(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記予測演算部により演算された前記到達値に基づいて、前記燃焼バーナにおける燃焼状態を診断するように構成された燃焼制御部をさらに備える、請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃焼装置。
前記予測演算部により演算された前記到達値に基づいて、前記燃焼バーナにおける燃焼状態を改善させる燃焼改善処理を実行するように構成された燃焼制御部をさらに備える、請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃焼装置。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当する部分については、同一符号を付してその説明が繰り返さない。
【0024】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1に従う燃焼装置を含む給湯装置の概略構成図である。
【0025】
図1を参照して、給湯装置100は、加熱部20と、加熱部20を格納する燃焼缶体(以下、単に「缶体」とも称する)10と、送風ファン40と、入水管50と、バイパス管60と、出湯管70と、コントローラ300とを備える。加熱部20は、水を加熱して湯にする部分であり、一次熱交換器11、二次熱交換器21および燃焼バーナ30を含む。燃焼バーナ30は、代表的にはガスバーナである。
【0026】
入水管50および出湯管70の間にはバイパス管60が配置される。入水管50には、バイパス管60への分流を制御するための分配弁80が介挿接続される。さらに、入水管50には、温度センサ110および流量センサ150が配置される。温度センサ110は、入水温度Twを検出する。入水管50には、水道水等が給水される。分配弁80の開度に応じて、給水量の一部が入水管50からバイパス管60へ分流される。全体給水量に対する分流の割合は、分配弁80の開度に応じて制御される。
【0027】
入水管50の水は、まず二次熱交換器21によって予熱された後、一次熱交換器11において主加熱される。一次熱交換器11および二次熱交換器21によって所定温度まで加熱された湯は、出湯管70から出湯される。
【0028】
出湯管70は、合流点75においてバイパス管60と接続される、したがって、給湯装置100からは、缶体10から出力された高温湯と、バイパス管60の水とを混合した適温の湯が、台所及び浴室等の給湯栓190並びに、図示しない風呂への注湯回路などの所定の給湯箇所に供給される。
【0029】
出湯管70には、流量調整弁90および温度センサ120,130が設けられる。温度センサ120は、出湯管70とバイパス管60との合流点75よりも上流側(缶体側)に配置され、缶体10からの出力湯温(缶体温度)を検出する。温度センサ130は、合流点75よりも下流側(出湯側)に設けられ、バイパス管60からの水が混合された後の出湯温度Thを検出する。流量調整弁90は出湯流量を制御するために設けられる。
【0030】
缶体10において、燃焼バーナ30に送出された燃料ガスは、送風ファン40からの燃焼用空気と混合される。点火装置45によって混合気が着火されることにより、燃料ガスが燃焼されて火炎が生じる。燃焼バーナ30からの火炎によって生じる燃焼熱は、缶体10内で一次熱交換器11および二次熱交換器21へ与えられる。一次熱交換器11は、燃焼バーナ30による燃焼ガスの顕熱(燃焼熱)により入水を熱交換によって加熱する。二次熱交換器21は、燃焼バーナ30からの燃焼排ガスの潜熱によって通流された水を熱交換によって加熱する。
【0031】
缶体10の燃焼ガスの流れ方向下流側には熱交換後の燃焼排ガスを排出処理するための排気通路15が設けられる。このように、缶体10では、燃焼バーナ30での燃焼による発生熱量により、一次熱交換器11および二次熱交換器21で、入水管50から供給された水を加熱する。
【0032】
燃焼バーナ30へのガス供給管31には、元ガス電磁弁32、ガス比例弁33および、能力切換弁35a〜35cが配置される。元ガス電磁弁32は、燃焼バーナ30への燃料ガスの供給をオンオフする機能を有する。ガス供給管31のガス流量は、ガス比例弁33の開度に応じて制御される。
【0033】
コントローラ300は、各センサの出力信号(検出値)およびユーザ操作を受けて、給湯装置100の全体動作を制御するために、各機器への制御指令を発生する。ユーザ操作には、給湯装置100の運転オン/オフ指令および設定湯温(Tr*)指令が含まれる。制御指令には、各弁の開閉および開度指令、送風ファン40への電気的入力指令(ファン駆動電圧指令)が含まれる。
【0034】
給湯装置100では、合流点75よりも下流側(出湯側)に配置された流量調整弁90からは、缶体10からの加熱水と、バイパス管60からの非加熱水とを混合した湯が出力される。コントローラ300は、流量調整弁90の開度を制御することによって、缶体流量および出湯管70からの出湯流量を制御することができる。
【0035】
流量センサ150は、分配弁80よりも下流側(缶体側)に配置され、缶体10に格納された加熱部20を通過する流量(缶体流量)を検出する。
【0036】
コントローラ300は、給湯装置100の運転指令がオンされると、流量センサ150によって検出される流量(缶体流量)が最低作動流量(MOQ)を超えたことに応じて、缶体10での燃焼動作をオンする。燃焼動作がオンされると、元ガス電磁弁32が開放されて、燃焼バーナ30への燃料ガスの供給が開始される。
【0037】
燃焼バーナ30の燃焼位置には、バーナセンサ160が配置される。バーナセンサ160は、燃焼バーナ30が燃焼しているときの火炎温度を検出する。バーナセンサ160は、例えば熱電対またはサーミスタ等によって構成される。
【0038】
コントローラ300は、燃焼動作の実行時において、所定の検出周期ごとに、バーナセンサ160の出力信号から検出値を取得する。コントローラ300は、取得したバーナセンサ160の検出値を用いて、燃焼バーナ30における燃焼が良好な状態にあるか否かを診断する。燃焼が良好な状態にないと診断された場合、コントローラ300は、燃焼バーナ30の燃焼状態を改善させる燃焼改善処理を実行する。
【0039】
ここで、上述したように、バーナセンサ160は固有の熱容量を有するため、センサ検出値には、火炎温度の時間的変化に対する応答遅れが生じる。
図2は、バーナセンサ160の検出値の時間的変化の一例を示す図である。
図2において、実線はバーナセンサ160の検出値の波形を示し、破線は火炎温度の実値の波形を示している。
【0040】
図2では、時刻t1において、燃焼バーナ30の火炎温度が300[℃]から530[℃]程度にまで上昇している。このような火炎温度の上昇は、例えば燃焼バーナ30の燃焼能力が上昇した場合、または、送風ファン40からの燃焼用空気の供給が不足している場合などに発生し得る。
【0041】
図2に示されるように、バーナセンサ160への入力信号である火炎温度の上昇に対して、バーナセンサ160の出力信号である検出値は時間的に遅れて上昇する。そして、バーナセンサ160の検出値は、火炎温度が変化した時刻t1よりも後の時刻t3において、火炎温度の実値に等しい値に到達する。本明細書では、バーナセンサ160の検出値が応答遅れを持って到達する値を、バーナセンサ出力の「到達値」と定義する。
【0042】
このように、火炎温度が変化すると、バーナセンサ160の検出値は、センサに固有の時定数に応じた時間の遅れをもって変化後の火炎温度に追従する。火炎温度の変化に対してバーナセンサ160の検出値の変化が遅れるため、バーナセンサ160の検出値に基づいて燃焼状態の診断を行なう従来技術では、火炎温度が変化してから温度変化が検出されるまでの間に時間的な遅れが生じることになる。
【0043】
例えば、火炎温度が異常判定値を超えて上昇するという異常燃焼が発生した場合、バーナセンサ160の検出値が異常判定値を超えるまでは異常燃焼と診断されず、異常燃焼の発生後速やかに異常燃焼を検出することができない。この結果、異常燃焼を抑制するための燃焼改善処理の実行開始が遅れるため、燃焼状態をさらに悪化させてしまう虞がある。
【0044】
そこで、本実施の形態では、バーナセンサ出力の到達値を予測演算する。この予測演算された到達値に基づいて燃焼バーナ30における燃焼状態の診断および燃焼改善処理を実行することにより、バーナセンサ160の応答遅れに影響されることなく、燃焼状態を正確に診断して燃焼改善処理を適切に実行することが可能となる。
【0045】
本実施の形態において、バーナセンサ出力の到達値の予測演算はコントローラ300によって実行される。以下では、コントローラ300の構成および動作について説明する。
【0046】
図3は、
図1に示されるコントローラ300の構成を示すブロック図である。コントローラ300は、CPU、記憶装置、入出力バッファ等を含み(いずれも図示せず)、各種センサおよび機器からの信号を受けるとともに、加熱部20の制御を行なう。この制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)により処理することも可能である。
【0047】
図3を参照して、コントローラ300は、予測演算部310と、燃焼制御部320とを含む。
【0048】
予測演算部310は、所定の検出周期T
Sごとに、バーナセンサ160の出力信号から検出値を取得する。予測演算部310は、バーナセンサ160の検出値を受けて、検出値の到達値を予測演算する。
【0049】
以下の説明では、今回取得されたバーナセンサ160の検出値をx[n]とし、k周期前(kは1以上の自然数)に取得されたバーナセンサ160の検出値をx[n−k]とする。また、バーナセンサ160の検出値の到達値をy[n]とする。
【0050】
予測演算部310は、今回の検出値x[n]と、k周期前の検出値x[n−k]との偏差を算出する。そして予測演算部310は、この偏差に係数βを乗じた値を今回の検出値x[n]に加算することによって、到達値y[n]を算出する。
【0051】
上記係数βは、火炎温度の時間的変化に対する検出値x[n]の応答遅れの時定数Tと、所定の検出周期T
Sとの比率に基づいて定められた値である。これらの関係を数式で表すと以下のとおりである。なお、この数式の導出については、後述する。
y[n]=x[n]+β(x[n]−x[n−k])
燃焼制御部320は、予測演算部310により演算された到達値y[n]に基づいて、燃焼バーナ30における燃焼状態を診断する。具体的には、燃焼制御部320は、到達値y[n]と予め設定された異常判定値とを比較する。本実施の形態では、異常判定値には、第1判定値T1と、第1判定値T1よりも低温側に設定された第2判定値T2とが含まれる。第1判定値T1は例えば620[℃]程度であり、第2判定値T2は例えば200[℃]程度である。
【0052】
到達値y[n]が第2判定値T2以上かつ第1判定値T1以下である場合(T2≦y[n]≦T1)、燃焼制御部320は、燃焼状態が良好な状態にあると診断する。一方、到達値y[n]が第1判定値T1よりも高温である場合(y[n]>T1)、もしくは、到達値y[n]が第2判定値T2よりも低温である場合(y[n]<T2)には、燃焼制御部320は、燃焼が良好な状態にない、すなわち、異常燃焼であると診断する。異常燃焼と診断されると、燃焼制御部320は燃焼改善処理を実行する。
【0053】
燃焼改善処理として、燃焼制御部320は、燃焼バーナ30に供給する燃焼用空気または燃料ガスの供給量を変更する。例えば、y[n]>T1となる異常燃焼が発生した場合には、燃焼制御部320は、送風ファン40からの燃焼用空気の供給量が増加するように、送風ファン40の目標回転数を上昇させる。燃焼制御部320は、送風ファン40の実回転数を目標回転数に一致させるためのファン駆動電圧指令を生成し、生成したファン駆動電圧指令を送風ファン40へ出力する。送風ファン40がファン駆動電圧指令に基づいて作動することにより、適量の燃焼用空気が供給されるため、燃焼状態を改善させることができる。
【0054】
(バーナセンサ出力の到達値の予測演算)
以下、コントローラ300が行なうバーナセンサ出力の到達値y[n]の予測演算について説明する。
【0055】
コントローラ300は、バーナセンサ160の検出値x[n]から到達値y[n]を予測演算する。予測演算には上記数式(y[n]=x[n]+β(x[n]−x[n−k])を用いるが、この数式の導出について説明する。
【0056】
図4は、バーナセンサ160の出力特性を説明する図である。
図4を参照して、バーナセンサ160は、火炎温度を入力として、検出値xを出力する。時刻tにおけるバーナセンサ160の検出値をx(t)とする。
【0057】
時刻t=0にて火炎温度が上昇したとすると、このときの火炎温度の変化はバーナセンサ160にとってステップ入力となる。このステップ入力に対するバーナセンサ160の出力xは次式(1),(2)で表される。
【0059】
上記式(2)におけるx
∞は、時刻t=0から相当時間が経過した時点(t=∞)での検出値x(t)の極限値であり、バーナセンサ出力の到達値に相当する。
【0060】
ここで、バーナセンサ160の応答遅れを一次遅れ応答であると仮定する。この一次遅れ応答の時定数をTとすると、検出値x(t)は次式(3)で表される。
【0062】
今回の検出値x[n]およびk周期前の検出値x[n−k]はそれぞれ、上記式(3)を用いることにより、次式(4),(5)で表される。
【0064】
上記式(4),(5)を変形することにより、到達値x
∞は次式(6)で表される。
【0066】
上記式(6)におけるexp(−kT
S/T)に1次のPade近似(式(7)参照)を適用し、かつ、到達値x
∞をy[n]と表示すると、次式(8)が得られる。
【0068】
ここで、次式(10)で与えられる係数αを用いて上記式(8)を変形すると、次式(9)が得られる。
【0070】
さらに、次式(12)で与えられる係数βを用いて上記式(9)を変形すると、次式(11)が得られる。
【0072】
上記式(11)は、
図3で説明した予測演算に用いられる数式に対応している。なお、係数βは、上記式(12)に従って、バーナセンサ160の時定数Tおよび検出周期T
Sの比率(=T/T
S)に基づいて定められた値となる。より詳細には、係数βは、バーナセンサ160の時定数Tおよび検出周期T
Sの比率(=T/T
S)とkの逆数(=1/k)との乗算値に基づいて定められた値となる。
【0073】
これによれば、バーナセンサ160が有する一次遅れ応答の時定数T、コントローラ300におけるバーナセンサ出力の検出周期T
Sおよびkを定数として、今回の検出値x[n]および過去の検出値x[n−k]に基づいて、バーナセンサ出力の到達値y[n]を予測演算することができる。
【0074】
図5は、バーナセンサ出力の到達値の予測演算結果を例示するための波形図である。
図5には、給湯装置100の運転指令がオンされたときを時刻t0として、時刻t1にて燃焼動作がオンされたときのバーナセンサ160の検出値の波形および、センサ検出値から予測演算された到達値の波形が示されている。なお、予測演算では、時定数T=22[sec]とし、検出周期T
S=1[sec]とし、k=3とした。
【0075】
図5を参照して、センサ検出値は、燃焼動作がオンされた時刻t1から上昇し始め、時刻t1よりも後の時刻t3においてある値(約420[℃])に到達している。時刻t1から時刻t3までの時間は、例えば90〜120[sec]程度である。
【0076】
これに対して、センサ検出値から予測演算される到達値は、燃焼動作がオンされた時刻t1直後において一時的に高い値を示すものの、時刻t3よりも早い時刻t2以降において、センサ検出値の到達値(約420[℃])とほぼ等しい値を示している。このように、上記数式(y[n]=x[n]+β(x[n]−x[n−k]))を用いた予測演算を行なうことにより、バーナセンサ出力の到達値を高精度で予測演算できることが確認された。なお、時刻t1から時刻t2までの時間は、例えば10〜20[sec]程度である。
【0077】
図5の波形図では、燃焼動作がオンされた時刻t1から遅れた時刻t3にてセンサ検出値が火炎温度の実値に到達するところ、予測演算を行なうことによって、時刻t3よりも早い時刻t2においてバーナセンサ出力の到達値を取得することができる。したがって、センサ検出値を用いる場合に比べて、燃焼動作がオンされた時点からより短時間で火炎温度の実値を把握することが可能となる。
【0078】
ここで、到達値の予測演算に用いる定数(時定数T、検出周期T
S、k)のうち、時定数Tはバーナセンサ160の熱容量に依存した値であるのに対し、検出周期T
Sおよびkはそれぞれ、調整可能な可変値である。到達値の波形が所望の応答特性となるように検出周期T
Sおよびkを調整することで、予測演算の精度を向上させることができる。
【0079】
特に、kを大きくすると、到達値y[n]に現われる振動が抑えられて安定した値を得ることができる。その一方で、kを小さくすると、到達値y[n]は振動しやすくなるものの、火炎温度の変化に対する追従性が向上する。よって、センサ検出値の応答特性に応じてkを適宜調整すればよい。
【0080】
(燃焼状態の診断および燃焼改善処理)
図6は、コントローラ300が実行する燃焼状態の診断および燃焼改善処理を説明するフローチャートである。このフローチャートの処理は一定時間ごとにメインルーチンから呼び出されて実行される。
【0081】
図6を参照して、ステップS01において、コントローラ300は、バーナセンサ160の検出値x[n]を取得する。上記のように、コントローラ300は、所定の検出周期T
Sごとに、バーナセンサ160の出力信号から検出値を取得する。x[n]は今回取得された検出値に相当する。
【0082】
ステップS02では、コントローラ300は、今回取得された検出値x[n]と、k周期前に取得された検出値x[n−k]とを用いて、バーナセンサ160の検出値の到達値y[n]を予測演算する。具体的には、コントローラ300は、検出値x[n],x[n−k]を上記数式(y[n]=x[n]+β(x[n]−x[n−k]))に代入することにより、到達値y[n]を演算する。
【0083】
次に、コントローラ300は、ステップS02により予測演算された到達値y[n]を用いて、燃焼バーナ30における燃焼状態の診断、および燃焼改善処理を実行する。
【0084】
具体的には、コントローラ300は、ステップS03により、到達値y[n]に基づいて燃焼状態を診断する。コントローラ300は、到達値y[n]と異常判定値(第1判定値T1および第2判定値T2)とを比較し、比較結果に基づいて燃焼が良好な状態にあるかどうかを診断する。
【0085】
燃焼が良好な状態にあると診断された場合(S04のYES判定時)、コントローラ300は、ステップS06に進み、燃焼改善処理を不実行とする。すなわち、コントローラ300は、燃焼バーナ30に対する燃焼用空気および燃料ガスの供給量がそれぞれ適正であると判断し、燃焼用空気および燃料ガスの供給量の変更を行なわない。
【0086】
これに対して、燃焼が良好な状態にないと診断された場合(S04のNO判定時)には、コントローラ300は、ステップS05に進み、燃焼改善処理を実行する。燃焼改善処理の一態様として、コントローラ300は、燃焼バーナ30に対する燃焼用空気および燃料ガスの少なくとも一方の供給量を変更する。
【0087】
図7は、
図6のステップS05における燃焼改善処理の一態様を説明するフローチャートである。
【0088】
図7を参照して、コントローラ300は、ステップS11により、到達値y[n]が第1判定値T1(例えば620℃)よりも高温であるか否かを判定する。到達値y[n]が第1判定値T1よりも高温である場合(S11のYES判定時)、コントローラ300は、燃焼状態が低酸素状態に陥っていると判断する。この場合、低酸素状態を解消するための燃焼改善処理として、コントローラ300は、ステップS12により、燃焼バーナ30に供給する燃焼用空気の供給量を増加させる。具体的には、コントローラ300は、送風ファン40の目標回転数を上昇させるとともに、送風ファン40の実回転数を目標回転数に一致させるためのファン駆動電圧指令を送風ファン40へ出力する。
【0089】
なお、ステップS12では、上述した燃焼用空気の供給量の増加に代えて、コントローラ300は、燃焼バーナ30に供給する燃料ガスの供給量を減少することができる。この場合、コントローラ300は、ガス供給管31のガス流量を低下させるように、ガス比例弁33の開度を制御する。
【0090】
一方、到達値y[n]が第1判定値T1以下である場合(S11のNO判定時)には、コントローラ300はさらに、ステップS13により、到達値y[n]が第2判定値T2(例えば200℃)よりも低温であるか否かを判定する。到達値y[n]が第2判定値T2よりも低温である場合(S13のYES判定時)、コントローラ300は、燃焼状態が高酸素状態に陥っていると判断する。この場合、高酸素状態を解消するための燃焼改善処理として、コントローラ300は、ステップS14により、燃焼バーナ30に供給する燃焼用空気の供給量を減少させる。具体的には、コントローラ300は、送風ファン40の目標回転数を低下させるとともに、送風ファン40の実回転数を目標回転数に一致させるためのファン駆動電圧指令を送風ファン40へ出力する。
【0091】
なお、ステップS14では、上述した燃焼用空気の供給量の減少に代えて、コントローラ300は、燃焼バーナ30に供給する燃料ガスの供給量を増加することができる。この場合、コントローラ300は、ガス供給管31のガス流量を上昇させるように、ガス比例弁33の開度を制御する。
【0092】
以上説明したように、この発明の実施の形態1に従う燃焼装置によれば、バーナセンサ出力の到達値を高精度に予測演算することができる。この予測演算された到達値に基づいて燃焼バーナ30における燃焼状態の診断および燃焼改善処理を実行することにより、バーナセンサ160の応答遅れに影響されることなく、燃焼状態を正確に診断して燃焼改善処理を適切に実行することが可能となる。
【0093】
[実施の形態2]
上述の実施の形態1では、バーナセンサ160の検出値の応答遅れを一次遅れ応答と仮定してバーナセンサ出力の到達値を予測演算する構成について説明したが、実際には、バーナセンサ160の検出値の応答遅れが理想的な一次遅れでない場合がある。さらには、バーナセンサ160の検出値に量子化誤差による桁落ちが生じている場合がある。これらの場合には、上記仮定に基づいた予測演算において、到達値が振動して不安定になる傾向がある。そのため、正確な到達値を導出することが難しくなる可能性がある。
【0094】
図8および
図9を用いて、センサ検出値の量子化誤差が予測演算に及ぼす影響について説明する。
図8は、センサ検出値が量子化誤差を含んでいる場合の到達値の予測演算結果を例示するための波形図である。
図9は、センサ検出値が量子化誤差を含まない場合の到達値の予測演算結果を例示するための波形図である。
【0095】
各波形図において、センサ検出値は、時刻t11を起点として火炎温度が250[℃]から400[℃]にまで上昇することを想定して、計算によって設定したものである。センサ検出値の設定では、量子化誤差の影響を知るために、いずれの波形図においても、センサ検出値の応答遅れを理想的な一次遅れであるものと仮定している。なお、
図8では、センサ検出値に対して量子化誤差による桁落ちを意図的に発生させている。予測演算では、時定数T=20[sec]とし、検出周期T
S=1[sec]とし、k=2とした。
【0096】
図8および
図9を対比すると、
図8では、センサ検出値が量子化誤差を含んでいることで、到達値y[n]に振動が現われていることが分かる。なお、到達値y[n]の振動は、kを小さくするに従って大きくなることが確認された。
【0097】
本実施の形態2では、このような量子化誤差の影響を低減するため、予測演算部310(
図3参照)に対して、予測演算された到達値の時間的推移を平滑化するためのローパスフィルタを適用する。
【0098】
図10は、実施の形態2に従う給湯装置のコントローラに含まれる予測演算部310の構成を示すブロック図である。なお、実施の形態2に従う給湯装置の概略構成は、予測演算部310の構成を除いて、実施の形態1に従う給湯装置100と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
【0099】
図10を参照して、予測演算部310は、予測演算器312と、ローパスフィルタ(Low Pass Filter:LPF)314とを含む。以下の説明では、予測演算器312によって演算された到達値をy[n]とし、LPF314を通過した到達値をu[n]とする。
【0100】
予測演算器312は、バーナセンサ160の検出値を受けて、検出値の到達値を予測演算する。具体的には、予測演算器312は、今回取得された検出値x[n]およびk周期前に取得された検出値x[n−k]を上記数式(y[n]=x[n]+β(x[n]−x[n−k]))に代入することにより、到達値y[n]を演算する。
【0101】
LPF314は、予測演算器312によって演算された到達値y[n]にフィルタリング処理を施すことによって、到達値y[n]の時間的推移を平滑化する。本実施の形態では、フィルタリング処理として、到達値y[n]の移動平均処理を実行する。移動平均処理では、到達値y[n]の指数移動平均値を演算する。
【0102】
(バーナセンサ出力の到達値の移動平均処理)
以下、LPF314が行なうバーナセンサ出力の到達値y[n]の指数移動平均処理について説明する。
【0103】
図10に示す予測演算部310は、
図11に示すようなブロック線図として表すことができる。
図11のブロック線図において、予測演算部310は、ステップ応答の逆応答である逆ステップ応答要素と、指数移動平均要素とが直列接続された系として表される。
【0104】
図中のX(z),Y(z),U(z)はそれぞれ、センサ検出値x[n]、到達値y[n]およびLPF通過後の到達値u[n]をZ変換したものである。また、HI(z)は逆ステップ応答要素の伝達関数を示し、Hlow(z)は指数移動平均要素の伝達関数を示し、H(z)は系全体の伝達関数を示している。H(z)は次式(13)で表される。
【0106】
ここで、LPF314における移動平均調整パラメータをLとすると、LPF314を通過した到達値u[n]は、次式(14)で表される(式(9)は上に同じ)。
【0108】
y[n]およびu[n]をそれぞれZ変換すると、Y(z)およびU(z)はそれぞれ、次式(15),(16)で表される。
【0110】
上記式(13)の関係式を用いると、U[z]は次式(17)で表される。
【0112】
上記式(17)を逆Z変換することにより、次式(18)が得られる。
【0114】
以下、LPF314を通過した到達値u[n]の波形図を例示する。
図12は、
図8に示した量子化誤差を含んだセンサ検出値の到達値y[n]をLPF314を通過させたときの到達値u[n]を示している。
【0115】
すなわち、
図12に示される到達値u[n]は、今回取得された検出値x[n]およびk周期前に取得された検出値x[n−k]を上記式(18)に代入することによって導出したものである。なお、演算では、時定数T=20[sec]とし、検出周期T
S=1[sec]とし、k=2とし、L=5とした。
【0116】
図12および
図8を対比すると、LPFを通過させることで、到達値の振動が抑えられていることが分かる。これによれば、量子化誤差の影響が低減されるため、火炎温度が上昇した時刻t11後の短時間で、正確な到達値を取得することが可能となる。
【0117】
図13は、
図5に示したセンサ検出値の到達値y[n]をLPF314を通過させたときの到達値u[n]を示している。
【0118】
図13には、給湯装置100の運転指令がオンされたときを時刻t0として、時刻t1にて燃焼動作がオンされたときのバーナセンサ160の検出値の波形および、センサ検出値から予測演算され、かつ、LPFを通過させた到達値の波形が示されている。なお、演算では、時定数T=22[sec]とし、検出周期T
S=1[sec]とし、k=3とし、L=5とした。
【0119】
図5および
図13を対比すると、時刻t1直後において見られた、到達値の一時的な増加が抑えられていることが分かる。また、全体的に到達値の振動も小さくなっている。したがって、
図13では、
図5に比べて、燃焼動作がオンされた時点から更に短時間で、正確な到達値を取得することができる。この結果、以下に述べるように、燃焼状態を正確に診断して燃焼改善処理を適切に実行することが可能となる。
【0120】
図14は、バーナセンサ出力の到達値を用いた燃焼状態の診断および燃焼改善処理を説明するための波形図である。
【0121】
図14には、給湯装置100の燃焼動作がオンされたときを時刻t0として、時刻t1にて、燃焼動作時に突風によって排気通路15(
図1)が閉塞状態となったときのバーナセンサ160の検出値の波形が示されている。
図14にはさらに、センサ検出値から予測演算され、かつ、LPFを通過した到達値の波形が示されている。
【0122】
排気通路15が閉塞状態になると、送風ファン40からの燃焼用空気の供給が妨げられることによって、低酸素状態が発生して燃焼状態を悪化させる場合がある。この燃焼状態の悪化に起因して時刻t1にて火炎温度が上昇すると、バーナセンサ160の検出値は、
図14に示されるように、時刻t1から上昇し始め、時間の遅れをもって火炎温度の上昇に追従する。
【0123】
一方、センサ検出値から予測演算される到達値は、センサ検出値と同様に時刻t1から上昇し始めるものの、センサ検出値よりも速い速度で変化する。
【0124】
ここで、燃焼状態の診断に用いる異常判定値が620[℃]に設定されているものとする。センサ検出値は、時刻t1よりも後の時刻t4において異常判定値を超えている。したがって、センサ検出値に基づいて燃焼状態の診断を行なった場合には、異常燃焼が発生した時点(時刻t1)から異常燃焼が検出される時点(時刻t4)までに、センサ固有の時定数に応じた長さの時間遅れが生じてしまう。
【0125】
これに対して、到達値は、時刻t4よりも早い時刻t3において異常判定値を超えている。よって、到達値に基づいて燃焼状態の診断を行なうことにより、異常燃焼が発生した時点(時刻t1)から異常燃焼が検出される時点(時刻t3)までの時間を短縮することができる。この結果、異常燃焼の発生後早急に燃焼改善処理を実行することができるため、給湯装置の安全性を向上させることが可能となる。
【0126】
以上説明したように、この発明の実施の形態2に従う燃焼装置によれば、バーナセンサの到達値の予測演算にLPFを適用することにより、センサ検出値の量子化誤差といった外乱がある場合においても、バーナセンサ出力の到達値を高精度に予測演算することができる。この予測演算された到達値に基づいて燃焼バーナ30における燃焼状態の診断および燃焼改善処理を実行することにより、燃焼状態を正確に診断して燃焼改善処理を適切に実行することが可能となる。
【0127】
なお、上記実施の形態2では、LPF314において移動平均処理を行なう構成について例示したが、予測演算器312により演算された到達値y[n]に対するフィルタリング処理は移動平均処理に限定されるものではなく、公知の種々のフィルタリング処理を適用し得る。また、移動平均処理として到達値y[n]の指数移動平均値を演算するものとしたが、指数移動平均値に代えて、単純移動平均値または加重移動平均値を演算するようにしてもよい。
【0128】
また、上記実施の形態1および2に従う燃焼装置では、燃焼バーナ30をガスバーナとしたが、燃焼バーナ30を、ガスバーナに代えて、たとえばオイルバーナとすることもできる。また、本発明に係る燃焼装置を含む給湯装置は、必ずしも給湯装置として構成されていなくてもよく、たとえば暖房用などの給湯装置として構成されることもできる。
【0129】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した範囲内ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。