【実施例1】
【0015】
(発光素子の構成)
図1は、実施例1の発光素子の構成について示した図である。
図1のように、実施例1の発光素子は、サファイアからなる基板10と、基板10上に、AlNからなるバッファ層(図示しない)を介して、n層11、発光層12、p層13の順に積層されたIII 族窒化物半導体からなる半導体層を有している。さらに電極構造として、透明電極14、絶縁膜15、pコンタクト電極17、nコンタクト電極18、p側反射電極19、n側反射電極20、p配線電極21、n配線電極22を有している。実施例1の発光素子はフェイスアップ型の素子である。
【0016】
基板10は、その主面上にIII 族窒化物半導体を形成するための成長基板である。基板10のn層11側の表面には凹凸加工が施されており、光取り出し効率の向上が図られている。基板10の材料はサファイア以外を用いてもよく、Si、GaN、SiC、ZnOなどを用いてもい。
【0017】
n層11、発光層12、およびp層13の構成は、発光素子の構成として従来採用されている任意の構成でよい。たとえば、n層11は、n−GaNからなるnコンタクト層、アンドープGaNとn−GaNを順に積層させた静電耐圧層、n−GaNとInGaNを交互に繰り返し積層させたn超格子層を順に積層させた構造である。また、発光層12は、InGaNからなる井戸層、GaNまたはAlGaNからなるキャップ層、AlGaNからなる障壁層を順に積層させた構造を1単位として、これを複数回繰り返し積層させたMQW構造である。また、p層13は、p−AlGaNとp−InGaNを交互に繰り返し積層させたpクラッド層、p−GaNからなるpコンタクト層を順に積層させた構造である。
【0018】
p層13上にはIZO(亜鉛ドープの酸化インジウム)からなる透明電極14が設けられている。IZO以外にも、ITO(スズドープの酸化インジウム)、ICO(セリウムドープの酸化インジウム)、ZnOなどの透光性と導電性を有した材料であれば任意の材料を用いることができる。
【0019】
p層13表面の一部領域には、n層11に達する深さの溝が設けられている。この溝は、nコンタクト電極18を設けるためにn層11表面を露出させるものである。
【0020】
透明電極14、溝底面のn層11に連続して素子上部全体を覆うように絶縁膜15が設けられている。絶縁膜15は、SiO
2 からなる。
【0021】
絶縁膜15には、その絶縁膜15を貫通して底面に透明電極14が露出する複数のコンタクトホール16Aと、絶縁膜15を貫通して底面にn層11が露出する複数のコンタクトホール16Bが設けられている。コンタクトホール16A、Bは、平面視で円形であり、コンタクトホール16A、Bの側面は絶縁膜15の主面に対して傾斜している。
【0022】
なお、コンタクトホール16A、Bの形状は上記に限るものではなく、平面視で三角形、長方形、正方形、菱形などの多角形、楕円など任意の形状でよい。また、コンタクトホール16A、Bの側面は、絶縁膜15の主面に対して垂直であっても傾斜していてもよい。
【0023】
各コンタクトホール16Aの底面に露出する透明電極14上には、それぞれpコンタクト電極17が設けられている。また、各コンタクトホール16Bの底面に露出するn層11上には、それぞれnコンタクト電極18が設けられている。
【0024】
図2のように、pコンタクト電極17は、コンタクトホール16Aを一定の高さまで埋めるようにして設けられており、コンタクトホール16A底面16Aa(透明電極14表面)およびコンタクトホール16A側面16Ab(絶縁膜15)に接している。nコンタクト電極18も同様に、コンタクトホール16Bを一定の高さまで埋めるようにして設けられており、コンタクトホール16B底面16Ba(n層11表面)およびコンタクトホール16B側面16Bb(絶縁膜15)に接している。ただし、コンタクトホール16A、B側面16Ab、16Bbのうち、pコンタクト電極17およびnコンタクト電極18が接するのは、コンタクトホール16A、B側面下部16Ab1、16Bb1であり、側面上部16Ab2、16Bb2には接していない。
【0025】
また、pコンタクト電極17およびnコンタクト電極18の表面は平坦でなく、上に凸のレンズ状の曲面を有している。つまり、pコンタクト電極17およびnコンタクト電極18は、中央部ほど厚く、コンタクトホール16A、Bの側面16Ab、16Bbに近づくほど薄くなっている。また、pコンタクト電極17およびnコンタクト電極18中央部の厚さHは、コンタクトホール16A、Bの深さD(絶縁膜15の厚さ)よりも薄くなっている。なお、pコンタクト電極17およびnコンタクト電極18の表面が曲面であるため、コンタクトホール16A、Bの側面下部16Ab1、16Bb1と、側面上部16Ab2、16Bb2との境界位置は、pコンタクト電極17およびnコンタクト電極18中央部よりも若干下側(透明電極14側あるいはn層11側)となっている。
【0026】
pコンタクト電極17およびnコンタクト電極18は同一の材料であり、Ti/Rh/Ti/Auからなる。ここでA/Bは、A、Bの順に積層させた積層構造であることを示す。他にもTi/Pt/Ti/Au、Ti/Au/Ti/Au、Ni/Al合金/Ti/Au、Ni/Al/Ti/Auなどを用いることができる。このような材料を用いることで、透明電極14およびn層11とのコンタクトを良好としている。また、透明電極14のIZOと反射電極のAlとが反応して反射率を低下させてしまうこと、およびコンタクト抵抗を上昇させてしまうことを防止している。なお、実施例1ではpコンタクト電極17とnコンタクト電極18とを同一材料として、pコンタクト電極17とnコンタクト電極18を同時形成し、製造工程の簡略化を図っているが、異なる材料としてもよい。
【0027】
なお、p層13と透明電極14との間であって、コンタクトホール16A直下の領域に、絶縁層を形成してもよい。コンタクトホール16A直下に発光が集中しないようにし、電流が面内に均等に拡散するようにし、発光の均一性を高めることができる。
【0028】
絶縁膜15上には、p側反射電極19と、n側反射電極20とがそれぞれ離間して設けられている。p側反射電極19およびn側反射電極20は、Alからなる。他にもAlを主とするAl合金や、AgおよびAg合金、Ruなどの発光素子の発光波長に対して高い反射率を有した材料を用いることができる。ただし、反射率の高さやマイグレーションの抑制などの観点から、AlやAl合金を用いることが好ましい。このp側反射電極19およびn側反射電極20によって、p配線電極21やn配線電極22に向かう光を反射させ、p配線電極21やn配線電極22による光の吸収を防止して、光取り出し効率の向上を図っている。
【0029】
p側反射電極19は、絶縁膜15上、コンタクトホール16A側面16Ab、およびpコンタクト電極17表面に連続して膜状に形成されている。これにより、各pコンタクト電極17が並列に接続されている。
【0030】
同様に、n側反射電極20は、絶縁膜15上、コンタクトホール16B側面16Bb、およびnコンタクト電極18表面に連続して膜状に形成されている。これにより、各nコンタクト電極18が並列に接続されている。
【0031】
pコンタクト電極17およびnコンタクト電極18は、コンタクトホール16A、Bの内部に一定の高さまで埋めるようにして形成されており、コンタクトホール16A、Bの側面下部16Ab1、16Bb1には接しているが、側面上部16Ab2、16Bb2には接していない。そのため、コンタクトホール16A、B側面上部16Ab2、16Bb2およびコンタクトホール16A、B上面もp側反射電極19やn側反射電極20に接して覆われている。これにより、p側反射電極19およびn側反射電極20の面積を大きく取ることができ、p側反射電極19およびn側反射電極20によって効率的に光を反射させることができる。
【0032】
p側反射電極19上にはp配線電極21が設けられ、n側反射電極20上にはn配線電極22が設けられている。p側反射電極19とp配線電極21は同一の平面パターンであり、n側反射電極20とn配線電極22は同一の平面パターンである。p配線電極21は、p側反射電極19を介して、各pコンタクト電極17を並列に接続する配線状の電極である。また、n配線電極22は、n側反射電極20を介して、各nコンタクト電極18を並列に接続している。p配線電極21およびn配線電極22の材料は、Ti/Au/Alである。
【0033】
(発光素子の製造工程)
次に、実施例1の発光素子の製造工程について、
図3、4を参照に説明する。
【0034】
まず、基板10上に、MOCVD法を用いて、バッファ層(図示しない)を介してn層11、発光層12、p層13を順に形成する(
図3.A参照)。MOCVD法において、窒素源は、アンモニア、Ga源は、トリメチルガリウム(Ga(CH
3 )
3 :TMG)、In源は、トリメチルインジウム(In(CH3)3:TMI)、Al源は、トリメチルアルミニウム(Al(CH
3 )
3 :TMA)である。また、n型ドーパントガスは、シラン(SiH
4 )、p型ドーパントガスは、シクロペンタジエニルマグネシウム(Mg(C5H5)
2 :CP
2 Mg)である。キャリアガスは水素や窒素である。
【0035】
次に、p層13表面の所定の領域をドライエッチングし、n層11に達する深さの溝を形成する。そして、p層13上のほぼ全面にスパッタ法によりIZOからなる透明電極14を形成する(
図3.B参照)。先に透明電極14を形成してから、n層11を露出させる溝を形成してもよい。
【0036】
次に、CVD法によって、透明電極14上および溝の底面に露出するn層11上に連続して膜状にSiO
2 からなる絶縁膜15を形成する。
【0037】
次に、絶縁膜15上にフォトリソグラフィによってレジスト層23を形成する(
図3.C参照)。レジスト層23のパターンは、コンタクトホール16A、Bを形成する位置に開口部23Aを有したパターンとする。レジスト層23の材料は、たとえばAZ5214(クラリアントジャパン株式会社製)などである。
【0038】
次に、レジスト層23をマスクとして、レジスト層23の開口部23Aに露出する絶縁膜15を、透明電極14またはn層11が露出するまでドライエッチングし、コンタクトホール16A、Bを形成する(
図3.D参照)。コンタクトホール16Aの底面16Aaには透明電極14表面、コンタクトホール16Bの底面16Baにはn層11が露出する。ドライエッチングは、RIE(反応性イオンエッチング)などを用いる。エッチングガスは、CF
4 +O
2 、CHF
3 などのフッ素系ガスを用いるとよい。このドライエッチングの際、レジスト層23表面には、エッチングガスとの反応により変成層26が生じる。また、コンタクトホール16A、Bの底面16Aa、16Baに露出する透明電極14表面およびn層11表面には、エッチングガスとの反応により変質層25が生じる。
【0039】
次に、レジスト層23を残したまま、コンタクトホール16A、Bの側面16Ab、16Bbに露出する絶縁膜15をサイドエッチングする(
図3.E参照)。サイドエッチングは、HFなどを用いたウェットエッチングである。これにより、コンタクトホール16A、Bの直径を拡大する。また、このHF処理によって、コンタクトホール16A、Bの底面に露出する透明電極14表面、n層11表面の絶縁膜15の残渣を除去している。
【0040】
このウェットエッチングでは、レジスト層23はエッチングされない。その結果、コンタクトホール16A、Bの直径R1(コンタクトホール16A、B上面での直径)は、レジスト層23の開口部23Aの直径R2(絶縁膜15と接する面での直径)よりも大きくなり、コンタクトホール16A、Bの上部においてレジスト層23がコンタクトホール16A、Bの中央部に向かってひさし状にせりだした状態となる。また、これにより、コンタクトホール16A、Bの底面16Aa、16Baには、前工程のドライエッチングによるダメージを受けていない透明電極14表面あるいはn層11表面の領域が露出する。
【0041】
次に、ドライエッチング時に生じたレジスト層23表面の変成層26を除去する(
図3.F)。変成層26の除去は、フォトリソグラフィに用いる現像液によって除去することができる。たとえばTMAH水溶液などのアルカリ溶液を用いることができる。このようにしてレジスト層23表面の変成層26を除去することで、後工程のpコンタクト電極17およびnコンタクト電極18のリフトオフによる形成において、レジスト層23上に密着性よく金属膜24を形成することができ、精度よくpコンタクト電極17およびnコンタクト電極18を形成することができる。
【0042】
次に、ドライエッチング時に生じた透明電極14表面およびn層11表面の変質層25を除去する(
図3.G)。変質層25の除去は、塩素系ガスを用いたドライエッチングにより行う。たとえば、SiCl
4 などを用いることができる。また、このとき基板10の温度は、たとえば30℃以上150℃以下である。また、エッチング時間は、たとえば20秒以上3分以下である。変質層25は電気抵抗率が高いため、このようにして変質層25を除去することで、透明電極14とpコンタクト電極17、およびn層11とnコンタクト電極18とのコンタクトを良好とすることができる。また、この変質層25除去工程の前に、
図3.Eの工程でHF処理を行って透明電極14表面やn層11表面の絶縁膜15の残渣を除去しているため、その後の
図3.Gの工程において効果的に変質層25を除去することができる。なお、変質層25を除去することにより、その領域の透明電極14およびn層11は多少薄くなる。また、実際には、変質層25は除去されているというよりも、変質層25よりも電気抵抗率の低い別の変質層に置き換えられていると考えられる。
【0043】
先に透明電極14表面やn層11表面の変質層25を除去し、その後にレジスト層23の変成層26を除去するのは好ましくない。抵抗が増大してしまうためである。先にSiCl
4 を用いた表面処理を行うと、その表面処理効果が弱くなってしまい、変質層25から電気抵抗率の低い別の変質層への置き換えが十分に進まないためと考えられる。逆に言えば、先にTMAH水溶液によって透明電極14表面やn層11表面を処理することにより、その後のSiCl
4 を用いた表面処理効果が高められているとも考えられる。
【0044】
次に、レジスト層23を残したまま、コンタクトホール16A、Bの側面16Ab、16Bbに露出する絶縁膜15を再びHFを用いてサイドエッチングする。これにより、コンタクトホール16A、Bの直径をさらに拡大する。合わせて、HF処理によってコンタクトホール16A、Bの底面に露出する透明電極14表面やn層11表面を清浄化する。これにより、順方向電圧VFを低減している。
【0045】
なお、実施例1では、レジスト層23表面の変成層26、および、透明電極14表面、n層11表面の変質層25の除去前後の2回にわたって、コンタクトホール16A、Bのサイドエッチングを行っているが、除去前と除去後の一方のみとしてもよい。また、変成層26の除去後、変質層25の除去前の間に、コンタクトホール16A、Bのサイドエッチングを行ってもよい。ただし、前述のように、変質層25除去後にサイドエッチングを行えば順方向電圧VFを低減することができるため、除去後にサイドエッチングを行うことが好ましい。さらに、変質層25を効果的に除去するためには、変質層25の除去前にサイドエッチングを行うことが好ましい。したがって、実施例1のように、変質層25の除去前と除去後の2回サイドエッチングを行うことが最も好ましい。
【0046】
次に、リフトオフ法によって、コンタクトホール16Aの底面16Aa(透明電極14表面)、およびコンタクトホール16Bの底面16Ba(n層11表面)に、pコンタクト電極17、nコンタクト電極18をそれぞれ形成する(
図3.H参照)。以下、
図4を参照にして、その形成工程を詳しく説明する。なお、簡便のため、
図4ではpコンタクト電極17の形成のみを示す。
【0047】
まず、スパッタ法によってレジスト層23の上面全面、およびコンタクトホール16A、B底面に、スパッタ法によって金属膜24を形成する(
図4(a)参照)。金属膜24の厚さは、コンタクトホール16A、Bの深さDよりも薄くする。金属膜24の形成には蒸着などを用いてもよいが、膜質や厚さの均一性などの点からスパッタ法を用いるのが好ましい。
【0048】
このとき、コンタクトホール16A、Bの側面16Ab、16Bbはサイドエッチングされて直径が拡大されているため、コンタクトホール16A、Bの上部にはレジスト層23がコンタクトホール16A、Bの中央部に向かってせりだして、ひさし状となっている。そのため、コンタクトホール16A、Bの底面16Aa、16Baに形成される金属膜24Aと、レジスト層23の上面に形成される金属膜24Bとは不連続となり、互いに分離して形成される。金属膜24の厚さをコンタクトホール16A、Bの深さDよりも薄くしたのは、この分離性をよくするためである。
【0049】
また、金属膜24Bは、コンタクトホール16A、Bの底面16Aa、16Baと側面下部16Ab1、16Bb1に接し、側面上部16Ab2、16Bb2に接しないようにして、コンタクトホール16A、Bを一定の高さまで埋めるように形成されている。
【0050】
また、コンタクトホール16A、Bの上部にレジスト層23がひさし状にせりだしているため、コンタクトホール16A、Bの底面16Aa、16Baに形成される金属膜24Aのうち、上部にレジスト層23が位置しない領域は通常通りの厚さHに形成されるが、上部にレジスト層23がせりだしている領域は、コンタクトホール16A、B側面16Ab、16Bbに近いほど厚さが薄くなる。その結果、金属膜24Bは、上に凸のレンズ状の曲面を有することになる。
【0051】
次に、金属膜24に粘着テープ27を貼り付けて剥がすことにより、レジスト層23とともに金属膜24を引き剥がす。ここで、金属膜24Aは、レジスト層23上ではなく透明電極14上またはn層11上に形成されており、金属膜24Aは金属膜24Bよりも低い位置にあり、金属膜24Aと金属膜24Bは分離している。一方、金属膜24Bはレジスト層23上に形成されており、レジスト層23と絶縁膜15との密着性は低い。そのため、金属膜24のうち、レジスト層23上に形成された金属膜24Bのみが、レジスト層23とともに粘着テープ27に張りついて引き剥がされ、金属膜24Aは残存する。この残存した金属膜24Aが、pコンタクト電極17およびnコンタクト電極18である(
図4(b)参照)。その後、レジスト層23の残渣を薬液により取り除く。以上がリフトオフ法によるpコンタクト電極17およびnコンタクト電極18の形成工程である。
【0052】
次に、絶縁膜15上およびpコンタクト電極17上に、p側反射電極19とp配線電極21の積層を、絶縁膜15上およびnコンタクト電極18上に、n側反射電極20とn配線電極22の積層を、それぞれ離間して同時に形成する。形成にはスパッタまたは蒸着と、リフトオフ法を用いる。p側反射電極19およびp配線電極21の平面パターンは、各pコンタクト電極17を並列に接続する配線状のパターンである。また、n側反射電極20およびn配線電極22の平面パターンは、各nコンタクト電極18を並列に接続する配線状のパターンである。
【0053】
ここで、pコンタクト電極17およびnコンタクト電極18は、コンタクトホール16A、Bの上面(コンタクトホール16A、B近傍の絶縁膜15上)や側面上部16Ab2、16Bb2には接していないので、それらの領域にもp側反射電極19およびn側反射電極20が接して形成されることになる。そのため、p側反射電極19およびn側反射電極20が絶縁膜15と接する面積を広く取ることができ、反射させる面積が広くなる。その結果、p側反射電極19およびn側反射電極20によって効率的に光を反射させることができ、p配線電極21およびn配線電極22に光があたらないようにすることができ、p配線電極21およびn配線電極22による光の吸収をより抑制することができる。
【0054】
また、pコンタクト電極17およびnコンタクト電極18は、変質層25の除去された透明電極14表面またはn層11表面に接している。そのため、pコンタクト電極17と透明電極14、およびnコンタクト電極18とn層11は、良好にコンタクトを取ることができる。また、pコンタクト電極17およびnコンタクト電極18は、絶縁膜15のサイドエッチングによって露出したダメージのない透明電極14表面またはn層11表面に接している。そのため、絶縁膜15をサイドエッチングせずにpコンタクト電極17およびnコンタクト電極18を形成した場合よりもコンタクト抵抗を低減することができる。
【0055】
以上、実施例1の発光素子の製造方法では、コンタクトホール16A、Bの形成時にマスクとして用いたレジスト層23を、その後のpコンタクト電極17およびnコンタクト電極18をリフトオフにより形成するためのマスクとして流用するため、コンタクトホール16A、Bの底面16Aa、16Baにpコンタクト電極17およびnコンタクト電極18を位置ずれなく簡易に形成することができる。
【0056】
なお、リフトオフ法によるpコンタクト電極17およびnコンタクト電極18の形成をより容易かつ高精度とするために、以下のようにするとよい。
【0057】
コンタクトホール16A、Bの直径R1は、レジスト層23の開口部23Aの直径R2の1.03〜1.25倍大きくするとよい。コンタクトホール16A、Bの直径R1をこのような範囲とすることで、コンタクトホール16A、B上部のレジスト層23のひさしとしての効果を十分とすることができ、リフトオフ時の金属膜24Aと金属膜24Bの分離がより確実となり、精度よくpコンタクト電極17およびnコンタクト電極18を形成することができる。より望ましくは、レジスト層23の開口部23Aの直径R2の1.05〜1.19倍であり、さらに望ましくは1.06〜1.13倍である。なお、コンタクトホール16A、Bが円以外の形状の場合は、その外接円の直径をコンタクトホール16A、Bの直径R1とする。また、コンタクトホール16A、Bの側面16Ab、16Bbが傾斜している場合には、コンタクトホール16A、Bの直径R1とは、コンタクトホール16A、B上面での直径とする。また、レジスト層23の開口部23Aの直径R2についても同様に、絶縁膜15と接する面(つまりコンタクトホール16A、B上面と同一面)での直径とする。
【0058】
たとえば、コンタクトホール16A、Bの直径R1は、17〜18μmとし、レジスト層23の開口部23Aの直径R2は、16〜17μmとするとよい。
【0059】
また、コンタクトホール16A、Bの深さD(つまりコンタクト位置での絶縁膜15の厚さ)は、コンタクトホール16A、Bの直径R1の0.0056〜0.047倍とするとよい。この範囲とすれば、pコンタクト電極17およびnコンタクト電極18を、コンタクトホール16A、Bを一定の高さまで埋めるようにして精度よく形成することができる。より望ましくは0.0059〜0.035倍であり、さらに望ましくは0.0059〜0.024倍である。たとえば、コンタクトホール16A、Bの深さDは、100〜400nmとするとよい。
【0060】
また、pコンタクト電極17およびnコンタクト電極18の中央部の厚さHは、コンタクトホールの深さDの0.075〜0.9倍とするのがよい。厚さHがこれよりも厚いと、金属膜24の形成時に金属膜24Aと金属膜24Bとで十分に分離しない場合があり、pコンタクト電極17およびnコンタクト電極18を精度よく形成することが難しくなる。また、厚さHがこれよりも薄いと、コンタクトホール16A、Bの底面16Aa、16Baにpコンタクト電極17およびnコンタクト電極18が接せずに露出した領域が生じる可能性があり、その領域にp側反射電極19およびn側反射電極20が接することになるため、コンタクト抵抗が悪化してしまう。より望ましくは、コンタクトホールの深さDの0.125〜0.8倍であり、さらに望ましくは0.25〜0.75倍である。たとえば、pコンタクト電極17およびnコンタクト電極18の中央部の厚さHは、100〜300nmとするとよい。
【0061】
レジスト層23の厚さdは、レジスト層23の開口部23Aの直径R2の1/16〜5/16倍とするのがよい。この範囲とすれば、pコンタクト電極17およびnコンタクト電極18を、コンタクトホール16A、Bを一定の高さまで埋めるようにして精度よく形成することができる。より望ましくはレジスト層23の開口部23Aの直径R2の1/16〜3/16倍であり、さらに望ましくは1/16〜1/8倍である。たとえば、レジスト層23の厚さdは、1000〜3000nmとするとよい。
(各種変形例)
実施例1の発光素子はフェイスアップ型であったが、本発明の発光素子は、フェイスアップ型以外にもフリップチップ型など任意の構造の発光素子に対して適用することができる。また、本発明は透明電極14およびn層11にコンタクトを取るpコンタクト電極17とnコンタクト電極18とを同時に形成するものであるが、どちらか一方を形成する場合にも本発明は適用することができる。また、p層13に直接コンタクトを取るコンタクト電極を形成する場合にも本発明は適用することができる。また、実施例1の発光素子は、p側反射電極19、n側反射電極20を有しているが、このような反射電極を設けない場合にも本発明は適用することができる。要するに、透明電極あるいは半導体層にコンタクトを取るコンタクト電極を形成する場合に本発明は適用することができる。