(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6693588
(24)【登録日】2020年4月20日
(45)【発行日】2020年5月13日
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28F 9/02 20060101AFI20200427BHJP
F28F 9/22 20060101ALI20200427BHJP
F28D 1/053 20060101ALI20200427BHJP
F28F 1/02 20060101ALI20200427BHJP
F25B 39/00 20060101ALI20200427BHJP
【FI】
F28F9/02 301D
F28F9/22
F28D1/053 A
F28F1/02 A
F25B39/00 C
F25B39/00 E
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-65435(P2019-65435)
(22)【出願日】2019年3月29日
【審査請求日】2019年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 政利
(72)【発明者】
【氏名】前間 慶成
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼岡 亮
(72)【発明者】
【氏名】岡 孝多郎
【審査官】
山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−68623(JP,A)
【文献】
特開2017−155992(JP,A)
【文献】
特開2017−211113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 9/02
F28D 1/053
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を流れる冷媒の流れ方向に垂直となる方向に積層された複数の扁平管と、
前記複数の扁平管の一方の端部が接続された中空のヘッダと、
前記ヘッダの内部で冷媒流入部とその上方の下循環部を区画する流入板と、
前記ヘッダの内部で前記下循環部とその上方の上循環部を区画する上下仕切板と、
前記下循環部を内側の上昇路と外側の下降路に前記扁平管が積層される方向に平行に延びる下仕切板と、
前記流入板と前記下仕切板との間で前記下循環部の上昇路と下降路を連通する下連通路と、
前記上循環部を風下側の少なくとも一部に設けられた上昇路と少なくとも風上側に設けられた下降路に前記扁平管が積層される方向に平行に延びる上仕切板と、
前記上循環部の上昇路と下降路を連通する上連通路と、を備え、
前記流入板は、冷媒を噴出する噴出孔を風下側かつ内側に有し、
前記上下仕切板は、冷媒を通過させる第1通過口を風下側かつ内側に、冷媒を通過させる第2通過口を少なくとも風上外側にそれぞれ有する、ことを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記流入板の前記噴出孔は、断面視において、前記下仕切板と前記複数の扁平管の一端部側との間に位置することを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記下循環部の前記下仕切板は、その下端が最下段の扁平管よりも下方に位置することを特徴とする請求項1又は2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記上仕切板は、前記上循環部の内側で風上と風下を分ける第1仕切部と、前記上循環部の風下側で外側と内側を分ける第2仕切部とによって断面がL字状となるよう形成され、前記上昇路が風下側かつ内側に、前記下降路が風上側及び風下外側に仕切られることを特徴とする請求項1から3に記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器、特に空気調和機に用いられる熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の流路孔を有する扁平管(伝熱管)の両端がヘッダに接続され、扁平管への冷媒の分流がヘッダ内で行われる構造を持つ熱交換器が知られている。扁平管は、冷媒流れ方向に垂直となる方向に対して複数積層している。このような熱交換器では、ヘッダ内部の冷媒流速が低い場合には、重力の影響によりその下部に液冷媒の滞留が起きる一方、 ヘッダ内部の冷媒流速が高い場合には、ヘッダの上部に液冷媒の滞留が起きるため、冷媒の分流を均一にできない。また、扁平管の内部には複数の流路孔が設けられているが、扁平管の風上側と風下側の熱交換量の差が生じるため、扁平管内の複数の流路間で冷媒の状態が不均一となり、熱交換能力が低下する。
【0003】
これに対し、特許文献1は、
図5に示すように、ヘッダ12Aの冷媒流入部14Aと循環部16Aを区画する流入板15Aに設けられたオリフィス151A(噴出孔)と、扁平管が積層される方向に平行に伸びて配置されてヘッダ12A内部の循環部16Aを内側16iA(扁平管が接続されている側)と外側16oA(扁平管とは反対の側)の空間に分ける仕切板161Aと、仕切板161Aの上側に設けられた上部連通路162A及び仕切板161Aの下側に設けられた下部連通路163Aを備える熱交換器5Aを開示している。なお
図5〜7において、ヘッダ12の断面図を、断面記号から引き出した破線の個所に示す。特許文献1では、流入管13Aから冷媒流入部14Aに流入した液冷媒はオリフィス151Aによって流速を上げられ、循環部16Aの下部での液冷媒滞留を抑制しつつ、上部連通路162A及び下部連通路163Aと仕切板161Aによって仕切られた循環部16Aを循環し、循環部16Aの上部に移動した液冷媒を下部に戻すことで上部での滞留も抑制している(図中、冷媒の流れを矢印で示す)。しかし、特許文献1の構成では、扁平管11Aの風上側と風下側における冷媒の状態の不均一を改善することができないという問題がある。
【0004】
そこで、
図6に示すように、ヘッダ12B内部の循環部16Bを扁平管11B側となる内側16iBと扁平管11B側の反対側となる外側16oBの空間に分ける第1仕切板161Bと、外側空間16oBをさらに風上側16uoBと風下側16doBの空間に分ける第2仕切板164Bと、第2仕切板164Bの上側に設けられた上部連通路162Bと第2仕切板164Bの下側に設けられた下部連通路163Bと、第1仕切板161Bの側面に設けられた間隙165B,166Bを備える熱交換器5Bとすることが考えられる。
【0005】
この構成では、流入管13Bから冷媒流入部14Bに流入した液冷媒は流入板15Bのオリフィス151Bによって流速が速められ、循環部16Bの下部での液冷媒の滞留を抑制しつつ、上部連通路162B及び下部連通路163Bと第2仕切板164Bによって仕切られた空間16Bを循環し、循環部16Bの上部に滞留した液冷媒を下部に戻すことで、ヘッダ12Bの上部に冷媒が滞留することを抑制している。図中、風上側16uoBの冷媒の流れを破線の矢印で示し、風下側16doBの冷媒の流れを実践の矢印で示す。
【0006】
さらに、このヘッダ12Bでは、第1仕切板161Bの間隙165B,166Bを通じて外側16oBと内側16iBの空間は連通しているため、冷媒が循環しながら徐々に内側16iBの空間に流れていく。この構造により、循環経路の戻り側(風上側16uoB)は流速が遅くなり間隙165Bを介して内側16iBの風上側により多くの液冷媒を流すことができるため、特許文献1の効果に加えて、扁平管11Bの風上側と風下側における冷媒の状態の不均一さを改善することができる。しかしながら、この構造では、
図7に示すように、循環経路の戻り側空間の下部連通路163B付近に液冷媒Rが滞留(ハッチングで示す)し、扁平管11Bに偏流してしまうという懸念がある。なお
図7では、扁平管11Bの図示を一部省略している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015−127618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みなされたものであって、扁平管ごとの冷媒の分流を均一化し、扁平管の風上側と風下側における冷媒の状態の不均一を改善し、循環の戻り側空間に滞留した液冷媒の扁平管への偏流を抑制する熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、以下の構成によって把握される。
(1)本発明の第1の観点は、熱交換器であって、内部を流れる冷媒の流れ方向に垂直となる方向に積層された複数の扁平管と、前記複数の扁平管の一方の端部が接続された中空のヘッダと、前記ヘッダの内部で冷媒流入部とその上方の下循環部を区画する流入板と、前記ヘッダの内部で前記下循環部とその上方の上循環部を区画する上下仕切板と、前記下循環部を内側の上昇路と外側の下降路に前記扁平管が積層される方向に平行に延びる下仕切板と、前記流入板と前記下仕切板との間で前記下循環部の上昇路と下降路を連通する下連通路と、前記上循環部を風下側の少なくとも一部に設けられた上昇路と少なくとも風上側に設けられた下降路に前記扁平管が積層される方向に平行に延びる上仕切板と、前記上循環部の上昇路と下降路を連通する上連通路と、を備え、前記流入板は、冷媒を噴出する噴出孔を風下側かつ内側に有し、前記上下仕切板は、冷媒を通過させる第1通過口を風下側かつ内側に、冷媒を通過させる第2通過口を少なくとも風上外側にそれぞれ有する。
【0010】
(2)上記(1)の熱交換器において、前記流入板の前記噴出孔は、断面視において、前記下仕切板と前記複数の扁平管の一端部側との間に位置する。
【0011】
(3)上記(1)又は(2)の熱交換器において、前記下循環部の前記下仕切板は、その下端が最下段の扁平管よりも下方に位置する。
【0012】
(4)上記(1)から(3)のいずれか1つの熱交換器において、前記上仕切板は、前記上循環部の内側で風上と風下を分ける第1仕切部と、前記上循環部の風下側で外側と内側を分ける第2仕切部とによって断面形状がL字状となるよう形成され、前記上昇路が風下側かつ内側に、前記下降路が風上側及び風下外側に仕切られる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、扁平管ごとの冷媒の分流を均一化し、扁平管内の風上側と風下側における冷媒の状態の不均一を改善し、循環の戻り側空間に滞留した液冷媒の扁平管への偏流を抑制する熱交換器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る熱交換器が適用される空気調和機の構成を説明する図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る熱交換器を説明する図であって、(a)は熱交換器の平面図、(b)は熱交換器の正面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る熱交換器のヘッダを説明する図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る熱交換器のヘッダ(下循環部)において、液冷媒の滞留を説明する図である。
【
図5】従来の熱交換器の一例を説明する図であって、内側と外側を仕切る仕切板を備える場合の図である。
【
図6】従来の熱交換器の他の一例を説明する図であって、内側と外側を仕切る第1仕切板と風上側と風下側を仕切る第2仕切板を備える場合の図である。
【
図7】
図6において、液冷媒の滞留を説明する図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る熱交換器のヘッダを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施形態)
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という)を、添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
【0016】
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態について、
図1から
図4を用いて説明する。
【0017】
(空気調和機の全体構成)
図1は、本発明の第1実施形態に係る熱交換器が適用される空気調和機の構成を示している。
図1に示すように、空気調和機1は、室内機2と室外機3とを備えている。室内機2には、室内用の熱交換器4が設けられ、室外機3には、室外用の熱交換器5のほかに、圧縮機6、膨張弁7、四方弁8等が設けられている。
【0018】
暖房運転時には、室外機3の圧縮機6から吐出された高温高圧のガス冷媒が四方弁8を介して室内用の熱交換器4に流入する。図中、黒矢印の方向に冷媒が流れる。暖房運転時には、室内用の熱交換器4は凝縮器として機能し、空気と熱交換した冷媒は凝縮して液化する。その後、高圧の液冷媒は、室外機3の膨張弁7を通過することによって減圧され、低温低圧の気液二相冷媒となり室外用の熱交換器5へ流入する。室外用の熱交換器5は蒸発器として機能し、外気と熱交換した冷媒はガス化する。その後、低圧のガス冷媒は、四方弁8を介して圧縮機6に吸入される。
【0019】
冷房運転時には、室外機3の圧縮機6から吐出された高温高圧のガス冷媒が四方弁8を介して室外用の熱交換器5に流入する。図中、白抜き矢印の方向に冷媒が流れる。室外用の熱交換器5が凝縮器として機能し、外気と熱交換した冷媒は凝縮して液化する。その後、高圧の液冷媒は、室外機3の膨張弁7を通過することによって減圧され、低温低圧の気液二相冷媒となり、室内用の熱交換器4へ流入する。室内用の熱交換器4は蒸発器として機能し、空気と熱交換した冷媒はガス化する。その後、低圧のガス冷媒は、四方弁8を介して圧縮機6に吸入される。
【0020】
(熱交換器)
本第1実施形態の熱交換器は、室内用の熱交換器4及び室外用の熱交換器5に適用可能であるが、以下の説明では、暖房運転時に蒸発器として機能する、室外機3の熱交換器5に適用するものとして説明する。なお、室外機3の熱交換器5は、平型のまま使用しても平面視L型として使用しても良い。通常、平面視L型で使用する場合には、平型に形成された熱交換器5を曲げ加工することで得られる。具体的には、表面にロウ材が塗布された部材で平型の熱交換器5を組み立てる組立工程と、組み立てられた平型の熱交換器5を炉に入れてロウ付けするロウ付け工程と、ロウ付けされた平型の熱交換器5をL型に曲げ加工する曲げ工程と、を経てL型の熱交換器5が製造される。以下、本発明の熱交換器を平型の熱交換器5として説明する。
【0021】
図2は、本第1実施形態に係る熱交換器5を説明する図であり、
図2(a)は熱交換器5の平面図、
図2(b)は熱交換器5の正面図を示している。扁平管11(第1扁平管11aおよび第2扁平管11b)は、空気が流通する方向に延びた扁平な断面を有し、その内部には、冷媒が流れる複数の流路が空気流通方向に並んで形成されている。熱交換器5は、扁平管11の側面のうち幅広となる面(幅広面)が対向するように上下方向に配列された複数の扁平管11と、扁平管11の両端に接続される左右一対のヘッダ12と、扁平管11と交差する方向に配置され扁平管11と接合された複数のフィン111と、を備えている。熱交換器5には、これらのほかに、空気調和機1の他の要素との間をつなぎ冷媒が流れる冷媒配管がヘッダ12に設けられている。
【0022】
扁平管11は、空気が通過するための間隔S1を介して上下方向に並列に配置され、その両端部が一対のヘッダ12に接続される。具体的には、左右方向に沿う複数の扁平管11を上下方向に所定の間隔S1で配列し、その両端部をヘッダ12に接続している。
【0023】
ヘッダ12は、円筒形状であり、その内部には、熱交換器5に供給された冷媒を複数の扁平管11に分岐状に流入させたり、複数の扁平管11から流出した冷媒を合流させたりする冷媒流路(不図示)が形成されている。
【0024】
フィン111は、正面視において扁平管11と交差する方向に伸びて配置される平板形状であり、空気が通過するための間隔を介して、左右方向に所定の配列ピッチで配列されている。
【0025】
(ヘッダ)
次に、本第1実施形態に係る熱交換器5のヘッダ12について、
図3及び
図4を用いて説明する。ヘッダ12は、
図2に示すように左右一対に設けられているが、以下では、左側のヘッダ12を用いて説明する。また、本第1実施形態では、ヘッダ12に対し、後述する下仕切板161の扁平管11側(図中、右側)を内側、その反対側(図中、左側)を外側といい、また、後述する上仕切板174の図中の上側を風上、その反対側を風下(図中、下側)という。なお、
図3及び
図4では、フィン111を省略している。また、断面図の上方の下向きの矢印は、空気の流通方向を示している。
【0026】
ヘッダ12の内部の構造について、
図3の概略図を用いて説明する。ヘッダ12の内部は、冷媒が複数の扁平管11に分流されるように中空に形成されている。ヘッダ12は下から順に、冷媒流入部14、下循環部16、上循環部17に区画されている。なお
図3〜4において、ヘッダ12の扁平管が積層される方向から見た断面図を、断面記号から引き出した破線の個所に示す。
【0027】
冷媒流入部14には、冷媒が流入する流入管13が接続されている。扁平管11の中を流れる冷媒流れ方向に垂直となる方向に積層された複数の扁平管11は、その一方の端部がヘッダ12に接続されており、下循環部16に接続される下部扁平管群11dと、上循環部17に接続される上部扁平管群11uに分類される。扁平管11の内部には、冷媒が流れる複数の流路孔(不図示)が風上側から風下側にかけて互いに平行に配置されている。
【0028】
冷媒流入部14とその上方の下循環部16は、流入板15によって区画されている。流入板15には、冷媒が冷媒流入部14から下循環部16へ噴出される噴出孔151(オリフィス)が設けられている。噴出孔151は、
図3の断面図の最下段に示すように、流入板15を扁平管が積層される方向から見た断面視において、流入板15の風下側かつ内側に設けられており、後述する下仕切板161と扁平管11の一端部側との間に位置している。噴出孔151が扁平管11の一端部側と重ならない位置に配置される事から、噴出孔151から下循環部16へ噴出される冷媒が扁平管11によって減速されることを抑止できる。
【0029】
下循環部16は、
図3の断面図の下から2段目に示すように、下連通路163を除いて、下仕切板161によって、内側(下循環部16の扁平管11B側)となる冷媒の上昇路16iと、外側(下循環部16の扁平管11B側と反対側)となる冷媒の下降路16oとに仕切られている。すなわち、下仕切板161は、下循環部16を内側と外側に仕切るように、後述する上下仕切板18から前記扁平管が積層される方向の下方に向かって伸びて配置され、その下端において、下連通路163によって内側と外側が連通している。ここで、下仕切板161の下端は、下部扁平管群11dの最下段の扁平管11よりも下方に位置する。
【0030】
下循環部16とその上方の上循環部17は、上下仕切板18によって区画されており、上下仕切板18は、
図3の断面図の上から2段目に示すように、上昇路16iを流れる冷媒を上循環部17へ通過させる第1通過口18diをヘッダ12の風下側かつ内側に設け、冷媒を通過させない第1閉鎖部18uiを風上側かつ内側に有している。また、上循環部17から下循環部16へ冷媒を通過させる第2通過口18uoをヘッダ12の風上側かつ外側に設け、冷媒を通過させない第2閉鎖部18doを風下側かつ外側に有している。
【0031】
なお、第2閉鎖部18doは、流路を閉鎖する態様でなくてもよく、第2通過口18uoと一体的に開放されていても差し支えない。第2通過口18uoが風上側かつ外側のみに設けられていても、あるいは風上から風下にかけて外側に設けられていても、冷媒を下循環部16の外側の下降路16oへと導くことができればよい。要するに、上下仕切板18は、冷媒を下降させる方向に通過させる第2通過口18uoを少なくとも風上外側に有していればよい。
【0032】
上循環部17は、
図3の断面図の最上段に示すように、上連通路172を除いて、上仕切板174によって、ヘッダ12の風下側となる上昇路17dと、風上側となる下降路17uとに仕切られている。すなわち、上仕切板174は、上循環部17を風上側と風下側に仕切るように、前述した上下仕切板18から扁平管が積層される方向の上方に向かって伸びて配置され、その上端において、上連通路172によって風上側と風下側が連通している。上仕切板174には上部扁平管群11uに対応する箇所に凹部が設けられ、扁平管11が挿入される。ここで、上仕切板174の上端は、上部扁平管群11uの最上段の扁平管11よりも上方に位置する。
【0033】
ここで、
図3では、下部扁平管群11d及び上部扁平管群11uについて、ともに7本の扁平管11によって構成された例が示されているが、それぞれの扁平管11の数はこれに限定されるものではなく、また、上下仕切板18を挟んで上下において同数でなくてもよい。また上昇路16i、下降路16o、上昇路17dおよび下降路17uの断面積は、流通する冷媒の状態や種類に応じて、予め設計されればよい。これらの事項は、熱交換器5に必要とされる性能に応じて、適宜設定され得る。
【0034】
(冷媒の循環)
以上のようなヘッダ12の構造によって、冷媒は、
図3の矢印に示すようにヘッダ12内部を循環しつつ、下部扁平管群11d及び上部扁平管群11uの各扁平管11へ分流されていく。すなわち、冷媒は、まず、流入板15の噴出孔151を介して冷媒流入部14から下循環部16の内側の上昇路16iへ噴出される。その後、冷媒は、上下仕切板18の第1通過口18diを介して上循環部17の風下側の上昇路17dへと導かれる。
【0035】
そして、冷媒は、上連通路172で反転し、
図3の破線矢印によって示すように、上循環部17の風上側の下降路17uへ戻っていく。その後、冷媒は、上下仕切板18の第2通過口18uoを介して下循環部16の外側の下降路16oへと導かれる。この際、前述したように、上下仕切板18の第2通過口18uoは、ヘッダ12の風上側かつ外側のみにあっても、あるいは風上から風下にかけての外側にあってもよく、要するに、冷媒を下循環部16の外側の下降路16oへと導くことができればよい。
【0036】
下循環部16の外側の下降路16oへと導かれた冷媒は、下連通路163で反転し、再び、下循環部16の内側の上昇路16iへと循環する。流入板15の噴出孔151を介して下循環部16に流入する冷媒と合流し、各扁平管11へ分流されていく。ここで噴出孔151、第1通過口18diおよび第2通過口18uoの面積は、熱交換器5に必要とされる性能に応じて、適宜設定され得る。
【0037】
以上のように冷媒が循環することによって、本第1実施形態に係るヘッダ12においては、扁平管11ごとの冷媒の分流バランスを均一化することが可能となる。すなわち、流入板15の噴出孔151、下循環部16を仕切る下仕切板161及び上循環部17を仕切る上仕切板174によって、流路断面積が減少して冷媒の流速が上がるため、低循環量であっても液冷媒がヘッダ12内を上昇しやすくなり、ヘッダ12の下部で冷媒が滞留することが抑制される。一方、上昇した冷媒は、上循環部17の上連通路172から下循環部16の下連通路163によって、上循環部17に移動した液冷媒が流入板15の位置へ戻る循環経路が形成されるため、高循環量でも上循環部17に冷媒が滞留することが抑制される。
【0038】
さらに、扁平管11内の風上側と風下側における冷媒の状態の不均一を改善することが可能となる。すなわち、ヘッダ12の下循環部16では内側の上昇路16iと外側の下降路16oの循環経路となり、かつ、流入板15の噴出孔151の位置を風下側に寄せたことにより、上昇路16iの風下側には吹き上がった高流速のガスが多く分布し、上昇路16i風上側にはそれよりも低流速な液冷媒が多く分布することになる。それにより、従来のヘッダでは流路孔ごとに液冷媒が等分配されるのに対し、本第1実施形態に係るヘッダ12では熱交換量が相対的に大きい風上側に多く液冷媒を流すことができ、扁平管11の風上側と風下側における冷媒の状態の不均一が改善される。
【0039】
また、上循環部17では風下側の上昇路17dと風上側の下降路17uの循環経路となり、戻り空間となる下降路17u側で液冷媒の割合が増加するため、風下側に流入空間、風上側に戻り空間を配置することで、熱交換量が相対的に大きい風上側に多く液冷媒を流すことができ、扁平管11の風上側と風下側における冷媒の状態の不均一が改善される。
【0040】
さらに、ヘッダ12においては、下循環部16の循環経路の戻り空間である下降路16oに滞留した液冷媒R(
図4においてハッチングで示す)について、
図4を用いて説明する。
図4に示すように、下循環部16の下降路16oが扁平管11の接続されていない外側空間であり、滞留した液冷媒Rは扁平管11に偏流しない。また、下循環部16の下仕切板161の下端(ひいては、下連通路163の高さ)が下部扁平管群11dの最下段の扁平管11よりも下方に位置しているため、液冷媒Rが上昇路16i側へ移動することを抑制している。
【0041】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について、
図8を用いて説明する。空気調和機1の全体構成及び熱交換器5は第1実施形態と同様であるので、それらの説明は省略する。なお
図8において、ヘッダ12の扁平管が積層される方向から見た断面図を、断面記号から引き出した破線の個所に示す。
【0042】
(ヘッダ)
ヘッダ22について以下説明するが、左右一対に設けられたヘッダ22のうち左側のヘッダ22を用いて説明する点、またヘッダ22に対し、後述する下仕切板261で区画されるヘッダ22内の扁平管11側(図中、右側)を内側、その反対側(図中、左側)を外側と説明する点、また、後述する上仕切板274について図中の上側を風上、その反対側を風下(図中、下側)という点、
図8においてフィン111を省略している点は、第1実施形態と同様である。
【0043】
第2実施形態では、冷媒の循環量が多い状況において、第1の実施形態における上循環部17の下降路17u(冷媒が下部へ戻る空間)において液冷媒の分流をより適切に行えるようにすることを目的としている。
【0044】
この状況に対処するため、ヘッダ22は、その上循環部27に、
図8の断面図の最上段に示すように、扁平管が積層される方向に垂直な断面で見た際に断面形状がL字状となる上仕切板274を設ける。具体的には、上仕切板274は、上循環部27の内側で風上と風下を分ける第1仕切部274xと、ヘッダ22の風下側で外側と内側を分ける第2仕切部274yとを組み合わせて形成される。第2仕切部274yは、上下仕切板28から上循環部27の上端まで伸びて配置される一方、第1仕切部274xは、上部扁平管群11uのうち少なくとも最上部の扁平管よりも低い位置までとし、上循環部27の上端との間に上連通路272を設ける。第1仕切部274xには上部扁平管群11uに対応する箇所に凹部が設けられ、扁平管11が挿入される。
【0045】
この上仕切板274によって、上循環部27は、風下側かつ内側となる冷媒の上昇路27diと、風上側となる冷媒の下降路27u及び風下外側となる冷媒の下降路27doとに仕切られることとなる。下降路27uと下降路27doは、一体的な空間に形成される。
【0046】
以上のように、第2実施形態に係るヘッダ22では、上循環部27が上循環部27の風下側の一部空間である風下側かつ内側が上昇路27diに、風上側の全ての空間に風下側かつ外側の一部空間を加えた空間が下降路27u/27doにそれぞれ仕切られるものである。したがって、ヘッダ12とヘッダ22を包括すると、上仕切板174,274は、上連通路172,272を除いて上循環部17,27を風下側の少なくとも一部に設けられた上昇路17d,27diと、少なくとも風上側に設けられた下降路17u,27u/27doに仕切るものである。
【0047】
(冷媒の循環)
以上のような構成において、冷媒は、
図8の矢印に示すようにヘッダ22内部を循環しつつ、下部扁平管群11d及び上部扁平管群11uの各扁平管11へ分流されていく。すなわち、冷媒は、まず、流入板25の風下側かつ内側の噴出孔251を介して冷媒流入部24から下循環部26の内側の上昇路26iへ噴出される。その後、冷媒は、上下仕切板28の第1通過口28diを介して上循環部27の風下側かつ内側の上昇路27diへと導かれる。なお、
図8では、流入板25の風上側かつ内側に別の噴出孔252を設けた例を示しているが、これは第2実施形態として不可欠なものではなく、下循環部26への冷媒の噴出を促進する必要がある場合に設ければよい。
【0048】
そして、冷媒は、上連通路272で反転し、上循環部27の風上側の下降路27u及び風下外側の下降路27doへ戻っていく。その後、冷媒は、上下仕切板28の第2通過口28uoを介して下循環部26の外側の下降路26oへと導かれる。この際、前述したように、上下仕切板28の第2通過口28uoは、風上外側のみにあっても、あるいは風上から風下にかけての外側にあってもよく、要するに、冷媒を下循環部26の外側の下降路26oへと導くことができればよい。
【0049】
下循環部26の外側の下降路26oへと導かれた冷媒は、下連通路263で反転し、再び、下循環部26の内側の上昇路26iへと循環する。
【0050】
ここで、冷媒の循環量が多い状況における液冷媒の滞留について説明する。冷媒の循環量が多い場合、液冷媒は、上下仕切板28の風上側に滞留することがある。これに対して、第2実施形態のように、上連通路272がL字状の上仕切板274によって風下側かつ内側の上昇路27diと風上側の下降路27u及び風下外側の下降路27doとに仕切ることで、上連通路272から下降路27u及び下降路27doを下降してくる液冷媒が上下仕切板28の風上外側にある第2通過口28uoを通過し切れない量であったとしても、液冷媒は、上下仕切板28上において、風上側かつ内側にある第1閉鎖部28uiに加えて風下側かつ外側にある第2閉鎖部28doにも広がって滞留していく。そうすると、上循環部27で冷媒を滞留させておける面積が増加することから、液冷媒の滞留高さを上部扁平管群11uの最下段の扁平管11よりも低くすることができ、上部扁平管群11uの高さ方向の偏流を更に改善できる。
【0051】
(実施形態の効果)
上記のような熱交換器としたことから、第1実施形態は、扁平管11ごとの冷媒の分流を均一化し、扁平管11内の風上側と風下側における冷媒の状態の不均一を改善し、下循環部16の下降路16o(冷媒の戻り空間)に滞留した液冷媒の扁平管11への偏流を抑制することができる。
【0052】
さらに、第2実施形態は、幅方向の偏流を改善しつつ、上循環部26の下降路27u、27do側における液冷媒の滞留面積を増加させることにより、液冷媒の滞留の影響を抑制し、高さ方向の更なる偏流を改善することができる。
【0053】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0054】
1…空気調和機
2…室内機
3…室外機
4…熱交換器(室内)
5…熱交換器(室外)
6…圧縮機
11…扁平管、11d…下部扁平管群、11u…上部扁平管群
111…フィン
12…ヘッダ(第1実施形態)
13…流入管
14…冷媒流入部
15…流入板
151…噴出孔(オリフィス)
16…下循環部、16i…内側の上昇路、16o…外側の下降路
161…下仕切板
163…下連通路
17…上循環部、17d…風下側の上昇路、17u…風上側の下降路
172…上連通路
174…上仕切板
18…上下仕切板、18di…第1通過口、18ui…第1閉鎖部、18uo…第2通過口、18do…第2閉鎖部
22…ヘッダ(第2実施形態)
24…冷媒流入部
25…流入板
251…噴出孔(オリフィス)
26…下循環部、26i…内側の上昇路、26o…外側の下降路
261…下仕切板
263…下連通路
27…上循環部、27di…風下側かつ内側の上昇路、27u…風上側の下降路、27do…風下外側の下降路
272…上連通路
274…上仕切板、274x…第1仕切部、274y…第2仕切部
28…上下仕切板、28di…第1通過口、28ui…第1閉鎖部、28uo…第2通過口、28do…第2閉鎖部
R…液冷媒
【要約】
【課題】扁平管ごとの冷媒の分流を均一化し、扁平管内の風上側と風下側における冷媒の状態の不均一を改善し、循環の戻り側空間に滞留した液冷媒の扁平管への偏流を抑制する熱交換器を提供する。
【解決手段】熱交換器5は、複数の扁平管11と、複数の扁平管が接続されたヘッダ12と、ヘッダの内部で冷媒流入部14と下循環部16を区画する流入板15と、下循環部16と上循環部17を区画する上下仕切板18と、下連通路163を除いて下循環部を内側の上昇路と外側の下降路に仕切る下仕切板161と、上連通路172を除いて上循環部を風下側の少なくとも一部に設けられた上昇路と、少なくとも風上側に設けられた下降路に仕切る上仕切板174と、を備え、流入板は、冷媒を噴出する噴出孔151を風下側かつ内側に有し、上下仕切板は、冷媒を通過させる第1通過口18diを風下側かつ内側に、冷媒を通過させる第2通過口18uoを少なくとも風上外側にそれぞれ有する。
【選択図】
図3