(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
油圧シリンダによって起伏されるブームのシーブまたは前記ブームの先端部に設けられるジブのシーブに、複数の油圧ウインチからそれぞれ繰り入れおよび繰り出されるワイヤロープが掛けられるクレーンにおいて、
前記複数の油圧ウインチのうち使用する油圧ウインチと前記使用する油圧ウインチから繰り入れおよび繰り出されるワイヤロープの巻き掛け数とを設定する安全装置を備え、
前記複数の油圧ウインチの各出力トルクと前記複数の油圧ウインチに巻かれている各ワイヤロープの巻きつき半径とから前記各ワイヤロープの張力をそれぞれ算出し、
前記安全装置で設定された使用する油圧ウインチと異なる油圧ウインチに巻かれているワイヤロープの張力が基準値以上である場合、前記安全装置の設定が誤っていると判定するクレーン。
油圧シリンダによって起伏されるブームのシーブまたは前記ブームの先端部に設けられるジブのシーブに、油圧ウインチから繰り入れおよび繰り出されるワイヤロープが掛けられるクレーンにおいて、
前記油圧ウインチから繰り入れおよび繰り出されるワイヤロープの巻き掛け数を設定する安全装置を備え、
前記油圧ウインチの出力トルクと前記油圧ウインチに巻かれているワイヤロープの巻きつき半径とから前記ワイヤロープの張力を算出し、
前記安全装置で設定されたワイヤロープの巻き掛け数とワイヤロープの張力とから推定吊荷重を算出し、
前記油圧シリンダの推力と、前記ブームまたは前記ブームおよびジブの形状および姿勢とから実吊荷重を算出し、
前記推定吊荷重と実吊荷重との差が所定範囲外である場合、前記安全装置の設定が誤っていると判定するクレーン。
前記使用ウインチ選択装置の設定が誤っていると判定した場合、前記安全装置において設定の誤りまたは設定の誤りの内容を報知する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のクレーン。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、
図1から
図4を用いて、クレーンの一実施形態に係るクレーン1について説明する。なお、本実施形態においては、クレーン1として移動式クレーンについて説明を行うが、油圧シリンダによって起伏されるブームと複数の油圧ウインチとを具備するクレーンであればよい。
【0020】
図1に示すように、クレーン1は、不特定の場所に移動可能な移動式クレーンである。クレーン1は、車両2、クレーン装置6を有する。
【0021】
車両2は、クレーン装置6を搬送するものである。車両2は、複数の車輪3を有し、エンジン4(
図6参照)を動力源として走行する。車両2には、アウトリガ5が設けられている。アウトリガ5は、車両2の幅方向両側に油圧によって延伸可能な張り出しビームと地面に垂直な方向に延伸可能な油圧式のジャッキシリンダとから構成されている。車両は、アウトリガ5を車両の幅方向に延伸させるとともにジャッキシリンダを接地させることにより、クレーン1の作業可能範囲を広げることができる。
【0022】
クレーン装置6は、搬送物Wをワイヤロープによって吊り上げるものである。クレーン装置6は、旋回台7、伸縮ブーム8、ジブ13、メインフックブロック14、サブフックブロック15、起伏シリンダ16、メインウインチ17、サブウインチ18、メインワイヤロープ19、サブワイヤロープ20、キャビン21、安全装置23(
図3参照)等を具備する。
【0023】
旋回台7は、クレーン装置6を旋回可能に構成するものである。旋回台7は、円環状の軸受を介して車両2のフレーム上に設けられる。円環状の軸受は、その回転中心が車両2の設置面に対して垂直になるように配置されている。旋回台7は、円環状の軸受の中心を回転中心として回転自在に構成されている。また、旋回台7は、図示しない油圧式の旋回モータによって回転されるように構成されている。旋回台7には、その旋回位置を検出する旋回位置検出センサ55(
図9参照)が設けられている。
【0024】
ブームである伸縮ブーム8は、搬送物Wを吊り上げ可能な状態にワイヤロープを支持するものである。伸縮ブーム8は、複数のブーム部材であるベースブーム部材8a、セカンドブーム部材8b、サードブーム部材8c、フォースブーム部材8d、フィフスブーム部材8e、トップブーム部材8fから構成されている。各ブーム部材は、互いに相似な多角形断面を有する中空円筒状に形成されている。各ブーム部材は、断面積の大きさの順にその内部に挿入可能な大きさに形成されている。つまり、最も断面積の小さいトップブーム部材8fは、トップブーム部材8fの次に断面積が大きいフィフスブーム部材8eの内部に挿入可能な大きさに形成されている。フィフスブーム部材8eは、フィフスブーム部材8eの次に断面積が大きいフォースブーム部材8dの内部に挿入可能な大きさに形成されている。このように、伸縮ブーム8は、最も断面積の大きいベースブーム部材8aの内部にセカンドブーム部材8b、サードブーム部材8c、フォースブーム部材8d、フィフスブーム部材8e、トップブーム部材8fが断面積の大きさの順に入れ子式に挿入されている。
【0025】
また、伸縮ブーム8は、ベースブーム部材8aに対してセカンドブーム部材8b、サードブーム部材8c、フォースブーム部材8d、フィフスブーム部材8e、トップブーム部材8fが伸縮ブーム8の軸方向に移動可能に構成されている。つまり、伸縮ブーム8は、各ブーム部材を図示しない伸縮シリンダで移動させることで伸縮自在に構成されている。伸縮ブーム8は、ベースブーム部材8aの基端が旋回台7上に搖動可能に設けられている。これにより、伸縮ブーム8は、車両2のフレーム上で水平回転可能に構成さている。さらに、伸縮ブーム8は、旋回台7に対してベースブーム部材8aの基端を中心として搖動自在に構成されている。
【0026】
図2に示すように、伸縮ブーム8のトップブーム部材8fの先端には、メインガイドシーブ9、サブガイドシーブ10、メインシーブ11およびサブシーブ12が設けられている。トップブーム部材8fの先端の背面側(伸縮ブーム8起立時の搖動方向側の側面)には、メインワイヤロープ19が巻き掛けられるメインガイドシーブ9とサブワイヤロープ20が巻き掛けられるサブガイドシーブ10とが回転自在に設けられている。トップブーム部材8fの先端の腹面側(伸縮ブーム8起立時の搖動方向と反対側の側面)には、先端側から順にサブワイヤロープ20が巻き掛けられるサブシーブ12とメインワイヤロープ19が巻き掛けられる複数のメインシーブ11(第1メインシーブ11a、第2メインシーブ11bおよび第3メインシーブ11c(
図5参照))が回転自在に設けられている。また、トップブーム部材8fの先端部には、ジブ支持部8gが設けられている。伸縮ブーム8には、そのブーム長さL(
図10参照)を検出するブーム長さ検出センサ56(
図9参照)と起伏角度θ(
図10参照)を検出する起伏角度検出センサ57(
図9参照)とが設けられている。
【0027】
図1に示すように、ジブ13は、クレーン装置6の揚程や作業半径を拡大するものである。ジブ13は、伸縮ブーム8のベースブーム部材8aに設けられたジブ支持部8gによってベースブーム部材8aに沿った姿勢で保持されている。ジブ13の基端は、トップブーム部材8fのジブ支持部8gに連結可能に構成されている。ジブ13は、ジブ支持部8gに図示しないピンを打ち込むことにより伸縮ブーム8のトップブーム部材8fの先端に連結可能に構成されている。
【0028】
メインフックブロック14は、搬送物Wを吊るものである。メインフックブロック14には、メインワイヤロープ19が巻き掛けられる複数のフックシーブである第1フックシーブ14a、第2フックシーブ14bおよび第3フックシーブ14cと(
図2、
図5参照)、搬送物Wを吊るメインフック14dとが設けられている。サブフックブロック15は、搬送物Wを吊るものである。サブフックブロック15には、搬送物Wを吊るサブフック15aが設けられている。
【0029】
起伏シリンダ16は、伸縮ブーム8を起立および倒伏させ、伸縮ブーム8の姿勢を保持するものである。起伏シリンダ16はシリンダ部とロッド部とからなる油圧シリンダから構成されている。起伏シリンダ16は、ヘッド側油室16a(
図8参照)とロッド部側油室16b(
図8参照)とへの選択的な作動油の供給によりロッド部の移動方向が切り替わる。起伏シリンダ16は、シリンダ部の端部が旋回台7に搖動自在に連結され、ロッド部の端部が伸縮ブーム8のベースブーム部材8aに搖動自在に連結されている。これにより、起伏シリンダ16は、ロッド部がシリンダ部から押し出されるように作動油が供給されることでベースブーム部材8aを起立させ、ロッド部がシリンダ部に押し戻されるように作動油が供給されることでベースブーム部材8aを倒伏させるように構成されている。
【0030】
油圧ウインチであるメインウインチ17は、メインワイヤロープ19の繰り入れ(巻き上げ)および繰り出し(巻き下げ)を行うものである。メインウインチ17は、メインワイヤロープ19が巻きつけられるメインドラム17b(
図6参照)がメイン用油圧モータ17a(
図6参照)によって回転されるように構成されている。メインウインチ17は、旋回台7に伸縮ブーム8の伸縮方向に対してメインドラム17bの回転軸が直行するように設けられている。メイン用油圧モータ17aは、繰り入れ側のプランジャ(以下、単に「繰り入れ側」と記す)と繰り出し側のプランジャ(以下、単に「繰り出し側」と記す)との選択的な作動油の供給により回転方向が一方向と他方向とに切り替わる。これにより、メインウインチ17は、メイン用油圧モータ17aが一方向へ回転するように作動油が供給されることでメインドラム17bに巻きつけられているメインワイヤロープ19を繰り出し、メイン用油圧モータ17aが他方向へ回転するように作動油が供給されることでメインワイヤロープ19をメインドラム17bに巻きつけて繰り入れるように構成されている。
【0031】
油圧ウインチであるサブウインチ18は、サブワイヤロープ20の繰り入れ(巻き上げ)および繰り出し(巻き下げ)を行うものである。サブウインチ18は、サブワイヤロープ20が巻きつけられるサブドラム18b(
図7参照)がサブ用油圧モータ18a(
図7参照)によって回転されるように構成されている。サブウインチ18は、旋回台7に伸縮ブーム8の伸縮方向に対してサブドラム18bの回転軸が直行するように設けられている。サブウインチ18のサブ用油圧モータ18aは、繰り入れ側と繰り出し側とへの選択的な作動油の供給により回転方向が一方向と他方向とに切り替わる。これにより、サブウインチ18は、サブ用油圧モータ18aが一方向へ回転するように作動油が供給されることでサブドラム18bに巻きつけられているサブワイヤロープ20を繰り出し、サブ用油圧モータ18aが他方向へ回転するように作動油が供給されることでサブワイヤロープ20をサブドラム18bに巻きつけて繰り入れるように構成されている。
【0032】
メインワイヤロープ19は、メインウインチ17からメインガイドシーブ9を介して複数のメインシーブ11と第1フックシーブ14a、第2フックシーブ14bまたは第3フックシーブ14cとに巻き掛けられている(
図2参照)。メインワイヤロープ19の端部は、トップブーム部材8fに固定されている。また、サブワイヤロープ20は、サブウインチ18からサブガイドシーブ10とサブシーブ12とを介してサブフックブロック15に接続されている。
【0033】
キャビン21は、操縦席22(
図3参照)を覆うものである。キャビン21は、旋回台7における伸縮ブーム8の側方に設けられている。キャビン21の内部には、操縦席22が設けられている。
図3に示すように、操縦席22には、メインウインチ17を操作するためのメイン用操作具22a、サブウインチ18を操作するためのサブ用操作具22b、伸縮ブーム8を操作するための起伏用操作具22c、クレーン1を移動させるためのハンドル22d、報知手段である警報ブザー22eや安全装置23が設けられている。
【0034】
図4(a)に示すように、安全装置23は、伸縮ブーム8およびジブ13の使用態様を示す作業の種類WT、巻き掛け数Nを設定するものである。安全装置23は、タッチパネル等の表示モニタから構成されている。安全装置23は、表示モニタの表示画面から各種設定を行ったり、荷重の情報Wi、ブーム情報Biである旋回位置、伸縮ブーム8のブーム長さLおよび伸縮ブーム8の起伏角度θを表示したり、報知手段として警告や警報を作業者に報知することができる。
【0035】
図4(b)に示すように、安全装置23は、作業の種類WTとして伸縮ブーム8においてメインウインチ17を使用するメインフック作業、伸縮ブーム8においてサブウインチ18を使用するサブフック作業および伸縮ブーム8にジブ13を装着してサブウインチ18を使用するジブ作業のうちいずれか一つを選択可能に構成されている。すなわち、安全装置は、作業の種類WTからメインウインチ17とサブウインチ18とのうち使用するウインチが選択されるように構成されている。
【0036】
図4(c)に示すように、安全装置23は、メインフック作業時において、使用するウインチであるメインウインチ17から繰り入れおよび繰り出されるメインワイヤロープ19の巻き掛け数Nを四本掛けと六本掛けとのうちいずれか一つを選択するように構成されている。また、安全装置23は、サブフック作業において、使用するウインチであるサブウインチ18から繰り入れおよび繰り出されるサブワイヤロープ20の巻き掛け数Nを一本掛けとして自動選択するように構成されている。さらに、安全装置23は、作業範囲や吊り荷重等についての警告や警報を画面に表示し、操縦席22の警報ブザー22e(
図3参照)を用いて作業者に報知することができる。
【0037】
このように構成されるクレーン1は、車両2を走行させることで任意の位置にクレーン装置6を移動させることができる。また、クレーン1は、起伏シリンダ16で伸縮ブーム8を任意の起伏角度θに起立させて、伸縮ブーム8を任意のブーム長さLに延伸させたりジブ13を連結させたりすることでクレーン装置6の揚程や作業半径を拡大することができる。さらに、クレーン1は、搬送物Wの重量および所望する吊り上げ速度に応じてメインウインチ17を使用するかサブウインチ18を使用するか選択することができる。一方クレーン1は、搬送物Wの重量に応じてメインワイヤロープ19の巻き掛け数Nを変更することで許容吊り荷重を変更することができる。クレーン1は、ブーム長さL、起伏角度θおよび安全装置23から設定された作業の種類WTに基づいて伸縮ブーム8の作業範囲や姿勢が制限される。
【0038】
次に、
図5を用いて、クレーン1のメインワイヤロープ19における巻き掛けについて説明する。なお、本実施形態において、クレーン1は、メインワイヤロープ19の最大巻き掛け数Nを6本としたがこれに限定するものではなく、メインワイヤロープ19の巻き掛け数Nが変更できるものであればよい。
【0039】
図5(a)に示すように、伸縮ブーム8のトップブーム部材8fの先端には、メインウインチ17のドラム回転軸と並行に配置される支持軸に一側から順にメインシーブ11を構成する第1メインシーブ11a、第2メインシーブ11bおよび第3メインシーブ11cが独立して回転自在に支持されている。メインフックブロック14には、第1フックシーブ14a、第2フックシーブ14bおよび第3フックシーブ14cの順に独立して回転自在に支持されている。
【0040】
メインワイヤロープ19の巻き掛け数Nが4本掛けの場合、メインワイヤロープ19は、トップブーム部材8fの第1メインシーブ11a、メインフックブロック14の第1フックシーブ14a、トップブーム部材8fの第3メインシーブ11c、メインフックブロック14の第3フックシーブ14cの順に巻き掛けられている。第3フックシーブ14cに巻き掛けられているメインワイヤロープ19は、トップブーム部材8fに連結されている。
【0041】
メインフックブロック14の第1フックシーブ14aは、第1メインシーブ11aに巻き掛けられているメインワイヤロープ19と第3メインシーブ11cに巻き掛けられているメインワイヤロープ19とに支持されている。同様に、メインフックブロック14の第3フックシーブ14cは、第3メインシーブ11cに巻き掛けられているメインワイヤロープ19とトップブーム部材8fに連結されているメインワイヤロープ19とによって支持されている。
【0042】
このように構成されることで、クレーン1は、メインフックブロック14に吊るされている搬送物W(
図1参照)を第1フックシーブ14aと第3フックシーブ14cとを支持している計4本のメインワイヤロープ19で支持する。従って、クレーン1の許容荷重は、メインシーブ11とフックシーブとの間のメインワイヤロープ19の巻き掛け数Nを四本掛けとすることで、メインワイヤロープ19の許容張力の四倍に増加される。四本掛けの場合、クレーン1は、動滑車として構成されている第1フックシーブ14aと第3フックシーブ14cとの作用により、メインフック14dの荷重の1/4の張力によってメインワイヤロープ19の繰り入れ速度の1/4の速度で搬送物Wを吊り上げることができる。
【0043】
図5(b)に示すように、メインワイヤロープ19の巻き掛け数Nが6本掛けの場合、メインワイヤロープ19は、トップブーム部材8fの第1メインシーブ11a、メインフックブロック14の第1フックシーブ14a、トップブーム部材8fの第2メインシーブ11b、メインフックブロック14の第2フックシーブ14b、トップブーム部材8fの第3メインシーブ11c、メインフックブロック14の第3フックシーブ14cの順に巻き掛けられている。第3フックシーブ14cに巻き掛けられているメインワイヤロープ19は、トップブーム部材8fに連結されている。
【0044】
メインフックブロック14の第1フックシーブ14aは、第1メインシーブ11aに巻き掛けられているメインワイヤロープ19と第3メインシーブ11cに巻き掛けられているメインワイヤロープ19とに支持されている。同様に、メインフックブロック14の第2フックシーブ14bは、第2メインシーブ11bに巻き掛けられているメインワイヤロープ19と第3メインシーブ11cに巻き掛けられているメインワイヤロープ19とに支持されている。同様に、メインフックブロック14の第3フックシーブ14cは、第3メインシーブ11cに巻き掛けられているメインワイヤロープ19とトップブーム部材8fに連結されているメインワイヤロープ19とによって支持されている。
【0045】
このように構成されることで、クレーン1は、メインフックブロック14に吊るされている搬送物W(
図1参照)を第1フックシーブ14aと第2フックシーブ14bと第3フックシーブ14cとを支持している計6本のメインワイヤロープ19で支持する。従って、クレーン1の許容荷重は、メインシーブ11とフックシーブとの間のメインワイヤロープ19の巻き掛け数Nを六本掛けとすることで、メインワイヤロープ19の許容張力の六倍に増加される。六本掛けの場合、クレーン1は、動滑車として構成されている第1フックシーブ14aと第2フックシーブ14bと第3フックシーブ14cとの作用により、メインフック14dの荷重の1/6の張力によってメインワイヤロープ19の繰り入れ速度の1/6の速度で搬送物Wを吊り上げることができる。
【0046】
メインワイヤロープ19の巻き掛け数Nを六本掛けから四本掛けに変更する場合、クレーン1は、メインワイヤロープ19とトップブーム部材8fとの連結が解除される。そして、クレーン1は、メインワイヤロープ19が第1メインシーブ11a、第1フックシーブ14a、第3メインシーブ11c、第3フックシーブ14cの順に巻き掛けられるように巻き掛け数Nが変更される。クレーン1は、メインワイヤロープ19が再びトップブーム部材8fに連結されることで、メインフックブロック14が第1フックシーブ14aと第3フックシーブ14cとを介して四本のメインワイロープで吊られている状態に変更される。
【0047】
図2に示すように、サブワイヤロープ20を使用する場合、サブウインチ18から繰り出されているサブワイヤロープ20は、サブガイドシーブ10を介して、トップブーム部材8fのサブシーブ12に巻き掛けられている。サブワイヤロープ20の先端には、サブフックブロック15が連結されている。このように構成されることで、クレーン1は、サブフックブロック15に吊るされる搬送物W(
図1参照)を一本のサブワイヤロープ20で支持する。従って、クレーン1の許容荷重は、サブワイヤロープ20の許容張力と等しい。サブワイヤロープ20で搬送物Wを吊り上げる場合、クレーン1は、サブフック15aの荷重と等しい張力によってサブワイヤロープ20の繰り入れ速度と等しい速度で搬送物Wを吊り上げることができる。つまり、クレーン1は、サブウインチ18で搬送物Wを吊り上げる場合、四本掛けのメインウインチ17に対して許容荷重が1/4である一方、吊り上げ速度が四本掛けのメインウインチ17の四倍になる。
【0048】
以下に、
図6から
図8を用いて、クレーン1が具備する起伏シリンダ16、メインウインチ17およびサブウインチ18に関する油圧回路について説明する。
【0049】
図6から
図8に示すように、油圧回路は、エンジン4からの駆動力が伝導されている油圧ポンプ25、メイン用油圧回路28(
図6参照)、サブ用油圧回路37(
図7参照)、起伏用油圧回路46(
図8参照)および制御装置54を具備する。
【0050】
油圧ポンプ25は、作動油を吐出するものである。油圧ポンプ25は、エンジン4によって駆動されている。油圧ポンプ25から吐出された作動油は、メイン用油圧回路28、サブ用油圧回路37および起伏用油圧回路46に供給される。油圧ポンプ25の吐出油路26には、リリーフ弁27が設けられている。
【0051】
図6に示すように、メイン用油圧回路28は、メインウインチ17を作動させるものである。メイン用油圧回路28は、メイン用油圧モータ17a、メイン用パイロット式切換弁29、メイン用カウンタバランス弁32、メイン用操作具22a、メイン用一側油圧センサ33、メイン用他側油圧センサ34、メインドラム回転数検出器35およびメイン用操作位置検出器36を備える。
【0052】
メイン用油圧モータ17aは、メインウインチ17のメインドラム17bを回転させるものである。メイン用油圧モータ17aは、メインドラム17bと連動連結するように構成されている。メイン用油圧モータ17aは、繰り入れ側に作動油が供給されるとメインワイヤロープ19が繰り入れられる方向にメインドラム17bを回転させる。メイン用油圧モータ17aは、繰り出し側に作動油が供給されるとメインワイヤロープ19が繰り出される方向にメインドラム17bを回転させる。
【0053】
メイン用操作具22aは、メインウインチ17の動作を制御するものである。メイン用操作具22aは、メイン用パイロット式切換弁29に付加されるパイロット圧を外部からの操作によって切り換え可能な切換弁から構成されている。メイン用操作具22aには、圧力源からパイロット油圧が供給されている。
【0054】
メイン用操作具22aは、スプールが中立位置Sに操作されている場合、圧力源からのパイロット圧をメイン用パイロット式切換弁29に付加させない。メイン用操作具22aは、スプールが繰り入れ位置Uに操作されている場合、メイン用パイロット式切換弁29の一方のポートが開弁されるように圧力源からのパイロット圧をメイン用パイロット式切換弁29に付加させる。メイン用操作具22aは、スプールが繰り出し位置Dに操作されている場合、メイン用パイロット式切換弁29の他方のポートが開弁されるように圧力源からのパイロット圧をメイン用パイロット式切換弁29に付加させる。
【0055】
メイン用パイロット式切換弁29は、メイン用油圧モータ17aに供給される作動油の方向を切り換えるものである。メイン用パイロット式切換弁29の供給ポートには、吐出油路26を介して油圧ポンプ25が接続されている。メイン用パイロット式切換弁29の一方のポートには、メイン用一側油路30を介してメイン用油圧モータ17aの繰り入れ側が接続されている。メイン用パイロット式切換弁29の他方のポートには、メイン用他側油路31を介してメイン用油圧モータ17aの繰り出し側が接続されている。
【0056】
メイン用パイロット式切換弁29は、パイロット圧が付与されていない場合(メイン用操作具22aのスプールが中立位置Sに操作されている場合)、メイン用一側油路30とメイン用他側油路31とが閉弁される。これにより、メイン用油圧モータ17aは、その回転位置が保持される。メイン用パイロット式切換弁29は、一方のポートが開弁されるようにパイロット圧が付加された場合(メイン用操作具22aのスプールが繰り入れ位置Uに操作されている場合)、油圧ポンプ25からの作動油がメイン用一側油路30を介してメイン用油圧モータ17aの繰り入れ側(巻き上げ側)に供給される。これにより、メイン用油圧モータ17aは、メインワイヤロープ19を繰り入れる方向に回転される。メイン用パイロット式切換弁29は、他方のポートが開弁されるようにパイロット圧が付加された場合(メイン用操作具22aのスプールが繰り出し位置Dに操作されている場合)、油圧ポンプ25からの作動油がメイン用他側油路31を介してメイン用油圧モータ17aの繰り出し側(巻き下げ側)に供給される。これにより、メイン用油圧モータ17aは、メインワイヤロープ19を繰り出す方向に回転される。
【0057】
メイン用カウンタバランス弁32は、メイン用油圧モータ17aがメインワイヤロープ19に加わる荷重によって回転されないようにするものである。メイン用カウンタバランス弁32は、メイン用一側油路30に設けられている。また、メイン用カウンタバランス弁32は、メイン用他側油路31の油圧がパイロット圧として付加されるように構成されている。メイン用カウンタバランス弁32は、メイン用油圧モータ17aの繰り入れ側(巻き上げ側)への作動油の流れを常に許容する。一方、メイン用カウンタバランス弁32は、メイン用油圧モータ17aの繰り出し側に作動油が供給された場合に限り、メイン用油圧モータ17aの繰り入れ側から排出される作動油の流れを許容する。
【0058】
メイン用一側油圧センサ33とメイン用他側油圧センサ34とは、油圧の値を検出するものである。メイン用一側油圧センサ33は、メイン用一側油路30に設けられている。つまり、メイン用一側油圧センサ33は、メイン用油圧モータ17aの繰り入れ側(巻き上げ側)に供給されている油圧の値を検出するように構成されている。メイン用他側油圧センサ34は、メイン用他側油路31に設けられている。つまり、メイン用他側油圧センサ34は、メイン用油圧モータ17aの繰り出し側(巻き下げ側)に供給されている油圧の値を検出するように構成されている。
【0059】
メインドラム回転数検出器35は、メインドラム17bの基準位置から回転した回数を検出するものである。メインドラム回転数検出器35は、メインワイヤロープ19がメインドラム17bからすべて繰り出された状態を基準としてメインドラム17bのメインワイヤロープ19を巻き入れるために必要な回転数を検出する。つまり、メインドラム回転数検出器35は、メインドラム17bに積層して巻かれているメインワイヤロープ19の積層数を検出するように構成されている。
【0060】
メイン用操作位置検出器36は、メイン用操作具22aの操作位置を検出するものである。メイン用操作位置検出器36は、メイン用操作具22aのスプールが中立位置Sとなる操作位置、スプールが繰り入れ位置Uとなる操作位置、およびスプールが繰り出し位置Dとなる操作位置を検出するように構成されている。
【0061】
このように構成されるメイン用油圧回路28を備えるクレーン1は、メイン用操作具22aによってメイン用パイロット式切換弁29を操作して、メイン用油圧モータ17aに供給される作動油の流れを切り換える。これにより、クレーン1は、メイン用操作具22aの操作によってメインウインチ17によるメインワイヤロープ19の繰り入れおよび繰り出しを自在に行うことができる。
【0062】
図7に示すように、サブ用油圧回路37は、サブウインチ18を作動させるものである。サブ用油圧回路37は、サブ用油圧モータ18a、サブ用パイロット式切換弁38、サブ用カウンタバランス弁41、サブ用操作具22b、サブ用一側油圧センサ42、サブ用他側油圧センサ43、サブドラム回転数検出器44およびサブ用操作位置検出器45を備える。なお、サブ用油圧回路37の構成およびその動作態様は、メイン用油圧回路28と同一であるため詳細な説明を省略する。
【0063】
このように構成されるサブ用油圧回路37を備えるクレーン1は、サブ用操作具22bによってサブ用パイロット式切換弁38を操作して、サブ用油圧モータ18aに供給される作動油の流れを切り換える。これにより、クレーン1は、サブ用操作具22bの操作によってサブウインチ18によるサブワイヤロープ20の繰り入れおよび繰り出しを自在に行うことができる。
【0064】
図8に示すように、起伏用油圧回路46は、起伏シリンダ16を作動させるものである。起伏用油圧回路46は、起伏シリンダ16、起伏用パイロット式切換弁47、起伏用カウンタバランス弁50、起伏用操作具22c、起伏用一側油圧センサ51、起伏用他側油圧センサ52、および起伏用操作位置検出器53を備える。
【0065】
起伏用操作具22cは、起伏シリンダ16の動作を制御するものである。起伏用操作具22cは、起伏用パイロット式切換弁47に付加されるパイロット圧を外部からの操作によって切り換え可能な切換弁から構成されている。起伏用操作具22cには、圧力源からパイロット油圧が供給されている。
【0066】
起伏用操作具22cは、スプールが中立位置Sに操作されている場合、圧力源からのパイロット圧を起伏用パイロット式切換弁47に付加させない。起伏用操作具22cは、スプールが起立位置Uに操作されている場合、起伏用パイロット式切換弁47の一方のポートが開弁されるように圧力源からのパイロット圧を起伏用パイロット式切換弁47に付加させる。起伏用操作具22cは、スプールが倒伏位置Dに操作されている場合、起伏用パイロット式切換弁47の他方のポートが開弁されるように圧力源からのパイロット圧を起伏用パイロット式切換弁47に付加させる。
【0067】
起伏用パイロット式切換弁47は、起伏シリンダ16に供給される作動油の方向を切り換えるものである。起伏用パイロット式切換弁47の供給ポートには、吐出油路26を介して油圧ポンプ25が接続されている。起伏用パイロット式切換弁47の一方のポートには、起伏用一側油路48を介して起伏シリンダ16のヘッド側油室16aが接続されている。起伏用パイロット式切換弁47の他方のポートには、起伏用他側油路49を介して起伏シリンダ16のロッド部側油室16bが接続されている。
【0068】
起伏用パイロット式切換弁47は、パイロット圧が付与されていない場合(起伏用操作具22cのスプールが中立位置Sに操作されている場合)、起伏用一側油路48と起伏用他側油路49とが閉弁される。これにより、起伏シリンダ16は、そのロッド部位置が保持される。起伏用パイロット式切換弁47は、一方のポートが開弁されるようにパイロット圧が付加された場合(起伏用操作具22cのスプールが起立位置Uに操作されている場合)、油圧ポンプ25からの作動油が起伏用一側油路48を介して起伏シリンダ16のヘッド側油室16aに供給される。これにより、起伏シリンダ16は、伸縮ブーム8を起立させるようにロッド部がシリンダ部から押し出される。起伏用パイロット式切換弁47は、他方のポートが開弁されるようにパイロット圧が付加された場合(起伏用操作具22cのスプールが倒伏位置Dに操作されている場合)、油圧ポンプ25からの作動油が起伏用他側油路49を介して起伏シリンダ16のロッド部側油室16bに供給される。これにより、起伏シリンダ16は、伸縮ブーム8を倒伏させるようにロッド部がシリンダ部に押し戻される。
【0069】
起伏用カウンタバランス弁50は、起伏シリンダ16のロッド部が伸縮ブーム8に加わる荷重によって押し戻されないようにするものである。起伏用カウンタバランス弁50は、起伏用一側油路48に設けられている。また、起伏用カウンタバランス弁50は、起伏用他側油路49の油圧がパイロット圧として付加されるように構成されている。起伏用カウンタバランス弁50は、起伏シリンダ16のヘッド側油室16aへの作動油の流れを常に許容する。一方、起伏用カウンタバランス弁50は、起伏シリンダ16のロッド部側油室16bに作動油が供給された場合に限り、起伏シリンダ16のヘッド側油室16aから排出される作動油の流れを許容する。
【0070】
起伏用一側油圧センサ51と起伏用他側油圧センサ52とは、油圧の値を検出するものである。起伏用一側油圧センサ51は、起伏用一側油路48に設けられている。つまり、起伏用一側油圧センサ51は、起伏用シリンダのヘッド側油室16aに供給されている油圧の値を検出するように構成されている。起伏用他側油圧センサ52は、起伏用他側油路49に設けられている。つまり、起伏用他側油圧センサ52は、起伏用シリンダのロッド部側油室16bに供給されている油圧の値を検出するように構成されている。
【0071】
起伏用操作位置検出器53は、起伏用操作具22cの操作位置を検出するものである。起伏用操作位置検出器53は、起伏用操作具22cのスプールが中立位置Sとなる操作位置、スプールが起立位置Uとなる操作位置およびスプールが倒伏位置Dとなる操作位置を検出するように構成されている。
【0072】
このように構成される起伏用油圧回路46を備えるクレーン1は、起伏用操作具22cによって起伏用パイロット式切換弁47を操作して、起伏シリンダ16に供給される作動油の流れを切り換える。これにより、クレーン1は、起伏用操作具22cの操作によって起伏シリンダ16による伸縮ブーム8の起立および倒伏を自在に行うことができる。
【0073】
以下に、
図9から
図13を用いて、上述の如く構成されるクレーン1の制御装置54の構成、および制御装置54による安全装置23の誤設定の判定について説明する。
【0074】
図9に示すように、制御装置54は、伸縮ブーム8の作業範囲を制限したり、メインワイヤロープ19の張力であるメイン張力TSm、サブワイヤロープ20の張力であるサブ張力TSs、推定吊荷重Leおよび実吊荷重Lrを算出したりするものである。制御装置54は、実体的には、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成であってもよく、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。制御装置54は、伸縮ブーム8の作業範囲、メイン張力TSm、サブ張力TSsおよび搬送物Wの荷重を算出するために種々のプログラムやデータが格納されている。
【0075】
制御装置54は、安全装置23に接続され、安全装置23から入力された作業の種類WTおよび巻き掛け数Nの情報を取得し、安全装置23に各種情報や警告等を画面表示することができる。
【0076】
制御装置54は、メイン用一側油圧センサ33とメイン用他側油圧センサ34とに接続され、メイン用一側油圧センサ33からメイン用油圧モータ17aの繰り入れ側の油圧の値を取得し、メイン用他側油圧センサ34からメイン用油圧モータ17aの繰り出し側の油圧の値を取得することができる。
【0077】
制御装置54は、メインドラム回転数検出器35に接続され、メインドラム回転数検出器35からメインドラム17bの回転した回数を取得し、メインドラム17bに巻きつけられているメインワイヤロープ19の層数を決定することができる。
【0078】
制御装置54は、メイン用操作位置検出器36に接続され、メイン用操作位置検出器36からメイン用操作具22aの操作位置を取得することができる。
【0079】
制御装置54は、サブ用一側油圧センサ42とサブ用他側油圧センサ43とに接続され、サブ用一側油圧センサ42からサブ用油圧モータ18aの繰り入れ側の油圧の値を取得し、サブ用他側油圧センサ43からサブ用油圧モータ18aの繰り出し側の油圧の値を取得することができる。
【0080】
制御装置54は、サブドラム回転数検出器44に接続され、サブドラム回転数検出器44からサブドラム18bの回転した回数を取得し、サブドラム18bに巻きつけられているサブワイヤロープ20の層数を決定することができる。
【0081】
制御装置54は、サブ用操作位置検出器45に接続され、サブ用操作位置検出器45からサブ用操作具22bの操作位置を取得することができる。
【0082】
制御装置54は、起伏用一側油圧センサ51と起伏用他側油圧センサ52とに接続され、起伏用一側油圧センサ51から起伏シリンダ16のヘッド側油室16aの油圧の値を取得し、起伏用他側油圧センサ52から起伏シリンダ16のロッド部側油室16bの油圧の値を取得することができる。
【0083】
制御装置54は、起伏用操作位置検出器53に接続され、起伏用操作位置検出器53から起伏用操作具22cの操作位置を取得することができる。
【0084】
制御装置54は、旋回位置検出センサ55とブーム長さ検出センサ56と起伏角度検出センサ57とに接続され、旋回位置検出センサ55からブーム情報Biである旋回位置を取得し、ブーム長さ検出センサ56からブーム情報Biであるブーム長さL(
図10(b)参照)を取得し、起伏角度検出センサ57からブーム情報Biである起伏角度θ(
図10(b)参照)を取得することができる。
【0085】
次に、
図10を用いて搬送物Wの推定吊荷重Leと実吊荷重Lrの算出方法について説明する。推定吊荷重Leは、メイン張力TSmと巻き掛け数Nまたはサブ張力TSsから算出される搬送物Wの重量である。実吊荷重Lrは、起伏推力THと伸縮ブーム8のブーム情報Biから算出される搬送物Wの重量である。なお、本実施形態において、推定吊荷重Leと実吊荷重Lrとの算出には、伸縮ブーム8のみによって搬送物Wを吊る場合について記載するものとする。
【0086】
図10(a)に示すように、メインワイヤロープ19の推定吊荷重Leを算出する場合、制御装置54は、メイン用一側油圧センサ33から取得したメイン用油圧モータ17aの繰り入れ側の油圧の値と、メイン用他側油圧センサ34から取得したメイン用油圧モータ17aの繰り出し側の油圧の値とに基づいてメイン用油圧モータ17aのメイン出力トルクTm(矢印参照)を算出する。合わせて、制御装置54は、決定したメインドラム17bに巻きつけられているメインワイヤロープ19の層数に基づいてメインドラム17bの回転軸からメインドラム17bに巻きつけられているメインワイヤロープ19の外周面までのメインドラム巻きつき半径Rmを算出する。
【0087】
制御装置54は、算出したメイン出力トルクTmとメインドラム巻きつき半径Rmとからメイン張力TSm(白塗矢印参照)を算出する。さらに、制御装置54は、算出したメイン張力TSmと、安全装置23から取得したメインワイヤロープ19の巻き掛け数Nとからメインワイヤロープ19の推定吊荷重Le(黒塗矢印参照)を算出する。なお、本実施形態において、メイン用油圧モータ17aのメイン出力トルクTmは、メイン用一側油圧センサ33から取得した油圧とメイン用他側油圧センサ34から取得した油圧とから算出されているがこれに限定するものではなく、メイン用操作位置検出器36から取得したメイン用操作具22aの操作状態からメイン用一側油圧センサ33のから取得した油圧に基づいて算出してもよい。この場合、メイン用他側油圧センサ34を設置する必要がない。
【0088】
同様にして、サブワイヤロープ20の推定吊荷重Leを算出する場合、制御装置54は、サブ用一側油圧センサ42から取得したサブ用油圧モータ18aの繰り入れ側の油圧の値と、サブ用他側油圧センサ43から取得したサブ用油圧モータ18aの繰り出し側の油圧の値とに基づいてサブ用油圧モータ18aのサブ出力トルクTsを算出する。合わせて、制御装置54は、決定したサブドラム18bに巻きつけられているサブワイヤロープ20の層数に基づいてサブドラム巻きつき半径Rsを算出する。
制御装置54は、算出したサブ出力トルクTsとサブドラム巻きつき半径Rmとから推定吊荷重Leであるサブ張力TSsを算出する。
【0089】
図10(b)に示すように、メインワイヤロープ19またはサブワイヤロープ20の実吊荷重Lrを算出する場合、制御装置54は、起伏用一側油圧センサ51から取得した起伏シリンダ16のヘッド側油室16aの油圧の値と、起伏用他側油圧センサ52から取得した起伏シリンダ16のロッド部側油室16bの油圧の値とに基づいて、起伏推力TH(白塗矢印)を算出する。
制御装置54は、算出した起伏推力THと伸縮ブーム8の形状および姿勢を表す伸縮ブーム8の重心位置C、伸縮ブーム8の重量Wb、伸縮ブーム8のブーム長さLおよび伸縮ブーム8の起伏角度θから構成されるブーム情報Biに基づいて実吊荷重Lr(黒塗矢印)を算出する。
【0090】
このように構成することで、クレーン1は、各検出値に基づいて算出したメインワイヤロープ19のメイン張力TSmまたはサブワイヤロープ20のサブ張力TSsと安全装置23に入力された作業の種類WTおよび巻き掛け数Nとから推定吊荷重Leを算出することができる。また、クレーン1は、各検出値に基づいて算出した起伏推力THとブーム情報Biに基づいて実吊荷重Lrを算出することができる。
【0091】
以下では、上述の如く構成されるクレーン1の安全装置23の誤設定の判定について説明する。本実施形態において、クレーン1の制御装置54は、安全装置23から作業の種類WTとメインワイヤロープ19の巻き掛け数Nとを取得しているものとする。
【0092】
クレーン1の制御装置54は、所定の時間毎にメイン用油圧モータ17aの繰り入れ側の油圧の値と繰り出し側の油圧の値とを取得し、メイン用油圧モータ17aのメイン出力トルクTmを算出する。さらに制御装置54は、メイン出力トルクTmとメインドラム巻きつき半径Rmとに基づいてメイン張力TSmを算出する。同様に、制御装置54は、所定の時間毎にサブ出力トルクTsとサブドラム巻きつき半径Rsとに基づいてサブ張力TSsを算出する。さらに、制御装置54は、メイン張力TSmと巻き掛け数Nとに基づいて推定吊荷重Leを算出する。
【0093】
また、制御装置54は、所定の時間毎に起伏シリンダ16のヘッド側油室16aの油圧の値とロッド部側油室16bの油圧の値とを取得し、起伏推力THを算出する。さらに、制御装置54は、起伏推力THとブーム情報Biに基づいて実吊荷重Lrを算出する。
【0094】
制御装置54は、所定の時間毎に算出したメイン張力TSmとサブ張力TSsとのうち基準値TSr以上の張力が発生しているワイヤロープのウインチ(以下、単に「張力発生ウインチA」と記す)が安全装置23から取得した作業の種類WTに基づいて定まるウインチ(以下、単に「使用ウインチB」と記す)と一致しているか否か判定する。制御装置54は、張力発生ウインチAと使用ウインチBとが一致していない場合、安全装置23の表示画面に作業の種類WTの設定が誤っている旨の警告を表示する。制御装置54は、張力発生ウインチAと使用ウインチBとが一致している場合、算出した推定吊荷重Leと実吊荷重Lrとの差が所定範囲Llに含まれるか否か判定する。制御装置54は、算出した推定吊荷重Leと実吊荷重Lrとの差が所定範囲Llに含まれていない場合、安全装置23の表示画面に巻き掛け数Nの設定が誤っている旨の警告を表示する。
【0095】
次に、
図11から
図13を用いて安全装置23の誤設定の判定の制御態様について具体的に説明する。なお、本実施形態において、クレーン1の制御装置54は、ブーム情報Biを取得し、所定の時間毎にメインウインチ17のメイン出力トルクTm、サブウインチ18のサブ出力トルクTsおよび起伏推力THを算出するために必要な情報を取得しているものとする。
【0096】
図11に示すように、ステップS100において、制御装置54は、使用ウインチ判定制御Aを開始し、ステップをステップS110に移行させる(
図12参照)。そして、使用ウインチ判定制御Aが終了するとステップをステップS200に移行させる。
【0097】
ステップS200において、制御装置54は、使用ウインチ判定制御Aにおいて作業の種類WTの設定が正しいと判定されたか否か判断する。
その結果、使用ウインチ判定制御Aにおいて作業の種類WTの設定が正しいと判定された場合、制御装置54はステップをステップS300に移行させる。
一方、使用ウインチ判定制御Aにおいて作業の種類WTの設定が正しくないと判定された場合、すなわち、作業の種類WTの設定が誤っていると判定された場合、制御装置54はステップをステップS100に移行させる。
【0098】
図12に示すように、使用ウインチ判定制御AのステップS110において、制御装置54は、メイン出力トルクTm、サブ出力トルクTs、起伏推力THを算出し、ステップをステップS120に移行させる。
【0099】
ステップS120において、制御装置54は、安全装置23から設定されている作業の種類WTおよび設定されている巻き掛け数Nを取得し、ステップをステップS130に移行させる。
【0100】
ステップS130において、制御装置54は、算出したメインウインチ17のメイン出力トルクTmと決定したメインドラム巻きつき半径Rmとに基づいてメイン張力TSmを算出し、ステップをステップS140に移行させる。
【0101】
ステップS140において、制御装置54は、算出したサブウインチ18のサブ出力トルクTsと決定したサブドラム巻きつき半径Rsとに基づいてサブ張力TSsを算出し、ステップをステップS150に移行させる。
【0102】
ステップS150において、制御装置54は、算出したメイン張力TSmが搬送物Wを吊り上げているとみなされる張力値である基準値TSr以上か否か判定する。
その結果、メイン張力TSmが搬送物Wを吊り上げているとみなされる張力値である基準値TSr以上であると判定した場合、制御装置54はステップをステップS160に移行させる。
一方、メイン張力TSmが搬送物Wを吊り上げているとみなされる張力値である基準値TSr未満であると判定した場合、制御装置54はステップをステップS170に移行させる。
【0103】
ステップS160において、制御装置54は、使用ウインチBはメインウインチ17であるか否か判定する。
その結果、使用ウインチBはメインウインチ17であると判定した場合、つまり、安全装置23における作業の種類WTの設定が正しいと判定した場合、制御装置54は使用ウインチ判定制御Aを終了し、ステップ200を経てステップをステップS300に移行させる(
図13参照)。
一方、使用ウインチBはメインウインチ17でないと判定した場合、つまり、安全装置23における作業の種類WTの設定が誤っていると判定した場合、制御装置54はステップをステップS190に移行させる。
【0104】
ステップS170において、制御装置54は、算出したサブ張力TSsが搬送物Wを吊り上げているとみなされる張力値である基準値TSr以上か否か判定する。
その結果、サブ張力TSsが搬送物Wを吊り上げているとみなされる張力値である基準値TSr以上であると判定した場合、制御装置54はステップをステップS180に移行させる。
一方、サブ張力TSsが搬送物Wを吊り上げているとみなされる張力値である基準値TSr未満であると判定した場合、制御装置54はステップをステップS110に移行させる。
【0105】
ステップS180において、制御装置54は、使用ウインチBはサブウインチ18であるか否か判定する。
その結果、使用ウインチBはサブウインチ18であると判定した場合、つまり、安全装置23における作業の種類WTの設定が正しいと判定した場合、制御装置54は使用ウインチ判定制御Aを終了し、ステップ200を経てステップをステップS300に移行させる(
図13参照)。
一方、使用ウインチBはサブウインチ18でないと判定した場合、つまり、安全装置23における作業の種類WTの設定が誤っていると判定した場合、制御装置54はステップをステップS190に移行させる。
【0106】
ステップS190において、制御装置54は、作業の種類WTの設定が誤っている旨の警告を安全装置23によって作業者に報知し、制御装置54は使用ウインチ判定制御Aを終了し、ステップ200を経てステップをステップS100に移行させる(
図11参照)。
【0107】
図13に示すように、巻き掛け数判定制御BのステップS310において、制御装置54は、ブーム情報Biと算出した起伏推力THとに基づいて実吊荷重Lrを算出し、ステップをステップS320に移行させる。
【0108】
ステップS320において、制御装置54は、張力発生ウインチAがメインウインチ17か否か判定する。
その結果、張力発生ウインチAがメインウインチ17であると判定した場合、制御装置54は、ステップをステップS330に移行させる。
一方、張力発生ウインチAがメインウインチ17でないと判定した場合、つまり、張力発生ウインチAがサブウインチ18であると判定した場合、制御装置54は、ステップをステップS350に移行させる。
【0109】
ステップS330において、制御装置54は、算出したメイン張力TSmと巻き掛け数Nとに基づいて推定吊荷重Leを算出し、ステップをステップS340に移行させる。
【0110】
ステップS340において、制御装置54は、算出した推定吊荷重Leと実吊荷重Lrとの差が所定範囲Llに含まれているか否か判定する。
その結果、算出した推定吊荷重Leと実吊荷重Lrとの差が所定範囲Llに含まれていると判定した場合、つまり、安全装置23における巻き掛け数Nの設定が正しいと判定した場合、制御装置54は巻き掛け数判定制御Bを終了し、ステップをステップS100に移行させる。
一方、算出した推定吊荷重Leと実吊荷重Lrとの差が所定範囲Llに含まれていないと判定した場合、つまり、安全装置23における巻き掛け数Nの設定が誤っていると判定した場合、制御装置54はステップをステップS360に移行させる。
【0111】
ステップS350において、制御装置54は、算出したサブ張力TSsと巻き掛け数N(本実施形態ではN=1)とに基づいて推定吊荷重Leを算出し、ステップをステップS340に移行させる。
【0112】
ステップS360において、制御装置54は、安全装置23の表示画面に巻き掛け数Nの設定が誤っている旨の警告を表示し、巻き掛け数判定制御Bを終了し、ステップをステップS100に移行させる。
【0113】
このように構成することで、クレーン1は、複数のウインチを備える場合、作業者によるクレーン1の操作態様に基づいて安全装置23に設定されている作業の種類WTの適否が迅速に判定される。さらに、クレーン1は、安全装置23に設定された巻き掛け数Nに基づいて算出される推定吊荷重Leと起伏推力THから算出される実吊荷重Lrとを比較することで安全装置23に設定されている作業の種類WTや巻き掛け数Nの適否が判定される。つまり、クレーン1は、作業者が安全装置23に入力した設定値に基づいて算出される推定吊荷重Leと実際の搬送物Wの重量に基づいて算出される実吊荷重Lrとの比較によって安全装置23における誤設定の有無が判断される。この際、クレーン1は、メイン用油圧モータ17aのメイン出力トルクTmまたはサブ用油圧モータ18aのサブ出力トルクTsに基づいて推定吊荷重Leが算出される。つまり、本実施形態かかるクレーン1において算出される推定吊荷重Leは、ワイヤロープとシーブとの摩擦等による負荷が含まれた状態で推定吊荷重Leが算出される。一方、フックブロック近傍のワイヤロープの途中部に張力計が設けられている従来のクレーンは、張力計が計測する搬送物の重量のみに基づいて推定吊荷重が算出される。従って、クレーン1は、ワイヤロープの負荷状態をより適切に反映した値に基づいて安全装置23の設定が誤っていることを作業者に安全装置23を通じて認識させることができる。
【0114】
次に、
図14を用いて、安全装置23の誤設定の判定における別実施形態について具体的に説明する。なお、以下の実施形態において、既に説明した実施形態と同様の点に関してはその具体的説明を省略し、相違する部分を中心に説明する。本実施形態における相違点として、クレーン1にメインウインチ17のみを具備する点において異なる。
【0115】
図14に示すように、ステップS410からステップS430までについては、
図12に示す使用ウインチ判定制御AにおけるステップS110からステップS130までと同一であるため説明を省略する。
【0116】
ステップS440からステップS470までについては、
図13に示す巻き掛け数判定制御BにおけるステップS310、ステップS330、ステップS340、ステップS360と同一であるため説明を省略する。
【0117】
このように構成することで、クレーン1は、安全装置23に設定された巻き掛け数Nに基づいて算出される推定吊荷重Leと起伏推力THから算出される実吊荷重Lrとを比較することで安全装置23に設定されている作業の種類WTや巻き掛け数Nの適否が判定される。つまり、クレーン1は、作業者が安全装置23に入力した設定値に基づいて算出される推定吊荷重Leと実際の搬送物Wの重量に基づいて算出される実吊荷重Lrとの比較によって安全装置23における誤設定の有無が判断される。これにより、安全装置23に設定されている作業の種類WTが誤っていることを作業者に安全装置23を通じて認識させることができる。
【0118】
以上、クレーンの一実施形態であるクレーン1は、メインウインチ17とサブウインチ18を備える構成とメインウインチ17のみを備える構成とについて説明したがこれに限定されるものではなく、一つ以上のウインチを備えるクレーン1であればよい。また、クレーン1は、伸縮ブーム8によって搬送物Wが吊られている場合について説明したがこれに限定されるものではなく、伸縮ブーム8に装着されたジブ13に搬送物Wが吊られている場合でもよい。上述の実施形態は、代表的な形態を示したに過ぎず、一実施形態の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。