(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記少なくとも4つのアルコール性水酸基を有する脂肪族ポリオールは、ジ(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ(ペンタエリスリトール)、及びトリ(ペンタエリスリトール)より選択される請求項1に記載の重合性組成物。
前記過酸化物ラジカル開始剤は、パーオキシモノカーボネートエステル類、パーオキシジカーボネートエステル類、ジアシルパーオキシド類、パーオキシエステル類、及びこれらの混合物より選択される、請求項1または2に記載の重合性組成物。
【背景技術】
【0002】
剛性を有し、無色で、可視光に対して略透明であるポリマーを調製するために、ポリオール(アリルカーボネート)モノマー、特に、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)を含む重合性有機組成物を使用することが当分野で知られている。これらの組成物は、例えば、有機ガラス又は透明コーティング膜を作成するために使用される。
【0003】
既知の通り、有機ガラスは、例えば、特に、眼用レンズ等の光学レンズ、又は光学装置の部品等、多数の適用例においてミネラルガラスの代替として使用される。有機ガラスはまた、輸送及び建築分野でも適用される。
【0004】
ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)モノマーの重合によって得られた有機ガラスは、実質的に、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)のホモポリマーである。これらのホモポリマーは、優れた物理的特性及び光学的特性を有するのに加え、例えば、有色有機ガラス(例えば、sun lens)を作成するために着色槽内で浸漬着色(dipping)等、次の処理を容易に施すことができるという利点がある。
【0005】
これらの有利な特性を考慮し、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)を含む重合性組成物は、眼用レンズの作成を行うのに、現在、最も幅広く使用される材料である(例えば市販品Acomon AGのRAV7(登録商標)およびPPG IndustriesのCR39(登録商標))。
【0006】
最終重合体を形成するためのジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)モノマーの重合反応は、フリーラジカルによって開始される反応である。フリーラジカルは、通常、十分な前駆体化合物(いわゆる重合開始剤)の添加と、続く重合性組成物の加熱とに引き続いて、重合性組成物内に生成される。
【0007】
ポリオール(アリルカーボネート)、特に、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)を含む組成物の重合反応において、最も一般的に使用される重合開始剤は、有機過酸化物であり、特に、アルキル−パーオキシジカーボネート(例えば、イソプロピルパーオキシジカーボネート(IPP)及びイソプロピル−sec−ブチルパーオキシジカーボネート)及びアロイル−パーオキシド(例えば、ベンゾイルパーオキシド)である。
【0008】
しかしながら、上述のラジカル開始剤の使用には、主として周知の有機過酸化物の不安定性に関連付けられた種々の欠点がある。実際、有機過酸化物が純粋物質であると、通常、爆発性を有する。
【0009】
このため、例えば、アルキル−パーオキシジカーボネートは、通常、希釈液の形態で、例えばジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)中で、ラジカル開始剤として使用される。
【0010】
さらに、このような有機過酸化物は、希釈時であっても、開始剤の品質を危うくする分解反応を回避するか、又は少なくとも制限するために、低温(例えば、−20℃)で保管及び輸送されなければならない。
その保管及び輸送に厳しい対応を取らなければならない必要性に加え、有機過酸化物の危険性は、重合体の最終コストを著しく増加させてしまう。
【0011】
眼用レンズの作成において使用される市販品RAV7(登録商標)及びCR39(登録商標)等、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)モノマーを含む重合性組成物において、過酸化物のラジカル開始剤(通常、イソプロピルパーオキシジカーボネート(IPP)やイソプロピルsec−ブチルパーオキシジカーボネート)は、通常、その全量が、モノマーの重量に対して、約2.5重量%〜3.5重量%に等しい割合で存在する(例えば、Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology、第3版、1978年、第2巻、112頁;Encyclopedia of Chemical Processing and Design、1977年、第2巻、455頁を参照のこと)。
【0012】
過酸化物の濃度が3.5重量%を上回ることにより、レンズの作成コストの増加、鋳型開放時のレンズの破断、重合中に鋳型からレンズが外れること、レンズの脆化及び黄変化、及び浸液着色時間が過剰に長くなること等、製造中の種々の欠点の発生を生じる。
【0013】
一方、過酸化物の濃度が2.5%を下回ることにより、通常、過剰な柔軟性を有し、容易に摩耗し、浸漬による着色が困難であり(色の不均一等)、耐擦傷性付与コーティング又は浸漬による着色等の処理プロセスにおいて、比較的高温での熱処理により容易に変形するレンズが得られる。
開始剤の使用量の減少に伴うポジティブな側面として、視覚的により魅力的なレンズの色を著しく改善することである。
【0014】
従って、アリルカーボネートモノマーを含む重合性組成物の技術においては、重合体の種々の適用例において必要とされる特性を有するいずれの場合においても、減量した過酸化物開始剤が重合体に変換される必要がある。
【0015】
米国特許第4,613,656号は、ポリオール−ビス(アリルカーボネート)、特に、ジエチチレングリコールビス(アリルカーボネート)を含む重合性組成物であって、モノペロキシカーボネート化合物が、モノマー100部に対して0.75〜1.50重量部の量で、単独のラジカル開始剤として使用される(例えば、tert−ブチルペロキシイソプロピルカーボネート)重合性組成物について記載している。
【0016】
ポリオール−ビス(アリルカーボネート)は、ポリオール(又はアリルアルコール)のホスゲン化と、続くアリルアルコール(又はポリオール)によるエステル化とによって得られる。オリゴマー反応性単位(オリゴマー)もまた、この反応から形成することができる。すなわち、2つ以上のカーボネート基を含有する種によって分離された2つの末端アリルカーボネート基を有する化合物である。特に、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)の場合、これらのオリゴマーは、式(i)で表すことができる。
【0017】
【化1】
【0018】
式中、nは、2〜5の範囲内の整数である。一方、非オリゴマー反応性単位(モノマー)は、上述の式(i)においてnが1の場合である。
式(i)で表されるオリゴマーは、全反応性単位の総重量に対して2重量%〜20重量%の範囲の量で、重合性組成物中に存在する。
【0019】
重合性組成物はまた、ポリマー鎖(コモノマー)の形成に加わることのできる、さらなる反応性単位も含有することができる。コモノマーは、式(i)で表されるモノマーのアリル末端と反応可能な反応性末端基を有する。このようなコモノマーの例として、ビニルアセテート、C
1〜C
2アルキル−(メタ)アクリレート、又はアリル(メタ)アクリレートより選択された末端基を有する化合物が挙げられる。コモノマーは、重合性組成物の25重量%までの量で、重合性組成物中に存在可能である。
【0020】
欧州公開特許第0241997A2には、
−2つの末端アリル基を有し、式(i)で表すことができる、オリゴマー生成物、又は実質的にオリゴマー生成物(すなわち、広くオリゴマーからなる)(成分A)20重量%〜80重量%と、
−少なくとも4つの末端基を有し、式(ii)又は式(iii)で表され、モノマー生成物又は実質的にモノマー生成物(すなわち、広くモノマーからなる)(成分B)20重量%〜50重量%と、
−アリル、ビニル、又はメタクリルタイプの基を有する、1つ以上の反応性希釈液(成分C)0重量%〜35重量%と、
を含む耐摩耗性の高い有機ガラスを作成するための重合性組成物を記載されている。
【0021】
【化2】
【0022】
式中、nは、2〜5の値又は平均値を有する。
【0023】
【化3】
【0024】
【化4】
【0025】
式中、Rは、メチル基又はエチル基であるか、又は、下記式で表され、式中、nは、0又は1である。
【0026】
【化5】
【0027】
上述の組成物は、例えば、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジシクロヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、ジベンゾイルパーオキシド、及びtert−ブチルペルベンゾネート等、1つ以上の過酸化物ラジカル開始剤の存在下において重合される。開始剤は、成分(A)、(B)及び(C)の合計100重量部に対して、1〜6重量部の範囲内の量で重合性組成物中に存在する。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本明細書及び関連の請求項の目的において、指摘のない限り、反応性成分A及びBとは異なる重合性組成物の原料濃度は、「phm」(pert per hundred monomer)、すなわち、反応性成分A及びBの総重量100部に対する重量部で表現される。
【0047】
本明細書及び関連の請求項の目的において、「含む(comprise)」という動詞と、これから派生するすべての用語は、「からなる(consist)」という動詞と、これから派生する用語の意味をも含む。
【0048】
本明細書及び関連の請求項の目的において、nが1である式(I)の化合物は、「モノマー(monomer)」又は「モノマー化合物(monomeric compound)」とも称され、一方で、nが2〜6の整数である式(I)の化合物は、「オリゴマー(oligomer)」又は「オリゴマー化合物(oligomeric compound)」とも称される。
【0049】
本明細書及び関連の請求項の目的において、式(II)で表され、式中、Rが式(IV)で表される基である化合物は、「モノマー」又は「モノマー化合物」とも称され、一方で、式(II)で表され、式中、Rが式(V)で表される基である化合物と、式(III)で表される化合物も、「オリゴマー」又は「オリゴマー化合物」と称される。
本発明によると、成分Aの少なくとも50重量%が、式(I)で表される化合物からなり、式中、n=1(モノマー)である。
【0050】
前記モノマーは、成分Aの50重量%超且つ70重量%以下の量で存在することが好ましい。すなわち、成分Aは、モノマーの形態において式(I)で表される化合物を広く含有する成分である。
【0051】
上述のモノマーから構成されていない成分Aの残余部分は、式(I)で表されるオリゴマーからなる。成分Aの残余部分は、式(I)で表されるオリゴマーからなり、式中、nの平均値は、2〜3(重量平均)の範囲内である。
【0052】
反応性成分A及びBにおけるモノマー及びオリゴマーの相対濃度と、成分A又はBのオリゴマー部分のnの平均値とは、既知の方法によって測定することができる。特に、これらの値は、成分A又はBのモノマー及び各オリゴマーに対応する十分に分離したピークを得るような条件下でHPLC又はGPC解析を行い、次いでモノマー化合物及びオリゴマー化合物の各々に関連付けられたクロマトグラフィピークの面積割合を計算することにより、測定することができる。
【0053】
本発明の重合性組成物において、反応性成分Aは、50〜85重量%の範囲内、より好ましくは60〜80重量%の範囲内の量で存在することが好ましく、前記割合は、反応性成分A及びBの総重量に対するものである。
【0054】
成分Aは、エステル交換条件下、且つ、塩基触媒の存在下において、ジアリルカーボネート(DAC)とジエチレングリコール(DEG)を、例えば、約2.5/1〜約5/1、好ましくは約2.5/1〜約4/1、より好ましくは約2.75/1〜約3.5/1の範囲のモル比(DAC/DEG)で反応させることにより、得ることができる。
【0055】
例えば、約2.5/1に等しいモル比(DAC/DEG)で操作することにより、約53重量%のモノマー(n=1)と残り47%のオリゴマー(n=2〜6)からなる、式(I)で表されるモノマー及びオリゴマーの混合物が得られる。
【0056】
一方で、例えば、約3.5/1に等しいモル比(DAC/DEG)で操作することにより、約67重量%のモノマー(n=1)及び残り33%のオリゴマー(n=2〜6)からなる、式(I)で表されるモノマー及びオリゴマーの混合物が得られる。
エステル交換反応は、50〜150℃の範囲内の温度で実施されることが好ましい。
エステル交換反応は、0.01〜1atmの範囲内の圧力下で実施されることが好ましい。
【0057】
塩基触媒は、例えば、アルカリ金属の水酸化物又は炭酸塩(例えば、NaOH、Na
2CO
3)、アルカリ金属又は有機塩基のアルコラートより選択可能である。触媒は、DEGの重量に対して1〜1,000重量ppmの範囲内の量で使用されることが好ましい。
【0058】
成分Bは、エステル交換条件下で、且つ、塩基触媒の存在下において、ジアリルカーボネート(DAC)と、少なくとも4つのアルコールヒドロキシル基を備える少なくとも1つの脂肪族ポリオールとを、4/1〜24/1のモル比(DAC/ポリオール)で反応させることにより得ることができる。
エステル交換反応は、例えば、成分Aの調製について上述した温度及び圧力条件下で、且つ、同一の触媒及び同一の装備を使用して、実施することができる。
モル比(DAC/ポリオール)は、好ましくは4/1〜16/1、より好ましくは8/1〜14/1、さらに好ましくは10/1〜14/1の範囲である。
【0059】
上述のポリオールは、ジ(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ(ペンタエリスリトール)、及びトリ(ペンタエリスリトール)より選択されることが好ましく、ペンタエリスリトールであることがより好ましい。
【0060】
好適な実施形態において、成分Bは、5/1〜16/1、より好ましくは8/1〜14/1、さらに好ましくは10/1〜14/1の範囲のモル比(DAC/ペンタエリスリトール)で、ジアリルカーボネート(DAC)とペンタエリスリトールとを反応させることにより得られる。
約10/1に等しいモル比(DAC/ペンタエリスリトール)でDACとペンタエリスリトールの間の反応を生じさせる場合、おおよその含有量として、
−ラジカルRが式(IV)で表される基である、式(II)で表される化合物(モノマー)45重量%と、
−ラジカルRが式(V)で表される基である、式(II)で表される化合物(オリゴマー)55重量%と、
からなる混合物が得られる。
【0061】
モル比DAC/ペンタエリスリトールが約14/1に等しいとき、おおよその含有量として、
−ラジカルRが式(IV)で表される基である、式(II)で表される化合物(モノマー)60重量%と、
−ラジカルRが式(V)で表される基である、式(II)で表される化合物(オリゴマー)40重量%と、からなる混合物が得られる。
成分Bの少なくとも50重量%がモノマー化合物からなることが好ましく、残余部分がオリゴマー化合物からなる。
【0062】
成分Bは、15〜50重量%の範囲内、より好ましくは20〜40重量%の範囲内の量で、本発明の重合性組成物中に存在することが好ましく、前記割合は、成分A及びBの総重量に対するものである。
【0063】
本発明の重合性組成物から開始する重合体の工業生産プロセスにおいて、上述のアリルカーボネートコモノマーBと上述のアリルカーボネートモノマーAとを組み合わせて使用することにより、通常、例えば、欧州公開特許第0241997A2に記載の重合性組成物が使用される当分野で既知のプロセスに対して、原料の全消費量を抑制する結果を生じ、好都合である。
【0064】
例えば、本発明の重合性組成物から開始した重合体の調製の場合、成分Aは、3/1に等しいDAC/DEG比におけるDACとDEGとの間のエステル交換反応の生成物であり、成分Bは、12/1に等しいDAC/ペンタエリスリトール比におけるDACとペンタエリスリトールとの間のエステル交換反応の生成物である。つまり、原料の全消費量は、欧州特許第0241997A2の実施例2の組成物No.2が使用される場合に比べて、約20%低くなり、この実施例中、成分Aは、2/1に等しいDAC/DEG比におけるDACとDEGとの間の反応から得られ、成分Bは、24/1に等しいDAC/ペンタエリスリトール比におけるDACとペンタエリスリトールとの間の反応から得られる(双方のケースにおいて、75重量%の成分Aと25重量%の成分Bからな重合性組成物を考慮している)。
成分A及びBの調製に関するさらなる詳細については、例えば、欧州公開特許第0035304A2及び欧州公開特許第0241997A2に見出すことができる。
【0065】
本発明の重合性組成物は、例えば、アリル、アリルカーボネート、マレイン酸塩、ビニル、又はC
1〜C
4アルキル(メタ)アクリレート基等のフリーラジカルで開始することにより、成分A及びBとの重合を行うことができるエチレン不飽和を有するその他のコモノマー(成分C)も任意で含有することができる。
【0066】
本発明の重合性組成物において成分Cとして使用可能なコモノマーは、酢酸ビニル、マレイン酸ジメチル、及びメチルメタクリレートから選択されることが好ましい。
例えば、重合性組成物の所望の粘度値を得るために、又は重合に必要な過酸化物の濃度を減量するために、成分Cを添加することが好都合であり、実際には、上述のコモノマーの官能基は、アリル基に対してより反応性を有する。
コモノマーは、25phmまで、好ましくは10phmまで、より好ましくは5phmまでの量で存在可能である。
【0067】
特に好適な実施形態において、成分Cは、実質的に使用されないか、又はいずれの場合においても、得られた重合体の物理機械的特性及び光学的特性(例えば、屈折率、耐摩耗性)が、成分Cを使用せず、成分A及びBのみから開始して得られた重合体と略同一となるような量で存在する。
【0068】
重合性組成物の25℃における粘度(KPG Ubbelodhe粘度計キャピラリ型2Cにより、ASTM D446に従って測定した)は、20〜120cStの範囲内である。前記粘度は、好ましくは100cSt未満であり、より好ましくは85cSt以下であり、さらに好ましくは75cSt以下である。前記粘度は、40cSt以上であることが好ましい。
【0069】
比較的粘度値の低い重合性組成物を使用することにより、重合体の工業生産プロセスの生産性を向上することに留意しなければならない。実際には、重合性組成物の粘度が低いほど、鋳型内により速く、より容易に注入することができるため、生産プロセスの生産収率を向上することができる。
本発明によると、重合開始剤は、30〜120℃の温度範囲内でフリーラジカルを生成することのできる有機過酸化物から選択されることが好ましい。
ラジカル開始剤は、周辺温度(25℃)で固体形状又は液体形状であり得る。
【0070】
ラジカル開始剤は、
−パーオキシモノカーボネートエステル類(例えば、tert−ブチルペロキシイソプロピルカーボネート)−パーオキシジカーボネートエステル類(例えば、ジ(2−エチルへキシル)パーオキシジカーボネート、シクロヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ(シクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(sec−ブチル)パーオキシジカーボネート、及びジイソプロピルパーオキシジカーボネート、
−ジアクリルパーオキシド類(例えば、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキシド、イソブチリルパーオキシド、デカノイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、プロピオニルパーオキシド、アセチルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、p−クロロベンゾイルパーオキシド)、
−パーオキシエステル類(例えば、t−ブチルペロキシピバレート、t−ブチルペロキシオクチレート、及びt−ブチルペロキシブチレート)、及びそれらの混合物より選択されることが好ましい。
【0071】
開始剤は、パーオキシモノカーボネートエステル類、パーオキシジカーボネートエステル類、ジアシルペロオキシド類、及びそれらの混合物より選択されることがより好ましい。
好適なパーオキシモノカーボネートエステル類及びパーオキシジカーボネートエステル類は、以下の式(VI)及び(VII)で表されるものである。
【0074】
式中、R1及びR2は、同一であるか、又は異なり、C
1〜C
20アルキル、C
1〜C
20アルケニル、又はC
1〜C
20シクロアルキルより選択される。
R1及びR2は、好ましくは2〜16個の炭素原子、より好ましくは3〜7個の炭素原子を有する。
【0075】
R1及びR2は、直鎖又は分岐とすることができ、場合によっては(例えば、少なくとも1つのハロゲン原子(例えば、Cl又はBr)又はNO
2基で)置換し得る。
R1及びR2基の例として、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、及びヘキシルが挙げられる。
上述の過酸化物及び関連調製方法は、当業者にとって既知である。
【0076】
本発明の重合性組成物のラジカル重合反応を開始するのに使用される開始剤の量は、使用される開始剤との関連で変動する。
重合開始剤は、好ましくは0.5phm以上の総量、より好ましくは1.0phm以上の量で存在する。
重合開始剤は、好ましくは7.0phm以下の総量、より好ましくは5.0phm以下の量で存在する。
重合開始剤は、好ましくは0.4〜5.0phmの範囲内、より好ましくは0.5〜3.5phmの範囲内の総量で存在する。
【0077】
特に好適な実施形態において、重合開始剤は、好ましくは3.0phm以下の総量、より好ましくは2.5phm以下の量で存在する、式(VII)で表される化合物である。
式(VI)で表される重合開始剤は、好ましくは0.4phm以上の総量、より好ましくは0.5phm以上の量で存在する。
式(VI)で表される重合開始剤は、0.7phm以下の総量で存在することが好ましい。
【0078】
他の特に好適な実施形態において、重合開始剤は、式(VII)で表され、好ましくは0.5phm以上の総量、より好ましくは1.0phm以上の量で存在する化合物である。
式(VII)で表される重合開始剤は、5.0phm以下の総量で存在することが好ましい。
特に好適な実施形態において、式(VII)で表される重合開始剤は、3.0phm以下の総量、より好ましくは2.5phm以下の量で存在する。
好適なジアシルパーオキシドは、ジベンゾイルパーオキシド(BPO)である。
【0079】
本出願人は、驚くべきことに、本発明の重合性組成物により、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)のホモポリマーからなる重合体に匹敵するか、又はこれを上回る光学的統制及び物理機械的特性を有する重合体を、上述のホモポリマーを得るのに必要な量に対して減量した開始剤を使用することにより得られることを見出した。
【0080】
本発明の重合性組成物は、例えば、安定剤、分離剤、染料、調光染料、顔料、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤等、1つ以上の従来の添加剤を含有することができる。これらの添加剤は、2phm以下の総量で存在することが好ましい。
本発明の重合性組成物の重合体への転換は、当分野で既知の重合技術を使用して行うことができる。
【0081】
本発明の重合性組成物の重合は、鋳型における成形の技術を使用して実施されることが好都合である。成形技術では、例えば、光学レンズ又は眼用レンズ等の最終製品に合わせた所望の形状を有する鋳型に重合性組成物を注入することを想定する。重合性組成物には、その後、熱処理を施して最終重合体を形成する。
熱処理は、過酸化物開始剤で開始した後に重合を開始する、重合性組成物中にフリーラジカルを形成するような温度で実施する。
熱処理は、使用する過酸化物ラジカル開始剤と成分A及びBとの関連で、変動可能な時間、1つ以上の温度でもたらされる。
熱処理は、30〜100℃の温度範囲内で実施されることが好ましい。
熱処理の継続時間は、2〜80時間の範囲内であることが好ましい。
【0082】
本発明の重合性組成物から得られる重合体は、固形であり、可視光に対して略透明であり、従って、眼用レンズ、サンレンズ、スクリーン及び保護バイザ、カメラフィルタ、民間利用のプレート及びグラス、車両及び航空機用の透明部品(例えば、防風シールド、サンルーフ、ライト等)として使用可能である。
【0083】
重合体は、その屈折率n
D20(ASTM D−542)が1.495〜1.530の範囲内であることが好ましい。
重合体は、5mmの厚さを有するプレートで測定される黄色指標(ASTM D−1925)が2.0を下回ることが好ましい。
重合体は、2mmの厚さを有するプラノレンズ上で測定される光透過率値(ASTM D−1003)が90%以上であることが好ましい。
重合体は、2mmの厚さを有するプラノレンズ上で測定されるヘイズ値(ASTM D−1003)が0.5%を下回ることが好ましい。
【0084】
重合体は、5mmの厚さを有するプレートで測定されるロックウェル硬度M(ASTM D−785)が好ましくは85以上であり、より好ましくは90以上であり、さらに好ましくは95以上である。
【0085】
重合体は、ボール落下試験(American National Standard Z87.1−2003)で測定した衝撃強度が68グラムを上回ることが好ましい。
重合体は、1.82MPa(HDT)(ASTM D−648)の負荷下での変形温度が55℃以上であることが好ましい。
重合体は、ベイヤー摩耗値(ASTM F−735)が0.8以上であることが好ましい。
以下の実施形態の例は、本発明を純粋に例示する目的で提供されるものであり、添付のクレームに規定の保護範囲を限定するものとみなされてはならない。
【実施例】
【0086】
1.重合性混合物の成分A及びBの調製
反応性成分Aは、撹拌機と、反応中に生成されるアリルアルコールを除去する蒸留塔とを装備した反応器中、3/1のDAC/DEGモル比でジアリルカーボネート(DAC)とジエチレングリコール(DEG)とを反応させることにより調製した。
必要とされるモル比に従い、試薬を反応器に投入し、得られた混合物を、触媒(DEGの重量に対して100重量ppmの濃度であるナトリウムメチラート)の添加に先立って脱気した。
反応器内の圧力を約150〜200mbarにした後、アリルアルコールの蒸留の開始の温度は、95〜100℃の範囲内であるが、これに達するまで加熱を開始した。
DEGの総変換で発現するアリルアルコールの論理的な量は、DEGのモルに対して2モルに等しい。この反応は、アリルアルコールの論理的な量に達したときに完了するものとみなされる。
その後、反応器内の圧力を徐々に低減することにより、過剰なDACを除去した。DACの残量は、真空度に応じて決まる。10mbarで操作することにより、1%未満の残量で生成物を得る。
HPLC解析を通じて、成分(A)は、成分Aに対して約63重量%の量のモノマー(ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート))からなり、残余分の割合は、式(I)で表されるオリゴマーからなり、式中、nの平均値は約2.5に等しい。成分AのHPLC解析を以下の条件下で実施した。すなわち、温度=25℃、解析を施すサンプルAの形態は10重量%のアセトニトリル溶液であり、サンプル注入量=5マイクロリットル、溶離液:アセトニトリル/水(45/55体積%)の混合物、紫外線検出器である。
【0087】
成分Bは、成分Aの調製について上述したのと同一の条件下において、且つ、同一の装備を使用して、12/1のDAC/ペンタエリスリトールモル比で、ジアリルカーボネート(DAC)とペンタエリスリトールとを反応させることによって得た。
HPLC解析により、成分(B)が、おおよそ、
−ラジカルRが式(IV)で表される基である、式(II)で表される化合物(モノマー)約55重量%と、
−ラジカルRが式(V)で表される基である、式(V)中のmの平均値は約2.5に等しい式(II)で表される化合物(オリゴマー)約45重量%と、
を含有する混合物からなることが明らかになった。
成分BのHPLC解析を以下の条件下で実施した。すなわち、温度=25℃、解析を施すサンプルAの形態は10重量%のアセトニトリル溶液であり、サンプル注入=5マイクロリットル、溶離液:アセトニトリル/水(70/30体積%)の混合物、紫外線検出器である。
【0088】
反応性成分A及びBから開始して、75重量%の成分Aと25重量%の成分Bとを含有した混合物を調製した。その後、以下に示す量で、ラジカル開始剤及び紫外線吸収剤を混合物に添加した。
パーオキシジカーボネートエステル類のラジカル開始剤は、Akzo Nobelの市販品Trigonox ADC−NS30(登録商標)である。この製品は、約70重量%のジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)と、30重量%のイソプロピルパーオキシジカーボネート、secブチル、及びイソプロピル/sec−ブチルの混合物とを含有する。
ジアクリルパーオキシド類のラジカル開始剤は、ジベンゾイルパーオキシド(BPO)であり、Akzo Nobelの市販品Perkadox CH−50L(登録商標)である。この製品は、約50重量%のベンゾイルパーオキシドと50重量%のジシクロヘキシルフタレートとを含有する。
紫外線吸収剤は、2−ヒドロキシ、4−メトキシベンゾフェノン(AddivantのLowilite20(登録商標))である。
開始剤添加前の成分A及びBの混合物の25℃における粘度は、55cStokesに等しく、20℃における比重は、1.184g/cm
3である。
【0089】
2.重合体の特性
重合性組成物は、ガラス鋳型中で成形することにより、3mm〜5mmの範囲の厚さを有するフラットシートと、2mmの厚さを有するプラノレンズとの形態で重合された。鋳型は、軟質ポリ塩化ビニル(シート)又は低密度ポリエチレン(LDPE)(レンズ)製のスペーサガスケットにより互いに接合されている2つのガラス製のモールドからなり、重合性組成物を包含するのに好適なキャビティを形成する。
以下に示す通り、徐々に温度を上昇させ、空気強制循環オーブン内で熱処理により重合を施した。熱処理終了時、鋳型を開放し、可能性のある残余過酸化物開始剤を分解するために、110℃で1時間、レンズを保持した。
物理機械的特性及び光学的特性を判定するため、得られた重合体について以下の特性試験を実施した。
【0090】
フラットシートについて以下の特性を測定した。
(a)
光学的特性
−屈折率(n
D20):Abbe屈折計で測定した(ASTM D−542)
−黄色指標(YI)(ASTM D−1925)GretagMacbeth 1500 Plus分光光度計で測定し、YI=100/Yで規定した(1.277X〜1.06Z)
−ヘイズ%及び光透過率(ASTM D−1003)は、Haze−gard plus器具で測定した。
【0091】
(b)
物理機械的特性
−比重:20℃にて比重計で測定した(ASTM D−792)。
−以下の式で計算される重合中の体積縮小(収縮)
収縮(%)=(ポリマー密度−モノマー密度)/ポリマー密度×100
−ロックウェルデュロメータで測定したロックウェル硬度(M)(ASTM D−785)
−衝撃強度(ボール落下試験−American National Standard Z87.1−2003)
−1.82MPaの負荷下での変形温度(HDT)(ASTM D−648)
プラノレンズについて、以下の特性を測定した。
【0092】
(c)
着色性
着色剤を表面的に吸収する重合体の能力は、脱塩水中に10重量%の割合で希釈された市販染料BPI grayが分散された水性浴にプラノレンズを浸漬することにより、測定した。
レンズは、90℃の温度で20分間、着色バス中に浸漬した。脱塩水で濯いだ後、レンズの透過率%を、標準ASTM D−1003の規定に従って測定した。
【0093】
(d)
耐摩耗性
表面摩耗に対抗する重合体の能力は、方法ASTM F−735に従ってTaber振動摩耗メータで測定した。この方法には、サンプルレンズと、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)(CR39(登録商標))で作成した基準レンズとに対し、摩耗性材料Alundum ZF−12で600回の振動サイクルを同時に施すことが含まれる。
サンプルレンズと基準レンズとに対する摩耗サイクル後、ASTM D−1003に従って計器Haze−gardプラスで測定されたHazeにおける増加の比率は、ベイヤー耐摩耗性値(BA)を表す。
ベイヤー摩耗=△ヘイズ(基準レンズ)/△ヘイズ(サンプルレンズ)
1を上回るBA指標の値は、基準材料を上回る耐摩耗性を示し、1を下回るBA指標の値は、基準材料を下回る耐摩耗性を示す。
【0094】
3.重合性組成物No.1〜6
本発明の重合性組成物No.1〜3の化学組成を表1に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
a.重合性組成物の総重量に対する重量パーセント
b.重合性組成物総重量に対する市販品Trigonox ADC−NS30の重量パーセント
c.phm(成分A及びBの総重量100部に対する重量部)で表される過酸化物化合物の総濃度。
【0097】
比較の目的で、0.05%の紫外線吸収剤も含有する以下の重合性組成物No.4*〜6*も調製した:
【0098】
−No.4*:単一のモノマーとしての93.05重量%のジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)(RAV 7AT(登録商標))と、0.05重量%の紫外線吸収剤(Lowilite20(登録商標))と、6.9重量%の過酸化物開始剤(Trigonox ADC−NS30)とを含有する組成物
【0099】
−No.5*:単一のモノマーとしての88.95重量%のジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)(RAV 7AT(登録商標))と、0.05重量%の紫外線吸収剤(Lowilite20(登録商標))と、11重量%の過酸化物開始剤(Trigonox ADC−NS30)とを含有する組成物
【0100】
−No.6*:組成物であって、
(i)2/1に等しいモル比で、DACとDEGとの間の反応から得られ、54重量%のオリゴマーと46%のモノマー(ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)とを含有する、65.28重量%の生成物と、
(ii)24/1に等しいモル比で、DACとペンタエリスリトールとの間の反応から得られる生成物(コモノマー)であって、ラジカルRが式(IV)で表される基である、式(II)で表されるモノマー73重量%と、ラジカルRが式(V)で表される基である(式(V)中のmの平均値は約1.3に等しい)、式(II)で表される化合物27パーセントとを含有する生成物であり、成分(II)についてHPLC解析が本発明の成分B(上述の項目1を参照のこと)の解析で使用されたのと同一の条件下で実施される生成物27.97%と、
(iii)紫外線吸収剤(Lowilite20(登録商標))0.05重量%と、
(iv)過酸化物開始剤(Trigonox ADC−NS30)6.7重量%と、を含有する組成物。
重合性組成物No.4*〜6*の化学組成を表2に示す。
【0101】
【表2】
【0102】
a.重合性組成物の総重量に対する重量パーセント。
b.重合性組成物の総重量に対する市販品 Trigonox ADC−NS30の重量パーセント。
c.phm(モノマーと可能なコモノマーの総重量100部に対する重量部)として表される有機過酸化物の総濃度。
【0103】
重合性組成物No.1〜6は、以下のカーブに従い、40℃から80℃へ徐々に温度を上昇させ、空気強制循環オーブン内で熱処理により重合を施した。すなわち、3時間40℃に維持し、7時間で40℃から50℃まで温度上昇させ、9時間で50℃から80℃まで温度上昇させ、1時間80℃に維持した。
【0104】
熱処理終了時、鋳型から重合体(プラノレンズ及びフラットシート)を回収し、110℃で1時間(可能性のある残余ラジカル開始剤を分解するために)加熱した。
重合体の特性の結果を表3及び4に示す。
【0105】
【表3】
【0106】
【表4】
【0107】
表3及び4に示されるデータの比較から、低濃度のラジカル開始剤の存在下であっても、本発明の重合性組成物(組成物1〜3)から開始して得られた重合体が、従来の量の開始剤の存在下で重合されたRAV 7AT(登録商標)のホモポリマー(組成物5*)と同様であるか、又はこれよりも著しく高い光学的特性及び物理機械的特性を有することを観察することができる。
【0108】
特に、本発明の重合体の黄色指標及び染色性は、従来の量、すなわち、本発明の重合性組成物とともに使用されるものと比較して多い量の開始剤を使用して重合されたRAV 7AT(登録商標)のホモポリマーと略同一である。
通常、ロックウェル硬度及びHDTの値が高いほど、染色特性及び黄色指標の悪化と関連付けられることはよく知られており、この結果は完全に想定外である。
【0109】
表4から、従来技術で通常使用される量に対して減量した開始剤(組成物4*)の存在下で市販のモノマーRAV 7AT(登録商標)から開始して得られたホモポリマーが、本発明の重合体に対して物理機械的特性及び染色特性が劣ることも観察することができる。
【0110】
これらの結果はまた、比較組成物6*の重合により、本発明の重合体より特性の劣る重合体、特に、HDT値が低く、染色特性の許容できない重合体が調製されることを示している。ちなみにその重合は、本発明の重合性組成物(組成物2及び3)とともに使用された量と同一であるか、又はこれに匹敵する量のラジカル開始剤の存在下でもたらされた。
【0111】
4.重合性組成物No.7〜10
反応性コモノマー(成分C)としての過酸化物開始剤BPO(Perkadox CH−50L(登録商標))と任意でメチルメタクリレートとの組み合わせにおいて、組成物1〜3と同一の成分A及びBを使用して、本発明の追加の重合性組成物を調製した。重合性組成物No.7〜10の化学組成を表5に示す。
【0112】
【表5】
【0113】
a:重合性組成物の総重量に対する重量パーセント
b:phm(成分A及びBの総重量100部に対する重量部)で表されるコモノマーCの濃度
c:重合性組成物の総重量に対する市販品Perkadox CH−50L(登録商標)の重量パーセント
d:phmで表される過酸化物化合物の総濃度(成分A、B、及びCの総重量100部に対する部である)
e:ASTM D446に従って測定されたcentiStokesで表される(開始剤添加前の)動粘度
【0114】
重合性組成物No.7〜10に、以下のカーブに従い、60℃から93℃へ徐々に温度を上昇させ、空気強制循環オーブン内で熱処理により重合を施した。すなわち、初期温度は60℃であり、12時間で60℃から78℃まで温度上昇させ、4時間で78℃から93℃まで温度上昇させ、5時間93℃に維持した。
熱処理終了時、鋳型から重合体(プラノレンズ及びフラットシート)を回収し、120℃で2時間(可能性のある残余ラジカル開始剤を分解するために)加熱した。
重合体の特性の結果を表6に示す。
【0115】
【表6】
【0116】
表6中に報告されるデータは、過酸化物開始剤BPOの含有量を減量した本発明の重合性組成物No.7から得られた硬化物が、同開始剤を従来の量で含有する重合性組成物No.8から得られた硬化物に比べて著しく優れた黄色指標値と染色特性とを示すことを示している。
【0117】
重合性組成物No.9及び10において、反応性コモノマー(成分C)を添加することは、過酸化物開始剤の濃度をさらに低くすることを可能にするとともに、重合体の特性を実質的に変えることなく、黄色指標を改善する。
【0118】
ラジカル開始剤の量をさらに低減することに加え、反応性コモノマーを添加することは、成分A及びBの含有濃度のより低い重合性組成物の調製を可能にするため、重合性組成物のコストにポジティブな影響を及ぼす。
【0119】
5.光学レンズの調製
異なる幾何学形状を有し、接着テープ(Okamoto Y1)で組み立てられた鋳型を使用して、上述の項目3に記載の重合性組成物No.3を用いて、80mmの直径を有する半完成光学レンズを調製した。
重合は、以下のカーブに従い、20時間で36℃から78℃へ徐々に温度を上昇させ、空気強制循環オーブン内で実施した。つまり、3時間36℃に維持し、11時間で36℃から50℃へ温度を上昇させ、3時間で50℃から60℃へ上昇させ、3時間で60℃から78℃へ上昇させた。
重合の最後に得られたレンズのいくつかの特性について、表7に示す。
【0120】
【表7】
【0121】
表7のデータは、本発明の重合性組成物によって、筋及び流線等の光学的欠点を実質的に有さない高品質のレンズを、少量のラジカル開始剤の存在下でも容易に得られることを示している。製造方法の収率(レンズの破断)も良好である。
【0122】
6.劣化試験
時間経過に応じた重合体の特性安定性を検証するため、上述の項目3に説明した組成物2及び3から得られた重合体に劣化試験を実施した。
5mmの厚さを有するフラットシートの形状の重合体を、90日間、開放空気中に連続的に露出した。特定の時間間隔で測定した2つの生成物の黄色の指標値(YI)については、市販のモノマーRAV 7AT(登録商標)(組成物No.5*)から開始して得られた重合体において測定された値との比較を表8に示している。
【0123】
【表8】
【0124】
表
8のデータは、本発明の重合体が、市販のホモポリマーRAV 7AT(登録商標)と同等の耐劣化性を有することを示している。