【実施例】
【0049】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
〔実施例1:米糠タンパク質酵素加水分解物の調製と精製およびペプチドの同定〕
1.米糠タンパク質由来ペプチドの調製
ビーカーに3.00 gの米糠タンパク質(Tsuno-RBP
TM 55、築野食品工業株式会社)を秤量し、60 mLの超純水を加え、ホモジナイザーPOLYTRON(KINEMATICA)を用いて懸濁液を均質化した。次に、Spectra/Por(登録商標) Dialysis Membrane, MWCO: 6,000-8,000 Da (132655: Spectrum Laboratories, Inc.) を用いて均質化した懸濁液を一晩の間透析を行うことによって、低分子成分を除去した。その後、透析した懸濁液を三角フラスコに取り出し、トリプシン(T0303-1G:Sigma-Aldlich)とキモトリプシン(C4129-1G:Sigma-Aldrich)の等質量混合物,ペプシン(P7012-1G:Sigma-Aldlich),又はパパイン(164-00172:和光純薬工業)を米糠タンパク質との重量比が2%(w/w)となるように加えた。得られた懸濁液の温度を、トリプシンとキモトリプシンの等質量混合物は37℃,ペプシンは37℃,又はパパインは50℃になるように恒温槽を用いて調節し、3〜6時間加水分解反応を行った。反応終了後、反応を停止させるため、90 ℃にて10分間の熱処理を行い、プロテアーゼを失活させた。ただし、ペプシンを用いた場合には加熱による失活操作を行わずに、5M NaOHを添加しpHを上昇させることによって失活させた。プロテアーゼを失活させた後、懸濁液を遠心分離用チューブに分注し、10,000 ×g、4 ℃の条件にて30分間遠心分離を行った。遠心分離によって得られた上澄液は、Spectra/Por(登録商標) Dialysis Membrane, MWCO: 500〜1,000 (131096, Spectrum Laboratories, Inc.) を用いて、再度透析を行うことによって、遊離アミノ酸などの低分子成分を除去した。この透析液をアシストチューブに回収し、−80℃で凍結した後、凍結乾燥機(FDU-2100 、EYELA) を用いて凍結乾燥を行った。
【0051】
2.等電点電気泳動による米糠タンパク質由来ペプチドの分画
前記のようにして調製した200 mgの米糠タンパク質の酵素加水分解物を、分取用等電点電気泳動装置(Rotofor(登録商標) 170-2950、Bio-Rad)を用いて20のフラクションに分画した。すなわち、200 mgの加水分解物を50 mLの超純水に溶解して、サンプル溶液とした。分離は12Wにて150分間行った。電気泳動泳動が終了した後、各フラクションを回収し、pHを測定した後、−80 ℃において凍結し、凍結乾燥機を用いて凍結乾燥し、回収された重量を測定した。
【0052】
3.逆相クロマトグラフィーによる米糠タンパク質由来ペプチドの精製
逆相クロマトグラフィーは、ポンプ(LC-10ATvp:島津製作所)、オンラインデガッサー(DGU-12A:島津製作所)、カラムオーブン(CTO-10Avp:島津製作所)、検出器(SPD- 10AVvp:島津製作所)、フラクションコレクター(FRC-10A:島津製作所)、システムコントローラー(SCL-10Avp:島津製作所)を連結した高速液体クロマトグラフィー装置を使用した。クロマトグラフィー操作とデータ解析にはソフトウェア(LabSolutions、島津製作所)を用いた。分離カラムはCAPCELL PAK C-18(カラム:直径10mm×長さ150 mm、粒子径 5 μm, SHISEIDO: 90603)およびInertsil WP300 C8(カラム:直径10×長さ150 mm, 粒子径5 μm, GL Science Inc.: 5020-85735)を用いた。溶出液はアセトニトリル(カタログ番号:1.00030.4000、メルク株式会社)、トリフルオロ酢酸(34833-92: ナカライテスク)および超純水を使用し、調製した。溶出液Aとして0.1 %(v/v) トリフルオロ酢酸、及び溶出液Bとして0.1 %(v/v) トリフルオロ酢酸を含む 80 % (v/v)アセトニトリルを用いた。
溶出液Bの濃度を、初期濃度0 %(v/v)から毎分1 %(v/v)の速度で直線的に高めて、70分後に70 %(v/v)となるように、さらに70〜90分の間は100 %(v/v)となるようにタイムプログラムを設定し、溶出した。流速は2.0 mL/minとして、溶出開始7分後から30秒ごとに溶出液を分取し、波長210 nmにおける吸光度を測定し、ピークを検出した。各ピーク画分は、−80 ℃において凍結し、凍結乾燥機(FDU-2100 、EYELA) を用いて凍結乾燥した。
各ピークのフラクションを再度、同じ分離カラムを用いて、精製し、単一ピークを得た。
【0053】
4.マトリックス支援レーザ脱離イオン化飛行時間型質量分析計(MALDI-TOF/MS)を用いた米糠タンパク質酵素加水分解物(ペプチド)の同定
ペプチドの質量(MS)解析を行うために、マトリックスとしてα-cyano-4-hydroxy-cinnamic acid [HCCA](#201344: Bruker Daltonics社)、キャリブレーション試薬としてPeptide calibration standard II(#222570: Bruker Daltonics社)を使用した。500 μLの TA溶液(100 %(v/v)アセトニトリル:0.1 % (v/v)トリフルオロ酢酸 = 1:2 [v/v]の割合で混合した緩衝液)にHCCAを耳かき1杯程度混ぜた後、10分間の超音波処理によって溶解させ、HCCA飽和溶液(マトリックス溶液)を調製した。調製したマトリックス溶液を9,000 ×gにて10分間遠心分離し、MS用サンプルチューブ(Eppendorf)内において、2 mL の80 % (v/v)アセトニトリルで溶解した1 μLのサンプル溶液と4 μLのマトリックス溶液の上澄液を混合した。調製した5 μLのマトリックス混合サンプルのうち1 μLを質量分析専用プレート(MTP 384 target plate ground steel T F; Bruker Daltonics社)にスポットし、乾燥するまで静置した。また、分子量のキャリブレーションのため、キャリブレーション試薬をサンプルと同様に調製して、スポットした。
スポットしたサンプルおよびキャリブレーション試薬が乾燥した後、Auto Flex-III(登録商標)(Bruker Daltonics社) を用いてMALDI-TOF/MSおよびMS/MS解析を行った。MS- Rangeはm/z 800〜43,000の範囲で調節し、検出器の電位は1300〜1800 Vとして走査した。得られたMS又はMS/MSのスペクトルは、処理ソフトflexAnalysis(登録商標)(Bruker Daltonics社)およびbiotools(登録商標)(Bruker Daltonics社)を用いてデータを処理した後、解析ソフトMascot search(登録商標)(Matrix Science Ltd.)を用いて、NCBIのデータベース (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/fasta.shtml,2015年1月27日付) と照合し、候補ペプチドの検索を行った。このとき、サンプルの消化酵素として特定の酵素を選択しない“none”を選択して検索した。表2は、酵素としてペプシンを用いた場合の米糠タンパク質加水分解物(ペプチド)を示す。表3は、酵素として、トリプシンとキモトリプシンの等質量混合物を用いた場合の米糠タンパク質加水分解物(ペプチド)を示す。
【0054】
【表2】
上記表においてSequence欄の右端のアルファベットは、そのペプチドが同じタンパク質から得られたことを示す(Protein sourceの欄を参照)。
【0055】
【表3】
上記表においてSequence欄の右端のアルファベットは、そのペプチドが同じタンパク質から得られたことを示す(Protein sourceの欄を参照)。
【0056】
〔実施例2:抗菌活性〕
1.抗菌試験
等電点電気泳動によって分画した各フラクション又は表2と表3に示すフラクションに含まれる同定したペプチドを培地に添加し、表4に示す被験菌を培養した。
【0057】
【表4】
【0058】
P. gingivalis ATCC 33277は、変法GAM培地(1L中、ペプトン5.0g、ダイズペプトン3.0g、プロテオーゼペプトン5.0g、消化血清末10.0g、酵母エキス末2.5g、肉エキス末2.2g、肝臓エキス末1.2g、ブドウ糖0.5g、溶性デンプン5.0g、L−トリプトファン0.2g、L−システイン塩酸塩0.3g、チオグリコール酸ナトリウム0.3g、L−アルギニン1.0g、ビタミンK10.005g、ヘミン0.01g、リン酸二水素カリウム2.5g、塩化ナトリウム3.0g、pH7.3)を用いて絶対嫌気条件下、37℃で48時間静置培養した。
S. mutans JCM 5705は、BHI培地(1L中、豚脳エキス末4.0g、豚ハートエキス末4.0g、ペプトン17.5g、ブドウ糖2.0g、塩化ナトリウム5.0g、リン酸水素二ナトリウム2.5g、pH7.2)を用いて、通性嫌気条件下、37℃で6時間静置培養した。
P. acnes JCM 6473は、GAM培地(1L中、ペプトン10.0g、ダイズペプトン3.0g、プロテオーゼペプトン10.0g、消化血清末13.5g、酵母エキス5.0g、肉エキス2.2g、肝臓エキス1.2g、ブドウ糖3.0g、リン酸二水素カリウム2.5g、塩化ナトリウム3.0g、溶性デンプン5.0g、L−システイン塩酸塩0.3g、チオグリコール酸ナトリウム0.3g、pH7.1)を用いて、通性嫌気条件下、37℃で24時間静置培養した。
C. albicans NBRC 1385の培地は、YM培地(1L中、グルコース10.0g、ペプトン5.0g、酵母エキス3.0g、麦芽エキス1.0g、pH6.2)を用いて、通性嫌気条件下、25℃で24時間静置培養した。
被験菌に対する抗菌活性試験は、以下の手順で行った。被験菌の培養に用いたものと同じ培地に、80μLの各被験菌の培養液を播種した後、所定の温度に設定したインキュベーターに入れて所定の時間培養した。その後、新たな培地に植え継いで、さらに所定の時間培養した。得られた前培養液を段階希釈することでOD
650=5.0×10
−5の菌液を調製した。
次に、リザーバーを用意して、各レーンに300μLの1.33倍濃度の培地、100μLの各ペプチド溶液(等電点電気泳動によって分画した各フラクションの濃度は3mg/mLに調節した。また化学合成したペプチドの濃度は、300μM又は500μMに調節した。)、100μLの前記菌液を添加してよく混合した。
コントロールとブランクには、ペプチド溶液の代わりに同量の滅菌水を添加し、更にブランクには菌液の代わりに1倍濃度の各培地を同量添加した。ペプチド溶液を添加したもの、コントロール及びブランクのそれぞれを96ウェル培養プレート(#3595、Corning社製)のウェルに100μLずつ分注し、前記各被験菌の培養条件と同じ条件で培養を行った。
【0059】
2.抗菌活性の評価方法
各ペプチドの抗菌活性は、生菌に由来するATPを定量することによって評価した。
生菌に由来するATPの定量は、BacTiter・Glo(登録商標)Microbial Cell Viability Assay Kit(Promega社製)を用いたルシフェリン−ルシフェラーゼ発光法により行った。以下のように微生物からATPを抽出し、ATP量に応じた発光強度から微生物量を測定した。
具体的には、まず、培養プレートの各ウェルに分注した100μL被験菌培養液に対して10μLのルシフェールATP消去試薬(キッコーマン株式会社製)を添加し、10分間撹拌することによって生菌体外に存在するATPを分解消去させてサンプルとした。
次に、あらかじめ96穴プレート(OptiPlate−96、PerkinElmer社製)の各ウェルに分注した50μLのATP発光試薬に対して、前記サンプルを50μL添加した。各ウェルの生菌に由来するATP発光強度(発光波長560nm)を、マイクロプレートリーダー1420(Multilabel Counter Arvo(登録商標)MX、PerkinElmer社製)を用い、Relative Light Unit (RLU)として測定した。1サンプルについて3回測定を行い、測定は、各菌の対数増殖初期において行った。抗菌活性は、抗菌成分を含まないコントロールのRLUを100%とし、それぞれの濃度のおけるRLUを求め、増殖阻害率を算出した。
【0060】
3.同定したペプチドの化学合成とその抗菌活性の測定
各フラクションに含まれる同定したペプチドのうち、12種類のペプチド(配列番号13〜24)を化学合成した。各ペプチドは、ペプチド合成装置(PSSM−8、株式会社島津製作所製)を用いて合成し、カラム(Cadenza CD−C18、インタクト株式会社製)を装着したHPLC(10A system、株式会社島津製作所製)にて以下の精製条件で精製した。これらのペプチドの抗菌活性を上記と同じ方法で測定した。
<精製条件>
・溶媒A:0.1%(w/v)トリフルオロ酢酸を含むアセトニトリル
・溶媒B:0.1%(w/v)トリフルオロ酢酸を含む水
・流速:1.0 mL/分間
・波長:220 nm
・インジェクション容量:20μL
・グラジエント条件:0.01分間(溶媒A 10体積%、溶媒B 90体積%)→25.0分間(溶媒A 35体積%、溶媒B 65体積%)→25.1分間(溶媒A 100体積%、溶媒B 0体積%)→30分間(停止)
【0061】
〔実施例3:合成ペプチドのエンドトキシン中和活性の測定〕
「エンドスペシーES−50Mセット」(生化学工業株式会社製)及び「エンドトキシン標準品CSE−Lセット」(生化学工業株式会社製)を用いてエンドトキシン中和活性を評価した。
12種類の合成ペプチド(配列番号13〜24)を用いた。96ウェルプレート(#3595 マルチプルウェルプレート(平底)、Corning社製)の各ウェルにエンドトキシン標準品(0.10EU/mL)25μL及びペプチド溶液(最終濃度1μM及び10μM)を加えて、37℃にて30分間又は35分間振盪しながらインキュベーションした。次に、50μLの前記セットに含まれていたLAL試薬を各ウェルに添加し、37℃で10分間振盪しながらインキュベーションした。その後、マイクロプレートリーダー(2030 Arvo X、PerkinElmer社製)を用いて、波長405nmの吸光度を測定した。ペプチド溶液の代わりに蒸留水(エンドトキシンフリー)を添加したものをコントロールとし、コントロール(0μM)の吸光度を100%とした時の相対値をエンドトキシン中和活性とした。
【0062】
〔実施例4:合成ペプチドの創傷治癒活性の測定〕
合成ペプチドの創傷治癒作用を、HUVEC(ヒト臍帯静脈血管内皮細胞、倉敷紡績株式会社製、KE−4109)の管腔形成促進作用に基づいて評価した。
96穴プレート(#3595, Corning社製)を用いて、HUVECを3〜4日間コンフルエントになるまで培養した後、HEPES緩衝液(倉敷紡績株式会社製、HK−3320)を用いて洗浄し、不純物を取り除いた。次に、トリプシン/EDTA(倉敷紡績株式会社製、HK−3120)で3分間処理し、剥がれてきたHUVECを回収し、トリプシン中和液(倉敷紡績株式会社製、HK−3220)に添加した。この細胞懸濁液を800rpmで5分間遠心分離した後、上澄み液を除去し、HuMedia−EG2(倉敷紡績株式会社製、KE−2150S)を加えて細胞濃度を2.0×10
5cells/mLに調整した。得られた細胞懸濁液と各ペプチドとを1:1(v/v)の割合で混合した。
本実験では、ヒト由来の創傷治癒作用を有する生体防御ペプチドとして知られているLL−37(Leu−Leu−Gly−Asp−Phe−Phe−Arg−Lys−Ser−Lys−Glu−Lys−Ile−Gly−Lys−Glu−Phe−Lys−Arg−Ile−Val−Gln−Arg−Ile−Lys−Asp−Phe−Leu−Arg−Asn−Leu−Val−Pro−Arg−Thr−Glu−Ser:ペプチド配列番号25/株式会社ペプチド研究所製、4445−s)をポジティブコントロールとして用いて、合成ペプチドの管腔形成促進作用を評価した。なお、LL−37がヒト由来の創傷治癒作用を有する生体防御ペプチドであることは、例えば、1) M. Carretero, M. J. Escamez, M. Garcia, B. Duarte, A. Holguin, L. Retamosa, J. L. Jorcano, M. del Rio, and F. Larcher: In vitro and in vivo wound healing promoting activity of human cathelicidin LL−37. Journal of Investigative Dermatology, (2008) Vol.128, pp.233−236.、2) R. Ramos, J. P. Silva, A. C. Rodrigues, R Costa, L. Guardao, F. Schmitt, R. Soares, M. Vilanova, L. Domingues, and M. Gama: Wound healing activity of the human antimicrobial peptide LL37. Peptides, (2011) Vol.32, pp.1469−1476.などに記載されている。
【0063】
マトリゲル(Becton Deckinson and Company、354234)は常温では固まり、4℃で液体状態になるため、はじめに40μLのマトリゲルを氷上で96穴プレート(#3595, Corinig社製)に添加した。添加したマトリゲルを37℃で30分間インキュベートした後、予め準備しておいた細胞懸濁液と各ペプチド、又はLL−37との混合液(100μL)を添加し、15時間培養した。
マトリゲル内でHUVECが形成した管腔構造を、顕微鏡を用いて40倍の倍率で観察し、写真撮影を行った。また、得られた画像から300×400pixelの範囲を抽出し、形成された管腔構造をした細胞の長さの合計値を測定し、各ペプチドの創傷治癒作用を評価した。
【0064】
〔実施例5:合成ペプチドの溶血活性の測定〕
緬羊脱繊維無菌血液(0102−1、株式会社日本バイオテスト研究所製、以下「赤血球」とも称する)を用いて、前記ペプチドの溶血活性を試験した。
マイクロチューブ中にて、40μlの赤血球を960μlの生理的食塩を含むリン酸緩衝液(PBS: pH 7.2)に4体積%になるように懸濁して懸濁液とした。前記懸濁液を5,000rpmにて、5分間遠心分離した後、上清液を除き、新たに960μLのPBSを加えて赤血球を再懸濁した。この操作を3回繰り返した後、得られた赤血球をサンプルとして用いた。任意の濃度に希釈された12種類のペプチド(配列番号13〜24)溶液、又は0.1質量% TritonX−100(595−13135、和光純薬工業株式会社製)を96穴プレート(#3595、Corning社製)の各ウェルに50μlずつ分注した。次に、4体積%の赤血球懸濁液を各ウェルに50μLずつ分注した後、37℃にて1時間インキュベーションした。その後、4,000rpmにて10分間遠心分離を行った。遠心分離によって得られた50μLの上清液を、あらかじめ50μLのPBS又は水を分注しておいたウェルに添加した。マイクロプレートリーダー(2030 ArvoTM X、PerkinElmer社製)を用いて、各ウェルの405nmにおける吸光を測定した。前記ペプチドを添加しないときの吸光度を0%、及び前記ペプチドの代わりに0.1質量% TritonX−100を添加したときの吸光度を100%として、次の式を用いて溶血活性を評価した。
溶血活性(%)=(A
peptide−A
0)×100/(A
TritonX−100−A
0)
ここで、A
0は無添加のときの吸光度、A
peptideは各ペプチドを添加したときの吸光度、及びA
TritonX−100は0.1質量%TritonX−100を添加したときの吸光度をそれぞれ示す。
【0065】
結果を
図3〜12及び表5に示した。なお、表5中、「N.D.」は、「検出されなかった」ことを示し、「−」は、「測定していない」または「測定しなかった」ことを示す。
<抗菌活性>
【0066】
フラクション(図3〜10)
図3〜6から明らかなように、ペプシンを用いた米糠タンパク質加水分解物(フラクション)は、等電点が高いフラクションに抗菌活性を検出した。すなわち、No.18〜20のフラクションはP. gingivalis ATCC 33277とP. acnes JCM 6473に対して強い抗菌活性を示した。また、No.20のフラクションは、グラム陽性菌のS. mutans JCM 5705、及び日和見感染真菌のC. albicans NBRC 1385に対しても、強い抗菌活性を示した。
一方、
図7〜10から明らかなように、トリプシンとキモトリプシンの等質量混合物を用いた米糠タンパク質加水分解物(フラクション)は、等電点が高いNo.20のフラクションはP. gingivalis ATCC 33277とP. acnes JCM 6473に対して強い抗菌活性を示した。
合成ペプチド(表5)
表5から明らかなように、いずれのペプチドもP. gingivalis ATCC 33277に対して抗菌活性を示した。また、配列番号16のペプチドは、グラム陽性菌のS. mutans JCM 5705、及びP. acnes JCM 6473、並びに真菌のC. albicans NBRC 1385に対して、すべて抗菌活性を示した。
前記配列番号20のペプチドは、特に代表的な歯周病であるP. gingivalis ATCC 33277、ニキビ原因菌であるP. acnes JCM 6473、及び日和見感染真菌のC. albicans NBRC 1385に対して抗菌活性を示した。
【0067】
<抗炎症作用>
表5から明らかなように、配列番号13,14,15,16,17,18,19,20,21,24の10種類のペプチドは濃度依存的にエンドトキシンを中和することが示された。特に、配列番号15、16、20の中和活性は、ポリミキシンB(P1004−1、Sigma社製;医療用の抗菌薬であり、0.1μMにおいて約50%の中和活性を示す。)と同等であった。
【0068】
<損傷治癒作用>
各ペプチド及びLL−37のHUVECに対する管腔形成促進作用を
図11及び12に示した。また、ペプチドを添加したときの細胞の長さのペプチドを添加していないコントロ-ルの細胞長さに対する割合を表5にまとめた。
図11及び12並びに表5から明らかなように、12種類のうち8種類のペプチド(配列番号13、14、16、17、18、19、22及び24)は、LL−37と同じ濃度範囲において管腔形成促進作用を示し、その作用は濃度に依存していた。また、顕微鏡観察した結果から、10 μMのペプチドを添加したときに、10 μMのLL−37を添加したときと同じように、無添加の場合に比べて細胞の増殖が促進され、管腔構造をした細胞の長さが増加していることがわかった。したがって、8種類のペプチド(配列番号13、14、16、17、18、19、22及び24)は、LL−37と同じようにHUVECの管腔形成促進作用を有することから、創傷治癒作用があることがわかった。
【0069】
<溶血活性>
強い抗菌活性を有するが、同時に強い溶血活性を持つハチ毒中の抗菌ペプチドであるMelittin(511−97531、Serva Electrophoresis社製)は、10μMにおいても94%の溶血活性を示した。一方、前記ペプチドは、表5から明らかなように、500μMの濃度においてほとんど溶血活性を示さなかった。したがって、前記ペプチドは、抗菌活性、抗炎症活性、及び創傷治癒作用を示す濃度範囲において、溶血活性を示さないことが確認された。
【0070】
【表5】