特許第6693566号(P6693566)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6693566
(24)【登録日】2020年4月20日
(45)【発行日】2020年5月13日
(54)【発明の名称】エレベータ装置の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 3/00 20060101AFI20200427BHJP
【FI】
   B66B3/00 L
【請求項の数】8
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-540409(P2018-540409)
(86)(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公表番号】特表2019-503950(P2019-503950A)
(43)【公表日】2019年2月14日
(86)【国際出願番号】CN2016077982
(87)【国際公開番号】WO2017166158
(87)【国際公開日】20171005
【審査請求日】2018年8月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】▲鄭▼維彪
【審査官】 加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−201635(JP,A)
【文献】 特開2009−102166(JP,A)
【文献】 特開2014−108864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
かごの積載重量を検出する重量検出部の検出信号を取得し、前記かごに車をつれることなく乗車した人である乗車人、または、前記かごから車をつれることなく降車した人である降車人が発生した第1の状況において前記重量検出部の検出信号に基づいて得られる重量変化の情報であって、人の乗車移行中または人の降車移行中に現れる重量変化を含む情報と、前記かごに車をつれて乗車した人とその車との組である乗車組、または、前記かごから車をつれて降車した人とその車との組である降車組が発生した第2の状況において前記重量検出部の検出信号に基づいて得られる重量変化の情報であって、人の乗車移行中または人の降車移行中に現れる重量変化を含む情報との違いに基づいて、人および車の乗降に関する状況が前記第1の状況および前記第2の状況のいずれであるかを判定する判定部を備える
エレベータ装置の制御装置。
【請求項2】
前記かごの積載重量の重量変化率の時系列データを前記重量検出部の検出信号を用いて算出する時系列データ算出部をさらに備え、
前記判定部は、前記人の乗車移行中または人の降車移行中に現れるピークを含む一定範囲のデータである処理単位を前記時系列データから抽出し、前記処理単位に基づいて、人および車の乗降に関する状況が前記第1の状況および前記第2の状況のいずれであるかを判定する
請求項1に記載のエレベータ装置の制御装置。
【請求項3】
前記時系列データに現れた1つのピークの後に別のピークが現れず、かつ、収束判定値以下の値を取る乗降収束値が現れた場合に前記1つのピークから前記乗降収束値までの範囲を前記処理単位として抽出する処理単位抽出部をさらに備える
請求項2に記載のエレベータ装置の制御装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記1つのピークが現れた時点から前記乗降収束値が現れた時点までの期間における前記かごの積載重量の積分値に基づいて、人および車の乗降に関する状況が前記第2の状況であると判定する
請求項3に記載のエレベータ装置の制御装置。
【請求項5】
前記積分値に基づいて、人および車の乗降に関する状況が、人に続いて車が乗車した前記乗車組、または、人に続いて車が降車した前記降車組が発生した状況であると特定する、請求項4に記載のエレベータ装置の制御装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記乗降収束値が現れた時点における前記かごの積載重量と前記1つのピークが現れた時点における前記かごの積載重量との比率に基づいて、人および車の乗降に関する状況が前記第2の状況であると判定する
請求項3または4に記載のエレベータ装置の制御装置。
【請求項7】
前記比率に基づいて、人および車の乗降に関する状況が、車に続いて人が乗車した前記乗車組、または、車に続いて人が降車した前記降車組が発生した状況であると特定する、請求項6に記載のエレベータ装置の制御装置。
【請求項8】
前記乗車人または前記乗車組が前記かご内に占めている空間の広さを示す推定値、および、前記降車人または前記降車組が前記かご内に占めていた空間の広さを示す推定値の少なくとも一方を算出する算出部をさらに備え、前記算出部は、前記乗車人または前記降車人に対応する重量を前記重量検出部の検出信号に基づいて算出し、ランク分けされた前記乗車人の重量、または、前記降車人の重量と前記推定値との関係を規定した換算手段を用いて前記推定値を算出する
請求項1〜のいずれか一項に記載のエレベータ装置の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人がかごに乗車するときの状況、または、人がかごから降車するときの状況に関する情報を推定するエレベータ装置の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のエレベータ装置の制御装置は、人がかごに乗車すること、および、人がかごから降車することによりかごの積載重量が変化することを利用して、かごに乗車した人の数、および、かごから降車した人の数を算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5377729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、商業施設の利用者がショッピングカートをつれてかごに乗車した場合、その利用者およびショッピングカートがかご内において占有する空間の広さは、ショッピングカートをつれない利用者がかごに乗車した場合よりも広い。上記制御装置により推定される人がかごに乗車するときの状況、または、人がかごから降車するときの状況に関する情報は、かごに乗車する人数、および、かごから降車する人数だけであり、かごに乗車する人、および、かごから降車する人がつれている車を考慮していない。
【0005】
本発明の目的は、人がかごに乗車するときの状況、または、人がかごから降車するときの状況に関する情報を正確に推定できるエレベータ装置の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に従うエレベータ装置の制御装置の一形態は、かごの積載重量を検出する重量検出部の検出信号を取得し、前記かごに車をつれることなく乗車した人である乗車人、または、前記かごから車をつれることなく降車した人である降車人が発生した第1の状況において前記重量検出部の検出信号に基づいて得られる情報と、前記かごに車をつれて乗車した人とその車との組である乗車組、または、前記かごから車をつれて降車した人とその車との組である降車組が発生した第2の状況において前記重量検出部の検出信号に基づいて得られる情報との違いに基づいて、人および車の乗降に関する状況が前記第1の状況および前記第2の状況のいずれであるかを判定する判定部を備える。
【0007】
人が車をつれることなくかごに乗車したか、または、人が車をつれてかごに乗車したかを判定する方法として、例えば撮影装置から得られた画像情報を用いる方法が挙げられる。しかし、本願発明者は、撮影装置が搭載されていないエレベータ装置であっても、人および車に関する乗降の状況を推定できるように、エレベータ装置を構成するより基礎的な要素を利用することを検討した。その結果、本願発明者は、人が車をつれることなく乗車または降車した場合と人が車をつれて乗車または降車した場合との違いが重量検出部の検出信号に基づいて得られる情報に現れることに着目した。
【0008】
上記制御装置は、これを踏まえて上述のとおり人および車の乗降に関する状況を判定する判定部を備えているため、人がかごに乗車するときの状況、または、人がかごから降車するときの状況に関する情報として、車が考慮されていない情報よりも正確な情報を得ることができる。得られた情報は、例えばエレベータ装置の利便性を向上させるための種々の処理に利用できる。一例として、かご内に乗車している人および車がかご内に占める空間の広さを得られた情報に基づいて推定する処理、ならびに、かごの戸が開いたときに車をつれている人、および、車をつれていない人がどのような順序で降車した方が好ましいかを得られた情報に基づいてアナウンスする処理が挙げられる。
【発明の効果】
【0009】
上記エレベータ装置の制御装置によれば、人がかごに乗車するときの状況、または、人がかごから降車するときの状況に関する情報を正確に推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態のエレベータ装置の模式図。
図2図1の制御装置の電気的構成に関するブロック図。
図3】積載状況推定処理を示すフローチャート。
図4】乗車パターン判定処理を示すフローチャート。
図5】第1の乗車パターンに関するタイミングチャート。
図6】第2の乗車パターンに関するタイミングチャート。
図7】第3の乗車パターンに関するタイミングチャート。
図8】第4の乗車パターンに関するタイミングチャート。
図9】降車パターン判定処理を示すフローチャート。
図10】第1の降車パターンに関するタイミングチャート。
図11】第2の降車パターンに関するタイミングチャート。
図12】第3の降車パターンに関するタイミングチャート。
図13】第4の降車パターンに関するタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<エレベータ装置の構成>
図1を参照して、エレベータ装置1の構成について説明する。
エレベータ装置1は建築物に設置される。建築物の一例は商業施設である。建築物の各フロアには、エレベータ装置1のかご20への乗車を予定している人(以下では「乗車予定者」)、および、乗車予定者がつれている車が待機するための乗り場100、かご20が設置される昇降路(図示略)、ならびに、乗り場100と昇降路とを繋げる開口を開閉する乗降戸110が設けられている。車の一例はショッピングカート、ベビーカー、および、車椅子である。
【0012】
エレベータ装置1は、かご20を搬送する搬送装置10、搬送装置10の動作を制御する制御装置60、および、かご20に関する情報を乗車予定者に報知する報知部200を備えている。
【0013】
搬送装置10は、積載物を積載可能なかご20、ロープ11によりかご20と繋げられているつり合い重り12、つり合い重り12の上方に配置されているそらせ車13、ロープ11を巻き取る綱車50、綱車50を回転させる電気モータ31、および、電気モータ31を制動する電磁ブレーキ40を備えている。積載物は主に人、および、人がつれている車である。
【0014】
ロープ11はそらせ車13および綱車50に巻き掛けられている。電気モータ31の出力軸31Aは綱車50と連結されている。制御装置60が搬送装置10に対して実行する搬送制御においては、制御装置60が電気モータ31に電力を供給することにより電気モータ31が駆動し、それにともない綱車50が回転する。
【0015】
かご20は、人および車が出入りする開口21、および、開口21を開閉するかご戸22を備えている。かご20が乗り場100に着床している場合、かご戸22と乗降戸110とが機械的に繋がる。このため、かご戸22が開くことにより乗降戸110が開き、かご戸22が閉じることにより乗降戸110が閉じる。
【0016】
エレベータ装置1はさらに、かご20に設置される重量検出部90を備えている。重量検出部90の設置箇所は、例えばかご20の床24の底面である。重量検出部90は制御装置60と電気的に接続され、かご20の積載重量が反映された検出信号を制御装置60に送信する。なお、重量検出部90の設置箇所および数に制約はなく、床24に負荷される積載物の重量を随時検出できればよい。
【0017】
<制御装置の構成>
図2を参照して、制御装置60の構成について説明する。
制御装置60は、搬送装置10(図1参照)に対する搬送制御、および、報知部200に対する報知制御を実行する制御部80、ならびに、人がかごに乗車するときの状況、または、人がかごから降車するときの状況に関する情報の一例としてのかご20の積載状況を推定する推定部70を備えている。
【0018】
報知制御は、推定部70により推定されたかご20の積載状況に関する情報(以下では「積載状況情報」)を報知部200に報知させる制御である。報知部200は、例えば液晶ディスプレイに積載状況情報を表示する。積載状況情報は、かご20内に乗車している人および車が占める空間の広さ(以下では「占有空間量」)を示す情報に基づいて得られた情報である。乗車予定者は、報知部200に表示された積載状況情報から、乗車を予定しているかご20内の様子をかご20が着床する前に認識できる。
【0019】
占有空間量を把握するための方法の1つとして撮影装置を用いる方法が挙げられるが、制御装置60は重量検出部90の検出信号に基づいて占有空間量を推定する方法を用いている。このため、かご20に撮影装置が含まれない場合にも積載状況情報を乗車予定者に報知できる。
【0020】
かご20に乗車している人および車をかご20の床24に投影した面積(以下では「総占有面積」)は占有空間量と相関を有する。このため、総占有面積を占有空間量の代替値として用いることができる。
【0021】
<推定部の処理方法>
推定部70は、総占有面積を算出する。推定部70は、具体的には、予め規定された積載物の種類と占有面積との関係に基づいて総占有面積を算出する。
【0022】
予め規定された積載物の種類は、乗車人、乗車組、降車人、および、降車組を含む。乗車人は車をつれることなくかご20に乗車した人である。乗車組は、車をつれてかご20に乗車した人とその車との組である。降車人は車をつれることなくかご20から降車した人である。降車組は、車をつれてかご20から降車した人とその車との組である。占有面積は、乗車人、乗車組、降車人、および、降車組のそれぞれをかご20の床24に投影した面積である。推定部70は、乗車人の重量および降車人の重量と占有面積との関係を規定した情報を予め記憶した換算手段を備えている。推定部70は、さらに、乗車組および降車組と占有面積との関係を規定した情報を予め記憶した換算手段を備えている。
【0023】
推定部70は、乗車人、乗車組、降車人、および、降車組の少なくとも1つを検出した場合、検出した人および組のそれぞれに対応する占有面積を換算手段を用いて算出する。
<推定部の処理ブロック>
推定部70は、このような方法によりかご20の総占有面積を推定する積載状況推定処理を実行する。推定部70は、積載状況推定処理を実行する複数のブロックとして、時系列データ算出部71、処理単位抽出部72、判定部73、および、総占有面積算出部74を備えている。
【0024】
時系列データ算出部71は、重量検出部90の検出信号から所定の周期ごとの積載重量の時系列データを算出し、所定の周期における積載重量の差分に基づいて、重量変化率の時系列データ、および、重量変化率の絶対値の時系列データを算出する。
【0025】
処理単位抽出部72は、重量変化率の絶対値のピークの後に収束判定値以下の値を取る乗降収束値が現れる場合、重量変化率の絶対値のピークから乗降収束値までの範囲を、乗車人、乗車組、降車人、または、降車組を判定するための処理単位として抽出する。処理単位抽出部72は、重量変化率が正である期間において、重量変化率の絶対値のピークである増加ピークを含む時系列データの範囲を、乗車人または乗車組を判定するための処理単位として抽出する。また、処理単位抽出部72は、重量変化率が負である期間において、重量変化率の絶対値のピークである減少ピークを含む時系列データの範囲を、降車人または降車組を判定するための処理単位として抽出する。
【0026】
判定部73は、人および車の乗降に関する状況が、乗車人または降車人が発生した状況である第1の状況、または、乗車組または降車組が発生した状況である第2の状況のいずれであるかを、処理単位抽出部72が抽出した処理単位に基づいて判定する。
【0027】
総占有面積算出部74は、処理単位抽出部72が抽出した処理単位、および、換算手段を用いて、乗車人、乗車組、降車人、および、降車組の占有面積の推定値を算出する。
乗車人または乗車組のみが検出された場合、かご戸22が開く前よりも閉じた後の方が、かご20の総占有面積は増加する。降車人または降車組のみが検出された場合、かご戸22が開く前よりも閉じた後の方が、かご20の総占有面積は減少する。総占有面積算出部74は、かご20のかご戸22の開放動作が開始されてからかご戸22が再び閉じるまでの間に検出した乗車人、乗車組、降車人、および、降車組に対応する占有面積の推定値を合算して総占有面積の変化量を算出し、かご戸22が開放動作を開始したときにおけるかご20の総占有面積にその変化量を反映することにより、かご戸22が再び閉じたときにおけるかご20の総占有面積を算出する。総占有面積算出部74は、その総占有面積を制御部80に送信する。制御部80は総占有面積算出部74から受信した総占有面積に基づいて積載状況情報を生成し、その積載状況情報を報知部200に報知させる。
【0028】
<積載状況推定処理>
図3は、積載状況推定処理の一例を示すフローチャートである。
ステップS11において、時系列データ算出部71は、かご戸22の開放動作が開始されたか否かを判定する。
【0029】
ステップS11の判定結果がYESの場合、時系列データ算出部71は、ステップS12において、重量検出部90の検出信号の取得を開始する。
ステップS13において、時系列データ算出部71は、かご戸22が再び閉じたか否かを判定する。
【0030】
ステップS13の判定結果がYESの場合、時系列データ算出部71は、ステップS14において、重量検出部90の検出信号の取得を終了する。
ステップS15において、時系列データ算出部71は、重量検出部90の検出信号に基づいて、積載重量の時系列データ、重量変化率の時系列データ、および、重量変化率の絶対値の時系列データを順に作成する。
【0031】
ステップS16において、処理単位抽出部72は、重量変化率の時系列データ、および、重量変化率の絶対値の時系列データから、増加ピークから乗降収束値までの範囲を、乗車人または乗車組を判定するための処理単位として抽出し、減少ピークから乗降収束値までの範囲を、降車人または降車組を判定するための処理単位として抽出する。
【0032】
ステップS17において、判定部73は、処理単位抽出部72が抽出した処理単位が、
乗車人または乗車組を判定するための処理単位か否かを判定する。
ステップS17の判定結果がYESの場合、判定部72は、ステップS18において、処理単位の波形のパターンが、乗車人または乗車組を検出するために予め規定された複数の乗車パターンのいずれに該当するかを判定する乗車パターン判定処理を実行する。
【0033】
複数の乗車パターンは、第1の乗車パターン、第2の乗車パターン、第3の乗車パターン、および、第4の乗車パターンを含む。
第1の乗車パターンは、1人の人が乗車しようとしている最中にさらに別の人が乗車を開始したときに現れる波形のパターンである。第2の乗車パターンは、1組の乗車組がかご20に乗車する場合に、車に続いて人が乗車したときに現れる波形のパターンである。第3の乗車パターンは、1組の乗車組がかご20に乗車する場合に、人に続いて車が乗車したときに現れる波形のパターンである。第4の乗車パターンは、1人の人の乗車が開始されてから完了するまでの間に別の人の乗車が開始されない場合に現れる波形のパターンである。
【0034】
ステップS17の判定結果がNOの場合、降車人または降車組を判定するための処理単位が、処理単位抽出部72により抽出されているため、ステップS19において、判定部73は、処理単位抽出部72が抽出した処理単位の波形のパターンが、降車人または降車組を検出するために予め規定された複数の降車パターンのいずれに該当するかを判定する降車パターン判定処理を実行する。
【0035】
降車パターンは、第1の降車パターン、第2の降車パターン、第3の降車パターン、および、第4の降車パターンを含む。
第1の降車パターンは、1人の人が降車しようとしている最中にさらに別の人が降車を開始したときに現れる波形のパターンである。第2の降車パターンは、1組の降車組かご20から降車する場合に、車に続いて人が降車したときに現れる波形のパターンである。第3の降車パターンは、1組の降車組がかご20から降車する場合に、人に続いて車が降車したときに現れる波形のパターンである。第4の降車パターンは、1人の人の降車が開始されてから完了するまでの間に別の人の降車が開始されない場合に現れる波形のパターンである。
【0036】
ステップS20において、総占有面積算出部74は、ステップS17およびステップS18で判定部73が判定した全ての処理単位のそれぞれに対応する占有面積の推定値を換算手段を用いて算出する。
【0037】
総占有面積算出部74は、ステップS21において、占有面積の推定値に基づいて総占有面積を算出し、ステップS22において、算出した総占有面積を制御部80に送信する。なお、推定部70は、総占有面積算出部74に代えて、または、加えて、判定部73の判定結果に基づいて、かご20内に乗車している人、および、かご20内の車の数を算出する積載数算出部を備えていてもよい。積載数算出部は、例えば、積載状況推定処理のステップS20の前または後において、かご戸22が閉じている状態において、かご20内に乗車している人、および、かご20内の車の数を算出する。積載数算出部は、積載状況推定処理のステップS21において、かご戸22が開いたときに、車をつれている人、および、車をつれていない人がどのような順序で降車した方が好ましいか示す情報を生成する。積載数算出部は、この情報を制御部80に送信する。
【0038】
<推定値の算出方法>
処理単位の波形のパターンが第4の乗車パターン、または、第4の降車パターンであると判定された場合、総占有面積算出部74は、さらに、1人の重量WHを算出し、その重量WHが、複数のランクのいずれに属するかを判定する。総占有面積算出部74は、ランクごとに規定された推定値をその1人の人の推定値として算出する。
【0039】
複数のランクは、例えば、第1のランク、第2のランク、および、第3のランクを含む。第1のランクは、例えば、平均的な成人の重量の範囲を示すランクである。第2のランクは、第1のランクよりも軽い重量の範囲を示すランクである。第3のランクは、第1のランクよりも重い重量の範囲を示すランクである。なお、複数のランクは、重量の範囲が互いに異なる2つのランク、または、4つ以上のランクであってもよい。
【0040】
第2のランクに属する重量WHに対応する占有面積の推定値は、第1のランクに属する重量WHに対応する占有面積の推定値よりも小さい。第3のランクに属する重量WHに対応する占有面積の推定値は、第1のランクに属する重量WHに対応する占有面積の推定値よりも大きい。
【0041】
以上のように、総占有面積算出部74は、1人の重量WHが複数のランクのいずれのランクに属するかを判定し、1人の重量WHが属するランクに応じて、その人に対応する占有面積の推定値を定める。
【0042】
処理単位の波形のパターンが第1の乗車パターンまたは第1の降車パターンと判定された場合、総占有面積算出部74は、複数の乗車人または複数の降車人の1人当たりの平均重量WMを算出し、1人の重量WHを算出する場合に述べた方法と同じ方法により、平均重量WMが属するランクに応じて占有面積の推定値を算出する。
【0043】
以上のように、処理単位の波形のパターンが第4の乗車パターン、第4の降車パターン、第1の乗車パターン、または、第1の降車パターンであると判定された場合、総占有面積算出部74は、1人の重量WHまたは1人の平均重量WMを考慮して占有面積の推定値を算出する。
【0044】
一方、処理単位の波形のパターンが第2の乗車パターン、第3の乗車パターン、第2の降車パターン、または、第3の降車パターンであると判定された場合、総占有面積算出部74は、人に車の占有面積が加わることを考慮して、推定値として第1の乗車パターン、第4の乗車パターン、第1の降車パターン、および、第4の降車パターンの場合に算出される推定値よりも大きい推定値を算出する。処理単位の波形のパターンが第2の乗車パターン、第3の乗車パターン、第2の降車パターン、または、第3の降車パターンであると判定された場合に総占有面積算出部74が算出する推定値は、例えば、予め規定された定数である。これは、車の占有面積がほぼ一定であると見積もってよい場合、乗車組の占有面積、および、降車組の占有面積においては、車の占有面積が多くを占めるため、人の重量の違いが乗車組の占有面積、および、降車組の占有面積の違いに大きく影響しないためである。
【0045】
<乗車パターンの判定方法>
次に、図5を参照して、第1の乗車パターンの判定方法について説明し、図6図8を参照して第2〜第4の乗車パターンの判定方法について説明する。そして、第1〜第4の乗車パターンを順に判定する乗車パターン判定処理について、図4を参照して説明する。
【0046】
<第1の乗車パターンの判定>
かご20の床24に作用する乗車移行中の人の重量変化率は、典型的には、かご20に一方の足が載せられたときにピークを示し、他方の足が乗り場100の床120から離れるにつれて急激に減少し、他方の足全部が乗り場100の床120から離れたときに実質的に0を示す。
【0047】
図5(a)は、第1の乗車パターンにおける積載重量の時系列データの一例である。図5(b)は、図5(a)に対応する重量変化率の絶対値の時系列データである。
1人目の乗車移行中の人が一方の足をかご20の床24に載せた場合、時刻t51において、重量変化率の絶対値の第1の増加ピークWA1が検出される。
【0048】
2人目の乗車移行中の人が一方の足をかご20の床24に載せた場合、時刻t52において、重量変化率の絶対値の第2の増加ピークWA2が検出される。
第1の増加ピークWA1と第2の増加ピークWA2との間の1つ目の収束値WV1は、重量変化率の絶対値が実質的に0とみなせる値であることを判定するために予め規定された判定値である収束判定値WZよりも大きい。このため、1人の人の乗車が完了する前にさらに別の人が乗車を開始したと判定できる。
【0049】
時刻t53において、重量変化率の絶対値の第2の増加ピークWA2の後に2つ目の収束値WV2が現れている。収束値WV2は、収束判定値WZよりも小さい。このため、時刻t53において、重量変化率の絶対値が実質的に0であると判定できるため、1人目の乗車人および2人目の乗車人の乗車が完了したと判定できる。このような、収束判定値WZよりも小さい収束値WV2を処理単位の終点である乗降収束値と規定する。
【0050】
以上のように、判定部73は、複数の増加ピークWA1,WA2を含み、かつ、1つ目の収束値WV1が収束判定値WZよりも大きい処理単位が抽出されたことに基づいて、乗車パターンが第1の乗車パターンであると判定する。
【0051】
<第2の乗車パターン〜第4の乗車パターンの判定>
図6図8を参照して、第2〜第4の乗車パターンについて説明する。図6図8の(a)は各乗車パターンにおける積載重量の時系列データの一例であり、図6図8の(b)はその時系列データに対応する重量変化率の絶対値の時系列データである。
【0052】
時刻t61、時刻t71、および、時刻t81において、乗車移行中の人が一方の足をかご20の床24に載せた場合、重量変化率の絶対値の増加ピークWAが検出される。
図6(b)、図7(b)、および、図8(b)に示されるように、時刻t62、時刻t72、および、時刻t82において、重量変化率の絶対値の増加ピークWAの後に現れる収束値WVが収束判定値WZよりも小さい状態が検出される。時刻t62、時刻t72、および、時刻t82において、重量変化率の絶対値が実質的に0であると判定できるため乗車人または乗車組の乗車が完了したと判定できる。
【0053】
以上のように、第2の乗車パターン、第3の乗車パターン、および、第4の乗車パターンの処理単位は、重量変化率の絶対値の時系列データにおける増加ピークWAが現れた時点から収束値WVが現れた時点までの範囲である。このような、収束判定値WZよりも小さい収束値WVを処理単位の終点である乗降収束値と規定する。
【0054】
ところで、乗車移行中の車は、乗り場100の床120からかご20へ乗り移ろうとして前輪が回転移動するため、積載重量の変化が徐々に生じる。このため、重量変化率の絶対値のピーク値は、車の乗車移行中よりも人の乗車移行中のほうが顕著に現れる。これを踏まえて、人の乗車が開始される前に車の乗車が開始される図6(b)に示される第2の乗車パターンの場合、および、人の乗車が完了した後に車の乗車が開始される図7(b)に示される第3の乗車パターンの場合を論じる。
【0055】
<比率RAについて>
判定部73は、乗降収束値である収束値WVが検出された時刻に対応するかご20の積載重量WX(以下では「収束時積載重量WX」)、および、増加ピークWAが検出された時刻に対応するかご20の積載重量WY(以下では「ピーク時積載重量WY」)に関して、収束時積載重量WXに対するピーク時積載重量WYの比率RAを算出する。なお、収束時積載重量WXおよびピーク時積載重量WYは、図6(a)、図7(a)、および、図8(a)に示される積載重量が0の箇所、すなわち、重量変化率の絶対値のピークが現れる以前に実質的に0であった箇所からの増加分の重量に相当する。特に、第4の乗車パターンにおける収束時積載重量WXは、1人の重量WHに相当する。
【0056】
第2の乗車パターンの比率RAは、第3の乗車パターンの比率RA、および、第4の乗車パターンの比率RAよりも大きくなる傾向にあるため、判定部73は、比率RAを算出することにより、乗車パターンが第2の乗車パターンであることを判定できる。以下では、第2の乗車パターンの比率RAが第3の乗車パターンの比率RA、および、第4の乗車パターンの比率RAよりも大きくなる理由について説明する。
【0057】
ここで、乗車組に含まれる車の重量を重量WCと規定する。乗車組に含まれる人の重量、および、乗車人の重量を重量WHと規定する。増加ピークWAが検出されたときにかご20の床24に作用している乗車組に含まれる人の重量、および、乗車人の重量を重量WHAと規定する。
【0058】
図6(a)および図6(b)に示される第2の乗車パターンにおいて、収束値WVが検出された時刻t62における収束時積載重量WXは、重量WHと重量WCとの和である。また、増加ピークWAが検出された時刻t61におけるピーク時積載重量WYは、重量WHAと重量WCとの和である。このため、第2の乗車パターンの比率RAは、次の式(1)で表される。

RA=(WHA+WC)/(WH+WC)…(1)
【0059】
図7(a)および図7(b)に示される第3の乗車パターンにおいて、収束値WVが検出された時刻t72における収束時積載重量WXは、重量WHと重量WCとの和である。また、増加ピークWAが検出された時刻t71におけるピーク時積載重量WYは、重量WHAである。このため、第3の乗車パターンにおける比率RAは、次の式(2)で表される。

RA=WHA/(WH+WC)…(2)
【0060】
図8(a)および図8(b)に示される第4の乗車パターンにおいて、収束値WVが検出された時刻t82における収束時積載重量WXは、重量WHである。また、増加ピークWAが検出された時刻t81におけるピーク時積載重量WYは、重量WHAである。このため、第4の乗車パターンにおける比率RAは、次の式(3)で表される。

RA=WHA/WH…(3)
【0061】
式(2)の右辺と式(3)の右辺とを比較すると、分子の値が等しく、式(2)の右辺の分母の値が式(3)の右辺の分母の値よりも大きい。このため、第4の乗車パターンの比率RAは、第3の乗車パターンの比率RAよりも大きい。
【0062】
次に、式(3)と式(1)とを比較するために、式(3)を変形した次の式(4)を考えてみる。

{WHA+WC×(WHA/WH)}/(WH+WC)…(4)
【0063】
式(4)の分子の(WHA/WH)の値は1よりも小さい。このため、式(4)の分子の値は、式(1)の右辺の分子の値よりも小さい。このため、第4の乗車パターンの比率RAは第2の乗車パターンの比率RAよりも小さい。
【0064】
以上のとおり、第2の乗車パターンの比率RAは、第3の乗車パターンの比率RA、および、第4の乗車パターンの比率RAよりも大きい。このため、第3の乗車パターンの比率RA、および、第4の乗車パターンの比率RAとして想定される最大値よりも大きい値として判定比率RXを予め規定しておくことにより、比率RAが判定比率RX以上であるときに乗車パターンが第2の乗車パターンであると判定できる。
【0065】
<積分値SAについて>
判定部73は、積分値SAが判定積分値SR以上か否かを判定する。判定部73が積分値SAを算出する期間は、重量変化率の絶対値の時系列データの1つの増加ピークWAが現れた時点から収束値WVが現れた期間である。また、判定部73が積分する変数は、かご20の積載重量(変数)からピーク時積載重量WY(定数)を減算した値である。
【0066】
第3の乗車パターンにおける積分値SAは、以下の理由により、第2の乗車パターンの積分値SA、および、第4の乗車パターンの積分値SAよりも大きくなる傾向にある。
図7(a)および図7(b)に示される第3の乗車パターンの場合、増加ピークWAが検出される時刻t71において、1組の乗車組に含まれる車はかご20に乗車していない。このため、時刻t71から時刻t72までの時間T2は、1組の乗車組の人の身体の一部、および、車が乗車を完了するために要する時間である。このため、時間T2においては、人が乗車していることにより積載重量が増加した後に車が乗車することにより、積載重量がさらに増加する。
【0067】
図6(a)および図6(b)に示される第2の乗車パターンの場合、増加ピークWAが検出される時刻t61においては、1組の乗車組の車はかご20に乗車している。このため、時刻t61から時刻t62までの時間T1は、1組の乗車組の人の身体の一部が乗車を完了するために要する時間である。このため、第2の乗車パターンの時間T1は第3の乗車パターンの時間T2よりも短い。なお、第2の乗車パターンにおける車による積載重量の増加は、時刻t61以前に終了しているため、時間T1は、人の乗車だけにより積載重量が増加している。
【0068】
図8(a)および図8(b)に示される第4の乗車パターンの場合、時刻t81から時刻t82までの時間T3は、1人の乗車人の身体の一部が乗車を完了するために要する時間である。このため、第4の乗車パターンの時間T3は、第3の乗車パターンの時間T2よりも短い。第4の乗車パターンの場合は、車による積載重量の増加が存在しないため、時間T3は、人の乗車だけにより積載重量が増加している。
【0069】
以上のように、第2の乗車パターンの時間T1、および、第4の乗車パターンの時間T3よりも第3の乗車パターンの時間T2が長くなる。また、時間T1および時間T2の間の積載重量の増加は、人の乗車のみの影響であるのに対して、時間T2の間は人の乗車の影響に加えて、車の乗車による積載重量の増加も影響する。このため、第2の乗車パターンの積分値SA、および、第4の乗車パターンの積分値SAよりも第3の乗車パターンの積分値SAが大きくなる。
【0070】
第2の乗車パターンの積分値SA、および、第4の乗車パターンの積分値SAとして想定される値の最大値よりも大きい値として、判定積分値SRを予め規定しておくことにより、積分値SAが判定積分値SR以上であるときに乗車パターンが第3の乗車パターンであると判定することができる。
【0071】
<乗車パターン判定処理>
図4は、乗車パターン判定処理の一例を示すフローチャートである。
【0072】
判定部73は、ステップS31において、乗車パターンが判定されていない処理単位を読み出す。
ステップS32において、判定部73は、読み出した処理単位が複数の増加ピークWAを含むか否かを判定する。ステップS32の判定結果がYESの場合、判定部73は、ステップS38において、乗車パターンが第1の乗車パターンであると判定する。
【0073】
ステップS32の判定結果がNOの場合、判定部73は、ステップS33以降において、乗車パターンが第2の乗車パターン、第3の乗車パターン、または、第4の乗車パターンのいずれであるかを判定する。
【0074】
判定部73は、ステップS33において、比率RAが判定比率RX以上であるか否かを判定し、判定結果がYESの場合、ステップS37において乗車パターンが第2の乗車パターンであると判定する。
【0075】
ステップS33の判定結果がNOの場合、すなわち、比率RAが判定比率RX未満である場合、判定部73はステップS34に処理を進める。
判定部73は、ステップS34において、算出した積分値SAが、判定積分値SR以上であるか否かを判定し、判定結果がYESの場合、ステップS36において乗車パターンが第3の乗車パターンであると判定する。
【0076】
ステップS34の判定結果がNOの場合、すなわち、積分値SAが判定積分値SR未満である場合、判定部73は、ステップS35において乗車パターンが第4の乗車パターンであると判定する。
以上のように、乗車パターン判定処理においては、第1〜第4の乗車パターンを順に判定することができる。
【0077】
<降車パターンの判定方法>
次に、図10を参照して、第1の降車パターンの判定方法について説明し、図11図13を参照して第2〜第4の降車パターンの判定方法について説明する。そして、第1〜第4の降車パターンを順に判定する降車パターン判定処理について、図9を参照して説明する。
【0078】
<第1の降車パターンの判定>
かご20の床24に作用する降車移行中の人の重量変化率は、典型的には、乗り場100の床120に一方の足が載せられたとき、すなわち、かご20内に残っている他方の足が降車移行中の人の体重を支える力が弱くなり、かご20の床24に作用する他方の足の負荷が減少したときにピークを示す。そして、かご20内に残っている他方の足がかご20の床24から離れるにつれて急激に減少し、他方の足全部がかご20の床24から離れたときに実質的に0を示す。
【0079】
図10(a)は、第1の降車パターンにおける積載重量の時系列データの一例である。図10(b)は、図10(a)に対応する重量変化率の絶対値の時系列データである。
1人目の降車移行中の人が一方の足を乗り場100の床120に載せることにより、かご20内に残っている他方の足が降車移行中の人の体重を支える力が弱くなった場合、時刻t101において、重量変化率の絶対値の第1の減少ピークWB1が検出される。
【0080】
2人目の降車移行中の人が一方の足を乗り場100の床120に載せることにより、かご20内に残っている他方の足が降車移行中の人の体重を支える力が弱くなった場合、時刻t102において、重量変化率の絶対値の第2の減少ピークWB2が検出される。
第1の減少ピークWB1と第2の減少ピークWB2との間の1つ目の収束値WV1は、重量変化率の絶対値が実質的に0とみなせる値であることを判定するために予め規定された判定値である収束判定値WZよりも大きい。このため、1人の人の降車が完了する前にさらに別の人が降車を開始したと判定できる。
【0081】
時刻t103において、重量変化率の絶対値の第2の減少ピークWB2の後に2つ目の収束値WV2が現れている。収束値WV2は、収束判定値WZよりも小さい。このため、時刻t103において、重量変化率の絶対値が実質的に0であると判定できるため、1人目の降車人および2人目の降車人の降車が完了したと判定できる。このような、収束判定値WZよりも小さい収束値WV2を、処理単位の終点である乗降収束値と規定する。
【0082】
以上のように、判定部73は、複数の減少ピークWB1,WB2を含み、かつ、1つ目の収束値WV1が収束判定値WZよりも大きい処理単位が抽出されたことに基づいて、降車パターンが第1の降車パターンであると判定する。
【0083】
<第2の降車パターン〜第4の降車パターンの判定>
図11図13を参照して、第2〜第4の降車パターンについて説明する。図11図13の(a)は各降車パターンにおける積載重量の時系列データの一例であり、図11図13の(b)はその時系列データに対応する重量変化率の絶対値の時系列データである。
【0084】
時刻t111、時刻t121、および、時刻t131において、降車移行中の人が一方の足を乗り場100の床120に載せることにより、かご20内に残っている他方の足が降車移行中の人の体重を支える力が弱くなった場合、重量変化率の絶対値の減少ピークWBが検出される。
【0085】
図11(b)、図12(b)、および、図13(b)に示されるように、時刻t112、時刻t122、および、時刻t132において、重量変化率の絶対値の減少ピークWBの後に現れる収束値WVが収束判定値WZよりも小さい状態が検出される。時刻t112、時刻t122、および、時刻t132において、重量変化率の絶対値が実質的に0であると判定できるため降車人または降車組の降車が完了したと判定できる。
以上のように、第2の降車パターン、第3の降車パターン、および、第4の降車パターンの処理単位は、重量変化率の絶対値の時系列データにおける減少ピークWBが現れた時点から収束値WVが現れた時点までの範囲である。このような、収束判定値WZよりも小さい収束値WVを処理単位の終点である乗降収束値と規定する。
【0086】
ところで、降車移行中の車は、かご20の床24から乗り場100の床120へ乗り移ろうとして前輪が回転移動することにより、かご20の床24に作用する負荷が徐々に減少する。すなわち、積載重量の変化が徐々に生じる。このため、重量変化率の絶対値のピーク値は、車の降車移行中よりも人の降車移行中のほうが顕著に現れる。これを踏まえて、人の降車が開始される前に車の降車が開始される図11(b)に示される第2の降車パターンの場合、および、人の降車移行が完了した後に車の降車移行が開始される図12(b)に示される第3の降車パターンの場合を論じることにする。
【0087】
<比率RBについて>
判定部73は、乗降収束値である収束値WVが検出された時刻に対応するかご20の積載重量WX(以下では「収束時積載重量WX」)、および、減少ピークWBが検出された時刻に対応するかご20の積載重量WY(以下では「ピーク時積載重量WY」)に関して、収束時積載重量WXの絶対値に対するピーク時積載重量WYの絶対値の比率RBを算出する。なお、収束時積載重量WXおよびピーク時積載重量WYは、図11(a)、図12(a)、および、図13(a)に示される積載重量が0の箇所、すなわち、重量変化率の絶対値のピークが現れる以前に実質的に0であった箇所からの減少分の重量に相当する。特に、第4の降車パターンにおける収束時積載重量WXは、1人の重量WHに相当する。
【0088】
第2の降車パターンの比率RBは、第3の降車パターンの比率RB、および、第4の降車パターンの比率RBよりも大きくなる傾向にあるため、判定部73は、比率RBを算出することにより、降車パターンが第2の降車パターンであることを判定できる。以下では、第2の降車パターンの比率RBが第3の降車パターンの比率RB、および、第4の降車パターンの比率RBよりも大きくなる理由について説明する。
【0089】
ここで、降車組に含まれる車の重量を重量WCと規定する。降車組に含まれる人の重量、および、降車人の重量を重量WHと規定する。減少ピークWBが検出されたときに乗り場100の床120に作用している降車組に含まれる人の重量、および、降車人の重量を重量WHAと規定する。
【0090】
図11(a)および図11(b)に示される第2の降車パターンにおいて、収束値WVが検出された時刻t112における収束時積載重量WXの絶対値は、重量WHと重量WCとの和である。また、減少ピークWBが検出された時刻t111におけるピーク時積載重量WYの絶対値は、重量WHAと重量WCとの和である。このため、第2の降車パターンの比率RBは、次の式(1)で表される。

RB=(WHA+WC)/(WH+WC)…(1)
【0091】
図12(a)および図12(b)に示される第3の降車パターンにおいて、収束値WVが検出された時刻t122における収束時積載重量WXの絶対値は、重量WHと重量WCとの和である。また、減少ピークWBが検出された時刻t121におけるピーク時積載重量WYの絶対値は、重量WHAである。このため、第3の降車パターンにおける比率RBは、次の式(2)で表される。

RB=WHA/(WH+WC)…(2)
【0092】
図13(a)および図13(b)に示される第4の降車パターンにおいて、収束値WVが検出された時刻t132における収束時積載重量WXの絶対値は、重量WHである。また、減少ピークWBが検出された時刻t131におけるピーク時積載重量WYの絶対値は、重量WHAである。このため、第4の降車パターンにおける比率RBは、次の式(3)で表される。

RB=WHA/WH…(3)
【0093】
式(2)の右辺と式(3)の右辺とを比較すると、分子の値が等しく、式(2)の右辺の分母の値が式(3)の右辺の分母の値よりも大きい。このため、第4の降車パターンの比率RBは、第3の降車パターンの比率RBよりも大きい。
【0094】
次に、式(3)と式(1)とを比較するために、式(3)を変形した次の式(4)を考えてみる。

{WHA+WC×(WHA/WH)}/(WH+WC)…(4)
【0095】
式(4)の分子の(WHA/WH)の値は1よりも小さい。このため、式(4)の分子の値は、式(1)の右辺の分子の値よりも小さい。このため、第4の降車パターンの比率RBは第2の降車パターンの比率RBよりも小さい。
【0096】
以上のとおり、第2の降車パターンの比率RBは、第3の降車パターンの比率RB、および、第4の降車パターンの比率RBよりも大きい。このため、第3の降車パターンの比率RB、および、第4の降車パターンの比率RBとして想定される最大値よりも大きい値として判定比率RXを予め規定しておくことにより、比率RBが判定比率RX以上であるときに降車パターンが第2の降車パターンであると判定できる。
【0097】
<積分値SBについて>
判定部73は、積分値SBの絶対値が判定積分値SR以上か否かを判定する。判定部73が積分値SBを算出する期間は、重量変化率の絶対値の時系列データの1つの減少ピークWBが現れた時点から収束値WVが現れた期間である。また、判定部73が積分する変数は、かご20の積載重量(変数)からピーク時積載重量WY(定数)を減算した値である。
【0098】
第3の降車パターンにおける積分値SBの絶対値は、以下の理由により、第2の降車パターンの積分値SBの絶対値、および、第4の降車パターンの積分値SBの絶対値よりも大きくなる傾向にある。
図12(a)および図12(b)に示される第3の降車パターンの場合、減少ピークWBが検出される時刻t121において、1組の降車組に含まれる車はかご20から降車していない。このため、時刻t121から時刻t122までの時間T2は、1組の降車組の人の身体の一部、および、車が降車を完了するために要する時間である。このため、時間T2においては、人が降車していることにより積載重量が減少した後に車が降車することにより、積載重量がさらに減少する。
【0099】
図11(a)および図11(b)に示される第2の降車パターンの場合、減少ピークWBが検出される時刻t111においては、1組の降車組の車はかご20から降車している。このため、時刻t111から時刻t112までの時間T1は、1組の降車組の人の身体の一部が降車を完了するために要する時間である。このため、第2の降車パターンの時間T1は第3の降車パターンの時間T2よりも短い。なお、第2の降車パターンにおける車による積載重量の減少は、時刻t111以前に終了しているため、時間T1は、人の降車だけにより積載重量が減少している。
【0100】
図13(a)および図13(b)に示される第4の降車パターンの場合、時刻t131から時刻t132までの時間T3は、1人の降車人の身体の一部が降車を完了するために要する時間である。このため、第4の降車パターンの時間T3は、第3の降車パターンの時間T2よりも短い。第4の降車パターンの場合は、車による積載重量の減少が存在しないため、時間T3は、人の降車だけにより積載重量が減少している。
【0101】
以上のように、第2の降車パターンの時間T1、および、第4の降車パターンの時間T3よりも第3の降車パターンの時間T2が長くなる。また、時間T1および時間T2の間の積載重量の減少は、人の降車のみの影響であるのに対して、時間T2の間は人の降車の影響に加えて、車の降車による積載重量の減少も影響する。このため、第2の降車パターンの積分値SBの絶対値、および、第4の降車パターンの積分値SBの絶対値よりも第3の降車パターンの積分値SBの絶対値が大きくなる。
【0102】
第2の降車パターンの積分値SBの絶対値、および、第4の降車パターンの積分値SBの絶対値として想定される値の最大値よりも大きい値として、判定積分値SRを予め規定しておくことにより、積分値SBの絶対値が判定積分値SR以上であるときに降車パターンが第3の降車パターンであると判定することができる。
【0103】
<降車パターン判定処理>
図9は、降車パターン判定処理の一例を示すフローチャートである。
【0104】
判定部73は、ステップS41において、降車パターンが判定されていない処理単位を読み出す。
ステップS42において、判定部73は、読み出した処理単位が複数の減少ピークWBを含むか否かを判定する。ステップS42の判定結果がYESの場合、判定部73は、ステップS48において、降車パターンが第1の降車パターンであると判定する。
【0105】
ステップS42の判定結果がNOの場合、判定部73は、ステップS43以降において、降車パターンが第2の降車パターン、第3の降車パターン、または、第4の降車パターンのいずれであるかを判定する。
【0106】
判定部73は、ステップS43において、比率RBが判定比率RX以上であるか否かを判定し、判定結果がYESの場合、ステップS47において降車パターンが第2の降車パターンであると判定する。
【0107】
ステップS43の判定結果がNOの場合、すなわち、比率RBが判定比率RX未満である場合、判定部73はステップS44に処理を進める。
判定部73は、ステップS44において、算出した積分値SBの絶対値が、判定積分値SR以上であるか否かを判定し、判定結果がYESの場合、ステップS46において降車パターンが第3の降車パターンであると判定する。
【0108】
ステップS44の判定結果がNOの場合、すなわち、積分値SBの絶対値が判定積分値SR未満である場合、判定部73は、ステップS45において降車パターンが第4の降車パターンであると判定する。
以上のように、降車パターン判定処理においては、第1〜第4の降車パターンを順に判定することができる。
【0109】
なお、上記実施形態に関する説明は、本発明に従うエレベータ装置の制御装置が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に従うエレベータ装置の制御装置は実施形態とは異なる種々の形態を取り得る。
【符号の説明】
【0110】
60:制御装置
71:時系列データ算出部
72:処理単位抽出部
73:判定部
74:総占有面積算出部(算出部)
90:重量検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13