特許第6693148号(P6693148)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6693148
(24)【登録日】2020年4月20日
(45)【発行日】2020年5月13日
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/18 20060101AFI20200427BHJP
   H02K 5/173 20060101ALI20200427BHJP
【FI】
   H02K1/18 Z
   H02K5/173 A
【請求項の数】11
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-14450(P2016-14450)
(22)【出願日】2016年1月28日
(65)【公開番号】特開2016-226254(P2016-226254A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2019年1月22日
(31)【優先権主張番号】特願2015-110891(P2015-110891)
(32)【優先日】2015年5月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】日本電産株式会社
(72)【発明者】
【氏名】廣川 剛士
(72)【発明者】
【氏名】水池 宏友
(72)【発明者】
【氏名】蓑田 強平
【審査官】 三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−124863(JP,A)
【文献】 特開2009−303428(JP,A)
【文献】 特開2006−158056(JP,A)
【文献】 特開2010−130831(JP,A)
【文献】 実開平02−057275(JP,U)
【文献】 特開2011−019356(JP,A)
【文献】 特開2009−201235(JP,A)
【文献】 実開昭55−019429(JP,U)
【文献】 特開平09−056092(JP,A)
【文献】 特開2011−036068(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0119348(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/18
H02K 5/173
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びる中心軸に沿って配置されたシャフトと、
ロータマグネットを有し前記シャフトとともに回転するロータ部と、
前記シャフトの外周面を囲む筒部および前記筒部の下端から径方向外側に広がる第1面を有するブラケットと、
前記筒部の内周面と前記シャフトの外周面との間に位置する軸受部と、
ステータコアおよびコイルを有し前記筒部の外周面を囲むステータ部と、を備え、
前記ステータコアは、環状のコアバックおよび前記コアバックの径方向外側に延びるティースを有し、
前記コアバックの内周面には、径方向内側に突出する複数の凸部が設けられ、
前記凸部の径方向内端は、前記筒部の外周面に接触し、
前記凸部の下面が、前記第1面に接触
前記凸部の内周面には径方向外側に向かって窪む溝部が位置しており、
前記ブラケットの筒部の外周面には径方向外側に向かって膨らむ膨出部が位置しており、
前記溝部と前記膨出部とは接触する、モータ。
【請求項2】
前記筒部の上側先端には、前記凸部の上面と接触するカシメ部が設けられている、請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記筒部の前記軸受部よりも軸方向上側の領域において、
前記筒部は、前記カシメ部と、前記カシメ部の下側に位置するカシメ部支持部と、前記カシメ部よりも軸方向下側に窪む窪部と、を有する、
請求項2に記載のモータ。
【請求項4】
前記ステータ部は、前記ステータコアと前記コイルとの間に位置する絶縁部を有し、
前記凸部の径方向内端は、金属面が露出している、請求項1〜3の何れか一項に記載の
モータ。
【請求項5】
前記凸部の軸方向長さは、前記コアバックの軸方向長さよりも短い、請求項1〜4の何れか一項に記載のモータ。
【請求項6】
前記凸部の上端は、前記コアバックの上端よりも、軸方向下側に位置する、請求項1〜5の何れか一項に記載のモータ。
【請求項7】
前記ロータ部は、前記ロータマグネットを保持するロータホルダと、前記ロータホルダの径方向内端と前記シャフトとを接続するロータハブと、をさらに有し、
前記ロータハブの軸方向下端は、前記コアバックの上端よりも軸方向下側に位置する、
請求項1〜6の何れか一項に記載のモータ。
【請求項8】
前記ステータコアは、軸方向に積層され互いに固定された複数のコア部を有し、前記コア部の少なくとも1つに前記凸部が設けられている、請求項5〜7の何れか一項に記載のモータ。
【請求項9】
複数の隣り合う前記凸部は、周方向に間隙を有する、請求項1に記載のモータ。
【請求項10】
前記コアバックの内周面には、前記凸部が、周方向等間隔に3つ設けられている、請求項1〜9の何れか一項に記載のモータ。
【請求項11】
前記筒部と、前記ステータ部とは、前記筒部の外周面と前記ステータ部との間に介在す接着剤により固定される、請求項1に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、アウターロータ型のモータが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平4−124881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的にモータを軽量化するために様々な工夫がなされている。一方で、様々な出力を必要とするモータに対して、ベアリングサイズを統一する等、部品を共通化することで低コスト化を図る試みがなされている。
【0005】
本発明の一つの態様は、汎用のベアリングを使用して低コスト化を図るとともに、軽量化したモータの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のモータの一つの態様は、上下方向に延びる中心軸に沿って配置されたシャフトと、ロータマグネットを有し前記シャフトとともに回転するロータ部と、前記シャフトの外周面を囲む筒部および前記筒部の下端から径方向外側に広がる第1面を有するブラケットと、前記筒部の内周面と前記シャフトの外周面との間に位置する軸受部と、ステータコアおよびコイルを有し前記筒部の外周面を囲むステータ部と、を備え、前記ステータコアは、環状のコアバックおよび前記コアバックの径方向外側に延びるティースを有し、前記コアバックの内周面には、径方向内側に突出する複数の凸部が設けられ、前記凸部の径方向内端は、前記筒部の外周面に接触し、前記凸部の下面が、前記第1面に接触し、前記凸部の内周面には径方向外側に向かって窪む溝部が位置しており、前記ブラケットの筒部の外周面には径方向外側に向かって膨らむ膨出部が位置しており、前記溝部と前記膨出部とは接触する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様によれば、汎用のベアリングを使用して低コスト化を図るとともに、軽量化したモータが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態のモータの断面図である。
図2図2は、第1実施形態のモータの一部の分解図である。
図3図3は、第1実施形態の回路基板および回路基板を固定するブラケットの平面図である。
図4図4は、第1実施形態のステータ部と、ステータ部が組み付けられた周辺部材の斜視図である。
図5図5は、第1実施形態の位置決め部材の斜視図である。
図6図6は、第2実施形態のステータ部と、ステータ部が組み付けられた周辺部材の斜視図である。
図7図7は、第3実施形態のブラケットと、ステータ部とが組みつけられた状態の斜視図である。
図8図8は、第4実施形態のモータの断面図である。
図9図9は、第4実施形態のステータの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るモータについて説明する。なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせる場合がある。
【0010】
また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、上下方向とする。X軸方向は、Z軸方向と直交する方向のうち図1の左右方向とする。Y軸方向は、X軸方向とZ軸方向との両方と直交する方向とする。
【0011】
また、特に断りのない限り、以下の説明においては、上下方向(Z軸方向)に延びる中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸Jを中心とする周方向、すなわち、中心軸Jの軸周りを単に「周方向」と呼ぶ。なお、上下方向(Z軸方向)は、中心軸Jの軸方向に相当する。
【0012】
なお、本明細書において、上下方向に延びる、とは、厳密に上下方向(Z軸方向)に延びる場合に加えて、上下方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。
また、本明細書において、径方向に延びる、とは、厳密に径方向、すなわち上下方向(Z軸方向)に対して垂直な方向に延びる場合に加えて、径方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。
【0013】
図1は、本実施形態のモータ1を示す断面図である。また、図2は、モータ1の一部の分解図である。モータ1は、アウターロータ式のブラシレスモータである。
【0014】
図1に示すように、モータ1は、シャフト10と、ロータ部20と、ブラケット50と、上側軸受部(軸受部)41と、下側軸受部42と、ステータ部30と、位置決め部材70と、回路基板60と、を備える。
シャフト10とロータ部20とは互いに固定され、一体となって中心軸Jの周りを回転する。また、ブラケット50、ステータ部30、位置決め部材70および回路基板60は、互いに固定されている。ブラケット50には、上側軸受部41および下側軸受部42を保持する軸受保持孔59が設けられている。ブラケット50は、上側軸受部41および下側軸受部42を介して、シャフト10を支持する。
モータ1は、外部装置から入力される駆動電流がステータ部30に供給されることで、ステータ部30に磁場を発生させ、この磁場によってロータ部20およびシャフト10を中心軸J周りに回転させる。
以下、各部品について詳細に説明する。
【0015】
[シャフト]
図1に示すように、シャフト10は、上下方向(Z軸方向)に延びる中心軸Jに沿って配置された円柱状の軸である。シャフト10の中心は、中心軸Jに一致する。シャフト10は、上側軸受部41および下側軸受部42を介してブラケット50に回転可能に支持されている。
【0016】
[ロータ部]
ロータ部20は、シャフト10に固定され、シャフト10とともに中心軸Jを中心として回転する。ロータ部20は、筒状のロータホルダ24と、ロータホルダ24の内周面24cに固定されたロータマグネット25と、ロータハブ26とを有している。
【0017】
ロータホルダ24は、上下方向に延びる円筒形状の筒部24aと筒部24a上端から径方向内側に延びる天板部24bを有する。天板部24bの中央には、上下方向に貫通する中央孔24dが設けられている。
【0018】
ロータマグネット25は、筒部24aの内周面24cに接着固定されてロータホルダ24に保持されている。ロータマグネット25は、ロータホルダ24の周方向に異なる磁極を配列する永久磁石である。
【0019】
ロータハブ26は、天板部24bの中央孔24d(すなわち、ロータホルダ24の径方向内端)とシャフト10とを接続する。
ロータハブ26は、円筒状のシャフト保持部26aと、シャフト保持部26aの外周から径方向外側に延びるフランジ部26bと、カシメ加工により変形して成形されたハブ接触部26cとを有する。
シャフト保持部26aには、シャフト10が圧入される。シャフト保持部26aの軸方向下端(すなわち、ロータハブ26の軸方向下端)は、ステータ部30のコアバック32の上端よりも軸方向下側に位置する。ロータハブ26をコアバック32の上端よりも軸方向下側まで延伸させることによってロータハブ26とシャフト10との締結長を長くできる。これにより、ロータハブ26とシャフト10とを強固に締結できる。
フランジ部26bの上面は、ロータホルダ24の天板部24bの下面に接触する。ハブ接触部26cは、径方向外側に向かって成形され、天板部24bの上面に接触する。フランジ部26bとハブ接触部26cとは、天板部24bを上下に挟み込んで、ロータハブ26とロータホルダ24とを固定する。
【0020】
[ブラケット]
図1および図2に示すように、ブラケット50は、上側筒部(筒部)51と、下側筒部52と、下側筒部52の外周面から径方向外側に広がるベース部53とを有する。
上側筒部51および下側筒部52は、中心軸Jに沿って延びる円筒形状を有する。上側筒部51および下側筒部52は、シャフト10の外周面を囲む。下側筒部52は、上側筒部51より外径が大きく、上側筒部51の下側に位置する。上側筒部51と下側筒部52との境界には、上側を向く段差面としての第1面52aが設けられている。すなわち、ブラケット50は、上側筒部51の下端から径方向外側に広がる第1面52aを有する。
【0021】
図1に示すように、上側筒部51の内周面と下側筒部52の内周面とは連通して上下方向に貫通する軸受保持孔59を構成する。軸受保持孔59の上下方向の中程には、径方向内側に突出して内径を狭める内側突出部59aが設けられている。
軸受保持孔59において、内側突出部59aの上側には、上側軸受部41が挿入される。内側突出部59aと上側軸受部41との上下方向の隙間には、図示略のウェーブワッシャが挿入され、上側軸受部41に予圧を付与する。
軸受保持孔59において、内側突出部59aの下側には、下側軸受部42が接着固定されている。組み立て工程において、下側軸受部42は、軸受保持孔59の内周面に接着剤を塗布した後に軸受保持孔59に挿入される。内側突出部59aの下面59bは、下側軸受部42の外輪の上面と接触する。
【0022】
図1に示すように、ベース部53は、上側筒部51の下側に位置し、下側筒部52の外周面から径方向外側に広がる。
図2に示すように、ベース部53は、平板部53aと、縁部53bと、3つの第1台座部53dと、3つの第2台座部53cと、3つのリブ53fと、を有する。
【0023】
平板部53aは、平面視において円形状の板である。平板部53aの板面は、中心軸Jと直交する。
縁部53bは、平板部53aの周縁から上側に突出する。
【0024】
図2に示すように、3つの第1台座部53dは、それぞれ平板部53aから上側に突出する。また、3つの第1台座部53dは、それぞれ下側筒部52の外周面から径方向外側に張り出した形状を有する。3つの第1台座部53dは、中心軸Jを基準として回転対称となる位置にそれぞれ配置されている。3つの第1台座部53dの上面には、それぞれ第1の穴54が設けられている。すなわち、ベース部53は、第1の穴54を有する。第1の穴54は、第1台座部53dの上面から下側に延びる。第1の穴54には、後段において説明する位置決め部材70の下側突起72が挿入される。
【0025】
図2に示すように、3つの第2台座部53cは、それぞれ平板部53aから上側に突出する。また、3つの第2台座部53cは、それぞれ縁部53bの内側面から径方向内側に張り出した形状を有する。第2台座部53cは、第1台座部53dよりも径方向外側に位置する。第2台座部53cの軸方向上端は、縁部53bの軸方向上端と一致し、回路基板60を搭載する第2面53eを構成する。また、3つの第2台座部53cには、それぞれ上側に延びるボス部56a、57a、58aが設けられている。第2面53eに回路基板60を搭載することで、ボス部56a、57a、58aは、回路基板60に設けられた3つの固定孔66にそれぞれ挿入される。さらにボス部56a、57a、58aは、カシメ加工により第1固定部56、第2固定部57および第3固定部58を形成し、回路基板60を第2面53eに固定する(図3参照)。すなわち、第2台座部53cは、上下方向から見た際に、第1固定部56、第2固定部57および第3固定部58と重なり、且つ回路基板60と固定される。このとき回路基板60の下面は、第2台座部53cの上端である第2面53eに接触する。
【0026】
図2に示すように、第2台座部53cには、第2面53eから上下方向に貫通するベース孔53gが設けられている。後述するように、回路基板60の上面(基板面62a)には、回転センサ63a、63b、63cが実装される。ベース孔53gは、軸方向から見て、回転センサ63a、63b、63cと重なる位置に設けられている。このため、回路基板60の下面は、平面視において回転センサ63a、63b、63cを囲む領域で、第2台座部53cと接触する。第2台座部53cは、回転センサ63a、63b、63cを回路基板60の下面側から安定して支持することができ、回転センサ63a、63b、63cの検出精度を保つ。
【0027】
上述したように、回路基板60は、第2台座部53cの第2面53eにおいてベース部53と固定されている。したがって、基板本体62の下面と平板部53aとの間には、図1に示すように、上下方向の隙間としての空間Bが設けられている。基板本体62の下面には、コイル線35aが半田固定される。空間Bを設けることで、半田のための上下寸法を十分に確保できる。また、コンデンサ、インバータ等の高さ寸法の比較的大きい実装部品を基板本体62の下面に実装してもよい。この場合、空間Bは、これらの実装部品の上下寸法を確保する。
【0028】
図2に示すように、リブ53fは、平板部53aから上側に突出する。また、3つのリブ53fは、下側筒部52の外周面から第2台座部53cに向かって放射状に延び、下側筒部52と第2台座部53cとを繋ぐ。リブ53fは、ベース部53の強度を高めることができる。特に、リブ53fが、下側筒部52と第2台座部53cとを繋ぐことで、第2台座部53cの第2面53eが上下方向に移動するようなベース部53の変形を効果的に抑制できる。これにより、ベース部53は、第2台座部53c上で回路基板60に実装されている回転センサ63a、63b、63cの検出精度を保つことができる。
【0029】
[上側軸受部および下側軸受部]
上側軸受部41および下側軸受部42は、ブラケット50に対してシャフト10を回転可能に支持する。図1に示すように、上側軸受部41は、径方向において上側筒部51の内周面とシャフト10の外周面との間に位置する。同様に下側軸受部42は、径方向において下側筒部52の内周面とシャフト10の外周面との間に位置する。上側軸受部41および下側軸受部42の内輪には、シャフト10が圧入されている。上側軸受部41の外輪は、軸受保持孔59にすきま嵌めにより嵌合されており、ウェーブワッシャ(図示略)により上側に予圧が加えられている。また、下側軸受部42の外輪は、軸受保持孔59に接着固定されている。
【0030】
[回路基板]
回路基板60は、各種電子部品を実装してモータ駆動回路を構成する。図1に示すように、回路基板60は、中心軸Jと直交する基板面62aを有する。回路基板60は、上下方向においてステータ部30とブラケット50のベース部53との間に位置する。
【0031】
図3は、回路基板60および回路基板60を固定するブラケット50の平面図である。図3に示すように、回路基板60は、基板本体62と、基板本体62の基板面62aに設けられた配線接続部65、3つの回転センサ63a、63b、63c、並びに第1固定部56、第2固定部57および第3固定部58を有する。
【0032】
基板本体62は、平面視において円形状を有する円形部62bと円形部62bの一部から径方向外側に矩形状に延びる矩形部62cを有する。
基板本体62の円形部62bの中央には、中央孔69が設けられている。中央孔69には、下側筒部52が挿入される。中央孔69は、径方向外側に延びる切り欠きとして3つの貫通孔61が設けられている。貫通孔61は、上下方向に貫通する。また、貫通孔61は、上下方向からみて、ブラケット50のベース部53に設けられた第1の穴54と重なる。貫通孔61には、後段において説明する位置決め部材70の下側突起72が挿入される。
【0033】
基板本体62には、中央孔69の周囲に配置され軸方向に貫通する6つのコイル線貫通孔68が設けられている。コイル線貫通孔68には、ステータ部30のコイル35から延びるコイル線35aが挿入される。コイル線35aは、基板本体62の下面に誘導されて半田固定される。
【0034】
基板本体62には、周縁部近傍に上下方向に貫通する3つの固定孔66が設けられている。3つの固定孔66は、ベース部53のボス部56a、57a、58aがそれぞれ挿入され、カシメられることで、第1固定部56、第2固定部57および第3固定部58を構成する。なお、本実施形態の第1固定部56、第2固定部57および第3固定部58は、接触部であるが、ネジ固定などの他の固定手段による固定部であってもよい。
【0035】
基板本体62の矩形部62cには、配線接続部65が設けられている。配線接続部65は、周方向に幅を有する。配線接続部65には、複数本の外部配線9が半田付けされて接続される。回路基板60には、外部配線9を介して、外部装置が接続され、外部装置から電源および制御信号が供給される。
【0036】
回転センサ63a、63b、63cは、基板本体62の上側の面である基板面62aに取り付けられる。回転センサ63aは、ロータマグネット25の直下に位置し、ロータマグネット25と上下方向に対向する。3つの回転センサ63a、63b、63cは、周方向に沿って等間隔(すなわち、中心軸Jを中心として120°間隔)に並んで配置されている。この構成によって、3つの回転センサ63a、63b、63cの精度を保つことができる。なお、3つの回転センサ63a、63b、63cの互いの周方向角度は、必ずしも全て等しくなくてもよいが、少なくとも2つの周方向角度が等しいことが好ましい。例えば、回転センサ63aと回転センサ63bとの間の周方向角度と、回転センサ63bと回転センサ63cとの間の周方向角度とが等しいことが好ましい。回転センサ63a、63b、63cは、例えば、ホール素子である。
【0037】
第1固定部56、第2固定部57および第3固定部58により、回路基板60は、ベース部53に固定される。第1固定部56、第2固定部57および第3固定部58は、径方向において、ステータ部30の外端(外端面31a)よりも外側、且つロータホルダ24の外端24eよりも内側に位置する。
【0038】
第1固定部56、第2固定部57および第3固定部58をステータ部30の外端(外端面31a)よりも外側に配置することで、内側の領域を基板面62aの配線パターン領域として広く確保できる。加えて、組み立て工程において、ブラケット50にステータ部30を組み付けた後に、第1固定部56、第2固定部57および第3固定部58を形成するカシメ加工を行うことができる。このため、組み立て工程を簡素化しやすい。
【0039】
また、第1固定部56、第2固定部57および第3固定部58をロータホルダ24の外端24eよりも内側に配置することで、基板本体62の円形部62bの径方向寸法を小さくすることができ、モータ1の小型化に寄与できる。
【0040】
さらに、第1固定部56、第2固定部57および第3固定部58は、ステータ部30の外端面31aよりも外側、且つロータホルダ24の外端24eよりも内側に配置することで、ロータマグネット25の直下近傍に配置される。これにより、第1固定部56、第2固定部57および第3固定部58を通過する仮想円VC上には、回転センサ63a、63b、63cが配置されることとなる。基板本体62は、第1固定部56、第2固定部57および第3固定部58によりベース部53の第2面53eに押し当てられることで、第1固定部56、第2固定部57および第3固定部58が通過する仮想円VC上で基板面62aの高さ精度が安定しやすい。仮想円VC上に回転センサ63a、63b、63cを配置することで、回転センサ63a、63b、63cの精度を保つことができる。
【0041】
第1固定部56、第2固定部57および第3固定部58の周方向近傍には、それぞれ異なる回転センサ63a、63b、63cが位置する。第1固定部56、第2固定部57および第3固定部58の近傍では、基板本体62がベース部53の第2面53eに押し付けられて、基板面62aの高さ精度が安定するため、回転センサ63a、63b、63cの精度を保つことができる。
なお、3つの回転センサ63a、63b、63cのうち、1つ(少なくとも1つ)が、第1固定部56、第2固定部57および第3固定部58の周方向近傍のうち何れかの周方向近傍に位置していてもよい。3つの回転センサ63a、63b、63cは、互いに検出結果を補完し合って回転を計測する。3つの回転センサ63a、63b、63cの少なくとも1つが第1固定部56、第2固定部57および第3固定部58のうち何れかの周方向近傍に位置することで、回転センサ63a、63b、63cの検出結果の精度を高める一定の効果を奏する。
本明細書において、回転センサ63a、63b、63cと第1固定部56、第2固定部57および第3固定部58と周方向位置に関する「近傍」とは、一方に対する他方の周方向位置が、中心軸Jを中心として15°以下の範囲に設けられることを意味する。
【0042】
第1固定部56は、周方向において、配線接続部65の一方側の縁である一方縁65aの近傍に位置する。第2固定部57は、周方向において、配線接続部65の他方側の縁である他方縁65bの近傍に位置する。これにより、配線接続部65から基板本体62の板厚方向に荷重が加わっても基板本体62の変形および破損を抑制できる。なお、周方向における一方側とは、図3における左回転方向の側方側を意味し、周方向における他方側とは、図3における右回転方向の側方側を意味する。
本明細書において、第1固定部56又は第2固定部57と配線接続部65の一方縁65a又は他方縁65bとの周方向位置に関する「近傍」とは、一方に対する他方の周方向位置が、中心軸Jを中心として30°以下の範囲に設けられることを意味する。
【0043】
第3固定部58は、周方向において、第1固定部56よりも一方側(図3における左回転方向)且つ第2固定部57よりも他方側(図3における右回転方向)の第1の領域A1に位置する。図3に示すように、基板本体62の基板面62aに第1固定部56と中心軸Jとを結ぶ第1の直線L1および第2固定部57と中心軸Jとを結ぶ第2の直線L2を想定する。第1の領域A1は、第1の直線L1および第2の直線L2により区画される2つの領域のうち、配線接続部65を含まない領域である。第1の領域A1に設けられた第3固定部58は、配線接続部65から十分に離間して、第1固定部56および第2固定部57とともに基板本体62をバランスよく固定する。
【0044】
また、第3固定部58は、平面視において中心軸Jに対し配線接続部65の反対側の第2の領域A2に位置することが好ましい。図3に示すように、基板本体62の基板面62aに第3の直線L3を想定する。第3の直線L3は、中心軸Jを通過し、且つ配線接続部65の周方向の一方縁65aと他方縁65bと繋ぐ直線と平行な直線である。第2の領域A2は、第3の直線L3が区画する基板面62a上の2つの領域のうち、配線接続部65を含まない領域である。第2の領域A2に第3固定部58を設けることで、中心軸Jに対してバランスよく各固定部を配置できる。したがって、第1固定部56、第2固定部57および第3固定部58は、基板本体62に過度の負荷を加えることなく基板本体62をベース部53に固定できる。したがって、第1固定部56、第2固定部57および第3固定部58は、板厚が薄い基板本体62を用いた場合であっても、固定に伴う基板本体62の損傷を抑制できる。
【0045】
[ステータ部]
図1に示すように、ステータ部30は、上側筒部51の外周面51bを径方向から囲む。ステータ部30は、ステータコア34およびコイル35を有する。また、ステータ部30は、ステータコア34とコイル35との間に位置する絶縁部39を有する。
【0046】
ステータコア34は、環状のコアバック32およびコアバック32の径方向外側に延びる12個のティース31を有する。12個のティース31には、それぞれコイル線35aが巻き付けられコイル35を構成する。
【0047】
図4に、ステータ部30と、ステータ部30が組み付けられるブラケット50および周辺部材の斜視図を示す。なお、図4において、コイル35の図示を省略する。
図5に示すように、コアバック32の内周面32aには、径方向内側に突出する3つの凸部33が設けられている。それぞれの凸部33は、周方向等間隔に配置されている。
【0048】
凸部33の径方向内端33cは、平面視において上側筒部51の外周面51bに沿った円弧形状を有している。凸部33の径方向内端33cは、上側筒部51の外周面51bに接触する。これにより、ブラケット50に対するステータコア34の径方向位置が決まる。
【0049】
図1に示すように、凸部33の下面33aは、上側筒部51と下側筒部52との間に位置する第1面52aに接触する。さらに上側筒部51の上側先端には、凸部33の上面33bと接触する接触部51aが設けられ、ステータコア34がブラケット50に固定される。凸部33の下面33aが第1面52aに接触することで、ブラケット50に対するステータコア34の高さ方向位置が決まる。
【0050】
凸部33には、上下方向に貫通する第2の穴36が設けられている。すなわち、ステータコア34は、第2の穴36を有する。図1に示すように、第2の穴36には、後段において説明する位置決め部材70の上側突起71が挿入される。これにより、ブラケット50に対するステータコア34の周方向位置が決まる。凸部33には、コイル35通電時に磁路がほとんど発生しない。このため、凸部33に第2の穴36を設けることで、出力に対する影響を少なくして、ステータコア34の周方向の位置決めを行うことができる。なお、第2の穴36は、貫通孔であってもよく、本実施形態においては、図2に示すように第2の穴36は貫通孔である。
【0051】
本実施形態によれば、凸部33を設けることで、上側軸受部41、下側軸受部42、およびブラケット50の部品の共通化が容易となる。一般的にモータの設計においては、必要な出力に応じたコアバックの内径に合わせて、上側筒部の外径および内径を設計し、さらに上側筒部の内径に合わせて軸受部が選定されていた。このため、モータ毎に、異なるブラケットおよび軸受部を用意する必要があった。これに対し本実施形態によれば、コアバック32の内周面32aに凸部33を設けることで、上側軸受部41、下側軸受部42およびブラケット50を、コアバック32の内径が異なる様々な出力のモータにおいて共通して使用できる。これにより、モータ1の低コスト化が可能となる。
また、コアバック32の内周面32aに凸部33が設けられることは、コアバック32の内周面全体が上側筒部51に接触する場合に比較して、肉抜きが行われたことを意味する。したがって、凸部33を設けることにより、ステータ部30を軽量化することができ、そして、モータ1を軽量化することができる。
【0052】
本実施形態において凸部33は、周方向等間隔に3つ設けられている。このため、モータ1は、凸部33とブラケット50の上側筒部51との接触点が周方向等間隔に3ヶ所設けられるので、ブラケット50に対するステータコア34の径方向の位置決めが安定する。加えて、モータ1は、凸部33を4つ以上設けたモータと比較して重量を軽くすることができる。ただし、凸部33は、必ず3つ設けられる必要はなく、4つ以上設けられても良い。特に、凸部33の数がモータ1の振動を低減することに好ましい場合は、4つ以上の凸部33を設けても良い。例えば、本実施形態においては、ステータコア34は12個のスロットを有し、ロータマグネット25は14極の磁極を有するので、それらのスロット数や磁極数に対して互いに素となるように、凸部の数を5個や11個等にしても良い。この構成によって、複数の凸部33が、ステータコア34のスロットや、ロータマグネット25の磁極と共振することを防ぐことができる。
【0053】
図4に示すように、ステータコア34は、軸方向に積層され互いに固定された2つのコア部(上側コア部34Aおよび下側コア部34B)を有する。凸部33は、上側コア部34Aおよび下側コア部34Bの少なくとも一つに設けられている。凸部33は、下側コア部34Bのみに設けられ、上側コア部34Aには、設けられていない。上側コア部34Aは、凸部33を有さない点を除いて、下側コア部34Bと同形状を有している。
凸部33は、上側コア部34Aおよび下側コア部34Bの少なくとも一つに設けられているために、凸部33の軸方向長さは、コアバック32の軸方向長さよりも短い。コアバック32には、コイル35通電時に磁路が発生するが、凸部33には、磁路がほとんど発生せず、軸方向長さを短くしても、出力に対する影響が少ない。このため、凸部33の軸方向長さが短いことで、出力に影響を与えずモータ1の軽量化に寄与できる。
また、図1に示すように、凸部33が下側コア部34Bのみに設けられているために、凸部33の上端は、コアバック32の上端よりも、軸方向下側に位置する。したがって、上側筒部51の接触部51aの軸方向位置をコアバック32の上端より下側に配置して、上側筒部51の軸方向長さを短くして、モータ1の軽量化に寄与できる。加えて、上側筒部51の上側の領域において、ロータハブ26の軸方向下端を下側に延伸させロータハブ26とシャフト10との締結長を長くすることができる。
なお、本実施形態では、ステータコア34は、2つのコア部(上側コア部34Aおよび下側コア部34B)を有する場合を例示したが、3つ以上のコア部を有していてもよい。ステータコア34が、3つ以上のコア部を有する場合には、コア部の少なくとも1つに凸部33が設けられていればよい。この場合、一番下に積層されるコア部が凸部33を有していることが好ましい。
【0054】
図4にドット模様で強調して示されているように、絶縁部39は、ステータコア34の外面に設けられている。絶縁部39は、ステータコア34とコイル35との間に位置する。よって、絶縁部39は、ステータコア34とコイル35との絶縁を確保する。本実施形態の絶縁部39は、ステータコア34の外面に施された紛体塗装である。絶縁部39は、ティース31の径方向の外端面31a並びにコアバック32の内周面32aおよび凸部33をマスクした状態で塗布され定着される。したがって、ティース31の外端面31a並びにコアバック32の内周面32aおよび凸部33の外面は、絶縁部39に覆われておらず、金属面が露出している。図1に示すように、ティース31の外端面31aは、ロータ部20のロータマグネット25に微小な隙間を介して対向する。外端面31aに絶縁部39を設けないことで、外端面31aとロータマグネット25との干渉を抑制できる。また、図1に示すように、凸部33の下面33aは、ブラケット50の第1面52aに接触し、ブラケット50に対するステータコア34の軸方向の位置を決める。同様に、凸部33の径方向内端33cは、上側筒部51の外周面51bに接触し、ブラケット50に対するステータコア34の径方向の位置を決める。凸部33の外面に絶縁部39を設けず金属面を露出させている。つまり、凸部33の径方向内端は、金属面が露出している。この構成によって、ステータコア34の上下方向および径方向の位置決めの精度を高めることができる。
なお、ステータ部30は、絶縁部39に代えて、樹脂材料からなるインシュレータを有していてもよい。この場合であっても、インシュレータが、ステータコア34の凸部33の径方向内端33cおよび凸部33の下面33aを覆わない構成とすることが好ましい。
【0055】
[位置決め部材]
図1に示すように、位置決め部材70は、上下方向においてステータ部30と回路基板60との間に位置する。位置決め部材70は、ステータコア34、回路基板60およびブラケット50の周方向の位置決めを行う。
【0056】
図5は、位置決め部材70の斜視図である。位置決め部材70は、中心軸Jを囲む環状の本体部73と、本体部73の外周面から径方向外側に延びる板状部74と、3つの上側突起71と、3つの下側突起72とを有する。
【0057】
上側突起71は、本体部73の上面から上に延びる。上側突起71は、ステータコア34の第2の穴36に挿入される。上側突起71は、第2の穴36に嵌合して、位置決め部材70とステータコア34との周方向の相対的な移動を制限する。
【0058】
下側突起72は、本体部73の下面から下に延びる。下側突起72は、回路基板60の貫通孔61およびベース部53の第1の穴54に挿入される。下側突起72は、回路基板60の貫通孔61を通過し、ベース部53の第1の穴54に挿入される。下側突起72は、径方向に延びる切り欠きとしての貫通孔61に挿入されることで、位置決め部材70と回路基板60との周方向の相対的な移動を制限する。同様に、下側突起72は、第1の穴54に嵌合して、位置決め部材70とブラケット50との周方向の相対的な移動を制限する。
【0059】
本実施形態の下側突起72は、回路基板60の貫通孔61を通過するとともに、ベース部53の第1の穴54に挿入される。これにより、回路基板60の貫通孔61とベース部53の第1の穴54とを別々の下側突起で固定する場合と比較して、位置決め部材70を簡素に構成して回路基板60とベース部53とを周方向に位置決めできる。
【0060】
3つの上側突起71は、中心軸Jを中心とする円周状の周方向に沿って等間隔(すなわち、中心軸Jを中心として120°間隔)に配置されている。同様に、3つの下側突起72は、中心軸Jを中心とする円周状の周方向に沿って等間隔に配置されている。本実施形態の上側突起71と下側突起72の周方向位置は、互いに一致しているが、必ずしも一致する必要は無い。
【0061】
図1に示すように、本実施形態の上側突起71は、下側突起72に対して、径方向内側に位置している。すなわち、上側突起71は、径方向内側に寄せて配置されている。上側突起71が挿入される第2の穴36は、磁路への影響を軽減するためにコアバック32の径方向内側に寄せて配置することが望ましい。上側突起71とともに第2の穴36を径方向内側に寄せて配置することで、モータ1の出力に対する第2の穴36の影響は、小さくできる。
【0062】
図5に示すように、本実施形態の上側突起71は円柱形状を有し、第2の穴36は上側突起71の横断面形状と一致する円形状を有する。同様に、本実施形態において、下側突起72は円柱形状を有し、第1の穴54は下側突起72の横断面形状と一致する円形状を有する。さらに、貫通孔61は、下側突起72を三方向から囲む切り欠きである。しかしながら、上側突起71および下側突起72、並びに第1の穴54、第2の穴36、貫通孔61の形状は、本実施形態に限定されない。これらは、周方向の相対的な移動を制限するものであればよく、例えば、第1の穴54および第2の穴36は、径方向に延びる長孔であってもよい。
【0063】
位置決め部材70は、3つ以上の上側突起71を有することが好ましい。また、ステータコア34には、上側突起71がそれぞれ挿入される3つ以上の第2の穴36が設けられることが好ましい。同様に、位置決め部材70は、3つ以上の下側突起72を有することが好ましい。また、回路基板60には、3つ以上の貫通孔61が設けられ、ベース部53には3つ以上の第1の穴54が設けられ、それぞれ下側突起72が挿入されることが好ましい。このように構成することで、3点以上で中心軸Jを中心とする周方向の安定した位置決めを実現できる。
【0064】
板状部74は、本体部73の外周面の全周に設けられたフランジである。板状部74は、周方向に間隔をあけて設けられた6つの切欠(コイル線支持部)75を有する。つまり、位置決め部材70は、本体部73の外周面に位置する複数の切欠(コイル線支持部)75を有する。切欠75は、中心軸Jに対して周方向に等間隔で配置されている。切欠75は、板状部74の外周縁に径方向外側に向けて開口する。切欠75は、平面視において鉤型形状を有する。切欠75は、板状部74の外周縁から径方向内側に延びる径方向部75aと、径方向部75aの内端から周方向一方側に延びる周方向部75bとを有する。また、周方向部75bには、平面視において切欠の幅をコイル線35aの線径以下に狭める抜け止め突起75cが設けられている。すなわち、切欠75は、抜け止め突起75cを有する。
【0065】
切欠75は、ステータ部30のコイル35から回路基板60に延びるコイル線35aを支持する。切欠75がコイル線35aを支持することで、組み立て工程において、複数のコイル線35aの引き回しが容易となる。
【0066】
組み立て工程において、コイル線35aは、板状部74の外周側から切欠75の径方向部75aに挿入され、さらに周方向部75bに誘導される。コイル線35aは、周方向部75bに誘導される際に、抜け止め突起75cを乗り越えて、切欠75の内部に支持された状態となる。抜け止め突起75cが設けられていることで、切欠75の内部からコイル線35aが離脱し難くできる。
【0067】
切欠75の周方向部75bは、平面視で基板本体62に設けられたコイル線貫通孔68に重なる位置に設けられている。コイル35から下側に延びるコイル線35aは、切欠75に支持され、且つコイル線貫通孔68を貫通し、回路基板60の下面において、半田固定されている。周方向部75bが、コイル線貫通孔68に重なることにより、切欠75の周方向部75bに支持されたコイル線35aは、下側に直線的に延びてコイル線貫通孔68に挿入される。したがって、切欠75に支持されたコイル線35aの弛みを抑制できる。
【0068】
本実施形態の位置決め部材70は、コイル線支持部として切欠75が設けられているが、コイル線35aを支持できるものであれば、コイル線支持部は切欠75に限定されない。例えば、コイル線支持部として、本体部73の外周面から径方向外側に突出してコイル線35aを把持する爪が設けられていてもよい。
【0069】
図5に示すように、板状部74の軸方向長さは、本体部73の軸方向長さよりも短い。また、図1に示すように、板状部74とステータコア34との軸方向距離D1は、板状部74と回路基板60との軸方向距離D2より長い。これにより、ステータコア34と板状部74との距離を確保して、板状部74の切欠75にコイル線35aを挿入する作業の容易性を高めることができる。また、コイル35と、板状部74とが接触することを低減できる。加えて、板状部74と回路基板60との距離を近づけて、切欠75から回路基板60に、コイル線35aを弛みなく引きわしやすくなる。これにより、回路基板60へのコイル線35aの半田付け作業の容易性が高まる。
【0070】
[組み立て手順]
本実施形態のモータ1の組み立て手順の一例を、図1を基に説明する。
まず、上側コア部34Aと下側コア部34Bを上下方向に積層して、溶接などにより互いに固定してステータコア34を作製する。
次いで、ステータコア34の外面に紛体塗装を施して絶縁部39を形成する。
次いで、ステータコア34のティース31にコイル線35aを巻き付けてコイル35を構成することで、ステータ部30を作製する。
【0071】
次いで、ステータ部30に位置決め部材70を取り付ける。具体的には、ステータコア34の第2の穴36に、位置決め部材70の上側突起71を挿入するとともに、図5に示すようにコイル線35aを位置決め部材70の切欠75に挿入する。
【0072】
次いで、位置決め部材70の下側突起72を回路基板60の貫通孔61に挿入する。また、コイル線35aの先端を基板本体62のコイル線貫通孔68(図2参照)に挿入し、基板の下面で半田付けする。このとき、コイル線35aが切欠75により支持されているために、コイル線35aのコイル線貫通孔68への挿入が容易となる。
【0073】
次いで、ブラケット50を組み付ける。ブラケット50の上側筒部51をステータ部30に挿入する。このとき、上側筒部51の外周面51bを凸部33の径方向内端33cに接触させ、凸部33の下面33aをブラケット50の第1面52aに接触させる。また、同時に、位置決め部材70の下側突起72をベース部53の第1の穴54に挿入する。加えて、同時に、図2に示すブラケット50のボス部56a、57a、58aを、基板本体の固定孔66に挿入する。
【0074】
次いで、ブラケット50の上側筒部51の先端をカシメ加工して接触部51aを形成し、ブラケット50とステータ部30とを固定する。なお、ブラケット50には、予め下側軸受部42を組み付けておく。
【0075】
次いで、ブラケット50のボス部56a、57a、58aの先端をカシメ加工して、第1固定部56、第2固定部57および第3固定部58を形成する。ボス部56a、57a、58aは、平面視においてステータ部30の外端(外端面31a)よりも外側に配置されている。このため、上方からカシメ工具をボス部56a、57a、58aに当てて容易にカシメ工程を行うことができる。カシメ加工により第1固定部56、第2固定部57および第3固定部58が形成されることでブラケット50と回路基板60とが固定される。
上述の手順を経て、ステータ部側の半組品が作製される。
【0076】
一方で、ロータ部側の半組品を作製する。ロータホルダ24に未着磁のロータマグネット25を接着固定する。
次いで、ロータホルダ24にロータハブ26を組み付けてカシメ加工により固定し、さらに、ロータハブ26にシャフト10を圧入する。
次いで、ロータマグネット25に着磁する。
次いで、シャフト10に上側軸受部41を圧入する。
以上の手順を経て、ロータ部側の半組品が作製される。
【0077】
次に、ステータ部側の半組品にロータ部側の半組品を組み付ける。この組み付け工程は、シャフト10を下側軸受部42に圧入することでなされる。
以上の手順を経てモータ1の組み立てが完了する。
【0078】
[変形例1]
次に、上述したモータ1に採用可能な、変形例1(第2実施形態)のステータ部130について図6を基に説明する。なお、上述の実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
図6は、ステータ部130と、ステータ部130が組み付けられるブラケット50および周辺部材の斜視図である。なお、図6において、ステータ部130のコイルの図示を省略する。ステータ部130は、上述の実施形態と同様に、ステータコア134と、コイル(図示略)と、ステータコア134の外面に設けられた絶縁部139と、を有する。ステータコア134は、環状のコアバック132およびコアバック132の径方向外側に延びる12個のティース131を有する。コアバック132の内周面132aには、径方向内側に突出する3つの凸部133が設けられている。
【0079】
上述の実施形態と比較して、本変形例のステータ部130は、ステータコア134が、複数のコア部を有していない点が異なる。本変形例のステータコア134は、上述の実施形態の下側コア部34Bと同一形状を有する。したがって本変形例のステータコア134は、コア部を1層のみ積層した構成と説明できる。
【0080】
本変形例のステータ部130を採用したモータは、上述の実施形態と比較して、ステータコア134の軸方向寸法が小さいため、ティース131に巻き付けられるコイルの巻径も小さくなる。したがって、本変形例のモータは、上述の実施形態と比較して、低出力であるが、一方でステータコア134が軽量であるためモータ全体としても軽量である。また、変形例のモータは、ステータ部130の軸方向寸法が小さいため、軸方向寸法を小さくできる。本変形例および上述の実施形態によれば、ステータコアを構成するコア部の積層数を変えることで、ブラケット50などの部品を共通化しつつ、出力および重量を調整したモータを容易に構成することができる。
【0081】
[変形例2]
次に、上述したモータ1に採用可能な、変形例2(第3実施形態)のブラケット50およびステータ部30について図7を基に説明する。なお、上述の実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。また、図7ではコイルの図示を省略している。
【0082】
図7に示すように、ブラケット50における上側筒部51は、中心軸Jに沿って延びる円筒形状を有する。上側筒部51は、接触部51aと、接触部51aの下側に位置する接触支持部51cと、接触部51aよりも軸方向下側に窪む窪部51dと、を有する。接触支持部51cと窪部51dとは周方向に交互に配置される。本実施形態において、接触部51a、接触支持部51cおよび窪部51dの数はそれぞれ3である。
【0083】
コアバック32の内周面32aには、径方向内側に突出する3つの凸部33が設けられている。それぞれの凸部33は、周方向等間隔に配置されている。平面視において、それぞれの凸部33は、それぞれの接触支持部51cに対して周方向位置が重なる。本実施形態のコアバック32においては、凸部33、凸部33の間には、後述する幅狭部38よりも径方向内側に突出する幅広部37と、幅広部37よりも径方向外側に位置する幅狭部38と、を有する。幅広部37の内周端および幅狭部38の内周端は、いずれも、凸部33の内周端よりも径方向外側に位置する。幅広部37は、平面視において、隣り合うティース31の間に亘って一つながりに配置される。幅広部37により複数のティース31が連結されることにより、コアバック32の強度を増すことができる。また、幅狭部38を有することにより、コアバック32を軽量化することができる。以上より、コアバック32が幅広部37と幅狭部38とを有することにより、ステータ部30の強度向上と軽量化とを両立させることができる。また、凸部33の内周面には径方向外側に向かって窪む溝部33dが位置している。
【0084】
また、本実施形態においては、ステータコア34は、34A、34Bに分かれていない。すなわち、凸部33は、ステータコア34の軸方向の全域に亘って存在する。これにより、ステータの強度を増すことができる。
【0085】
凸部33の径方向内端33cは、平面視において、上側筒部51の外周面51bに沿った円弧形状を有している。凸部33の径方向内端33cは、上側筒部51の外周面51bに接触する。これにより、ブラケット50に対するステータコア34の径方向位置が決まる。
【0086】
凸部33の下面33aは、上側筒部51と下側筒部52との間に位置する第1面52aに接触する。さらに上側筒部51の上側先端には、凸部33の上面33bと接触する接触部51aが設けられ、ステータコア34がブラケット50に固定される。凸部33の下面33aが第1面52aに接触することで、ブラケット50に対するステータコア34の高さ方向位置が決まる。本実施形態においては、接触部51aが、接触部51aの下側に位置する接触支持部51cにより支持され、かつ、接触支持部51cと窪部51dとは、周方向に交互に配置されている。したがって、ブラケット50をカシメ加工して接触部51aを形成し、ブラケット50とステータコア30とを固定する際、接触部51aおよび接触支持部51cに歪みが発生したとしても、接触支持部51c同士が窪部51dにより、互いに隔てられている。これにより、各接触支持部51cの歪みが他の接触支持部51cに影響することがない。また、カシメ加工による歪みが上側筒部51の上側に抑えられるため、ブラケット50の軸受保持孔59の変形を抑えることができ、シャフト10がブラケット50に対して傾いて固定されることを防止することができる。
【0087】
[変形例3]
次に、上述したモータ1に採用可能な、変形例3(第4実施形態)のブラケット50について図8図9を基に説明する。なお、上述の実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0088】
凸部33の径方向内端33cは、平面視において上側筒部51の外周面51bに沿った円弧形状を有している。凸部33の径方向内端33cは、上側筒部51の外周面51bに接触する。これにより、ブラケット50に対するステータコア34の径方向位置が決まる。
【0089】
変形例2と同様に、凸部33の内周面には径方向外側に向かって窪む溝部33dが位置している。本実施形態においては、ブラケット50の外周面には径方向外側に向かって膨らむ膨出部51eが位置している。そして、溝部33dと膨出部51eとは接触する。これにより、ステータコア34がブラケット50に対して、周方向に移動することが防止される。また、ブラケット50に対するステータコア34の周方向位置が決まる。ここで、ステータコア34は、ブラケット50に対して接着剤により固定される。溝部33dと膨出部51eを有する構成によると、接着剤が塗布される表面積が増えるため、固定強度を向上させることができる。なお、本実施形態において、膨出部51eはステータコア34の軸方向の三分の一程度の高さである。
【0090】
本実施形態においては、ステータコア34とブラケット50とが、ステータコア34の凸部33の径方向内端33cとブラケット50の外周面との間に介在する接着剤により、固定される。すなわち、筒部と、ステータとは、筒部の外周面とステータとの間に介在する接着剤により固定される。これにより、ブラケット50が歪むことなく、ステータコア34とブラケット50とを固定することができる。そのため、ブラケット50の軸受保持孔59の変形を抑えることができ、シャフト10がブラケット50に対して傾いて固定されることを防止することができる。
【0091】
本実施形態のコアバック32においては、凸部33、凸部33の間には、径方向内側に突出する幅広部37と、幅広部37よりも径方向外側に位置する幅狭部38と、を有する。図9に示すように、本実施形態においては、幅広部37は、凸部33と一つながりに配置される。これにより、ステータコア34の強度を増すことができる。
また、本実施形態においては、変形例2と同様、ステータコア34は、34A、34Bに分かれていない。すなわち、凸部33は、ステータコア34の軸方向の全域に亘って存在する。これにより、ステータの強度を増すことができる。また、凸部33の軸方向の長さを長くできるので、ステータコア34とブラケット50との接着面積を広くすることができる。これにより、ブラケット50に対するステータコア34の固定強度を強固にすることができる。
【0092】
以上に、本発明の実施形態を説明したが、各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0093】
1…モータ、9…外部配線、10…シャフト、20…ロータ部、24…ロータホルダ、25…ロータマグネット、26…ロータハブ、30、130…ステータ部、31、131…ティース、32、132…コアバック、32a、132a…内周面、33、133…凸部、33a…下面、33b…上面、33c…径方向内端、34、134…ステータコア、34A…上側コア部、34B…下側コア部、35…コイル、35a…コイル線、36…第2の穴、39、139…絶縁部、41…上側軸受部(軸受部)、42…下側軸受部、50…ブラケット、51…上側筒部(筒部)、51a…接触部、52…下側筒部、52a…第1面、53…ベース部、53a…平板部、53c…第2台座部、53d…第1台座部、53e…第2面、54…第1の穴、56…第1固定部、57…第2固定部、58…第3固定部、59…軸受保持孔、60…回路基板、61…貫通孔、62…基板本体、63a、63b、63c…回転センサ、65…配線接続部、65a…一方縁、65b…他方縁、68…コイル線貫通孔、70…位置決め部材、71…上側突起、72…下側突起、73…本体部、74…板状部、75…切欠(コイル線支持部)、75c…抜け止め突起、J…中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9