚さは、0.01mmから1mm、および、いくつかの実施形態によれば0.1mmに及んでいてもよい。
【0043】
バッテリー5がいったん組立てられ、たとえば上述のようにバッテリハウジング11にボルト留めされたカバーで閉鎖されると、バッテリー5の内部の初期圧力Pinitialが、バッテリの複数の開路電圧(たとえば、10〜100パーセントのSOCに5パーセント単位で対応するOCV)で測定されてもよく、これらの値はバッテリーECU70のメモリに格納されてもよい。これらの値は、圧力センサ15および圧力検出器30によって測定されるようなバッテリー5内の現在の圧力Pとの比較として、バッテリー5の寿命全体を通して使用されてもよい。
【0044】
加えて、予め定められた最小しきい値圧力Pminが、バッテリーの設計下限SOCに対応する第1の下限電圧に基づいて定められてもよい。たとえば、Pminは、バッテリーの10〜20パーセントのSOCに対応していてもよい。
【0045】
図2は、圧力センサを含むバッテリーの内側部分の例示的表現を示す。図2で示す矢印は、バッテリーパック10の膨脹/収縮に基づく、圧力センサ15に対する圧力と、左右のバッテリーパック10の外側部分でバッテリー5のハウジング11の壁に加えられる力とを表わす。バッテリーパック10はY方向にも力を加え得るものの、本開示の目的のために、X方向に加えられる力がバッテリー5内の圧力の判断のために考慮されるということを、当業者であれば理解するであろう。
【0046】
バッテリー5はまた、バッテリー5内に存在するバッテリーパック10全体にわたる開路電圧Vocvの測定を許可するためにバッテリーパック10に導電的にリンクされた、1つ以上のダミーセル25を含んでいてもよい。たとえば、ダミー負荷を提供するように構成されたダミーセル25が、バッテリー5内に存在するバッテリーパック10の各々と並列に接続されてもよく、出力(すなわち開路電圧)がセンサバンク27に、より特定的には電圧検出器35に提供されてもよい。2つ以上のダミーセル25、たとえば、バッテリー5内に存在するバッテリーパック10ごとに1つのダミーセルが設けられてもよく、そのような構成は欠陥または不良バッテリーパック10の判断に役立ち得るということを、当業者であれば認識するであろう。
【0047】
図1Bは、バッテリー5と接続されたダミーセル25と、ダミーセル25の接続を閉じるように構成され、それによって回路2を結合するスイッチ6とを含む例示的な概略図を示す。スイッチ6の閉鎖はそれにより、図1Bに示す回路2にわたる開路電圧Vocvの測定を可能にし、一方、バッテリー5の通常動作(すなわち、バッテリー5の開路電圧Vocvを測定していない間)は回路1を利用する。
【0048】
圧力センサ15およびダミーセル25に加えて、バッテリー5は、追加のセンサ、たとえば1つ以上の温度センサ、電流センサなどを含んでいてもよい。バッテリー5内に存在するセンサは、信号をセンサバンク27に提供するように構成されてもよく、それにより、センサバンク27が、放電および/または充電プロセス中にバッテリー5に関連付けられた情報(たとえば、開路電圧Vocv、圧力、温度など)を監視し、その情報をとりわけバッテリーECU70に提供することを可能にする。
【0049】
センサバンク27は、とりわけ、圧力値検出器30と、充電状態検出器45と、電圧検出器35と、温度検出器40とを含んでいてもよい。たとえば、圧力センサ15は、圧力センサ15に加えられている圧力を圧力値検出器30が判断できるようにするために、情報を圧力値検出器30に提供するように構成されてもよい。
【0050】
同様に、電圧検出器35は、バッテリー5の、および/または、バッテリー5内の個々のバッテリーパック10の開路電圧Vocvを判断するために、ダミーセル25から入力を受信してもよい。
【0051】
充電状態検出器45は、バッテリー5の充電状態(SOC)を判断するために、電流センサから電流情報を受信し、ダミーセル25から電圧情報を受信するように構成されてもよい。
【0052】
温度検出器40は、バッテリー5の温度を判断するために、バッテリー5内の温度センサから情報を受信するように構成されてもよい。
【0053】
センサバンク27からの値はバッテリーECU70に提供されてもよく、バッテリーECU70はバッテリーコントローラ20にコマンド信号(たとえば放電制御コマンド)を提供する。たとえば、バッテリーECU70は、しきい値圧力差ΔPを求めるための計算部65を含んでいてもよく、しきい値圧力差ΔPは、放電前プロセス中に(すなわち、バッテリー5が放電を開始する前に)電圧検出器35によって測定されるようなバッテリー5の開路電圧Vocvと、圧力値検出器30によって測定されるようなバッテリー5内の現在の圧力Pとに基づいて計算されてもよい。これは、図4図5A、および図5Bを参照して以下により詳細に説明される。
【0054】
バッテリーECU70はさらに、電圧検出器35によって測定されるような現在の電圧V(すなわち、バッテリー5の開路電圧Vocv)をバッテリー5の予め定められた初期最大電圧Vmaxと比較するために構成された電圧比較部60を含んでいてもよい。バッテリー5の初期最大電圧Vmaxはバッテリーの設計に基づいて前もって定められ、たとえば、バッテリーECU70、または車両上に存在する別のコンピュータに関連付けられた読出専用メモリ(read-only memory:ROM)に格納されてもよいということを、当業者であれば理解する。また、本開示の目的のために、任意の特定の時点におけるバッテリー5の現在の電圧Vと開路電圧Vocvとは等しいということが仮定されるであろう。
【0055】
圧力比較部55も、放電プロセス中に圧力値検出器30によって(たとえば、圧力値検出器30による圧力センサ15のサンプリングの繰り返しを介して)測定された圧力差ΔPを、しきい値圧力差ΔPと比較するために、ECU70に設けられてもよい。加えて、圧力比較部55は、現在の圧力Pを、予め定められた最小しきい値圧力Pminと比較するように構成されてもよい。
【0056】
バッテリーECU70は、とりわけ、センサバンク27から得られた値を格納するように構成されたメモリを含んでいてもよい。たとえば、バッテリーECU70は、圧力値検出器30から得られた圧力値、電圧検出器35から得られた電圧値、温度検出器40から得られた温度値などと、車両に設置されたバッテリー5に対応する例示的なバッテリー設計から実験的に得られたデータに関連付けられたマップ値とを格納してもよい。
【0057】
車両の使用中、および、いくつかの実施形態によれば車両が保管される(すなわち、駆動されていない)際に、値の履歴がバッテリー5の寿命にわたって編集され格納されてもよい。そのようなデータを編集することにより、バッテリー5がさらされた温度、電圧、圧力などの履歴を判断することが可能であり得る。そのような履歴は、クリープを補償する際に使用される値を判断するための以下に説明されるプロセスを増強するために使用されてもよい。
【0058】
バッテリーECU70に関連付けられたメモリは、バッテリーECU70内に含まれてもよく、もしくは、バッテリーECU70に通信アクセスを提供する車両の他のシステム上に、およびまたは当該システム内に存在してもよいということを、当業者であれば理解するであろう。
【0059】
バッテリーコントローラ20は、バッテリー5に関連付けられたバッテリーパック10の放電をもたらす放電プロセスを制御するように構成された任意の好適なバッテリーコントローラを含んでいてもよい。当業者であれば理解するように、リチウムイオンバッテリーは特に、過熱および過放電といった危険な状態を回避するために、バッテリー放電プロセス中に比較的厳しい放電環境が維持されることを必要とする。したがって、バッテリーコントローラ20は、とりわけ放電プロセス中にバッテリー5から流される電流および電圧を制御するように構成されてもよい。たとえば、バッテリーがフル放電されていないと判断された場合、バッテリーコントローラ20は電流Iが電圧Vで流れるようにしてもよく、それによりバッテリー5を放電する。
【0060】
図3は、本開示の実施形態に従った、放電制御のための例示的な一方法を示すフローチャートである。放電前プロセスにおいて(すなわち、バッテリー5の放電が始まる前に)、バッテリーECUはまず、バッテリー5内に存在する温度センサによって提供された情報に基づいて温度検出器40によって判断されるようなバッテリー5の温度を得てもよい(ステップ305)。
【0061】
次に、バッテリー5内の圧力センサ15によって提供された情報に基づいて、バッテリー5内の現在の圧力Pが圧力値検出器30から得られ、回路2が結合されるような位置にスイッチ6を配置することによって開路電圧Vocvが得られ、それにより、電圧検出器35による開路電圧Vocvの測定を許可する(ステップ310)。
【0062】
次に、バッテリー5の温度、開路電圧Vocv、および現在の圧力Pのうちの少なくとも1つに基づいて、しきい値圧力差ΔPが求められてもよい(ステップ315)。しきい値圧力差ΔPを求めてクリープを補償するためのプロセスが、図4図5A、および図5Bを参照して説明される。
【0063】
図4は、バッテリー5の現在の温度Tを使用するクリープ補償のための例示的な一方法を示すフローチャートであり、一方、図5Aおよび図5Bは、例示的なバッテリーの温度、圧力、および開路電圧Vocvを関係づける、実験的に求められた例示的なデータマップの表現である。説明されるように、そのようなマップは、しきい値圧力差ΔPを求めるために使用されてもよい。
【0064】
図5Aおよび図5Bのデータマップは、組立てられた状態の例示的なバッテリー5について得られ、ECU70のメモリに格納された実験データに基づいて、前もって作成されてもよい。たとえば、組立てられたバッテリー5は、開路電圧の予め定められた間隔(たとえば、0.01Vの間隔)で、さまざまな温度T(たとえば、−40℃〜60℃、10℃単位)にさらされてもよい。
【0065】
次に、これらの温度Tおよび開路電圧の各々で、バッテリー5の内部圧力Pが測定されてもよい。10℃単位で、特定の温度でのバッテリー5の開路電圧Vocvと内部圧力との関係を実証するマップ点の集合が、測定された圧力Pに基づいて開路電圧Vocv単位で作成され格納されてもよい。マップ点のそのような集合は、図5Aに示す線T1〜Txの各々に対応する。とりわけ、10℃線の線間(または任意の他の選択された間隔)に該当する温度は次に、たとえば線形補間によって補間されてもよい。
【0066】
しきい値圧力差ΔPを求めるために、ECU70は、温度検出器40からバッテリー5の現在の温度Tを得てもよい(ステップ405)。バッテリー5の求められた現在の温度Tに基づいて、ECU70は、上で生成されるようなデータマップ(図5A参照)を参照して、マップデータ(すなわち、初期温度線)、たとえばT1を選択してもよい。
【0067】
次に、電圧比較部60は、バッテリー5の現在の開路電圧Vocvを得てもよく、それにより、5Aで示す選択されたマップデータ(たとえば温度線T1)に沿った点の識別を可能にする。
【0068】
次に、圧力比較部55は、圧力値検出器30からバッテリー5内の現在の圧力Pを得て、現在の圧力Pを比較し、それが、バッテリー組立ての完了に続いて同じ温度で測定されたような初期圧力Pinitial未満であるかどうかを判断してもよい(ステップ410)。現在の圧力Pが初期圧力Pinitialと等しいか、または、初期圧力Pinitialの妥当な公差(たとえば、±5バール、±10バールなど)内にある場合、適用可能なしきい値圧力差ΔPを求めるために、初めに選択されたマップデータ(たとえば温度線T1)が使用される(ステップ420)。
【0069】
現在の温度および開路電圧Vocvについて、現在の圧力Pが初期圧力Pinitial未満であると判断された場合、クリープがおそらく生じており、したがって、クリープを補償するために、データマップから新しいマップデータを選択すべきである(ステップ415)。
【0070】
クリープについてのこの補償は、いくつかの実施形態によれば、初期圧力Pinitialから現在の圧力Pおよび現在の開路電圧Vocvでの点まで直接Y軸を横切ることによって行なわれてもよい。次に、マップデータの集合(たとえば温度線Tx)上でのこの点の交点が、新しいマップデータとして選択されてもよい。この決定の例示的表現は、図5Bで見ることができる。点Pがマップデータの予め定められた集合上に直接該当しない場合、10℃単位から外れた温度線Txが、たとえば、現在の圧力Pおよび現在の開路電圧Vocvでの線形補間によって補間されてもよい。
【0071】
しきい値圧力差ΔPを求めるために、選択された温度線上の現在の圧力から、バッテリの所望の最小開路電圧(OCV)または充電状態(SOC)に関連付けられた予め定められた最小しきい値圧力Pminへの圧力変化が、図6Aまたは図6Bで示すマップを使用して定められてもよい。式1は、所与のPについてのしきい値圧力差を計算する例示的な方法を実証する。
【0072】
ΔPT=P−Pmin…(1)
式中、圧力Pminは、放電後に望ましい充電残量(たとえば20パーセントの充電状態)を有する例示的な新しいバッテリー5について、ある範囲の温度で実験的に求められる。
【0073】
計算部65によってしきい値圧力差ΔPがいったん計算されると、放電が始まってもよく、バッテリーコントローラ20は、電流がバッテリー5から流れ始めるようにしてもよい(ステップ320)。
【0074】
放電プロセス中、バッテリー5は、(たとえば予め定められたサンプリングレートで)連続的に監視されてもよく、電圧比較部60は、バッテリー5の現在の開路電圧Vocvを示す情報を電圧検出器35から受信してもよい。電圧比較部55は、電圧Vを、バッテリー5の設計特性およびその意図された充電レベルに基づいて求められたかもしれないバッテリー5の第1の下限電圧Vmin1と比較してもよい(ステップ325)。第1の下限電圧Vmin1は、電圧比較部60によるアクセスのために、バッテリーECU70に関連付けられたメモリに格納されてもよい。放電中、現在の電圧Vが第1の下限電圧Vmin1よりも小さくない場合(ステップ325:いいえ)、バッテリーコントローラ20は、放電が現在のサンプルについて途切れずに継続するようにする。
【0075】
現在の電圧Vが第1の下限電圧Vmin以下であると判断された場合(ステップ325:はい)、現在の圧力差ΔPは、式2に基づいて求められる。
【0076】
ΔP=P−P…(2)
は、現在の電圧Vが第1の下限電圧Vmin1と等しいかまたはそれを下回った場合の時間tでのバッテリー5の現在の内部圧力であり、Pは、ステップ315での放電前プロセス中に求められた圧力である。
【0077】
次に、圧力比較部55は、現在の圧力差ΔPをしきい値圧力差ΔPと比較して、現在の圧力差ΔPが求められたしきい値圧力差ΔPよりも大きいかどうかを判断してもよく、一方、電圧比較部55は、現在の電圧Vを第2の下限しきい値Vmin2と比較する(ステップ330)。
【0078】
第2の下限しきい値Vmin2は、第1の下限しきい値Vmin1よりも小さい電圧である。
【0079】
現在の圧力差ΔPがしきい値圧力差ΔP以上であると判断された場合、および/または、現在の電圧Vが第2の下限しきい値Vmin2以下であると判断された場合(ステップ330:はい)、バッテリーコントローラ20はバッテリを放電させることを停止(すなわち、バッテリー5からの電流の流れを停止)してもよい。
【0080】
現在の圧力差ΔPがしきい値圧力差ΔP未満であり、現在の電圧Vが第2の下限しきい電圧Vmin2よりも大きいと判断された場合(ステップ330:いいえ)、第1の下限電圧Vmin1は現在の充電サイクルについて予め定められた単位(たとえば1V)でVmin1’まで減少されてもよい。言い換えれば、しきい値圧力差ΔPも第2の下限しきい電圧Vmin2も上回っていないという事実に基づいて、バッテリー5はその定格放電状態に達していないため、バッテリー5の現在の状態では第1の下限電圧Vmin1は今のところ高すぎる、ということが合理的に仮定され得る。Vmin1、Vmin2の双方およびΔPに充電サイクルを基づかせることにより、バッテリーがより低い充電状態により達しやすくして、エネルギー貯蔵の損失を回避することが可能になる。上述に基づき、当業者であれば、Vmin2は最初、(Vmin1+ΔV(=Vmin2−Vmin1))として設定されてもよく、そのような場合、ステップ335は再び使用されないかもしれない、ということを認識するであろう。
【0081】
図6Aおよび図6Bは、上述のような放電プロセス中の圧力と電圧と利用可能エネルギーとの関係を示す例示的なグラフを示す。
【0082】
図6Aの下のグラフに示すように、第1の下限電圧Vmin1は達され得るものの、現在の圧力差ΔPはしきい値圧力差ΔPを上回っておらず、電圧Vは第2の下限しきい値Vmin2を下回っていない。したがって、第1の下限電圧Vmin1は減少されてもよく(図6の下のグラフの3を参照)、バッテリー5は追加の期間にわたる放電が許可されてもよく、この追加の放電は、バッテリー5に貯蔵された、本来なら失われたエネルギー量に対応する。
【0083】
請求項を含め、説明全体を通して、「〜を含む」という用語は、特に明記しない限り、「〜の少なくとも1つを含む」と同義であると理解されるべきである。加えて、請求項を含め、説明で述べられたどの範囲も、特に明記しない限り、その終点値を含むと理解されるべきである。説明された要素についての特定の値は、当業者には公知である受入れられた製造公差または業界公差内にあると理解されるべきであり、「実質的に」および/または「ほぼ」および/または「概して」という用語の使用はいずれも、そのような受入れられた公差内にあることを意味すると理解されるべきである。
【0084】
国営の、国際的な、または他の規格団体の規格が参照される場合(たとえばISOなど)、そのような参照は、本明細書の優先日の時点で国営または国際規格団体によって定義されるような規格を指すよう意図されている。そのような規格へのその後の実質的変更はいずれも、本開示および/または請求項の範囲および/または定義を修正するよう意図されてはいない。
【0085】
明細書および例は単なる例示として考えられ、この開示の真の範囲は請求項によって示されている、ということが意図されている。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B