(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態に係る画像センサと照明システムについて図面を参照して説明する。同じ又は対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0012】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る照明システムを示すブロック図である。設定器10に照明コントローラ12が接続されている。照明コントローラ12は照明器具14、16を制御する。照明器具の数は特に限定されない。例えば広いオフィスには数百の照明器具が設けられる。画像センサ18は、照明器具14、16の照射領域をカメラで撮影し、人の在否を判定する部分である。壁スイッチ20は使用者により照明器具14、16をオンオフするために用いられる。
【0013】
図2は、伝送線で接続された、照明コントローラ12、照明器具14、画像センサ18、及び壁スイッチ20の内部構成を示す図である。画像センサ18は、カメラ部30、画像処理部32、通信部34、リモコン送受信部36、及びLED表示部38を備えている。画像処理部32は、カメラ部30で得られた画像を取得し、人の在否を判定する部分である。
【0014】
図3は、照明器具14と画像センサ18のレイアウト例を示す図である。例えば、16個の照明器具14による照射領域が第1ブロックB1、第2ブロックB2、第3ブロックB3、及び第4ブロックB4に4分割されている。1つのブロックは例えば3.6m×3.6mの広さを有している。4つのブロックを合計すると、7.2m×7.2mの領域となっている。1つのブロックに4つの照明器具14が設けられている。このブロックは4つの照明器具14によって照射される領域である。
【0015】
画像センサ18は4つのブロックB1〜B4の中心に設けられている。画像センサ18で人の在否を判定すべき領域は「検知領域」という。実施の形態1における検知領域は実空間では7.2m×7.2mの領域である。したがって、画像センサ18はこの7.2m×7.2mの範囲で人の在否を判定できればよく、この範囲の外側における人の在否を判定する必要はない。
【0016】
図4は、画像センサ18により撮影される領域を示す図である。画像センサ18は床面から2mの高さに設置されている。画像センサ18のカメラ部30に広角レンズを設けることで、広い範囲の撮影が可能となっている。具体的には、鉛直方向に対して65°(130°水平)程度の画角を確保している。更に広い範囲の撮影を可能とするために、例えば鉛直方向に対して185°の範囲を撮影できる広角レンズを用いても良い。
【0017】
画像センサ18のカメラ部30の解像度は例えばSXGA(1280×1024ピクセル)である。この場合の画像の有効範囲は1024×1024ピクセルである。
図4に示されているように、画像センサ18によって撮影される領域(撮影領域という)は9m×9mとなる。
【0018】
図5は、撮影領域と検知領域を示す図である。人の在否を判定すべき画像センサ18の検知領域42は7.2m×7.2mなのに対し、実際に画像センサ18で撮影された撮影領域40は9m×9mである。撮影領域40のうち、検知領域42の外側の部分は、撮影されたものの人の在否の判定に利用しない部分である。人の在否の判定に利用しない部分に対し手動でマスキングを施すのは作業者の負担が大きい。
【0019】
そこで、実施の形態1では、作業者がリモコンを用いて、画像センサ18の床面からの設置高さの情報を画像センサ18に通知する。この設置高さの情報は画像センサ18のリモコン送受信部36を経由して画像処理部32に伝送される。そして、画像処理部32は、画像センサ18の設置高さの情報に基づき、カメラ部30で撮影された撮影領域40の中で、予め定められた広さの実空間に対応する検知領域42を特定し、検知領域42の人の在否を判定する。具体的には、画像処理部32は、画像センサ18の設置高さに基づき、
図5の撮影領域40の中の検知領域42を特定(切り抜き)し、その検知領域42の人の在否を判定する。撮影領域40の中から検知領域42を切り抜く際には、カメラ部30のデジタルズーム機能を利用することができる。
【0020】
画像処理部32による検知領域42の人の在否の判定は第1〜第4ブロックB1−B4それぞれについて行う。この判定は例えばB1、B2、B3、B4の順に順次進み、その次のブロックの判定を行うタイミングは、判定結果を照明コントローラ12に伝送した後に行うようにしてもよいし、判定後伝送前に行うようにしてもよい。そして、画像処理部32はいずれかのブロックで人の存在を検知した場合はその情報を、通信部34を介して照明コントローラ12に伝送する。この判定情報を受信した照明コントローラ12は、人の存在を検知したブロックの照明器具14を点灯させる。例えば画像処理部32が特定した検知領域42のB1ブロックで人の存在を検知した場合、その判定情報が照明コントローラ12に伝送され、照明コントローラ12はB1ブロックの照明器具14を点灯する。一方、画像処理部32がブロックの人の不存在を判断した場合は、その判定情報が照明コントローラ12に伝送され、照明コントローラ12はそのブロックの照明器具14を消灯する。
【0021】
画像処理部32のハードウエア構成例としては、プログラムを保存したメモリと、そのメモリのプログラムを実行するCPU、システムLSI等の処理回路が挙げられる。複数の処理回路が連携して上記機能を実現してもよい。
【0022】
このように、画像センサ18は、画像センサ18の設置高さの情報に基づき、撮影領域40の一部、即ち予め定められた広さの実空間に対応する検知領域42として特定(切り抜き)し、その検知領域42の人の在否を判定するものである。これにより、画像センサ18の設置高さによらず、予め定められた範囲の実空間(検知領域)の人の在否を判定できる。
【0023】
図6は、画像センサの床面からの設置高さが2mの場合と5mの場合における撮影領域と検知領域を示す図である。
図6の画像センサ18のカメラ部30のレンズは通常のレンズであり広角レンズではない。画像センサ18の設置高さが5mの場合の撮影領域40(一点鎖線で示す)は、設置高さが2mの場合の撮影領域40(一点鎖線で示す)より大きくなる。検知領域42の広さは、画像センサ18の設置高さに係らず一定(7.2m×7.2m)であるから、画像センサ18の設置高さが高くなるほど、検知領域42として使用されない画素が多くなる。
【0024】
図7は、画像センサの床面からの設置高さが2mの場合と高さが4mの場合の撮影領域の広さ等を示す図である。画像センサ18の設置高さが2mの場合、画像センサ18は画像センサ18の設置高さの情報に基づき、撮影領域40(9.0m×9.0m)の中の検知領域42(7.2m×7.2m)を特定し、検知領域42の人の在否を判定する。画像センサ18の設置高さが4mの場合も同様に、画像センサ18は画像センサ18の設置高さの情報に基づき、撮影領域40(17m×17m)の中の検知領域42(7.2m×7.2m)を特定し、検知領域42の人の在否を判定する。したがって、画像センサ18の設置高さによらず、検知領域42の人の在否を判定できる。
【0025】
ところで、画像センサ18の設置高さが2mの場合は撮影領域40(9.0m×9.0m)と検知領域42(7.2m×7.2m)の面積差は小さいが、画像センサ18の設置高さが4mの場合は撮影領域40(17m×17m)と検知領域42(7.2m×7.2m)の面積差が大きい。そのため、画像センサ18の設置高さが2mの場合の検知領域42の解像度は433×433ピクセルなのに対し、画像センサ18の設置高さが4mの場合の検知領域42の解像度は216×216ピクセルと低下してしまう。設置高さ2mの場合と比較すると設置高さ4mの場合は、検知領域42を構成する1ブロックあたりの解像度も低下する。
【0026】
画像センサ18の設置高さが高くなるほど、1ブロックあたりの解像度が低下していき、人の在否判定が困難になる。つまり、画像処理部32がブロックごとに人の在否を判定することが困難になる。そこで、実施の形態1では、画像処理部32が、1つのブロックに少なくとも20×20ピクセルの画素が割り当てられるように、検知領域42を複数のブロックに分割する。1つのブロックに20×20ピクセルの画素が割り当てられていれば、人の在否を正確に判定できる。例えば検知領域42を16×16のブロック(計256のブロック)に分割する場合などには、1ブロック当たりの画素数が少なくなりがちなので、上記のように少なくとも20×20ピクセルの画素を確保することが重要である。
【0027】
画像センサ18の設置高さが高い場合は人が小さく撮影され、画像センサ18の設置高さが低い場合は人が相対的に大きく撮影される。そのため、画像センサ18の設置高さに応じて、人と認識するものの大きさを変化させることが好ましい。そこで、実施の形態1では、画像処理部32は、画像センサ18の設置高さの情報に基づき、画像センサ18の設置高さが高いときは人と認識するものの大きさを小さくし、画像センサ18の設置高さが低いときは人と認識するものの大きさを大きくして、人の在否を判定する。この動作は、画像センサ18の中のマイコンで実行する。これにより人の認識精度を高めることができる。
【0028】
テレビなどの表示装置には人が表示されることがあり、画像センサ18がその人を誤検出する場合がある。そこで、実施の形態1の画像処理部32は、検知領域42の任意の場所を、人の検知を行わないマスク領域に設定する機能を備える。この機能は、画像センサ18をマスクモード(マスク領域を設定するモード)にした上で表示装置が設置される場所で人が動くと、画像センサ18が自動で人の動きを検知し、人の動きを検知した場所をマスク領域に設定することで実現する。この機能はマイコンにより実現される。
【0029】
設計仕様上、ブロックの向きが指定されることがある。例えば
図3のように4つのブロックが規定された場合、第3、第4ブロックB3、B4を窓側(右側)に設け、第1、第2ブロックB1、B2を廊下側(左側)に設けるよう指定される場合がある。しかし、作業ミスにより、画像センサ18を設計仕様とは逆向きに固定してしまうと、第3、第4ブロックB3、B4が廊下側(左側)に設けられ、第1、第2ブロックB1、B2が窓側(右側)に設けられる。この場合、画像センサ18を取り外したり回転させたりすると天井の石膏ボード等にダメージを与えてしまう。
【0030】
そこで、実施の形態1では、複数のブロックにそれぞれIDを割り当て、作業者が任意にそのIDを修正できるように画像処理部32を構成した。作業者はリモコンを用いてブロックのIDを変更することで、間違った向きに取り付けられた画像センサを取り外したり回転させたりすることなく、ブロックの位置を設計仕様に一致させることができる。画像処理部32には上記機能を実現するプログラムが格納されている。
【0031】
上記の各機能を実現するハードウエアは典型的にはマイコンであるが、別の手段で実現してもよい。また、上記の各機能は適宜取捨選択してもよい。
【0032】
実施の形態1に係る画像センサ18と照明システムは様々な変形が可能である。作業者がリモコンを用いて画像センサ18に「設置高さの情報」を通知することとしたが、画像センサ18自身がメモリ等にこの情報を記憶しておいてもよい。また、検知領域42の広さは7.2m×7.2mを例示したが、特に限定されない。なお、一般的なオフィスにおける検知領域の広さは、3.6m×3.6m又は7.2m×7.2mであることが多い。また、検知領域42を床面に設定したが、例えば床上0.7mの高さに検知領域42を設定したり、床上1mの高さに検知領域42を設定したりしてもよい。この場合、人の座高の高さで人検知ができる。
【0033】
広角レンズを用いる場合、画像処理部32は、カメラ部30で撮影された画像の歪を補正する歪補正機能を備えることが望ましい。想定される最も低い画像センサ18の設置高さにおいて、撮影領域40の広さを検知領域42の広さ以上にできる場合、広角レンズに代えて非広角の通常のレンズを用いても良い。ただし、画像センサ18の設置高さが2mと低い場合に7.2m×7.2mの検知領域を確保するためには、
図4の画角θが130°以上は必要であるので、広角レンズを用いる。4:3の撮影領域40で撮影するカメラ部30の場合、レンズの角度は例えば長手方向185°、短手方向135°とする。
【0034】
カメラ部30の解像度は特に限定されない。例えばSVGA(800×600)の解像度を有するカメラを用いても良い。画像センサ18の設置高さが例えば10mと高い場合は、人検知の精度を高めるために、カメラ部30の解像度を高めることが好ましい。画像センサ18は、人の在否の検知に加えて、照度の検知を行う機能を持たせることが好ましい。
【0035】
図8は、ビル全体のシステムを示す図である。1つのフロア50に、設定器10、照明コントローラ12、照明器具14、照度機能付の画像センサ18、壁スイッチ20が設けられる。ビルのすべてのフロアの照明器具14等が、HUBを介して照明設備監視装置52及びビルオートメーションシステム(BAS)54による制御を受ける。このようなビルシステムに上記した画像センサ18を有する照明システムは好適に適用させることが可能である。
【0036】
これらの変形は以下の実施の形態に係る画像センサ18及び照明システムにも適宜応用できる。なお、以下の実施の形態に係る画像センサ18及び照明システムは実施の形態1との共通点が多いので実施の形態1との相違点を中心に説明する。
【0037】
実施の形態2.
実施の形態1では画像センサ18を検知領域42の中央に設けたが、レイアウトの都合上、部屋(検知領域42)の中央に画像センサ18を設けることができない場合がある。この場合、画像センサ設置位置と検知領域42の中央がずれることになる。
【0038】
図9は、実施の形態2に係る画像センサ18、撮影領域40、及び検知領域42を示す図である。検知領域42の中心P1からX方向に−2m、Y方向に2mだけ進んだ位置に画像センサ18が取り付けられている。実施の形態2では、作業者がリモコンを操作して、画像センサ18に対し、画像センサ18の設置位置と検知領域42の中心P1との位置ずれ量の情報を通知する。そして、その情報を受信した画像処理部32は、検知領域42の中心P1をセンサ設置位置から位置ずれ量だけシフトさせて、検知領域42を設定する。
【0039】
検知領域42の設定後、画像センサ18は、カメラ部30で撮影された撮影領域40の中で、予め定められた広さの実空間に対応する検知領域42を特定し、検知領域42の人の在否を判定する。位置ずれ量の情報に加えて、画像センサ18の設置高さの情報を得た場合は、その情報に基づき実施の形態1で説明した方法により検知領域42を特定してもよい。他方、画像センサ18の設置高さの情報がない場合は、画像センサ18の設置高さを固定として、検知領域42を特定しても良い。
【0040】
このように、実施の形態2に係る画像センサによれば、作業者が画像センサ18の設置位置と検知領域の中心P1との位置ずれ量の情報を画像センサ18に与えるだけで、画像センサ18が当該位置ずれを補正して所望の検知領域42を設定することができる。従って、画像センサ18の位置によらず、検知領域42の人の在否を判定できる。
【0041】
図10は、画像センサ18が照明器具14の中央部の設備プレートに設置されたことを示す平面図である。このように、画像センサ18と照明器具14が一体的に設けられた場合でも、上記の位置ずれ補正を施すことで、容易に検知領域42の人の在否を判定できる。
【0042】
図11は、通信フレームのフレームフォーマットを示す図である。
図11には、設定器10、照明コントローラ12、照明器具14、画像センサ18、及び壁スイッチ20の間で行われる様々な通信のフレームフォーマットが記載されている。コマンド名「センサ設置高設定」は、作業者が画像センサ18の設置高さの情報を画像センサ18に送る際に利用するコマンドである。このコマンドには、画像センサ18の番号(センサ番号)とその画像センサ18の設置高さ(設置高)が含まれる。コマンド名「センサ設置高モニタ」は、特定の画像センサ18の設置高さを画像センサ18のLED表示部38に表示させるコマンドである。コマンド名「センサ設置場所補正」は、作業者が上記の位置ずれ量の情報を画像センサ18に送る際に利用するコマンドである。このコマンドには、画像センサ18の番号(センサ番号)とその画像センサ18の設置位置と検知領域42の中心との位置ずれ量(X位置、Y位置)が含まれる。
【0043】
実施の形態3.
実施の形態3に係る画像センサ18は、複数のブロックにおける人の移動又は人の滞在を検知する。例えば、カメラ部30で取得した画像間の差分から人の移動を検知し、カメラ部30で検知した人が一定期間動かないことから人の滞在を検知する。なお、人の滞在とは、典型的には人が着席している状態のことをいう。
【0044】
そして、画像センサ18は、複数のブロックのうち、人の移動が検知されたブロックである移動ブロックの情報又は、人の滞在が検知されたブロックである滞在ブロックの情報又は人の不在が検知されたブロックである不在ブロックの情報を、照明コントローラ12へ伝達する。照明コントローラ12は、移動ブロックの情報を受信したときは、移動ブロックの照明器具14を点灯させ、滞在ブロックの情報を受信したときは、滞在ブロックの照明器具14を、移動ブロックの情報を受信したときよりも高い調光率で点灯させる。例えば300ルクスの照度を実現するように移動ブロックの照明器具14を点灯させ、500ルクスの照度を実現するように滞在ブロックの照明器具14を点灯させる。照明コントローラ12は、人の不在が検出されたブロックである不在ブロックの情報を受信したときは、その不在ブロックの照明器具14を消灯させる。
【0045】
このように移動ブロックよりも滞在ブロックの照度を高くすることで、人が移動している場合に人が移動している場所を高い照度にする無駄を回避しつつ、人が滞在(着席)している際には十分な照度を実現することができる。
【0046】
人が廊下などを移動しているときに、その人がいる場所の照明だけを点灯させると、歩行者は移動先を十分視認できない。そこで、照明コントローラ12は、移動ブロックの情報を受信したときは、人の移動方向を予測して、移動先のブロックの照明器具14を点灯させることが好ましい。
【0047】
ところで、照明器具14の点灯又は消灯による輝度変化があると、画像センサ18は人を誤検知することがあった。そのため、照明コントローラ12は、点灯又は消灯した照明器具14の属するブロックについて、点灯又は消灯があってから予め定められた期間、画像センサ18からの検知結果を無視することが好ましい。
【0048】
ここまでで説明した各実施の形態に係る画像センサと照明システムの特徴は、適宜に組み合わせて用いてもよい。