(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記担体は、ゼオライト、シリカ、セリア、ジルコニア、アルミナ、ランタン、チタニアのうち、前記酸化触媒の活性を高める組み合わせで形成されたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の排気浄化装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、排気浄化装置が吸着触媒を有している構成では、内燃機関がディーゼルエンジンや直噴ガソリンエンジンである場合など、排気に粒子状物質PM(Particulate Matter)が含まれている場合、吸着触媒にPMが付着することで吸着触媒のNOx吸着能力が低下することが懸念される。そこで、吸着触媒に付着したPMを燃焼させて除去するために、PMを酸化させる酸化触媒を吸着触媒に対して設ける、という方法が考えられる。
【0005】
ところが、発明者らは、吸着触媒に対して酸化触媒を設けた場合に、酸化触媒へのPMの付着に関係なく吸着触媒のNOx吸着能力が低下することがある、という知見を試験等により得た。この知見によれば、特に、排気にCOが含まれている場合に吸着触媒のNOx吸着能力が低下しやすくなっている。
【0006】
本発明は、上記問題を鑑みてなされたもので、その目的は、吸着触媒のNOx吸着能力がPMやCOにより低下するということを抑制できる排気浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、課題を達成するための発明の技術的手段について、説明する。なお、発明の技術的手段を開示する特許請求の範囲及び本欄に記載された括弧内の符号は、後に詳述する実施形態に記載された具体的手段との対応関係を示すものであり、発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0008】
上述の課題を解決するために開示された第1の発明は、
内燃機関(10)からの排気が流れる排気通路(16)に設けられ、排気のNOxを吸着する吸着部(53)と、
排気通路において排気が吸着部を通過した後に到達する位置に設けられ、排気のNOxの還元を行う還元部(52)と、
を備え、
吸着部は、
排気のNOxを吸着する吸着触媒(53c)と、
排気の粒子状物質(PM)が吸着部に付着した場合に粒子状物質を酸化させる酸化触媒(53b)と、
吸着触媒および酸化触媒を担持する担体(53a)と、
を有しており、
酸化触媒は、吸着部において吸着触媒に混じり合った状態で、担体の内部に設けられて
おり、
さらに酸化触媒は、Ag、Cu、Au、Fe、Co、Mn、Ni、Ceの少なくとも1つである第1触媒と、Pd、Pt、Rh、Ru、Irの少なくとも1つである第2触媒と、を有しており、
第2触媒は第1触媒よりも少量であることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、吸着部に酸化触媒が含まれているため、吸着部にPMが付着したとしてもそのPMを酸化させて燃焼させることができる。このため、吸着部にPMが詰まって吸着部のNOx吸着能力が低下するということを抑制できる。
【0010】
ここで、発明者らは、酸化触媒へのCOの接近に伴ってそのCOの活性が高められた場合に、そのCOが吸着触媒へのNOxの吸着を阻害しやすくなる、という知見を得た。これに対して、本発明によれば、吸着部において酸化触媒と吸着触媒とが互いに混じり合った状態になっているため、COが吸着部の内部に入り込んでいくことで、このCOが酸化触媒に接近する可能性が高くなっていく。ここで、COの周囲に存在するNOxは、COが吸着部の内部において酸化触媒に接近するタイミングまでに、吸着部の表面近くの吸着触媒に吸着される可能性が高い。この場合、仮にCOが酸化触媒に接近してその活性が高められたとしても、活性が高められたタイミングでは、COの周囲に存在するNOxの数が減っている。このため、吸着触媒へのNOxの吸着をCOが阻害する可能性が低くなる。したがって、吸着触媒のNOx吸着能力を適正に発揮させることができる。
【0011】
また、排気浄化装置においては、排気が吸着部を通過して還元部に到達するため、還元部の還元能力が適正に発揮される状況では、吸着触媒に吸着されていたNOxがその吸着触媒から放出されても、還元部によりNOxがN
2に還元される。この場合、吸着部に高い還元能力を付与しなくても、すなわち、酸化触媒を吸着部の表面に配置しなくても、排気浄化装置の全体において適正な還元能力を確保できる。
【0012】
以上により、NOx浄化装置のNOx浄化能力がPMやCOにより低下するということを抑制できる。
【0013】
上述の課題を解決するために開示された第2の発明は、
内燃機関(10)からの排気が流れる排気通路(16)に設けられ、排気のNOxを吸着する吸着部(53)と、
排気通路において排気が吸着部を通過した後に到達する位置に設けられ、排気のNOxの還元を行う還元部(52)と、
を備え、
吸着部は、
排気のNOxを吸着する吸着触媒(53c)を含む吸着層(53a)と、
排気の粒子状物質(PM)が吸着部に付着した場合に粒子状物質を酸化させる酸化触媒(53b)と、
を有しており、
酸化触媒は、排気が吸着層を通過した後に到達する位置に設けられていることを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、吸着部に酸化触媒が含まれているため、吸着部にPMが付着したとしてもそのPMを酸化させて燃焼させることができる。このため、吸着部にPMが詰まって吸着部のNOx吸着能力が低下するということを抑制できる。
【0015】
ここで、発明者らは、酸化触媒へのCOの接近に伴ってそのCOの活性が高められた場合に、そのCOが吸着触媒へのNOxの吸着を阻害しやすくなる、という知見を得た。これに対して、本発明によれば、排気が吸着層を通過した後に到達する位置に酸化触媒が配置されているため、COは吸着部の通過に伴って酸化触媒に接近することになる。ここで、COの周囲に存在するNOxは、COが吸着部を通過して酸化触媒に接近するタイミングまでに、吸着部の吸着触媒に吸着される可能性が高い。この場合、仮にCOが酸化触媒に接近してその活性が高められたとしても、活性が高められたタイミングでは、COの周囲に存在するNOxの数が減っているため、吸着触媒へのNOxの吸着をCOが阻害する可能性が低くなる。したがって、吸着触媒のNOx吸着能力を適正に発揮させることができる。
【0016】
また、排気浄化装置においては、排気が吸着部を通過して還元部に到達するため、還元部の還元能力が適正に発揮される状況では、吸着触媒に吸着されていたNOxがその吸着触媒から放出されても、還元部によりNOxがN
2に還元される。この場合、吸着部に高い還元能力を付与しなくても、すなわち、酸化触媒を吸着部の表面に配置しなくても、排気浄化装置の全体において適正な還元能力を確保できる。
【0017】
以上により、NOx浄化装置のNOx浄化能力がPMやCOにより低下するということを抑制できる。
【0018】
上述の課題を解決するために開示された第3の発明は、
内燃機関(10)からの排気が流れる排気通路(16)に設けられ、排気のNOxを吸着する吸着部(53)と、
排気通路において排気が吸着部を通過した後に到達する位置に設けられ、排気のNOxの還元を行う還元部(52)と、
を備え、
吸着部は、
排気のNOxを吸着する吸着触媒(53c)と、
排気の粒子状物質(PM)が吸着部に付着した場合に粒子状物質を酸化させる酸化触媒(53b)と、
を有しており、
酸化触媒は、排気のCOの活性を高める能力がPtに比べて低い金属であることを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、吸着部に酸化触媒が含まれているため、吸着部にPMが付着したとしてもそのPMを酸化させて燃焼させることができる。このため、吸着部にPMが詰まって吸着部のNOx吸着能力が低下するということを抑制できる。
【0020】
ここで、発明者らは、酸化触媒へのCOの接近に伴ってそのCOの活性が高められた場合に、そのCOが吸着触媒へのNOxの吸着を阻害しやすくなる、という知見を得た。これに対して、本発明によれば、酸化触媒として用いられた金属はCOの活性を高めにくい性質を有しているため、COが酸化触媒に接近したとしても、吸着触媒へのNOxの吸着がそのCOにより阻害されにくくなっている。したがって、吸着触媒のNOx吸着能力を適正に発揮させることができる。
【0021】
また、排気浄化装置においては、排気が吸着部を通過して還元部に到達するため、還元部の還元能力が適正に発揮される状況では、吸着触媒に吸着されていたNOxがその吸着触媒から放出されても、還元部によりNOxがN
2に還元される。この場合、吸着部に高い還元能力を付与しなくても、すなわち、酸化触媒を吸着部の表面に配置しなくても、排気浄化装置の全体において適正な還元能力を確保できる。
【0022】
以上により、NOx浄化装置のNOx浄化能力がPMやCOにより低下するということを抑制できる。
【0023】
上述の課題を解決するために開示された第4の発明は、
内燃機関(10)からの排気が流れる排気通路(16)に設けられ、排気のNOxを吸着する吸着部(53)と、
排気通路において排気が吸着部を通過した後に到達する位置に設けられ、排気のNOxの還元を行う還元部(52)と、
を備え、
吸着部は、
排気のNOxを吸着する吸着触媒(53c)と、
排気の粒子状物質(PM)が吸着部に付着した場合に粒子状物質を酸化させる酸化触媒(53b)と、
を有しており、
酸化触媒には、Pd、Pt、Rh、Ru、Irの少なくとも1つである高活性酸化触媒が含まれており、
吸着部の1リットル当りに含まれている高活性酸化触媒の重量は、1グラム以下であることを特徴とする。
【0024】
この発明によれば、吸着部に酸化触媒が含まれているため、吸着部にPMが付着したとしてもそのPMを酸化させて燃焼させることができる。このため、吸着部にPMが詰まって吸着部のNOx吸着能力が低下するということを抑制できる。
【0025】
また、酸化触媒には高活性酸化触媒が含まれており、この高活性酸化触媒は、Ag等の酸化触媒に比べて活性化力が高いので、COによるNOxの吸着阻害が生じやすい性質であると言える。この対策として、上記第4の発明では、高活性酸化触媒を1g/L以下の少量としている。そのため、COによるNOxの吸着阻害を十分に抑制させつつ、酸化触媒によりPMを酸化させて除去するといった機能をも発揮させることができる。よって、吸着触媒のNOx吸着能力がPMやCOにより低下するということを抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合せることができる。
【0028】
(第1実施形態)
図1に示す燃焼システムは、エンジン10と、窒素酸化物NOxの浄化を行うNOx浄化装置12とを有している。燃焼システムは車両に搭載されたものであり、この車両は、エンジン10の出力を駆動源として走行する。エンジン10は、圧縮自着火式のディーゼルエンジンであり、燃焼に用いる燃料には、炭化水素化合物である軽油を用いている。エンジン10には、このエンジン10に空気を供給する吸気通路(図示略)と、エンジン10からの排気を放出する排気通路16とが接続されている。なお、エンジン10が内燃機関に相当する。
【0029】
エンジン10の排気側には、排気マニホールドを介して排気通路16が接続されている。NOx浄化装置12は、排気通路16に設けられている。排気通路16を流れる排気は、NOx浄化装置12を通過した後に、排気出口16aから放出される。なお、NOx浄化装置12が排気浄化装置に相当する。
【0030】
燃焼システムは、排気通路16においてNOx浄化装置12の上流側にオゾンO
3を供給するオゾン供給装置30を有している。オゾン供給装置30から排気通路16にオゾンが供給された場合、オゾンにより排気中のNOがNO
2に酸化されることでNO
2の割合が増加する。オゾン供給装置30は、排気通路16にオゾンを供給する供給状態と、オゾンを供給しない停止状態とに移行可能になっている。なお、オゾンが排気を酸化させる酸化ガスに相当し、オゾン供給装置30が酸化ガス供給部に相当する。また、NOxとしては、NO、NO
2の他にもNO
3等がある。
【0031】
オゾン供給装置30は、排気通路16に接続されたオゾン通路31と、オゾンを生成するオゾン生成器32と、オゾン通路31を通じてオゾン生成器32に空気を送るエアポンプ33と、オゾン通路31における排気の逆流を遮断する排気遮断弁34と、オゾン通路31の内部圧力を通路圧力として検出する圧力センサ35と、排気通路16の排気にオゾンを添加する添加ノズル36とを有している。
【0032】
オゾン通路31においては、その上流端にエアポンプ33が設けられており、エアポンプ33と排気通路16との間にオゾン生成器32が設けられている。エアポンプ33は、遠心式のエアポンプであり、電動モータにより駆動されるインペラをケース内に収容して構成される。
【0033】
オゾン生成器32は、その内部に流通路を形成するハウジングを備え、流通路には複数の電極が配置されている。これらの電極は、互いに平行に対向するように配置された平板形状であり、高電圧が印加される電極と接地電圧の電極とが交互に配置されている。オゾン生成器32のハウジングには、エアポンプ33により送風された空気が流入する。この空気は、ハウジング内の流通路に流入し、電極間の通路である電極間通路を流通する。
【0034】
オゾン生成器32の電極へ通電すると、電極から放出された電子が、電極間通路の空気中に含まれる酸素分子に衝突する。すると、酸素分子からオゾンが生成される。つまり、オゾン生成器32は、放電により酸素分子をプラズマ状態にしてオゾンを生成する。したがって、オゾン生成器32への通電時には、オゾン生成器32から排気通路16に向けて流れる空気にオゾンが含まれる。なお、オゾン生成器32はオゾン生成部やオゾナイザと称することもできる。
【0035】
排気遮断弁34は、電磁駆動式の開閉弁であり、オゾン通路31においてオゾン生成器32と排気通路16との間に設けられている。圧力センサ35は、オゾン通路31の下流通路部31bにおいてオゾン生成器32と排気遮断弁34との間に設けられている。
【0036】
添加ノズル36は、オゾン通路31の下流端に取り付けられており、排気通路16においてNOx浄化装置12の上流側に配置されている。添加ノズル36からオゾンが噴射された場合、NOx浄化装置12に到達する排気中のNOxがオゾンにより酸化されやすくなる。オゾンにより酸化されたNOxとしては、NOが酸化されたNO
2や、NO
2が酸化されたNO
3などが挙げられる。
【0037】
排気通路16において添加ノズル36とNOx浄化装置12との間には、オゾンによるNOxの酸化を促す気相酸化部37が設けられている。気相酸化部37は、オゾンと排気とを強制的に混合させることで、オゾンにより酸化されるNOxの量を増加させる。気相酸化部37が酸化部に相当する。
【0038】
オゾン供給装置30の電気的な構成について簡単に説明する。オゾン供給装置30は、制御装置としてのコントローラ41を有している。コントローラ41には、オゾン生成器32、エアポンプ33、排気遮断弁34及び圧力センサ35が接続されている。コントローラ41は、圧力センサ35の検出結果やエンジン回転数などに基づいて排気通路16へのオゾンの供給量を調整する処理を行う。この処理においては、オゾン生成器32やエアポンプ33、排気遮断弁34の動作制御がコントローラ41により行われる。
【0039】
図2に示すように、NOx浄化装置12は、基材51と、基材51に重ねられた還元部52と、還元部52に重ねられた吸着部53とを有している。基材51は、スルーフロー型のハニカムであり、コージェライトやシリコンカーバイトにより格子状に形成されている。基材51においては、排気通路16に沿って延びた複数の格子通路55が形成されており、これら格子通路55のそれぞれに還元部52及び吸着部53が配置されている。還元部52は、格子通路55の内周面の全体を覆うように層状になっており、吸着部53は、還元部52の内周面の全体を覆うように層状になっている。これら還元部52及び吸着部53は、いずれも排気通路16に沿って延びている。
【0040】
還元部52は、コート層に還元触媒が担持されることで形成されている。還元部52においては、コート層がアルミナAl
2O
3を担体として形成されており、還元触媒としてPtやRh、Pdといった貴金属などが用いられている。還元触媒の活性は、その温度が活性温度(例えば300℃程度)まで上昇することで高められ、NOxは、還元触媒により窒素N
2に還元されやすくなる。
【0041】
図3において、吸着部53は、コート層53aに酸化触媒53bが担持されることで形成されている。コート層53aはAl
2O
3を担体として形成されており、酸化触媒53bとしてはAgが用いられている。また、コート層53aには、吸着触媒53c(
図5参照)が含まれており、吸着触媒53cとしてはBaが用いられている。コート層53aにおいては、吸着触媒53cとAl
2O
3とが一定比率でコートされており、これら吸着触媒53cとAl
2O
3とは互いに混合された状態になっている。なお、コート層53aが吸着層に相当する。
【0042】
吸着触媒53cにおいては、比較的低い温度(例えば200℃以下)及び高い温度(例えば450〜600℃程度)にてNOx吸着能力が低下しやすくなっている。一方で中温250〜400℃程度)にてNOx吸着能力が高められる。また、吸着触媒53cにおいては、NOに対する吸着力よりもNO
2に対する吸着力の方が大きく、NO
2に対する吸着力よりもNO
3に対する吸着力の方が大きくなっている。このため特に低温(例えば100℃〜200℃)では排気へオゾンを供給しNOをNO
2若しくはNO
3へ気相で酸化させることにより吸着力を高めることができる。したがって、還元部52にとっての活性温度よりも低い非活性温度においても、オゾンを用いることで吸着触媒53cにとってNOx吸着能力を適正に発揮しやすい温度とすることができる。
【0043】
酸化触媒53bは、コート層53aのAl
2O
3及び吸着触媒53cに混合された状態になっている。この場合、酸化触媒53bは、その大部分がコート層53aの内部に配置されている。ここで、基材51は通気性を有しておらず、還元部52及び吸着部53は通気性を有している。このため、格子通路55を流れる排気が吸着部53を通過して還元部52に到達した場合、その排気は、還元部52を通過して基材51に到達しても、基材51を通過することなく格子通路55の下流端から放出される。
【0044】
発明者らは、吸着部53のNOx吸着能力を確認するために、NOx浄化装置12を対象として昇温離脱法を用いた能力試験を行った。この能力試験では、排気を模擬した模擬ガスをNOx浄化装置12に供給することでNOxを吸着部53に吸着させる第1工程と、NOxを含まないガスを供給しつつ吸着部53を加熱することで吸着部53からNOxを放出させる第2工程とを行う。そして、NOx浄化装置12から排出されたガスのNOx濃度を検出することで、吸着部53に吸着されていたNOx吸着量を計測する。
【0045】
能力試験においては、成分の異なる2種類の模擬ガスを使用して、それぞれの模擬ガスに対する吸着部53のNOx吸着量を計測した。これら模擬ガスは、いずれも100ppmのNO
2を含み、130℃のガスとされている。その一方で、これら模擬ガスのうち一方は、1000ppmのCOを含むCO有りガスとされ、他方はCOを含まないCO無しガスとされている。なお、模擬ガスの温度は、還元部52にとっての非活性温度であり、且つ吸着触媒53cにとってNOx吸着能力を適正に発揮しやすい温度になっている。
【0046】
図4に示すように、能力試験においては、CO有りガスを用いた場合とCO無しガスを用いた場合とで、吸着部53によるNOx吸着量がほぼ同じになっている。
図4においては、NOx吸着量に2つの山がある。これらピークのうち、吸着部53の温度が250℃付近の山は、吸着部53に対するNO
2の付着量を示し、500℃付近の山は、吸着部53に対するNO
3の付着量を示している。
【0047】
発明者らは、能力試験の試験結果に基づいて、CO無しガス及びCO有りガスのいずれを用いた場合でも、
図5に示すように、第1工程にてNO
2やNO
3が吸着触媒53cに適正に吸着される、という知見を得た。この場合、COやAgが吸着触媒53cへのNO
2やNO
3の吸着を阻害するような働きをしていないことになる。
【0048】
これに対して、発明者らが、吸着部53の酸化触媒53bとしてPtを用いた構成について能力試験を行ったところ、本実施形態のような酸化触媒53bとしてAgを用いた構成とは異なる試験結果が得られた。
図6に示すように、CO有りガスを用いた場合のNOx吸着量が、CO無しガスを用いた場合のNOx吸着量に比べて極端に小さくなっている。なお、この能力試験においては、吸着部53におけるPtの含有量を3g/Lとしている。
【0049】
発明者らは、
図6の試験結果に基づいて、COやAgの影響で吸着部53のNOx吸着能力が低下するという知見を得た。この知見では、CO無しガスを用いた場合については、
図7に示すように、第1工程にてNO
3が吸着触媒53cに適正に吸着される。一方、CO有りガスを用いた場合については、
図8、
図9に示すように、PtによりCOの活性が高められ、このCOが、酸化触媒53bに吸着されていたNO
2やNO
3から酸素分子を奪ってCO2になる。NO
2やNO
3が酸素分子を奪われることで生成されたNOは、吸着触媒53cに対する吸着力が低いことに起因して吸着部53から離間する。この場合、Ptによって活性が高められたCOが吸着触媒53cによるNO
2やNO
3の吸着を阻害していることになる。すなわち、COによる吸着阻害が発生していることになる。
【0050】
なお、
図8には、吸着触媒53cにNO
2が吸着された後のタイミングでCOがNO
2から酸素分子を奪うイメージを示し、
図9には、吸着触媒53cにNO
2が吸着される前のタイミングでCOがNO
2から酸素分子を奪うイメージを示している。また、
図8には、COが酸化触媒53b上にあることで活性化されるイメージを示し、
図9には、COが酸化触媒53bに接近することで活性化されるイメージを示している。
【0051】
発明者らは、本実施形態のように酸化触媒53bとしてAgを用いた構成について、酸化触媒53bとしてPtを用いた構成と比較することで、COの活性を高める能力はAgの方がPtよりも低い、という知見を得た。この場合、Agにより形成された酸化触媒53bは、COの活性を高めないことでCOによる吸着阻害の発生を抑制する。その一方で、Agはある程度の酸化能力を有しており、排気に含まれる粒子状物質PMが吸着部53に付着したとしても、そのPMを酸化させて燃焼させることが可能になっている。
【0052】
例えば、吸着部53に酸化触媒53bが含まれていない構成では、吸着触媒53cの酸化力がPMを酸化させて燃焼させるほどは強くないことに起因して、吸着部53にPMが詰まりやすくなってしまう。この場合、吸着部53によるNOx吸着能力の低下や、還元部52によるNOx還元能力の低下、格子通路55の通気がPMで阻害されることなど、NOx浄化装置12に異常や故障が発生することが懸念される。これに対して、本実施形態では、吸着部53からPMを適正に除去することで、吸着部53のNOx吸着能力や、還元部52のNOx還元能力、格子通路55の通気状態が適正に保持される。
【0053】
なお、吸着部53に付着する物質としては、有機溶媒可溶成分SOFなども挙げられる。吸着部53においては、PMやSOFが酸化触媒53bにより酸化されて燃焼することにより、表面再生が実施される。
【0054】
吸着部53の酸化触媒53bは、コート層53aの表面に配置されているのではなく、コート層53aの吸着触媒53cに混合された状態になっている。このため、排気中のCOがコート層53aの内部に入り込んで行くことで、このCOが酸化触媒53bに接近する可能性が高くなっていく。ここで、COの周囲に存在するNOxは、COがコート層53aの内部において酸化触媒53bに接近するタイミングまでに、コート層53aの表面近くの吸着触媒53cに吸着される可能性が高い。この場合、仮にCOの活性が酸化触媒53bにより高められたとしても、COが酸化触媒53bに接近してその活性が高まったタイミングでは、COの周囲に存在するNOxの数が減っているため、吸着触媒53cへのNOxの吸着をCOが阻害する可能性が低くなる。
【0055】
図1に戻り、オゾン供給装置30及び気相酸化部37により排気中のNOxが酸化された場合、排気中に含まれるNOxとしてはNOの量が最も多いことに起因して、NOx浄化装置12に到達する排気のNOxとしてNO
2の量が最も多くなっている。排気温度が還元部52にとっての非活性温度にある場合、吸着部53においてはNO
2やNO
3が吸着触媒53cに吸着される。また、排気温度が上昇して還元部52にとっての活性温度に到達した場合、吸着触媒53cに吸着されていたNO
2やNO
3が吸着部53から放出されても、そのNO
2やNO
3が還元部52にてN
2に還元される。以上のように、排気温度が非活性温度及び活性温度のいずれにある場合でも、NOx浄化装置12によるNOx浄化が適正に行われる。
【0056】
ここまで説明した第1実施形態の作用効果を、以下に説明する。
【0057】
第1実施形態によれば、吸着部53において、酸化触媒53bが吸着触媒53cに混じり合っているため、吸着部53へのPMの付着やCOによるNOx吸着阻害により吸着部53のNOx吸着能力が低下するということを抑制できる。また、COの活性を高める能力が比較的低いAgが酸化触媒53bとして用いられているため、COがAgに接近した場合でも、COが吸着触媒53cへのNOxの吸着を阻害するということが生じにくくなっている。さらに、Agは、例えばPtに比べて安価であるため、吸着部53の製造コストを低減できる。
【0058】
しかも、NOx浄化装置12においては、排気温度が活性温度まで上昇した場合など、吸着触媒53cに吸着されていたNOxが吸着部53から放出された場合でも、そのNOxが還元部52にてN
2に還元される。このように、還元能力を有する貴金属を酸化触媒53bとして用いる必要がないため、酸化力が比較的弱いAgを酸化触媒53bとして用いても、酸化触媒53bを吸着触媒53cに混合させても、NOx浄化装置12全体としての還元能力が低下しない。
【0059】
第1実施形態によれば、吸着部53の吸着触媒53cとしてBaが用いられているため、吸着部53のNOx吸着容量が適正に確保される。このため、排気温度が活性温度に達していないタイミングで吸着触媒53cのNOx吸着容量が不足するということを抑制できる。この場合、還元部52の活性能力が高められる前のタイミングで還元部52にNOxが流れ込みにくいため、NOx浄化装置12によるNOx浄化を適正に実施できる。
【0060】
第1実施形態によれば、オゾン供給装置30から供給されるオゾンにより、排気に含まれるNOxの中で最も量の多いNOが、吸着触媒53cに対する吸着力がNOよりも高いNO
2に酸化される。この場合、NOxの中でNO
2の量が最も多くなるため、NOxの中でNOの量が最も多い場合に比べて、吸着触媒53cに吸着されるNOxの量を増加させることができる。しかも、オゾンによるNOxの酸化が、排気がNOx浄化装置12に到達する前の段階で行われるため、NOをNO
2に酸化させる能力を吸着部53に付与する必要がない。すなわち、排気中のNOxが最初に酸化触媒53bに接近してその後に吸着触媒53cに吸着されるという構成を実現する必要がない。したがって、吸着部53において酸化触媒53bを吸着触媒53cに混合させた構成を実現できる。
【0061】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、吸着部53の酸化触媒53bとしてAgを用いたが、第2実施形態では、酸化触媒53bとしてCu、Fe、Au、Co、Mn、Ni、Ceのいずれかを用いている。
【0062】
例えば、酸化触媒53bとしてCuを用いた構成とする。発明者らは、この構成について能力試験を行い、
図10に示すような試験結果を得た。この試験結果では、上記第1実施形態の
図4と同様に、CO有りガスを用いた場合とCO無しガスを用いた場合とで、吸着部53によるNOx吸着量がほぼ同じになっている。
【0063】
また、酸化触媒53bとしてFeを用いた構成とする。発明者らは、この構成について能力試験を行い、
図11に示すような試験結果を得た。この試験結果でも、上記第1実施形態の
図4と同様に、CO有りガスを用いた場合とCO無しガスを用いた場合とで、吸着部53によるNOx吸着量がほぼ同じになっている。
【0064】
以上のように、酸化触媒53bとしてCu、Feのいずれを用いた場合でも、吸着触媒53cへのNOxの吸着をCOが阻害しにくい構成を実現できる。
【0065】
なお、酸化触媒53bとしてCuを用いた構成についての能力試験、及びFeを用いた構成についての能力試験では、上記第1実施形態の能力試験と同様に、CO有りガスは1000ppmのCOを含み、CO無しガスはCOを含んでいない。また、これらガスの温度を130℃とした。
【0066】
発明者らは、酸化触媒53bとしてAu、Co、Mn、Ni、Ceのうち1つを用いた構成、及び酸化触媒53bとしてAg、Cu、Fe、Au、Co、Mn、Ni、Ceのうち複数を用いた構成についても、上記第1実施形態と同様の知見を得た。この知見によれば、これら構成について能力試験を行っても、上記第1実施形態の
図4と同様に、CO有りガスを用いた場合とCO無しガスを用いた場合とで吸着部53のNOx吸着量がほぼ同じという試験結果を得ることになる。これは、Ag、Cu、Fe、Au、Co、Mn、Ni、Ceの酸化力が、Ptの酸化力よりも小さいためである。
【0067】
(第3実施形態)
上記第1実施形態では、吸着部53の酸化触媒53bとしてAgを用いたが、第3実施形態では、酸化触媒53bとしてPd、Pt、Rh、Ru、Irのいずれかを用いている。
【0068】
例えば、酸化触媒53bとしてPdを用いた構成とする。Pdの酸化力は、Agより強い一方で、Ptより弱くなっている。本実施形態では、吸着部53におけるPdの含有量を少量にしている。発明者らは、Pdの含有量を少量にする方法として、硝酸パラジウムPd(NO
3)
2を水に溶かし、Al
2O
3及びBaに含浸することでコート層53aにPdを塗布する、という方法を採用した。
【0069】
発明者らは、酸化触媒53bとして少量のPdを用いた構成について能力試験を行い、
図12に示すような結果を得た。この試験結果では、上記第1実施形態の
図4と同様に、CO有りガスを用いた場合とCO無しガスを用いた場合とで、吸着部53によるNOx吸着量、グラフ積分値の面積がほぼ同じになっている。したがって、酸化触媒53bとしてごく少量のPdを用いた場合でも、吸着触媒53cへのNOxの吸着を酸化触媒53bが阻害しにくい構成を実現できる。
【0070】
なお、酸化触媒としてPdを用いた構成についての能力試験では、上記第1実施形態の能力試験と同様に、CO有りガスは1000ppmのCOを含み、CO無しガスはCOを含んでいない。また、これらガスの温度を130℃とし、150℃においても同様の知見を得た。
【0071】
発明者らは、酸化触媒53bとしてPt、Rh、Ru、Irのうち1つを用いた構成、及び酸化触媒53bとしてPd、Pt、Rh、Ru、Irのうち複数を用いた構成についても、上記第1実施形態と同様の知見を得た。この知見によれば、これら構成について能力試験を行っても、上記第1実施形態の
図4と同様に、CO有りガスを用いた場合とCO無しガスを用いた場合とで吸着部53のNOx吸着量がほぼ同じという試験結果を得ることになる。これは、Pd、Pt、Rh、Ru、Irの酸化力がAgより強くても、吸着部53におけるPd、Pt、Rh、Ru、Irの含有量を少量にすることで、COの活性を高める能力を制限できると想定したためである。
【0072】
また、発明者らは、吸着部53におけるPd、Pt、Rh、Ru、Irの含有量を1g/L以下とすることで、吸着触媒53cへのNOxの吸着をCOが阻害しない程度にPd、Pt、Rh、Ru、IrがCOの活性を高める能力を制限できる、という知見を得た。これは、吸着部53におけるPd、Pt、Rh、Ru、Irの含有量が少量という範囲に1g/Lを含めていることになる。
【0073】
さて、Pd、Pt、Rh、Ru、Irは、Ag、Cu、Fe、Au、Co、Mn、Ni、Ceに比べて活性化させる力が強く、COの活性を高めやすい。そこで、本明細書では、Pd、Pt、Rh、Ru、Irのことを高活性酸化触媒と呼ぶ。上述した通り、本実施形態では、吸着部53が有する酸化触媒53bに高活性酸化触媒を用いており、高活性酸化触媒の含有量を1g/L以下といった少量にしている。この1g/L以下といった数値に関し、発明者らは、
図12の試験結果に示す上述の能力試験について、さらに詳細に能力試験を行い、
図13に示す試験結果を得た。
図13に係る試験では、先ず、吸着触媒及び酸化触媒を担持させた吸着部を備えた、試験用の排気浄化装置を準備する。吸着触媒はPdであり、吸着部の1リットル当りに含まれているPdの重量(つまりPd担持量)を1.0g/L、0.5g/L、0.2g/L、0.1g/L、0.05g/L、0.0g/Lの各々に変更して試験している。
【0074】
この試験では、吸着部でのNOx吸着量がゼロの状態の吸着部へ、排ガスを模擬した試験用排ガスを流入させている。この試験用排ガスには、100ppmのNO
2及び1000ppmのCOが含まれている。また、試験用排ガスの10%はO
2、9%はCO
2、2%はH
2O、残りはN
2である。試験用排ガスは一定の速度で吸着部へ流入される。具体的には、空間速度が20000/hの状態で流入される。試験時の吸着部の温度は150℃に保持されている。
【0075】
さらに上記試験では、試験用排ガスを吸着部へ流入させている時に、吸着部の下流側でNOxの量を計測する。したがって、吸着部へ流入する試験用排ガス中の全てのNO
2(つまりNOx流入量)が吸着された場合、計測されるNOx量(つまりNOx流出量)はゼロとなる。NOx流入量に対するNOx流出量の割合をNOx吸着率と呼ぶ。
【0076】
図13の試験結果によれば、試験時間の経過に伴いNOx吸着量が増大して一定量を超えると、NOx吸着率が低下していくことが分かる。そして、NOx吸着率が急激に低下を開始する時期や低下速度は、Pd担持量に応じて異なることが分かる。吸着部には、NOx吸着量が多い状態でも最低限のNOx吸着率(例えば50%)を確保できることが要求される。
【0077】
図13に示す試験結果をまとめた
図14は、NOx吸着率が50%にまで低下した時点におけるNOx吸着量とPd担持量との関係を表わす。
図14は、Pd担持量を1.0g/Lよりも少なくするとNOx吸着量が増大することを表わす。この現象が生じる理由は、Pdは酸化力が強いため、Pd担持量を少量にすることで、COがNOxの吸着を阻害(CO阻害)する度合いを低減できるからと考察される。なお、CO阻害とは、吸着部に吸着可能なNO
2が、Pdにより活性化したCOと反応してNOに変化してしまい、吸着できなくなることを言う。
【0078】
さらに
図14に示す試験結果は、以下のことを意味する。すなわち、Pd担持量を0.5g/L以下にするとCO阻害が急激に抑制されてNOx吸着量が急増する。さらに、Pd担持量を0.2g/L以下にすると、0.7g/L以上といった十分に高いNOx吸着量の値を得ることができ、さらに、Pd担持量を0.05g/LにするとNOx吸着量が最大となる。但し、Pd担持量をゼロにしてしまっては、吸着部に付着したPMを燃焼させて除去するといった酸化触媒の機能が得られなくなる。したがって、Pd担持量は0.1g/L以上であることが望ましい。
【0079】
図13及び
図14に係る試験では酸化触媒にPdを用いているが、発明者らは、
図15に示すように、酸化触媒にPtを用いた場合についても、Pt担持量を0.5g/L、0.2g/L、0.1g/L、0.0g/Lの各々に変更して試験している。
図15に係る試験条件のうち、試験用排ガスの成分、空間速度、温度等の条件は、
図13に係る試験の条件と同じである。
【0080】
図15に示す試験結果をまとめた
図16は、NOx吸着率が50%にまで低下した時点におけるNOx吸着量とPt担持量との関係を表わす。
図16は、Pt担持量が1.0g/Lよりも少ない領域では0.2g/L以上のNOx吸着量を確保できることを表わす。この現象が生じる理由は、Ptは酸化力が強いため、Pt担持量を少量にすることで、COがNOxの吸着を阻害(CO阻害)する度合いを低減できるからと考察される。
【0081】
さらに
図16に示す試験結果は、以下のことを意味する。すなわち、Pt担持量を0.5g/L以下にするとCO阻害が急激に抑制されてNOx吸着量が急増する。さらに、Pt担持量を0.2g/L以下にすると、0.7g/L以上といった十分に高いNOx吸着量の値を得ることができ、さらに、Pt担持量を0.1g/LにするとNOx吸着量が最大となる。但し、Pt担持量をゼロにしてしまっては、吸着部に付着したPMを燃焼させて除去するといった酸化触媒の機能が得られなくなる。したがって、Pt担持量は0.1g/L以上であることが望ましい。
【0082】
以上により、吸着部が有する高活性酸化触媒がPd及びPtである場合には、Pd担持量又はPt担持量を以下のように設定することが望ましいことが、明らかとなった。すなわち、担持量を0.5g/L以下にすれば、CO阻害が急激に抑制されてNOx吸着量が急増するので、CO阻害によりNOx吸着量が少なくなるといった懸念を低減できる。さらに、担持量を0.2g/L以下にすれば、CO阻害の影響をより一層低減でき、NOx吸着量をさらに増大させることができる。さらに、担持量を0.1g/L以上にすれば、吸着部53に付着したPMを燃焼させて除去するといった酸化触媒53bの機能を得ることができる。
【0083】
(第4実施形態)
上記第1実施形態では、吸着部53の酸化触媒53bとしてAgだけを用いたが、第4実施形態では、酸化触媒53bが第1触媒及び第2触媒という2つの触媒を有している。第1触媒としては、Ag、Cu、Fe、Au、Co、Mn、Ni、Ceといった金属のいずれかを用いており、第2触媒としては、Pd、Pt、Rh、Ru、Irといった金属のいずれかを用いている。第1触媒として使用可能な金属については、いずれもCOの活性を高める能力及び酸化力がPtに比べて低くなっている。また、第2触媒のPdについては、COの活性を高める能力及び酸化力がPtに比べて低くなっている。
【0084】
例えば、第1触媒としてAgが用いられ、第2触媒としてPtが用いられた構成とする。この構成では、吸着部53において、第2触媒の含有量が第1触媒の含有量よりも小さくなっている。例えば、第2触媒の含有量は、上記第3実施形態と同様に1g/L以下の少量とされている。このため、第2触媒がCOの活性を高める能力を制限できる。
【0085】
酸化触媒53bが第1触媒及び第2触媒を有している構成では、酸化触媒53bが第1触媒及び第2触媒のうち一方だけを有している構成に比べて、PMに対する酸化触媒53bの酸化力が高められる。このため、PMが吸着部53に付着したとしても、そのPMが燃焼しやすくなる。
【0086】
発明者らは、第1触媒として、Cu、Fe、Au、Co、Mn、Ni、Ceのうち1つを用いた構成、及びAg、Cu、Fe、Au、Co、Mn、Ni、Ceのうち複数を用いた構成についても、第1触媒としてAgだけを用いた場合と同様の効果を奏するとの知見を得た。また、第2触媒として、Pd、Rh、Ru、Irのうち1つを用いた構成、及びPd、Pt、Rh、Ru、Irのうち複数を用いた構成についても、第2触媒としてPtだけを用いた場合と同様の効果を奏するとの知見を得た。さらに、第1触媒として用いる金属と、第2触媒として用いる金属とをどのような組み合わせにしても、第1触媒としてAgを用い、第2触媒としてPtを用いた構成と同様の効果を奏するとの知見を得た。
【0087】
(第5実施形態)
上記第1実施形態では、コート層53aの担体としてAl
2O
3だけが用いられている。これに対して、第5実施形態では、コート層53aの担体として、Al
2O
3、ゼオライトzeolite、シリカSiO
2、セリアCeO、ジルコニアZrO
2、ランタンLa、チタニアTiO
2のうち複数が用いられている。具体的には、Al
2O
3、zeolite、SiO
2、CeO、ZrO
2、La、TiO
2のうち、酸化触媒53bの活性を高める組み合わせとなる2つの担体がコート層53aに含まれている。
【0088】
例えば、上記第1実施形態のように酸化触媒53bとしてAgが用いられた場合、Agの活性を高める組み合わせとして、Al
2O
3、TiO
2がコート層53aに含まれた構成とする。この場合、Agの活性がAl
2O
3、TiO
2により高められることで、吸着部53に吸着したPMが燃焼しやすい構成を実現した上で、酸化触媒53bcがAgとされていることで、吸着触媒53cへのNOxの吸着をCOが阻害しにくい構成を実現できる。
【0089】
また、Agの活性を高める組み合わせとしては、Al
2O
3とLaとの組み合わせなどが挙げられる。また、Ptの活性を高める組み合わせとしては、Al
2O
3とTiO
2との組み合わせが挙げられる。このように、酸化触媒53bとして、Ag、Cu、Fe、Au、Co、Mn、Ni、Ceや、Pd、Pt、Rh、Ru、Irのいずれが用いられた場合でも、酸化触媒53bの活性をコート層53aにより高めることが可能である。
【0090】
(第6実施形態)
上記第1実施形態では、吸着部53において、酸化触媒53bがコート層53aに混合されていたが、第6実施形態では、酸化触媒53bがコート層53aと還元部52との間に設けられている。
【0091】
図17に示すように、コート層53aと還元部52との間には、酸化触媒53bにより形成された酸化層61が配置されている。酸化層61は、還元部52の内周面の全体を覆っている。この構成では、格子通路55を流れる排気は、コート層53aを通過した後に酸化層61に到達し、この酸化層61を通過した後に還元部52に到達する。このため、吸着部53を通過する排気については、COの周囲に存在するNOxがコート層53aの吸着触媒53cに吸着された後に、そのCOが酸化層61に到達することになる。
【0092】
この場合、仮にCOの活性が酸化層61の酸化触媒53bにより高められたとしても、COの活性が高まったタイミングではそのCOの周囲に存在するNOxの数が減っている。したがって、コート層53aにおいて吸着触媒53cへの吸着がCOにより阻害されるNOxの数が少なくなる。
【0093】
第6実施形態によれば、吸着部53において、コート層53aよりも還元部52側に酸化層61が配置されている。この場合、仮にCOの活性が酸化層61の酸化触媒53bにより高められたとしても、COにより吸着阻害されるNOxの数が少なくなるため、吸着部53のNOx吸着能力が低下することを抑制できる。
【0094】
(他の実施形態)
以上、本発明の複数の実施形態について説明したが、本発明は、それらの実施形態に限定して解釈されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態及び組み合わせに適用することができる。
【0095】
変形例1では、
図18に示すように、NOx浄化装置12において還元部52が吸着部53の下流側に配置されていてもよい。この場合でも、排気が吸着部53を通過した後に還元部52に到達する構成を実現できる。さらに、還元部52が吸着部53の下流側に配置されている場合において、
図19に示すように、吸着部53とは別の下流側吸着部530を、吸着部53の下流側かつ還元部52の上流側に設けてもよい。吸着部53及び下流側吸着部530の各々は、Al
2O
3等の担体を保持する基材を有しており、担体は、酸化触媒及び吸着触媒を担持している。吸着部53と下流側吸着部530とでは、担体1リットル当りの酸化触媒の担持量が異なる。
図19の例では、下流側吸着部530の基材と吸着部53の基材とが1つの基材で共用されており、下流側吸着部530と吸着部53とが一体の状態になっている。具体的には、基材のうち上流側部分に、吸着部53用の酸化触媒及び吸着触媒が担持され、基材のうち下流側部分に、下流側吸着部530用の酸化触媒及び吸着触媒が担持されている。なお、これらの基材を別々に設けて、下流側吸着部530と吸着部53とを別体の状態にしてもよい。
【0096】
図19に示す変形例2では、吸着部53及び下流側吸着部530の酸化触媒には、Pd又はPtが用いられている。そして、下流側吸着部530でのPd担持量又はPt担持量は、吸着部53でのPd担持量又はPt担持量よりも多く設定されている。そのため、下流側吸着部530では、吸着部53に比べてCO阻害は大きいものの、PMを酸化する能力は高くなる。
【0097】
ここで、排気浄化装置が所定温度未満となっている低温時には、NOx吸着量はCO阻害の影響を大きく受けるのに対し、所定温度以上となっている高温時には、NOx吸着量はCO阻害の影響をあまり受けなくなる。したがって、下流側吸着部530での担持量を吸着部53での担持量よりも多く設定する
図19の変形例2によれば、低温時には吸着部53が高い吸着性能を発揮し、高温時には下流側吸着部530が高い吸着性能を発揮することとなる。
【0098】
変形例3では、
図20に示すように、NOx浄化装置12の基材51がウォールフロー型のハニカムとされていてもよい。例えば、複数の格子通路55には、上流側端部から排気が流れ込む流入通路55aと、下流側端部から排気が流れ出す流出通路55bとが含まれた構成とする。基材51は、排気を通過させることが可能な構成になっており、基材51においては、排気の流れを遮断する目封じ壁62が、流入通路55aの下流側端部及び流出通路55bの上流側端部のそれぞれに設けられている。
【0099】
この構成では、
図21に示すように、流入通路55aの内周面に層状の吸着部53が重ねられ、流出通路55bの内周面に層状の還元部52が重ねられている。この場合でも、排気が吸着部53を通過した後に還元部52に到達する構成を実現できる。
【0100】
変形例4では、吸着部53のうち排気が最初に到達する部分は、HCトラップ材を含む。HCトラップ材とは、排気中のHCを捕捉するゼオライト又はジルコニアのことである。例えば、
図22の例では、還元部52及び吸着部53を基材51に積層した構造の排気浄化装置にHCトラップ材53dを含ませている。具体的には、吸着部53のうち格子通路55との接触面を含む部分にHCトラップ材53dが含まれており、その他の部分にはHCトラップ材53dが含まれていない。これによれば、排気中のHCがHCトラップ材53dにより捕捉されるので、HCトラップ材53dの後に排気が到達する部分において、吸着触媒53cがHCに被毒してNOx吸着量が低下することを抑制できる。なお、
図22の例では、
図3の構造の吸着部53にHCトラップ材53dを含ませているが、
図17の構造において、吸着部53のコート層53aにHCトラップ材53dを含ませてもよい。また、
図21の構造において、吸着部53にHCトラップ材53dを含ませてもよい。
【0101】
変形例5では、吸着部53の吸着触媒53cとしてBaが用いられていなくてもよい。例えば、吸着触媒53cとしてアルカリ及びアルカリ土類金属のうち1つが用いられた構成や、アルカリ及びアルカリ土類金属のうち複数が用いられた構成とする。アルカリ及びアルカリ土類金属としては、Baの他に、Na、Li、K、Cs、Srが挙げられる。これらNa、Li、K、Cs、Srのいずれが吸着触媒53cとして用いられた場合でも、吸着部53のNOx吸着容量が適正に確保されるため、吸着触媒53cとしてBaが用いられた場合と同様の効果を奏する。
【0102】
変形例6では、吸着部53のコート層53aにおいて、Al
2O
3等の担体の含有量と吸着触媒53cの含有量とが異なっていてもよい。例えば、担体の含有量がごく少量又は「0」とされた構成とする。この構成でも、コート層53aに吸着触媒53cが含まれていれば、コート層53aにNOx吸着能力を付与できる。
【0103】
変形例7では、酸化触媒53bが吸着部53のコート層53aに混合されているのではなく、酸化触媒53bがコート層53aの内周面に対して設けられていてもよい。例えば、上記第6実施形態において、酸化層61がコート層53aの内周面に重ねられた構成とする。この構成でも、COの活性を高める能力が比較的低いAg等が酸化触媒53bとして用いられることで、COによる吸着阻害が発生しにくくなる。
【0104】
変形例8では、排気通路16に供給される酸化ガスとしては、オゾンの他に、過酸化水素水H
2O
2やアルデヒドなどが挙げられる。
【0105】
変形例9では、燃焼システムが、ディーゼルエンジンではなく、直噴ガソリンエンジンであってもよい。
【0106】
上記第3実施形態では、
図2に示す構造の吸着部53において、高活性酸化触媒の担持量を、0.5g/L以下、望ましくは0.2g/L以下、かつ、1g/L以上に設定している。つまり、酸化触媒53bは、吸着部53において吸着触媒53cに混じり合った状態において、上記担持量に設定してもよい。これに対し、
図17に示す構造の吸着部53の酸化層61において、上記第3実施形態と同様の値に高活性酸化触媒の担持量を設定してもよい。また、
図18や
図19に示す構造の吸着部53において、上記第3実施形態と同様の値に高活性酸化触媒の担持量を設定してもよい。
【0107】
上記第3実施形態では、吸着部53が有する酸化触媒にPdおよびPtのいずれかを用いているが、PdおよびPtの両方を用いてもよい。この場合、Pd担持量およびPt担持量の両方を合わせた値が、0.5g/L以下、望ましくは0.2g/L以下、かつ、1g/L以上に設定されていることが望ましい。また、吸着部53が有する酸化触媒に、PdおよびPtの少なくとも一方と、Ag等の高活性酸化触媒以外の酸化触媒との両方を用いてもよい。この場合であっても、Pd担持量およびPt担持量の両方を合わせた値が、0.5g/L以下、望ましくは0.2g/L以下、かつ、1g/L以上に設定されていることが望ましい。