特許第6693423号(P6693423)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6693423カメラモジュール用液晶性ポリエステル樹脂組成物およびそれからなるカメラモジュール用成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6693423
(24)【登録日】2020年4月20日
(45)【発行日】2020年5月13日
(54)【発明の名称】カメラモジュール用液晶性ポリエステル樹脂組成物およびそれからなるカメラモジュール用成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/00 20060101AFI20200427BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20200427BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20200427BHJP
   G03B 17/02 20060101ALI20200427BHJP
【FI】
   C08L67/00
   C08K3/36
   C08K7/02
   G03B17/02
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-565363(P2016-565363)
(86)(22)【出願日】2016年10月17日
(86)【国際出願番号】JP2016080669
(87)【国際公開番号】WO2017073387
(87)【国際公開日】20170504
【審査請求日】2019年9月30日
(31)【優先権主張番号】特願2015-214364(P2015-214364)
(32)【優先日】2015年10月30日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松原 知史
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 剛士
(72)【発明者】
【氏名】立川 浩司
【審査官】 岡谷 祐哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−080289(JP,A)
【文献】 特開2011−068831(JP,A)
【文献】 特開2006−299254(JP,A)
【文献】 特開2007−138143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K
C08L
G02B
G03B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)液晶性ポリエステル樹脂100重量部に、(B)平均粒子径15μm以上30μm未満の球状シリカを20〜45重量部含有することを特徴とするカメラモジュール用液晶性ポリエステル樹脂組成物。
【請求項2】
(C)平均粒子径が10〜50μmの板状充填材および/または(D)平均繊維長が30〜300μmの繊維状充填材を更に含有することを特徴とする請求項1に記載のカメラモジュール用液晶性ポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)液晶性ポリエステル樹脂が下記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)から構成され、構造単位(I)が構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対し65〜80モル%であり、構造単位(II)が構造単位(II)および(III)の合計に対して55〜85モル%であり、構造単位(IV)が構造単位(IV)および(V)の合計に対して50〜95モル%であることを特徴とする請求項1または2に記載のカメラモジュール用液晶性ポリエステル樹脂組成物。
【化1】
【請求項4】
前記(B)球状シリカが、真球度が0.85以上である球状シリカであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のカメラモジュール用液晶性ポリエステル樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のカメラモジュール用樹脂組成物からなるカメラモジュール用成形品。
【請求項6】
請求項5に記載のカメラモジュール用成形品からなるカメラモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は低発塵性、靭性および衝撃強度に優れるカメラモジュール用液晶性ポリエステル樹脂組成物およびそれからなるカメラモジュール用成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチックの高性能化に対する要求がますます高まり、種々の新規性能を有する樹脂が数多く開発され、市場に供されている。中でも、分子鎖の平行な配列を特徴とする光学異方性を有する液晶性樹脂が、優れた流動性、耐熱性、機械的性質、寸法安定性を有する点で注目され、微細コネクタなどの精密成形品に使用されるようになっている。
【0003】
特にカメラモジュールのような光学レンズを保持するような部品において、液晶性樹脂組成物の寸法安定性や流動性を生かしてより小型化や精度向上を進めたいニーズがあり、検討が行われている(例えば、特許文献1)。特許文献1は、液晶性ポリエステル樹脂に平均粒子径が5μm以下のシリカを配合することで、カメラモジュールなどのレンズ保持部がある部品において、部品についているゴミを超音波洗浄する際の液晶性ポリエステル樹脂部品表面のフィブリル化による発塵を抑制するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−106165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、カメラモジュール部品はズームやピント調節、手振れ防止などの駆動機構の付与が進んでおり、部品同士が摺動する場合や、衝撃衝突する場合がある。その摺動や衝撃衝突により部品表面からパーティクルが離脱して発塵することが課題になってきている。しかし、特許文献1に記載の方法では発塵抑制が充分ではない。また、部品表面からのパーティクル離脱による発塵という課題を解決するためにナイロン樹脂などのより靭性が高く摺動性や衝撃耐性が高い樹脂へと切り替える動きもあるが、ナイロン樹脂は吸水による寸法変化が大きい点が課題であった。本発明は、低発塵性、靭性、および衝撃強度に優れるカメラモジュール用液晶性樹脂組成物、およびそれからなるカメラモジュール用成形品を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、液晶ポリエステル樹脂に特定粒子径の球状シリカを特定量配合することで発塵性、靭性、および衝撃強度に優れたカメラモジュール用の液晶性樹脂組成物が得られることを見出し、本発明に到達した。
【0007】
即ち、本発明は上述の課題を解決させるためになされたものであり、本発明の実施形態は、以下に挙げる構成の少なくとも一部を含み得る。
(A)液晶性ポリエステル樹脂100重量部に、(B)平均粒子径15μm以上30μm未満の球状シリカを20〜45重量部含有することを特徴とするカメラモジュール用液晶性ポリエステル樹脂組成物。
【0008】
本発明は、上記記載のカメラモジュール用液晶性ポリエステル樹脂組成物からなるカメラモジュール用成形品を含む。
【0009】
本発明は、上記記載のカメラモジュール用成形品からなるカメラモジュールを含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明の液晶性ポリエステル樹脂組成物によれば、低発塵性、靭性、および衝撃強度に優れるカメラモジュール用液晶性樹脂組成物、およびそれからなるカメラモジュール用成形品を得ることができる。本発明のカメラモジュール用成形品は、カメラモジュール部品に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明の実施形態のカメラモジュール用液晶性ポリエステル樹脂組成物は、(A)液晶性ポリエステル樹脂100重量部に対して、(B)平均粒子径15μm以上30μm未満の球状シリカを20〜45重量部含有する。
【0013】
本発明の(A)液晶性ポリエステル樹脂は、例えば芳香族オキシカルボニル単位、芳香族および/または脂肪族ジオキシ単位、芳香族および/または脂肪族ジカルボニル単位などから選ばれた構造単位からなり、かつ異方性溶融相を形成する液晶性ポリエステル樹脂である。
【0014】
芳香族オキシカルボニル単位としては、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸などから生成した構造単位が挙げられ、p−ヒドロキシ安息香酸が好ましい。芳香族および/または脂肪族ジオキシ単位としては、例えば、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールなどから生成した構造単位が挙げられ、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンが好ましい。芳香族および/または脂肪族ジカルボニル単位としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、1,2−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸などから生成した構造単位が挙げられ、テレフタル酸、イソフタル酸が好ましい。
【0015】
液晶性ポリエステル樹脂の具体例としては、p−ヒドロキシ安息香酸および6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル樹脂、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成した構造単位、芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位、芳香族ジカルボン酸および/または脂肪族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル樹脂、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸および/またはアジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル樹脂、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、ハイドロキノンから生成した構造単位、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸および/またはアジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル樹脂、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、テレフタル酸および/またはイソフタル酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル樹脂、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、テレフタル酸および/またはアジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボンから生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル樹脂、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル樹脂、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、2,6−ナフタレンジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル樹脂などが挙げられる。
【0016】
これら液晶性ポリエステル樹脂の中でも、下記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)から構成される液晶性ポリエステル樹脂は、低発塵性の観点から好ましい。このような液晶性ポリエステル樹脂は、共重合単位が多いため液晶性が低くなり、液晶性ポリエステル樹脂の特性であるフィブリル化を起こしにくいためである。
【0017】
【化1】
【0018】
上記構造単位(I)はp−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位を、構造単位(II)は4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位を、構造単位(III)はハイドロキノンから生成した構造単位を、構造単位(IV)はテレフタル酸から生成した構造単位を、構造単位(V)はイソフタル酸から生成した構造単位を各々示す。
【0019】
構造単位(I)は、構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して65〜80モル%が好ましい。発生ガス量が低下することから、その下限値は68モル%以上がより好ましく、靭性の観点から上限値は78モル%以下がより好ましい。
【0020】
また、構造単位(II)は、構造単位(II)および(III)の合計に対して55〜85モル%が好ましい。特に発生ガス量が低下することから、その下限値は55モル%以上がより好ましく、最も好ましくは58モル%以上であり、靭性の観点から上限値は78モル%以下がより好ましく、最も好ましくは73モル%以下である。
【0021】
また、構造単位(IV)は、構造単位(IV)および(V)の合計に対して50〜95モル%が好ましい。特に発生ガス量が低下することから、その下限値はより好ましくは55モル%以上がより好ましく、最も好ましくは60モル%以上であり、靭性の観点から上限値は90モル%以下がより好ましく、最も好ましくは85モル%以下である。
【0022】
構造単位(II)および(III)の合計と(IV)および(V)の合計は実質的に等モルであることが好ましい。ここで、「実質的に等モル」とは、末端を除くポリマー主鎖を構成する構造単位が等モルであることを示し、末端を構成する構造単位まで含めた場合には必ずしも等モルとは限らない。ポリマーの末端基を調節するために、ジカルボン酸成分またはジヒドロキシ成分を過剰に加えてもよい。
【0023】
本発明の実施形態において、(A)液晶性ポリエステル樹脂における各構造単位の含有量は、以下の処理によって算出することができる。すなわち、液晶性ポリエステル樹脂をNMR(核磁気共鳴)試験管に量りとり、液晶性ポリエステル樹脂が可溶な溶媒(例えば、ペンタフルオロフェノール/重テトラクロロエタン−d2混合溶媒)に溶解して、1H−NMRスペクトル測定を行う。各構造単位の含有量は、各構造単位由来のピーク面積比から算出することができる。
【0024】
本発明における液晶性ポリエステル樹脂の融点は加工性、流動性の点から300〜350℃が好ましく、加工性の観点からその下限値は310℃以上がより好ましく、特に320℃以上が好ましい。また、流動性の観点からその上限値は340℃以下がより好ましく、330℃以下が特に好ましい。このような融点である場合には、加工時の分解ガス発生が抑制でき、かつ流動性が充分に発揮されるため好ましい。
【0025】
本発明の(A)液晶性ポリエステル樹脂の融点(Tm)は次の方法で測定することができる。示差熱量測定において、液晶性ポリエステル樹脂を室温から40℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm)の観測後、Tm+20℃の温度で5分間保持した後、20℃/分の降温条件で室温まで一旦冷却し、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm)を融点(Tm)とした。
【0026】
また、本発明における液晶性ポリエステル樹脂の溶融粘度は1〜100Pa・sが好ましく、加工性の観点からその下限値は3Pa・s以上がより好ましく、特に好ましくは5Pa・s以上であり、流動性の観点から上限値は50Pa・s以下がより好ましく、30Pa・s以下が特に好ましい。なお、溶融粘度は液晶性ポリエステル樹脂の融点+10℃の条件で、ずり速度1,000/sの条件下で高化式フローテスターによって測定した値である。
【0027】
本発明の(A)液晶性ポリエステル樹脂は、公知のポリエステルの重縮合法により得ることができる。例えば、次の製造方法が好ましく挙げられる。
(1)p−アセトキシ安息香酸および4,4’−ジアセトキシビフェニル、ジアセトキシベンゼンとテレフタル酸、イソフタル酸から脱酢酸重縮合反応によって液晶性ポリエステルを製造する方法。
(2)p−ヒドロキシ安息香酸および4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンとテレフタル酸、イソフタル酸に無水酢酸を反応させて、フェノール性水酸基をアシル化した後、脱酢酸重縮合反応によって液晶性ポリエステルを製造する方法。
(3)p−ヒドロキシ安息香酸のフェニルエステルおよび4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンとテレフタル酸、イソフタル酸のジフェニルエステルから脱フェノール重縮合反応により液晶性ポリエステルを製造する方法。
(4)p−ヒドロキシ安息香酸およびテレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸に所定量のジフェニルカーボネートを反応させて、それぞれジフェニルエステルとした後、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物を加え、脱フェノール重縮合反応により液晶性ポリエステルを製造する方法。
【0028】
本発明において、液晶性ポリエステル樹脂を脱酢酸重縮合反応により製造する際には、液晶性ポリエステル樹脂が溶融する温度で減圧下反応させ、重縮合反応を完了させる溶融重合法が好ましい。例えば、所定量のp−ヒドロキシ安息香酸、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、テレフタル酸、イソフタル酸、および無水酢酸を撹拌翼、留出管を備え、下部に吐出口を備えた反応容器中に仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら加熱して水酸基をアセチル化させた後、液晶性ポリエステル樹脂の溶融温度まで昇温し、減圧により重縮合して反応を完了させる方法が挙げられる。
【0029】
得られたポリマーは、それが溶融する温度で反応容器内を、例えば、およそ1.0kg/cm(0.1MPa)に加圧し、反応容器下部に設けられた吐出口よりストランド状に吐出することができる。溶融重合法は均一なポリマーを製造するために有利な方法であり、ガス発生量がより少ない優れたポリマーを得ることができ、好ましい。
【0030】
液晶性ポリエステル樹脂の重縮合反応は無触媒でも進行するが、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、三酸化アンチモン、および金属マグネシウムなどの金属化合物を使用することもできる。
【0031】
本発明の(B)球状シリカとは、真球度0.60以上で一次粒子が球形であるシリカ粒子であり、樹脂への高充填化および分散性の点から、その真球度が0.85以上のものが好ましく、より好ましくは0.90以上であり、更に好ましくは、0.92以上である。
【0032】
真球度は、粒子の二次元画像から求めた面積と周囲長から、(真球度)={4π×(面積)÷(周囲長)}で算出される値として算出する。1に近づくほど真球に近い。真球度の測定は、シリカを100mg秤量し、水中に分散させ、画像処理装置(シスメックス株式会社:FPIA−3000)を用い、無作為に抽出した1000個の粒子の二次元画像から測定した面積および周囲長の平均値を用いて、上記式により求めることができる。
【0033】
本発明の(B)球状シリカの平均粒子径は、本発明の効果である低発塵、靭性および衝撃強度を発現するために15μm以上30μm未満であることが必須である。平均粒子径が15μm以上30μm未満の(B)球状シリカを含有する樹脂組成物を用いて成形品を成形するとき、液晶性ポリエステル樹脂は(B)球状シリカにより配向が抑制された状態でスキン層を形成し、かつ表面粗度の小さい成形品が得られることから、特異的な低発塵の効果を得ることができる。(B)球状シリカの平均粒子径は、成形品の表面平滑性と球状シリカの樹脂中への分散性の点から、好ましくは15μm以上25μm以下、より好ましくは15μm以上20μm以下である。15μmより小さい場合は、液晶性ポリエステル樹脂の配向抑制効果が充分でなく、フィブリル化抑制による低発塵効果が得られない。また30μm以上になると表面平滑性が著しく低下し、表面に収縮ムラによる凹凸が形成されて摺動による発塵が悪化する。
【0034】
ここでいう平均粒子径は、数平均粒子径であり、レーザー回折散乱式粒度分布計により測定できる。
【0035】
本発明において用いられる球状シリカは、樹脂組成物への溶融混練前後でその形状および平均粒子径に変化はない。したがって、樹脂組成物中に混練する前の球状シリカ特性を測定した際の形状および平均粒子径で、樹脂組成物中にも含まれていると考えてよい。
【0036】
本発明の(B)球状シリカの含有量は、(A)液晶性ポリエステル樹脂100重量部に対して、本発明の効果である低発塵、靭性および衝撃強度を発現するために20〜45重量部であることが必須であり、高靭性の観点から25重量部以上が好ましく、低発塵性の観点から35重量部以下が好ましい。20重量部未満では、液晶性樹脂に対する球状シリカのフィブリル化抑制効果が充分でなく低発塵性が得られない。また、45重量部を超えると樹脂から離脱する球状シリカ粒子数が多く、発塵が多くなり好ましくない。また、溶融粘度も高くなり液晶性ポリエステル樹脂の流動性が損なわれてしまう。低発塵性でありながら、高靭性を有するために25〜35重量部が最も好ましい。
【0037】
本発明の(B)球状シリカの製造方法については、特に制限されるものではないが、結晶粉砕シリカを溶融し、表面張力によって球状化する溶融法が好ましい。当該方法では、本発明によって見出した効果である液晶性ポリエステル樹脂と配合した際に低発塵性、靭性および衝撃強度が特異に発現しうる粒子径を有する球状シリカを製造することができるため好ましい。溶融法によって得られる球状シリカとしては、“FEB75A”(株式会社アドマテックス)、“FB-950”(電気化学工業株式会社)などが市販されている。
【0038】
本発明のカメラモジュール用液晶性ポリエステル樹脂組成物には本発明の目的を損なわない範囲で、繊維状充填材や、繊維状充填材以外の充填材(板状、粒状、球状(球状シリカは除く)、中空球状)を含有してもよく、(C)平均粒子径が10〜50μmの板状充填材および/または(D)平均繊維長が30〜300μmの繊維状充填材を含有することが好ましい。
【0039】
(C)板状充填材としては、例えばマイカ、タルク、グラファイト、クレー等の板状の無機フィラーを用いることができ、タルク、マイカが好ましく、特に表面平滑性と表面硬度が向上するためマイカが好ましい。
【0040】
(C)板状充填材の平均粒子径は、10〜50μmが好ましいが、分散性の観点からその下限値は15μm以上が好ましく、更に好ましくは20μm以上である。上限値についても、組成物の表面平滑性の観点から45μm以下が好ましく、更に好ましくは40μm以下であり、特に好ましくは30μm以下である。その中でも、20〜30μm以下の範囲においては、板状充填材が樹脂組成物中に均一に分散し、表面平滑性が特に向上するため好ましい。
【0041】
(C)板状充填材の平均粒子径は数平均粒子径であり、例えば樹脂組成物を灰化した灰分を走査型電子顕微鏡で観察し、任意に選んだ板状充填材粒子50個の平板部の長径を測定し、数平均粒子径を求めることができる。
【0042】
(D)繊維状充填材としては、例えばガラス繊維、炭素繊維、芳香族ポリアミド繊維、チタン酸カリウム繊維、石膏繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維、スチール繊維、セラミック繊維、ボロンウィスカー繊維、アスベスト繊維、ワラステナイト、酸化チタン繊維、炭酸カルシウム繊維、バサルト繊維などを用いることができ、ガラス繊維、ワラステナイトが好ましく、特に衝撃強度が向上するため、ガラス繊維が好ましい。
【0043】
(D)繊維状充填材の平均繊維長は30〜300μmであることが好ましく、繊維長が300μmを超えると繊維の離脱による発塵の懸念が増加するため、平均繊維長は300μmを超えないことが好ましい。より好ましくは、衝撃強度の観点からその下限値は35μm以上であり、更に好ましくは40μm以上である。上限値についても、低発塵の観点から好ましくは150μm以下が好ましく、更に好ましくは80μm以下である。
【0044】
(D)繊維状充填材の平均繊維長は数平均繊維長であり、例えば樹脂組成物を灰化した灰分を光学顕微鏡で観察し、任意に選んだ繊維状充填材500本の繊維長を測定し、数平均繊維長を求めることができる。
【0045】
(C)板状充填材と(D)繊維状充填材は併用してもよい。
【0046】
(C)板状充填材および/または(D)繊維状充填材の含有量としては、(A)液晶性ポリエステル樹脂100重量部に対して1〜25重量部が好ましく、衝撃強度の観点からその下限値は2重量部以上がより好ましく、さらに好ましくは3重量部以上である。上限値についても、発塵性の観点から15重量部以下がより好ましく、さらに好ましくは10重量部以下である。
【0047】
さらには、本発明の目的を損なわない範囲で、酸化防止剤および熱安定剤(たとえばヒンダードフェノール、ヒドロキノン、ホスファイト類およびこれらの置換体など)、紫外線吸収剤(たとえばレゾルシノール、サリシレート、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノンなど)、離型剤(モンタン酸およびその塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミドおよびポリエチレンワックスなど)、染料(たとえばニグロシンなど)および顔料(たとえば硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラックなど)を含む着色剤、可塑剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤などの通常の添加剤や他の熱可塑性樹脂(フッ素樹脂など)を添加して、所定の特性を付与することができる。
【0048】
本発明のカメラモジュール用液晶ポリエステル樹脂組成物は溶融混練により製造することが好ましく、溶融混練には公知の方法を用いることができる。例えば、バンバリーミキサー、ゴムロール機、ニーダー、単軸もしくは二軸押出機などを用いることができる。これらのうち、本発明の液晶性ポリエステル樹脂組成物は、繊維状充填材の数平均長さを制御する必要があることから、押出機を用いることが好ましく、二軸押出機を用いることがより好ましく、なかでも中間添加口を有する二軸押出機を用いることが特に好ましい。ただし、高級脂肪酸金属塩は、溶融混練押出後のペレットにブレンドするのが好ましい。こうすることで、成形加工性を飛躍的に向上させることができる。高級脂肪族金属塩とペレットのブレンドには、例えばタンブラーミキサー、リボンブレンダーなどが用いられる。また、高級脂肪酸金属塩は、液晶性樹脂やその他の添加剤とともに二軸押出機中で溶融混練してもよい。
【0049】
本発明のカメラモジュール用液晶性ポリエステル樹脂組成物は、公知の成形法により各種成形品に成形されるが、射出成形が好ましい。射出成形することによって、液晶性ポリエステル樹脂が、特定量配合された特定粒子径の球状シリカにより配向を抑制された状態でスキン層を形成し、かつ粗度の小さい表面が得られ、低発塵に特異的な効果が得られる。
【0050】
かくして得られる成形品は、低発塵性、靭性、および衝撃強度に優れることから、光学機器部品に好適に用いることができ、更にはレンズ保持部を有する部品に好適であり、特にカメラモジュールに好適に用いられる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例により本発明をさらに詳述するが、本発明の骨子は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0052】
各特性の評価方法は以下の通りである。
【0053】
(1)液晶性ポリエステル樹脂の組成分析
液晶性ポリエステル樹脂の組成分析は、1H−核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)測定により実施した。液晶性ポリエステル樹脂をNMR試料管に50mg秤量し、溶媒(ペンタフルオロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン−d2=65/35(重量比)混合溶媒)800μLに溶解して、UNITY INOVA500型NMR装置(バリアン社製)を用いて観測周波数500MHz、温度80℃で1H−NMR測定を実施し、7〜9.5ppm付近に観測される各構造単位由来のピーク面積比から組成を分析した。
【0054】
(2)液晶性ポリエステル樹脂の融点の測定
Tm(融点)は示差走査熱量測定において、液晶性ポリエステル樹脂または液晶性ポリエステル樹脂組成物を室温から40℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm)の観測後、Tm+20℃の温度で5分間保持した後、20℃/分の降温条件で室温まで一旦冷却し、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm)を融点(Tm)とした。
【0055】
(3)シリカの数平均粒子径
シリカの数平均粒子径は、シリカを100mg秤量し、水中に分散させ、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(HORIBA社製“LA−300”)を用いて測定した。
【0056】
(4)シリカの真球度
真球度の測定は、粒子の二次元画像から求めた面積と周囲長から、(真球度)={4π×(面積)÷(周囲長)}で算出される値として算出した。シリカを100mg秤量し、水中に分散させ、画像処理装置(シスメックス株式会社:FPIA−3000)を用い、無作為に抽出した1000個の粒子の二次元画像から面積および周囲長を測定し、その平均値を用いて、上記式により真球度を求めた。
【0057】
(5)板状充填材の数平均粒子径
液晶性ポリエステル樹脂組成物を灰化し、灰分を走査型電子顕微鏡で観察し、任意に選んだ板状充填材粒子50個の平板部の長径を測定し、数平均粒子径を求めた。
【0058】
(6)繊維状充填材の数平均繊維長
液晶性ポリエステル樹脂組成物を灰化し、灰分を光学顕微鏡で観察し、任意に選んだ繊維状充填材500本の繊維長を測定し、数平均繊維長を求めることにより測定した。
【0059】
(7)発塵性
液晶性ポリエステル樹脂組成物を、ファナックロボショットα−30C(ファナック(株)製)を用いて、ASTM1号ダンベル試験片を成形した。シリンダ温度を液晶性ポリエステル樹脂組成物の融点Tm+10℃に設定し、金型温度を90℃に設定し成形した。上記により得られた成形品に住友3M(株)製Scotch透明粘着テープを圧着し、剥がした際の粘着テープを東洋精機社製直読ヘイズメーターにてヘイズ値(曇り)を測定した。ヘイズ値が小さいほど曇りが少ないことを示す。
【0060】
(8)Izod衝撃強度
ファナックロボショットα−30C(ファナック(株)製)を用いて、シリンダ−温度を液晶性ポリエステルの融点+10℃に設定し、金型温度90℃の条件で射出成形を行い、ASTM衝撃試験片を作成し、ASTM D256に従い、ノッチ有りでアイゾット衝撃強度の測定を行った。10回の測定の平均値を算出した。
【0061】
(9)靭性
ファナックロボショットα−30C(ファナック(株)製)を用いて、シリンダ−温度を液晶性ポリエステルの融点+10℃に設定し、金型温度90℃の条件で射出成形を行い、ASTM曲げ試験片(短冊試験片)を作成し、ASTM D648に従い、測定した。
【0062】
(A)液晶性ポリエステル樹脂
[参考例1] 液晶性ポリエステル樹脂(A−1)の合成
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸870g(6.30モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル327g(1.89モル)、ハイドロキノン89g(0.81モル)、テレフタル酸292g(1.76モル)、イソフタル酸157g(0.95モル)および無水酢酸1367g(フェノール性水酸基合計の1.03当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で2時間反応させた後、320℃まで4時間で昇温した。その後、重合温度を320℃に保持し、1.0時間で1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に90分間反応を続け、トルクが15kg・cmに到達したところで重縮合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1個持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズし、液晶性ポリエステル樹脂(A−1)を得た。
【0063】
この液晶性ポリエステル樹脂(A−1)は、構造式(I)、構造式(II)、構造式(III)、構造式(IV)および構造式(V)からなり、構造式(I)を構造式(I)、構造式(II)および構造式(III)の合計に対して70モル%、構造式(II)を構造式(II)および構造式(III)単位の合計に対して70モル%、構造式(IV)を構造式(IV)および構造式(V)の合計に対して65モル%有する。また、構造式(II)および構造式(III)の合計は全構造単位に対して23モル%であり、構造式(IV)および構造式(V)の合計は全構造単位に対して23モル%であった。液晶性ポリエステル樹脂(A−1)の融点(Tm)は314℃であった。高化式フローテスター(オリフィス0.5φ×10mm)を用い、温度324℃、剪断速度1,000/sで測定した溶融粘度は20Pa・sであった。
【0064】
[参考例2] 液晶性ポリエステル樹脂(A−2)の合成
p−ヒドロキシ安息香酸994g(7.20モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル181g(0.97モル)、テレフタル酸161g(0.97モル)、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレート159g(0.83モル)および無水酢酸1026g(フェノール性水酸基合計の1.10当量)を重合容器に仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で2時間反応させた後、335℃まで4時間で昇温した。その後、重合温度を335℃に保持し、0.1MPaに窒素加圧し、20分間加熱攪拌した。その後、1.0時間で1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に90分間反応を続け、トルクが12kg・cmに到達したところで重縮合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1個持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズし、液晶性ポリエステル樹脂(A−2)を得た。
【0065】
この液晶ポリエステル樹脂は、p−オキシベンゾエート単位80.0モル%、4,4’−ジオキシビフェニル単位10.8モル%、エチレンジオキシ単位9.2モル%、テレフタレート単位20.0モル%を有し、融点(Tm)は326℃であった。高化式フローテスター(オリフィス0.5φ×10mm)を用い、温度335℃、剪断速度1,000/sで測定した溶融粘度は13Pa・sであった。
【0066】
[参考例3] 液晶性ポリエステル樹脂(A−3)の合成
特開昭54−77691号公報に従って、p−アセトキシ安息香酸921重量部と6−アセトキシ−ナフトエ酸435重量部を、撹拌翼、留出管を備えた反応容器に仕込み、重縮合を行った。得られた液晶ポリエステル樹脂(A−3)は、p−アセトキシ安息香酸から生成した構造単位72モル%および6−アセトキシ−ナフトエ酸から生成した構造単位28モル%からなり、融点(Tm)は283℃であった。高化式フローテスター(オリフィス0.5φ×10mm)を用い、温度293℃、剪断速度1,000/sで測定した溶融粘度は30Pa・sであった。
【0067】
(B)球状シリカ
各実施例および比較例において用いた球状シリカを次に示す。
【0068】
(B−1)(株)アドマテックス 社製 “FEB75A” (製造方法:溶融法、平均粒子径15μm、真球度0.94)
(B−2)(株)アドマテックス 社製 “SO−C2” (製造方法:VMC法、平均粒子径0.5μm、真球度0.90)
(B−3)新日鉄住金マテリアルズ(株) 社製 “HS−103” (製造方法:溶射法、平均粒子径100μm、真球度0.89)
(B−4)電気化学工業(株) 社製 “FB−12D” (製造方法:溶融法、平均粒子径10μm、真球度0.91)
(B−5)(株)龍森 社製 “MSR−SC3” (製造方法:溶融法、平均粒子径53μm、真球度0.90)
(B−6)(株)電気化学工業(株)社製 “FB−950” (製造方法:溶融法、平均粒子径24μm、真球度0.97)
(B’)その他のシリカ
(B’−1)(株)丸東 社製 “#250” (製造方法:湿式粉砕法、平均粒子径22μm、真球度0.21)
(C)板状充填材
(C−1)ヤマグチマイカ (株) 社製 “マイカ A−21”(数平均粒子径 22μm)
(C−2)ヤマグチマイカ (株) 社製 “マイカ A−41s”(数平均粒子径 47μm)
(D)繊維状充填材
(D−1)日本電気硝子(株)社製“ミルドファイバー EPG70M−01N”(数平均繊維長 70μm)。
【0069】
(D−2)セントラル硝子(株)社製“ミルドファイバー EFH150−31”(数平均繊維長 150μm)。
【0070】
[実施例1〜11]
スクリュー径44mmの同方向回転ベント付き2軸押出機(日本製鋼所製、TEX−44、空間部容積(V)1590cm)を用いて液晶性ポリエステル樹脂(A)を表1に示す配合量でホッパーから投入し、球状シリカ(B)を液晶ポリエステル樹脂組成物の合計100重量部に対して表1に示す配合量で中間供給口から投入した。シリンダ温度を液晶ポリエステル樹脂(A)の融点+10℃に設定し、溶融混練して液晶性ポリエステル樹脂組成物のペレットを得た。
【0071】
得られたペレットを熱風乾燥後、前記の方法により発塵性、Izod衝撃強度、曲げたわみを評価した。表1にその結果を示した。
【0072】
[比較例1〜11]
組成、球状シリカを表2に示すとおり変更した以外は実施例1〜11と同様にして、発塵性、Izod衝撃強度、曲げたわみを評価した。表2にその結果を示す。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
実施例1〜5に示したように、液晶性ポリエステル樹脂に特定粒径の球状シリカを特定量配合することで、これまで知られている微細シリカを配合した比較例3や大粒径シリカを配合した比較例4に比べて、著しく発塵性が改良されることが明らかである。
【0076】
また、比較例1、2に示したように、球状シリカの配合量が本願で規定する範囲を外れると、本願の効果である発塵性、衝撃強度、靭性は得られないことが明らかである。
【0077】
また、実施例6〜10に示したように、更に板状フィラーを配合した場合には低発塵性が改良され、繊維状フィラーを配合した場合には、衝撃強度が改良されることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明によれば、低発塵性、靭性、衝撃強度、高靭性に優れるカメラモジュール用液晶性樹脂組成物およびそれからなるカメラモジュール用成形品を得ることができる。