特許第6693627号(P6693627)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6693627
(24)【登録日】2020年4月20日
(45)【発行日】2020年5月13日
(54)【発明の名称】画像処理装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 11/02 20060101AFI20200427BHJP
   B66B 3/00 20060101ALI20200427BHJP
   G06T 7/80 20170101ALI20200427BHJP
【FI】
   B66B11/02 P
   B66B3/00 P
   G06T7/80
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-93079(P2019-93079)
(22)【出願日】2019年5月16日
【審査請求日】2019年5月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 紗由美
(72)【発明者】
【氏名】田村 聡
(72)【発明者】
【氏名】野田 周平
(72)【発明者】
【氏名】横井 謙太朗
【審査官】 羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−280362(JP,A)
【文献】 特開2017−126186(JP,A)
【文献】 特開2018−162118(JP,A)
【文献】 特開2018−162114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 11/00−11/08
B66B 3/00− 3/02
G06T 7/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかごのドア近辺に設置され、乗りかご内および乗場を含む画像を撮影するカメラの取り付け位置のずれを検知可能な画像処理装置であって、
前記乗りかごの床面および前記乗場の床面と区別可能なマーカが設置された状態で撮影された画像を前記カメラから取得する取得手段と、
前記カメラの取り付けに関する仕様値に基づいて、前記取得された画像上で前記マーカが映ると推測される関心領域を設定する設定手段と、
前記設定された関心領域に含まれる画素群に関する統計量に基づいて、前記カメラのパラメータを調整する調整手段と、
前記パラメータの調整後に撮影された画像を前記カメラから取得し、当該取得された画像から前記マーカを認識し、当該認識されたマーカに基づいて、前記カメラの取り付け位置のずれを検知する検知手段と、
を具備する、画像処理装置。
【請求項2】
前記仕様値は、
前記カメラの取り付け角度と、前記カメラと前記マーカとの位置関係と、を含む、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記マーカは、
前記乗りかごのドアの開閉をガイドするためのシルの両端部に沿うようにして、前記乗りかご内の床面に設置される、請求項1または請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記調整手段は、
前記統計量が予め設定された基準値になるように、前記カメラのパラメータを調整する、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記画素群に関する統計量は、
前記画素群の平均輝度値である、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記カメラのパラメータは、
前記カメラのシャッタースピードおよびゲインの少なくとも一方を含む、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
乗りかごのドア近辺に設置され、乗りかご内および乗場を含む画像を撮影するカメラの取り付け位置のずれを検知可能な画像処理装置であって、
前記乗りかごの床面および前記乗場の床面と区別可能なマーカが設置される前記乗りかご内の明るさと、前記カメラのパラメータとが対応づけられた調整テーブルを格納する格納手段と、
前記乗りかごのドアが全閉状態の時に自動露光モードに設定された前記カメラのパラメータを取得する取得手段と、
前記取得されたパラメータに基づいて、前記乗りかご内の現在の明るさを推測する推測手段と、
前記推測された乗りかご内の現在の明るさと、前記調整テーブルとに基づいて、前記カメラのパラメータを調整する調整手段と、
前記パラメータの調整後に、前記マーカが設置された状態で撮影された画像を前記カメラから取得し、当該取得された画像から前記マーカを認識し、当該認識されたマーカに基づいて、前記カメラの取り付け位置のずれを検知する検知手段と、
を具備する、画像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレベータのかごドアに人や物が挟まれるのを防ぐために、様々な技術が考案されている。例えば、カメラを用いてエレベータに向かって移動している利用者を検知し、当該エレベータのドアの戸開時間を延長する技術が考案されている。
【0003】
このような技術においては、カメラによって撮影される画像から、エレベータに向かって移動している利用者を精度良く検知する必要がある。しかしながら、カメラの取り付け位置にずれが生じてしまった場合、カメラによって撮影される画像が回転したり、左右方向にずれたりするため、上記した利用者の検知精度を低下させてしまう可能性がある。
【0004】
このため、カメラの取り付け位置にずれが生じた場合に、当該ずれを検知可能な技術が開発され、当該技術の精度向上が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−143722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の実施形態が解決しようとする課題は、カメラの取り付け位置のずれの検知精度を向上させ得る画像処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態によれば、画像処理装置は、乗りかごのドア近辺に設置され、乗りかご内および乗場を含む画像を撮影するカメラの取り付け位置のずれを検知可能である。前記画像処理装置は、取得手段、設定手段、調整手段および検知手段を具備する。前記取得手段は、前記乗りかごの床面および前記乗場の床面と区別可能なマーカが設置された状態で撮影された画像を前記カメラから取得する。前記設定手段は、前記カメラの取り付けに関する仕様値に基づいて、前記取得された画像上で前記マーカが映ると推測される関心領域を設定する。前記調整手段は、前記設定された関心領域に含まれる画素群に関する統計量に基づいて、前記カメラのパラメータを調整する。前記検知手段は、前記パラメータの調整後に撮影された画像を前記カメラから取得し、当該取得された画像から前記マーカを認識し、当該認識されたマーカに基づいて、前記カメラの取り付け位置のずれを検知する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係るエレベータシステムの概略構成例を示す図である。
図2図2は、エレベータシステムに含まれる画像処理装置のハードウェア構成例を示す図である。
図3図3は、カメラの取り付け位置にずれがない場合に撮影された画像を示す図である。
図4図4は、カメラの取り付け位置にずれがある場合に撮影された画像を示す図である。
図5図5は、カメラの撮影範囲内に設置されるマーカの一例を示す図である。
図6図6は、画像処理装置の機能構成例を示すブロック図である。
図7図7は、キャリブレーション機能における画像処理装置の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図8図8は、図7に示すフローチャートを補足的に説明するための図であって、カメラにより撮影された画像を示す図である。
図9図9は、カメラの露光調整前に撮影された画像の一例を示す図である。
図10図10は、露光調整機能における画像処理装置の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図11図11は、カメラの露光調整後に撮影された画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。開示はあくまで一例にすぎず、以下の実施形態に記載した内容により発明が限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各部分のサイズ、形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して、詳細な説明を省略する場合もある。
【0010】
図1は、実施形態に係るエレベータシステムの概略構成例を示す図である。
乗りかご11の出入口上部にカメラ12が設置されている。具体的には、乗りかご11の出入口上部を覆う幕板11aの中にカメラ12のレンズ部分を、乗りかご11内および乗場15が共に映る方向に向けて設置されている。カメラ12は、例えば車載カメラ等の小型の監視用カメラであり、広角レンズを有し、1秒間に数コマ(例えば、30コマ/秒)の画像を連続的に撮影する。
【0011】
カメラ12は、常時オンであり、常に撮影を行うとしても良いし、所定のタイミングでオンになり撮影を開始し、所定のタイミングでオフになり撮影を終了するとしても良い。例えば、カメラ12は、乗りかご11の移動速度が所定値未満の時にオンになり、乗りかご11の移動速度が所定値以上の時にオフになるとしても良い。この場合、カメラ12は、乗りかご11が所定階に停止するために減速を開始し、移動速度が所定値未満になるとオンになり撮影を開始し、乗りかご11が当該所定階とは別の階に向かうために加速を開始し、移動速度が所定値以上になるとオフになり撮影を終了する。つまり、カメラ12による撮影は、乗りかご11が所定階に停止するために減速を開始し、移動速度が所定値未満になってから、乗りかご11が当該所定階に停止している間中も含めて、乗りかご11が当該所定階から別の階に向かうために加速を開始し、移動速度が所定値以上になるまで継続して行われる。
【0012】
カメラ12の撮影範囲はL1+L2に設定されている(L1≧L2)。L1は乗場15側の撮影範囲であり、かごドア13から乗場15に向けて設定される。L1は乗りかご11側の撮影範囲であり、かごドア13からかご背面に向けて設定される。なお、L1,L2は奥行方向の範囲であり、幅方向(奥行方向と直交する方向)の範囲については、少なくとも乗りかご11の横幅よりも大きいものとする。
【0013】
各階の乗場15において、乗りかご11の到着口には乗場ドア14が開閉自在に設置されている。乗場ドア14は、乗りかご11の到着時にかごドア13に係合して開閉動作する。なお、動力源(ドアモータ)は乗りかご11側にあり、乗場ドア14はかごドア13に追従して開閉するだけである。以下の説明においては、かごドア13が戸開している時には乗場ドア14も戸開しており、かごドア13を戸閉している時には乗場ドア14も戸閉しているものとする。
【0014】
カメラ12によって連続的に撮影された各画像(映像)は、画像処理装置20によってリアルタイムに画像処理される。具体的には、画像処理装置20は、予め設定されたエリア(以下、検知エリアと表記する)における画像の輝度値の変化に基づいてかごドア13に最も近い利用者(の動き)を検知し、検知された利用者が乗りかご11に乗車する意思を有しているか否かの判定や、検知された利用者の手や腕が戸袋に引き込まれる可能性があるか否かの判定等を行う。画像処理装置20による画像処理の結果は、必要に応じて、エレベータ制御装置30による制御処理(主に、戸開閉制御処理)に反映される。
【0015】
エレベータ制御装置30は、乗りかご11が乗場15に到着した時のかごドア13の戸開閉を制御する。詳しくは、エレベータ制御装置30は、乗りかご11が乗場15に到着した時にかごドア13を戸開し、所定時間経過後に戸閉する。
【0016】
但し、画像処理装置20により乗りかご11に乗車する意思のある利用者が検知された場合には、エレベータ制御装置30は、かごドア13の戸閉動作を禁止して戸開状態を維持する(かごドア13の戸開時間を延長する)。また、画像処理装置20により手や腕が戸袋に引き込まれる可能性のある利用者が検知された場合には、エレベータ制御装置30は、かごドア13の戸開動作を禁止するまたはかごドア13の戸開速度を通常時よりも遅くする、あるいはかごドア13から離れることを促す旨のメッセージを乗りかご11内に流す等して、手や腕が戸袋に引き込まれる可能性があることを当該利用者に対して通知する。
【0017】
なお、図1では便宜的に、画像処理装置20を乗りかご11から取り出して示しているが、実際には画像処理装置20はカメラ12と共に幕板11aの中に収納されている。また、図1では、カメラ12と画像処理装置20とが別々に設けられている場合を例示しているが、カメラ12と画像処理装置20とは1つの装置として一体化されて設けられても良い。さらに、図1では、画像処理装置20とエレベータ制御装置30とが別々に設けられている場合を例示しているが、画像処理装置20の機能はエレベータ制御装置30に搭載されるとしても良い。
【0018】
図2は、画像処理装置20のハードウェア構成の一例を示す図である。
図2に示すように、画像処理装置20においては、バス21に、不揮発性メモリ22、CPU23、メインメモリ24および通信デバイス25等が接続されている。
【0019】
不揮発性メモリ22は、例えばオペレーティングシステム(OS)等を含む各種プログラムを格納する。なお、不揮発性メモリ22に格納されているプログラムには、上記した画像処理(より詳しくは、後述する利用者検知処理)を実行するためのプログラムや、後述するキャリブレーション機能を実現するためのプログラム(以下、キャリブレーションプログラムと表記する)が含まれる。
【0020】
CPU23は、例えば不揮発性メモリ22に格納されている各種プログラムを実行するプロセッサである。なお、CPU23は、画像処理装置20全体の制御を実行する。
【0021】
メインメモリ24は、例えばCPU23が各種プログラムを実行する際に必要とされるワークエリア等として使用される。
【0022】
通信デバイス25は、有線または無線により、例えばカメラ12やエレベータ制御装置30等の外部装置と実行される通信(信号の送受信)を制御する機能を有する。
【0023】
ここで、上記したように、画像処理装置20は、予め設定された検知エリアにおける画像の輝度値の変化に基づいてかごドア13に最も近い利用者を検知する利用者検知処理を実行する。この利用者検知処理では、予め設定された検知エリアにおける画像の輝度値の変化に注目するため、当該検知エリアは、画像上の決まった位置に常に設定される必要がある。
【0024】
しかしながら、エレベータシステムの運用中に例えば乗りかご11やカメラ12に対する衝撃等によって、カメラ12の取り付け位置(取り付け角度)にずれが生じてしまうと、上記した検知エリアにもずれが生じてしまうため、画像処理装置20は、実際に注目したいエリアとは異なるエリアの画像の輝度値の変化に注目してしまい、その結果、本来であれば検知する必要のある利用者(や物体)を検知できない、あるいは、本来であれば検知する必要のない利用者(や物体)を誤検知してしまう、等の可能性がある。
【0025】
図3は、カメラ12の取り付け位置にずれがない場合に撮影された画像の一例を示す。なお、図1においては示されていないが、乗りかご11側には、かごドア13の開閉をガイドするためのシル(敷居)(以下、かごシルと表記する)13aが設けられている。同様に、乗場15側には、乗場ドア14の開閉をガイドするためのシル(以下、乗場シルと表記する)14aが設けられている。また、図3中の斜線部分は、画像上に設定された検知エリアe1を示している。ここでは一例として、乗場15にいる利用者を検知するために、検知エリアe1が、長方形状のかごシル13aの長辺のうちの乗りかご11側の長辺から、乗場15側に向けて所定の範囲を有して設定される場合を想定する。なお、検知エリアは、手や腕の戸袋への引き込まれを抑止するために乗りかご11側に設定されても良いし、乗場15側および乗りかご11側の双方に複数設定されても良い。
【0026】
一方、図4は、カメラ12の取り付け位置にずれがある場合に撮影された画像の一例を示す。なお、図4中の斜線部分は、図3同様に、画像上に設定された検知エリアe1を示す。
【0027】
図4に示すように、カメラ12の取り付け位置にずれがあると、カメラ12によって撮影された画像は、図3に示す場合に比べて、例えば回転した画像(傾いた画像)となる。しかしながら、検知エリアe1は、図3同様、画像上の決まった位置に設定されるため、本来であれば図3に示すように、長方形状のかごシル13aの長辺のうちの乗りかご11側の長辺から、乗場15側に所定の範囲を有して設定されるにも関わらず、図4に示すように、長方形状のかごシル13aの長辺とは全く関係のない位置から所定の範囲を有して設定されてしまうことになる。これによれば、上記したように、本来であれば検知する必要のある利用者を検知できなかったり、検知する必要のない利用者を誤検知してしまったりする可能性がある。なお、図4では、カメラ12の取り付け位置のずれに起因して、画像が回転してしまった場合を例示したが、カメラ12の取り付け位置のずれに起因して、画像が左右方向にずれてしまった場合も同様の可能性がある。
【0028】
そこで、本実施形態に係る画像処理装置20は、カメラ12の取り付け位置にずれが生じているか否かを検知し、ずれが生じている場合には、当該ずれにあわせて適切な位置に検知エリアを設定可能なキャリブレーション機能を有している。以下では、このキャリブレーション機能について詳しく説明する。
【0029】
なお、キャリブレーション機能を実現するにあたっては、例えば図5に示すようなマーカmがカメラ12の撮影範囲内に設置される必要がある。マーカmは、例えばエレベータシステムの保守点検を行う保守員により設置される。ここでは、マーカmが正方形状であり、4つの黒い丸印を模様として含むものとしたが、マーカmは4つの角が全て直角である四角形であって、カメラ12の撮影範囲内に含まれる他の物体(例えば、乗りかご11や乗場15の床面)と区別可能な模様を含むものであれば、どのようなものであっても構わない。
【0030】
図6は、本実施形態に係る画像処理装置20の機能構成の一例を示すブロック図である。ここでは、上記したキャリブレーション機能に関する機能構成について主に説明する。
【0031】
画像処理装置20は、図6に示すように、格納部201、画像取得部202、ずれ検知部203、設定処理部204および通知処理部205、等を含む。ずれ検知部203は、図6に示すように、認識処理部231、算出処理部232および検知処理部233、等をさらに含む。
【0032】
本実施形態においては、これら各部202〜205が、例えば図2に示すCPU23(つまり、画像処理装置20のコンピュータ)が不揮発性メモリ22に格納されているキャリブレーションプログラムを実行すること(つまり、ソフトウェア)により実現されるものとして説明するが、上記した各部202〜205は、ハードウェアにより実現されても良いし、ソフトウェアおよびハードウェアの組み合わせにより実現されても良い。また、本実施形態において、格納部201は、例えば図2に示す不揮発性メモリ22または他の記憶装置等によって構成される。
【0033】
格納部201には、キャリブレーション機能に関する設定値が格納されている。キャリブレーション機能に関する設定値は、基準点に対するマーカの相対位置を示す値(以下、第1設定値と表記する)を含む。基準点とは、カメラ12の取り付け位置にずれが生じているか否かを検知するための指標となる位置であり、例えば、長方形状のかごシル13aの長辺のうちの乗りかご11側の長辺の中央がこれに相当する。なお、基準点は、上記した長方形状のかごシル13aの長辺のうちの乗りかご11側の長辺の中央ではなく、カメラ12の取り付け位置にずれが生じていない場合に当該カメラ12の撮影範囲内に含まれる位置であれば任意の位置が基準点に設定されて構わない。
【0034】
また、キャリブレーションに関する設定値には、カメラ12の取り付け位置にずれが生じていない場合の画像(基準画像)に含まれる基準点に対するカメラ12の相対位置を示す値(以下、第2設定値と表記する)が含まれる。
【0035】
さらに、キャリブレーションに関する設定値には、基準点に対するかごシル13aの各頂点(四隅)の相対位置を示す値(以下、第3設定値と表記する)が含まれる。なお、本実施形態においては、検知エリアが長方形状のかごシル13aの長辺のうちの乗りかご11側の長辺から乗場15側に所定の範囲を有して設定される場合を想定しているため、上記した第3設定値として、基準点に対するかごシル13aの各頂点の相対位置を示す値が含まれるとしているが、これに限定されず、第3設定値には、検知エリアを設定すべき領域に応じた値が設定される。例えば、検知エリアが手や腕の戸袋への引き込まれを抑止することを目的として、戸袋近辺に設定される場合、第3設定値として、基準点に対する戸袋の各特徴点の相対位置を示す値が含まれるとしても良い。
【0036】
また、キャリブレーションに関する設定値には、乗りかご11の床面からカメラ12までの高さと、当該カメラ12の画角(焦点距離)とを示す値(以下、カメラ設定値と表記する)が含まれる。
【0037】
なお、格納部201には、カメラ12の取り付け位置にずれがない場合に撮影された画像(基準画像)が格納されていても良い。
【0038】
画像取得部202は、乗りかご11内の床面に複数のマーカmが設置された状態でカメラ12により撮影された画像(以下、撮影画像と表記する)を取得する。なお、本実施形態においては、複数のマーカmが、長方形状のかごシル13aの長辺のうちの乗りかご11側の長辺の両端部にそれぞれ沿うようにして、乗りかご11内の床面に設置される(以下では、単にかごシル13aの両端部に設置すると表記する)場合を想定するが、複数のマーカmは基準点(本実施形態の場合、かごシル13aの中央)との相対位置を特定可能な位置であれば、乗場15側の床面に設置されても良いし、かごシル13aや乗場シル14a上に設置されても良い。また、画像取得部202は、複数のマーカmが設置された状態でカメラ12により撮影された画像を取得すれば良く、かごドア13の状態はどのような状態であっても構わない。例えば、画像取得部202は、複数のマーカmが設置され、かつ、かごドア13が全開の状態で撮影された画像を撮影画像として取得しても良いし、複数のマーカmが設置され、かつ、かごドア13が全閉の状態で撮影された画像を撮影画像として取得しても良いし、複数のマーカmが設置され、かつ、かごドア13が半開き(あるいは半閉り)の状態で撮影された画像を撮影画像として取得するとしても良い。
【0039】
ずれ検知部203は、画像取得部202により取得された撮影画像に対して認識処理を実行し、当該撮影画像に含まれる複数のマーカmを認識(抽出)する。撮影画像に含まれるマーカmの認識は、例えばマーカmに含まれる模様、本実施形態の場合、正方形の中に含まれる4つの黒い丸印を模様として含む物体を、マーカmとして認識することを予め設定しておくことで実現するとしても良いし、その他の公知の画像認識技術を用いて実現するとしても良い。
【0040】
なお、本実施形態において、複数のマーカmを認識するとは、複数のマーカmの撮影画像上での座標値を算出することを含む。本実施形態においては、マーカmとして認識された物体に含まれる4つの黒い丸印の中心点を結ぶことで形成される四角形の中心点(重心)をマーカmとみなして、複数のマーカmの撮影画像上での座標値が算出される場合を想定する。なお、ここでは、マーカmとして認識された物体に含まれる4つの黒い丸印の中心点を結ぶことで形成される四角形の重心をマーカmとみなすとするが、マーカmとして認識された物体のどの部分をマーカmとみなすかは任意に設定されて構わない。
【0041】
ずれ検知部203は、上記した認識処理の結果に基づいて、カメラ12の取り付け位置のずれを検知する。なお、ずれ検知部203に含まれる認識処理部231、算出処理部232および検知処理部233の機能については、フローチャートの説明と共に後述するため、ここではこれらの詳しい説明を省略する。
【0042】
設定処理部204は、ずれ検知部203によりカメラ12の取り付け位置にずれが生じていることが検知された場合、画像取得部202により取得された撮影画像のうちの当該ずれにあわせた適切な位置に検知エリアを設定する。これによれば、カメラ12の取り付け位置のずれを考慮した検知エリアが撮影画像上に設定される。なお、ずれにあわせて適切な位置に設定された検知エリアの座標値は、格納部201に格納されても良い。
【0043】
通知処理部205は、ずれ検知部203によりカメラ12の取り付け位置にずれが生じていることが検知された場合、エレベータシステムの運用状態等を監視する監視センタ(の管理者)や、マーカmを設置してエレベータシステムの保守点検を行う保守員(が所持する端末)に対して、カメラ12の取り付け位置にずれが生じていること(異常が生じていること)を通知する。なお、この通知は、例えば通信デバイス25を介して行われる。
【0044】
次に、図7のフローチャートを参照して、本実施形態におけるキャリブレーション機能における画像処理装置20の処理手順について説明する。なお、図7に示す一連の処理は、例えば定期メンテナンス時に実行される他、エレベータシステムの運用前等に実行されても良い。
【0045】
まず、画像取得部202は、乗りかご11内の床面に複数のマーカmが設置された状態で撮影された画像(撮影画像)をカメラ12から取得する(ステップS1)。ここでは一例として、図8に示す撮影画像i1が画像取得部202により取得された場合を想定する。撮影画像i1には、図8に示すように、かごシル13aの両端部に設置された2つのマーカm1,m2が含まれている。
【0046】
続いて、ずれ検知部203に含まれる認識処理部231は、画像取得部202により取得された撮影画像に対して認識処理を実行し、当該撮影画像に含まれる複数のマーカmを認識(抽出)する(ステップS2)。上記したように、ステップS1において撮影画像i1が取得されている場合、認識処理部231は、図8に示す撮影画像i1に対して認識処理を実行し、当該撮影画像i1に含まれるマーカm1,m2を認識(抽出)する。
【0047】
次に、認識処理部231は、格納部201に設定値として格納されているカメラ設定値(カメラ12の高さおよびカメラ12の画角)に基づいて、ステップS2の認識処理の結果として得られる複数のマーカmに対するカメラ12の各相対位置と、カメラ12の3軸の角度(カメラ12の取り付け角度)とを算出する(ステップS3)。上記したように、ステップS2において撮影画像i1からマーカm1,m2が認識されている場合、認識処理部231は、複数のマーカmに対するカメラ12の相対位置として、マーカm1に対するカメラ12の相対位置と、マーカm2に対するカメラ12の相対位置とをそれぞれ算出する。なお、図8では、点p1がマーカm1とみなされる部分に相当し、点p2がマーカm2とみなされる部分に相当する。
【0048】
ずれ検知部203に含まれる算出処理部232は、認識処理部231により算出された複数のマーカmに対するカメラ12の各相対位置と、格納部201に設定値として格納されている第1設定値とに基づいて、基準点に対するカメラ12の相対位置を算出する(ステップS4)。
【0049】
上記したように、ステップS3においてマーカm1,m2に対するカメラ12の相対位置が算出されている場合、算出処理部232は、マーカm1に対するカメラ12の相対位置と、第1設定値である基準点に対するマーカm1の相対位置とを合成することにより、基準点に対するカメラ12の相対位置を算出する。同様に、算出処理部232は、マーカm2に対するカメラ12の相対位置と、第1設定値である基準点に対するマーカm2の相対位置とを合成することにより、基準点に対するカメラ12の相対位置を算出する。なお、図8では、点p3が基準点に相当する。
【0050】
続いて、ずれ検知部203に含まれる検知処理部233は、算出処理部232により算出された基準点に対するカメラ12の相対位置と、格納部201に設定値として格納されている第2設定値とに基づいて、カメラ12の取り付け位置にずれが生じているか否かを判定する(ステップS5)。具体的には、検知処理部233は、算出処理部232により算出された基準点に対するカメラ12の相対位置と、第2設定値である基準点に対するカメラ12の相対位置とが一致しているか否かを判定して、カメラ12の取り付け位置にずれが生じているか否かを検知する。
【0051】
基準点に対するカメラ12の相対位置が一致し、カメラ12の取り付け位置にずれが生じていないと判定された場合(ステップS5のYES)、検知処理部233は、カメラ12の取り付け位置にずれはなく、検知エリアの再設定は必要ないと判定し、ここでの一連の処理を終了させる。
【0052】
一方で、基準点に対するカメラ12の相対位置が一致せず、カメラ12の取り付け位置にずれが生じていると判定された場合(ステップS5のNO)、設定処理部204は、算出処理部232により算出された基準点に対するカメラ12の相対位置と、格納部201に設定値として格納されている第3設定値およびカメラ設定値とに基づいて、画像取得部202により取得された撮影画像のうちのカメラ12の取り付け位置のずれにあわせた適切な位置に検知エリアを設定する(ステップS6)。
【0053】
本実施形態においては、かごシル13aから乗場15側に所定の範囲を有する検知エリアを設定する場合を想定しているので、まず、設定処理部204は、算出処理部232により算出された基準点に対するカメラ12の相対位置と、第3設定値である基準点に対するかごシル13aの各頂点の相対位置とを合成することにより、カメラ12に対するかごシル13aの各頂点の相対位置を算出する。なお、図8では、点p4〜点p7がかごシル13aの各頂点に相当する。
【0054】
その後、設定処理部204は、算出されたカメラ12に対するかごシル13aの各頂点の相対位置と、認識処理部231により算出されたカメラ12の3軸の角度と、格納部201にカメラ設定値として格納されているカメラ12の画角とに基づいて、検知エリアを設定する。
【0055】
これによれば、画像取得部202により取得された撮影画像i1には、図8の斜線部分に示されるように、カメラ12の取り付け位置のずれにあわせた検知エリアe1、つまり、かごシル13aの長辺のうちの乗りかご11側の長辺から乗場15側に所定の範囲を有する検知エリアe1が設定される。
【0056】
しかる後、通知処理部205は、カメラ12の取り付け位置にずれが生じていることを、通信デバイス25を介して、監視センタ(の管理者)や保守員(の端末)に通知し(ステップS7)、ここでの一連の処理を終了させる。
【0057】
なお、図7に示すステップS5においては、撮影画像に含まれる基準点に対するカメラ12の相対位置と、基準画像に含まれる基準点に対するカメラ12の相対位置とが一致するか否かに応じて、カメラ12の取り付け位置にずれが生じているか否かが判定(検知)されるものとしたが、カメラ12の取り付け位置にずれが生じている場合であっても、当該ずれが上記した利用者検知処理の精度に影響を与えない程度であれば、検知エリアの再設定を行わない構成であっても良い。すなわち、撮影画像に含まれる基準点に対するカメラ12の相対位置と、基準画像に含まれる基準点に対するカメラ12の相対位置との差(乖離度)が予め設定された範囲内であるか否かに基づいてステップS5の処理が実行され、当該乖離度が予め設定された範囲内にない場合に、カメラ12の取り付け位置にずれが生じていると判定されても良い。
【0058】
また、本実施形態における検知エリアの設定が、既に設定された検知エリアの再設定を指す場合、検知エリアの設定は、検知エリアの補正と表現されても構わない。この場合、基準点に対するカメラ12の相対位置は、上記したカメラ12の3軸の角度と共に、検知エリアの補正を実現するために必要な値であるため、補正値と表現されても構わない。
【0059】
以上説明したキャリブレーション機能によれば、カメラ12の取り付け位置のずれにあわせた検知エリアe1を撮影画像i1に対して設定することが可能となる一方で、当該キャリブレーション機能を実行するにあたっては、以下に示す問題を解消する必要がある。
【0060】
上記したキャリブレーション機能においては、図7のステップS1,S2に示したように、乗りかご11内の床面にマーカmが設置された状態の撮影画像をカメラ12から取得し、当該撮影画像からマーカmを認識する必要がある。しかしながら、撮影時の周囲の環境によっては、図9に示すように、撮影画像に白とびや黒つぶれが発生し、この白とびや黒つぶれの発生に起因して、かごシル13aの両端部に設置されたマーカmを認識することができない可能性がある。これによれば、上記したキャリブレーション機能が正常に機能しない可能性がある。なお、撮影画像に影響を及ぼす(つまり、白とびや黒つぶれを発生させる)周囲の環境の一例としては、乗場15側から入射する外光や、乗りかご11内に設置された照明意匠による光等が一例として挙げられる。
【0061】
このため、本実施形態に係る画像処理装置20は、キャリブレーション機能の1つとして、マーカmの設置位置近辺における撮影画像上での白とびや黒つぶれの発生を抑制可能な露光調整機能をさらに有している。以下では、この露光調整機能について詳しく説明する。
【0062】
露光調整機能を実現するにあたって、格納部201には、上記した第1〜第3設定値およびカメラ設定値に加えて、カメラ12の取り付け位置にずれが生じていないと仮定した場合におけるカメラ12の3軸の角度(カメラ12の取り付け角度)と、マーカmに対するカメラ12の相対位置(カメラ12とマーカmとの位置関係)とを示す値(換言すると、カメラ12の取り付けに関する仕様値、以下、単に仕様値と表記する)が、キャリブレーションに関する設定値(詳しくは、露光調整に関する設定値)としてさらに含まれている。なお、本実施形態においては、マーカmがかごシル13aの両端部に設置される場合を想定するため、マーカmに対するカメラ12の相対位置は、かごシル13aの両端部に対するカメラ12の相対位置と同義である。
【0063】
画像取得部202は、図7に示した一連の処理が実行されるより前に、露光調整機能に関する処理を実行する。詳細についてはフローチャートの説明と共に後述するが、撮影画像上でマーカmが映ると推測される領域を関心領域(ROI: Region Of Interest)として設定し、当該関心領域に含まれる画素群の統計量に基づいて、カメラ12固有のカメラパラメータを調整する。
【0064】
ここで、図10のフローチャートを参照して、本実施形態における露光調整機能における画像処理装置20の処理手順について説明する。なお、図10に示す一連の処理は、例えば、図7に示した一連の処理が実行されるより前に実行される。つまり、図10に示す一連の処理は、例えば、図7に示した一連の処理の前処理として実行される。
【0065】
まず、画像取得部202は、乗りかご11内の床面に複数のマーカmが設置された状態で撮影された画像(撮影画像)をカメラ12から取得する(ステップS11)。上記したように、本実施形態においては、マーカm1,m2がかごシル13aの両端部にそれぞれ設置されている場合を想定する。また、ここでは、ステップS11を実行した結果、図9に示す撮影画像i2が画像取得部202により取得された場合を想定する。つまり、この時点においては、図9に示すように、撮影画像i2には白とびや黒つぶれが発生し、ずれ検知部203(認識処理部231)が、かごシル13aの両端部にそれぞれ設置されたマーカm1,m2を認識できない状態にある。
【0066】
続いて、画像取得部202は、格納部201に設定値として格納されている仕様値およびカメラ設定値に基づいて、複数のマーカmが映ると推測される関心領域rを設定する(ステップS12)。上記したように、マーカm1,m2がかごシル13aの両端部に設置されている場合、画像取得部202は、マーカm1,m2に対するカメラ12の相対位置(換言すると、かごシル13aの両端部に対するカメラ12の相対位置)と、カメラ12の3軸の角度と、カメラ12の画角とに基づいて、撮影画像i2上に関心領域rを設定する。
【0067】
これによれば、画像取得部202により取得された撮影画像i2には、図9の一点鎖線で示されるように、マーカm1が映ると推測される関心領域r1と、マーカm2が映ると推測される関心領域r2とが設定される。なお、ここでは、マーカm1が映ると推測される関心領域r1と、マーカm2が映ると推測される関心領域r2とを別々に設定するとしたが、これに限定されず、例えば、マーカm1,m2の両方が映ると推測される1つの関心領域rが設定されるとしても良い。
【0068】
次に、画像取得部202は、関心領域rに含まれる画素群に関する統計量を算出する(ステップS13)。上記したように、ステップS12において2つの関心領域r1,r2が設定されている場合、画像取得部202は、関心領域r1に含まれる画素群に関する統計量と、関心領域r2に含まれる画素群に関する統計量とをそれぞれ算出する。なお、ここでは、関心領域rに含まれる画素群に関する統計量として、関心領域rに含まれる画素群の平均輝度値(画素値の平均値)が算出される場合を想定する。但し、関心領域rに含まれる画素群に関する統計量は、画素値の平均値に限定されず、例えば、画素値の中央値や最頻値、最大値、最小値、等が関心領域rに含まれる画素群に関する統計量として算出されても構わない。
【0069】
しかる後、画像取得部202は、算出された関心領域rに含まれる画素群に関する統計量が予め設定された基準値(目標値)になるように、カメラ12固有のカメラパラメータを調整(設定)し(ステップS14)、ここでの一連の処理を終了させる。この調整は、例えば、カメラパラメータを設定するための指示信号が通信デバイス25を介して画像取得部202からカメラ12に送信されることにより行われる。
【0070】
上記したように、ステップS13において2つの関心領域r1,r2について画素群に関する統計量が算出されている場合、画像取得部202は、どちらの統計量も基準値になるように、カメラ12固有のカメラパラメータを調整する。なお、調整対象となるカメラパラメータには、カメラ12のシャッタースピード(露光時間)およびカメラ12のゲイン(感度)のうちの少なくとも一方が含まれる。
【0071】
なお、関心領域rに含まれる画素群に関する統計量に対して予め設定される基準値は、上記した露光調整に関する設定値の1つとして、格納部201に予め格納される。上記したように、関心領域rに含まれる画素群に関する統計量が、関心領域rに含まれる画素群の平均輝度値であって、カメラ12による撮影画像i2が、色の濃淡をグレースケールで表現する画像である場合、上記した基準値は、グレースケールの0(黒:最小輝度値)とグレースケールの255(白:最大輝度値)との平均値である127に設定されるとしても良い。この場合、画像取得部202は、関心領域rに含まれる画素群の平均輝度値が127になるように、カメラ12固有のカメラパラメータを調整する。
【0072】
以上説明した露光調整機能によれば、マーカmが映ると推測される関心領域rを撮影画像上に設定し、当該関心領域rにおける白とびや黒つぶれの発生を抑制するように、カメラ12の露光調整を行うことが可能となる。
【0073】
図11は、図10に示す一連の処理が実行された後に撮影された画像、つまり、露光調整が行われた後に撮影された画像の一例を示す。図11に示す露光調整後の撮影画像i3には、図9に示す露光調整前の撮影画像i2とは異なり、マーカm1,m2の設置位置近辺に白とびや黒つぶれが発生していないため、認識処理部231が、かごシル13aの両端部にそれぞれ設置されたマーカm1,m2を認識できる状態にある。これによれば、図7のステップS2が正常に実行され、上記したキャリブレーション機能を正常に機能させることが可能となる。
【0074】
なお、マーカm1,m2の設置位置近辺における白とびや黒つぶれの発生を抑制するようにカメラパラメータを調整した影響で、図11に示す撮影画像i3には、マーカm1,m2の設置位置近辺以外の部分(図11中の斜線部分)に白とびや黒つぶれが発生してしまっている。しかしながら、上記したキャリブレーション機能においては、マーカm1,m2を認識することが重要であり、その他の部分を認識できないことはさしたる問題ではないため、マーカm1,m2の設置位置近辺以外の部分に白とびや黒つぶれが発生したとしても、上記したキャリブレーション機能を正常に機能させることが可能である。
【0075】
なお、本実施形態においては、図10に示す一連の処理が、図7に示す一連の処理の前処理として実行される場合について説明したが、図10に示す一連の処理を実行するタイミングはこれに限定されず、例えば、図7に示すステップS2において、認識処理部231がマーカmを正常に認識することができなかった場合に、マーカmを正常に認識することができなかった撮影画像を用いて、図10に示す一連の処理が実行されるとしても良い。
【0076】
図10に示す一連の処理は、マーカmを利用したキャリブレーション機能を正常に機能させるために実行される。このため、図10のステップS11において取得される撮影画像には、マーカmが含まれていることが望ましい。つまり、キャリブレーション時にマーカmを設置する位置にマーカmが設置された状態の撮影画像が取得されることが望ましい。これによれば、マーカmを構成する画素の輝度値を考慮した露光調整を実行することができるので、マーカmを利用したキャリブレーション機能に則した露光調整を実現することが可能となる。
【0077】
本実施形態においては、カメラ12から撮影画像を取得し、取得された撮影画像上に関心領域rを設定し、当該関心領域rに含まれる画素群に関する統計量に基づいてカメラパラメータを調整するとしたが、カメラパラメータの調整は、以下に示す方法により実行されても良い。
【0078】
上記したように、撮影画像に白とびや黒つぶれを発生させる主な要因は、乗場15側から入射する外光や、乗りかご11内に設置された照明意匠による光であり、乗りかご11内の明るさ(マーカmが設置される位置近辺の明るさ)と、白とびや黒つぶれの発生とには関係性がある。このため、乗りかご11内の明るさと、乗りかご11内の明るさが対応づけられた明るさの場合にマーカmの設置位置近辺における白とびや黒つぶれの発生を抑制可能なカメラ12固有のカメラパラメータとを含む調整テーブルを予め用意しておくことで、画像取得部202は、カメラパラメータの調整を実現するとしても良い。
【0079】
この方法の場合、乗りかご11内の明るさを精度良く推測する必要があるので、かごドア13は全閉状態であることが望ましい。これによれば、乗場15側からの外光の入射を防ぐことができ、白とびや黒つぶれの発生を精度良く抑制することが可能となる。
このため、まず画像処理装置20は、エレベータ制御装置30を介してかごドア13の状態を確認し、かごドア13が開いている状態(例えば、全開状態または半開き状態)にある場合、かごドア13を全閉状態にするようエレベータ制御装置30に指示する。
【0080】
続いて、かごドア13が全閉状態になったことを確認すると、画像処理装置20はカメラ12の設定を自動露光(AE: Automatic Exposure)モードに変更した上で、カメラ12に撮影を実行させる。自動露光モードとは、カメラ12が撮影環境に応じて当該カメラ12固有のカメラパラメータ(シャッタースピードおよびゲイン)を自動的に調整して、撮影を行うことが可能なモードである。なお、撮影を実行しなくても、自動露光モード時のカメラパラメータを取得可能な場合、ここでは撮影を実行せずに、カメラ12の設定を自動露光モードに変更するだけで良い。
【0081】
次に、画像処理装置20は、自動露光モードにより調整されたカメラパラメータの値(撮影時のカメラパラメータの値)を取得し、取得されたカメラパラメータの値に基づいて、乗りかご11内の現在の明るさを推測する。その後、画像処理装置20は、推測された乗りかご11内の現在の明るさと、格納部201に予め用意された調整テーブルとに基づいて、乗りかご11内の現在の明るさに好適なカメラパラメータを決定する。より詳しくは、画像処理装置20は、予め用意された調整テーブルにおいて、推測された乗りかご11内の現在の明るさに対応づけられているカメラパラメータを、乗りかご11内の現在の明るさに好適なカメラパラメータに決定する。
【0082】
続いて、画像処理装置20は、カメラ12固有のカメラパラメータを、決定されたカメラパラメータに調整する。その後、画像処理装置20は、調整後のカメラパラメータを利用して撮影された画像であって、設置されたマーカmを適切に認識可能な状態の画像をカメラ12から取得し、上記したキャリブレーション機能における一連の処理を実行する。この方法によれば、関心領域rの設定、関心領域rに含まれる画素群に関する統計量の算出、等を実行しなくても、格納部201に予め格納された調整テーブルと、乗りかご11内の現在の明るさとに基づいて、マーカmの設置位置近辺における白とびや黒つぶれの発生を抑制するように、カメラ12固有のカメラパラメータを調整することが可能であり、図10に示した一連の処理が実行された場合と同様の効果を得ることが可能である。また、この方法によれば、自動露光モード時のシャッタースピードおよびゲインに基づいて乗りかご11内の現在の明るさを推測可能であるので、乗りかご11内の現在の明るさを測定するための照度センサ等を取り付ける必要がなく、照度センサの取り付けにかかる手間やコストを削減することも可能である。
【0083】
以上説明した本実施形態において、画像処理装置20は、乗りかご11の床面および乗場15の床面と区別可能なマーカmが設置された状態で撮影された画像をカメラ12から取得し、取得された画像からマーカmを認識し、認識されたマーカmに基づいて、カメラ12の取り付け位置のずれを検知し、カメラ12の取り付け位置のずれが検知された場合には、画像処理(利用者検知処理)に関する設定値を設定する。この画像処理に関する設定値は、撮影画像に対して設定されたかごドア13に最も近い利用者を検知するための検知エリア(の座標値)を含む。
【0084】
このような構成によれば、カメラ12の取り付け位置にずれが生じた場合であっても、当該カメラ12によって撮影された画像(例えば、回転した画像、左右方向にずれた画像)に対して、適切な検知エリアを設定することが可能となるため、利用者の検知精度の低下を抑止することが可能となる。
【0085】
さらに本実施形態において、画像処理装置20は、乗りかご11の床面および乗場15の床面と区別可能なマーカmが設置された状態で撮影された画像をカメラ12から取得し、カメラ12の取り付けに関する仕様値に基づいて、取得された画像上に関心領域rを設定し、関心領域rに含まれる画素群に関する統計量に基づいて、カメラ12固有のカメラパラメータを調整し、この調整後の画像に基づいて、カメラ12の取り付け位置のずれを検知する。
【0086】
このような構成によれば、マーカmの設置位置近辺における白とびや黒つぶれの発生を抑制することが可能となり、ひいては、カメラ12の取り付け位置のずれを検知するにあたって、マーカmを認識することができずに、キャリブレーション機能を正常に機能させることができないという事態の発生を抑制することが可能となる。
【0087】
以上説明した一実施形態によれば、カメラ12の取り付け位置のずれの検知精度を向上させ得る画像処理装置20を提供することが可能となる。
【0088】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0089】
11…乗りかご、11a…幕板、12…カメラ、13…かごドア、13a…かごシル、14…乗場ドア、14a…乗場シル、15…乗場、20…画像処理装置、30…エレベータ制御装置、201…格納部、202…画像取得部、203…ずれ検知部、204…設定処理部、205…通知処理部、231…認識処理部、232…算出処理部、233…検知処理部、e1…検知エリア、i1,i2,i3…撮影画像、m,m1,m2…マーカ、r,r1,r2…関心領域。
【要約】
【課題】カメラの取り付け位置のずれの検知精度を向上させること。
【解決手段】一実施形態によれば、画像処理装置は、乗りかごのドア近辺に設置され、乗りかご内および乗場を含む画像を撮影するカメラの取り付け位置のずれを検知可能である。画像処理装置は、取得手段、設定手段、調整手段および検知手段を備える。取得手段は、記乗りかごの床面および乗場の床面と区別可能なマーカが設置された状態で撮影された画像をカメラから取得する。設定手段は、カメラの取り付けに関する仕様値に基づいて、取得された画像上でマーカが映ると推測される関心領域を設定する。調整手段は、関心領域に含まれる画素群に関する統計量に基づいて、カメラのパラメータを調整する。検知手段は、パラメータの調整後に撮影された画像をカメラから取得し、当該画像からマーカを認識し、認識されたマーカに基づいて、カメラの取り付け位置のずれを検知する。
【選択図】図10
図1
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図10
図11