特許第6692992号(P6692992)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 宝山鋼鉄股▲分▼有限公司の特許一覧

特許6692992連続鋳造取鍋の注湯末期におけるスラグ巻込みの抑制のための制御方法及び装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6692992
(24)【登録日】2020年4月17日
(45)【発行日】2020年5月13日
(54)【発明の名称】連続鋳造取鍋の注湯末期におけるスラグ巻込みの抑制のための制御方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/10 20060101AFI20200427BHJP
   B22D 11/18 20060101ALI20200427BHJP
   B22D 11/16 20060101ALI20200427BHJP
   B22D 37/00 20060101ALI20200427BHJP
   B22D 41/38 20060101ALI20200427BHJP
【FI】
   B22D11/10 D
   B22D11/18 A
   B22D11/18 G
   B22D11/18 J
   B22D11/16 104E
   B22D11/16 104F
   B22D37/00 A
   B22D37/00 C
   B22D41/38
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-522412(P2019-522412)
(86)(22)【出願日】2017年10月13日
(65)【公表番号】特表2019-536630(P2019-536630A)
(43)【公表日】2019年12月19日
(86)【国際出願番号】CN2017106043
(87)【国際公開番号】WO2018077044
(87)【国際公開日】20180503
【審査請求日】2019年4月25日
(31)【優先権主張番号】201610942959.6
(32)【優先日】2016年10月26日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】302022474
【氏名又は名称】宝山鋼鉄股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】申 屠 理 鋒
(72)【発明者】
【氏名】胡 継 康
(72)【発明者】
【氏名】奚 嘉 奇
【審査官】 中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第105195701(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第101251749(CN,A)
【文献】 特表2015−521546(JP,A)
【文献】 特開2002−035910(JP,A)
【文献】 特開2007−054860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/00−11/20
B22D 33/00−47/02
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップ:
(1)現在注湯中の鋼種類のコード及び取鍋の自体重量を採取し、溶鋼の粘度特性及び取鍋の自体重量を得り;
(2)取鍋の総重量を測定し、取鍋の自体重量を引いて溶鋼の正味重量を得て、取鍋の形状、サイズによって取鍋内の溶鋼の実際のレベル高さを算出し;
(3)溶鋼のレベル高さによって注湯プロセスがスラグ巻込みの制御プロセスに入る必要があるかどうかを判断し、条件を満足すれば次のステップに進み、そうでなければ、ステップ(2)に戻して測定し続く;
(4)溶鋼流れ場分布検出装置によって現在の溶鋼の渦面のサイズと渦の高さを測定し;
(5)取鍋のスライディングノズル開度検出装置によって、ノズル開度の大きさを測定し;
(6)鋼スラグ検出装置によって、現在の鋼スラグの含有量を測定し;
(7)鋼スラグの含有量によってスラグが排出されたかどうかを判断し、スラグが既に排出された条件を満足すれば、ステップ(9)である渦破壊の制御プロセスに進み、そうでなければ、ステップ(8)である渦抑制の制御プロセスに進み;
(8)渦抑制の制御プロセスであって、即ち、出鋼口の上方に表面凹状渦が生じたばかりの時から貫通渦の形成までの最適化制御プロセスであり;測定された渦面のサイズ、渦の高さ、スライディングノズルの開度及び鋼スラグの含有量のようなデータを取得した後に、溶鋼の粘度特性を組み合わせ、渦抑制の最適化モデルによって制御量を算出し、電磁ブレーキ装置を駆動して鋼の流れ方向と逆向きの外乱力を生じさせ、形成されたばかりの表面凹状渦を抑制し、貫通渦の形成を遅らせ、ひいてはスラグ排出の発生を遅らせ、取鍋内に残留する溶鋼を低減し;
(9)渦破壊の制御プロセスであって、即ち貫通渦が形成された後の最適化制御プロセスであり;測定された渦面のサイズ、渦の高さ、スライディングノズルの開度のようなデータを取得した後に、溶鋼の粘度特性を組み合わせ、渦破壊の最適化モデルによってスライディングノズルの制御量と電磁作用力を算出し、スライディングノズルを制御し、かつ電磁ブレーキ装置を駆動して、既に形成された貫通渦を打ち散らし又は移動させ、渦の吸着力を低減させ、スラグ巻込みの発生を避け、鋼スラグが取鍋に残すように溶鋼を流出させること、を含むことを特徴とする連続鋳造取鍋の注湯末期におけるスラグ巻込みの抑制のための制御方法。
【請求項2】
前記渦抑制の最適化モデルにおいて外乱力の制御量の算出式が以下の通りであり、
【数1】
式中、Fは現在の外乱力の制御量であり;
Kは外乱力の計算補正係数であり;
は現在の渦の渦面直径の大きさであり;
は現在の渦の高さであり;
hは現在の取鍋内の溶鋼レベルの高さであり;
は現在のスライディングノズル開度の大きさであり;
sは現在にスライディングノズルを流れる鋼スラグの含有量であり;
μは現在注湯中の溶鋼の粘度であり;
m、n、a、b、cは、それぞれ渦面の直径、渦の高さ、ノズル開度、鋼スラグの含有量、溶鋼の粘度補正係数であることを特徴とする請求項1に記載の連続鋳造取鍋の注湯末期におけるスラグ巻込みの抑制のための制御方法。
【請求項3】
前記渦破壊の最適化モデルにおいてスライディングノズルの制御量の算出式が以下の通りであり、
【数2】
式中、Lはスライディングノズルの振動を制御する移動幅であり;
Mはノズル制御量の計算補正係数であり;
は現在の渦の渦面直径の大きさであり;
は現在の渦の高さであり;
は現在のスライディングノズル開度の大きさであり;
μは現在注湯中の溶鋼の粘度であり;
i、j、e、f、gはそれぞれ渦面の直径、渦の高さ、ノズル開度、ノズル開度補正、溶鋼の粘度補正係数であることを特徴とする請求項1に記載の連続鋳造取鍋の注湯末期におけるスラグ巻込みの抑制のための制御方法。
【請求項4】
前記渦破壊の最適化モデルにおいて電磁作用力の算出式が以下の通りであり、
【数3】
式中、F’は現在の電磁作用力の制御量であり;
Nは電磁作用力の計算補正係数であり;
は現在の渦の渦面直径の大きさであり;
は現在の渦の高さであり;
は現在のスライディングノズル開度の大きさであり;
sは現在にスライディングノズルを流れる鋼スラグの含有量であり;
μは現在注湯中の溶鋼の粘度であり;
p、q、h、r、tはそれぞれ渦面の直径、渦の高さ、ノズル開度、鋼スラグの含有量、溶鋼の粘度補正係数であることを特徴とする請求項1又は3に記載の連続鋳造取鍋の注湯末期におけるスラグ巻込みの抑制のための制御方法。
【請求項5】
取鍋重量検出器(4)、溶鋼流れ場分布検出器(5)、電磁ブレーキ(6)、鋼スラグ検出器(7)、スライディングノズル制御器(8)、スライディングノズル開度検出器(9)、プロセス信号インターフェースユニット(10)、最適化制御モデル算出ユニット(11)を含み、
前記取鍋重量検出器(4)が重量を測るセンサーであり、取鍋(1)の回転テーブルに取り付けられ、現在注湯中の取鍋の重量をリアルタイムに測定すると同時に、重量値を最適化制御モデル算出ユニット(11)に出力し;
前記溶鋼流れ場分布検出器(5)が取鍋(1)内に設置された測定装置であり、現在の取鍋内の溶鋼渦の形成状況を測定し、渦の渦面サイズ及び渦の高さを測定し、その測定結果をリアルタイムに最適化制御モデル算出ユニット(11)に転送し;
前記電磁ブレーキ(6)が電磁力を発生させる装置であり、取鍋(1)の出鋼口付近に設置され、溶鋼の流れ方向と逆向きの作用力の発生に使用され、最適化制御モデル算出ユニット(11)により出力制御され;
前記鋼スラグ検出器(7)が鋼スラグの百分率含有量を測定するセンサーであり、スライディングノズル(2)の上方に設置され、現在にスライディングノズルを流れる鋼流れに含まれる鋼スラグの量をリアルタイムに測定すると同時に、その測定結果を最適化制御モデル算出ユニット(11)に出力し;
前記スライディングノズル制御器(8)がスライディングノズル(2)の移動を駆動する装置であり、スライディングノズルの開閉動作を制御することに使用され、最適化制御モデル算出ユニット(11)により出力制御され;
前記スライディングノズル開度検出器(9)は、現在のスライディングノズル開度の大きさを検出する装置であり、その検出結果もリアルタイムに最適化制御モデル算出ユニット(11)に出力され;溶鋼がスライディングノズル(2)を通して取鍋(1)からタンディッシュ(3)へ流出し、スライディングノズル開度の大きさとは流れた溶鋼のフラックスの量を指し;
前記プロセス信号インターフェースユニット(10)が現在注湯中の鋼種類の信号情報をコードに変換することと、現在注湯中の取鍋の正味重量信号を受信することとの2つの機能を有し、これらの情報を最適化制御モデル算出ユニット(11)に出力する信号変換装置であり;
前記最適化制御モデル算出ユニット(11)がデータ取得と、最適化モデル算出と、制御出力との機能を有するコンピュータ装置であり、取鍋重量検出器(4)、溶鋼流れ場分布検出器(5)、鋼スラグ検出器(7)、スライディングノズル開度検出器(9)、プロセス信号インターフェースユニット(10)によって送信された関連信号及びデータを受信し、最適化制御モデルによって算出し、分析することで、対応する最適化制御策略を得て、電磁ブレーキ(6)及びスライディングノズル制御器(8)に出力して、スラグ巻込みの抑制を制御することを特徴とする連続鋳造取鍋の注湯末期におけるスラグ巻込みの抑制のための制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続鋳造生産における取鍋スラグ巻込みの抑制のための制御方法及び装置に関し、特に連続鋳造取鍋の注湯末期におけるスラグ巻込みの抑制のための制御方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
連続鋳造生産において、溶鋼は、まず取鍋からタンディッシュに注ぎ込まれ、さらにタンディッシュから各結晶器に配給され、そして結晶器により凝固し結晶して、スラブに鋳造される。溶鋼が取鍋からタンディッシュに注湯される過程では、注湯の進行に連れて、取鍋内部の溶鋼の液面が徐々に低下し、注湯の終了に当たり、取鍋内の鋼スラグが溶鋼に混ざり、ロングノズルによってタンディッシュに注湯され、スラグ排出になる。過剰な鋼スラグは、溶鋼の清浄性を低下させることだけではなく、スラブの質量に影響を与え、さらに漏洩事故を招くことさえあり、また、タンディッシュ耐火材料の腐食を加速し、その使用寿命を短くし、タンディッシュのスラグシェルの重量を増加し、連続鋳造生産に影響を及ぼす。
【0003】
過剰な鋼スラグが取鍋から流出することによる悪影響を減少させるために、既存の連続鋳造生産ラインでは、目視又は自動スラグ排出検出手段を使用して鋼スラグの発生を判定し、鋼スラグがプロセスの規定値を超えたことを検出すると、スライディングノズルを早めに遮断し、注湯を終了する。しかし、この時、多量の清浄な溶鋼はまだ取鍋内に残されている。連続鋳造生産ラインの取鍋の最終鋳造後の取鍋スラグ量に関する長期データ統計によれば、150トンの取鍋の平均残余鋳造残余物(溶鋼+鋼スラグ)は4トン以上であり、そのうち、清浄な溶鋼が2トン以上であり、300トンの取鍋の平均残余鋳造残余物は6トンであり、そのうち、清浄な溶鋼が3トン以上である。これらの溶鋼は、一般的に全て鋼スラグとして扱われ、莫大な資源の無駄遣いを引き起こす。取鍋の注湯が終了した時に多量の溶鋼がまだ取鍋内に残されていることを引き起こす原因は、注湯の中後期で、溶鋼が取鍋内で回転運動を起こし、最後にタップホールの上に渦が形成され、その結果、溶鋼の上に浮遊する鋼スラグが渦の吸着によって巻き込まれたものである。
【0004】
連続鋳造取鍋の注湯の中後期における渦によるスラグ吸着の問題に対して、取鍋残留鋼を減らすためにスラグ巻込み現象を抑制するためのいくつかの方法がある。例えば、取鍋注湯の後期に取鍋全体を一定の角度で傾斜させて溶鋼を片側に偏らせることにより溶鋼の高さを高くし、溶鋼をより多く流出することができる取鍋傾斜鋳造法;及び取鍋の底部にいくつかの突出するスラグダムを配置することによって溶鋼の後期の流速を遅くさせ、スラグ巻込み現象を低減することできる取鍋スラグダム技術がある。しかし、これらの方法の実用的な適用効果は理想的ではなく、現在、国内外での連続鋳造鋳鋼生産においてスラグ巻込み現象を抑制して取鍋内の残留鋼を減少させる有効な手段はまだ存在しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、取鍋の注湯の中後期において取鍋の渦によるスラグ巻込み現象を効果的に抑制し、注湯の最適な制御を達成することにより取鍋の注湯が完了した後に残留する溶鋼を減少でき、溶鋼の歩留まりを向上させる連続鋳造取鍋の注湯末期におけるスラグ巻込みの抑制のための制御方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記技術目的を達成するために、本発明は以下の技術案を採用する。
連続鋳造取鍋の注湯末期におけるスラグ巻込みの抑制のための制御方法は、以下のステップを含む。
【0007】
(1)現在注湯中の鋼種類のコード及び取鍋の自体重量を採取し、溶鋼の粘度特性及び取鍋の自体重量を得り;
(2)取鍋の総重量を測定し、取鍋の自体重量を引いて溶鋼の正味重量を得て、取鍋の形状サイズによって取鍋内の溶鋼の実際のレベル高さを算出し;
(3)溶鋼のレベル高さによって注湯プロセスがスラグ巻込みの制御プロセスに入る必要があるかどうかを判断し、条件を満足すれば次のステップに進み、そうでなければ、ステップ(2)に戻して測定し続く;
(4)溶鋼流れ場分布検出装置によって現在の溶鋼の渦面のサイズと渦の高さを測定し;
(5)取鍋のスライディングノズル開度検出装置によって、ノズル開度の大きさを測定し;
(6)鋼スラグ検出装置によって、現在の鋼スラグの含有量を測定し;
(7)鋼スラグの含有量によってスラグが排出されたかどうかを判断し、スラグが既に排出された条件を満足すれば、ステップ(9)である渦破壊の制御プロセスに進み、そうでなければ、ステップ(8)である渦抑制の制御プロセスに進み;
(8)渦抑制の制御プロセスであって、即ち、出鋼口の上方に表面凹状渦が生じたばかりの時から貫通渦の形成までの最適化制御プロセスであり;測定された渦面のサイズ、渦の高さ、スライディングノズルの開度及び鋼スラグの含有量のようなデータを取得した後に、溶鋼の粘度特性を組み合わせ、渦抑制の最適化モデルによって制御量を算出し、電磁ブレーキ装置を駆動して鋼の流れ方向と逆向きの外乱力を生じさせ、形成されたばかりの表面凹状渦を抑制し、貫通渦の形成を遅らせ、ひいてはスラグ排出の発生を遅らせ、取鍋内に残留する溶鋼を低減し;
(9)渦破壊の制御プロセスであって、即ち貫通渦が形成された後の最適化制御プロセスであり;測定された渦面のサイズ、渦の高さ、スライディングノズルの開度のようなデータを取得した後に、溶鋼の粘度特性を組み合わせ、渦破壊の最適化モデルによってスライディングノズルの制御量と電磁作用力を算出し、スライディングノズルを制御し、かつ電磁ブレーキ装置を駆動して、既に形成された貫通渦を打ち散らし又は移動させ、渦の吸着力を低減させ、スラグ巻込みの発生を避け、鋼スラグが取鍋に残すように溶鋼を流出させる。
【0008】
連続鋳造取鍋の注湯末期におけるスラグ巻込みの抑制のための制御装置は、取鍋重量検出器、溶鋼流れ場分布検出器、電磁ブレーキ、鋼スラグ検出器、スライディングノズル制御器、スライディングノズル開度検出器、プロセス信号インターフェースユニット、最適化制御モデル算出ユニットを含み;
前記取鍋重量測定器が重量を測るセンサーであり、取鍋の回転テーブルに取り付けられ、現在注湯中の取鍋の重量をリアルタイムに測定すると同時に、重量値を最適化制御モデル算出ユニットに出力し;前記溶鋼流れ場分布検出器が取鍋内に設置された測定装置であり、現在の取鍋内の溶鋼渦の形成状況を測定し、渦の渦面サイズ及び渦の高さを測定し、その測定結果をリアルタイムに最適化制御モデル算出ユニットに転送し;前記電磁ブレーキが電磁力を発生させる装置であり、取鍋の出鋼口付近に設置され、溶鋼の流れ方向と逆向きの作用力の発生に使用され、最適化制御モデル算出ユニットにより出力制御され;前記鋼スラグ検出器が鋼スラグの百分率含有量を測定するセンサーであり、スライディングノズルの上方に設置され、現在にスライディングノズルを流れる鋼流れに含まれる鋼スラグの量をリアルタイムに測定すると同時に、その測定結果を最適化制御モデル算出ユニットに出力し;前記スライディングノズル制御器がスライディングノズルの移動を駆動する装置であり、スライディングノズルの開閉動作を制御することに使用され、最適化制御モデル算出ユニットにより出力制御され;前記スライディングノズル開度検出器が現在のスライディングノズル開度の大きさを検出する装置であり、その検出結果もリアルタイムに最適化制御モデル算出ユニットに出力され;溶鋼がスライディングノズルを通して取鍋からタンディッシュへ流出し、スライディングノズル開度の大きさとは流れた溶鋼のフラックスの量を指し;前記プロセス信号インターフェースユニットが現在注湯中の鋼種類の信号情報をコードに変換することと、現在注湯中の取鍋の正味重量信号を受信することとの2つの機能を有し、これらの情報を最適化制御モデル算出ユニットに出力する信号変換装置であり;前記最適化制御モデル算出ユニットがデータ取得と、最適化モデル算出と、制御出力との機能を有するコンピュータ装置であり、取鍋重量検出器、溶鋼流れ場分布検出器、鋼スラグ検出器、スライディングノズル開度検出器、プロセス信号インターフェースユニットによって送信された関連信号及びデータを受信し、最適化制御モデルによって算出し、分析することで、対応する最適化制御策略を得て、電磁ブレーキ及びスライディングノズル制御器に出力して、スラグ巻込みの抑制を制御する。
【0009】
本発明の連続鋳造取鍋の注湯末期におけるスラグ巻込みの抑制のための制御方法及び装置は、連続鋳造取鍋の注湯末期における取鍋内の渦の形成過程を分析し、渦が形成される2つの過程に対して、異なる最適化制御策略によって、渦形成の抑制又は破壊をそれぞれ採用し、スラグ排出の発生を遅らせ、それとともにスラグが排出されないように溶鋼を流出させ、取鍋に残留する溶鋼を低減し、溶鋼の歩留りを向上させることが達成できる。
【0010】
本発明は、取鍋の注湯末期において取鍋内の渦の吸着によるスラグ巻込み現象を効果的に抑制し、注湯の最適化制御を達成でき、従って、取鍋の注湯終了後に残留される鋼を低減させ、溶鋼の歩留りを向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は本発明の連続鋳造取鍋の注湯末期におけるスラグ巻込みの抑制のための制御装置の模式図である。
図2図2は渦によるスラグ巻込みの模式図であって、図2(a)は凹状渦によるスラグ巻込みであり、図2(b)は貫通渦によるスラグ巻込みである。
図3図3は本発明の連続鋳造取鍋の注湯末期におけるスラグ巻込みの抑制のための制御方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面及び具体的な実施例に基づいて本発明をさらに説明する。
図1を参考して、連続鋳造取鍋の注湯末期におけるスラグ巻込みの抑制のための制御装置は、取鍋重量検出器4、溶鋼流れ場分布検出器5、電磁ブレーキ6、鋼スラグ検出器7、スライディングノズル制御器8、スライディングノズル開度検出器9、プロセス信号インターフェースユニット10、最適化制御モデル算出ユニット11を含む。
【0013】
前記取鍋重量検出器4は、重量を測るセンサーであり、取鍋1の回転テーブルに取り付けられ、現在注湯中の取鍋の重量をリアルタイムに測定すると同時に、重量値を最適化制御モデル算出ユニット11に出力する。
【0014】
前記溶鋼流れ場分布検出器5は、取鍋1内に設置された測定装置であり、その主な機能が現在の取鍋内の溶鋼渦の形成状況を測定することであり、渦の渦面サイズ及び渦の高さを測定し、その測定結果をリアルタイムに最適化制御モデル算出ユニット11に転送する。溶鋼流れ場分布検出器5は特許製品であり、その特許番号が2014102836130である。
【0015】
前記電磁ブレーキ6は、電磁力を発生させる装置であり、取鍋の出鋼口付近に設置され、溶鋼の流れ方向と逆向きの作用力の発生に使用され、最適化制御モデル算出ユニット11により出力制御される。
【0016】
前記鋼スラグ検出器7は、鋼スラグの百分率含有量を測定するセンサーであり、スライディングノズル2の上方に設置され、現在にスライディングノズル2を流れる鋼流れに含まれる鋼スラグの量をリアルタイムに測定すると同時に、その測定結果を最適化制御モデル算出ユニット11に出力する。
【0017】
前記スライディングノズル制御器8は、スライディングノズルの移動を駆動する装置であり、スライディングノズルの開閉動作を制御することに使用され、最適化制御モデル算出ユニット11により出力制御される。
【0018】
前記スライディングノズル開度検出器9は、現在のスライディングノズル開度の大きさを測定する装置であり、その測定結果もリアルタイムに最適化制御モデル算出ユニット11に出力される。ここで、スライディングノズルの開度とは、溶鋼がスライディングノズルを通して取鍋からタンディッシュへ流出するので、その開度の大きさが流れた溶鋼のフラックスの量を指す。
【0019】
前記プロセス信号インターフェースユニット10は、現在注湯中の鋼種類の信号情報をコードに変換することと、現在注湯中の取鍋の正味重量信号を受信することとの2つの機能を有し、これらの情報を最適化制御モデル算出ユニット11に出力する信号変換装置である。
【0020】
前記最適化制御モデル算出ユニット11は、データ取得と、最適化モデル算出と、制御出力との機能を有するコンピュータ装置であり、取鍋重量検出器4、溶鋼流れ場分布検出器5、鋼スラグ検出器7、スライディングノズル開度検出器9、プロセス信号インターフェースユニット10によって送信された関連信号及びデータを受信し、最適化制御モデルによって算出し、分析することで、対応する最適化制御策略を得て、電磁ブレーキ6及びスライディングノズル制御器8に出力して、スラグ巻込みの抑制を制御する。
【0021】
図2を参照して、連続鋳造生産プロセスにおいて、取鍋注湯の進行に連れて、取鍋内部の溶鋼の液面が徐々に減り、注湯の中後期に当たり、溶鋼が取鍋内で旋回流を発生し、出鋼口の上方の付近に渦を形成することになり、連続鋳造取鍋の注湯の過程において取鍋内の渦の形成過程及び吸着によるスラグ巻込みの状況が極めて複雑であり、主に以下の2つ過程を含む。
【0022】
第1の過程は、図2(a)のように出鋼口の上方に表面の凹状渦を形成する。渦が形成されたばかりのときに、ただ小さな凹状渦だけであり、このときの渦はまだ小さく完全に形成されていないため、吸着力が比較的に小さく、少量のスラグ、即ちプロセス上のいわゆる中間スラグのみを巻込む。
【0023】
第2の過程は、表面の凹状渦が徐々に大きくなるにつれて、最終に貫通渦を形成する。図2(b)に示すように、この時に渦は既に完全に形成し、吸着力が比較的に大きく、多量の鋼スラグを巻き込むことができ、これは、プロセス上のいわゆるスラグ排出である。
【0024】
本発明の連続鋳造取鍋の注湯末期におけるスラグ巻込みの抑制のための制御方法は、上記スラグ巻込みの抑制のための制御装置及び注湯過程で渦が形成される過程の基に達成されるものであり、制御流れは図3に示され、当該制御方法は、以下のステップを含む。
【0025】
第1のステップ:最適化制御モデル算出ユニット11は、プロセス信号インターフェースユニット10によって現在注湯中の鋼種類のコード及び取鍋の自体重量を読み取り;
第2のステップ:取鍋1の回転テーブルに取り付けられた取鍋重量検出器4によって現在の取鍋の重量を測定し、その測定結果を最適化制御モデル算出ユニット11に出力し、最適化制御モデル算出ユニット11が既存の取鍋の自体重量によって、現在の取鍋の溶鋼の正味重量を算出し、取鍋の形状及びサイズを組み合わせて現在の取鍋内の溶鋼の液面の高さhを算出し;
第3のステップ:最適化制御モデル算出ユニット11は、現在の溶鋼の液面の高さがスラグ巻込みの制御条件に達するかを判断し、即ち、溶鋼の液面の高さhがHより小さくなるかを判断し;Hは定数であり、具体的な連続鋳造生産ラインの特徴に応じて設定される高さの値であり;溶鋼の液面の高さhがスラグ巻込みの制御条件に達する時に、第4の工程に進み、そうでなければ、第2の工程にジャンプし;
第4のステップ:溶鋼流れ場分布検出器5によって現在の取鍋内の溶鋼の渦面サイズ及び渦の高さを測定すると同時に、測定結果を最適化制御モデル算出ユニット11に出力し;
第5のステップ:スライディングノズル開度検出器9によって現在のスライディングノズル2の開度の大きさを測定すると同時に、測定結果を最適化制御モデル算出ユニット11に出力し;
第6のステップ:鋼スラグ検出器7によって現在にスライディングノズルを流れる鋼スラグの量sを測定すると同時に、測定結果を最適化制御モデル算出ユニット11に出力し;
第7のステップ:鋼スラグの含有量によってスラグが排出されたかどうかを判断し、即ち、現在の鋼スラグの含有量sがSより大きくなるかどうかを判断し;Sは現在の連続鋳造生産の要求に応じて設定されたスラグ排出警報値であり;鋼スラグの含有量sがスラグ排出の条件に満足する時に、第9のステップである渦破壊の制御プロセスに進み、そうでなければ、第8のステップである渦抑制の制御プロセスに進み;
第8のステップ:渦抑制の制御プロセスであって、出鋼口の上方に表面凹状渦が生じたばかりの時から貫通渦の形成までの制御である。当該プロセスで渦の形成を抑制する方法を採用しており、即ち、貫通渦の形成を遅らせ、これによってスラグ排出の発生を遅らせることができ、取鍋内に残留する溶鋼を低減できる。具体的な制御過程は、渦面のサイズ、渦の高さ、スライディングノズルの開度及び鋼スラグの含有量のようなデータを取得した後に、溶鋼の粘度特性を組み合わせ、渦抑制の最適化モデルによって制御量を算出し、電磁ブレーキ6を駆動して鋼の流れ方向と逆向きの外乱力を生じさせ、形成されたばかりの表面凹状渦を抑制し、その増大や増強を遅らせ、貫通渦の形成を遅らせる。外乱力の制御量の算出式は、以下の通りである。
【0026】
【数1】
【0027】
式中、Fは現在の外乱力の制御量であり;
Kは外乱力の計算補正係数であり、当該係数は取鍋の底部における出鋼口の大きさにより確定され、定数であり;
は現在の渦の渦面直径の大きさであり;
は現在の渦の高さであり;
hは現在の取鍋内の溶鋼レベルの高さであり;
は現在のスライディングノズル開度の大きさであり;
sは現在にスライディングノズルを流れる鋼スラグの含有量であり;
μは現在注湯中の溶鋼の粘度であり;
m、n、a、b、cは、それぞれ渦面の直径、渦の高さ、ノズル開度、鋼スラグの含有量、溶鋼の粘度補正係数である。これらの補正係数は、具体的な連続鋳造機の設備パラメーターによって確定され、全てが定数である。そのうち、m、nは取鍋の底部の直径により確定され;aはスライディングノズルが完全に開けられた時の大きさにより確定され;bは出鋼口の大きさにより確定され;cは取鍋内の溶鋼の温度範囲により確定される。
【0028】
第9のステップ:渦破壊の制御プロセスであって、貫通渦が形成された後、即ちスラグ排出後の制御である。当該プロセスは、渦を破壊する制御方法を採用し、既に形成された貫通渦を打ち散らし又は移動させ、渦の吸着力を低減させ、スラグ排出の発生を避け、鋼スラグが取鍋に残すように溶鋼を流出させる。スラグ排出が発生した後に、渦はもう完全に形成され、かつ貫通しており、吸着力が強く、電磁ブレーキだけで渦を破壊することができないため、当該プロセスで電磁ブレーキとスライディングノズルの開閉動作とを同時に利用して制御を達成する必要がある。具体的な制御プロセスは、渦面のサイズ、渦の高さ、スライディングノズルの開度及び溶鋼の粘度特性などのデータを取得した後に、渦破壊の最適化モデルによってスライディングノズルの制御量と電磁作用力の制御量を算出し、スライディングノズル制御器8を駆動して急速振動動作を発生させ、電磁ブレーキ6を駆動して鋼の流れ方向と逆向きの作用力を生じさせ、既に形成された貫通渦を破壊する。スライディングノズルの制御量の算出式は、以下の通りである。
【0029】
【数2】
【0030】
式中、Lはスライディングノズルの振動を制御する移動幅であり;
Mはノズル制御量の計算補正係数であり、当該パラメーターは使用者に設定された制御レベルにより確定され、定数であり;
は現在の渦の渦面直径の大きさであり;
は現在の渦の高さであり;
は現在のスライディングノズル開度の大きさであり;
μは現在注湯中の溶鋼の粘度であり;
i、j、e、f、gは、それぞれ渦面の直径、渦の高さ、ノズル開度、ノズル開度補正、溶鋼の粘度補正係数である。これらの補正係数は、具体的な連続鋳造機の設備パラメーターによって確定され、全てが定数である。そのうち、i、jは取鍋の底部の直径により確定され;e、fはノズルが完全に開けられた時の大きさ及びノズルの総行程により確定され;gは取鍋内の溶鋼の温度範囲により確定される。
【0031】
電磁作用力の制御量の算出式は、以下の通りである。
【0032】
【数3】
【0033】
式中、F’は現在の電磁作用力の制御量であり;
Nは外乱力の計算補正係数であり、当該係数は取鍋の底部における出鋼口の大きさにより確定され、定数であり;
は現在の渦の渦面直径の大きさであり;
は現在の渦の高さであり;
は現在のスライディングノズル開度の大きさであり;
sは現在にスライディングノズルを流れる鋼スラグの含有量であり;
μは現在注湯中の溶鋼の粘度であり;
p、q、h、r、tは、それぞれ渦面の直径、渦の高さ、ノズル開度、鋼スラグの含有量、溶鋼の粘度補正係数である。これらの補正係数は、具体的な連続鋳造機の設備パラメーターによって確定され、全てが定数である。そのうち、p、qは取鍋の底部の直径により確定され;hはスライディングノズルが完全に開けられた時の大きさにより確定され;rは出鋼口の大きさにより確定され;tは取鍋内の溶鋼の温度範囲により確定される。
【0034】
第10のステップ:制御プロセスを終了するかどうかを判断し、終了条件を満足すれば、当該プロセスから退出し、制御プロセスを終了する。そうでなければ、取鍋を交換するかどうかを判断する。異なる取鍋は、注湯を新たに開始することを意味し、取鍋の自体重量が異なり、交換後の取鍋の自体重量値を新たに取得する必要があり、そして取鍋交換後の鋼種類が異なている可能性もあり、新たな鋼種類の情報を取得する必要があり、この場合、制御プロセスは第1のステップにジャンプし、上記ステップを繰り返す。取鍋が交換されないと検出された場合、制御プロセスは第4のステップにジャンプして、上記ステップを繰り返す。
【0035】
以上は、ただ本発明の好ましい実施例だけであり、本発明の保護範囲を限定するものではなく、従って、本発明の趣旨及び原則の範囲内でなされるいかなる修正、等価物、改良なども本発明の保護範囲内に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0036】
1 取鍋、2 スライディングノズル、3 タンディッシュ、4 取鍋重量検出器、5 溶鋼流れ場分布検出器、6 電磁ブレーキ、7 鋼スラグ検出器、8 スライディングノズル制御器、9 スライディングノズル開度検出器、10 プロセス信号インターフェースユニット、11 最適化制御モデル算出ユニット。
図1
図2(a)】
図2(b)】
図3