(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明し、本発明の理解に供する。尚、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0022】
本発明の実施形態に係る測量システム1(測量装置とも称する)は、基本的に、測量機10と、測量機用端末装置11と、サーバ12と、ネットワーク13と、を備える。測量機10と、測量機用端末装置11とは、例えば、測量者に搬送され、測量現場に持ち込まれる。測量現場には、建築物14(例えば、柱)の測量対象14a(例えば、柱頭)に二次元マーク15が設置される。
【0023】
又、測量システム1は、更に、事務所用端末装置16と、管理者用端末装置17とを備えても良い。事務所用端末装置16は、事務所、工場等の拠点に設けられる。管理者用端末装置17は、例えば、管理者に携帯され、測量現場に持ち込まれる。
【0024】
測量機10は、一般に建設現場や土木現場で使用され、自動視準と自動追尾とを可能とする。測量機用端末装置11は、一般に使用されるコンピュータであり、例えば、小型コンピュータを含み、測量機10に外付けで接続されたり、測量機10に組み込まれて内蔵されたりする。測量機用端末装置11は、測量者からの指示に基づいて測量機10の動作を制御する。又、測量機用端末装置11は、ネットワーク13を介して、サーバ12からの情報を取得したり、測量機10からの測量結果をサーバ12に送信したりする。
【0025】
測量機10は、本体部100と、(視準)望遠鏡101とを備えている。本体部100は、水平方向に回転可能に構成される。望遠鏡101は、本体部100に対して鉛直方向に回転可能に設けられる。そのため、望遠鏡101は、測量機10に対して水平方向及び鉛直方向に回転可能である。
【0026】
望遠鏡101は、デジタルカメラの機能を有し、望遠鏡の観測方向(光軸の方向)にある対象物の画像を撮影することが出来る。デジタルカメラは、望遠鏡101のレンズの光軸に平行に設置された受光素子(例えば、CCDイメージ素子、CMOSイメージ素子)を備え、受光素子の撮影画像の中心は、望遠鏡の光軸と一致するため、デジタルカメラで撮影した撮影画像の十字線の中心位置は、望遠鏡が視準して測距した対象物の表面の測定位置と一致する。
【0027】
二次元マーク15は、一意に識別可能な識別パターンを有している。識別パターンの構成に特に限定は無いが、例えば、二次元マーク15が正方形である場合、識別パターンは、縦の長さを所定の数に均等に分割し、横の長さを所定の数に分割することで複数の升目を形成し、当該複数の升目を白又は黒で着色することで得られたパターンであり、一意に識別可能に構成している。尚、二次元マーク15の形態に特に限定は無く、例えば、印刷物、シール、ラベル等であっても良いし、建築物14の測量対象14aに直接印刷されたり3D印刷されたりしても構わない。又、二次元マーク15の形状に特に限定は無く、例えば、正方形、長方形、円形、楕円形等を挙げることが出来る。
【0028】
測量機10の望遠鏡101の視準が二次元マーク15の中心位置に合わされ、測定命令が測量機10に入力されると、測量機10は、望遠鏡101から二次元マーク15の中心位置に対して走査光を照射し、その走査光が二次元マーク15のマーク中心位置から反射され、再び望遠鏡101に入射される。入射された反射光は、測量機10の受光素子により受光信号に変換される。測量機10は、望遠鏡101の水平角度及び鉛直角度を角度検出器で検出する。そして、測量機10の光波距離計は、受光信号を用いて、測量機10から二次元マーク15のマーク中心位置までの斜距離を計測する。光波距離計は、反射プリズム及びターゲットシートを用いる所定のモードと、ターゲットシート及びプリズムを用いないノンプリズムモードとを有するが、本発明では、ノンプリズムモードを基本とする。測量機10の本体部100(計側部)は、検出した望遠鏡101の水平角度及び鉛直角度と、計測した斜距離とに基づいて、二次元マーク15のマーク中心位置の座標(3次元座標値)を測定値として計測する。この二次元マーク15のマーク中心位置の座標は、例えば、測量機10の機械点の座標を基準として算出される。
【0029】
サーバ12は、一般に使用されるコンピュータであり、測量機用端末装置11からの情報を記憶媒体に蓄積したり、記憶媒体から情報を出力したりする。又、サーバ12は、ネットワーク13を介して、事務所用端末装置16と、管理者用端末装置17とに通信可能に接続され、事務所用端末装置16と、管理者用端末装置17とに対して情報の取得や出力を行う。
【0030】
ネットワーク13は、測量機用端末装置11と、サーバ12と、事務所用端末装置16と、管理者用端末装置17とのそれぞれに通信可能に接続される。ネットワーク13は、Wifi(登録商標)アクセスポイントを介したLAN(Local Area Network)の他、無線基地局を介したWAN(Wide Area Network)、第3世代(3G)の通信方式、LTEなどの第4世代(4G)の通信方式、第5世代(5G)以降の通信方式、Bluetooth(登録商標)、特定小電力無線方式等の無線通信ネットワークを含む。
【0031】
事務所用端末装置16と、管理者用端末装置17とは、一般に使用されるコンピュータであり、例えば、ディスクトップ型端末装置、タッチパネル付きの携帯端末装置、タブレット型端末装置、ウェアラブル型端末装置を含む。事務所用端末装置16は、事務所や工場等の第三者が操作し、ネットワーク13を介してサーバ12にアクセスし、サーバ12のデータを読み取り、事務所用端末装置16で表示する。管理者用端末装置17も同様である。
【0032】
尚、測量機用端末装置11と、サーバ12と、事務所用端末装置16と、管理者用端末装置17とは、指示を入力するための入力部と、情報を蓄積するための記憶部と、情報を表示するための表示部と、を備えている。測量機10と、測量機用端末装置11と、サーバ12と、事務所用端末装置16と、管理者用端末装置17とは、図示しないCPU、ROM、RAM等を内蔵しており、CPUは、例えば、RAMを作業領域として利用し、ROM等に記憶されているプログラムを実行する。後述する各部についても、CPUがプログラムを実行することで各部の機能を実現する。
【0033】
次に、
図2−
図10を参照しながら、本発明の実施形態に係る構成及び実行手順について説明する。先ず、測量者、管理者等の使用者は、事務所、工場等の拠点の事務所用端末装置16を用いて、測量用の二次元マーク15の生成の命令を指示すると、事務所用端末装置16の生成制御部201は、二次元マーク15を生成させる(
図3:S101)。
【0034】
生成制御部201の生成方法に特に限定は無い。例えば、
図4Aに示すように、生成制御部201は、使用者の指示に基づいて、二次元マーク15用の辞書を用いて、特定の識別パターンPを有する二次元マーク15を生成させる。二次元マーク15は、例えば、正方形で構成される。又、二次元マーク15の識別パターンPは、例えば、縦の長さを6個に均等に分割し、横の長さを6個に分割することで複数の升目を形成し、当該複数の升目を白又は黒で着色することで得られたパターンであり、一意に識別可能に構成している。
【0035】
さて、二次元マーク15の生成が完了し、使用者は、所定の測量情報{例えば、設定値(x0、y0、z0)}を入力すると、事務所用端末装置16の関連制御部202は、生成された二次元マーク15に当該測量情報を関連付けて記憶させる(
図3:S102)。
【0036】
ここで、測量情報とは、二次元マーク15を用いて測量する場合に必要な情報を意味し、少なくとも測量結果に関係する設定値を含む。例えば、二次元マーク15が柱14の柱頭14aに設置される場合は、測量情報は、設定値の他に、現場名、通り名、節、管理値等の柱に関係する情報を挙げることが出来る。又、測量情報は、柱14の製造に関する情報(製造者、製造年月日等)を含んでも良い。建築物14や測量対象14aの種類が異なれば、測量情報は適宜設計される。
【0037】
関連制御部202の関連付け方法に特に限定は無い。例えば、
図4Aに示すように、関連制御部202は、ネットワーク13を介して、サーバ12にアクセスし、サーバ12のマーク情報テーブル400を参照する。マーク情報テーブル400には、二次元マーク項目401と、測量情報項目402とが関連付けてデータベースとして記憶されている。
【0038】
そこで、関連制御部202は、マーク情報テーブル400の二次元マーク項目401に、先ほど生成された二次元マーク15を記憶させるとともに、マーク情報テーブル400の測量情報項目402に、先ほど入力された測量情報403{設定値(x0、y0、z0)}を記憶させる。これにより、二次元マーク15に測量情報403を関連付けることが可能となる。
【0039】
さて、測量情報403の関連付けが完了し、使用者は、二次元マーク15を建築物14(例えば、柱)の測量対象14a(例えば、柱頭)に設置する(
図3:S103)。
【0040】
ここで、二次元マーク15の設置方法に特に限定は無い。例えば、測量現場において、二次元マーク15を測量現場の柱14の柱頭14aに設置する場合、
図4Bに示すように、使用者が、二次元マーク15を測量現場に持って行き、既に存在する柱14の柱頭14aに貼り付けることで、二次元マーク15を設置することが出来る。又、例えば、柱14の製造工場において、二次元マーク15を柱14の柱頭14aに設置する場合、二次元マーク15を貼付するためのロボット404が、サーバ12又は事務所用端末装置16から二次元マーク15を取得し、製造ラインで製造された柱14の柱頭14aに二次元マーク15を自動的に貼付することで、二次元マーク15を設置することが出来る。その他に、ロボット404が、3Dプリンタで3D印刷可能な場合は、柱14の柱頭14aに二次元マーク15を自動的に3D印刷しても構わない。もちろん、柱14の製造工場において、使用者が、柱14の柱頭14aに二次元マーク15を直接貼付しても構わない。
【0041】
尚、測量対象が複数存在する場合は、S101に戻って、S101からS103までの処理を繰り返す。
【0042】
さて、測量現場において、柱14の柱頭14aに二次元マーク15が設置されたり、柱14の製造工場から測量現場に搬送された柱14が所定の位置に設置され、柱14の柱頭14aに二次元マーク15が設置されたりすると、測量の準備が整う。
【0043】
そこで、測量者は、測量機用端末装置11を有する測量機10を測量現場に搬送し、
図5Aに示すように、柱14の柱頭14aに設置された二次元マーク15が見える場所に測量機10を設置する。そして、測量者は、測量機10の機械点の測定のために測量機10を操作すると、測量機10は、機械点Mの座標(xm、ym、zm)を測定する(
図3:S201)。
【0044】
機械点Mの座標(xm、ym、zm)の測定方法に特に限定は無い。例えば、測量機10の設置場所において、測量者が、2つの既知点をそれぞれ視準、測距し、測量機10が、測量機10を中心とする2点の既知点のそれぞれの距離と方位角とに基づいて、測量機10の機械点Mの座標(xm、ym、zm)を測定する。他の公知の方法を用いても良い。測量機10の機械点Mの座標(xm、ym、zm)を測定することにより、後述する二次元マーク15のマーク中心位置の座標を測量機10の機械点Mの座標(xm、ym、zm)を基準として算出することが出来る。
【0045】
さて、機械点Mの座標(xm、ym、zm)の測定が完了すると、測量者は、測量機用端末装置11を操作して、測量機10の望遠鏡101を柱14の柱頭14aの二次元マーク15に自動又は手動で向け、撮影の命令を測量機用端末装置11に指示する。すると、測量機用端末装置11の測量機用撮影制御部203は、測量機10の望遠鏡101を用いて、柱14の柱頭14aの二次元マーク15を含む撮影画像を撮影する(
図3:S202)。
【0046】
測量機用撮影制御部203の撮影方法に特に限定は無い。例えば、
図5Aに示すように、測量者が、望遠鏡101又は測量機用端末装置11で柱14の柱頭14aを見ながら、測量機用端末装置11を操作して、二次元マーク15を含む柱頭14aの近傍を視準する。すると、測量機用撮影制御部203は、望遠鏡101で見える撮影画像を撮影する。
【0047】
測量者は、望遠鏡101で二次元マーク15を含む柱頭14aの近傍を見ながら、
図5Bに示すように、測量機用端末装置11を操作して、撮影画像500において、撮影画像500の中心位置(光軸、焦点)を示す十字線の中心位置Cを二次元マーク15に向けて移動させる。すると、測量機用撮影制御部203は、望遠鏡101の向きの移動に伴い、望遠鏡101で見える撮影画像500を撮影する。尚、撮影画像500の撮影の際に、撮影画像500内に写る二次元マーク15にピントを合わせるフォーカス処理を適宜行っても構わない。
【0048】
測量機用撮影制御部203が撮影画像の撮影を開始すると、測量機用端末装置11の測量機用認識制御部204は、撮影画像のうち、二次元マーク15に対応する二次元マーク画像の撮影パターンと、データベース(マーク情報テーブル400)の二次元マーク15の識別パターンとを照合することで、撮影パターンに対応する特定の識別パターンを認識する(
図3:S203)。
【0049】
測量機用認識制御部204の認識方法に特に限定は無い。例えば、
図5Bに示すように、測量機用認識制御部204は、撮影画像500のうち、二次元マーク画像501を検出して、当該二次元マーク画像501を抽出する。ここで、測量機用認識制御部204が二次元マーク画像501を検出し、抽出する際に、撮影画像500に、二値化処理等の画像処理を行って、二次元マーク画像501の検出・抽出を容易にしても良い。次に、測量機用認識制御部204は、マーク情報テーブル400の二次元マーク項目401の二次元マーク15を参照し、抽出した二次元マーク画像501の撮影パターンQと、参照した二次元マーク15の識別パターンPとを比較して、両者が一致しているか否かを判定する。
【0050】
ここで、撮影パターンQと識別パターンPとが一致しているか否かの判定は、例えば、撮影パターンQを構成する升目の色の配置が、識別パターンPを構成する升目の色の配置と一致しているか否かを判定することでなされる。具体的には、
図5Bに示すように、二次元マーク15の識別パターンPが、縦の長さを6個に均等に分割し、横の長さを6個に分割しているため、測量機用認識制御部204は、二次元マーク画像501の撮影パターンQの縦の長さを6個に均等に分割し、横の長さを6個に分割し、当該分割により形成される複数の升目qの色を白又は黒に分類する。ここで、升目pの色の分類は、例えば、画像の二値化処理等の画像処理を施すことで、分類し易くしても構わない。そして、測量機用認識制御部204は、撮影パターンQの升目qの色の配置を、識別パターンPの升目pの色の配置と比較して、撮影パターンQの升目qの色の配置と一致する升目pの色の配置の識別パターンPを認識(特定)する。
【0051】
又、二次元マーク15に対して測量機10が正対に位置する場合は、二次元マーク15に対応する二次元マーク画像501は正方形に表れる。この場合、測量機用認識制御部204は、正方形の二次元マーク画像501の撮影パターンQをマーク情報テーブル400の二次元マーク15の識別パターンPと比較することで、マーク情報テーブル400から一致する識別パターンPを認識する(
図3:S203YES)。
【0052】
又、二次元マーク15に対して測量機10が斜めに位置する場合は、撮影画像502のうち、二次元マーク15に対応する二次元マーク画像503はひし形に変形して表れる。この場合、二次元マーク画像503が多少変形しているものの、各升目qの色の配置を特定し、二次元マーク画像601の撮影パターンQが、どの識別パターンPであるか認識することが出来る。そのため、測量機用認識制御部204は、ひし形の二次元マーク画像503の撮影パターンQをマーク情報テーブル400の二次元マーク15の識別パターンPと比較することで、マーク情報テーブル400から一致する識別パターンPを認識する(
図3:S203YES)。このように、測量機10が二次元マーク15に対して斜めの位置に存在する場合であっても、二次元マーク15を検出して認識することが出来る。又、柱14の柱頭14aの近傍に光反射物が存在したとしても、反射光に基づいて二次元マーク15を特定する訳では無いため、二次元マーク15を適切に認識することが出来る。
【0053】
一方、
図6Aに示すように、二次元マーク15に対して測量機10が急傾斜に位置する場合は、二次元マーク15に対応する二次元マーク画像601は大きく変形したひし形として表れる。この場合、測量機用認識制御部204は、二次元マーク画像601を検出することが出来たとしても、二次元マーク画像601が変形し過ぎており、各升目qが潰れたり重なったりして、各升目qの色の配置を特定することが出来ず、二次元マーク画像601の撮影パターンQが、どの識別パターンPであるか認識することが出来ない。つまり、測量機用認識制御部204は、大きく変形したひし形の二次元マーク画像601の撮影パターンQをマーク情報テーブル400の二次元マーク15の識別パターンPと比較したとしても、マーク情報テーブル400から一致する識別パターンPを認識することは出来ない(
図3:S203NO)。この場合、測量機用認識制御部204は、
図6Aに示すように、撮影画像600に、測量機10の移動を促すエラー602(例えば、「エラー 認識できません。場所を変えてください。」)を表示させる(
図3:S204)。これにより、二次元マーク15を認識出来ないような測量機10の設置位置が不適切である場合は、測量者にその旨を伝えて、測量機10の設置位置が適切になるように測量機10の再設置を促すことが出来る。この場合は、S201に戻って、処理をやり直す。
【0054】
さて、特定の識別パターンPの認識が完了すると、測量機用端末装置11の測量機用情報表示制御部205は、特定の識別パターンPに関連付けられた、柱14の柱頭14aの設定値を含む測量情報を撮影画像603に表示させる(
図3:S205)。
【0055】
測量機用情報表示制御部205の表示方法に特に限定は無い。例えば、測量機用情報表示制御部205は、サーバ12にアクセスし、マーク情報テーブル400の測量情報項目402のうち、認識した特定の識別パターンPを有する二次元マーク15に関連付けられた測量情報403{設定値(x0、y0、z0)等}を取得し、
図6Bに示すように、撮影画像603に表示させる。これにより、測量者は、撮影画面603を介して、二次元マーク15が設置された柱14の柱頭14aの測量情報403を容易に把握することが可能となる。又、測量情報403が撮影画面603に表示されることで、測量者が、測量対象を再度確認することが可能となり、測量者の間違いや勘違い等の人的ミスを防止することが出来る。
【0056】
さて、測量情報403の表示が完了すると、測量機用端末装置11の算出制御部206は、撮影画像603内の二次元マーク画像604のマーク中心位置Cmと、望遠鏡101の撮影画像603の十字線の中心位置Cとの差分(dix、diy)を算出する(
図3:S206)。
【0057】
算出制御部206の算出方法に特に限定は無い。例えば、
図6Bに示すように、撮影画像603は、撮影画像603の所定の位置(例えば、左下の隅)を原点とし、縦方向をy軸とし、横方向をx軸とするカメラ座標系(二次元座標系)を構成している。そこで、算出制御部206は、撮影画像603における二次元マーク画像604の四隅aの座標をそれぞれ取得し、二次元マーク画像604の四隅aの座標の平均値を算出することによって、二次元マーク画像604のマーク中心位置Cmの座標を算出する。ここで、二次元マーク画像604が正方形等の四角形の場合、二次元マーク画像604の四隅aの座標の平均値が二次元マーク画像604のマーク中心位置Cmの座標に対応するが、算出制御部206が二次元マーク画像604のマーク中心位置Cmの座標を算出する方法に特に限定は無く、二次元マーク画像604の形状に応じて、他の方法を用いても構わない。
【0058】
又、柱14が角柱である場合は、撮影画像603における二次元マーク画像604に歪は生じにくいが、柱14が円柱である場合は、二次元マーク画像604に歪が生じやすい。その場合、算出制御部206は、撮影画像603における二次元マーク画像604にオルソ補正処理を行うことで、当該二次元マーク画像604の歪を補正し、補正後の二次元マーク画像604の四隅aの座標をそれぞれ取得し、二次元マーク画像604の四隅aの座標の平均値を算出することによって、二次元マーク画像604のマーク中心位置Cmの座標を算出すれば良い。
【0059】
そして、算出制御部206は、撮影画像603の十字線の中心位置Cの座標を取得し、二次元マーク画像604のマーク中心位置Cmの座標を、十字線の中心位置Cの座標を減算することで、マーク中心位置Cmと十字線の中心位置Cとの差分(dix、diy)を算出する。
【0060】
さて、差分(dix、diy)の算出が完了すると、測量機用端末装置11の調整制御部207は、差分(dix、diy)に基づいて、十字線の中心位置Cをマーク中心位置Cmに合わせるように、望遠鏡101の向きを調整する(
図3:S207)。
【0061】
調整制御部207の調整方法に特に限定は無い。例えば、
図7Aに示すように、調整制御部207は、撮影画像603に、十字線の中心位置Cからマーク中心位置Cmに合わせるための誘導表示を表示させる。具体的には、調整制御部207は、撮影画像603に、十字線の中心位置Cからマーク中心位置Cmに向かう矢印マーク700を表示するとともに、十字線の中心位置Cをマーク中心位置Cmに合わせることを促すメッセージ701(例えば、「十字線の中心位置をマーク中心位置に合わせてください。」)を表示させる。これにより、測量者に、望遠鏡101の向きを適切な方向に誘導することが出来る。
【0062】
又、調整制御部207は、撮影画像603に、差分(dix、diy)を表示させるとともに、望遠鏡101の向きの調整に伴い、十字線の中心位置Cが移動すると、その度に、調整制御部207は、マーク中心位置Cmと十字線の中心位置Cとの差分(dix、diy)を算出させて表示させる。これにより、測量者に、差分(dix、diy)を見ながら望遠鏡101の向きを二次元マーク15に合わせることが可能となる。
【0063】
ここで、測量者が望遠鏡101の向きを移動させる度に、調整制御部207は、差分(dix、diy)が所定の閾値の範囲内であるか否かを判定する。閾値は、例えば、測量者、管理者等により予め設定されている。差分(dix、diy)が閾値の範囲外である場合、調整制御部207は、矢印マーク700やメッセージ701等の誘導表示を行うことで、測量者に望遠鏡101の向きの調整を促すことが出来る。
【0064】
一方、測量者が望遠鏡101の向きを調整して、十字線の中心位置Cがマーク中心位置Cmに近接し、差分(dix、diy)が閾値の範囲内になったとする。すると、調整制御部207は、差分diが閾値の範囲内であると判定し、
図7Aに示すように、測距を促すメッセージ702(例えば、「測距してください。」)を表示させる。これにより、二次元マーク15への視準を容易に行い、且つ、精度高く視準を行うことが可能となる。又、測量者に測距のタイミングを適切に知らせることが可能となる。
【0065】
尚、上述では、調整制御部207が、上述の誘導表示を行うことで、測量者の手動により望遠鏡101の向きを調整したが、他の構成であっても構わない。例えば、調整制御部207が、差分(dix、diy)に基づいて、望遠鏡101を水平方向及び鉛直方向に操作し、十字線の中心位置Cをマーク中心位置Cmに合わせるように、望遠鏡101の向きを自動的に調整するよう構成しても良い。これにより、測量者による望遠鏡101の向き調整を不要とし、測量者は、十字線の中心位置Cがマーク中心位置Cmに一致するかどうかを確認するだけで済み、測量者の手間や時間を削減することが可能となる。又、測量者の技量により、視準に対する人的誤差が生じ難くすることが可能となる。
【0066】
さて、望遠鏡101の向きの調整が完了すると、測量機用端末装置11の測距制御部208は、測量機10を用いて、十字線の中心位置Cがマーク中心位置Cmに合った状態で、当該マーク中心位置Cmを測定値として測距する(
図3:S208)。
【0067】
測距制御部208の測距方法に特に限定は無い。例えば、測量者が、測量機用端末装置11を介して、測量の命令を測量機10に指示すると、測距制御部208は、機械点Mを原点として、望遠鏡101の水平角度H及び鉛直角度Vを既設の角度検出器で測定し、次に、測量機10のノンプリズム型光波距離計を用いて、測量機10から二次元マーク15のマーク中心位置Cmまでの斜距離Lを測定する。そして、測距制御部208は、二次元マーク15のマーク中心位置Cmの水平角度H及び鉛直角度Vと、斜距離Lとに基づいて、三次元座標系における二次元マーク15のマーク中心位置Cmの座標(x1、y1、z1)を測定値として算出する。ここで、三次元座標系は、例えば、世界座標系や測量現場で定義される任意の座標系を挙げることが出来る。
【0068】
尚、測量機10により測定される水平角度Hは、例えば、三次元座標系のうち、X方向(例えば、真北)を0度とし、Y方向(真西)へ回転する方向を正の値として定義される。測量機10により測定される鉛直角度Vは、三次元座標系のうち、Z方向(例えば、真上)を0度とし、上方から下方へ回転する方向を正の値として定義される。
【0069】
さて、測距が完了すると、測量機用端末装置11の情報記憶制御部209は、測定値(x1、y1、z1)を、測量情報403の設定値(x0、y0、z0)とともに特定の識別パターンPの二次元マーク15に関連付けて、データベースに記憶させる(
図3:S209)。
【0070】
情報記憶制御部209の記憶方法に特に限定は無い。例えば、情報記憶制御部209は、測定値(x1、y1、z1)と設定値(x0、y0、z0)との差分(精度){dx1(=x1−x0)、dy1(=y1−y0)、dz1(=z1−z0)}を算出し、算出した差分(dx1、dy1、dz1)が測量情報403の管理値の範囲内であるか否かを判定する。管理値は、例えば、測量者、管理者等により予め設定されても良い。
【0071】
判定の結果、差分(dx1、dy1、dz1)が管理値の範囲内である場合、情報記憶制御部209は、
図7Bに示すように、撮影画像603のうち、測量情報403とともに、測定値403a(x1、y1、z1)と差分(精度)403b(dx1、dy1、dz1)とを表示させる。これにより、測量者は、測量結果の測定値403aと精度403bを測量情報403とともに確認することが可能となる。
【0072】
ここで、測量者が、測定値403aや精度403bが適切であると判断した場合は、記憶の命令を測量機用端末装置11に指示すると、情報記憶制御部209は、サーバ12にアクセスし、
図7Bに示すように、マーク情報テーブル400のうち、特定の識別パターンPの二次元マーク15に関連付けられた測量情報項目402の測量情報403に、測定値403a(x1、y1、z1)と差分(精度)403b(dx1、dy1、dz1)とを記憶させる(
図3:S209YES)。これにより、測量結果の測定値403aと精度403bを測量情報403に反映させることが可能となり、言い換えれば、測量情報403に対応する二次元マーク15に測量結果の測定値403aと精度403bを直接関連付けることが可能となる。
【0073】
一方、判定の結果、差分(dx2、dy2、dz2)が管理値の範囲外である場合、測量者が、二次元マーク15のマーク中心位置Cmの座標(x2、y2、z2)を誤って測距している可能性がある。そこで、情報記憶制御部209は、
図8Aに示すように、撮影画像603のうち、測量情報403に、測定値403c(x2、y2、z2)と差分(精度)403d(dx2、dy2、dz2)とを表示させるとともに、確認を促すメッセージ800(例えば、「管理値外です。マークを確認してください。」)を表示させる。これにより、測量者が異なる二次元マーク15を誤って測距している場合は、測量者に、測量対象の二次元マーク15を再度確認させて、測量のやり直しの機会を与えることが可能となる。
【0074】
ここで、測量者が、再度、測量をやり直す場合は、測量者が不記憶の命令を測量機用端末装置11に指示すると、情報記憶制御部209は、測定値403c(x2、y2、z2)と差分(精度)403d(dx2、dy2、dz2)とを記憶しない(
図3:S209NO)。そして、測量者は、例えば、S207まで戻って、望遠鏡101の向きを調整したり、S201まで戻って、測量機10を適切な場所に再設置させたりする。
【0075】
一方、測量者が、差分(dx2、dy2、dz2)が管理値の範囲外であっても、測定値403cや精度403dを記憶させると判断した場合は、記憶の命令を測量機用端末装置11に指示することで、情報記憶制御部209は、マーク情報テーブル400のうち、特定の識別パターンPの二次元マーク15に関連付けられた測量情報403に、測定値403cや精度403dを記憶させる(
図3:S209YES)。これにより、測定値403cや精度403dがどのような値であっても、測量者はマーク情報テーブル400に残すことが可能となる。尚、上述では、マーク情報テーブル400に測定値403cや精度403dを記憶させたが、少なくとも測定値403cを記憶させるように構成しても構わない。
【0076】
又、建築物14の測量対象14aが複数存在する場合は、S201に戻って、S201からS209までの処理を繰り返せば良い。
【0077】
ここで、本発明では、ターゲットシールに代えて二次元マーク15を認識し、視準し、測距するため、二次元マーク15から測量情報403を取得するとともに、測量結果の測定値を二次元マーク15に直接関連付けることが可能となる。又、本発明では、二次元マーク15が多少変形したとしても、変形後の二次元マーク15を認識することが出来るため、一つの撮影画像に映し出された複数の二次元マーク15をそれぞれ認識し、視準し、測距することが可能となる。
【0078】
例えば、
図8Bに示すように、一つの撮影画像801に3つの二次元マーク15が写し出されており、一つの二次元マーク15aは、正面に正方形に表され、二つの二次元マーク15bは、左右側にひし形に表されている場合、本発明では、それぞれの二次元マーク15a、15bを適切に認識する。この場合、例えば、測量者が、撮影画像801のうち、タップ(指で画面を軽く叩く操作)等の操作をして特定の二次元マーク画像を指定すると、算出制御部206は、特定の二次元マーク画像のマーク中心位置と、望遠鏡の撮影画像の十字線の中心位置との差分を算出する。そして、調整制御部207は、差分に基づいて、十字線の中心位置をマーク中心位置に合わせるように、望遠鏡101の向きを自動的に調整する。これにより、簡単な操作で、二次元マーク15に望遠鏡101の向きを調整し、精度高く視準することが可能となる。
【0079】
一方、ターゲットシートの場合、一つの撮影画像802に3つのターゲットシート18が写し出されているが、正面のターゲットシート18aと左右側のターゲットシート18bは、測量機10のレーザー光をそれぞれ反射する。そのため、測量機10の方で、複数のターゲットシート18a、18bからの反射光を検出することとなり、一つのターゲットを特定することが困難となることから、測量機10で正面のターゲットシート18aと左右側のターゲットシート18bとにそれぞれ視準することが困難となる。もちろん、測量機10の自動視準の機能を利用したとしても、測量機10で正面のターゲットシート18aと左右側のターゲットシート18bとをそれぞれ自動的に識別して視準することが出来ない。このような場合は、例えば、柱14の柱頭14aの一側面に第一のターゲットシート18が設置され、当該柱頭14aの一側面に隣接する他側面に第二のターゲットシート18が設置される場合である。
【0080】
このように、本発明では、二次元マーク15が撮影画像内に認識可能に映っていれば、当該二次元マーク15を適切に認識し、精度高く視準することが出来るため、ターゲットシート18と比較して、測量機10の設置回数を減らし、測量者の手間や時間を削減することが出来る。又、本発明では、一つの撮影画像801に複数の二次元マーク15が存在したとしても、それぞれの二次元マーク15を適切に認識して、精度高く視準し、それぞれの二次元マーク15に測定値を関連付けることが可能である。一方、測量者が、ターゲットシート18を測距した際に、どのターゲットシート18に測定値を関連付けるべきか混同するおそれがあるが、本発明では、二次元マーク15の識別と測定値の関連付けを自動的に行うことから、そのような人的ミスを確実に防止することが出来る。
【0081】
さて、測量現場において、柱14の柱頭14aに設置された二次元マーク15に対して測量値等の測量結果が関連付けて記憶された後、管理者が測量結果を確認するために、管理者用端末装置17を携帯して測量現場に訪れる。そして、
図9Aに示すように、管理者が、管理者用端末装置17のカメラ17aを柱14の柱頭14aの二次元マーク15に向けて、撮影の命令を管理者用端末装置17に指示すると、管理者用端末装置17の端末用撮影制御部210は、管理者用端末装置17のカメラ17aを用いて、柱14の柱頭14aの二次元マーク15を含む撮影画像を撮影する(
図3:S301)。
【0082】
端末用撮影制御部210が撮影画像の撮影を開始すると、管理者用端末装置17の端末用認識制御部211は、撮影画像のうち、二次元マーク15に対応する二次元マーク画像の撮影パターンと、データベース(マーク情報テーブル400)の二次元マーク15の識別パターンとを照合することで、撮影パターンに対応する特定の識別パターンを認識する(
図3:S302)。
【0083】
端末用認識制御部211の認識方法に特に限定は無く、測量機用認識制御部204の認識方法と同様であるため、その説明を省略する。
【0084】
そして、特定の識別パターンの認識が完了すると、管理者用端末装置17の端末用情報表示制御部212は、特定の識別パターンに関連付けられた測量情報(設定値、測定値、精度等)を撮影画像に表示させる(
図3:S303)。
【0085】
端末用情報表示制御部212の表示方法に特に限定は無い。例えば、端末用情報表示制御部212は、マーク情報テーブル400の測量情報項目402のうち、認識した特定の識別パターンを有する二次元マーク15に関連付けられた測量情報403{設定値(x0、y0、z0)、測定値(x1、y1、z1)、精度(dx1、dy1、dz1)等}を取得し、撮影画像900に表示させる。これにより、管理者は、撮影画像900を確認するだけで、二次元マーク15が設置された柱14の柱頭14aの測量結果を一見して確認することが可能となる。
【0086】
ここで、測定情報403の精度(dx1、dy1、dz1)が管理値の範囲内である場合、端末用情報表示制御部212は、二次元マーク15に対応する二次元マーク画像901の近傍に、管理値の範囲内を示すメッセージ902(例えば、「管理値内」)を表示させる。一方、測定情報403の精度(dx2、dy2、dz2)が管理値の範囲外である場合、端末用情報表示制御部212は、二次元マーク15に対応する二次元マーク画像901の近傍に、管理値の範囲外を示すメッセージ903(例えば、「管理値外」)を表示させる。これにより、管理者は、二次元マーク15が設置された柱14の柱頭14aの測量結果が適切か否かを一見して確認することが出来る。
【0087】
ここで、端末用情報表示制御部212は、二次元マーク15を用いて、管理値の範囲内の柱14を、許可を示す色(例えば、青色)で示し、管理値の範囲外の柱14を、不許可を示す色(例えば、赤色)で示すようにして、拡張現実(AR)や複合現実(MR)の機能を実現しても良い。
【0088】
又、
図10に示すように、一つの撮影画像1000に複数の二次元マーク15が写し出された場合、端末用認識制御部211は、二次元マーク15に対応する二次元マーク画像1001をそれぞれ検出して、それぞれの二次元マーク画像1001の撮影パターンに対応する特定の識別パターンを認識する。そして、端末用情報表示制御部212は、特定の識別パターンに関連付けられた測量情報(設定値、測定値、精度等)を撮影画像1000に表示させる。ここで、端末用情報表示制御部212は、
図10に示すように、それぞれの二次元マーク15の二次元マーク画像1001に吹き出し線1002を設けて測量情報1003(柱マーク、節、通り、製造者、製造年月日、建ち精度の状況(本締め完了後等)、測定値、管理値内外の適否等)を表示させることで、管理者が確認し易くなり、管理者の利便性を向上させることが出来る。
【0089】
尚、測量情報を有するデータベースは、他の測量システム(例えば、3次元出来形システム、施工管理システム等)と連動させることで、測量現場における管理者の現地での出来高の確認を容易にすることが出来る。又、近年、二次元マーク15の認識は、ウェブのブラウザで行うことが可能となっていることから、端末用認識制御部211は、管理者用端末装置17にアプリとして設けられている必要は無く、管理者用端末装置17がアクセス可能なネットワーク13のサーバに設けられ、端末用認識制御部211が、ウェブのブラウザで機能しても構わない。
【0090】
一方、他の利用方法として、例えば、監視カメラを備えた管理者用端末装置17を測量現場に設置し、監視カメラで建築物14(柱)の測量対象14a(柱頭)の二次元マーク15を継続的に撮影して、二次元マーク15を認識するとともに、二次元マーク15に関連付けられた測量情報を事務所内の事務所用端末装置16で確認させることで、建築物14の出来高進捗を事務所で確認出来るようにしても良い。
【0091】
又、本発明の実施形態では、測量機用認識制御部204が測量機用端末装置11に搭載するよう構成しているが、測量機用認識制御部204をサーバ12に搭載して、測量機用端末装置11の測量機用撮影制御部203が、撮影画像をサーバ12に送り、サーバ12の測量機用認識制御部204が撮影画像を用いて、二次元マーク画像の撮影パターンに対応する特定の識別パターンを認識して、当該識別パターンに関連付けられた測量情報を測量機用端末装置11に送り、測量機用端末装置11の測量機用情報表示制御部205が、測量情報を、測量機用端末装置11の撮影画像に表示させるよう構成しても良い。又、本発明の実施形態では、測量機用撮影制御部203の撮影画像を静止画としているが、動画でも構わない。
【実施例】
【0092】
以下、実施例、比較例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0093】
先ず、変形後の撮影パターンの認識率を確認した。具体的には、辞書を用いて所定の識別パターンを生成し、生成した識別パターンに対応する撮影パターンを所定の角度(0度、9度、18度、27度)で水平方向に変形させた。この角度は、例えば、撮影パターンに正対した位置から左右に移動した角度を模擬している。そして、変形後の撮影パターンと識別パターンとを照合して、変形後の撮影パターンが識別パターンと認識するかどうかを確認した。識別パターンは、縦の長さを6個に均等に分割し、横の長さを6個に分割することで得られる6×6のパターンと、縦の長さを7個に均等に分割し、横の長さを7個に分割することで得られる7×7のパターンとを用意した。そして、識別パターンを5000個生成し、5000個の撮影パターンを変形して照合した結果、全ての撮影パターンに対して漏れなく検出した場合は、検出率を「〇」と評価し、1個でも検出することが出来なかった場合は、検出率を「×」と評価した。又、全ての撮影パターンに対して特定の識別パターンを認識した場合は、認識率を「〇」と評価し、1個でも認識することが出来なかった場合は、認識率を「×」と評価した。尚、検出率は、撮影パターン自体を検出することが出来たかどうかを意味し、認識率は、撮影パターンを特定の識別パターンに認識(特定)することが出来たかどうかを意味する。
【0094】
その結果、
図11Aに示すように、6×6のパターンにおいて、変形の角度が0度から27度の範囲内では、撮影パターンの検出率は、「〇」であった。更に驚くべきことに、変形の角度が0度から27度の範囲内において、撮影パターンの認識率は、「〇」であった。
【0095】
又、
図11Bに示すように、7×7のパターンにおいて、変形の角度が0度から27度の範囲内では、撮影パターンの検出率は、「〇」であった。更に驚くべきことに、変形の角度が0度から27度の範囲内において、撮影パターンの認識率は、「〇」であった。
【0096】
このように、撮影パターンが変形したとしても、検出率、認識率ともに良好であり、撮影パターンを特定の識別パターンに認識することが可能であることが分かった。
【0097】
次に、実際に、二次元マークを用いて撮影し、視準し、視準の可否を確認した。具体的には、6×6の識別パターンを有する二次元マークを所定のサイズ(縦50mm×横50mm、縦100mm×横100mm)で印刷し、
図12Aに示すように、高さ11mの建築物14の上部14aに、その二次元マーク15を設置した。又、二次元マーク15を設置した上部14aの下部14bから正対の方向に遠くなる順番に測量機10の設置位置(「1」、「2」、「3」)を設定した。建築物14の下部14bから設置位置「3」までの距離を11mに設定した。次に、設置位置「3」から、正対の方向に対して直角の方向に遠くなる順番に測量機10の設置位置(「4」、「5」、「6」)を設定した。設置位置「3」から設置位置「6」までの距離を9mに設定した。そして、設置位置「1」から「6」までに測量機10を設置して、本発明に係る測量システム1を用いて、二次元マーク15を撮影し、二次元マーク画像の撮影パターンに対応する特定の識別パターンを認識し、マーク中心位置と望遠鏡の十字線の中心位置との差分を算出し、望遠鏡の向きを調整して、視準を試みた。視準は、プログラムにより算出したマーク中心位置と望遠鏡の十字線の中心位置とを目視により一致させることで行った。視準が出来た場合は、「〇」と評価し、視準が出来なかった場合は、「×」と評価した。又、二次元マーク15の代わりにターゲットシート18を設置して、測量機10に自動視準の命令を指示し、自動視準を試みた。自動視準が出来た場合は、「〇」と評価し、自動視準が出来なかった場合は、「×」と評価した。二次元マーク15の視準の結果を実施例とし、ターゲットシート18の視準の結果を比較例とした。
【0098】
その結果、
図12Bに示すように、設置位置「1」から設置位置「3」までにおいて、二次元マーク15の撮影と、マーク中心位置と望遠鏡の十字線の中心位置との差分の算出が可能であり、視準可能であることが分かった。又、
図13Aに示すように、設置位置「4」から設置位置「6」までにおいても、二次元マーク15の撮影と、マーク中心位置と望遠鏡の十字線の中心位置との差分の算出が可能であり、精度高く視準可能であることが分かった。
【0099】
そして、
図13Bに示すように、実施例では、設置位置「1」から設置位置「6」までのいずれの視準の結果でも、評価が「〇」であり、精度高く視準出来ることが分かった。一方、比較例では、正対の位置に対応する設置位置「1」から設置位置「3」までの視準の結果では、評価が「〇」であったが、斜めの位置に対応する設置位置「4」や更に斜めの位置に対応する設置位置「5」と「6」の自動視準の結果では、評価が「×」であり、自動視準することが出来なかった。
【0100】
このように、本発明では、二次元マーク15に対して測量機10が正対の位置に限らず、斜めの位置であっても、精度高く視準することが出来ることが分かった。これらの結果は、測量機の自動視準可能な角度(例えば、15度)より優れている。
【0101】
次に、互いに近接する複数の二次元マークを用いて撮影し、視準し、視準の可否を確認した。具体的には、
図14Aに示すように、一つの用紙1400に、6×6の識別パターンを有する二次元マーク15を所定のサイズ(縦50mm×横50mm)で複数印刷し、高さ13.8mの建築物14の上部14aに、その用紙1400を設置した。又、二次元マーク15を含む用紙1400を設置した上部14aの下部14bから正対の方向に12.0m離れた位置を正対位置1401として設定し、次に、正対位置から、正対の方向に対して直角の方向に4.0m離れた位置を設置位置1402として設定した。設置位置1402に測量機10を設置して、本発明に係る測量システム1を用いて、
図14Bに示すように、用紙1400内の二次元マーク15を撮影し、二次元マーク画像の撮影パターンに対応する特定の識別パターンの認識し、視準を試みた。二次元マーク15の視準の結果を実施例とした。
【0102】
その結果、
図15に示すように、一つの撮影画像1500に写された各二次元マーク画像1501の撮影パターンに対して特定の識別パターンを認識することが可能であり、識別パターンに関連付けたIDを表示させることが可能であった。更に、各二次元マーク画像1501のマーク中心位置Cmと望遠鏡101の十字線の中心位置Cとの差分の算出が可能であり、精度高く視準可能であることが分かった。
【0103】
一方、
図16Aに示すように、複数の二次元マーク15を含む用紙1400と同等の用紙1600を用意し、その用紙1600に、二次元マーク15と同等のターゲットシート18を複数設置し、複数の二次元マーク15を含む用紙1400を設置した上部14aに複数のターゲットシート18を含む用紙1600を設置して、測量機10に自動視準の命令を指示し、自動視準を試みた。ターゲットシート18の視準の結果を比較例とした。
【0104】
その結果、
図16Bに示すように、二つのターゲットシート18が近接する所定の位置に望遠鏡101の十字線の中心位置Cが存在する場合に自動視準を行うと、自動視準開始時、望遠鏡101の十字線の中心位置Cから直近のターゲットシート18の中心位置に合わせるように、望遠鏡101の十字線の中心位置Cを直近のターゲットシート18の中心位置に視準したものの、望遠鏡101の十字線の中心位置Cが直近のターゲットシート18の中心位置から若干ずれて、視準精度が低下していることが分かった。これは、複数のターゲットシート18の存在により、視準精度が低下したためと推定される。又、
図17A、
図17Bに示すように、二つのターゲットシート18が近接する他の位置に望遠鏡101の十字線の中心位置Cが存在する場合に自動視準を行うと、二つのターゲットシート18の真ん中に望遠鏡101の十字線の中心位置Cを合わせるように視準し、一つのターゲットシート18に視準不能であることが分かった。これは、測量機10が、二つのターゲットシート18からの反射光を検出することで、二つのターゲットシート18の反射光の光量分布を、一つのターゲットシート18の反射光の光量分布と誤認したためと推定される。
【0105】
このように、本発明では、一つの撮影画像に複数の二次元マーク15が存在したとしても、それぞれを適切に視準し、精度高く視準することが出来ることが分かった。
【0106】
尚、本発明の実施形態では、測量システム1が各部を備えるよう構成したが、当該各部を実現するプログラムを記憶媒体に記憶させ、当該記憶媒体を提供するよう構成しても構わない。当該構成では、プログラムを所定の処理装置に読み出させ、当該処理装置が各部を実現する。その場合、記録媒体から読み出されたプログラム自体が本発明の作用効果を奏する。更に、各部が実行するステップを本発明の位置計測方法として提供することも可能である。
【0107】
又、本発明の実施形態では、
図18Aに示すように、二次元マーク15を正方形として構成したが、
図18Bに示すように、二次元マーク15を円形として構成しても構わない。ここで、二次元マーク15が正方形である場合、例えば、識別パターンは、6×6のパターンや7×7のパターンを挙げることが出来る。又、7×7のパターン等、奇数×奇数のパターンにおいて、識別パターンの中心位置に、視準対象となる升目p0が存在する場合は、視準対象の升目p0は、中心位置を示す十字線で分割して、その分割升目p0を白又は黒で着色して、視準し易く構成しても良い。
【0108】
又、
図18Bに示すように、二次元マーク15が円形である場合、例えば、識別パターンPは、円形の同心円で円形の半径を所定の数に均等に分割し、円形の中心から延びた線で円形の中心角を所定の数に均等に分割することで複数の升目pを形成し、当該複数の升目pを白又は黒で着色することで得られたパターンであり、一意に識別可能に構成している。例えば、識別パターンは、円形の同心円で円形の半径を3個に均等に分割し、円形の中心から延びた線で円形の中心角を12個に均等に分割することで得られる3×12のパターンや円形の同心円で円形の半径を5個に均等に分割し、円形の中心から延びた線で円形の中心角を12個に均等に分割することで得られる5×12のパターンを挙げることが出来る。又、円形の二次元マーク15であっても、正方形の二次元マーク15と同様に、視準対象の升目p0を設けて、中心位置を示す十字線で分割して、その分割升目p0を白又は黒で着色して、視準し易く構成しても良い。
【0109】
尚、二次元マーク15の形状や識別パターンPの升目pの形状は、視準容易性の点から、例えば、1:1.62の黄金比を利用した形状を採用しても良い。
【解決手段】測量機用撮影制御部203は、建築物の測量対象に設置された二次元マークを含む撮影画像を撮影する。測量機用認識制御部204は、二次元マーク画像と、データベースの二次元マークの識別パターンとを照合し、特定の識別パターンを認識する。測量機用情報表示制御部205は、特定の識別パターンに関連付けられた、測量情報を撮影画像に表示させる。算出制御部206は、撮影画像内の二次元マーク画像のマーク中心位置と、望遠鏡の十字線の中心位置との差分を算出する。調整制御部207は望遠鏡の向きを調整し、十字線の中心位置をマーク中心位置に合わせる。測距制御部208は、測量機を用いて、十字線の中心位置がマーク中心位置に合った状態で、マーク中心位置を測定値として測距する。情報記憶制御部209は、測定値をデータベースに記憶させる。