(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記光伝導性材料は、シリコン、ゲルマニウム、GaAs、As注入したGaAs、InAs、イオン注入したSi、イオン注入したGe、GaAs・InAsを除くIII−V族半導体、II−VI族半導体、任意のイオン注入半導体、LT−GaAs、LT−InGaAs、LT−AlGaAsのような任意の低温で成長させたエピタキシャル層又はエピタキシャル半導体からなる群から選ばれた少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1に記載の偏光可変エミッタのバイアス分布を決定する方法。
前記対向電極と電極パッドは、金、銅、銀またはその合金、チタン−パラジウム−金、チタン−白金−金、チタン−ニッケル−銀、アルミニウム、モリブデンシリサイド及びポリドープシリコンからなる群から選ばれた少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1に記載の偏光可変エミッタのバイアス分布を決定する方法。
さらに、前記対向電極は、隣接する電極先端部を含む電極間に溝部を有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の偏光可変エミッタのバイアス分布を決定する方法。
前記対をなす対向電極の電極先端部は、前記光導電ギャップ側の縁部が丸みを帯びていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の偏光可変エミッタのバイアス分布を決定する方法。
前記対をなす対向電極の電極先端部は最小偏光ステップ角度を決定するものであって、電極先端部の数が4であれば、最小偏光ステップ角度は90°であり、電極先端部の数が8であれば、最小偏光ステップ角度は45°であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の偏光可変エミッタのバイアス分布を決定する方法。
さらに、前記光伝導ギャップを含む前記対向電極を少なくとも一部を覆う誘電体膜を有することを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の偏光可変エミッタのバイアス分布を決定する方法。
前記誘電体膜は、窒化ケイ素、ポリイミド、窒化ガリウム、アクリル樹脂あるいは二酸化ケイ素の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項7に記載の偏光可変エミッタのバイアス分布を決定する方法。
前記バイアス電圧は、直流電流または交流電流を出力するように構成された前記偏光可変エミッタ用バイアス源より供給されることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の偏光可変エミッタのバイアス分布を決定する方法。
【背景技術】
【0002】
材料特性の非破壊検査(NDT)は、信頼性の重要な課題である。他の非破壊検査方法と比較しても、偏光に敏感なテラヘルツ時間領域分光装置は、以下の独自のユニークな利点がある。
1)非イオン化と損傷を与えない性質;
2)周囲条件での操作;
3)誘電特性の情報への到達性;
4)プラスチック、セラミックス、複合材料、有機材料への高い透過性;これらは紫外線、可視光及び赤外光について不透明である。
5)空間光学的分解能がサブミリメートルであること;並びに、
6)高い信号対雑音(SNR)比。
【0003】
このため、製造、破損、または応力誘起光学異方性(複屈折および二色性)を検出するために、テラヘルツ時間領域分光装置は追加のNDTツールになる可能性がある。これは、テラヘルツ範囲の光磁気(カーとファラデー回転)と、偏光解析研究用と同様である。このように、偏光可変テラヘルツエミッタは、テラヘルツ時間領域光学系を改善するのに非常に重要である。
【0004】
最近、様々な方法を用いて様々な試料を測定するために、テラヘルツ放射線を使用することに非常に関心が持たれている。例えば、テラヘルツ放射線は、画像サンプルと画像内の各画素でのテラヘルツ波形やスペクトルを得ることの両方に使用できる。したがって、テラヘルツ放射線は製品や材料の内部を見るためにX線の代わりに使用できる。テラヘルツ電磁波はまた、医療及び医薬分野向けのアプリケーションを有する。
【0005】
そこで、本発明者は、特許文献1で、テラヘルツ波の波長半分以下の大きさの微小な開口を利用し、従来素子の透過率に対して格段に高い透過率を有するテラヘルツ波光学素子を提案している。また、特許文献2で、物質内の組織の違いから、透過率や吸光率の差を測定し、これらを可視化する場合等に好適な、二組以上の電極を利用したテラヘルツ用アンテナを用いたテラヘルツ時間領域分光分析用の偏光感受性テラヘルツ波検出器を提案している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来装置によると、さまざまなアプリケーションで、課題を残す結果となっている。例えば、テラヘルツ波を対象物に透過させ、透過波の強度変化を利用してイメージングを行う場合を考える。これは、物質内の組織の違いから、透過率や吸光率の差を、測定しそれを可視化しようとしていることになる。
ところが、実際の材料では組織の異方性などにより、透過波は偏光してしまうことが多い。従来のダイポール型検出器では、この偏光状態の変化について知ることが出来ず、単に透過波の強度低下という解釈になってしまう。そこで、従来のダイポール型検出器では、組織としては同じで、結晶や繊維の方向が異なっているだけである類型を区別できないという課題がある。なお、ダイポール型であっても、検出器を少しずつ回転させて、同じサンプルに対し、何度もスキャンすることで、そのような情報を得ることは可能ではあるが、スキャンにも時間がかかるため現実的ではない。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するもので、データ収集時間を改善し、光学セットアップを簡素化できるテラヘルツ時間領域分光分析用の偏光可変エミッタを提供することを目的とする。当該偏光可変エミッタは、物質内の組織の違いから、透過率や吸光率の差を測定し、これらを可視化する場合等に好適なテラヘルツ時間領域分光分析に用いて好適である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の偏光可変エミッタは、例えば
図2〜
図4に示すように、基板20と、基板20上に形成された二以上の対を有する対向電極(21a、21b)であって、当該対向電極は対をなす対向電極の電極先端部(21b1、21a1)に対して光伝導ギャップ25を設けた状態で対向する電極先端部(21a1、21b1)を有すると共に、この電極先端部は電極尾端部(21a2、21b2)の幅と比較して狭い幅を有する前記対向電極と、前記対をなす対向電極の電極先端部に光伝導ギャップ25を横切ってバイアス電圧を印加するための電極パッド23と、光伝導ギャップ25を保持する基板20の光伝導性材料からなる領域とを備え、0.01THzから100THzまでの周波数範囲の少なくとも一部の範囲にある周波数帯域の光を放射すると共に、電極パッド23の各々に対して、光伝導ギャップ25を透過する光の偏光状態を変化させるバイアス電圧を印加するように構成されたことを特徴とする。
【0010】
本発明の偏光可変エミッタにおいて、好ましくは、前記光伝導性材料は、シリコン、ゲルマニウム、GaAs、As注入したGaAs、InAs、イオン注入したSi、イオン注入したGe、GaAs・InAsを除くIII−V族半導体、II−VI族半導体、任意のイオン注入半導体、LT−GaAs、LT−InGaAs、LT−AlGaAsのような任意の低温で成長させたエピタキシャル層又はエピタキシャル半導体からなる群から選ばれた少なくとも一つを含むとよい。
本発明の偏光可変エミッタにおいて、好ましくは、前記対向電極と電極パッドは、金、銅、銀またはその合金、チタン−パラジウム−金、チタン−白金−金、チタン−ニッケル−銀、アルミニウム、モリブデンシリサイド及びポリドープシリコンからなる群から選ばれた少なくとも一つを含むとよい。
本発明の偏光可変エミッタにおいて、好ましくは、テラヘルツ周波数帯域の光は、0.01THzから100THzまでの周波数範囲の少なくとも一部の範囲として、0.05THzから1THzの範囲、さらに好ましくは0.25THzから0.8THzの範囲であるとよい。
【0011】
本発明の偏光可変エミッタにおいて、好ましくは、さらに、前記対向電極は、隣接する電極先端部を含む電極間に溝部24を有するとよい。
本発明の偏光可変エミッタにおいて、好ましくは、前記対をなす対向電極の電極先端部は、前記光導電ギャップ側の縁部が丸みを帯びているとよい。
本発明の偏光可変エミッタにおいて、好ましくは、前記対をなす対向電極の電極先端部は最小偏光ステップ角度を決定するものであって、
当該最小偏光ステップ角度は前記電極先端部の総数(
)に依存し、
前記電極先端部の総数は、先端半径(
)と光伝導ギャップの大きさ(
μm)を用いた次式で定められるとよい。
【数1】
ここで、前記対をなす対向電極の電極先端部の数を増加させると、最小偏光ステップ角度は減少する関係にある。例えば、電極先端部の数が4であれば、最小偏光ステップ角度は90°であり、電極先端部の数が8であれば、最小偏光ステップ角度は45°である。
【0012】
本発明の偏光可変エミッタにおいて、好ましくは、さらに、前記光伝導ギャップを含む前記対向電極を少なくとも一部を覆う誘電体膜を有するとよい。
本発明の偏光可変エミッタにおいて、好ましくは、前記誘電体膜は、窒化ケイ素、ポリイミド、窒化ガリウム、アクリル樹脂あるいは二酸化ケイ素の少なくとも1つを含むとよい。
本発明の偏光可変エミッタにおいて、好ましくは、前記バイアス電圧は、直流電流または交流電流を出力するように構成された前記偏光可変エミッタ用バイアス源より供給されるとよい。
本発明の偏光可変エミッタにおいて、好ましくは、前記バイアス電圧は、1Vから100Vまでの範囲で直流電圧を有する信号であるように構成されるとよい。また、本発明の偏光可変エミッタにおいて、好ましくは、前記バイアス電圧は、±100Vの範囲での交流電圧を有する信号であるように構成されるとよい。
【0013】
本発明の偏光可変エミッタのバイアス分布を決定する方法は、例えば
図1に示すように、上記の偏光可変エミッタに設けられた前記対をなす対向電極とバイアス回転間のバイアス分布を決定する方法であって、前記光伝導ギャップの中央でのポンプレーザのビームスポットよりも大きい領域における、大きな直流または交流での静電場分布の直交する電界ベクトルのEx成分とEy成分の比の値(Ex/Ey)を計算することを特徴とする。
【0014】
本発明のテラヘルツ時間領域光学装置は、例えば
図1に示すように、フェムト秒レーザパルスを発生するフェムト秒パルスレーザー1と、当該フェムト秒レーザパルスをポンプ光とプローブ光に分割するビームスプリッター2と、測定対象サンプル0を挟んで設けられると共に、所定電圧でバイアスされた一対のアンテナ電極(5a、5b)であって、前記アンテナ電極の一方(5a、DE)は照射されたポンプ光に対して広帯域テラヘルツ波を放射して測定対象サンプル0に向かわせるものであり、前記アンテナ電極の他方(5b、DD)は測定対象サンプル0を透過するテラヘルツ波を受信すると共に、プローブ光を受信するものであり、前記アンテナ電極の一方5aは上記の偏光可変エミッタを備えることを特徴とする。
【0015】
本発明のテラヘルツ時間領域光学装置において、好ましくは、さらに、前記測定対象サンプルを透過する広帯域テラヘルツ波を入力して、前記測定対象サンプルの化学的情報または誘電情報の少なくとも一方を演算する手段を有するとよい。本発明のテラヘルツ時間領域光学装置において、好ましくは、さらに、テラヘルツ偏光に敏感なアンテナテラヘルツ検出器を備えるとよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の偏光可変エミッタによれば、直線偏光成分を回転させることができるテラヘルツエミッタを採用しているので、従来装置で設けられていた第2の回転偏光子/アナライザを設ける必要がなくなり、光学セットアップを簡素化できる。
また、本発明のテラヘルツ時間領域光学装置によれば、本発明の偏光可変エミッタと共に偏光に敏感なテラヘルツ検出器を使用することで、データ収集時間を改善し、光学セットアップを簡素化できるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書において、「テラヘルツ放射」は周波数が0.01THzから100THzの範囲にある電磁波をいい、好ましくは0.1THzから10THzの範囲にある電磁波をいう。1THzは10
12(=10の12乗)Hzである。
本明細書では、「リード線」とは、アンテナの中心におけるエミッタ電極につながっているバイアス印加用の任意の電気線である。
本明細書では、「電極」とは、リード線に接続されたエミッタの中央部に位置する任意の導電性構造体である。
【0019】
以下、図面を用いて本発明を説明する。
図1は、本発明の一実施例である偏光可変エミッタを組み込むのに好適な、テラヘルツ時間領域分光装置の全体構成図である。テラヘルツ時間領域分光装置は、例えば株式会社先端赤外製の型式名IRS−2000として入手できる。
図1の装置において、数字0は二つの表面0a、0bを有する測定対象サンプル、1はフェムト秒パルスレーザー、2はビームスプリッター、3はポンプ光、4a、4bはレンズ、5a、5bは光伝導性アンテナ、6は電圧計、7は軸外パラボラミラー、8a、8bはシリコンレンズ、9は電流計、10a、10b、10c、10d、10eはミラー、11はプローブ光、13はコーナー反射体、14は高速フーリエ変換器、15はロックインアンプを示す。偏光可変エミッタDEは、光伝導性アンテナ5aとして装着される。これに対して、光伝導性アンテナ5bは検出器DDである。
【0020】
このように構成された装置において、
図1中の記号0で示される位置に、測定対象サンプルを設置し、それを透過するテラヘルツ波を測定する。即ち、この光学装置においては、フェムト秒パルスレーザー1で変調されたフェムト秒レーザパルスは、ポンプ光3とプローブ光11に2分割される。ポンプ光3は、バイアスされた発振用の光伝導アンテ5aに照射され、アンテナナ電極間の隙間を励起キャリアが移動することに伴い、広帯域テラヘルツ波が放射される。放射されたテラヘルツ波は、スペクトル整形され,測定対象サンプル0と検出用光伝導アンテナ5bに向かって光学要素によって空間的に方向を変更する。最後に、テラヘルツ放射は、レーザープローブ光11と同時に光伝導アンテナ5b(PCA)に到着する。
【0021】
結果として、変調電流がアンテナ電極5bに位置するPCA検出器のギャップで生成され、ロックインアンプ15におけるロックによって記録される。プローブ光11の遅延ラインの長さをコーナー反射体13の変位によって調整する。これにより、テラヘルツ波形を細かい時間間隔でデジタル化することができ、周波数領域テラヘルツスペクトルと高速フーリエ変換(FFT)による位相遅延データに変換される。
【0022】
次に、
図2から
図4を参照して、本発明の出力偏光を回転させることができることが確認された特定のエミッタの幾何学的形状を記述する。
図2は、LT−GaAsのウェハ上に設けられた偏光可変エミッタの全体構造図である。図において、偏光可変エミッタは、光伝導性材料よりなる基板20、微細加工された蝶ネクタイ電極21、リード線22、及び電極パッド23を有している。基板20は、一辺が6mmの矩形形状をしている。
基板20に用いられる光伝導性材料は、以下の少なくとも一つを含む任意の適切な材料を含む。即ち、Si、Ge、GaAs、As注入したGaAs、InAs、イオン注入したSi、イオン注入したGe、他のIII−V族半導体、他のII−VI族半導体、任意のイオン注入した半導体、LT−GaAs、LT−InGaAs、LT−AlGaAsのように任意の低温でエピタキシャル層/半導体を成長させたもの。最も好ましくは、光伝導装置は短い寿命の光伝導材料、例えば、LT−GaAs、As注入したGaAs、デバイスの絶縁破壊電圧が最大化されるような放射線損傷を受けたシリコンなどから製造される。テラヘルツ放射は、光伝導デバイスの電流の流れの非常に速い立上り時間中(すなわち最初のピコ秒程度)に発生する。
【0023】
ここで、III−V族半導体とは、III族元素とV族元素を用いた半導体である。代表的なIII族元素としてはアルミニウム(Al)・ガリウム(Ga)・インジウム(In)、V族元素としては窒素(N)・リン(P)・ヒ素(As)・アンチモン(Sb)である。この他、ボロン(B)、タリウム(Tl)、ビスマス(Bi)もそのIII−V族化合物半導体を構成する元素である。
また、II−VI族半導体とは、II族元素とVI族元素を用いた半導体である。II族元素としてはマグネシウム・亜鉛・カドミウム・水銀が、VI族元素としては酸素・硫黄・セレン・テルルがよく用いられている。典型的なII−VI族半導体には、ZnO(酸化亜鉛)やCdTe(テルル化カドミウム)、ZnSe(セレン化亜鉛)などがある。
【0024】
次に、金Auの電極パッド23は、一辺が1mmの矩形形状をしており、ウェハに8箇所設けられている。リード線22は、Auの電極パッド23と8電極エミッタの蝶ネクタイ電極21の端子を其々接続している。そして、偏光可変テラヘルツ時間領域分光方法用8電極エミッタ(8−EE)は、液体フォトリソグラフィ法とTi(5nm)とAu(150nm)層の連続真空電子ビーム堆積した基板の金属化により、LT−GaAs表面に微細加工される。
【0025】
図3は、エミッタ形状の詳細を説明する拡大図で、mm単位で設計してある。図において、蝶ネクタイ型フレアの長さ301は、8電極エミッタの蝶ネクタイ電極21の中心部から各フレアの尾端側端部までの距離で0.05mmである。蝶ネクタイ型フレアの先端側端部の幅302は、0.005mmである。蝶ネクタイ型フレア角度303は30°である。蝶ネクタイ型フレアの先端相互の間隔304は、0.025mmである。リード線幅305は0.005mmである。蝶ネクタイ型フレアの先端側端部のコーナー半径306は0.0005mmである。
【0026】
図4は、蝶ネクタイ型(bowie-tie)アンテナフレアの直交対を示す検出器中央部の拡大図である。ここでは、4対の直交対を有しており、一対の電極にはプラス側とマイナス側の電極が設けられるため、素子全体では8電極エミッタとなっている。図において、検出器中央部には、蝶ネクタイ電極フレア部21、リード線22、及び溝部としてのトレンチ24が設けられている。蝶ネクタイ電極フレア部21は50ミクロン程度の微細加工されたものである。
【0027】
ここで蝶ネクタイ電極フレア部21について、一対の直交対をなす電極21a、21bに注目する。対向電極21aは、対をなす対向電極21bの電極先端部21b1に対して光伝導ギャップ25を設けた状態で対向する電極先端部21a1を有すると共に、この電極先端部21a1は電極尾端部21a2の幅と比較して狭い幅を有する。対向電極21aは、大略等脚台形に類似した形状を有しており、電極先端部21a1、電極尾端部21a2、及び二辺の電極側縁部21a3を有する。対向電極21bも、対向電極21aと対称な形状をしており、対をなす対向電極21aの電極先端部21a1に対して光伝導ギャップ25を設けた状態で対向する電極先端部21b1を有すると共に、この電極先端部21b1は電極尾端部21b2の幅と比較して狭い幅を有する。対向電極21bは、大略等脚台形に類似した形状を有しており、電極先端部21b1、電極尾端部21b2、及び二辺の電極側縁部21b3を有する。
【0028】
トレンチ24は、LT−GaAs基板上に集束イオンビームリソグラフィ(FIB)を用いて微細加工され、エッチングされたもので、その形状は、例えば0.5μm幅で1.5μm深さで、隣接する電極間のアンテナの降伏電圧を増加させる。光伝導ギャップ25は、蝶ネクタイ電極フレア部21の各直交対をなす電極21a、21bの間に設けられたもので、基板20の光伝導材料からなる領域に位置している。蝶ネクタイ電極フレア部21の直交対をなす電極21a、21bは、光伝導ギャップ25とトレンチ24を挟んで互いに分離された状態で、星状に配置された電極先端部21a1、21b1を有する。光伝導ギャップ25は、1μmから100μmの範囲が好ましく、さらに好ましくは10μmから30μmの範囲である。
光伝導ギャップ25は、
図3に示す蝶ネクタイ型フレアの先端相互の間隔304に相当しており、例えば直径として25μm程度が使用される。フェムト秒パルスレーザー1のレーザスポット径は、1〜2μm程度である。例えばna=0.68のソーラボC330TME−Bの対物レンズが有する、800nmのプローブレーザー波長でのゼロ次回折スポット径は1.2μmであることが知られている。光伝導ギャップ25は、レーザスポット径程度の精度で位置合わせの必要があるため、作業性の観点からレーザスポット径の10倍程度確保できることが望ましい。他方で、偏光可変エミッタ用バイアス源より電極パッド23に供給されるバイアス電圧が、一対の直交対をなす電極21a、21bの絶縁破壊電圧を超えることは望ましくないため、過度に大きな光伝導ギャップ25の存在は好ましくなく、例えば100μmを超えないことが望ましい。
【0029】
このように構成された偏光可変エミッタは、例えば通常の半導体製造プロセスで使用される微細加工技術を用いて製造される。
(i)フォトリソグラフィによって、LT−GaAsの表面上にマスクパターンに応じた積層パターンを形成する。
(ii)電極材料を、例えば金属電子ビーム蒸着を用いて、ウェハ上に積層する。
(iii)リフトオフプロセスにより、余剰となる層を除去して、所望の配線パターンをえる。
電極は5/150nm厚さのチタン/Auの非アニール層である。LT−GaAsの表面には、成長欠陥として、楕円形の欠陥が生じることがある。GaAs層の電気光学特性について、これらの成長欠陥の影響はほとんど無視できる。
【0030】
図2−
図4に示すように、DC出力のマルチチャンネル光伝導インターフェイスボードは、8電極エミッタに対して適切なバイアス印加と回転のために使用される。バイアス印加は、偏光可変エミッタ用バイアス源(図示せず)より供給される直流電流または交流電流により行うとよい。当該バイアス電圧は、1Vから100Vまでの範囲で直流電圧を有する信号であってもよく、また±100Vの範囲での交流電圧を有する信号でもよい。
【0031】
図5は、ワイヤグリッド偏光子、双極子検出器と共にエミッタを試験する光学方式を示す図である。テラヘルツ範囲の光学異方性を研究するための典型的なテラヘルツ時間領域分光方法では、直線偏光特性を有する双極子エミッタ(DE)と双極子検出器(DD)のように動作するテラヘルツ光伝導(PC)アンテナのペアを含み、少なくとも2つのワイヤ・グリッド偏光子を有する。測定対象サンプルの前で、第1の偏光子(P)は、テラヘルツ光伝導アンテナ、双極子エミッタおよびテラヘルツ光学系の大部分の直線偏光出力から寄生角度成分を除去する。第2の回転偏光子/アナライザ(A)は、測定対象サンプルの後に配置される。その役割は、透過または反射したテラヘルツビームの偏光状態のサンプル誘導変化に双極子検出器の応答を調べることである。
【0032】
このように構成された装置においては、エミッタ動作時に、複数の電極が偏光可変エミッタ用バイアス源としての外部DCバイアス回路に接続されている(図示せず)。エミッタに印加できる最大電圧は、本質的に、エミッタの破壊耐性に依存する。また、複数の電極の間に適当なバイアス分布を適用することにより、出力テラヘルツ放射は直線偏光成分を有することになる。エミッタ後に1つのワイヤグリッドPを使用することにより、このような直線偏光成分の質を良好にできる。
さらに、適当なバイアス分布のバイアスの回転を適用することにより、テラヘルツ放射出力の線型的な偏光成分が、回転する。角度αのようなバイアス分布とワイヤグリッドPの同期回転することにより、テラヘルツ放射出力の精製された直線偏光成分もまた回転する。
【0033】
ここで、
図5の装置に対する比較例として、従来広く用いられていた検査装置について説明する。まず、前提条件として、その最も単純な形態では、光伝導性のエミッタは、半導体材料のような光伝導性材料の表面に設けられた2つの電極を備える。例えばGaAs及びSiのような多くの半導体材料は、光伝導性である。エミッタを動作させるために、DCバイアスで変調されたレーザビーム、または変調ACバイアス電圧によって変調された非変調レーザビームが、電極間に印加される。どちらの場合も、光伝導性材料は、適切な波長のレーザ源に暴露される。電流は、バイアス電界の存在のために、電極間の材料を通って流れるので、これは、かなりの程度まで、半導体の導電率を増加させる。バイアス磁界が維持される場合には、電流が、材料中で作成された光電荷キャリアの寿命に相当する時間だけ持続する。
【0034】
テラヘルツ時間領域分光方法のための典型的なエミッタは、エミッタ中心における電極の幾何学的構造としてダイポール、蝶ネクタイ、螺旋状のものを有し、これらは一定の線状または楕円偏光出力を生成する。エミッタ後にワイヤグリッド第1の偏光子を用いて直線偏光を精製/抽出できる。そして、ワイヤグリッド第2の回転偏光子/アナライザで回転することができる。αは、第1の偏光子と第2の回転偏光子/アナライザのワイヤグリッド間の角度であるが、この方式で送信された強度は、cos
2(α)として変化している。それらが交差した場合、送信はゼロである。
【0035】
図6は、最適化されたDCバイアス用の8電極エミッタ電極間の静電場(E)分布のFEMモデルの一例を示すもので、(A)は電界ベクトルのEx成分、(B)は電界ベクトルのEy成分を示している。
図6では、有限要素メッシュ(FEM)と有限差分時間領域(FDTD)法が、アンテナ電極と8−CEスペクトル出力との間に適切なDCバイアス分布をモデル化するために適用されている。最良の結果は、アンテナの中心部でのEx≫Ey領域が最も大きく、より対称的な場合に得られる。ここでは、各アンテナ電極1〜8は、次のバイアス電圧でバイアスされたときに、アンテナの中心部で最も大きくなった。第1電極では2.9V;第2電極と第8電極で2.05V;第3電極と第7電極で1.45V;第4電極、第5電極、および第6電極で0V(すなわち、x軸に関して0バイアス回転)。
【0036】
実際、アンテナの中心部での成分比(Ex/Ey)は、
図6のバイアス分布を用いて、大面積内に10
2〜10
3である可能性がある。
図6の実施例では、アンテナの中心部を示す白抜き丸円の領域において、Ex=10
4.8程度であるのに対して、Ey=10
2.2程度であり、300倍程度になっている。
従って、LT−GaAs中の光生成キャリアは、主に、アンテナの中心(白丸)にポンプレーザビームを集束させることによって第1及び第5の電極の間に流れることになる。この電流の方向とアンテナ電極の形状は、放射されたテラヘルツ波の偏光の性質を決定する。そして、45°の角度で示された複数のバイアス設定を回転させることにより、8電極エミッタ出力偏光はまた、それに応じて回転させることができる。
【0037】
ここにおいて、
図6によれば、レーザビームスポットの大きさは、Ex/Ey≒10
2〜10
3を有するエリアよりも小さくする必要がある。
エミッタ構造体の中心部にある集束電極間のレーザビームスポットの位置は、顕微鏡レンズを有する光学観察を用いて、および/または対向電極のいくつかの対の間に等しい抵抗値を調整することによって、調整できる。
また、
図6によれば、隣接する電極と対向電極との間の最大静止Eが、LT−GaAsに対しての破壊電圧E=4x10
5V/cmよりも低い。
【0038】
図7は、有限差分時間領域シミュレーションと実験結果との比較図で、横軸は周波数、縦軸は強度(原子単位系:a.u.)である。モデリングは、8電極エミッタのスペクトルシグネチャを表示する。実験スペクトルは、偏光子/アナライザのセットアップにおいてα=0°のバイアス印加で収集される。図中、0.1〜0.3テラヘルツ程度のピークは、リード線による共鳴によるものである。また、0.5〜0.8テラヘルツ程度のピークは、蝶ネクタイ型フレアによる共鳴によるものである。
図7に示すスペクトル特性からは、偏光検出のための使用可能なスペクトル範囲は、0.25から0.8THzである。一般的には、当該範囲は、エミッタと検出器の分光畳み込み特性に依存する。なお、
図7でも、
図6と同様に、有限要素メッシュ(FEM)と有限差分時間領域(FDTD)法が、アンテナ電極と8−CEスペクトル出力との間に適切なDCバイアス分布をモデル化するために適用されている。
【0039】
図7では、8電極エミッタの周波数応答が、印加されるバイアス電圧の角度により、大きく変動することを示している。すなわち、0°、−45°、−90°の場合、並びに双極子検出器(DD)と双極子エミッタ(DE)の比、有限差分時間領域(FDTD)法によるExを示してある。これは、検出器の中心の場合にのみ真である。したがって、検出器の設置には、レーザープローブフォーカスがタイトで、光学アライメントも厳密に一致していることが必要とされる。
図7でβは、印加されるバイアス角度、すなわち、エミッタセンターギャップでの静電場ベクトルの角度である。
図7から、
図6に示す8電極エミッタの最も敏感なスペクトル範囲は、0.1〜1.25テラヘルツ程度までである。このスペクトル範囲は、8電極エミッタの幾何学的形状を変えて、FDTDを再設計することで、適宜に調整できる。
【0040】
次に、双極子検出器DDの最大感度を一致させるために(
図5参照)、
図7中の全てのスペクトルは、PとAに対する角度(X偏光成分の最大透過率)に対してα=0°で収集した。そして、8電極エミッタ放射線から二つの直交成分は、
図7中で0°と−90°のバイアスを比較して、得られる。
【0041】
図8では、8電極エミッタの共振テラヘルツ放射の詳細を説明する図で、(A)は周波数0.16THz、(B)は周波数0.77THzの場合を示してある。
図8は、共振テラヘルツ放射を達成するのに好適な、本発明の一実施例を示すエミッタリード線の適切な幾何学的形状を示している。
【0042】
ところで、偏光可変エミッタ用バイアス源より電極パッド23に供給されるバイアス電圧において、適用することができる最大電圧は、当該材料の「絶縁破壊」電界値によって制限される。過度の電力消費または過剰な電流密度に起因するデバイスの障害は、より狭いギャップ電極の設計において最も問題となる。放出点までの導電接点内を流れる電流密度が十分に高い場合には、電流の流れによって誘起される原子運動は、装置の故障をもたらす可能性がある期間にわたって、導体に発生する(この現象は、「エレクトロマイグレーション」として知られている)。この現象の発現は、典型的には、10万Acm
2の領域内であると考えられる。現在の技術では、光伝導装置に適用される金属の厚さは、典型的には約300nmである。典型的に1mAの桁の電流が流れるとこの形状は、エレクトロマイグレーションの発現に近づく電流密度となる。そのため、指定されたバイアス電圧によっては、デバイス障害が想定よりも早く発生することがある。
【0043】
従来のアンテナの設計では、単一の直線偏光発光成分を観察しなかった。しかし、8−CEの前のワイヤグリッドPは0.05乃至1テラヘルツの範囲で、そのような成分を抽出するために使用することができる。そして、同期バイアスとP回転によって、直線偏光を伴うテラヘルツ放射の回転が達成できる。この方式がαの増加を伴うSNRの劣化を回避するが、このSNRの劣化はマリュスの法則により典型的なDEとワイヤグリッド偏光子のセットアップを使用して避けられない。
【0044】
なお、本発明の実施形態として、偏光可変エミッタが8電極エミッタの場合を示しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、双極子エミッタのペアからなる8接触検出器に代えて、4電極検出器、6電極検出器や10以上の電極検出器でもよい。
また、本発明の実施形態として、エミッタ分光的特徴へのリード線の共鳴の寄与を考慮して、その幾何学的形状を変化させて最適化することもできる。このような幾何学的形状は、FDTDとFEMシミュレーションで再設計できる。
さらに、本発明の実施形態として、電極構造の共鳴放射のスペクトル位置は、その幾何学的形状を変化させて最適化することもできる。このような幾何学的形状は、FDTDとFEMシミュレーションで再設計できる。