【実施例】
【0064】
  本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。本発明で用いた特性値は下記の方法を用いて評価した。なお、以下、重量平均分子量を単にMwと記載することがある。
【0065】
(1)基材フィルム厚み
  ミリトロン(電子マイクロインジケーター)を用い、測定すべきフィルムの任意の4箇所より5cm角サンプル4枚を切り取り、一枚あたり各5点(計20点)測定して平均値を厚みとした。
【0066】
(2)離型層厚み
  離型層の厚みは、光干渉式膜厚計(F20、フィルメトリクス社製)を用いて測定した。(離型層の屈折率は1.52として算出)
【0067】
(3)領域表面平均粗さ(Sa)、最大突起高さ(Rp)
  非接触表面形状計測システム(VertScan  R550H−M100、菱化システム社製)を用いて、下記の条件で測定した値である。領域表面平均粗さ(Sa)は、5回測定の平均値を採用し、最大突起高さ(Rp)は7回測定し最大値と最小値を除いた5回の最大値を使用した。
  (測定条件)
    ・測定モード:WAVEモード
    ・対物レンズ:50倍
    ・0.5×Tubeレンズ
  (解析条件)
    ・面補正:    4次補正
    ・補間処理:  完全補間
【0068】
(4)相分離構造による表面凹凸
  電子顕微鏡(VE−8800、キーエンス社製)を用いて、5000倍にて離型層表面を観察し、相分離構造による表面凹凸の程度を評価した。
○:相分離による凹凸構造が確認できる
×:相分離による凹凸構造が見られない
【0069】
(5)セラミックグリーンシートのハーフカット評価
  下記、材料からなる組成物を攪拌混合し、直径0.5mmのジルコニアビーズを分散媒とするビーズミルを用いて60分間分散し、セラミックスラリーを調製した。
  トルエン                                          76.3質量部
  エタノール                                        76.3質量部
  チタン酸バリウム(富士チタン社製  HPBT−1)  35.0質量部
  ポリビニルブチラール                                3.5質量部
  (積水化学工業社製  エスレック(登録商標)BM−S)
  DOP(フタル酸ジオクチル)                        1.8質量部
  次いで離型フィルムサンプルの離型面にアプリケーターを用いて乾燥後のセラミックグリーンシートが1.0μmになるように塗工し90℃で2分乾燥した。
  得られたセラミックグリーンシート付離型フィルムをロータリーダイカッター(R.D.C(FB)−A4、塚谷刄物製作所社製)を用い、セラミックグリーンシート面側から両刃50°にて16mm×32mm角、深さ3μmになるようハーフカットした。グリーンシートが剥離した部分について、フィルムの端部から剥離した部分までの距離をレーザー顕微鏡にて測定し、下記基準で判定した。測定は5回測定し平均値を採用した。
○:端部にクラック等の欠点がなく、剥離部が十分にあり(目安:剥離が達している距離が端部から4mm以上)
△:端部にクラック等の欠点がなく、剥離部が少しあり(目安:剥離が達している距離が端部から1mm以上、4mmより小さい)
×:端部にクラック等の欠点があるか、又は剥離部がない(目安:剥離が達している距離が端部から1mmより小さい)
【0070】
(6)水酸基価の測定
  エネルギー線硬化型化合物(I)の水酸基価は、以下の方法で測定した。共栓三角フラスコ中に試料約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解する。更にアセチル化剤(無水酢酸25gをピリジンで溶解し、容量100mlとした溶液)を正確に5ml加え、約1時間攪拌した。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間持続する。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.5Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定する。
  水酸基価は次式により求めた。水酸基価は樹脂の乾燥状態の数値とした(単位:mgKOH/g)。
水酸基価(mgKOH/g)=[{(b−a)×F×28.05}/S]/(不揮発分濃度/100)
S:試料の採取量(g)
a:0.5Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
b:空実験の0.5Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.5Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
【0071】
(ポリエチレンテレフタレートペレット(PET(1))の調製)
  エステル化反応装置として、攪拌装置、分縮器、原料仕込口及び生成物取出口を有する3段の完全混合槽よりなる連続エステル化反応装置を用いた。TPA(テレフタル酸)を2トン/時とし、EG(エチレングリコール)をTPA1モルに対して2モルとし、三酸化アンチモンを生成PETに対してSb原子が160ppmとなる量とし、これらのスラリーをエステル化反応装置の第1エステル化反応缶に連続供給し、常圧にて平均滞留時間4時間、255℃で反応させた。次いで、第1エステル化反応缶内の反応生成物を連続的に系外に取り出して第2エステル化反応缶に供給し、第2エステル化反応缶内に第1エステル化反応缶から留去されるEGを生成PETに対して8質量%供給し、さらに、生成PETに対してMg原子が65ppmとなる量の酢酸マグネシウム四水塩を含むEG溶液と、生成PETに対してP原子が40ppmのとなる量のTMPA(リン酸トリメチル)を含むEG溶液を添加し、常圧にて平均滞留時間1時間、260℃で反応させた。次いで、第2エステル化反応缶の反応生成物を連続的に系外に取り出して第3エステル化反応缶に供給し、高圧分散機(日本精機社製)を用いて39MPa(400kg/cm2)の圧力で平均処理回数5パスの分散処理をした平均粒子径が0.9μmの多孔質コロイダルシリカ0.2質量%と、ポリアクリル酸のアンモニウム塩を炭酸カルシウムあたり1質量%付着させた平均粒子径が0.6μmの合成炭酸カルシウム0.4質量%とを、それぞれ10%のEGスラリーとして添加しながら、常圧にて平均滞留時間0.5時間、260℃で反応させた。第3エステル化反応缶内で生成したエステル化反応生成物を3段の連続重縮合反応装置に連続的に供給して重縮合を行い、95%カット径が20μmのステンレススチール繊維を焼結したフィルターで濾過を行ってから、限外濾過を行って水中に押出し、冷却後にチップ状にカットして、固有粘度0.60dl/gのPETチップを得た(以後、PET(1)と略す)。PETチップ中の滑剤含有量は0.6質量%であった。
【0072】
(ポリエチレンテレフタレートペレット(PET(2))の調製)
  一方、上記PETチップの製造において、炭酸カルシウム、シリカ等の粒子を全く含有しない固有粘度0.62dl/gのPETチップを得た(以後、PET(2)と略す。)
【0073】
(積層フィルムX1の製造)
  これらのPETチップを乾燥後、285℃で溶融し、別個の溶融押出し機押出機により290℃で溶融し、95%カット径が15μmのステンレススチール繊維を焼結したフィルターと、95%カット径が15μmのステンレススチール粒子を焼結したフィルターの2段の濾過を行って、フィードブロック内で合流して、PET(1)を表面層B(反離型面側層)、PET(2)を表面層A(離型面側層)となるように積層し、シート状に45m/分のスピードで押出(キャスティング)し、静電密着法により30℃のキャスティングドラム上に静電密着・冷却させ、固有粘度が0.59dl/gの未延伸ポリエチレンテレフタレートシートを得た。層比率は各押出機の吐出量計算でPET(1)/(2)=60%/40%となるように調整した。次いで、この未延伸シートを赤外線ヒーターで加熱した後、ロール温度80℃でロール間のスピード差により縦方向に3.5倍延伸した。その後、テンターに導き、140℃で横方向に4.2倍の延伸を行なった。次いで、熱固定ゾーンにおいて、210℃で熱処理した。その後、横方向に170℃で2.3%の緩和処理をして、厚さ31μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムX1を得た。得られたフィルムX1の表面層AのSaは2nm、表面層BのSaは29nmであった。
【0074】
(実施例1)
  積層フィルムX1の表面層A上に以下組成の塗布液1をリバースグラビアを用いて乾燥後の離型層膜厚が2.5μmになるように塗工し、90℃で30秒乾燥後、高圧水銀ランプを用いて200mJ/cm
2となるように紫外線を照射することで超薄層セラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。得られた離型フィルムについて、離型層厚み、領域表面平均粗さSa、最大突起高さRp、相分離構造による表面凹凸、セラミックグリーンシートのハーフカット時の剥離きっかけの評価を行った。
(塗布液1)  
    化合物(I)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
                                                100.00質量部    
    (新中村化学工業社製NKエステル(登録商標)A−DPH、水酸基価10mgKOH/g、6官能アクリレート、固形分濃度100%)        
    樹脂(II)  ポリエステル樹脂                    9.45質量部
    (東洋紡社製バイロン(登録商標)RV280、固形分濃度100質量%)
    離型剤(III)                                    1.26質量部
    (アクリロイル基を有する変性ポリジメチルシロキサン、BYK−UV3505、ビックケミージャパン社製、固形分濃度40質量%)
    光重合開始剤                                    5.25質量部  
    (OMNIRAD(登録商標)907、IGM Japan GK社製、固形分濃度100質量%)
    希釈溶剤(MEK/トルエン=1/1)        431.30質量部
【0075】
(実施例2)
  化合物(I)の水酸基価を実施例1に比べ増加させた、下記塗布液2を使用した。塗布液2を用いた点を除いては、実施例1と同様にして、離型フィルムを得た。得られた離型フィルムについて、離型層厚み、領域表面平均粗さSa、最大突起高さRp、相分離構造による表面凹凸、セラミックグリーンシートのハーフカット時の剥離きっかけの評価を行った。
(塗布液2)
    化合物(I)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
                                                100.00質量部    
    (東亞合成社製アロニックス(登録商標)M−402、水酸基価30mgKOH/g、6官能アクリレート、固形分濃度100%)        
    樹脂(II)  ポリエステル樹脂                    9.45質量部
    (東洋紡社製バイロン(登録商標)RV280、固形分濃度100質量%)
    離型剤(III)                                    1.26質量部
    (アクリロイル基を有する変性ポリジメチルシロキサン、BYK−UV3505、ビックケミージャパン社製、固形分濃度40質量%)
    光重合開始剤                                    5.25質量部
    (OMNIRAD(登録商標)907、IGM Japan GK社製、固形分濃度100質量%)
    希釈溶剤(MEK/トルエン=1/1)        431.30質量部
【0076】
(実施例3)
  実施例1と比べ、樹脂(II)をポリエステルウレタン樹脂(東洋紡社製バイロン(登録商標)UR1400、固形分濃度30質量%)に変更し、下記塗布液3を使用した。塗布液3の固形分濃度は実施例1の塗布液1に比べ減少させた。乾燥後の離型層膜厚が1.3μmになるように塗工した。塗布液3を用いた点と、乾燥後の離型層膜厚が1.3μmになるように塗工した点を除いては、実施例1と同様にして、離型フィルムを得た。得られた離型フィルムについて、離型層厚み、領域表面平均粗さSa、最大突起高さRp、相分離構造による表面凹凸、セラミックグリーンシートのハーフカット時の剥離きっかけの評価を行った。
(塗布液3)  
    化合物(I)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
                                                100.00質量部
    (新中村化学工業社製NKエステル(登録商標)A−DPH、水酸基価10mgKOH/g、6官能アクリレート、固形分濃度100%)
    樹脂(II)  ポリエステルウレタン樹脂          52.60質量部
    (東洋紡社製バイロン(登録商標)UR1400、固形分濃度30質量%)
    離型剤(III)                                   1.33質量部
    (アクリロイル基を有する変性ポリジメチルシロキサン、BYK−UV3505、ビックケミージャパン社製、固形分濃度40質量%)
    光重合開始剤                                    5.56質量部
    (OMNIRAD(登録商標)907、IGM Japan GK社製、固形分濃度100質量%)
    希釈溶剤(MEK/トルエン=1/1)        998.32質量部
【0077】
(実施例4)
  化合物(I)の水酸基価を実施例3に比べ増加させた、下記塗布液4を使用した。塗布液4を用いた点を除いては、実施例1と同様にして、離型フィルムを得た。得られた離型フィルムについて、離型層厚み、領域表面平均粗さSa、最大突起高さRp、相分離構造による表面凹凸、セラミックグリーンシートのハーフカット時の剥離きっかけの評価を行った。
(塗布液4)  
    化合物(I)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
                                                100.00質量部    
    (東亞合成社製アロニックス(登録商標)M−402、水酸基価30mgKOH/g、6官能アクリレート、固形分濃度100%)
    樹脂(II)  ポリエステルウレタン樹脂          52.60質量部
    (東洋紡社製バイロン(登録商標)UR1400、固形分濃度30質量%)
    離型剤(III)                                    1.33質量部
    (アクリロイル基を有する変性ポリジメチルシロキサン、BYK−UV3505、ビックケミージャパン社製、固形分濃度40質量%)
    光重合開始剤                                    5.56質量部
    (OMNIRAD(登録商標)907、IGM Japan GK社製、固形分濃度100質量%)
    希釈溶剤(MEK/トルエン=1/1)        998.32質量部
【0078】
(実施例5)
  離型剤(III)の種類を変更した、下記塗布液5を使用した。塗布液5を用いた点を除いては、実施例2と同様にして、離型フィルムを得た。得られた離型フィルムについて、離型層厚み、領域表面平均粗さSa、最大突起高さRp、相分離構造による表面凹凸、セラミックグリーンシートのハーフカット時の剥離きっかけの評価を行った。
(塗布液5)  
    化合物(I)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
                                              100.00質量部        (東亞合成社製アロニックス(登録商標)M−402、水酸基価30mgKOH/g、6官能アクリレート、固形分濃度100%)        
    樹脂(II)  ポリエステル樹脂                    9.45質量部
    (東洋紡社製バイロン(登録商標)RV280、固形分濃度100質量%)
    離型剤(III)                                    0.50質量部
    (ポリエーテル変性シロキサン、TSF4446、モメンティブ社製、固形分濃100質量%)
    光重合開始剤                                    5.25質量部
    (OMNIRAD(登録商標)907、IGM Japan GK社製、固形分濃度100質量%)
    希釈溶剤(MEK/トルエン=1/1)          432.06質量部    
【0079】
(実施例6)
  離型剤(III)の種類を変更した、下記塗布液6を使用した。塗布液6を用いた点を除いては、実施例1と同様にして、離型フィルムを得た。得られた離型フィルムについて、離型層厚み、領域表面平均粗さSa、最大突起高さRp、相分離構造による表面凹凸、セラミックグリーンシートのハーフカット時の剥離きっかけの評価を行った。
(塗布液6)  
    化合物(I)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
                                              100.00質量部    
    (新中村化学工業社製NKエステル(登録商標)A−DPH、水酸基価10mgKOH/g、6官能アクリレート、固形分濃度100%)        
    樹脂(II)  ポリエステル樹脂                    9.45質量部
    (東洋紡社製バイロン(登録商標)RV280、固形分濃度100質量%)
    離型剤(III)                                    1.26質量部
    (アクリロイル基を有するフッ素系添加剤、メガファック(登録商標)RS−75、DIC社製、固形分濃度40質量%)
    光重合開始剤                                    5.25質量部
    (OMNIRAD(登録商標)907、IGM Japan GK社製、固形分濃度100質量%)
    希釈溶剤(MEK/トルエン=1/1)        431.30質量部
【0080】
(比較例1)
  実施例2に比べて、化合物(I)の水酸基価を増加させた、下記塗布液7を使用した。塗布液7を用いた点を除いては、実施例1と同様にして、離型フィルムを得た。得られた離型フィルムについて、離型層厚み、領域表面平均粗さSa、最大突起高さRp、相分離構造による表面凹凸、セラミックグリーンシートのハーフカット時の剥離きっかけの評価を行った。
(塗布液7)  
    化合物(I)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
                                                100.00質量部    
    (新中村化学工業社製NKエステル(登録商標)A−9550、水酸基価50mgKOH/g、6官能アクリレート、固形分濃度100%)        
    樹脂(II)  ポリエステル樹脂                    9.45質量部
    (東洋紡社製バイロン(登録商標)RV280、固形分濃度100質量%)
    離型剤(III)                                    1.26質量部
    (アクリロイル基を有する変性ポリジメチルシロキサン、BYK−UV3505、ビックケミージャパン社製、固形分濃度40質量%)
    光重合開始剤                                    5.25質量部
    (OMNIRAD(登録商標)907、IGM Japan GK社製、固形分濃度100質量%)
    希釈溶剤(MEK/トルエン=1/1)        431.30質量部
【0081】
(比較例2)
  実施例4に比べて、化合物(I)の水酸基価を増加させた、下記塗布液8を使用した。塗布液8を用いた点を除いては、実施例1と同様にして、離型フィルムを得た。得られた離型フィルムについて、離型層厚み、領域表面平均粗さSa最大突起高さRp、相分離構造による表面凹凸、セラミックグリーンシートのハーフカット時の剥離きっかけの評価を行った。
(塗布液8)  
    化合物(I)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
                                                100.00質量部    
    (新中村化学工業社製NKエステル(登録商標)A−9550、水酸基価50mgKOH/g、6官能アクリレート、固形分濃度100%)        
    樹脂(II)  ポリエステルウレタン樹脂          52.60質量部
    (東洋紡社製バイロン(登録商標)UR1400、固形分濃度30質量%)
    離型剤(III)                                    1.33質量部
    (アクリロイル基を有する変性ポリジメチルシロキサン、BYK−UV3505、ビックケミージャパン社製、固形分濃度40質量%)
    光重合開始剤                                    5.56質量部
    (OMNIRAD(登録商標)907、IGM Japan GK社製、固形分濃度100質量%)
    希釈溶剤(MEK/トルエン=1/1)        998.32質量部
【0082】
  相分離構造による離型層表面凹凸の状態評価に使用した実施例1〜4、比較例1及び2の離型層表面の電子顕微鏡写真を
図1〜6に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】