(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に示すような帯板状を為す車輪用ストッパーは、車輪付き移動体に勢いがあると、車輪が乗り越えてしまう虞があった。この車輪の乗り越えは、車輪用ストッパーの厚さ(高さ)を大きくすれば、防ぐことができる。しかし、車輪用ストッパーの厚さ(高さ)を大きくすると、車輪用ストッパーが車輪から受ける力が大きくなり、車輪が車輪用ストッパーに衝突したときに、車輪用ストッパーが床面等から剥がれやすくなるという問題が生ずる。この問題は、ボルト等の固定具を用いて車輪用ストッパーを床面等にしっかりと固定すれば、解決することができる。しかし、ボルト等の固定具を用いて車輪用ストッパーを床面等に固定することが必ずしも可能であるとは限らなかった。
【0006】
というのも、車両用ストッパーをボルト等の固定具を用いて床面等に固定しようとすると、その固定具を固定するための孔(ボルト孔等)を床面等に形成する必要があるところ、倉庫や工場等の事業所は、その床面がコンクリート等の硬い部材で形成されていることが多いことに加えて、その事業所が賃貸である場合等には、その床面に孔を開けること自体が禁止されていることもある。このように、ボルト等の固定具を用いて車両用ストッパーを固定することができない場合には、接着剤や粘着テープ等を用いて車輪用ストッパーを床面等に固定することになるが、接着剤等で床面等に固定された車両用ストッパーは、横方向に力を受けると、比較的容易に床面等から剥がれてしまうからである。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、車輪が乗り越えにくくしながらも、床面等から剥がれにくい構造の車輪用ストッパーを提供するものである。また、この車輪用ストッパーを床面等の設置面に設置する車輪用ストッパーの設置方法を提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、
車輪がそれ以上奥側(車輪進入方向の奥側。以下同じ。)に進まないように当該車輪の外周面に当接するためのストッパー部を備えた車輪用ストッパーであって、
車輪の外周面がストッパー部に当接する際に当該車輪が乗り上げる板状の車輪乗上部が、ストッパー部における下部から手前側(車輪進入方向の手前側。以下同じ。)に延在する状態で設けられたことを特徴とする車輪用ストッパー
を提供することによって解決される。
【0009】
このように、ストッパー部の手前側に車輪乗上部を設けたことによって、車輪がストッパー部に当接したときには、必ず、車輪乗上部の上側にその車輪が乗り、車輪付き移動体の荷重が車輪を介して車輪乗上部に加わるようになるため、車輪乗上部は、床面等の設置面に押さえ付けられた状態となる。したがって、車輪が勢いよくストッパー部に衝突して、奥側を向く外力がストッパー部に加わっても、車輪乗上部によってストッパー部の下部が手前側に引っ張られ、ストッパー部が奥側に移動しないようにすることが可能になる。よって、ストッパー部を高くして車輪がストッパー部を乗り越えにくくしても、車輪用ストッパーが床面等の設置面から剥がれにくくすることが可能となる。
【0010】
本発明の車輪用ストッパーにおいて、車輪乗上部の上面は、水平に形成してもよいが、その手前側が低くなり、その奥側が高くなる向きで傾斜させることが好ましい。換言すると、車輪乗上部における手前側(ストッパー部から遠い側の縁部)が薄く、車輪乗上部における奥側(ストッパー部に近い側の縁部)が厚くなるように、車輪乗上部を形成することが好ましい。
【0011】
このように、車輪乗上部を上り坂傾斜にすることによって、ストッパー部に当接する直前の車輪を車輪乗上部である程度減速させ、車輪からストッパー部に加えられる衝撃を弱めることが可能になる。また、車輪が車輪乗上部に乗り上げる際に、車輪が車輪乗上部の手前側の段差に引っ掛かることがあると、車輪乗上部が手前側から捲れ上がる虞もある。この点、車輪乗上部を上記のように傾斜させると、車輪乗上部の手前側を薄くして前記段差を小さくして、車輪が前記段差に引っ掛かりにくくすることが可能になる。したがって、車輪乗上部が手前側から捲れ上がりにくくすることができる。
【0012】
本発明の車輪用ストッパーにおいて、ストッパー部は、車輪が乗り越えにくいのであれば、その形態や寸法を特に限定されない。ストッパー部の形態や寸法は、それを当接させる車輪の種類に応じて適宜決定される。
【0013】
しかし、ストッパー部の高さが低すぎると、小さ目の車輪でもそれを乗り越えてしまう虞がある。このため、車輪乗上部の上面からストッパー部の頂部までの高さ(
図3における「高さH
1」を参照。)は、通常、2cm以上とされる。車輪乗上部の上面からストッパー部の頂部までの高さは、3cm以上とすることが好ましく、4cm以上とすることがさらに好ましい。ここで、車輪乗上部の上面が傾斜している等、車輪乗上部の上面の高さが一定でない場合には、上記の「車輪乗上部の上面からストッパー部の頂部までの高さ」は、車輪乗上部における奥側(ストッパー部に接続する箇所)の上面からストッパー部の頂部までの高さとして扱う。
【0014】
一方、ストッパー部を高くしすぎると、ストッパー部の成形材料の使用量が増大してコスト高になるだけでなく、ストッパー部の重量が増大して、車輪用ストッパーが運搬や設置をしにくいものとなる虞もある。また、床面等に設置された車輪用ストッパーが目立ちすぎて、目障りになる虞もある。このため、車輪乗上部の上面からストッパー部の頂部までの高さは、15cm以下とすることが好ましい。車輪乗上部の上面からストッパー部の頂部までの高さは、12cm以下とすることがより好ましく、10cm以下とすることがさらに好ましい。
【0015】
また、ストッパー部の車輪当接面が車輪乗上部の上面に対して為す角度(
図3における「角度θ
1」を参照。)を小さくしすぎても、車輪がストッパー部を乗り越えやすくなる虞がある。このため、ストッパー部の車輪当接面が車輪乗上部の上面に対して為す角度は、45°以上とすることが好ましい。ストッパー部の車輪当接面が車輪乗上部の上面に対して為す角度は、60°以上とすることがより好ましく、75°以上とすることがさらに好ましい。ストッパー部の車輪当接面が車輪乗上部の上面に対して為す角度は、特に上限を規定されるものではないが、通常、90°以下とされる。
【0016】
本発明の車輪用ストッパーにおいて、車輪乗上部の上面は、凹凸等のない平坦な形状としてもよい。しかし、車輪乗上部の上面には、当該車輪を減速させるための減速用凸部を設けることが好ましい。
【0017】
このように、車輪乗上部に減速用凸部を設けることにより、ストッパー部に衝突する車輪の速度をより確実に低下させることが可能になる。このため、車輪からストッパー部に加わる力を小さくして、車輪用ストッパーを床面等の設置面からさらに剥がれにくくすることが可能となる。
【0018】
このとき、減速用凸部は、車輪乗上部に一体化した状態で設けてもよい。しかし、減速用凸部を、車輪乗上部に対して分離可能な分離部材によって構成し、車輪が定格速度で減速用凸部に衝突したときには、前記分離部材が車輪乗上部に保持されたままの状態となる一方、車輪が定格速度を超える速度で減速用凸部に衝突したときには、前記分離部材が車輪乗上部から外れるようにすることが好ましい。
【0019】
というのも、車輪乗上部に対して減速用凸部を一体的に形成すると、車輪が減速用凸部に衝突したときの衝撃が、車輪乗上部やストッパー部に伝わりやすくなり、車輪が減速用凸部に衝突したときの衝撃で車輪用ストッパーが床面等の設置面から剥がれる虞がある。この点、減速用凸部を車輪乗上部から分離可能な分離部材として、車輪が定格速度を超える速度で減速用凸部に衝突したときに、前記分離部材が車輪乗上部から外れるようにすることによって、車輪が勢いよく減速用凸部に衝突しても、車輪から減速用凸部に加えられた衝撃を逃し、その衝撃が車輪乗上部やストッパー部に伝わらないようにすることが可能になるからである。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によって、車輪が乗り越えにくくしながらも、床面等から剥がれにくい構造の車輪用ストッパーを提供することが可能になる。また、この車輪用ストッパーを床面等の設置面に設置する車輪用ストッパーの設置方法を提供することも可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の車輪用ストッパーの好適な実施態様について、図面を用いてより具体的に説明する。以下においては、第一実施態様から第五実施態様までの5つの実施態様を例に挙げて本発明の車輪用ストッパーを説明するが、本発明の車輪用ストッパーの技術的範囲は、これらの実施態様に限定されない。本発明の車輪用ストッパーは、発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更を施すことができる。
【0023】
1.第一実施態様の車輪用ストッパー
まず、第一実施態様の車輪用ストッパーについて説明する。
図1は、第一実施態様の車輪用ストッパー10を手前側から見た状態を示した斜視図である。
図2は、第一実施態様の車輪用ストッパー10を奥側から見た状態を示した斜視図である。
図3は、第一実施態様の車輪用ストッパー10を左右方向(x軸方向)に垂直な平面で切断した状態を示した断面図である。
図3においては、ストッパー部11に当接した状態の車輪20を破線で描いている。
【0024】
図1〜3や、後掲する
図4以降の図では、x軸とy軸とz軸とを示している。これらの座標軸の向きは、異なる図面でも共通している。以下においては、x軸方向正側を「右」、x軸方向負側を「左」、y軸方向正側を「奥」、y軸方向負側を「手前」、z軸方向正側を「上」、z軸方向負側を「下」として説明する。ただし、これは、飽くまで説明の便宜を考慮してのものであり、本発明の車輪用ストッパー10を設置する向き等を限定するものではない。
【0025】
第一実施態様の車輪用ストッパー10は、
図1に示すように、ストッパー部11と車輪乗上部12とで構成されている。ストッパー部11は、
図3に示すように、車輪20の外周面に当接することにより、車輪20がそれ以上奥側(y軸方向正側)に進まないようにするための部分となっている。一方、車輪乗上部12は、ストッパー部11における下部から手前側(y軸方向負側)に延在する状態で設けられた板状の部分となっており、
図3に示すように、車輪20の外周面がストッパー部11に当接する際に車輪20が乗り上げる部分となっている。
【0026】
この車輪乗上部12は、車輪用ストッパー10が設置面βから剥がれにくくするための部分となっている。すなわち、床面等の設置面βに対して車輪用ストッパー10を接着剤等で固定した場合には、車輪用ストッパー10の手前側から奥側に向かって移動する車輪20がストッパー部11の車輪当接面α
1に勢いよく衝突すると、ストッパー部11が強い力で奥側に押されて、車輪用ストッパー10が設置面βから剥がれる虞がある。
【0027】
しかし、車輪乗上部12を上記の態様で設けたことによって、車輪20がストッパー部11に当接するときには、車輪乗上部12の上側に車輪20が乗り、車輪付き移動体の荷重が車輪20を介して車輪乗上部12に加えられて、車輪乗上部12が床面等の設置面βに押さえ付けられた状態となるようになっている。したがって、車輪20がストッパー部11に勢いよく衝突し、ストッパー部11を奥側に移動させる向きの強い力がストッパー部11に加わっても、車輪乗上部12によってストッパー部11の下部が手前側に引っ張られて、ストッパー部11が元の位置を維持し、車輪用ストッパー10が設置面βから剥がれないようになっている。
【0028】
車輪乗上部12は、ストッパー部11に対して局所的又は断続的に設けてもよいが、この場合には、ストッパー部11における車輪20が当接する箇所によって、上記の効果が奏されないケース(車輪20がストッパー部11に当接しても、車輪乗上部12の上側に車輪20が乗らない可能性)が生じ得る。このため、車輪乗上部12は、ストッパー部11を左右方向(x軸方向)にわたる全区間に連続的に設ける(帯板状に設ける)ことが好ましい。これにより、ストッパー部11における車輪20が当接する箇所にかかわらず、車輪20がストッパー部11に当接したときには、必ず、その車輪20が車輪乗上部12の上側に乗るようにし、上記の効果が奏されるようにすることができる。
【0029】
車輪用ストッパー10(ストッパー部11及び車輪乗上部12)の左右方向(x軸方向)の幅は、少なくとも1つの車輪20を受け止めることができるのであれば、特に限定されない。しかし、第一実施態様の車輪用ストッパー10は、予め定められた場所に置かれる車輪付き移動体の車輪20の動きを止めることを主な使用態様として想定したものではなく、車輪付き移動体の進入を許す領域(進入許容領域)と車輪付き移動体の進入を防ぎたい領域(進入制限領域)とを区画することを主な仕様態様として想定したものとなっている。進入許容領域と進入制限領域との区画を行うために、複数の車輪用ストッパー10を連続配置することもできる。
【0030】
この点、車輪用ストッパー10の左右方向の幅を小さくしすぎると、進入許容領域と進入制限領域との区画に、多数の車輪用ストッパー10が必要となり、車輪用ストッパー10の設置に手間を要するようになる。加えて、車輪付き移動体は、通常、車輪20を左右一対に有しているところ、この左右一対の車輪20を1個の車輪用ストッパー10で同時に受け止めることができるようにしたい。したがって、車輪用ストッパー10は、左右方向に長尺状に形成し、車輪用ストッパー10の左右方向の幅を、所望の車輪付き移動体の左右の車輪20を同時に受け止めることができる程度に広く確保することが好ましい。
【0031】
具体的に、車輪付き移動体として小型の台車を想定した場合には、その左右の車輪間隔は、通常、40cm程度はある。このため、この場合の車輪用ストッパー10の左右方向の幅は、50cm以上とすることが好ましく、70cm以上とすることが好ましい。また、車輪付き移動体としてフォークリフトを想定した場合には、その左右の車輪間隔は、通常、80cm程度はある。このため、この場合の車輪用ストッパー10の左右方向の幅は、90cm以上とすることが好ましく、100cm以上とすることがより好ましい。
【0032】
車輪付き移動体として、乗用車やトラック等、さらに大型ものを想定する場合には、車輪用ストッパー10の左右方向の幅は、さらに大きく設定することができる。ただし、車輪用ストッパー10の左右方向の幅を大きくしすぎると、車輪用ストッパー10が大型で重量も嵩むものとなり、車輪用ストッパー10の運搬や施工が困難になる虞がある。このため、車輪用ストッパー10の左右方向の幅は、通常、300cm以下とされる。車輪用ストッパー10の左右方向の幅は、250cm以下とすることが好ましく、200cm以下とすることがより好ましい。第一実施態様の車輪用ストッパー10の左右方向の幅は、100cmとしている。
【0033】
車輪用ストッパー10の素材(ストッパー部11及び車輪乗上部12の素材)は、特に限定されない。車輪用ストッパー10は、金属や硬質樹脂等で形成してもよいが、柔軟で弾性変形可能な弾性材料で形成することが好ましい。これにより、車輪20がストッパー部11等に衝突したときの衝撃を吸収する等、車輪用ストッパー10に緩衝機能を付与することも可能になる。加えて、車輪乗上部12の下面を床面等の設置面βに沿わせやすくなる等、車輪用ストッパー10の下面と設置面βの密着性を高めることができ、車輪用ストッパー10の下面を接着剤等で設置面βに固定しやすくすることが可能になる。車輪用ストッパー10は、ストッパー部11と車輪乗上部12とで素材を変える等、部分によって素材を切り替えてもよい。
【0034】
車両用ストッパー10を形成する弾性材料としては、ポリプロピレン(PP)や、ポリエチレン(PE)や、ポリウレタン(PU)や、ポリスチレン(PS)や、ポリ塩化ビニル(PVC)や、メラミン樹脂(MF)等の熱可塑性樹脂の発泡体や、天然ゴム(NR)や、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)や、ニトリルゴム(NBR)や、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)や、ウレタンゴム(U)や、シリコーンゴム(Q)や、フッ素ゴム(FKM)や、クロロプレンゴム(CR)や、ブチルゴム(IIR)等のゴム材料の発泡体や、熱可塑性エラストマーの発泡体等が例示される。ただし、車両用ストッパー10は、発泡体(スポンジ)である必要は特になく、ゴムや熱可塑性エラストマー等からなる非発泡体(軟質ソリッド材)とすることもできる。
【0035】
また、ストッパー部11と車輪乗上部12は、それぞれ別に成形した部材(ストッパー部11用の部材と車輪乗上部12用の部材)を、ボルト等の固定具や接着剤や溶着等を用いて一体化させたものであってもよいし、当初から一体的に成形したものであってもよい。第一実施態様の車両用ストッパー10は、上記の弾性材料のうち、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)をコンプレッション成型することにより、そのストッパー部11と車輪乗上部12とを当初から一体的に成形したものとなっている。車輪用ストッパー10をこのような素材で形成すると、設置箇所や設置態様等に応じて、車輪用ストッパー10を切断してその長さ(左右方向の幅)を調節したり、車輪用ストッパー10の角部を三角状に切り落として、隣り合う車輪用ストッパー10を傾斜した状態に設置したり等といったことも容易となる。
【0036】
車輪用ストッパー10は、素材そのままの色(第一実施態様の車輪用ストッパー10においては黒色)としてもよいが、設置箇所等に応じて、黄色や赤色等、車輪用ストッパー10の素材とは異なる色に着色することもできる。着色は、局所的に行ってもよいし、全体的に行ってもよい。また、車輪用ストッパー10の外面には、着色テープや蓄光テープ等を貼り付けることもできる。車輪用ストッパー10に蓄光テープを貼り付けると、災害等で停電になった場合等でも、車輪用ストッパー10の位置を確認できるようになり、安全に避難することが可能になる。
【0037】
ストッパー部11は、車輪が乗り越えにくいのであれば、その形態や特に限定されず、例えば、車輪進入方向A
1に略垂直な板状に形成してもよい。しかし、ストッパー部11は、車輪20が勢いよく衝突する可能性がある箇所であるところ、このストッパー部11を、上記のように車輪進入方向A
1に略垂直な板状に形成する等、車輪進入方向A
1での厚さが小さい形態とすると、ストッパー部11の強度を維持できず、ストッパー部11が破損等しやすくなる虞がある。このため、ストッパー部11は、車輪進入方向A
1にある程度の厚さがあるブロック状に形成することが好ましい。第一実施態様の車輪用ストッパー10において、ストッパー部11は、
図3に示すように断面略三角形を為すブロック状のものとしている。ストッパー部11の断面形状は、上記の三角形のほか、長方形(正方形を含む。)や台形等の四角形や、他の多角形とすることもできる。ストッパー部11の断面形状は、半円形や半楕円形等、曲線を有する形状とすることもできるし、直線と曲線とを組み合わせた形状とすることもできる。
【0038】
ストッパー部11の車輪当接面α
1が車輪乗上部12の上面α
2に対して為す角度θ
1(
図3)は、既に述べたように、ストッパー部11の乗り越えやすさ等を考慮し、通常、45〜90°の範囲に設定される。第一実施態様の車輪用ストッパー10においては、角度θ
1を約83°としている。
【0039】
車輪乗上部12の上面からストッパー部11の頂部までの高さH
1(
図3)は、車輪20の半径R
1等によっても異なり、特に限定されない。しかし、半径R
1に対する高さH
1の比H
1/R
1が小さすぎると、車輪20がストッパー部11を乗り越えやすくなる虞がある。このため、比H
1/R
1は、0.3以上とすることが好ましい。比H
1/R
1は、0.5以上とすることがより好ましく、0.7以上とすることがさらに好ましい。一方、比H
1/R
1を大きくしすぎても、ストッパー部11が大型化するだけで、ストッパー部11の乗り越えにくさには寄与しなくなる。このため、比H
1/R
1は、通常、1.5〜2くらいまでとされる。
【0040】
上記の比H
1/R
1を考慮し、車輪付き移動体として、比較的小さな車輪20を有するもの(台車からフォークリフトくらいまで)を想定すると、車輪乗上部12の上面からストッパー部11の頂部までの高さH
1は、概ね、2〜15cmの範囲となる。第一実施態様の車輪用ストッパー10においては、車輪乗上部12の上面からストッパー部11の頂部までの高さH
1を約4.5cmとしている。
【0041】
第一実施態様の車輪用ストッパー10においては、既に述べたように、車輪乗上部12を帯板状に設けている。この車輪乗上部12を車輪進入方向A
1にわたる長さL
1(
図3)は、車輪20の半径R
1(
図3)等によっても限定されない。しかし、車輪乗上部12の長さL
1を車輪20の半径R
1よりも小さくする(車輪20の半径R
1に対する車輪乗上部12の長さL
1の比L
1/R
1を1未満とする)と、車輪当接面α
1の傾斜角度θ
1(
図3)の値等によっては、車輪20がストッパー部11に当接したときに、車輪20が車輪乗上部12の手前側に位置するようになる。このため、比L
1/R
1は、通常、1以上とされる。比L
1/R
1は、1.3以上とすることが好ましく、1.5以上とすることがより好ましい。
【0042】
一方、車輪20の半径R
1に対する車輪乗上部12の長さL
1の比L
1/R
1を大きくしすぎると、車輪乗上部12が無駄に長くなる。このため、車輪用ストッパー10が運搬や施工を行いにくいものとなるだけでなく、車輪乗上部12の下面を設置面βに固定するのに大量の接着剤が必要となる。また、車輪乗上部12を無駄に長くすると、車輪乗上部12は捲れ上がりやすくなる。このため、比L
1/R
1は、通常、3以下とされる。このため、比L
1/R
1は、2.5以下とすることが好ましく、2以下とすることがより好ましい。
車輪付き移動体として、比較的小さな車輪20を有するもの(台車からフォークリフトくらいまで)を想定すると、車輪乗上部12の長さL
1は、概ね、5〜30cmの範囲となる。第一実施態様の車輪用ストッパー10においては、車輪乗上部12の長さL
1を約10cmとしている。
【0043】
車輪乗上部12の上面α
2は、水平に形成してもよいが、第一実施態様の車輪用ストッパー10においては、その手前側が低くなり、その奥側が高くなる向きで傾斜させている。車輪乗上部12の手前側の縁部の厚さは、約2mmと小さくなっており、車輪乗上部12の奥側の縁部の厚さは、約5mmと大きくなっている。このように、車輪乗上部12を上り坂傾斜にすることによって、ストッパー部11に当接する直前の車輪20を車輪乗上部12である程度減速させることが可能となっている。また、車輪乗上部12の手前側に形成される段差を小さくし、車輪20が車輪乗上部12に乗り上げる際に車輪乗上部12が捲れ上がりにくくすることも可能となっている。
【0044】
車輪乗上部12の上面α
2が車輪乗上部12の下面(設置面β)に対して為す角度θ
2は、特に限定されない。しかし、角度θ
2を大きくしすぎると、車輪乗上部12自体がストッパー部11としての機能(車輪20の外周面に当接してその車輪がそれ以上奥側に進まないようにする機能)を果たすようになり、車輪乗上部12の上面α
2に車輪20の外周面が衝突したときの衝撃で、車輪用ストッパー10が設置面βから剥がれる虞がある。このため、角度θ
2は、通常、20°以下とされる。角度θ
2は、15°以下とすることが好ましく、10°以下とすることがより好ましく、5°以下とすることがさらに好ましい。第一実施態様の車輪用ストッパー10においては、角度θ
2を約2〜3°としている。
【0045】
2.第二実施態様の車輪用ストッパー
続いて、第二実施態様の車輪用ストッパーについて説明する。
図4は、第二実施態様の車輪用ストッパー10を奥側から見た状態を示した斜視図である。
【0046】
第二実施態様の車輪用ストッパー10については、主に、上記の第一実施態様の車輪用ストッパー10と異なる部分を説明し、第一実施態様の車輪用ストッパー10と共通する部分の説明は割愛する。第二実施態様の車輪用ストッパー10で言及しなかった構成については、第一実施態様の車輪用ストッパー10と同様の構成を採用することができる。
【0047】
第一実施態様の車輪用ストッパー10では、
図2に示すように、ストッパー部11の奥側の面を平坦に形成していた。これに対し、第二実施態様の車輪用ストッパー10では、
図4に示すように、ストッパー部11の奥側の面に複数の固定用凹部11aを設けている。それぞれの固定用凹部11aの底部には、車輪用ストッパー10の下面まで貫通する貫通孔が設けられている。これらの貫通孔には、ボルト等の固定具30を通すことができるようになっている。
【0048】
本発明の車輪用ストッパー10は、設置面βに対して主に接着剤で固定することを想定したものとなっているところ、状況が許せば、第二実施態様の車輪用ストッパー10のように、固定具30も併用して設置面βに固定することも可能である。これにより、車輪用ストッパー10を設置面βに対してより強固に固定することが可能になる。固定具30は、全ての固定用凹部11aに使用する必要はなく、
図4に示すように、一部の固定用凹部11aのみに使用することも可能である。
【0049】
ボルト等の固定具30を固定する箇所(ボルト等固定部)は、ストッパー部11以外にも、車輪乗上部12に設けることもできる。しかし、車輪乗上部12は、板状を為しており比較的脆弱な部分となっている。このため、車輪乗上部12にボルト等固定部を設けると、車輪乗上部12に破れ等の破損が生じる虞がある。したがって、ボルト等固定部を設けるのであれば、そのボルト等固定部は、ストッパー部11に設けた方が好ましい。
【0050】
3.第三実施態様の車輪用ストッパー
続いて、第三実施態様の車輪用ストッパーについて説明する。
図5は、第三実施態様の車輪用ストッパー10を手前側から見た状態を示した斜視図である。
図6は、第三実施態様の車輪用ストッパー10を左右方向に垂直な平面で切断した状態を示した断面図である。
図6においては、ストッパー部11に当接した状態の車輪20を破線で描いている。
【0051】
第三実施態様の車輪用ストッパー10については、主に、上記の第一実施態様の車輪用ストッパー10と異なる部分を説明し、第一実施態様の車輪用ストッパー10と共通する部分の説明は割愛する。第三実施態様の車輪用ストッパー10で言及しなかった構成については、第一実施態様の車輪用ストッパー10や第二実施態様の車輪用ストッパー10と同様の構成を採用することができる。
【0052】
第一実施態様の車輪用ストッパー10は、
図1〜3に示すように、車輪乗上部12の上面α
2が平坦(平面状)となっていた。これに対し、第三実施態様の車輪用ストッパー10は、
図5に示すように、車輪乗上部12の上面に、減速用凸部13が設けられている。この減速用凸部13は、車輪乗上部12の上面α
2の上側に乗り、ストッパー部11に向かって進む車輪20に抵抗を与えることで、その車輪20を減速させるためのものとなっている。この減速用凸部13によって、ストッパー部11に衝突する車輪20の速度をより確実に低下させ、車輪用ストッパー10を設置面βからさらに剥がれにくくすることが可能となっている。減速用凸部13は、左右方向(x軸方向)に断続的に設けてもよいが、第三実施態様の車輪用ストッパー10では、左右方向に連続的に設けている。
【0053】
減速用凸部13は、車輪乗上部12の上面α
2における奥側(ストッパー部11に近い側)に設けてもよいが、ストッパー部11から手前側にある程度離れた箇所に設けることが好ましい。第三実施態様の車輪用ストッパー10においては、
図6に示すように、車輪乗上部12の上面α
2における、車輪20の外周面がストッパー部11に当接したときにその車輪20よりも手前側となる箇所に、減速用凸部13を設けている。これにより、ストッパー部11に当接した車輪20を減速用凸部13で手前側から支持し、車輪20をその場所で保持する(車輪付き移動体をその場所で止めておく)ことが可能になる。
【0054】
減速用凸部13の高さは、車輪20の半径R
1や減速用凸部13の減速面α
3の傾斜等によっても異なり、特に限定されない。しかし、減速用凸部13が低すぎると、それによる車輪20の減速作用が限定的になる。このため、車輪乗上部12の上面α
2から減速用凸部13の頂部までの高さH
3(
図6)は、3mm以上とすることが好ましく、5mm以上とすることがより好ましい。ここで、第三実施態様の車輪用ストッパー10のように、車輪乗上部12の上面α
2が傾斜している等、車輪乗上部12の上面α
2の高さが一定でない場合には、減速用凸部13の高さH
3は、車輪乗上部12における減速用凸部13の直前箇所の上面α
2から減速用凸部13の頂部までの高さとして扱う。
【0055】
一方、減速用凸部13を高くしすぎると、減速用凸部13がストッパー部11としての機能(車輪20の外周面に当接してその車輪がそれ以上奥側に進まないようにする機能)を果たすようになり、減速用凸部13の手前側の減速面α
3に車輪20の外周面が衝突したときの衝撃で、車輪用ストッパー10が設置面βから剥がれる虞がある。このため、車輪乗上部12の上面α
2から減速用凸部13の頂部までの高さH
3(
図6)は、通常、30mm以下とされる。減速用凸部13の高さH
3は、20mm以下とすることが好ましく、10mm以下とすることがより好ましい。第三実施態様の車輪用ストッパー10においては、減速用凸部13の高さH
3を約7〜8mmとしている。車輪乗上部12の上面α
2に対して減速用凸部13の減速面α
3が為す角度は、20〜60°とすることが好ましく、30〜50°とすることがより好ましい。
【0056】
4.第四実施態様の車輪用ストッパー
続いて、第四実施態様の車輪用ストッパーについて説明する。
図7は、第四実施態様の車輪用ストッパーを左右方向に垂直な平面で切断した状態を示した断面図である。
図7においては、車輪乗上部12に乗り上げる直前の車輪20を破線で描いている。
【0057】
第四実施態様の車輪用ストッパー10については、主に、上記の第三実施態様の車輪用ストッパー10と異なる部分を説明し、第三実施態様の車輪用ストッパー10と共通する部分の説明は割愛する。第四実施態様の車輪用ストッパー10で言及しなかった構成については、第一実施態様から第三実施態様までの車輪用ストッパー10と同様の構成を採用することができる。
【0058】
第三実施態様の車輪用ストッパー10では、
図6に示すように、減速用凸部13が1段のみ設けられていた。これに対し、第四実施態様の車輪用ストッパー10では、
図7に示すように、減速用凸部13が多段に設けられている。具体的には、減速用凸部13が、第一減速用凸部13aと第二減速用凸部13bとで構成されている。第二減速用凸部13bは、第一減速用凸部13aから車輪進入方向A
1の奥側に所定間隔を隔てた箇所に設けられている。このように、減速用凸部13を多段に設けることにより、ストッパー部11に衝突する際の車輪20の速度をさらに低下させることができる。減速用凸部13は、3段以上に設けることも可能である。
【0059】
減速用凸部13を多段に設ける場合には、手前側に位置する減速用凸部13(第四実施態様の車輪用ストッパー10では第一減速用凸部13a)を他の減速用凸部13(第四実施態様の車輪用ストッパー10では第二減速用凸部13b)よりもやや高くすることが好ましい。これにより、車輪付き移動体を操作又は運転等する人は、その車輪付き移動体の車輪20が車輪乗上部12に乗り上がった直後に、車輪20が手前側の減速用凸部13に当接したときの揺れ等で、車輪用ストッパー10の車輪乗上部12に車輪20が乗り上がったことを認識しやすくなる。このため、車輪付き移動体を操作又は運転等する人は、車輪乗上部12に車輪20が乗り上がったことを認識した段階で、車輪付き移動体の速度を意図的に落とすことができるようになり、車輪20がストッパー部11に激しく衝突しないようにすることができる。
【0060】
5.第五実施態様の車輪用ストッパー
続いて、第五実施態様の車輪用ストッパーについて説明する。
図8は、第五実施態様の車輪用ストッパー10を左右方向に垂直な平面で切断した状態を示した断面図である。
図8においては、減速用凸部13に当接した状態の車輪20を破線で描いている。
【0061】
第五実施態様の車輪用ストッパー10については、主に、上記の第三実施態様の車輪用ストッパー10と異なる部分を説明し、第三実施態様の車輪用ストッパー10と共通する部分の説明は割愛する。第四実施態様の車輪用ストッパー10で言及しなかった構成については、第一実施態様から第四実施態様までの車輪用ストッパー10と同様の構成を採用することができる。
【0062】
第三実施態様の車輪用ストッパー10では、
図6に示すように、減速用凸部13が、車輪乗上部12と一体的に形成されていた。このため、車輪20が減速用凸部13に衝突したときの衝撃が、車輪乗上部12やストッパー部11に伝わりやすく、車輪20が減速用凸部13に衝突するときの速度等によっては、車輪用ストッパー10が設置面βから剥がれる可能性も否定しきれなかった。
【0063】
これに対し、第五実施態様の車輪用ストッパー10では、
図8に示すように、減速用凸部13を、車輪乗上部12に対して分離可能な分離部材によって構成している。以下においては、このように、車輪乗上部12に対して分離可能な分離部材で形成された減速用凸部13を「分離型の減速用凸部13」と呼ぶことがある。
【0064】
このように分離型の減速用凸部13を採用することによって、車輪20が定格速度で減速用凸部13に当接したときには、減速用凸部13(分離部材)は元の場所を保持し、その減速用凸部13の上側を車輪20が乗り越えていくようになるものの、車輪20が定格速度を超える速度で減速用凸部13に衝突したときには、減速用凸部13(分離部材)が
図8の矢印A
2に示すように奥側に外れ、車輪20が減速用凸部13に衝突したときの衝撃が逃げるようになっている。したがって、車輪20が勢いよく減速用凸部13に衝突しても、その衝撃が車輪乗上部12やストッパー部11に伝わらないようにして、車輪用ストッパー10が設置面βから剥がれないようにすることが可能となっている。
【0065】
分離型の減速用凸部13は、上記の機能を発揮できるのであれば、その形態を特に限定されない。第五実施態様の車輪用ストッパー10では、
図8に示すように、断面「L」字状のアングル部材を分離型の減速用凸部13として用いている。このアングル部材をその角部が上側を向くように被せた状態で車輪乗上部12に保持させている。
【0066】
分離型の減速用凸部13を車輪乗上部12に保持させる構造も、特に限定されない。第五実施態様の車輪用ストッパー10では、
図8に示すように、車輪乗上部12の上面α
2に、第一係止用凸部12a及び第二係止用凸部12bを設け、上記のアングル部材(分離型の減速用凸部13)の一方の板状部端縁を第一係止用凸部12aの手前側に係止し、他方の板状部端縁を第二係止用凸部12bの頂部付近に係止することで、分離型の減速用凸部13を車輪乗上部12に保持させている。
【0067】
6.用途
以上の第一実施態様から第五実施態様の車輪用ストッパー10のように、本発明の車輪用ストッパー10は、車輪20が乗り越えにくいものでありながら、そのストッパー部11に車輪20が勢いよく衝突しても、床面等の設置面βから剥がれにくいものとなっている。
【0068】
本発明の車輪用ストッパー10は、その設置箇所を限定されるものではなく、屋外に設置することもできる(例えば駐車場の車止めとして設置することもできる)が、倉庫や工場等の屋内に設置するものとして適している。なかでも、台車やフォークリフト等の車輪付き移動体の進入許容領域と進入制限領域とを区画するものとして適している。また、本発明の車輪用ストッパー10は、設置面βに対して接着剤で接着しただけであっても、設置面βから剥がれにくいものであるため、床面等の設置面βにボルト等の固定具を固定するための孔等を開けることができない状況で使用されるものとして好適である。