(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来より、サイディングとして、窯業サイディングと金属サイディングが知られている(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
近年、こうしたサイディングは意匠性向上のため、例えばロール印刷やインクジェット印刷等によって加飾が施され(加飾層の形成)、さらにこの加飾層の保護や耐候性の向上のためにクリヤー塗料を用いた塗装(トップコート層の形成)が行われることが多くなっている。加えて、自然環境及び労働環境に対する配慮及び各種規制から、溶剤系塗料から水性塗料への切り替えが進み、こうしたクリヤー塗料は水性のものが使用されることが非常に多くなっている。
【0004】
このような水性のクリヤー塗料は、分子量の比較的大きな粒子状のアクリル系ポリマーを主成分とするエマルジョン(アクリルエマルジョン)が用いられることが多い。こうした塗料では、粒子状のポリマーが互いに絡まりながら融着することによって膜が形成されるというメカニズム上、造膜性が要求され、ポリマー同士の融着を助けるために水よりも沸点の高い有機溶剤が添加されることが一般的である。なお、こうした有機溶剤は「造膜助剤」と呼ばれる。加えて、サイディングは屋外で使用されるため、風雨に曝されることから、形成された塗膜が水に対して耐性(例えば、耐水性など)を持つことが要求されることが通常である。
【0005】
ところで、窯業サイディングは、一般的に、湿気や水分を吸収しやすいセメントや繊維質原料(例えば、木質繊維)が原料として使われている。このため、窯業サイディングの、その基材の内部に水が浸透しやすく、こうした水が凍結と融解(膨張と収縮)とを繰り返すことによって、窯業サイディング上に設けられた加飾層やトップコート層に影響を与え、これらの塗膜がひび割れたり基材から剥離したりするといった現象が発生することが知られていた(例えば、特許文献1、2)。ここで、このような現象は、凍害と呼ばれている。
【0006】
一方、金属サイディングは、そもそも基材が金属であり、窯業サイディングのように吸湿するということは考えにくい。そして、加飾層やトップコート層は、その金属基材上に設けられるため、窯業系サイディングで発生するような凍害現象は起こりにくいと考えられてきた(例えば、特許文献1、2)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、本発明者らは、寒冷地のような気温が低い地域では、金属サイディングにおいても凍害現象が発生することを発見した。このため、かかる課題の解決が望まれていた。なお、本発明者らの知りうる限りにおいて、従来、金属サイディングにおいて凍害現象が発生することはそもそも課題として認識されていなかったと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、金属サイディングでも凍害現象が発生する理由については以下のように推察した。
【0010】
サイディングにおいて、トップコート層の形成は、通常、サイディングの製造工程の最後に行われる。トップコート層の形成に用いられるクリヤー塗料は、前述したように水性塗料が用いられることが多く、その場合には溶剤系塗料の場合よりも十分に熱をかけて、形成したトップコート層から十分に水や造膜助剤を揮発させる必要がある(とりわけ、水系塗料における溶媒である水は、溶剤系塗料における溶媒である有機溶剤よりも揮発しにくいため)。
【0011】
窯業サイディングの場合は前述したようにセメントを主原料としているため、例えば100℃以上の高温状態で長時間乾燥させることが可能であり、十分に熱をかけることができる。一方、金属サイディングの場合は、芯材として硬質プラスチックフォームが使用されているため、熱を加えすぎると、変形が生じるおそれがある。このため、窯業サイディングと比べてより低温(例えば、100℃未満)で乾燥させざるを得ず、かつ、加熱時間もあまり長くすることができない。つまり、金属サイディングは窯業サイディングと比較して、トップコート層形成時における乾燥条件に制約がある。こうした制約がある中で、十分に熱を加えることができずに乾燥が不十分なものについては、水や造膜助剤が塗膜(トップコート層)中に残ったままになると考えられる。
【0012】
金属サイディングは住宅等の外壁として使用されるものであるため、外気に曝されることになるが、乾燥が不十分な塗膜を有する金属サイディングでは、塗膜中に残存した水が外気温の変化に伴って凍結と融解(膨張と収縮)が繰り返されることになる。加えて、残存する造膜助剤がポリマー同士の絡まりにすき間を生じさせ、水分を呼び込みやすくなってしまうことも考えられる(呼び込まれた水分は、同様に凍結と融解を繰り返す)。このような結果として、塗膜が白化したり、基材から剥離するといった、“凍害現象”(窯業サイディングのような基材に由来するものではなく、塗膜そのものに由来するもの)が発生したと考えられる。
【0013】
なお、気候が温暖な地域であれば、乾燥が不十分な塗膜を有する金属サイディングであっても、建物等への施工後に、徐々に乾燥が進行することによって水分や造膜助剤は揮発するため、問題にならなかったと考えられる。ところが寒冷地のような気温の低い地域では、残存した水分や造膜助剤が揮発することなく塗膜中にそのまま存在し続けることになり、その結果、前述のような凍害問題が発生したと考えられる。
【0014】
以上のような推察のもとで鋭意検討を行った結果、本発明者らは、以下に提供される発明を完成させ、上記課題を解決した。
発明の一形態によれば、金属サイディングのトップコート用水性塗料組成物が提供される。この金属サイディングのトップコート用水性塗料組成物は、(メタ)アクリル系ポリマーと、沸点が150℃以上220℃以下であり、下記一般式(1)で表されるアルキレングリコールジアルキルエーテル化合物と、を含み、さらに、沸点が160℃以上280℃以下である以下の化合物(i)から(v)の少なくとも1つ含む。
CmH2m+1O(CnH2nО)pCrH2r+1 (1)
(式中、m、n、p、およびrは、それぞれ独立であって、mは1以上5以下の整数であり、nは1以上3以下の整数であり、pは1以上4以下の整数であり、rは1以上5以下の整数である。)
(i)ブチル基及び水酸基を含むグリコール系化合物
(ii)ヘキシル基又は2−エチルヘキシル基と、水酸基とを含むグリコール系化合物
(iii)ブチル基及びアセチル基を含むグリコール系化合物
(iv)2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオールモノイソブチラート
(v)沸点が220℃を越えるアルキレングリコールジアルキルエーテル化合物
また、上述の金属サイディングのトップコート用水性塗料組成物であって、前記化合物(i)から(v)の配合量は、前記一般式(1)で表されるアルキレングリコールジアルキルエーテル化合物100質量部に対して5質量部以上90質量部以下であってもよい。
その他、本発明は、以下のような形態として実現することも可能である。
【0015】
(1)本発明の一形態によれば、金属サイディングのトップコート用水性塗料組成物が提供される。この金属サイディングのトップコート用水性塗料組成物は、
(メタ)アクリル系ポリマーと、
沸点が150℃以上220℃以下であり、下記一般式(1)で表されるアルキレングリコールジアルキルエーテル化合物と、を含む。
C
mH
2m+1O(C
nH
2nО)
pC
rH
2r+1 (1)
(式中、m、n、p、およびrは、それぞれ独立であって、mは1以上5以下の整数であり、nは1以上3以下の整数であり、pは1以上4以下の整数であり、rは1以上5以下の整数である。)
この形態の金属サイディングのトップコート用水性塗料組成物によれば、耐凍害性に優れる金属サイディング用トップコートを形成することができる。
【0016】
(2)上述の金属サイディングのトップコート用水性塗料組成物であって、さらに、沸点が160℃以上280℃以下である以下の化合物(i)から(v)の少なくとも1つ含んでもよい。
(i)ブチル基及び水酸基を含むグリコール系化合物
(ii)ヘキシル基又は2−エチルヘキシル基と、水酸基とを含むグリコール系化合物
(iii)ブチル基及びアセチル基を含むグリコール系化合物
(iv)2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオールモノイソブチラート
(v)沸点が220℃を越えるアルキレングリコールジアルキルエーテル化合物
この形態の金属サイディングのトップコート用水性塗料組成物によれば、耐凍害性により優れる金属サイディング用トップコートを形成することができる。
【0017】
(3)上述の金属サイディングのトップコート用水性塗料組成物であって、沸点が150℃以上220℃以下であり、前記一般式(1)で表されるアルキレングリコールジアルキルエーテル化合物として、ジプロピレングリコールジメチルエーテルを含んでもよい。
この形態の金属サイディングのトップコート用水性塗料組成物によれば、耐凍害性により優れる金属サイディング用トップコートを形成することができる。
【0018】
(4)本発明の他の形態によれば、金属サイディングのトップコート用水性塗料組成物の製造方法が提供される。この金属サイディングのトップコート用水性塗料組成物の製造方法は、
(メタ)アクリル系ポリマーと、
沸点が150℃以上220℃以下であり、下記一般式(1)で表されるアルキレングリコールジアルキルエーテル化合物と、を混合する工程を含む。
C
mH
2m+1O(C
nH
2nО)
pC
rH
2r+1 (1)
(式中、m、n、p、およびrは、それぞれ独立であって、mは1以上5以下の整数であり、nは1以上3以下の整数であり、pは1以上4以下の整数であり、rは1以上5以下の整数である。)
この形態の金属サイディングのトップコート用水性塗料組成物の製造方法によれば、耐凍害性により優れる金属サイディング用トップコートを形成するための水性塗料を製造することができる。
【0019】
本発明は、金属サイディングのトップコート用水性塗料組成物および金属サイディングのトップコート用水性塗料組成物の製造方法以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、金属サイディングのトップコート用水性塗料組成物を用いて被膜層を形成した金属サイディングなどの形態で実現することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、金属サイディングに対し、造膜性や耐水性を有しつつ寒冷地のような気温の低い地域でも十分に性能を発揮する、すなわち、耐凍害性に優れたトップコートを形成することが可能なトップコート用水性塗料組成物が提供される。また、本発明によれば、耐凍害性に優れた金属サイディングが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書の開示は、金属サイディングのトップコート用水性塗料組成物及びその製造方法に関する。本実施形態における金属サイディングのトップコート用水性塗料組成物は、(A)(メタ)アクリル系ポリマーと、(B)沸点が150℃以上220℃以下であり、下記一般式(1)で表されるアルキレングリコールジアルキルエーテル化合物(以下、単に、「アルキレングリコールジアルキルエーテル化合物」とも呼ぶ)と、を含む。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、メタクリル又はアクリルを意味する。また、本明細書において、「トップコート」とは、金属サイディングの着色層を覆う層を意味する。なお、トップコートの上に、例えば、表面改質剤により形成された層などの他の層が形成されていてもよい。また、着色層とトップコートとの間に他の層が形成されていてもよい。
C
mH
2m+1O(C
nH
2nО)
pC
rH
2r+1 (1)
(式中、m、n、p、およびrは、それぞれ独立であって、mは1以上5以下の整数であり、nは1以上3以下の整数であり、pは1以上4以下の整数であり、rは1以上5以下の整数である。)
【0022】
本実施形態における金属サイディングのトップコート用水性塗料組成物によれば、耐凍害性、耐水性、及び造膜性に優れる金属サイディング用トップコートを形成することができる。以下、本実施形態における金属サイディングのトップコート用水性塗料組成物が、良好な造膜性を維持しつつ、耐水性を備え、さらに耐凍害性に優れる推定メカニズムについて説明する。
【0023】
本実施形態のアルキレングリコールジアルキルエーテル化合物は、分子構造の中に水酸基を持たないことから、水酸基を持つ化合物よりも(メタ)アクリル系ポリマーとの親和性に優れていると考えられる。このため、塗料中において、アルキレングリコールジアルキルエーテル化合物は、水酸基を持つ化合物よりも、(メタ)アクリル系ポリマーの内部に取り込まれやすいと考えられる。この結果として、(メタ)アクリル系ポリマーを軟化させるとともに、(メタ)アクリル系ポリマー同士の融着を助け、造膜性を良好にしていると推測される。また、水酸基を持つ化合物と比較して、水との親和性(水素結合など)はあまり強くないため、溶媒である水の揮発に影響しにくいことも考えられる。
【0024】
さらに、本実施形態のアルキレングリコールジアルキルエーテル化合物は、沸点が150℃以上220℃以下である。つまり、沸点が220℃以下であるため、金属サイディングの限られた乾燥条件においても、本実施形態のアルキレングリコールジアルキルエーテル化合物は、十分に揮発することが可能となっていると考えられる。また、本実施形態のアルキレングリコールジアルキルエーテル化合物は、沸点が150℃以上であることにより、自身が揮発する前に(メタ)アクリル系ポリマー同士を十分に融着させることができると考えられる。
【0025】
以上の点から、本実施形態のアルキレングリコールジアルキルエーテル化合物は、水の揮発を妨げることなく、金属サイディングにおける限られた乾燥条件でも十分に揮発するとともに、良好な造膜性を実現できると考えられる。
【0026】
このため、本実施形態の金属サイディングのトップコート用水性塗料組成物によれば、金属サイディングの限られた乾燥条件において、溶媒である水が十分に揮発し、かつ、良好な造膜性を実現できる結果として、耐水性を有しつつ耐凍害性が向上すると考えられる。
【0027】
以下、本実施形態の金属サイディングのトップコート用水性塗料組成物及びその製造方法等について詳述する。
【0028】
A.(メタ)アクリル系ポリマー
本明細書において、(メタ)アクリル系ポリマーとは、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの少なくとも一方のモノマーに由来する構造単位を含む樹脂を意味する。このため、(メタ)アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステルではないモノマーに由来する構造単位を一部に含んでいてもよい。ただし、商業的入手のしやすさから、(メタ)アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの少なくとも一方の(メタ)アクリル系モノマーに由来する構造単位により形成されていることが好ましい。なお、本実施形態における金属サイディングのトップコート用水性塗料組成物は、(メタ)アクリル系ポリマー以外の樹脂を含んでもよい。
【0029】
(メタ)アクリル系ポリマーは、例えば、(メタ)アクリル系モノマーの単独重合体、または(メタ)アクリル系モノマーと他のエチレン性不飽和モノマーとの共重合体などであってよい。他のエチレン性不飽和モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、(i)スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニル系モノマー、(ii)イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸モノマーなどが挙げられる。
【0030】
B.アルキレングリコールジアルキルエーテル化合物
本明細書におけるアルキレングリコールジアルキルエーテル化合物は、沸点が150℃以上220℃以下であり、下記一般式(1)で表される。
C
mH
2m+1O(C
nH
2nО)
pC
rH
2r+1 (1)
(式中、m、n、p、およびrは、それぞれ独立であって、mは1以上5以下の整数であり、nは1以上3以下の整数であり、pは1以上4以下の整数であり、rは1以上5以下の整数である。)
【0031】
アルキレングリコールジアルキルエーテル化合物としては、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル(沸点:162℃)、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル(沸点:176℃)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(沸点:189℃)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(沸点:216℃)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(沸点:175℃)等が挙げられる。アルキレングリコールジアルキルエーテル化合物としては、ジプロピレングリコールジメチルエーテルが、特に乾燥性に優れるとともに、組成物としての最低造膜温度を下げる効果が高いため、好ましい。
【0032】
アルキレングリコールジアルキルエーテル化合物の配合量は、特に限定されない。しかし、凍害の発生をより効果的に抑制する観点から、アルキレングリコールジアルキルエーテル化合物の配合量は、(メタ)アクリル系ポリマー固形分100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、5質量部以上がさらに好ましい。一方、塗料の貯蔵安定性の向上の観点から、アルキレングリコールジアルキルエーテル化合物の配合量は、(メタ)アクリル系ポリマー固形分100質量部に対して、30質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、15質量部以下がさらに好ましい。
【0033】
C.その他の材料
本開示の効果を奏する範囲内において、本開示のトップコート用水性塗料組成物は、他の材料を含んでもよい。他の材料は、特に限定されないが、例えば、表面調整剤、消泡剤、増粘剤、樹脂ビーズや無機フィラーなどの艶消し剤、紫外線吸収剤、光安定剤、防カビ剤、防藻剤、防腐剤などが挙げられる。
【0034】
また、金属サイディングのトップコート用水性塗料組成物としては、さらに、沸点が160℃以上280℃以下である以下の化合物(i)から(v)の少なくとも1つ含んでもよい。このようにすることにより、よりいっそう造膜性、耐水性、及び耐凍害性に優れることとなる。このメカニズムとしては、造膜性と乾燥性のバランスがとれるためと考えられる。
(i)ブチル基及び水酸基を含むグリコール系化合物
(ii)ヘキシル基又は2−エチルヘキシル基と、水酸基とを含むグリコール系化合物
(iii)ブチル基及びアセチル基を含むグリコール系化合物
(iv)2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオールモノイソブチラート
(v)沸点が220℃を越えるアルキレングリコールジアルキルエーテル化合物
【0035】
本明細書において、「ブチル基及び水酸基を含むグリコール系化合物」とは、グリコールの誘導体であって、ブチル基及び水酸基を含む化合物を意味する。ブチル基及び水酸基を含むグリコール系化合物は、特に限定されないが、例えば、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル、エチレングリコールn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールn−ブチルエーテルなどが挙げられる。
【0036】
本明細書において、「ヘキシル基又は2−エチルヘキシル基と、水酸基とを含むグリコール系化合物」とは、グリコールの誘導体であって、ヘキシル基又は2−エチルヘキシル基と、水酸基とを含む化合物を意味する。ヘキシル基又は2−エチルヘキシル基と、水酸基とを含むグリコール系化合物は、特に限定されないが、例えば、エチレングリコールn−ヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテルなどが挙げられる。
【0037】
本明細書において、「ブチル基及びアセチル基を含むグリコール系化合物」とは、グリコールの誘導体であって、ブチル基及びアセチル基を含む化合物を意味する。ブチル基及びアセチル基を含むグリコール系化合物は、特に限定されないが、例えば、エチレングリコールn−ブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールn−ブチルエーテルアセテートなどが挙げられる。
【0038】
本明細書において、「沸点が220℃を越えるアルキレングリコールジアルキルエーテル化合物」とは、前述の「B.アルキレングリコールジアルキルエーテル化合物」で記載した化合物と構造的には同じとしつつ、その沸点が220℃を越える化合物を意味する。この化合物としては特に限定されないが、例えば、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテルなどが挙げられる。
【0039】
化合物(i)から(v)の配合量は、特に限定されない。しかし、凍害の発生をより効果的に抑制する観点から、化合物(i)から(v)の配合量は、(メタ)アクリル系ポリマー固形分100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、5質量部以上がさらに好ましい。一方、塗料の貯蔵安定性の向上の観点から、化合物(i)から(v)の配合量は、(メタ)アクリル系ポリマー固形分100質量部に対して、30質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、15質量部以下がさらに好ましい。
【0040】
アルキレングリコールジアルキルエーテル化合物と化合物(i)から(v)との配合割合は、特に限定されない。しかし、凍害の発生をより効果的に抑制する観点から、化合物(i)から(v)の配合量は、アルキレングリコールジアルキルエーテル化合物100質量部に対して、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、15質量部以上がさらに好ましい。一方、塗料の貯蔵安定性の向上の観点から、化合物(i)から(v)の配合量は、アルキレングリコールジアルキルエーテル化合物100質量部に対して90質量部以下が好ましく、75質量部以下がより好ましく、50質量部以下がさらに好ましい。
【0041】
D.金属サイディングのトップコート用水性塗料組成物の製造方法
本実施形態における金属サイディングのトップコート用水性塗料組成物の製造方法は、(A)(メタ)アクリル系ポリマーと、(B)沸点が150℃以上220℃以下であり、下記一般式(1)で表されるアルキレングリコールジアルキルエーテル化合物と、を混合する工程を含む。本実施形態の製造方法によれば、凍害の発生を抑制するトップコート用水性塗料組成物を得ることができる。以下に、本明細書の開示を具現化した具体例を示す。ただし、本明細書の開示は、以下の具体例に限定されるものではない。
C
mH
2m+1O(C
nH
2nО)
pC
rH
2r+1 (1)
(式中、m、n、p、およびrは、それぞれ独立であって、mは1以上5以下の整数であり、nは1以上3以下の整数であり、pは1以上4以下の整数であり、rは1以上5以下の整数である。)
【0042】
E.実施例
<水性塗料組成物の作製>
コアシェル型の(メタ)アクリル系ポリマーのエマルジョンであるアクリル系樹脂であるアクリセット(登録商標)EX−102SI(株式会社日本触媒製、最低造膜温度(Minimum film forming temperature:MFT:35〜55℃、固形分:44%)227.3質量部((メタ)アクリル系ポリマーを固形分として100質量部含む)に対し、造膜助剤としてジエチレングリコールジメチルエーテル10質量部、アセチレングリコール系表面調整剤(EVONIK社製、サーフィノール104E)5質量部、シリコーン系消泡剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製、BYK−025)2質量部、25%アンモニア水1質量部をそれぞれディスパーで撹拌しながら添加した。その後、この混合物に、適切な量の増粘剤(ダウ・ケミカル社製、プライマルASE−60)と水を添加することにより、B型粘度計による粘度(25℃、60rpm)が、おおよそ700mPa・sの水性塗料組成物(固形分35質量%)を作製した。この水性塗料組成物を実施例1とする。
【0043】
実施例1以降の実施例及び比較例についても、後述する表1から表4に示す配合にて、同様の方法により水性塗料組成物を作製した。ここで、表1から表4に示す配合量は、いずれも質量部である。なお、表1から表4では、内容の理解を容易とするために、配合量として造膜助剤の配合のみ記載する。また、表2中の「分類」という記載は、前述の「沸点が160℃以上280℃以下である以下の化合物(i)から(v)」に対応するものであって、表記載の化合物が、(i)〜(v)のどの化合物に該当するかを示したものである。
なお、実施例1〜5、および実施例17は、参考例とする。
【0044】
<試験基材の作製>
まず、作成した各種の水性塗料組成物100質量部に対して10質量部の水を加え、塗工液を作製した。また、以下に示すYKKAP株式会社製のアルミ外装材(以下、「金属サイディング基材」とも呼ぶ)を準備した。
製品名 :アルカベール/スタンダードシリーズ/ノベルライン
カラー :フロスティグレイ
サイズ :厚さ15mm×幅400mm×長さ3,790mm
素材構成:
表面材・・・ポリエステル塗装が施されたアルミニウム
芯材・・・・ノンフロン硬質プラスチックフォーム断熱材
裏面材・・・アルミ蒸着ラミネート紙
【0045】
そして、上述の金属サイディング基材における表面材の表面到達温度が60℃となるように熱風処理した後、金属サイディング基材の表面(ポリエステル塗装が施された面)に、乾燥後の質量が20g/m
2となるようにエアーレススプレーで上述の塗工液を塗装した。その後、塗装した金属サイディング基材を常温(25℃)で1分間静置した後、板面風速(表面材の表面での風速)8m/秒、表面材の到達温度80℃、到達温度保持時間5分で熱風処理することにより、トップコート用水性塗料組成物を用いて被膜層を形成した金属サイディング(以下、「試験基材」とも呼ぶ)を作製した。
【0046】
<評価方法>
(1)造膜性
試験基材作製後の表面の状態について、目視、拡大鏡(拡大倍率10倍)および顕微鏡(拡大倍率100倍)で観察することによって、クラックの有無により造膜性を評価した。点数が高いほど造膜性に優れ、3点以上がより好ましい。なお、造膜性に関する点数が2点以下の場合は、後述の耐水性及び耐凍害性に関する評価は行わず、表における耐水性及び耐凍害性の評価結果は、「−」とした。
5:目視観察、拡大鏡観察、顕微鏡観察ともに異常は認められない。
4:目視観察、拡大鏡観察では異常は認められないが、顕微鏡観察でわずかにクラックが認められる。
3:目視観察では異常は認められないが、拡大鏡観察、および顕微鏡観察でそれぞれ若干のクラックが認められる。
2:膜は形成されているものの、所々で粉を吹いたような状態になっている。
1:膜形成成分が白化し、粉を吹いたような状態で、膜になっていない。
【0047】
(2)耐水性
耐水性の評価として、以下のように温水試験を行った。まず、試験基材の表面のL値を色差計(日本電色工業株式会社製、分光式色差計SE−2000)で測定した。その後、60℃に維持した温水中に試験基材を240時間浸漬した後、試験基材を温水から取り出し、試験基材の表面における水分を十分に拭き取った後、23℃で1日乾燥させた。1日経過後、上記の色差計で試験基材の表面のL値を測定した。試験前後に測定したL値から以下に定める式に基づいてΔLを算出し、以下の評価基準に基づいて評価を行なった。点数が高いほど耐水性に優れ、3点以上がより好ましい。なお、耐水性に関する点数が2点以下の場合は、後述の耐凍害性に関する評価は行わず、表における耐凍害性の評価結果は、「−」とした。
式:ΔL=試験後のL値−試験前のL値
5:ΔL値が1以下
4:ΔL値が1より大きく3以下
3:ΔL値が3より大きく5以下
2:ΔL値が5より大きく10以下
1:ΔL値が10を越える
【0048】
(3)耐凍害性
JIS A 1435(建築用外装材料の凍結融解試験方法)の3.3(気中凍結水中融解法)に記載されている方法に従い、試験基材の凍結融解試験を行なった(100サイクル)。試験後における試験基材表面の状態を目視により確認し、以下の評価基準に従って評価を行なった。点数が高いほど耐凍害性に優れ、3点以上がより好ましい。
5:外観異常が全く認められない
4:塗膜の剥離は無いが、わずかに塗膜の白化が認められる
3:塗膜の剥離は無いが、若干、塗膜の白化が認められる
2:塗膜の剥離がはっきりと認められる
1:塗膜の剥離、白化がいたるところに認められる
【0053】
表1から表4から、以下のことがわかる。実施例1から実施例5は、沸点が150℃以上220℃以下であって、上記一般式(1)で表されるアルキレングリコールジアルキルエーテル化合物を含む。一方、比較例1は、沸点が150℃よりも低いアルキレングリコールジアルキルエーテル化合物であるエチレングリコールメチルエーテルのみを含む。比較例2は、沸点が220℃よりも高いアルキレングリコールジアルキルエーテル化合物であるジエチレングリコールジブチルエーテルを含む。また、比較例3から比較例19は、アルキレングリコールジアルキルエーテル化合物を含まない。実施例1から実施例5と、比較例1から比較例19とを比較することにより、本実施形態の水性塗料組成物は、造膜性、耐水性、耐凍害性がいずれも高いことが分かる。
【0054】
また、実施例1から実施例5を比較することにより、ジプロピレングリコールジメチルエーテルを用いた実施例5は、実施例1から実施例4と比較して、造膜性、耐水性、及び耐凍害性が全体的に高いことが分かる。このため、実施例6及びそれ以降の実施例では、ジプロピレングリコールジメチルエーテルとそれ以外の材料とを組み合わせた結果を示す。
【0055】
実施例6から実施例16では、ジプロピレングリコールジメチルエーテルと、沸点が160℃以上280℃以下である以下の化合物(i)から(v)のいずれか1つとを組み合わせた結果を示す。これらの実施例においても、造膜性、耐水性、及び耐凍害性がより高いことが分かる。
(i)ブチル基及び水酸基を含むグリコール系化合物
(ii)ヘキシル基又は2−エチルヘキシル基と、水酸基とを含むグリコール系化合物
(iii)ブチル基及びアセチル基を含むグリコール系化合物
(iv)2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオールモノイソブチラート
(v)沸点が220℃を越えるアルキレングリコールジアルキルエーテル化合物
【0056】
具体的には、実施例7〜10,12は、ジプロピレングリコールジメチルエーテルと、(i)ブチル基及び水酸基を含むグリコール系化合物とを組み合わせた結果を示す。実施例11,13は、ジプロピレングリコールジメチルエーテルと、(iii)ブチル基及びアセチル基を含むグリコール系化合物とを組み合わせた結果を示す。実施例14,15は、ジプロピレングリコールジメチルエーテルと、(ii)ヘキシル基又は2−エチルヘキシル基と、水酸基とを含むグリコール系化合物とを組み合わせた結果を示す。実施例16は、ジプロピレングリコールジメチルエーテルと、(iv)2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオールモノイソブチラートとを組み合わせた結果を示す。実施例6は、ジプロピレングリコールジメチルエーテルと、(v)沸点が220℃よりも高いアルキレングリコールジアルキルエーテル化合物とを組み合わせた結果を示す。
【0057】
一方、実施例17は、上記化合物(i)から(v)以外の化合物であるジプロピレングリコールn−プロピルエーテルと、ジプロピレングリコールジメチルエーテルとを組み合わせた結果を示す。実施例7〜16と、実施例17とを比較することにより、上記化合物(i)から(v)のいずれかを含むことにより、造膜性、耐水性、及び耐凍害性がより向上することが分かる。
【0058】
本発明は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【解決手段】金属サイディングのトップコート用水性塗料組成物は、(メタ)アクリル系ポリマーと、沸点が150℃以上220℃以下であり、所定の一般式で表されるアルキレングリコールジアルキルエーテル化合物と、を含む。