【0023】
重合反応に際しては、含フッ素共重合体が溶解する溶媒であれば特に限定されないが、好ましくはフッ素原子を有する有機溶媒がよい。例えば、1,4-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,1,1,2,2-ペンタフルオロ-3,3-ジクロロプロパン、1,1,2,2,3-ペンタフルオロ-1,3-ジクロロプロパン、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5-デカフルオロペンタン、パーフルオロヘキサンおよび3M社のNovec7100(C
4F
9OCH
3)、同7200(C
4F
9OC
2H
5)、同7300〔C
2F
5CF(OCH
3)C
3F
7)〕等のハイドロフルオロエーテルの少くとも一種よりなる含フッ素有機溶媒中で、重合反応が行われる。
【実施例】
【0034】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0035】
合成例1
(1) 攪拌機および温度計を備えた容量1200mlのオートクレーブに、
CF
3(CF
2)
3(CH
2CF
2)(CF
2CF
2)
2I (99.9GC%)
529g(0.86モル)およびジ第3ブチルパーオキサイド5gを仕込み、真空ポンプでオートクレーブを脱気した。内温を80℃迄加熱したところで、エチレンを逐次的に導入し、内圧を0.5MPaとした。内圧が0.2MPa迄下がったら、再びエチレンを導入して0.5MPaとし、これをくり返した。内温を80〜115℃に保ちながら、約3時間かけてエチレン34g(1.2モル)を導入した。内温50℃以下で内容物を回収し、
CF
3(CF
2)
3(CH
2CF
2)(CF
2CF
2)
2(CH
2CH
2)I (99.1GC%)
550g(収率99.4%)を得た。
【0036】
(2) コンデンサおよび温度計を備えた容量200mlの三口フラスコに、上記(1)で得られた
CF
3(CF
2)
3(CH
2CF
2)(CF
2CF
2)
2(CH
2CH
2)I (99.1GC%)
150g(0.24モル)とN-メチルホルムアミド105g(1.78モル)を仕込み、150℃で5時間攪拌した。反応終了後、反応混合物を水40mlで洗浄し、その下層(132.3g)を15重量%p-トルエンスルホン酸水溶液135gと混合し、80℃で7時間攪拌した。反応混合物を静置後、下層として白色の固体である反応生成物(65.5GC%)を103g(収率53.5%)得た。
【0037】
反応生成物について、内圧0.2kPa、内温121〜163℃、塔頂温度76〜77℃の条件下で減圧蒸留を行い、精製反応生成物(95.3GC%)66.9g(蒸留収率94.2%)を得た。
【0038】
得られた精製反応生成物は、
1H-NMRおよび
19F-NMRの結果から、次式で示される化合物であることが確認された。
CF
3(CF
2)
3(CH
2CF
2)(CF
2CF
2)
2(CH
2CH
2)OH
【0039】
(3) 上記(2)で得られた反応生成物(95.4GC%)60.0g(0.11モル)、トルエン29g、p-トルエンスルホン酸1.6gおよびハイドロキノン0.07gを、コンデンサおよび温度計を備えた容量100mlの三口フラスコに仕込み、内温を100℃迄加熱した後アクリル酸10g(0.14モル)を加え、内温118℃で3時間攪拌した。反応終了後、冷却して82gの反応液を回収し、エバポレータでトルエンを除去した残渣63.9gを水道水で洗浄し、下層として常温で無色透明の液体である反応生成物(89.3GC%)を60.8g(収率86.4%)得た。
【0040】
この反応生成物について、内圧0.2kPa、内温125〜155℃、塔頂温度84〜86℃の条件下で減圧蒸留を行い、精製反応生成物(99.4GC%)42.2g(蒸留収率77.2%)を得た。
【0041】
得られた精製反応生成物は、
1H-NMRおよび
19F-NMRの結果から、次式で示される化合物であることが確認された。
CF
3(CF
2)
3(CH
2CF
2)(CF
2CF
2)
2(CH
2CH
2)OCOCH=CH
2 〔含フッ素モノマーA〕
【0042】
合成例2
合成例1(2)で得られた反応生成物(95.4GC%)60.0g(0.11モル)、トルエン29g、p-トルエンスルホン酸1.6gおよびハイドロキノン0.07gを、コンデンサおよび温度計を備えた容量100mlの三口フラスコに仕込み、内温を100℃迄加熱した後メタクリル酸12g(0.14モル)を加え、内温118℃で3時間攪拌した。反応終了後、冷却して82gの反応液を回収し、エバポレータでトルエンを除去した残渣64gを水道水で洗浄し、下層として常温で無色透明の液体である反応生成物(89GC%)を60.8g(収率86%)得た。
【0043】
この反応生成物について、内圧0.2kPa、内温125〜155℃、塔頂温度84〜86℃の条件下で減圧蒸留を行い、精製反応生成物(99.4GC%)42.2g(蒸留収率77.2%)を得た。
【0044】
得られた精製反応生成物は、
1H-NMRおよび
19F-NMRの結果から、次式で示される化合物であることが確認された。
CF
3(CF
2)
3(CH
2CF
2)(CF
2CF
2)
2(CH
2CH
2)OCOC(CH
3)=CH
2〔含フッ素モノマーB〕
【0045】
実施例1
合成例1で得られた含フッ素モノマーA 46.4g
n-ステアリルメタクリレート〔StMA〕 10.0g
2-アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート〔P-1A〕0.2g
(共栄社化学製品ライトアクリレートP-1A(N))
1,4-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン〔MTF-TFM〕 193.0g
イソプロピルアルコール〔IPA〕 50.0g
以上の各成分を、コンデンサを備えた容量500mlの反応器に仕込み、窒素ガスで30分間置換した。反応器に、さらにビス(4-第3ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート〔P-16〕0.8gを添加した後(合計300.0g)、反応器内温度を徐々に50℃まで上げ、攪拌しながらこの温度で21時間重合反応を行った。
【0046】
反応終了後冷却し、固形分濃度19.1重量%の重合体溶液を得た。未反応の残留共単量体についてガスクロマトグラフィーで分析した結果、共重合反応に用いられた含フッ素モノマーAの99%が共重合反応されていることが確認された。
【0047】
なお、得られた共重合体溶液を120℃のオーブン中に入れ、溶媒を除去して単離した含フッ素モノマーA・n-ステアリルメタクリレート・2-アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート共重合体の重量平均分子量Mwは、123,000であった。ここで、Mwの測定は、Shodex GPC KD 806M + KD-802 + KD-Gを用い、温度40℃、溶出液である10mMテトラヒドロフラン溶液の溶出速度を1ml/分としてGPC測定法により行われ、検出器としては視差屈折計が、また解析にはSIC製Labchart 180(ポリスチレン換算)がそれぞれ用いられた。
【0048】
この共重合体溶液に、1,4-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンを加えて、その固形分濃度を2重量%に希釈し、その希釈液1mlをいずれも2×5cmのアルミニウム板または銅板に滴下し、スピンコートした後、120℃で30分間乾燥させて、試験片を作製した。
【0049】
作製された試験片について、撥水・撥油性能の一つの指標である静的接触角の測定(セシルドロップ法による)を、水およびn-ヘキサデカンについて実施した。測定は、試験片の1,4-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン溶媒による洗浄前、洗浄後について、それぞれ行われた。
【0050】
実施例2〜7
実施例1において、共重合モノマーが種々変更されて用いられた。
【0051】
共重合モノマー(単位:g)、重合体溶液の固形分濃度(単位:重量%)、共重合体Mwおよび静的接触角(単位:度)の測定結果は、次の表1に示される。この表1には、実施例1の結果が併記されている。
注)BzMA:ベンジルメタクリレート
IBMA:イソボルニルメタクリレート
MMA:メチルメタクリレート
【0052】
実施例8〜14
実施例1において、共重合モノマー、溶媒または重合開始剤が種々変更された。
【0053】
共重合モノマー(単位:g)、重合体溶液の固形分濃度(単位:重量%)、共重合体Mwおよび静的接触角(単位:度)の測定結果は、次の表2に示される。なお、溶媒の1成分であるIPAは用いられなかった。
注)MAA:メタクリル酸
【0054】
実施例15〜19
実施例2において、官能基含有モノマー、溶媒または重合開始剤が種々変更された。
【0055】
共重合モノマー(単位:g)、重合体溶液の固形分濃度(単位:重量%)、共重合体Mwおよび静的接触角(単位:度)の測定結果は、次の表3に示される。
表3
実施例 15 16 17 18 19
官能基含有モノマー
P-1A 0.2 0.2 0.2 0.2
GMA 0.2
溶媒
MTF-TFM 193.0 193.0 96.5 96.5 243.0
Novec7100 96.5
Novec7200 96.5
IPA 50.0 50.0 50.0 50.0
重合開始剤
P-16 0.8 0.8 0.8
AIBN 0.8
V-65 1.3
固形分濃度(重量%) 19.1 19.2 19.1 19.1 19.1
共重合体 Mw 182,000 165,000 130,000 145,000 176,000
水との接触角(°)
Al 洗浄前 118 117 118 118 119
洗浄後 116 116 116 115 114
Cu 洗浄前 116 119 118 117 118
洗浄後 114 115 116 113 113
注)GMA:グリシジルメタクリレート(東京化成工業製品)
Novec7100:3M社製品(メチルノナフルオロブチルエーテ
ル-メチルノナフルオロイソブチルエーテル
混合品)
Novec7200:3M社製品(エチルノナフルオロブチルエーテ
ル-エチルノナフルオロイソブチルエーテル
混合品)
AIBN:アゾビスイソブチロニトリル
V-65:2,2′-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)
【0056】
比較例1〜4
次のような含フッ素モノマー、非フッ素モノマー、官能基含有モノマー、溶媒
および重合開始剤が用いられた。
【0057】
共重合モノマー(単位:g)、重合体溶液の固形分濃度(単位:重量%)、共重合体Mwおよび静的接触角(単位:度)の測定結果は、次の表4に示される。
表4
比較例 1 2 3 4
含フッ素モノマー
A 51.0 43.4
FAAC-8 74.9 84.8
非フッ素モノマー
StMA 8.8
BzMA 9.5 6.0 5.1
官能基含有モノマー
P-1A 8.5
溶媒
MTF-TFM 413.0 404.0 243.0 243.0
重合開始剤
P-16 3.0 1.3 1.5 1.5
固形分濃度(重量%) 17.4 19.1 19.4 19.4
共重合体 Mw 130,000 163,000 196,000 56,000
水との接触角(°)
Al 洗浄前 119 120 118 108
洗浄後 104 103 101 100
Cu 洗浄前 118 119 118 106
洗浄後 101 100 102 104
C
16H
34との接触角(°)
Al 洗浄前 73 74 76 77
洗浄後 31 30 30 68
Cu 洗浄前 75 76 77 73
洗浄後 31 32 30 65
注)FAAC-8:2-(パーフルオロオクチル)エチルアクリレート
【0058】
実施例20〜24、比較例5
実施例2、4、9、11、12および比較例3で得られた含フッ素共重合体の1,4-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン溶液(成分濃度5重量%)(実施例2および4はイソプロピルアルコールを含有)を用いて防錆性の評価を行った。
【0059】
防錆性評価は、塩水噴霧試験(JIS Z 2371)により行った。基材としては、70×150×1.0mmのアルミニウム、銅またはSPCC基板を用い、各含フッ素共重合体の1,4-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン溶液に浸漬させ、基材の表面処理を行った。240時間の塩水噴霧後の外観を、◎(錆なし)、○(一部錆発生)、△(半面以上錆発生)、×(全面錆発生)の4段階で評価した。得られた結果は、次の表5に示される。