特許第6693199号(P6693199)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6693199
(24)【登録日】2020年4月20日
(45)【発行日】2020年5月13日
(54)【発明の名称】熱伝導性部材及びデバイス
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/14 20060101AFI20200427BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20200427BHJP
   C08K 7/18 20060101ALI20200427BHJP
【FI】
   C09K5/14 E
   C08L101/00
   C08K7/18
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-55362(P2016-55362)
(22)【出願日】2016年3月18日
(65)【公開番号】特開2017-165932(P2017-165932A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2019年1月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宮沢 豪
(72)【発明者】
【氏名】坂口 香織
(72)【発明者】
【氏名】澤口 壽一
(72)【発明者】
【氏名】柏村 岳
【審査官】 中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−144626(JP,A)
【文献】 特開2012−238819(JP,A)
【文献】 特開2012−144638(JP,A)
【文献】 特開2012−224711(JP,A)
【文献】 特開2010−044998(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/119384(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K5/00−5/20、
H01L23/28−23/31、
C08K3/00−13/08、
C08L1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
球形状の熱伝導性無機粒子A、樹脂粒子B、およびバインダーCを含む熱伝導性部材であって、下記条件(1)〜(4)を全て満たす熱伝導性部材。
(1)熱伝導性無機粒子Aの平均粒子径DAが60〜150μmである。
(2)樹脂粒子Bの平均粒子径DBと熱伝導性無機粒子Aの平均粒子径DAとの関係、DB/DAが3/1〜0.75/1である。
(3)熱伝導性無機粒子A、樹脂粒子B、およびバインダーCの合計100質量%中、熱伝導性無機粒子Aを30〜90質量%含む。
(4)熱伝導性部材の厚みtと樹脂粒子Bの平均粒子径DBとの関係、t/DBが2.5/1〜1/1である。
【請求項2】
熱伝導性無機粒子AとバインダーCの質量比が、9/1〜1.25/1である、請求項1記載の熱伝導性部材
【請求項3】
樹脂粒子BとバインダーCの質量比が、0.25/1〜4/1である、請求項1また2記載の熱伝導性部材
【請求項4】
シート状である請求項1〜3いずれか1項に記載の熱伝導性部材。
【請求項5】
放熱材と発熱体との間に、請求項1〜4いずれか1項に記載の熱伝導性部材が挟まれている、デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子・電気機器の熱を逃がすための熱伝導性を有する熱伝導性部材に関する。また、本発明は、熱伝導性部材を用いたデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロニクス分野の発展が目覚しく、特に電子機器の小型化、軽量化、高密度化、高出力化が進み、これらの性能に対する要求がますます高度なものとなっている。電子回路の高密度化のために高絶縁性信頼性や小型化が求められるほか、特に、電子機器の高出力化に伴う発熱による電子機器の劣化防止のための放熱性向上が強く求められている。
エレクトロニクス分野では絶縁材として高分子材料が好適に用いられているが、放熱性を向上させるため、高分子材料にも熱伝導性の向上が望まれるようになった。しかし、高分子材料の熱伝導性向上には限界があったため、熱伝導性無機粒子を高分子材料に混合し、放熱性を向上させる方法が開発された。
【0003】
上記のように無機粒子を配合して高熱伝導性樹脂組成物を得る際には、通常は炭素繊維等の導電性物質を添加する方法が用いられているが、このような方法では樹脂組成物が導電性を示してしまうため、電子機器材料等の絶縁性が要求される用途では制限される。一方で絶縁性かつ高熱伝導性の無機粒子を添加するような方法で高熱伝導性樹脂組成物を得ようとすると、通常、高熱伝導性無機粒子を70質量%以上もの高含有率で樹脂に配合する必要がある。
【0004】
しかしながら、大量に高熱伝導性無機粒子を樹脂中に配合すると、樹脂の量が減少するため、成膜性及び基材追従性の低下が起こってしまうという問題点があった。
そこで、より少ない無機粒子の使用量で粒子同士を接触させ、従来と同程度の熱伝導性を付与できる、熱伝導パスの形成方法が種々提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、無機粒子として板状の窒化ホウ素粒子と熱可塑性樹脂、耐熱性粒子を含有する樹脂組成物が開示され、前記耐熱性粒子として、架橋ポリアクリル酸エステル粒子の利用が開示されている。
【0006】
特許文献2には、熱可塑性樹脂、ポリアミド系樹脂、および高熱伝導性無機化合物よりなり、前記ポリアミド系樹脂が連続相層を形成し、熱可塑性樹脂中にも高熱伝導性無機化合物が存在する、高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物が記載されている。
【0007】
特許文献3には、有機樹脂マトリックス内に、フィラーが樹枝状に凝集し厚み方向に配向しているシート状複合材料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012−144626号公報
【特許文献2】特開2007−327010号公報
【特許文献3】特開2007−332224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1には、耐熱性粒子の存在により、熱伝導無機フィラー同士が交差(又は交絡)して接触することにより、熱の導通路又は経路(チャネル又はパス)を形成するためか、熱伝導性無機粒子が少量であっても、樹脂組成物の熱伝導性を向上できると記載されている。しかしながら、耐熱性粒子同士の接触により熱伝導パスが途絶えてしまう。また、熱伝導性シートの厚みが非常に厚いので、熱伝導無機フィラーと耐熱性粒子の比重差により、厚み方向に耐熱性粒子の分布差を生じてしまう。その結果、熱伝導無機フィラー同士が交差して接触する熱伝導パスの形成は困難である。また、熱伝導性シートの厚みが厚くなると熱抵抗も大きくなる。
【0010】
特許文献2には、高熱伝導性無機化合物を熱可塑性樹脂相内に優先的に配置することにより、樹脂組成物の熱伝導率を大幅に向上させ得ると記載されている。しかしながら、特許文献2における高熱伝導性無機化合物の体積平均粒子径は1nm〜12μm程度と小さいので、高熱伝導性無機化合物の表面積が大きくなり、熱可塑性樹脂およびポリアミド樹脂との接触が増え、熱損失を受けやすく、熱伝導性は低い。
【0011】
特許文献3には、印加により樹枝状に凝集したパスを形成できるため、熱伝導性を向上させ得ると記載されている。しかしながら、かかる手法は、工業化を加味すると実用的なものではない。
【0012】
本発明の目的は、熱伝導性無機粒子の割合が従来よりも少量であっても従来と同程度以上の熱伝導性を有するか、あるいは熱伝導性無機粒子の割合が従来と同程度であれば、従来よりも高い熱伝導性を有する熱伝導性部材及び熱伝導性部材を、工業的に生産可能な簡便な方法で提供することにある。
本発明の他の目的は、成膜性に優れる熱伝導性部材及び熱伝導性シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、熱伝導性無機粒子Aの大きさと量、熱伝導性無機粒子Aと樹脂粒子Bの大きさのバランス、熱伝導性無機粒子Aの大きさと部材の厚みとを適切に制御することにより、熱伝導性無機粒子Aを厚み方向に効果的に並べるようにしたものである。
【0014】
即ち、本発明は、熱伝導性無機粒子A、樹脂粒子B、およびバインダー樹脂Cを含む熱伝導部材であって、下記条件(1)〜(4)を全て満たす熱伝導性部材。
(1)熱伝導性無機粒子Aの平均粒子径Dが20〜150μmである。
(2)樹脂粒子Bの平均粒子径Dと熱伝導性無機粒子Aの平均粒子径Dとの関係、D/Dが3/1〜0.75/1である。
(3)熱伝導性無機粒子A、樹脂粒子B、およびバインダーCの合計100質量%中、熱伝導性無機粒子Aを30〜90質量%含む。
(4)熱伝導性部材の厚みtと樹脂粒子Bの平均粒子径Dとの関係、t/Dが2.5/1〜1/1である。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、工業的に生産可能な簡便な方法で、熱伝導性無機粒子の割合が従来よりも少量であっても従来と同程度以上の熱伝導性を有するか、あるいは熱伝導性無機粒子の割合が従来と同程度であれば、従来よりも高い熱伝導性を有する熱伝導性部材を提供できるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[熱伝導性部材]
本発明の熱伝導性部材は、熱伝導性無機粒子A、樹脂粒子B及びバインダーCを含む。本発明の熱伝導性部材において、樹脂粒子B以外の相に熱伝導性無機粒子Aが濃縮され、熱伝導性無機粒子A同士が接触することにより、熱伝導パスを形成するために、熱伝導性無機粒子Aの割合が少量であっても熱伝導性を付与できる。あるいは従来と同程度の割合でより高い熱伝導性を熱伝導部材に付与できる。
特に、熱伝導部材の膜厚tと樹脂粒子Bの平均粒子径Dの関係が重要である。即ち、t/Dが2.5/1〜1/1であることにより、樹脂粒子B同士の間隔に熱伝導性無機粒子Aを濃縮することができ、部材の厚さ方向に平行に延びたストライプ状の熱伝導パスが形成されるため、厚み方向の熱伝導性を向上できる。
【0017】
本発明において「平均粒子径:D」とは、測定サンプルの50体積%における分散粒径の値であり、これらは光学顕微鏡にて実測あるいは市販のレーザー回折式光散乱粒度計、例えば、日機装(株)社製「Microtrak MT3300ExII」で測定することができる。
測定条件
透過性:透過
形状:真球
測定時間:60秒
測定レンジ:0.02〜2000μm
分散媒:メチルエチルケトン
【0018】
本発明の熱伝導部材の厚さtは、用途に応じて適宜決定しうるが、熱源体とヒートシンク等の間に存在し、熱を逃がすために用いられるような場合には、熱伝導性や熱抵抗の観点より、通常10〜200μm、好ましくは20〜150μmとするのが良い。また、筺体のように熱源からの熱がこもらないようなパッケージとして用いられるような場合には、強度等を鑑みて200μm以上、場合によっては1mm程度の厚さとすることもできる。
【0019】
(熱伝導性無機粒子A)
熱伝導性粒子Aは、熱伝導率を有するものであれば、特に限定されず、例えば、
酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等の金属酸化物、
窒化アルミニウム、窒化ホウ素等の金属窒化物、
水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、
炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸金属塩、
ケイ酸カルシウム等のケイ酸金属塩、
水和金属化合物、
結晶性シリカ、非結晶性シリカ、炭化ケイ素またはこれらの複合物、
金、銀等の金属、
カーボンブラック、グラフェン、カーボンナノチューブ、炭素繊維等の炭素化合物等が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用することもできる。
【0020】
電子回路用途で用いる場合は絶縁性を有していることが好ましく、金属酸化物、金属窒化物が好適に用いられ、なかでも熱伝導性の観点から、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素がより好適に用いられる。熱伝導性に加え耐加水分解性という安全の観点から窒化ホウ素の使用が特に好ましい。
【0021】
熱伝導性無機粒子Aの形状は、球形状又は異方形状(繊維状及び不定形状を除く)であればよく、例えば、球状、鱗片状、棒状などが挙げられる。本発明では、樹脂粒子の粒子径Dと熱伝導部材の厚さtとの関係を満たす場合、樹脂粒子同士の間隔に熱伝導無機粒子が濃縮された熱伝導パスを形成するため、面内に配向してしまう異方形状よりも等方的な熱伝導性を有する球形状がより好ましい。
【0022】
熱伝導性無機粒子Aは、一次粒子を結着剤で凝集させた凝集体であってもよい。
例えば、熱伝導性無機粒子、結着剤、およびこれらの成分を溶解または分散する溶剤を含有するスラリーを得て、次いで、スラリーから溶剤を除去する方法によって、得ることができる。スラリーから溶剤を除去する方法は特に制限なく、市販の装置を用いることができる。例えば、噴霧乾燥、撹拌乾燥、および静置乾燥等の方法の中から選択することができる。噴霧条件および揮発条件により目的に応じた粒径を有する凝集体を得ることができる。
【0023】
本発明において「一次粒子」とは、単独で存在することができる最小粒子を表し、「平均一次粒子径」とは、走査型電子顕微鏡で観察される一次粒子径の長径を意味する。「一次粒子径の長径」とは、球状粒子については一次粒子の最大直径を意味し、六角板状または円板状粒子については、それぞれ厚み方向から観察した粒子の投影像における最大直径または最大対角線長を意味する。具体的に「平均一次粒子径」は、300個の粒子の長径を上記方法により測定し、その個数平均として算出する。
【0024】
熱伝導性無機粒子Aの平均粒子径Dは20〜150μm程度の範囲から適宣選択でき、より好ましくは60〜150μmである。熱伝導性無機粒子Aとして凝集体を用いる場合は、凝集体の平均粒子径の意である。
熱伝導性無機粒子Aの平均粒子径Dが20μm以上であることにより、熱伝導パスを形成する粒子同士の接触点は減少するが、粒子の表面積が小さく大きくなるためにバインダーCとの接触による熱損失を受けにくくなり、熱伝導性は向上する。
一方、熱伝導無機粒子Aの平均粒子径Dが150μm以下であることにより、熱伝導性部材は、熱伝導性無機粒子A、樹脂粒子B及びバインダーCを含む分散体中、熱伝導性無機粒子Aが沈降し難くなり、成膜性が向上する。
【0025】
(樹脂粒子B)
樹脂粒子Bとしては特に熱伝導性を有していなくてもよく、樹脂粒子を構成する有機化合物としては、例えば、
架橋アクリル樹脂、架橋スチレン樹脂等の架橋熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、メラニン樹脂、ウレア樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、エステル樹脂、アミド樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリブタジエン、ポリイソブレン、スチレン−ブタジエンゴムなどのジエン系ゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−酢酸ビニルゴム状共重合体、ブチルゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴ等のゴムが挙げられる。
【0026】
これらの樹脂粒子Bを部材中に含むと、柔軟性が高い部材を調製できる。熱伝導性無機粒子を含んでいても有機粒子により部材の柔軟性を向上できる。
【0027】
樹脂粒子Bの平均粒子径Dは、熱伝導部材の最大厚みtとの関係、t/Dが2.5/1〜1/1を満たす範囲であれば特に限定されない。しかし、部材の最大厚みtが200μmを超えると、厚さが増すほど厚み方向への熱抵抗が多くなるので、樹脂粒子Bの平均粒径Dは1〜200μmが好ましい。
また、樹脂粒子Bの平均粒径Dと熱伝導無機粒子Aの平均粒径Dとの関係、D/Dが3/1〜0.75/1を満たす範囲で、樹脂粒子B同士の間隔に熱伝導無機粒子Aが濃縮され、効果的に熱伝導パス形成性するため、樹脂粒子Bの平均粒径Dは60〜100μmがより好ましい。その結果、少量の熱伝導性無機粒子の使用で熱伝導性の向上ができる。
【0028】
(バインダーC)
熱伝導性部材を得る際に用いられるバインダーCとしては、例えば、
ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、アルキッド樹脂、ブチラール樹脂、アセタール樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、スチレン樹脂、ニトロセルロース、ベンジルセルロース、セルロース(トリ)アセテート、カゼイン、シェラック、ギルソナイト、ゼラチン、スチレン−無水マレイン酸樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/マレイン酸共重合体樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、マレイン酸樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ケトン樹脂、石油樹脂、ロジン、ロジンエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルニトロセルロース、エチレン/ビニルアルコール樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、変性塩素化ポリオレフィン樹脂および塩素化ポリウレタン樹脂からなる郡より用途に応じて選ばれる1種または2種以上を適宜使用することができる。
中でも柔軟性の観点からウレタン系樹脂又はアミド系樹脂、エステル樹脂が用いられ、さらに電子部品として用いる際の耐熱性等の観点からアミド系樹脂が好適に用いられる。
【0029】
熱伝導性部材に含まれるバインダーCは、上記樹脂自体硬化するか、もしくは適当な硬化剤との反応により硬化するものを用いることができる。
【0030】
本発明の熱伝導性部材は、慣用の添加剤、例えば、安定剤(熱安定性、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤など)、電磁波吸収材、帯電防止剤、着色剤などを含有していてもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種類以上組合せて使用できる。
【0031】
本発明の熱伝導性部材は、熱伝導性無機粒子A、樹脂粒子B、およびバインダーCの合計100質量%中、熱伝導性無機粒子Aを30〜90質量%含み、50〜75質量%であることが好ましい。
また、熱伝導性無機粒子AとバインダーCとの質量比は、A/C=9/1〜1.25/1であることが好ましい。
さらに、
樹脂粒子BとバインダーCとの質量比は、B/C=10/90〜90/10であることが好ましく、より好ましくは0.25/1〜4/1である。
【0032】
本発明の熱伝導性部材は、発熱体と放熱材との間に挟まれ、効率よく熱を逃がすために性能劣化を防ぐ役割を果たす。放熱対象の物品としては、集積回路、ICチップ、ハイブリットパケージ、マルチモジュール、パワートランジスター、およびLED(発光ダイオード)用基板等の電子部品に用いられる。
【0033】
高熱伝導性を実現するためには、熱を伝えたい方向へより多くの熱伝導パスを形成することが重要である。本発明の熱伝導部材は、樹脂粒子同士の間に熱伝導性無機粒子が濃縮するために、効率的に熱伝導パスを形成する。しかも、熱伝導部材の最大厚みtと樹脂粒子の平均粒子径Dとの関係は、t/Dが2.5/1〜1/1を満たす範囲であれば、厚さ方向に対して柱状のパスとなるため、発熱体から放熱材への方向に熱を効果的に逃がすことができる。
本発明で言う「最大厚み」とは、発熱体と放熱部材との間の最も熱い部分の厚みである。最大厚みは、10〜200μmμmであることが好ましく、20〜150μmであることがより好ましい。
【0034】
熱伝導性部材の1つとして、熱伝導性シートを例にとり説明する。
熱伝導性シートは、基材上に溶剤を含有する熱伝導性樹脂組成物を塗工・乾燥し、加圧することで形成できる。加圧前を前駆部材ないし前駆シートという。なお、熱伝導性シートは熱伝導性フィルムと称されることもある。
【0035】
溶剤を含有する熱伝導性組成物は、熱伝導性無機粒子Aと、樹脂粒子Bと、バインダーCと、溶剤とを撹拌混合することで製造することが好ましい。
撹拌混合には一般的な撹拌方法を用いることができ、例えば、スキャンデックス、ペイントコンディショナー、サンドミル、らいかい機、メディアレス分散機、三本ロール、ビーズミル等が挙げられ、これらを組み合わせて行うことができる。
なお、ここでいう溶剤とは分散媒の意である。
【0036】
撹拌混合後は、熱伝導性樹脂組成物から気泡を除去するために、脱泡工程を経ることが好ましい。脱泡の方法については特に限定されず、一般的な手法を用いて行うことができるが、例えば、真空脱泡、超音波脱泡等が挙げられる。
【0037】
熱伝導性樹脂組成物には、必要に応じて慣用の各種添加剤を加えることができる。各種添加剤としては、例えば、基材密着性を高めるためのカップリング剤、熱伝導性無機粒子とバインダー樹脂の分散性を高める分散剤、吸湿時の絶縁信頼性を高めるためのイオン捕捉剤、レベリング剤等が挙げられる。これらは1種を用いてもよいし、複数種を併用することもできる。
【0038】
塗工方法としては、特に限定されず、公知の手法を用いることができ、例えば、ナイフコート、ダイコート、リップコート、ロールコート、カーテンコート、バーコート、グラビアコート、フレキソコート、ディップコート、スプレーコート、スピンコート等が挙げられる。また、金型に流し込みキャストしてもシートは作成できる。
【0039】
基材は、例えば、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリイミドフィルム等のプラスチックフィルムや、前記プラスチックフィルムに離型処理したフィルム(以下、剥離フィルムという)等を使用することができる。さらに、アルミニウム、銅、ステンレス、ベリリウム銅などの金属や、これらの合金の箔状物を基材として使用することができる。
【0040】
次いで、熱伝導性シートの熱伝導層の表面に他の基材を重ね、加熱下で加圧プレスすることによって、前駆部材であったシートの熱伝導性を高め、高熱伝導性部材とすることができる。
剥離フィルムに熱伝導性樹脂組成物を塗工・乾燥した場合には、熱伝導層の表面に他の剥離フィルムを重ね、加熱下で加圧プレスし、2枚の剥離フィルムに挟まれたシート状の高熱伝導性部材を得て、剥離フィルムを剥がしシート状の高熱伝導性部材を単離できる。あるいは熱伝導層の表面に、同一の熱伝導層を重ね、加熱下で加圧プレスし、高熱伝導性部材の積層物を得ることもできる。
【0041】
加圧プレス処理は、特に限定されず、公知のプレス処理機を使用することができる。また、プレス時の温度は適宜選択することが出来るが、熱硬化性接着シートとして使用するのであれば、バインダー樹脂と硬化剤の熱硬化反応が起こる温度以上で加熱することが望ましい。
【0042】
プレス時の圧力は、熱伝導性無機粒子同士が接触する程度の圧力を適宜選択することができる。
【0043】
また、熱源体を金型で覆い、その隙間に溶剤を含有しない熱伝導性樹脂組成物を流し込み、加圧下で成型することによって、高熱伝導の成型物を得ることもできる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、実施例における「%」は、「質量%」を表す。
【0045】
熱伝導性無機粒子の平均粒子径、実施例で得られた熱伝導シートの熱伝導性は以下の方法で測定した。
【0046】
<平均粒子径>
日機装(株)社製「Microtrak MT3300ExII」を用いて平均粒径を測定した。なお、平均粒径とは、測定サンプルの50体積%における分散粒径の値である。
【0047】
<熱伝導率>
サンプル試料を15mm角に切り出し、サンプル表面を金蒸着しカーボンスプレーでカーボン被覆した後、キセノンフラッシュアナライザーLFA447 NanoFlash(NETZSCH社製)にて、試料環境25℃での熱拡散率を測定した。
また、比熱容量はエスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製の高感度型示差走査熱量計DSC220Cを用いて測定した。さらに、密度は水中置換法を用いて算出した。熱伝導率は、下記式に基づいて熱伝導率を求めた。
伝導率(W/m・K)=密度(g/cm)×比熱(J/kg・K)×熱拡散率(mm/s)。
【0048】
(樹脂合成例1)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、導入管、温度計を備えた4口フラスコに、多塩基酸化合物としてプリポール1009を86.8g、5−ヒドロキシイソフタル酸を27.3g、ポリアミン化合物としてプリアミン1074を146.4g、イオン交換水を100g仕込み、発熱の温度が一定になるまで撹拌した。温度が安定したら110℃まで昇温し、水の流出を確認してから、30分後に温度を120℃に昇温し、その後、30分毎に10℃ずつ昇温しながら脱水反応を続けた。230℃に到達後、そのままの温度で3時間反応を続け、約2kPaの真空下で、1時間保持し、温度を低下させた。最後に、酸化防止剤を添加し、重量平均分子量19000、酸価14.5KOHmg/g、フェノール性水酸基価32.3KOHmg/g、ガラス転移温度―7℃のフェノール性水酸基含有ポリアミドを得た。
【0049】
(樹脂合成例2)
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器に、
テレフタル酸とアジピン酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオールから得られるポリエステルポリオール((株)クラレ製「クラレポリオールP−1011」、Mn=1006)401.9重量部、ジメチロールブタン酸12.7重量部、イソホロンジイソシアネート151.0重量部、トルエン40重量部を仕込み、窒素雰囲気下90℃3時間反応させ、これにトルエン300部を加えてイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー溶液を得た。
次に、イソホロンジアミン27.8重量部、ジ−n−ブチルアミン3.2重量部、2−プロパノール342.0重量部、トルエン396.0重量部を混合したものに、得られたイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー溶液815.1重量部を添加し、70℃3時間反応させ、トルエン144.0重量部、2−プロパノール72.0重量部で希釈し、Mw=54,000、酸価=8mgKOH/gのポリウレタンポリウレア樹脂の溶液を得た。
【0050】
(樹脂合成例3)
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、導入管、窒素導入管を備えた4口フラスコに、ポリカーボネートジオール(クラレポリオール C−2090:株式会社クラレ製)292.1質量部、テトラヒドロ無水フタル酸(リカシッドTH:新日本理化株式会社製)44.9質量部、溶剤としてトルエン350.0質量部を仕込み、窒素気流下、攪拌しながら60℃まで昇温し、均一に溶解させた。続いてこのフラスコを110℃に昇温し、3時間反応させた。その後、40℃に冷却後、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(YD−8125:東都化成株式会社製)62.9質量部、触媒としてトリフェニルホスフィン4.0質量部を添加して110℃に昇温し、8時間反応させた。室温まで冷却後、トルエンで固形分が40%になるように調整し、カルボキシル基含有変性エステル樹脂溶液を得た。
【0051】
(樹脂合成例4)
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコに、ブチルアクリレート98.5重量部、アクリル酸1.5重量部、酢酸エチル150.0重量部を仕込み、窒素置換下で70℃まで加熱し、アゾビスイソブチロニトリル0.15重量部を添加し重合を開始した。重合開始後3時間後から1時間おきに5時間後までそれぞれアゾビスイソブチロニトリル0.15重量部を添加し更に2時間重合を行った。その後、酢酸エチル150.0重量部を追加して重合を終了させ、アクリル樹脂を得た。
【0052】
(熱伝導性無機粒子凝集体例1)
窒化ホウ素粒子(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン株式会社「NX−1」、平均一次粒子径:約0.7μm、)100重量部、ポリビニルアルコールの4重量%水溶液(日本合成化学工業株式会社製「ゴーセノールNL−05」):125重量部(固形分:5重量部)、及びイオン交換水:25重量部を、ディスパーで1000rpm、1時間、攪拌してスラリーを得た。
このスラリーをミニスプレードライヤー(日本ビュッヒ社製「B−290」)にて、125℃雰囲気下で、噴霧乾燥し、150μmの平均粒径を有する凝集体を得た。
【0053】
(実施例1)
熱伝導性無機粒子Aとして窒化ホウ素粒子(スリーエム ジャパンホールディングス株式会社製「Agglomerates Grades 50」、平均粒子径:20μm)28.3質量部と、樹脂粒子Bとして架橋スチレン樹脂粒子(綜研化学株式会社製「SGP−150C」、平均粒径:60μm)7.3質量部と、バインダーCとして樹脂合成例1で得られたポリアミド樹脂の40%トルエン溶液10.8質量部と、TETRAD−C(三菱ガス化株式会社)の10%トルエン溶液1.4質量部を混合し、溶剤としてイソプロピルアルコール26.1質量部およびトルエン26.1質量部で固形分が40重量部となるように調整した後、超音波脱泡をして樹脂組成物(塗液)を得た。
得られた熱伝導性樹脂組成物を、コンマコーターを用いて剥離処理シート(厚さ75μmの離型処理ポリエチレンテレフタレートフィルム)に塗工し、60℃で2分間、次いで100℃で2分加熱乾燥し、熱伝導前駆部材を得た。
熱伝導層同士が接するように前記熱伝導前駆部材を2枚重ね、150℃、4MPaで1時間プレスして、厚みが100μm、熱伝導率3.5(W/m・K)の熱伝導性部材を得た。
なお、部材中において、窒化ホウ素の含有率は71質量%であり、樹脂粒子Bの含有率は18質量%であり、バインダーCの含有率は11質量%であった。
【0054】
(実施例2)
実施例1で用いた平均粒子径が20μmの窒化ホウ素粒子の代わりに、熱伝導性無機粒子Aとして、平均粒子径:60μm窒化ホウ素粒子(「Agglomerates Grades 100」、スリーエム ジャパンホールディングス株式会社製)を用い、熱伝導性部材の厚みを100μmとした以外は実施例1と同様にして、熱伝導率6.7(W/m・K)の熱伝導性部材を得た。
なお、部材中において、窒化ホウ素の含有率は71質量%であり、樹脂粒子の含有率は18質量%であり、バインダーCの含有率は11質量%であった。
【0055】
(実施例3)
熱伝導性無機粒子Aとして、窒化ホウ素(スリーエム ジャパンホールディングス株式会社製「Platelets 15/400」、平均粒子:120μm)28.3質量部と、樹脂粒子Bとしてフェノール樹脂粒子(群栄化学株式会社製「マリリン HF−150」、平均粒径:150μm)7.3質量部と、バインダーCとして樹脂合成例1で得られたポリアミド樹脂の40%トルエン溶液10.8質量部と、TETRAD−C(三菱ガス化株式会社)の10%トルエン溶液1.4質量部を混合し、溶剤としてイソプロピルアルコール26.1質量部およびトルエン26.1質量部で固形分が40重量部となるように調整する以外は、実施例1と同様にして、熱伝導性層の厚みが200μm、熱伝導率8.0(W/m・K)の熱伝導性部材を得た。
なお、部材中において、窒化ホウ素の含有率は71質量%であり、樹脂粒子の含有率は18質量%であり、バインダー樹脂の含有率は11質量%であった。
【0056】
(実施例4)
熱伝導性無機粒子Aとして、熱伝導性無機粒子凝集体例1で得られた凝集体(平均粒子:150μm)28.3質量部と、樹脂粒子Bとしてフェノール樹脂粒子(群栄化学株式会社製「マリリン HF−150」、平均粒径:150μm)7.3質量部と、バインダーCとして樹脂合成例1で得られたポリアミド樹脂の40%トルエン溶液10.8質量部と、TETRAD−C(三菱ガス化株式会社)の10%トルエン溶液1.4質量部を混合し、溶剤としてイソプロピルアルコール26.1質量部およびトルエン26.1質量部で固形分が40重量部となるように調整する以外は、実施例1と同様にして、熱伝導性層の厚みが200μm、熱伝導率9.0(W/m・K)の熱伝導性部材を得た。なお、部材中において、窒化ホウ素の含有率は71質量%であり、樹脂粒子の含有率は18質量%であり、バインダー樹脂の含有率は11質量%であった。
【0057】
(実施例5)
熱伝導性無機粒子Aとして酸化アルミニウム粒子(昭和電工株式会社製「CBA−70」平均粒子径:70μm)28.5質量部と、樹脂粒子Bとして架橋スチレン樹脂粒子(綜研化学株式会社製「SGP−150C」、平均粒径:60μm)7.1質量部と、バインダーCとして樹脂合成例1で得られたポリアミド樹脂の40%トルエン溶液10.8質量部と、TETRAD−C(三菱ガス化株式会社)の10%トルエン溶液1.4質量部を混合し、溶剤としてイソプロピルアルコール26.1質量部およびトルエン26.1質量部で固形分が40重量部となるように調整する以外は、実施例1と同様にして、熱伝導性部材の厚みが100μm、熱伝導率3.0(W/m・K)の熱伝導性部材を得た。
なお、部材中において、酸化アルミニウム粒子の含有率は71質量%であり、樹脂粒子の含有率は18質量%であり、バインダー樹脂の含有率は11質量%であった。
【0058】
(実施例6)
熱伝導性無機粒子Aとして窒化アルミニウム粒子(トクヤマ株式会社製「H−Tグレード」、平均粒子径:80μm)28.4質量部と、樹脂粒子Bとして架橋スチレン樹脂粒子(綜研化学株式会社製「SGP−150C」、平均粒径:60μm)7.2質量部と、バインダー樹脂Cとして樹脂合成例1で得られたポリアミド樹脂の40%トルエン溶液10.8質量部と、TETRAD−C(三菱ガス化株式会社)の10%トルエン溶液1.4質量部を混合し、溶剤としてイソプロピルアルコール26.1質量部およびトルエン26.1質量部で固形分が40重量部となるように調整する以外は、実施例1と同様にして、熱伝導性部材の厚みが100μm、熱伝導率5.0(W/m・K)の熱伝導性部材を得た。
なお、部材中において、窒化アルミニウム粒子の含有率は71質量%であり、樹脂粒子の含有率は18質量%であり、バインダー樹脂の含有率は11質量%であった。
【0059】
(比較例1)
熱伝導性無機粒子Aとして窒化ホウ素(スリーエム ジャパンホールディングス株式会社製「Agglomerates Grades 50」、平均粒子径:20μm)28.4質量部と、バインダーCとして樹脂合成例1で得られたポリアミド樹脂の40%トルエン溶液28.0質量部と、TETRAD−C(三菱ガス化株式会社)の10%トルエン溶液3.6質量部を混合し、溶剤としてイソプロピルアルコール20.0質量部およびトルエン20.0質量部で固形分が40重量部となるように調整する以外は、実施例1と同様にして、熱伝導性部材の厚みが100μm、熱伝導率1.8(W/m・K)の熱伝導性部材を得た。
なお、部材中において、窒化ホウ素の含有率は71質量%であり、バインダーCの含有率は29質量%であった。
【0060】
(比較例2)
熱伝導性無機粒子Aとして酸化アルミニウム粒子(昭和電工株式会社製「CBA−70」平均粒子径:70μm)28.4質量部と、バインダーCとして樹脂合成例1で得られたポリアミド樹脂の40%トルエン溶液28.0質量部と、TETRAD−C(三菱ガス化株式会社)の10%トルエン溶液3.6質量部を混合し、溶剤としてイソプロピルアルコール20.0質量部およびトルエン20.0質量部で固形分が40重量部となるように調整する以外は、実施例1と同様にして、熱伝導性部材の厚みが100μm、熱伝導率2.0(W/m・K)の熱伝導性部材を得た。
なお、部材中において、酸化アルミニウムの含有率は71質量%であり、バインダーCの含有率は29質量%であった。
【0061】
(比較例3)
熱伝導性無機粒子Aとして窒化アルミニウム粒子(トクヤマ株式会社製「H−Tグレード」、平均粒子径:80μm)28.4質量部と、バインダーCとして樹脂合成例1で得られたポリアミド樹脂の40%トルエン溶液28.0質量部と、TETRAD−C(三菱ガス化株式会社)の10%トルエン溶液3.6質量部を混合し、溶剤としてイソプロピルアルコール20.0質量部およびトルエン20.0質量部で固形分が40重量部となるように調整する以外は、実施例1と同様にして、熱伝導性部材の厚みが100μm、熱伝導率3.0(W/m・K)の熱伝導性部材を得た。
なお、部材中において、酸化アルミニウムの含有率は71質量%であり、バインダーCの含有率は29質量%であった。
【0062】
(比較例4)
熱伝導性無機粒子Aとして窒化ホウ素粒子(電気化学工業株式会社製「SGPS」、平均粒子径:10μm)28.3質量部と、樹脂粒子Bとして架橋スチレン樹脂粒子(綜研化学株式会社製「SGP−150C」、平均粒径:60μm)7.3質量部と、バインダーCとして樹脂合成例1で得られたポリアミド樹脂の40%トルエン溶液10.8質量部と、TETRAD−C(三菱ガス化株式会社)の10%トルエン溶液1.4質量部を混合し、溶剤としてイソプロピルアルコール26.1質量部およびトルエン26.1質量部で固形分が40重量部となるように調整する以外は、実施例1と同様にして、熱伝導性部材の厚みが100μm、熱伝導率2.0(W/m・K)の熱伝導性部材を得た。
なお、部材中において、窒化ホウ素の含有率は71質量%であり、樹脂粒子の含有率は18質量%であり、バインダーCの含有率は11質量%であった。
【0063】
(比較例5)
熱伝導性無機粒子Aとして窒化ホウ素粒子(スリーエム ジャパンホールディングス株式会社製「Agglomerates Grades 100」、平均粒子径:60μm)28.3質量部と、樹脂粒子Bとしてシリコーン樹脂(信越化学社製「KMP−602」、平均粒径:30μm)7.3質量部と、バインダーCとして樹脂合成例1で得られたポリアミド樹脂の40%トルエン溶液10.8質量部と、TETRAD−C(三菱ガス化株式会社)の10%トルエン溶液1.4質量部を混合し、溶剤としてイソプロピルアルコール26.1質量部およびトルエン26.1質量部で固形分が40重量部となるように調整する以外は、実施例1と同様にして、熱伝導性部材の厚みが70μm、熱伝導率2.2(W/m・K)の熱伝導性部材を得た。
なお、部材中において、窒化ホウ素の含有率は71質量%であり、樹脂粒子の含有率は18質量%であり、バインダーCの含有率は11質量%であった。
【0064】
(実施例7〜9)、(比較例6)
熱伝導性無機粒子Aとして窒化ホウ素粒子(スリーエム ジャパンホールディングス株式会社製「Agglomerates Grades 100」、平均粒子径:60μm)28.3質量部と、樹脂粒子Bとしてフェノール樹脂粒子(群栄化学株式会社製「マリリン HF−100」、平均粒径:100μm)7.3質量部と、バインダーCとして樹脂合成例1で得られたポリアミド樹脂の40%トルエン溶液10.8質量部と、TETRAD−C(三菱ガス化株式会社)の10%トルエン溶液1.4質量部を混合し、溶剤としてイソプロピルアルコール26.1質量部およびトルエン26.1質量部で固形分が40重量部となるようにして、熱伝導性部材形成用の塗液を得た。
以下、熱伝導性部材の厚みを120μm(実施例7)、190μm(実施例8)、250μm(実施例9)、350μm(比較例6)とした以外は、実施例1と同様にして、熱伝導性部材を得た。
なお、部材中において、窒化ホウ素の含有率は71質量%であり、樹脂粒子の含有率は18質量%であり、バインダーCの含有率は11質量%であった。
【0065】
(実施例10〜13)、(比較例7)
熱伝導性無機粒子Aとして窒化ホウ素粒子(スリーエム ジャパンホールディングス株式会社製「Agglomerates Grades 100」、平均粒子径:60μm)20.3質量部と、樹脂粒子Bとしてフェノール樹脂粒子(群栄化学株式会社製「マリリン HF−100」、平均粒径:100μm)、バインダーCとして樹脂合成例1で得られたポリアミド樹脂の40%トルエン溶液と、TETRAD−C(三菱ガス化株式会社)の10%トルエン溶液を用い、樹脂粒子BとバインダーCとを表1に示す割合となるように混合し、熱伝導性部材の厚みを110μmとした以外は、実施例1と同様にして、熱伝導性部材を得た。
【0066】
(実施例14)
熱伝導性無機粒子Aとして窒化ホウ素粒子(スリーエム ジャパンホールディングス株式会社製「Agglomerates Grades 100」、平均粒子径:60μm)11.9質量部と、樹脂粒子Bとしてフェノール樹脂粒子(群栄化学株式会社製「マリリン HF−100」、平均粒径:100μm)11.9質量部と、バインダーCとして樹脂合成例1で得られたポリアミド樹脂の40%トルエン溶液39.2質量部と、TETRAD−C(三菱ガス化株式会社)の10%トルエン溶液5.1質量部を混合し、溶剤としてイソプロピルアルコール16.0質量部およびトルエン16.0質量部で固形分が40重量部となるように調整する以外は、実施例1と同様にして、熱伝導性部材の厚みが110μm、熱伝導率3.0(W/m・K)の熱伝導性部材を得た。
なお、部材中において、窒化ホウ素の含有率は30質量%であり、樹脂粒子の含有率は30質量%であり、バインダーCの含有率は40質量%であった。
【0067】
(比較例8)
熱伝導性無機粒子Aとして窒化ホウ素粒子(スリーエム ジャパンホールディングス株式会社製「Agglomerates Grades 100」、平均粒子径:60μm)11.9質量部と、バインダーCとして樹脂合成例1で得られたポリアミド樹脂の40%トルエン溶液68.0質量部と、TETRAD−C(三菱ガス化株式会社)の10%トルエン溶液8.9質量部を混合し、溶剤としてイソプロピルアルコール5.6質量部およびトルエン5.6質量部で固形分が40重量部となるように調整する以外は、実施例1と同様にして、熱伝導性部材の厚みが110μm、熱伝導率1.0(W/m・K)の熱伝導性部材を得た。
なお、部材中において、窒化ホウ素の含有率は30質量%であり、バインダーCの含有率は70質量%であった。
【0068】
(比較例9)
熱伝導性無機粒子Aとして窒化ホウ素粒子(スリーエム ジャパンホールディングス株式会社製「Agglomerates Grades 100」、平均粒子径:60μm)6.1質量部と、樹脂粒子としてフェノール樹脂粒子(群栄化学株式会社製「マリリン HF−100」、平均粒径:100μm)12.0質量部と、バインダー樹脂Cとして樹脂合成例1で得られたポリアミド樹脂の40%トルエン溶液52.9質量部と、TETRAD−C(三菱ガス化株式会社)の10%トルエン溶液7.0質量部を混合し、溶剤としてイソプロピルアルコール11.0質量部およびトルエン11.0質量部で固形分が40重量部となるように調整する以外は、実施例1と同様にして、熱伝導性部材の厚みが110μm、熱伝導率1.7(W/m・K)の熱伝導性部材を得た。
なお、部材中において、窒化ホウ素の含有率は15質量%であり、樹脂粒子の含有率は30質量%であり、バインダーCの含有率は55質量%であった。
【0069】
(比較例10)
熱伝導性無機粒子Aとして窒化ホウ素粒子(スリーエム ジャパンホールディングス株式会社製「Agglomerates Grades 100」、平均粒子径:60μm)6.1質量部と、バインダー樹脂Cとして樹脂合成例1で得られたポリアミド樹脂の40%トルエン溶液82.0質量部と、TETRAD−C(三菱ガス化株式会社)の10%トルエン溶液10.7質量部を混合し、溶剤としてイソプロピルアルコール0.6質量部およびトルエン0.6質量部で固形分が40重量部となるように調整する以外は、実施例1と同様にして、熱伝導性部材の厚みが110μm、熱伝導率0.6(W/m・K)の熱伝導性部材を得た。なお、部材中において、窒化ホウ素の含有率は15質量%であり、バインダー樹脂の含有率は85質量%であった。
【0070】
(比較例11)
熱伝導性無機粒子Aとして窒化ホウ素粒子(スリーエム ジャパンホールディングス株式会社製「Agglomerates Grades 100」、平均粒子径:60μm)37.3質量部と、バインダー樹脂Cとして樹脂合成例1で得られたポリアミド樹脂の40%トルエン溶液6.6質量部と、TETRAD−C(三菱ガス化株式会社)の10%トルエン溶液0.9質量部を混合し、溶剤としてイソプロピルアルコール27.6質量部およびトルエン27.6質量部で固形分が40重量部となるように調整したが、塗工の際に、樹脂量が不足しており部材として形状を維持できないため、成膜性に欠けていた。
【0071】
(実施例15〜17)
熱伝導性無機粒子Aとして窒化ホウ素粒子(スリーエム ジャパンホールディングス株式会社製「Agglomerates Grades 100」、平均粒子径:60μm)28.3質量部と、樹脂粒子Bとしてフェノール樹脂粒子(群栄化学株式会社製「マリリン HF−100」、平均粒径:100μm)7.3質量部と、
バインダー樹脂Cとして、
樹脂合成例2で得られたウレタン樹脂の40%トルエン溶液(実施例15)、
樹脂合成例3で得られたエステル樹脂の40%トルエン溶液(実施例16)、
樹脂合成例4で得られたアクリル樹脂の40%トルエン溶液(実施例17)をそれぞれ10.8質量部と、TETRAD−C(三菱ガス化株式会社)の10%トルエン溶液1.4質量部を用い、熱伝導性部材の厚みを110μmとした以外は、実施例1と同様にして、熱伝導性部材を得た。
【0072】
【表1】
【0073】
表1の実施例1〜6が示すように、樹脂粒子同士の間に熱伝導性無機粒子が濃縮される場合には、無機粒子の種類に関わらずに高熱伝導性を発現する。比較例1〜3のように樹脂粒子を含まない場合には、熱を効率よく伝えるパスが形成されていないために、十分な熱伝導率を発現できない。
比較例4〜5のように、樹脂粒子を含むが、樹脂粒子の粒径に対して無機粒子の粒径が大幅に上回るまたは下回る場合には、樹脂粒子による濃縮の効果はなく、熱伝導率は低い。
【0074】
実施例7〜9が示すように、樹脂粒子径に対して部材の膜厚が同等である場合には、無機粒子が濃縮された柱状に熱伝導パスを形成するため、厚み方向に効率よく熱を逃がすことができ、高熱伝導性を発現する。比較例6が示すように、樹脂粒子径に対して部材の膜厚が上回る場合には、部材で樹脂粒子同士が接触することで、熱伝導パスが遮断されるために、熱伝導率は低い。
【0075】
実施例10〜13が示すように、部材中で樹脂粒子が十分に含有する場合には、柱状の熱伝導パスが形成されているために、熱伝導性は向上する。
【0076】
比較例8〜11が示すように、熱伝導性無機粒子が30質量部未満の場合には、熱伝導パスを形成しないため、熱伝導性は低い。また90重量を超える場合には、膜としての強度を十分に保持しないため、脆くハンドリングに劣る。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の熱伝導部材は、熱伝導性を要求される各種用途に利用でき、例えば、画像表示装置、コンピュータ、電気・電子部品(放熱板、熱電変換素子、光変換素子、電磁波吸収放熱材、基盤、セパレータ等)に利用できる。特に、絶縁性を有する放熱部材は、コンピュータのCPU、パワーモジュール、LEDなどの放熱板としても有用である。